以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
本実施形態の画像形成装置1は、フルカラータンデム方式を採用した画像形成装置であって、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナーそれぞれに対応した、4つのトナー像形成ユニットを用いて、中間転写ベルトの送りに同期させて各トナー像形成ユニットでそれぞれの色のトナー像を形成し、それらトナー像を中間媒体としての中間転写ベルト上に重ね合わせ(1次転写)、中間転写ベルト上に重ね合わせたトナー像を記録媒体である用紙に転写(2次転写)し、定着するものである。
図1に示す画像形成装置1は、4つのトナー像形成ユニット10、4つの1次転写ロール20、3つの支持ロール31に支持されて反時計回りの方向に循環移動する半導電性の中間転写ベルト30、2次転写を行う一括転写装置40、および未定着トナー像を用紙に定着させる定着装置50を備えている。
4つのトナー像形成ユニット10は、中間転写ベルト30の循環方向に並んで配置されており、各トナー像形成ユニット10には、時計回りに回転する感光体ドラム11が配備されている。図1に示す感光体ドラム11の表面は、中間転写ベルト30に接している。中間転写ベルト30が感光体ドラム11に接する領域には、中間転写ベルト30を感光体ドラム11と挟み込むように一次転写ロール20が配備されており、この領域が1次転写領域である。
ここで、図1とともに図2も用いて、本実施形態の画像形成装置の説明をさらに進める。
図2は、図1に示す4つのトナー像形成ユニットのうちの一つのトナー像形成ユニットを図1よりも詳しく示した図である。
図2に示す画像形成装置1は、回転軸11aを中心にして時計回りに回転する感光体ドラム11を備え、この感光体ドラム11の周囲には、帯電器12、露光器13、現像装置14、転写ロール20、クリーニング装置15、および除電ランプ16も備えられている。 感光体ドラム11は、円筒上の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を積層してなるものであって、保護層の表面は、この感光体ドラム11の最表面に相当する。この図2では、これら複数の層のうち最表面に位置する保護層111が示されている。この保護層111は、詳しくは後述するが、架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有した、電荷輸送能を有する層であり、硬度が高く図2に示す感光体ドラム11の耐久性が高められている。
帯電器12は、感光体ドラム11の表面に接触した状態で回転する帯電ロール121と、その帯電ロール121に電力を供給する電源122を備えている。この電源122は、帯電ロール121に、直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電バイアスを印加する。帯電ロール121は、感光体ドラム11に接触して回転する半導電性のものであり、感光体ドラム11との接触部近傍の微小空隙で放電を発生させることにより感光体ドラム11を帯電させる。なお、帯電ロール121に代えてブレード状の帯電部材、ベルト状の帯電部材、ブラシ状の帯電部材、磁気ブラシ状の帯電部材などが適用可能である。また、帯電ロール121やブレード状の帯電部材については感光体ドラム11に対し、接触状態に限らずある程度の空隙(100μm以下)を有した近接状態として配置しても構わない。
露光器13は、感光体ドラム11の表面に向けて、画像情報に基づくレーザ光を照射するものである。この画像情報は、画像読み取り装置31にて読み取った情報を処理部32で処理することにより得られたものである。
現像装置14は、トナー粒子を収容したトナー収容体141と、トナー収容体141中のトナー粒子を担持して感光体ドラム11の表面に接した状態で回転する現像ロール142を有する。また、トナー収容体141には、トナー粒子の他に、受酸効果を有する化合物微粒子がその一部を表面に露出させた状態で内包された樹脂粒子が収容されている。ここではこれ以上のトナー収容体141についての説明は省略し、トナー収容体141についての詳しい説明は後述することにする。感光体ドラム11の表面には、この現像装置14によってトナー像が形成される。
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行われる際には、感光体ドラム11の表面は、まず、帯電器12によって一様に帯電される。次に、露光器13によって画像情報に基づくレーザー光が照射され、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像に、トナー収容体141に収容されたトナー粒子が現像ロール142によって供給され、感光体ドラム11の表面にはトナー像が形成される。こうして形成されたトナー像は、1次転写領域において感光体ドラム11の表面から中間転写ベルト30の表面(被転写面)に転写される。各トナー像形成ユニット10で形成されたトナー像は、中間転写ベルト30上で1つに重なり合ったトナー像となる。
また、図1に示す一括転写装置40は、中間転写ベルト30のトナー像が転写される面側に圧接配置された二次転写ロール41と、中間転写ベルト30の裏面側に配置されたバックアップロール42を備えており、これら2つのロール41,42で中間転写ベルト30を挟みこんでいる。これら2つのロール41,42間が二次転写領域になる。
さらに、図1に示す画像形成装置1には、用紙トレイ60が配備されており、用紙トレイ60に収容された用紙Pは、フィードロール61によって用紙トレイ60から送り出され、所定のタイミングで二次転写領域へと送り込まれる。二次転写領域では、中間転写ベルト30上で1つに重なり合ったトナー像が、送り込まれてきた用紙P上に転写される。定着装置50は、加熱機構511を有する定着ロール51、および定着ロール51に対向するように設けられた圧力ロール52を備えている。互いに対向する定着ロール51と圧力ロール52との間には、2次転写位置を通過した用紙Pが搬送されてくる。用紙P上のトナー像を構成するトナーは、定着ロール51の加熱機構511により溶融され用紙Pに定着する。
