以下図面を参照して本発明の画像形成装置の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態の画像形成装置の概略構成図である。
図1に示すように、この画像形成装置100は、矢印A方向に回転する感光体ドラム11と、感光体ドラム11の表面を一様に帯電する帯電器12と、帯電された感光体ドラム11表面を画像に基づく露光光13で露光する露光装置14と、露光光13により感光体ドラム11上に形成された静電潜像をトナー粒子で現像して感光体ドラム11上にトナー像を形成する現像器15と、感光体ドラム11上に形成されたトナー像の転写を受ける、矢印B方向に循環移動する中間転写体17と、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写体17に一次転写する一次転写器16と、中間転写体17に転写されたトナー像を、矢印C方向から供給される記録媒体Pの被転写面に転写する二次転写器19と、記録媒体P上に転写されたトナー像を定着する定着器18と、一次転写器16によりトナー像が転写された後の感光体ドラム11表面をクリーニングするクリーニング装置20とを備えている。
次に、この画像形成装置100の動作について説明する。
感光体ドラム11が帯電器12によって一様に帯電され、この感光体ドラム11に画像信号に従って露光装置14から露光光13が照射される。すると、感光体ドラム11上の露光光13が照射された部分に静電潜像が形成され、この静電潜像は現像器15によって現像剤であるトナーによって現像され、可視化される。可視化されたトナー像は感光体ドラム11に担持されて一次転写位置16’に達するタイミングに合わせて、給紙装置(図示せず)から記録媒体Pが一次転写位置16’に搬送され、感光体ドラム11上のトナー像は一次転写器16によって記録媒体Pに転写される。記録媒体Pに転写されたトナー像は定着器18によって熱と圧力による像の定着を受けた後、機外に排出される。なお、感光体ドラム11に残留するトナーはクリーニング装置20によって除去され、感光体ドラム11は再び画像形成に供される。
この画像形成装置100では、感光体ドラム11は、表面に、電荷輸送性を有する構造単位を持ちかつ架橋構造を有する樹脂を含有した保護層を有し、該表面が、静電潜像を担持して所定方向に移動することで該静電潜像をトナー粒子で現像する現像位置15’と上記トナー像を上記被転写面に転写する一次転写位置16’とを通過するように構成されている。
なお、上記保護層は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基、およびアミノ基からなる群から選択された少なくとも1種を有する電荷輸送材料を含有し、かつメチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂を含む架橋構造を有する樹脂を含有するものとして構成されている。
感光体ドラム11の詳細な構成については後述する。
図2は、本実施形態の画像形成装置に備えられるクリーニング装置の概略構成図である。
図2に示すように、このクリーニング装置20は、上記一次転写位置16’(図1参照)よりも感光体ドラム11の回転方向Aの下流側に該移動方向に並んで配備され、それぞれが回転軸21a,22aから放射状に延びるブラシ繊維21b,22bを有し、回転軸21a,22aを中心にして回転することでブラシ繊維21b,22bが感光体ドラム11表面を摺擦する2つのクリーニングロール21,22を備えており、これら2つのクリーニングロール21,22のいずれか一方のクリーニングロールは、上記ブラシ繊維がトナー粒子とは異なる研磨粒子を担持し、感光体ドラム11表面を研磨する研磨能力が担持した研磨粒子によって該一方のクリーニングロールに対する他方のクリーニングロールよりも高められたものとして構成される。
さらに、ブラシ繊維21b,22bに付着した付着物を除去するディトーニングロール23,24、ディトーニングロール23,24に付着した付着物を除去するスクレーパ25,26、第1のクリーニングロール21よりも感光体ドラム11の回転方向Aの上流側に配備され感光体ドラム11表面に電荷を付与するクリーニング前コロトロン27、感光体ドラム11表面の電荷を除去するクリーニング前イレーズランプ28、クリーニングロール21、22およびディトーニングロール23,24にバイアス電圧を印加する電源29a,29bおよび30a,30bなどが備えられている。
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
実験機としては、富士ゼロックス社製のDocu Centre Color 500改造機を用い、トナーとしてはこの実験機用のトナーの一部変更品(重合法により生成したトナー)を用いた。トナーの平均形状指数は132である。このトナーには帯電制御剤、クリーニング助剤、転写助剤としてシリカ、チタニア、アルミナを添加した。
感光体ドラム11(図1参照)としては、従来の有機感光体の表面に耐摩耗層を設けたものを用いた。感光体の詳細については後述する。
この実施例1では、クリーニング装置20は、図2に示すように、一次転写位置16’(図1参照)よりも感光体ドラム11の回転方向Aの下流側に該移動方向に並んで配備された第1および第2のクリーニングロール21,22を備えている。これらのクリーニングロール21,22は回転軸21a,22aから放射状に延びるブラシ繊維21b,22bを有し、回転軸21a,22aを中心にして回転することでブラシ繊維21b,22bが感光体ドラム11表面を摺擦するようになっている。
2つのクリーニングロール21,22のうち、第2のクリーニングロール22は、トナー粒子とは異なる研磨粒子が、その研磨粒子表面の一部を露出させた状態で埋め込まれたブラシ繊維22bを有しており、こうして担持された研磨粒子により、感光体ドラム11表面を研磨する研磨能力が第1のクリーニングロール21よりも高められている。
第1のクリーニングロール21のブラシ繊維21aとしては、ナイロンにカーボン分散した繊維太さ2デニールの導電性繊維120K本/inch2が用いられている。
第2のクリーニングロール22のブラシ繊維22bとしては、ナイロンにカーボン分散した導電性繊維に酸化チタン粒子(研磨粒子)を分散したものが用いられ、ブラシ表面に粒子が一部露出した状態で埋め込まれている。
クリーニングロール21,22の詳細は表1に示した通りである。
第2のクリーニングロール22に分散される酸化チタン粒子(研磨粒子)の材料としては、チタニアを用いることができる。研磨粒子径は、0.01μm〜1μm程度のものが用いられる。本実施例1では、粒径0.05μmのチタニア粒子を添加したクリーニングロール22を作成した。
次に、実施例1の効果を確認するためのランニングテストの結果について説明する。
なお、比較例として、クリーニングロール21,22に従来仕様のブラシロールを用いた比較例1、および本実施形態のクリーニング装置を従来の有機感光体に適用した比較例2のテスト結果を併記した。