また、一括転写装置40の下流側にはベルトクリーナ70が設けられており、中間転写ベルト30上の残留トナーは、このベルトクリーナ70によって中間転写ベルト30上から除去される。
一方、図2示す感光体ドラム11の、1次転写領域を通過した表面11bには、放電生成物や、1次転写領域において中間転写ベルト30表面へ移行することができなかった残留トナーが存在する。放電生成物は、感光体ドラム11の表面を帯電器12によって帯電する際に生じた異物であり、感光体ドラム11の表面11bに付着している。また、トナー収容体141に収容された樹脂粒子は、トナー粒子の表面に付着した状態でトナー粒子とともに感光体ドラム表面11bへ供給されるが、感光体ドラム表面11bで、トナー粒子から離脱し、感光体ドラム11の、1次転写領域を通過した表面11bに残留している。
図2に示すクリーニング装置15は、これらの残留トナーや放電生成物といった異物を除去するための装置であり、1次転写領域よりも感光体ドラム回転方向下流側であって帯電ロール121よりも感光体ドラム回転方向上流側の位置に配備されたものである。このクリーニング装置15は、クリーニングブレード151と廃トナー搬送オーガ152を備えている。
クリーニングブレード151は、感光体ドラム11の回転軸11aの延在方向に延びる板状のものであって、ブレードホルダ1511によって保持されている。以下、クリーニングブレード151の、ブレードホルダ1511によって保持されている部分をブレード後端と称し、反対側の端をブレード先端と称する。このブレード先端151aは、感光体ドラム11の、中間転写ベルト30にトナー像が転写された後の保護層111に圧接している。クリーニングブレード151は、感光体ドラム11が回転することで、感光体ドラム11の保護層111を削り取るとともにトナー粒子を堰き止めようとする。また、クリーニングブレード151は、受酸効果を有する化合物微粒子を内包した樹脂粒子を堰き止める。詳しくは後述するが、クリーニングブレード151によって堰き止められた樹脂粒子は、ブレード先端151aと感光体ドラム表面11bとの間(以下、この間をブレードニップ領域と称することにする)に入り込みブレードニップ領域に滞留する。ブレードニップ領域に滞留した樹脂粒子の表面には、受酸効果を有する化合物微粒子の一部が露出しており、感光体ドラム表面に存在するNOX等の放電生成物は、その化合物微粒子の露出した部分に付着する。感光体ドラム11から除去された異物は、廃トナー搬送オーガ152によりクリーニング装置15の外まで搬送される。 ブレード先端151aは、反発弾性率が20%以下であるとともにJISA硬度が80°以上である。ここにいう反発弾性率およびJISA硬度はいずれもJIS K6253:97に準ずるものであり、それらの値は25℃における測定値である。反発弾性率を20%以下にすることで、ブレード先端151aの、感光体ドラム表面11bとの引っかかりに起因した振動、いわゆるスティック&スリップの発生を抑制することができ、樹脂粒子の、ブレードニップ領域における滞留性が向上し、樹脂粒子に内包された受酸効果を有する化合物微粒子による放電生成物の除去効果がより発揮される。また、ブレード先端151aの硬度を高めることで、ブレード先端151aにおける感光体ドラム回転方向下流側への歪み量が抑えられ、樹脂粒子はブレード先端151aに堰き止められる。堰き止められた樹脂粒子には、ブレード先端151aによる感光体ドラム回転方向上流側へ向けての押し戻し力が作用し、樹脂粒子の、ブレードニップ領域における滞留性が向上し、樹脂粒子に内包された受酸効果を有する化合物微粒子による放電生成物の除去効果がより発揮される。
このクリーニングブレード15の材料としては公知のゴム材料を用いることができる。例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いることができる。その中で耐摩耗性に優れていることからポリウレタン弾性体を用いる事が好ましい。ポリウレタン弾性体としては、一般にイソシアネートとポリオール及び各種水素含有化合物との付加反応を経て合成されるポリウレタンが用いられる。ポリオール成分として、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオールや、アジペート系ポリオール、ポリカプロラクタム系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等のポリエステル系ポリオールを用い、ポリイソシアネート成分として、トリレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネートを用いてウレタンプレポリマーを調製する。次いで、このウレタンプレポリマーに硬化剤を加えて、所定の型内に注入し、架橋硬化させた後、常温で熟成することによって製造されている。上記硬化剤としては、通常、1,4−ブタンジオール等の二価アルコールとトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上の多価アルコールとが併用される。
クリーニング装置15によってクリーニングされた感光体ドラム11は、除電ランプ16によって除電される。
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。この第2実施形態の画像形成装置も、図1を用いて説明した画像形成装置と同じく、フルカラータンデム方式を採用した画像形成装置であって、4色のトナーそれぞれに対応した、4つのトナー像形成ユニットを備えており、各トナー像形成ユニットにはクリーニング装置が配備されている。本実施形態におけるクリーニング装置は、ブラシ方式を採用したものである。ブラシ方式では、磁気ブラシやファーブラシなど従来のブラシを用いることが可能であるが、省スペースという点においてファーブラシが好ましい。またトナーのクリーニング性を確実にするために、複数の導電性ファーブラシから構成され、少なくとも1つのブラシにはトナーの正規の帯電極性と逆極性のバイアスが印可され、少なくとも別の一つのブラシにはトナーの正規の極性と同極性のバイアスが印可されたものであることが好ましい。何故ならば1次転写後に感光体ドラム表面に存在する残留トナーは、1次転写時の放電履歴を受けて、一部の残留トナーの極性が正規の極性と逆に反転(逆極化)するため、正負両極性を帯びたトナーが混在することにより、単独のブラシでは完全にトナーを除去することが出来ないからである。また最上流側のファーブラシにトナーと異なる極性のクリーニングバイアスを印可し、少なくとも最下流側のファーブラシにトナーと同極性のクリーニングバイアスを印加することで、フィルミングおよび画像ボケ抑制効果を高めることができる。この理由は必ずしも明確ではないが、本発明者らは以下のように推察する。
受酸効果を有する化合物微粒子を内包した樹脂粒子は、トナー中に含まれるシリカに対し帯電列としてポジ側にあることより、トナーとの摩擦帯電で弱帯電または逆極帯電になっていると推定され、小径であることも加えて1次転写では被転写体に転写されにくく、クリーニング装置へ選択的に搬送される。残留トナーが多い場合、残留トナーがブラシ繊維と感光体間でのスペーサ材となることで、上記樹脂粒子の、クリーニングブラシによる感光体ドラム表面11bへの摺擦が低下する恐れがある。そこで、残留トナーの大半はもとの帯電極性のままで存在するため、最上流側の第1のファーブラシにトナーと逆極性のクリーニングバイアスを印加し、スペーサ材となる残留トナーの感光体ドラム上からの除去を行う。前述の弱帯電または逆極帯電であることで、第1のファーブラシで上記樹脂粒子は回収されにくく、第2のファーブラシに搬送され、第1のファーブラシで上記樹脂粒子の摺擦の阻害となるスペーサトナーを除去しているため、下流側の第2以降のファーブラシにおける、上記樹脂粒子の感光体の摺擦性を向上させることができ、より確実に放電生成物の除去ができると推定する。
図3は、第2実施形態の画像形成装置に備えられた4つのトナー像形成ユニットのうちの一つのトナー像形成ユニットを示す図である。
以下の説明では、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
図3に示すクリーニング装置15は、2本のクリーニングブラシ153,154と、2本の回収ロール155と、2枚のスクレーパ部材156を有する。2本のクリーニングブラシ153,154はいずれも、感光体ドラム11の回転軸11aと平行に延びた中心軸1531,1541から放射状に延びた毛(ブラシ繊維)1532,1542を有する。これらの毛1532,1542に用いる繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維が挙げられ、ベルトロン(カネボウ社製)、SA−7(東レ社製)、UUナイロン(ユニチカ社製)等の市販品を使用することができる。これらの毛の太さは、好ましくは30デニール以下、より好ましくは20デニール以下、さらに好ましくは0.5〜10デニールである。また、毛の密度は、好ましくは20,000本/6.45cm2以上、より好ましくは60,000本/6.45cm2以上である。
また、これらのクリーニングブラシ153,154の毛1532,1542は導電性のものである。これらの毛1532,1542に導電性を付与する方法としては、繊維に導電性粉末やイオン導電材を配合する方法、繊維の内部又は外部に導電層を形成する方法等が挙げられる。また、導電性が付与された繊維の抵抗値は、繊維単体で102〜109Ω・cmであることが好ましい。
これらのクリーニングブラシ153,154は、感光体ドラム11の回転方向に並んで配備されており、以下、必要に応じて、感光体ドラム11の回転方向上流側に配備されたクリーニングブラシを第1クリーニングブラシ153と称し、回転方向下流側に配備されたクリーニングブラシを第2クリーニングブラシ154と称することにする。いずれのクリーニングブラシ153,154も、毛1532,1542の先端が感光体ドラム表面11bおよび回収ロール155の周面の双方に食い込んだ状態で中心軸1531,1541を中心にして回転し、それらの毛1532,1542によって感光体表面110を摺擦する。クリーニングブラシ153,154の、感光体ドラム表面11bへの食い込み量は、好ましくは0.5〜2.0mm、より好ましくは0.9〜1.8mmである。
第1クリーニングブラシ153には、現像装置14のトナー収容体141に収納されたトナー粒子の帯電極性とは逆極性の正側のクリーニングバイアスが印加されており、第2クリーニングブラシ154には、負側のクリーニングバイアスが印加されている。したがって、正規の負極に帯電した残留トナー粒子は、第1クリーニングブラシ153の毛1532に電気的に引き寄せられるとともにこの毛1532によって掻き取られる。一方、正極に帯電した、残留トナー粒子は、第2クリーニングブラシ154の毛1542に電気的に引き寄せられるとともにこの毛1542によって掻き取られる。受酸効果を有する化合物微粒子を内包した樹脂粒子は、クリーニングブラシ153,154の毛1532,1542の先端と感光体ドラム表面11bとの間に入り込み滞留することで、感光体ドラム表面11bに存在する放電生成物が、滞留した樹脂粒子の表面に一部が露出した上記化合物微粒子に付着し、機械的掻き取り力が弱いクリーニングブラシを用いても、放電生成物に起因する画像流れといった画質欠陥の発生が抑えられ、高画質な画像を得ることができる。しかも、クリーニングブラシ153,154は、クリーニング性能の経時劣化が少なく、図2に示す板状のクリーニングブレード151を用いるよりも、特に高速機においては有利である。また図1に示すクリーニングブラシ153,154は積極的に電界を利用するクリーニング方式であるため、電気的作用を利用せず機械的に掻き取るクリーニングブレードでは困難である球状トナーのクリーニングに対しても優位性がある。クリーニングブラシ153,154の毛1532,1542に移行した残留トナー粒子はクリーニングバイアスの作用によってその毛1532,1542に保持される。