表1は、実施例1および比較例1、2のテスト条件を示す表である。
表2は、実施例1および比較例1、2のテスト結果を示す表である。
表2に示すように、実施例1のテスト結果は全て問題はなかったが、比較例1、2の場合には、付着物、像流れ、フィルミング、白抜け、かすれなど種々の問題が発生しており、条件によってはテストを中断をせざるを得ない場合もあった。
次に、第2の実施例について説明する。
<実施例2>
第2の実施例では、現像器15(図1参照)が、トナー粒子と該トナー粒子の粒径よりも小さな粒径の外添研磨粒子とを含む現像剤を保持し、感光体ドラム11表面に該現像剤を供給し、感光体ドラム11表面に担持された静電潜像を現像するように構成され、前記の一方のクリーニングロールは、導電性のブラシ繊維が植毛されたものであり、該ブラシ繊維が上記像担持体表面に存在していた外添研磨粒子を静電的に保持することで、保持した外添研磨粒子を上記研磨粒子として作用させるものとして構成されている。
すなわち、トナー粒子に研磨粒子を添加した現像剤を用い、感光体ドラム11の回転方向A下流側の第2のクリーニングロール22(図2参照)が研磨粒子を保持し、感光体ドラム11への付着物を掻き取るように構成されている。
実施例2で使用される研磨粒子は、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電するものが使用される。
第2のクリーニングロール22には、トナーとは同極性の電圧が印加され、主に逆極帯電トナーをクリーニングする。このとき、トナーとは逆極性に帯電された研磨粒子もクリーニングロール22のブラシ繊維22bに吸着され、ブラシ繊維22b表面に研磨粒子を保持した状態で感光体ドラム11に接触するため、感光体ドラム11に形成されたフィルムや放電生成物を効果的に除去することができる。また、ブラシ繊維22bに保持されているトナーも研磨効果を有しているので、フィルムや放電生成物をより効果的に除去することができる。
なお、ブラシ繊維22bに付着した研磨粒子がディトーニングロール24により除去されてしまい、研磨粒子の効果が充分発揮できない場合があるが、そのような場合には、サイクルアウト時に感光体リフレッシュサイクルを入れるとよい。なお、そのときに、下流側のディトーニングロール24のバイアス電圧をオフにすることにより、ブラシ繊維22bに付着した研磨粒子が除去されないようになるので効果的である。
以下に、実施例2におけるテスト条件、感光体リフレッシュサイクル、およびリフレッシュの頻度と時間について説明する。
表3は、実施例2のテスト条件を示す表である。
表4は、実施例2におけるテスト条件と感光体リフレッシュサイクル時のブラシ繊維22bとディトーニングロール24のバイアス条件を示す表である。
表5は、リフレッシュサイクルの頻度と時間を示す表である。
上記の条件で実施例1と同様にテストを行った結果、フィルミングや像流れの発生はなく、全く問題はなかった。
次に、上記各実施例で使用した感光体について説明する。
[感光体A]
酸化亜鉛(SMZ−017N:テイカ製)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(A1100:日本ユニカー社製)2質量部を添加し、5時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で2時間焼付けを行った。得られた表面処理酸化亜鉛を蛍光X線により分析した結果、Si元素強度は亜鉛元素強度の1.8×10-4であった。
前記表面処理を施した酸化亜鉛35質量部と硬化剤(ブロック化イソシアネート スミジュール3175)(住友バイエルンウレタン社製):15質量部とブチラール樹脂 BM−1(積水化学社製):6質量部とメチルエチルケトン:44質量部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い分散液を得た。
得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、トスパール130(GE東芝シリコン社製):17質量部を添加し、下引層塗布用液を得た。この塗布液を浸漬塗布法にてAl基材上に塗布し、160℃、100分の乾燥硬化を行い厚さ20μmの下引層を得た。表面粗さは、東京精密社製表面粗さ形状測定器サーフコム570Aを用いて測定距離2.5mm、走査速度0.3mm/secで測定した結果、Rz値0.24であった。
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角 (2θ±0.2°)が、7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°に強い回折ピークを持つヒドロキシガリウムフタロシアニンの1部をポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学)1部、および酢酸n−ブチル100部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカで1時間処理して分散した後、得られた塗布液を前記下引き層上に浸漬コートし、100℃で10分間加熱乾燥して膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記の構造式(I)で示されるベンジジン化合物2部、下記の構造式(II)で示されるる高分子化合物(粘度平均分子量39,000)3部をクロロベンゼン20部に溶解させた塗布液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃、40分の加熱を行なって膜厚22μmの電荷輸送層を形成し、これを感光体Aとした。
[感光体B]
下記の構造式(III)で示される化合物を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、およびイソプロパノ−ルを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬コーティング法で感光体の電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmの保護層を形成し、得られた感光体1を感光体Bとした。
[感光体C]
前記の感光体1上に、下記に示す構成材料を、メチルアルコール5部、イオン交換樹脂(アンバーリスト 15E:ローム・アンド・ハース社製)0.3部を加え、室温で攪拌することにより24時間保護基の交換反応を行った。
構成材料:
化合物IV 2部
化合物V 1部
コロイダルシリカ 0.3部
Me(MeO)2−Si−(CH2)4−Si−Me(OMe)2 2部
(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)メチルジメトキシシラン 0.1部
ヘキサメチルシクロトリシロキサン 0.3部
ZX−022(富士化成工業社製) 0.25部
ここで、Meはメチル基を表し、化合物IVおよび化合物Vの構造式は次に示す通りである。
次に、n−ブタノール10部、蒸留水0.25部を添加し、5分加水分解を行ない、加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した液に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)を0.1部、アセチルアセトン0.1部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4部を加え、このコーティング液を前記電荷輸送層の上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、130℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3μmの保護層を形成し、これを感光体Cとした。
本発明に用いる感光体では表面の磨耗、傷などに対する耐性を持たせるため、表面に保護層を設けることが必要である。この保護層の詳細については後述する。
次に、本発明の実施形態に用いられる現像剤について説明する。
トナーは、製造方法により限定されるものではなく、例えば、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により得られるものが採用できる。
また、上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を持たせる製造方法など、公知の製造方法を採用することができるが、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
トナー粒子は結着樹脂と着色剤、離型剤等とからなり、必要に応じてシリカや帯電制御剤を用いてもよい。体積平均粒径は2μm〜12μmの範囲が好ましく3μm〜9μmの範囲がより好ましい。
また、トナーの平均形状指数(SFI=(ML2/A)×(π/4)×100、MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す)が100〜145の範囲のものを用いることにより、高い現像、転写性、および高画質の画像を得ることができる。
使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。
また、トナーの着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
また、トナーには必要に応じて帯電制御剤を添加してもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合は、イオン強度の制御と廃水汚染の低減との点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。
本発明に用いられるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー、および磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
本発明に用いるトナーに添加される潤滑剤としてはグラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス;およびそれらの変性物が使用でき、これらを単独で使用するか、あるいは併用してもよい。
特にトナーに添加する潤滑剤としては劈開性を有することにより摩擦低減効果の高い脂肪酸金属塩、特にステアリン酸亜鉛がよい。ステアリン酸亜鉛の添加量は0.01%質量部〜2.0%質量部が好ましく、更に0.05%質量部〜0.5%質量部がより好ましい。0.01%質量部より少ない場合は十分な潤滑効果を発揮できず、2.0%質量部よりも多い場合は像担持体の付着量が過剰となり、高温高湿下で像流れが発生し易くなる上、トナーその物の帯電特性に悪影響を与えてしまう。
本発明に用いるトナーには、感光体表面の付着物、劣化物除去の目的等で、無機微粒子、有機微粒子、該有機微粒子に無機微粒子を付着させた複合微粒子などを加えることができるが、研磨性に優れる無機微粒子が特に好ましい。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。また、上記無機微粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行ってもよい。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩による疎水化処理を行うことも好ましい。
有機微粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレンアクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。これらの粒子径としては、小さすぎると研磨能力に欠け、また、大きすぎると感光体表面に傷を発生しやすくなるため、平均粒子径で5nm〜1000nmの範囲、好ましくは5nm〜800nmの範囲、より好ましくは5nm〜700nmの範囲のものが使用される。また、前記滑性粒子の添加量との和が、0.6質量%以上であることが好ましい。
トナーに添加されるその他の無機酸化物としては、粉体流動性、帯電制御等のため、1次粒径が40nm以下の小径無機酸化物を、更に付着力低減や帯電制御のため、それより大径の無機酸化物を挙げることができる。これらの無機酸化物微粒子は公知のものを使用することができるが、精密な帯電制御を行うためには、シリカと酸化チタンとを併用することが好ましい。また、小径無機微粒子については表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を向上させる効果を大きくすることができる。
本発明におけるトナーは、前記トナー粒子および外添剤をヘンシェルミキサ、あるいはVブレンダ等で混合することによって製造することができる。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
また、本発明におけるトナーをカラートナーとして用いる場合には、キャリアと混合して使用されることが好ましいが、そのキャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、またはそれ等の表面に樹脂コーテイングを施したものが使用される。また、キャリアとトナーとの混合割合は、適宜設定することができる。
次に、本発明における保護層(感光体表面に形成する耐摩耗層)について説明する。