回収ロール155は、感光体ドラム11の回転軸11aと平行に延びた中心軸1551を中心にして回転するものである。中心軸1551の外周には熱硬化性樹脂を硬化させたロール体1552が配備されている。ロール体1552に用いる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。中でもフェノール樹脂は、寸法精度が高く、成型が容易である。加えて、成形体の表面平滑性に優れ、安価である等の利点を有するので好ましい。ロール体1552の曲げ弾性率は700kPa以上であることが好ましい。ここにいう曲げ弾性率は、JIS K7171:94に準拠して測定される値をいう。この曲げ弾性率が700kPa未満であると、回収ロール155に撓みが生じてクリーニングブラシ153,154やスクレーパ部材156との当接位置や食い込み量を所定値に保持することが困難となる。また、曲げ弾性率が700kPa未満の材料を用いてロール体1552の肉厚を増加させて剛性を保持しようとすると、成形収縮が大きくなって寸法精度が不十分になってしまう。さらには、重量が増加するばかりか、成形時間も増加し、後工程が必要となる等の問題も生じてコストが増大してしまう。
なお、回収ロール155は、クリーニングブラシ153,154やスクレーパ部材156と接触状態にあるため、回収ロール155が回転することで回収ロール155の外周面は磨耗する。この磨耗量についてJIS K6902:98に準拠して測定した場合、当該磨耗量が20mg以下であることが好ましい。これにより、クリーニングブラシ153,154やスクレーパ部材156との食い込み量や当接圧を大きな値に設定することができ、また、長期にわたって安定的なクリーニングを行うことができる。当該磨耗量が20mgを超えると、回収ロール155の頻繁な交換が必要となる場合がある。
また、ロール体1552のロックウェル硬さ(Mスケール)は100以上であることが好ましい。ロックウェル硬さが100以上であると、寸法精度の高い成形が可能となり、また、削れに対して非常に強いロール体となる。なお、ここでいうロックウェル硬さとは、JIS K7202:95に準拠して測定される値をいう。
回収ロール155には、回収バイアスが印加されており、回収ロール155は、クリーニングブラシ153,154の毛1532,1542に保持された残留トナー粒子を、回収バイアスの作用により静電的に回収する。回収バイアスの印加にあたっては、クリーニングバイアスよりも絶対値が大きな電圧を印加することが必要であり、クリーニングブラシ153,154の毛1532,1542と回収ロール155の間の電位差が100V以上になるように印加することが好ましく、200V以上になるように印加することがより好ましく、650V以上になるように印加することがさらに好ましい。
回収ロール155の電気抵抗を調整する方法としては、無機フィラー及び/又は有機フィラーを充填する方法等が挙げられる。無機フィラーや有機フィラーをロール体1552に充填すると、回収ロール155の剛性が増加するという利点もある。無機フィラーとしては、錫、鉄、銅、アルミ等の金属粉体や金属繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機フィラーとしては、カーボンブラック、炭素粉、グラファイト、磁性粉、酸化亜鉛、酸化すず、酸化チタン等の金属酸化物、硫化銅、硫化亜鉛等の金属硫化物、ストロンチウム、バリウム、希土類等の所謂ハードフェライト、マグネタイト、銅、亜鉛、ニッケル及びマンガン等のフェライト、またはこれらの表面を必要に応じ導電化処理したもの、銅、鉄、マンガン、ニッケル、亜鉛、コバルト、バリウム、アルミニウム、錫、リチウム、マグネシウム、シリコン、リン等の異なる金属元素を含んだ酸化物、水酸化物、炭酸塩又は金属化合物等から選ばれ高温中で焼成して得られる金属酸化物の固溶体、所謂複合金属酸化物等やポリアニリンが挙げられる。
回収ロール155に500Vの電圧を印加したときの抵抗値は、好ましくは1×105〜1×1010Ω・cm、より好ましくは1×106〜1×108Ω・cmである。抵抗値が1×105Ω未満の場合、回収ロール155への電荷注入が起こり、クリーニングブラシ153,154で掻き取った残留トナー粒子の極性が反転してしまい、クリーニングブラシ153,154から残留トナー粒子を電気的に吸着することが困難にる場合がある。他方、回収ロール155の抵抗値が1×1010Ω・cmを超えると、回収ロール155に電荷が蓄積される現象(チャージアップ)が起こりやすくなり、この場合もクリーニングブラシ153,154から残留トナー粒子を電気的に吸着することが困難になる場合がある。
スクレーパ部材156は、回収ロール155によって回収された残留トナー粒子を回収ロール155から掻き落とす。このスクレーパ部材156は金属薄板からなるもので、その一端のエッジ部分が回収ロール155の外周面に当接するように配置されている。スクレーパ部材156の具体的材質としては、高耐久性及び低コストの点から、ステンレス又はリン青銅が好ましい。スクレーパ部材156の厚みは、好ましくは0.02〜2mm、より好ましくは0.05〜1mmである。なお、スクレーパ部材156には、金属薄板の代わりにゴムブレードを用いてもよい。
スクレーパ部材156によって掻き落とされた残留トナーは、ここでは図示省略した搬送オーガによってクリーニング装置15の外まで搬送される。
続いて、図2及び図3に示す現像装置14について詳述する。
図2及び図3に示す現像装置14に収容されたトナー粒子は、
SF=100×π(ML)2/4A 式1
ただし、式1中のMLはトナー粒子の絶対最大長を示し、Aはトナー粒子の投影面積を示す。
上記式1で表される平均形状係数SFの値が100以上145以下の範囲内にあるものであれば、特に製造方法により限定されるものではない。例えば結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法,混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力または熱エネルギーにて形状を変化させる方法,結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法,結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法,結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により得られるものであってもよい。また上記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法などで製造されたものであってもよい。ただし、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法で製造されたものが好ましく、乳化重合凝集法で製造されたものが特に好ましい。