本発明の感光体としては表面層の傷などに対する耐性を持たせ長寿命化をはかるために高強度の保護層を設けることが好ましい。この保護層としては、バインダ樹脂中に導電性微粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性微粒子を分散させたもの、シリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができるが、膜強度、電気特性、および画質維持性などの観点から、架橋構造を有するものが好ましい。
感光体の表面に架橋構造を有する樹脂を含ませることにより、表面の硬度が高く耐磨耗性に優れ、ブラシ摺擦により発生する傷が抑制され、ブラシ毛先の傷に沿った不均一な摺擦を抑制し感光体を均一に摺擦することが可能となるため、前記受酸効果を有する複合微粒子による放電生成物除去効果をより均一に長期間に渡って発現させることができる。
架橋構造を形成するものとしては種々の材料を用いることができるが、特性上フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく、特にフェノール樹脂またはシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。
なお、保護層には、架橋構造を有する樹脂以外にも必要に応じて架橋構造を有さないバインダ樹脂や、導電性微粒子、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子が含まれていてもよく、保護層の形成に際しては、必要に応じてシリコンやアクリルなどのハードコート剤を使用することができる。
なお、保護層の形成方法の詳細については後述するが、保護層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む保護層形成用溶液が用いられる。
さらに、電気特性や画質維持性などの観点から、架橋構造を有する樹脂としては、電荷輸送性を有している(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ものであることが好ましい。
このような電荷輸送能を有する構造単位を含み、且つ、架橋構造を有する樹脂を構成する電荷輸送能を有する構造単位は、架橋構造を有する樹脂としてメチロール基を有するフェノール誘導体またはシロキサン系樹脂と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基およびアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有するものがより好ましい。更に当該フェノール誘導体含有層の赤外吸収スペクトルが下記の一般式(1)で示される条件を満たすことで電気特性に優れ高画質化が図れるのでより好ましい。
(P2/P1)≦0.2 … (1)
なお、上記一般式(1)中、P1は1560cm-1〜1640cm-1に存在する最大吸収ピークの吸光度を、P2は1645cm-1〜1700cm-1に存在する最大吸収ピークの吸光度を示す。
上記一般式(1)で上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、メチロール基を有するフェノール誘導体を用いて塗膜を形成する過程において、フェノール誘導体のメチロール基のうちの一部は、ホルミル基等の酸化物になるものと考えられる。
このようなホルミル基等の酸化物は、感光体中の電荷輸送を妨げるキャリアトラップとして作用し、感光体の電気特性を低下させると考えられる。ここで、赤外吸収スペクトルにおいて、1560cm-1〜1640cm-1-1に存在する最大吸収ピーク(P1)は、フェノール誘導体の芳香族C−C伸縮振動に相当する。
また、赤外吸収スペクトル1645cm-1〜1700cm-1に存在する最大吸収ピーク(P2)は、ホルミル基等の酸化物に由来するものと考えられる。
つまり、吸光度比(P2/P1)が小さい感光体は、感光体中のホルミル基等の酸化物が少なく、キャリア輸送性に優れると考えられる。そして、本発明の感光体は、上記特定の材料を用い、且つ吸光度比(P2/P1)が0.2以下であることから、電気特性に優れ、高画質化が達成できたものと考えられる。なお、本発明の感光体は、電気特性と共に機械強度も優れており、この点も高画質化が達成できた要因であると考えられる。
なお、吸光度比(P2/P1)は、0.18以下であることが好ましく、0.17以下がより好ましい。吸光度比(P2/P1)が0.2を超えると、キャリア輸送性が低下し、感光体の電気特性が不十分となり、画質が低下する。
上記メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類、若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、またはそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒またはアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。
なお、本明細書では、分子の構造単位の繰返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。
また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化または除去することが好ましい。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体としては、フェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基およびアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料としては、下記一般式(2)、(3)、(4)、または(5)で示される化合物であることが好ましい。
F−[(X1)m1−(R1)m2−Y]m3 … (2)
なお、上記一般式(2)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X1は酸素原子または硫黄原子を、R1はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Yは水酸基、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)またはアミノ基(−NH2)を示し、m1およびm2はそれぞれ独立に0または1を、m3は1〜4の整数を示す。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 … (3)
上記一般式(3)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子または硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NHまたはCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2およびn3はそれぞれ独立に0または1を、n4は1〜4の整数を示す。
F−[D−Si(R3)(3-a)Qa]b … (4)
上記一般式(4)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可撓性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)または置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。
また、上記可撓性を有する2価の基Dとしては、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可撓性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β−2−、−CγH2γ-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、および、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。
また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 … (5)
上記一般式(5)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子または硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NHまたはCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2およびn3はそれぞれ独立に0または1を、n4は2〜4の整数を示す。
上記一般式(2)〜(5)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基Fとしては、下記の構造式(VI)で示される化合物が好ましい。
ここで、上記構造式(VI)中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれ独立に置換または未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基またはアリーレン基を示し、且つAr1〜Ar5のうち1〜4個は、上記一般式(2)〜(5)で示される化合物における−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、または、−[D−Si(R3)(3-a)Qa]で示される部位と結合手を有する。
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物およびカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属または金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀およびステンレス等、またはこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、およびアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の観点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
また、保護層には、保護層の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(6)で示される化合物を添加することもできる。
Si(R30)(4-c)Qc … (6)
上記一般式(6)中、R30は水素原子、アルキル基または置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
上記一般式(6)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。保護層の膜の強度を向上させるためには3および4官能のアルコキシシランが好ましく、可撓性、成膜性を向上させるためには1および2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、およびAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、保護層には、その強度を高めるために、下記の一般式(7)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R31)(3-d)Qd)2 … (7)
上記一般式(7)中、Bは2価の有機基を、R31は水素原子、アルキル基または置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を示す。
また、保護層には、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、トルク低減、塗布膜表面の均一性向上のため、下記構造式(VII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることもできる。
上記構造式(VII)中、A1およびA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。
構造式(VII)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
更に、感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。
上記の微粒子の一例として、ケイ素原子含有微粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカおよびシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒子径が好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは10nm〜30nmであり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1質量%〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1質量%〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素原子含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、平均粒子径が好ましくは1nm〜500nm、より好ましくは10nm〜100nmであり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子およびシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1質量%〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.5質量%〜10質量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や、“第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示されるような、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。