トナー粒子は結着樹脂と着色剤、離型剤等とからなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を用いてもよい。体積平均粒径は2〜12μmの範囲が好ましく3〜9μmの範囲がより好ましい。また、上記平均形状指数SFの値が小さければ小さいほど、現像性、転写性が向上し、高画質の画像を得ることができる。上記平均形状指数SFの値は、好ましくは125〜140である。上記平均形状指数SFの値が125未満のトナー粒子では、形状が真球に近くなりすぎて転がりやすく、ブレード先端をすり抜けてしまうトナー粒子の量が無視できなくなる。
使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体および共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等をあげることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等をあげることができる。
また、着色剤としては、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、アニリンブルー、カルイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を代表的なものとして例示することができる。
離型剤としては、低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
以上説明した、結着樹脂、着色剤、および離型剤は、トナー粒子に内添されているものであり、以下、トナー粒子に外添される外添剤について説明する。
図2及び図3に示す現像装置14には、トナー粒子の他、外添剤の一つである樹脂粒子が収容されている。この樹脂粒子は、受酸効果を有する化合物微粒子がその一部を表面に露出させた状態で内包されたものである。ここにいう受酸効果を有する化合物微粒子とは、樹脂粒子よりも小径な、酸を吸着する効果を有するもののことをいい、陰イオン交換性を有する化合物であることが好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム・マグネシウムであるハイドロタルサイト化合物や、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈物等を使用することが可能で、なかでも、ハイドロタルサイト化合物が好ましく、特に、層状構造を有するハイドロタルサイト化合物を使用することが好ましい。前記層状構造を有するハイドロタルサイト化合物は、プラスに荷電した[Mg++ 2(1-x)Al+++ 2x(OH)4]層とマイナス荷電した[CO3 2- x・mH2O]層とからなる層状化合物であり、構造中のCO3 2-がイオン交換性であり、容易に他のアニオンと置換することにより酸を吸着することが知られている。当該ハイドロタルサイト化合物は下記一般式で表すことができる。
Mg(1-x)Alx(OH)2CO3x/2・mH2O(0<x≦0.5、m:正の数)
上記一般式で表わされるハイドロタルサイト化合物の具体的な物質例(構造式)としては、Mg0.7Al0.3(OH)2(CO3)0.15・0.57H2O;Mg0.8Al0.2(OH)2(CO3)0.10・0.61H2O;Mg0.75Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.50H2O;Mg0.83Al0.17(OH)2(CO3)0.085・0.47H2O;等をあげることができる。これらは、市販のものを使用することが可能であるが、Mg−Alハイドロタルサイト化合物の製造方法としては、特公昭47−32918号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平4−73457号公報等に記載の公知の製造方法により製造することができる。
例えば、Mgと、必要に応じて2価の金属(Zn、Cu、Niのうちの一種)の塩化物あるいは硝酸塩あるいは硝酸塩溶液あるいは水酸化物と、Alの塩化物あるいは硝酸塩あるいは硝酸塩溶液あるいはアルミン酸ナトリウム溶液と、アルカリ溶液と、で反応させることにより、例えば、硫酸イオン、炭酸イオン、塩素イオンまたは硝酸イオンを層間に保持したMg−Alハイドロタルサイト化合物スラリーを合成する。
次に、上記合成したMg−Alハイドロタルサイト化合物スラリーを水性媒体中で、例えば、約120℃〜約250℃の温度および約1〜約40時間の条件下で水熱処理することにより平均二次粒子径やBET比表面積を調整したMg−Alハイドロタルサイト化合物スラリーとする。上記Mg−Alハイドロタルサイト化合物スラリー(炭酸イオン型を除く)とケイ素系、燐系および硼素系の酸素酸イオンを含んだ溶液を混合することにより、合成時のアニオンとケイ素系、燐系および硼素系の酸素酸イオンがイオン交換し、層間のアニオンとして例えばアニオンと、硫酸イオン、炭酸イオン、塩素イオンおよび硝酸イオンの少なくとも一種のアニオンとを保持した、また平均二次粒子径やBET比表面積を調整したハイドロタルサイト化合物を製造することができる。
この受酸効果を有する化合物微粒子は樹脂粒子に内包されており、樹脂粒子がトナー母粒子とともに像担持体表面に供給されることで、この化合物微粒子は像担持体表面に均一に供給される。
また、トナー収容体141に収容された樹脂粒子は、平均的なトナー粒子の大きさよりも小さく、且つ不定形であることが好ましい。すなわち、樹脂粒子は、平均粒径(体積平均粒径D50v)が0.5μm以上4.0μm以下の範囲内にある、上記式1で表される平均形状係数SFの値が130以上のものであることが好ましい。ここでの体積平均粒径D50vの値はコールターカウンターを用いて測定した値であり、平均形状係数SFの値はルーゼックス画像解析装置を用いて、100個の樹脂粒子の、絶対最大長ML及び投影面積Aを測定し、これらの測定値に基づいて上記式1から算出した平均値である。