保護層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテルまたはホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」(以上住友化学社製)、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」(以上チバスペシャリティーケミカルズ社製)、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」(以上旭電化製)などが挙げられる。
ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な、例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
また、保護層には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を含有させてもよい。この場合、絶縁性樹脂は、所望の割合で添加することができ、これにより、電荷輸送層6との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥等を抑制することができる。
次に、第3および第4の実施例について説明する。
第3および第4の実施例では、図1に示すように、現像位置15’に配備され、トナー粒子と磁性キャリアとを含む現像剤を保持し、感光体ドラム11表面に現像剤を供給し、感光体ドラム11表面に担持された静電潜像を現像する現像器15を備えた画像形成装置100が用いられた。
なお、第3および第4の実施例で用いた画像形成装置における2つのクリーニングロールのうち一方のクリーニングロールには、次に示す「磁性を有するブラシ繊維が植毛された」クリーニングロールが用いられた。
図3は、磁性を有するブラシ繊維が植毛されたクリーニングロールの概略構成図である。
図2に示した2つのクリーニングロール21,22のうちの感光体ドラム11の回転方向下流側のクリーニングロール22に代わり、実施例3,4では、図3に示すように、感光体ドラム11の回転方向下流側に、クリーニングロール34が備えられている。
このクリーニングロール34は、内部に永久磁石31を固定配置し、その外周に回転可能な円筒状の非磁性体のスリーブ32を設け、そのスリーブ32上に磁性キャリアを担持させてトナーを回収する磁気ブラシ方式のクリーニングロールである。
スリーブ32の内部に配置された永久磁石31はスリーブ32の軸方向に長い円柱形状のものであって、回動不能に固定されている。この永久磁石31は、その周方向に3つの磁極、即ちS1極、N1極、N2極を有しており、主極であるS1極は感光体ドラム11に最近接した位置にあり、N1極、N2極はS1極を挟んで周方向にS1極からそれぞれ60°離れた位置に形成されている。具体的には、主極(S1極)の磁束密度は850ガウスであり、N1極、N2極の磁束密度はいずれも650ガウスである。各極の磁束密度、および着磁パターンはこれに限られるものではない。
このスリーブ32には磁性を有するブラシ繊維33が植毛されており、そのブラシ繊維33が感光体ドラム11表面に存在していた磁性キャリアを磁気的に保持することで、保持した磁性キャリアを上記研磨粒子として作用させるように構成されている。
ここで、磁気ブラシを用いたクリーニングシステムについて説明する。
従来から、像担持体表面の残留トナーを除去するクリーニングシステムにおいて、磁気ブラシを用いたクリーニングユニットが知られている。内部に磁石を固定配置し、その外周に回転可能な円筒状の非磁性体のスリーブを設け、そのスリーブ上に磁性キャリアを担持させてトナーを回収する磁気ブラシ方式が実用化されている。この磁気ブラシを用いたクリーニングユニットを前述の導電性ブラシを用いたクリーニングユニットの下流側に設置することによって、前者の導電性ブラシで像担持体上の残留トナーをクリーニングし、後者の磁気ブラシで像担持体表面に付着した放電生成物やタルク等を除去する組み合わせが提案されている。
さらに、画像形成以外の所定のタイミングで磁気ブラシ手段にバイアスを印加し動作させることによって、像担持体表面に付着している放電生成物やタルク等を除去し、放電生成物やタルク等による画質劣化を防止する方法も提案されている。ここで、磁気ブラシは、導電性ファーブラシやクリーニングブレードといったクリーニング装置の上流側あるいは下流側のいずれにに設置してもよい。さらに、磁気ブラシ手段を着脱動作することにより磁気ブラシ手段の長寿命化を達成することができる。
しかし、スリーブ表面に磁性キャリアを保持する場合、スリーブから脱落した磁性キャリアが像担持体表面に付着して、像担持体表面の電荷が散逸し、プリント画像に白抜けが発生するという問題がある。また、付着した磁性キャリアが像担持体表面へ埋まり込み、像担持体ドラムのみならずクリーニング部材を傷つけ、寿命を縮める可能性もある。
ここで、磁気ブラシの一種として、非磁性材料からなる回転可能なスリーブ表面に磁性を有するブラシ繊維を植毛した方式が知られている。この磁気ブラシは非磁性体のスリーブと、そのスリーブの外周に沿ってスリーブの全周に植毛された磁性を有するブラシ繊維(以下これを磁性毛という)を有している。スリーブの外径は10mm〜50mm程度である。このスリーブは、感光体ドラムの周速よりも速い周速(例えば160mm/s〜480mm/s)で回転する。スリーブの回転方向は、感光体ドラムの回転に従動する順方向に回転するウィズ(with)モード、あるいは像担持体ドラムの回転に対抗する逆方向に回転するアゲインスト(against)モードのいずれであってもよい。スリーブに植設される磁性毛としては、例えば、アクリル繊維表面にニッケルメッキを施したもの、ステンレス(SUS304)を細いファイバ状に形成したもの、あるいはポリプロピレン繊維中にフェライトを分散したもの等を採用することができる。
ここで、上記磁性毛が、飽和磁化率10emu/g以上、残留磁化率80emu/g以下、および保磁力1800エルステッド(Oe)以下からなる群のうち少なくとも1つを満足する磁気特性を有するものであることが好ましい。磁性キャリアとしての磁性粒子により磁気ブラシの表面と像担持体ドラムとの表面との間に穂を形成し、これにより像担持体ドラムの表面に付着している放電生成物やタルク等の除去を行う。このように、磁性毛をもつ磁性ブラシに磁性キャリアを保持させ、かき取り性を大きくすることにより、像担持体表面の放電生成物やタルク除去性を向上させつつ、磁性キャリアの付着や埋まり込みを防止することが可能である。
しかしながら単純に磁性ブラシを用いた場合には、磁性キャリアを保持したブラシ毛先がレコード針のように像担持体表面をなぞることにより、像担持体表面の摩耗を促進し、像担持体の寿命は短くなる。場合によっては像担持体表面にひっかき傷(スクラッチ)が発生し、画質の著しい低下を招くこととなる。特に、像担持体が従来用いられているような表面の軟らかい有機感光体である場合、その傾向は顕著である。
第3および第4の実施例は、上記のような状況に対応するものであり、像担持体上の残留トナーや放電生成物に対する高いクリーニング性能と、良好なプリント画質を長期間に渡って維持することが可能なクリーニング装置を提供する。
以下に、上記の磁気ブラシを本発明のクリーニングロールに適用した第3〜4の実施例について説明する。
実施例3および実施例4では、画像形成装置100(図1参照)は、現像位置15’に配備され、トナー粒子と磁性キャリアとを含む現像剤を保持し、感光体ドラム11表面に該現像剤を供給し、感光体ドラム11表面に担持された静電潜像を現像する現像器15を備え、一方のクリーニングロールは、磁性を有するブラシ繊維が植毛されたものであり、該ブラシ繊維が感光体ドラム11表面に存在していた磁性キャリアを磁気的に保持することで、保持した磁性キャリアを前記研磨粒子として作用させるものとして構成されている。
実験機としては、図2に示すクリーニング装置20を備えた画像形成装置100が用いられた。このクリーニング装置20は、感光体ドラム11との相対位置を固定して取り付けられており、感光体ドラム11表面に当接配置された導電性ブラシ部材からなるクリーニングロール21および磁性ブラシ部材からなるクリーニングロール22と、これらクリーニングロール21,22に当接配置されたディトーニングロール23,24と、これらディトーニングロールに当接配置されたスクレーパ25,26とを有するクリーニングユニットである。
以下、実施例3〜4で用いたクリーニングシステムについて述べる。
表6は、実施例3〜4に使用した3種類の磁性毛(1)〜(3)の特性を示す表である。表6中の保持力、飽和磁化率、残留磁化率はそれぞれ測定磁場の強さ:10KOeでの測定値である。
実施例3〜4では、次に示す3種類のクリーニングシステム1〜3を用いた。
<クリーニングシステム1>
[第1のクリーニングユニット]
(ブラシ)
ブラシ材質:導電性ナイロン、太さ:2デニール(約17μm)、電気抵抗:1.0×108Ω、毛足長さ:3.5mm、密度:1.2万本/inch2、感光体への食い込み量:約0.5mm、周速:171mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対し逆回転、ブラシ印加バイアス:260Vとした。
(回収ロール)
材質:フェノール樹脂に導電性カーボンを分散、電気抵抗:1.0×108Ω、曲げ弾性率:100Mpa、磨耗量:2.0mg、ロックウェル硬度(M):120、ブラシへの食い込み量:1.0mm、周速:201mm/s、印加バイアス:660Vとした。
(スクレーパ)
材質:SUS304、厚み:80μm、食い込み量:1.3mm、フリーレングス:8.0mmに設定した。
[第2のクリーニングユニット]
(ブラシ)
材質:導電性ナイロン、太さ:2デニール(約17μm)、電気抵抗:1.0×105Ω、毛足長さ:4.5mm、密度:1.2万本/inch2、感光体への食い込み量:約1.6mm、周速:177mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対し逆回転、ブラシ印加バイアス:−400Vとした。
(回収ロール)
材質:フェノール樹脂に導電性カーボンを分散、電気抵抗:1.0×108Ω、曲げ弾性率:100Mpa、磨耗量:2.0mg、ロックウェル硬度(M):120、ブラシへの食い込み量:2.1mm、周速:320mm/s、印加バイアス:−800Vに設定した。
(スクレーパ)
材質:SUS304、厚み:80μm、食い込み量:1.3mm、フリーレングス:8.0mmに設定した。
<クリーニングシステム2>
[第1のクリーニングユニット]
クリーニングシステム1と同様とした。
[第2のクリーニングユニット]
(磁性ロール)
材質:SUS304、外径:12mmφ、主極(S1極)の磁束密度は850ガウスであり、N1極、N2極はそれぞれS1極をはさんで60°の位置にあり、磁束密度はいずれも650ガウスとなる磁性スリーブを用いた。また周速:177mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対し逆回転とした。
(スクレーパ)
材質:SUS304、厚み:80μm、フリーレングス:8.0mmに設定し、磁性ロール面からの距離を0.2mmに固定し、規定以上の大きさをもつ磁性キャリア穂立ちを掻き取るものとした。
<クリーニングシステム3>
[第1のクリーニングユニット]
クリーニングシステム1と同様とした。
[第2のクリーニングユニット]
(ブラシ)
表6の磁性毛(1)から(3)に示した磁性ブラシを用いた。また感光体への食い込み量:約1.6mm、周速:177mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対し逆回転、ブラシ印加バイアス:−400Vとした。
(回収ロール)
材質:フェノール樹脂に導電性カーボンを分散、電気抵抗:1.0×108Ω、曲げ弾性率:100Mpa、磨耗量:2.0mg、ロックウェル硬度(M):120、ブラシへの食い込み量:2.1mm、周速:320mm/s、印加バイアス:−800Vに設定した。
(スクレーパ)
材質:SUS304、厚み:80μm、食い込み量:1.3mm、フリーレングス:8.0mmに設定した。
次に、実施例3〜4で用いられる感光体D〜Eについて説明する。
(感光体D)
先ず、84mmΦの円筒状アルミニウム基材を準備し、このアルミニウム基材をセンタレス研磨装置により研磨して表面粗さをRz=0.6μmとした。このセンタレス研磨処理が施されたアルミニウム基材を洗浄するために、脱脂処理、2質量%水酸化ナトリウム溶液で1分間エッチング処理、中和処理および純水洗浄をこの順に行った。次に、このアルミニウム基材の表面に、10質量%硫酸溶液により陽極酸化膜(電流密度1.0A/dm2)を形成した。水洗後、80℃の1質量%酢酸ニッケル溶液に20分間浸漬して封孔処理を行った。更に、純水洗浄、乾燥処理を行った。このようにして、表面に7μmの陽極酸化膜を形成されたアルミニウム基材を得た。