この樹脂粒子は、上述のごとくトナー粒子とともに感光体ドラム表面11bへ供給され、粒径が小さいため、ブレード先端151aと感光体ドラム表面11bとの間のブレードニップ領域に入り込むものの、この樹脂粒子は平均形状係数SFの値が130以上のものであることから形状が非球形であり、このためブレード先端をすり抜けずにブレードニップ領域に滞留する。ニップ領域に滞留した樹脂粒子の表面には、受酸効果を有する化合物微粒子の一部が露出しており、感光体ドラム表面に存在するNOX等の放電生成物は、この化合物微粒子の露出した部分に付着する。放電生成物が吸着した化合物微粒子は樹脂粒子とともに廃トナー搬送オーガ152によりクリーニング装置15の外まで搬送される。その結果、感光体ドラム11が硬度の高い保護層111を有するためクリーニングブレード151で放電生成部を完全に除去しきれなくても、この樹脂粒子に内包された受酸効果を有する化合物微粒子によって放電生成物を除去することができるため、トナー収容体141が小径のトナー粒子を収容したものであっても、放電生成物に起因する画像流れといった画質欠陥の発生が抑えられる。また、この化合物微粒子に放電生成物が吸着することで、感光体ドラム表面11bにおける摩擦抵抗が放電生成物によって高まることを防止することができ、ブレード先端151aに摩耗やカケが生じることが抑えられ、良好なクリーニング性を維持することができる。なお、この化合物微粒子は樹脂粒子に内包されているため、その化合物微粒子自体あるいは放電生成物が付着した化合物微粒子が感光体ドラムに付着することはない。
樹脂粒子の体積平均粒径が0.5μmを下回ると受酸効果を有する化合物微粒子を内包させることが困難になる上、トナー粒子に付着し続けて、感光体ドラム上での離脱が妨げられることがある。反対に4.0μmを超えると転写されやすくなったり、またブレードニップ領域に侵入しにくくなり、受酸効果を有する化合物微粒子による付着物除去機能が期待できなくなる。
また、樹脂粒子の平均形状指数SFの値が130未満であると、真球に近くなりすぎて樹脂粒子が感光体ドラム表面上を転がりやすく、ブレード先端をすり抜けやすくなってしまう。すなわち、ブレードニップ領域に留まりにくく受酸効果を有する化合物微粒子による付着物除去機能が期待できなくなる。なお、平均形状係数SFの値は135以上であることがより好ましい。
この樹脂粒子の、トナー粒子に対する配合割合は、トナー粒子100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲が適当である。0.05重量部を下回ると、樹脂粒子の付着物除去効果を十分に得ることができず、10重量部を超えるとトナー飛散が生じやすくなる。なお、前記配合割合の好ましい範囲は0.2〜4.0重量部である。
この樹脂粒子は、無機材料、有機材料のいずれを主成分(母粒子)とすることもできるが、有機材料を主成分とするものであることが好ましい。無機材料を主成分とする場合、比重が有機材料より大きいものが多く、その場合、安定して感光体ドラム表面へ、トナー粒子とともに供給することが難しくなる。また、無機材料を主成分とする場合、硬度が有機材料より高くなる傾向にあり、硬度が大きいと、感光体ドラムの摩耗やクリーニングブレードの劣化を促進してしまう恐れがある。
この有機材料としては、特に限定はしないが、例えば、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類等の単独重合体及び共重合体を例示することができる。特に代表的な樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂をあげることができる。さらに、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、変性ロジン等があげられる。
この樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予め、母粒子と受酸効果を有する化合物からなる子粒子とをそれぞれ作製し、それらをヘンシェルミキサー等による混合或いはハイブリタイゼーションシステムやメカノフュージョンシステム等によるメカノケミカル反応等の乾式法;水溶液中湿式により混合、凝集、加熱融着する等の湿式法;等により作製することができる。また、樹脂と受酸効果を有する化合物を混合し、溶融混練、粉砕、分級して樹脂粒子を作製してもよい。
さらに、図2及び図3に示すトナー収容体141には、トナー粒子および樹脂粒子の他、外添剤の一つである無機粒子が収容されている。この無機粒子は、モース硬度が3以上であって、平均粒径(個数平均粒径)が0.03μm以上0.8μm以下の範囲内にあるものである。ここでの個数平均粒径の値は、FE−SEM(撮影条件:加速電圧5KV)を用いて倍率10000倍に拡大した粒子像を撮影し、得られた画像情報を画像解析装置に導入して画像解析を行うことにより求めた。また、平均粒径の値は、無作為にサンプリングした100個の粒子を測定して得られたデータを元に、個数平均粒径として算出した値である。この無機粒子も、上記樹脂粒子と同じく形状が非球形であることが好ましい。非球形の無機粒子もトナー粒子とともに感光体ドラム表面へ供給され、粒径が小さいためブレードニップ領域に入り込むが、形状が非球形であるため、クリーニングブレードにより堰き止められブレードニップ領域に滞留する。ブレードニップ領域に滞留した無機粒子は研磨効果を発揮し、感光体ドラム表面に付着した放電生成物を掻き取る。
モース硬度3以上とすることで掻き取り力が向上する。個数平均粒径が0.03μmよりも小さい場合はブレード先端をすり抜け研磨効果を発揮できず、また0.8μmよりも大きい場合は感光体ドラムを傷つけてしまう。