次に、X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°および28.3°に強い回折ピークを持つクロロガリウムフタロシアニンを1部、ポリビニルブチラール(エスレックBM−S、積水化学社製)を1部、および酢酸n−ブチルを100部混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーカーで1時間処理して分散させ、電荷発生層形成用塗布液を得た。この塗布液を、得られたアルミニウム基材上に浸漬コートして100℃で10分間加熱乾燥し、膜厚約0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、前述の構造式(I)(実施例1参照)で示されるベンジジン化合物を2.5部、同じく構造式(II)(実施例1参照)で示される構造単位を有する高分子化合物(粘度平均分子量39,000)を3部およびクロロベンゼンを20部混合し溶解させ、電荷輸送層形成用塗布液を得た。
この塗布液を電荷発生層上に浸漬コーティング法で塗布し、110℃で40分の加熱を行ない、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。こうして陽極酸化膜が形成されたアルミニウム基材上に電荷発生層および電荷輸送層を形成し、これを感光体Dとした。
<実施例3>
前述の構造式(III)(実施例1参照)で示される化合物を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、およびイソプロパノ−ルを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬コーティング法で感光体Dの電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmの保護層を形成した。得られた感光体を感光体D−1とした。なお、本実施例においては、乾燥時の雰囲気を特に記載していない場合は空気雰囲気で行ったものである。
<実施例4>
前述の構造式(IV)(実施例1参照)で示される化合物を5部、イソプロピルアルコールを15部、テトラヒドロフランを9部、および蒸留水を0.9部混合し、それにイオン交換樹脂(アンバーリスト15E)を0.5部加え、室温で攪拌することにより2時間加水分解を行った。さらに、ブチラール樹脂を0.5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−2211、群栄化学社製)を5部、サノールLS2626を0.2部、およびネイキュア4167を0.5部加え保護層形成用塗布液を調製した。この保護層形成用塗布液を浸漬コーティング法で感光体1の上に塗布して130℃で30分乾燥し、膜厚3μmの保護層を形成した。得られた感光体を感光体D−2とした。
図4は、初期状態でのブラシクリーニング性能を示す図である。
図4に示すシステム1〜3cは、それぞれ異なるクリーニングブラシおよびクリーニングロールを用いたものである。
すなわち、システム1は感光体ドラム11(図2参照)として実施例3に示した感光体D−1を用い、クリーニング装置として上記クリーニングシステム1を用いたものである。
システム2は感光体ドラム11として実施例4に示した感光体D−2を用い、クリーニング装置として上記クリーニングシステム2を用いたものである。
システム3は感光体ドラム11として実施例4に示した感光体D−2を用い、クリーニング装置として上記クリーニングシステム3を用いたものである。なお、システム3a〜3cは、磁性ブラシとして、表7に示す磁性毛aから磁性毛cをそれぞれ用いたものである。
クリーニング性能は、感光体ドラム11の軸方向に4.5g/mm2(以下、DMAとする)から0.5g/mm2まで連続的に変化させたトナーバンドをバイアス現像により現像し、そのクリーニングを実施することにより評価した。
クリーニング実施後に感光体ドラム11表面に残留したトナーバンドの軸方向長さを評価基準とした。残りトナーバンド長さが3cm以下であれば、100%ベタ画像のクリーニングが可能である。
図4に示すように、いずれのクリーニングシステムでも残りトナーバンド長さ3cm以下を満たす結果が得られた。
図5は、画像形成工程後のクリーニング試験結果を示す図である。
このテストでは、感光体ドラム11(図1参照)上に少なくとも30000回の帯電、現像、クリーニングの一連の工程を行った後、前記のクリーニング試験を行った。
なお、5回の帯電を行う度に、感光体ドラム11の軸方向に1.0g/mm2から0g/mm2まで連続的に変化させたトナーバンドを、プロセス方向に130mmの長さでバイアス現像により一度現像した。
図5に示すように、導電性ブラシを用いたシステム1では、顕著なクリーニング不良が発生し、残りトナーバンド長さは約14cmに達した。システム3bおよびシステム2がこれに次ぎ、システム3aはまずまず、システム3cではクリーニング不良が発生しなかった。
図6は、高温高湿環境下に曝した感光体ドラムを用いてプリント画質評価を行った結果を示す図である。
感光体ドラム11は帯電後、28℃、85RH%の環境下に24h放置した。実験機としてはCOLOR DOCUTECH 60V(富士ゼロックス社製)を用い、同様の温湿度条件下で画像密度20%のハーフトーン画像をプリントアウトした。像流れ、白点の発生については目視により評価しグレード付けを行った。グレード1以下の場合は画質に問題のないレベルである。
図6に示すように、導電性ブラシを用いたクリーニングシステム1では像流れの発生が顕著であった。
また、従来の磁性ロールを用いたクリーニングシステム2では、磁性ロール表面に保持された磁性キャリアおよび該磁性キャリアとともに保持されたトナーによって、放電生成物やタルクの除去を行うことができ、像流れの発生をある程度防止することができるたが、充分に保持できなかった磁性キャリアの感光体ドラム11表面への付着、埋まりこみも起こり、それに起因する白点の発生が顕著である。
一方、磁性毛をもつ磁性ブラシを用いたシステム3a〜3cでは、磁性キャリアを磁性ブラシ表面に充分な力で保持することができ、像流れ、白点ともに効果的に改善されていることがわかる。
表7は、以上の結果をまとめた一覧表である。
表7に示すように、初期クリーニング性、ストレスがかけられた経時後のクリーニング性、像流れ、白点、スクラッチ(感光体ドラム表面荒れ)の各評価項目について、本実施形態のシステム3a〜3cでは、満足すべき結果(○印)またはほぼ満足すべき結果(△印)が得られたが、導電性ブラシを用いたクリーニングシステム1および従来の磁性ロールを用いたクリーニングシステム2では、経時後のクリーニング性、像流れ、白点について不満足な結果(×印)が多数認められた。なお、スクラッチの評価は目視により行った。
この実施例3および4では、本発明の保護層を設けた感光体ドラムを用いることにより、感光体ドラム表面のスクラッチはいずれのクリーニングシステムを用いた場合でもその程度は極く軽いものであった。放電生成物やタルク等の付着物に対する高い掻取り性と、感光体ドラム表面の荒れやスクラッチの防止が両立していることがわかる。