この無機粒子としては、上記特性を有するものであれば特に限定されるものではないが、以下のような物が例示できる。シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ、炭酸カルシウム素、炭酸カルシウム、炭酸マグウネシウムおよびりん酸カルシウム等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。また、この無機粒子にテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などで処理を行っても良い。また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩による疎水化処理を行うことが好ましい。
また、上記樹脂粒子に、研磨効果を発揮するこの無機粒子の一部を表面に露出させた状態で内包させておけば、無機粒子の凝集を抑制することができ、感光体ドラム表面が傷つくことを防止するとともに放電生成物等の付着物除去性を向上させることができる。
また、トナー粒子の外添剤として帯電制御剤を用いてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減との点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。
トナー粒子とこれまで説明した各種の外添剤を、ヘンシェルミキサー、あるいはVブレンダー等で混合してから、トナー収容体に収容することが好ましい。また、トナー粒子を湿式にて製造する場合は、各種の外添剤を湿式にて外添することも可能である。
カラートナー粒子の場合には、トナー収容体141に、キャリアと混合して収容されることが好ましいが、そのキャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、またはそれ等の表面に樹脂コーテイングを施したものが使用される。また、キャリアとトナー粒子との混合割合は、適宜設定することができる。
なお、トナー粒子は、磁性材料を内包する磁性トナー、および磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
続いて、図2及び図3に示す感光体ドラム11に用いることができる感光体ドラムについて詳述する。
図2及び図3に示す感光体ドラム11は、上述のごとく、円筒上の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層を積層してなるものである。なお、以下では、電荷発生層と電荷輸送層を併せたものを感光層と称することがある。
導電性支持体としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、ステンレス、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等の金属又は合金を用いた金属板、金属ドラム、金属ベルト、あるいは導電性ポリマー、酸化インジウム等の導電性化合物やアルミニウム、パラジウム、金等の金属又は合金を塗布、蒸着、あるいはラミネートした紙、プラスチックフィルム、ベルト等があげられる。感光ドラムがレーザープリンターに使用される場合には、レーザーの発振波長としては350nmから850nmのものが好ましく、短波長のものほど解像度に優れるため好ましい。また、レーザー光を照射する際に生じる干渉縞を防止するために、支持体表面は、中心線平均粗さRaで0.04μm〜0.5μmに粗面化することが好ましい。粗面化の方法としては、研磨剤を水に懸濁させて支持体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、あるいは、回転する砥石に支持体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化などが好ましい。(DUC,ECLの記述も加える)Raが0.04μmより小さいと、鏡面に近くなるので干渉防止効果が得られなくなり、Raが0.5μmより大きいと、画質が粗くなって不適である。非干渉光を光源に用いる場合には、干渉縞防止の粗面化は特に必要なく、基材の表面の凹凸による欠陥の発生が防げるため、より長寿命化に適する。
陽極酸化処理はアルミニウムを陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することによりアルミニウム表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては硫酸溶液、シュウ酸溶液等があげられる。しかし、そのままの多孔質陽極酸化膜は化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、陽極酸化膜の微細孔を加圧水蒸気または沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行う。
陽極酸化膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
リン酸、クロム酸及びフッ酸からなる酸性処理液による処理は以下の様に実施される。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸およびフッ酸の配合割合は、リン酸が、10〜11重量%の範囲、クロム酸が3〜5重量%の範囲、フッ酸が0.5〜2重量%の範囲であって、これらの酸全体の濃度は、13.5〜18重量%の範囲が好ましい。処理温度は、42〜48℃であるが、処理温度を高く保つことにより、一層速く、かつ厚い被膜を形成することができる。被膜の膜厚については0.3〜15μmが好ましい。0.3μmより薄い場合は注入に対するバリア性が乏しく効果が十分でない。また、15μmより厚い場合は繰り返し使用による残留電位の上昇を招く。
ベーマイト処理は、90〜100℃の純水中に5〜60分間浸漬するか、90〜120℃の加熱水蒸気に5〜60分間接触させることにより行うことができる。被膜の膜厚については0.1〜5μmが好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などの皮膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
下引層に用いられる材料としては、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、ジルコニウムカップリング剤などの有機ジルコニウム化合物、チタンキレート化合物、チタンアルコキシド化合物、チタネートカップリング剤などの有機チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、、アルミニウムカップリング剤などの有機アルミニウム化合物のほか、アンチモンアルコキシド化合物、ゲルマニウムアルコキシド化合物、インジウムアルコキシド化合物、インジウムキレート化合物、マンガンアルコキシド化合物、マンガンキレート化合物、スズアルコキシド化合物、スズキレート化合物、アルミニウムシリコンアルコキシド化合物、アルミニウムチタンアルコキシド化合物、アルミニウムジルコニウムアルコキシド化合物、などの有機金属化合物、とくに有機ジルコニウム化合物、有機チタニル化合物、有機アルミニウム化合物は残留電位が低く良好な電子写真特性を示すため、好ましく使用される。また、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス2メトキシエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−2−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させて使用することができる。さらに、従来より下引層に用いられるポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−N−ビニルイミダゾール、ポリエチレノキシド、エチルセルロース、メチルセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリイミド、カゼイン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリエステル、フェノール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリウレタン、ポリグルタミン酸、ポリアクリル酸等の公知の結着樹脂を用いることもできる。これらの混合割合は、必要に応じて適宜設定することができる。また、下引層中には電子輸送性顔料を混合/分散して使用することもできる。電子輸送性顔料としては、特開昭47−30330号公報に記載のペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、また、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、ハロゲン原子等の電子吸引性の置換基を有するビスアゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料があげられる。これらの顔料の中ではペリレン顔料、ビスベンズイミダゾールペリレン顔料と多環キノン顔料、酸化亜鉛、酸化チタンが、電子移動性が高いので好ましく使用される。また、これらの顔料の表面は、分散性、電荷輸送性を制御する目的で上記カップリング剤や、バインダーなどで表面処理しても良い。電子輸送性顔料は多すぎると下引層の強度が低下し、塗膜欠陥を生じるため95重量%以下、好ましくは90重量%以下で使用される。混合/分散方法は、ボールミル、ロールミル、サンドミル、アトライター、超音波等をもちいる常法が適用される。混合/分散は有機溶剤中で行われるが、有機溶剤としては、有期金属化合物や樹脂を溶解し、また、電子輸送性顔料を混合/分散したときにゲル化や凝集を起こさないものであれば如何なるものでも使用できる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。下引層の厚みは一般的には、0.1〜30μm、好ましくは0.2〜25μmが適当である。また、下引層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜可能な温度で行われる。特に、酸性溶液処理、ベーマイト処理を行った基材は、基材の欠陥隠蔽力が不十分となり易いため、中間層を形成することが好ましい。
電荷発生層は、電荷発生材料と結着樹脂を含有して形成される。電荷発生材料は、ビスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料、ジブロモアントアントロンなどの縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、ピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料や、三方晶セレン、酸化亜鉛などの無機顔料など既知のもの全て使用することができるが、特に380nm〜500nmの露光波長を用いる場合には無機顔料が好ましく、700nm〜800nmの露光波長を用いる場合には、金属及び無金属フタロシアニン顔料が好ましい。その中でも、特開平5ー263007及び、特開平5ー279591に開示されたヒドロキシガリウムフタロシアニン、特開平5ー98181に開示されたクロロガリウムフタロシアニン、特開平5−140472及び、特開平5−140473に開示されたジクロロスズフタロシアニン、特開平4−189873及び、特開平5−43813開示されたチタニルフタロシアニンが特に好ましい。
結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択することができる、また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシランなどの有機光導電性ポリマーから選択することもできる。好ましい結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂をあげることができるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷発生材料と結着樹脂の配合比は(重量比)は10:1〜1:10の範囲が好ましい。またこれらを分散させる方法としてはボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の通常の方法を用いることができるが、この際、分散によって結晶型が変化しない条件が必要とされる。ちなみに前記の分散法のいずれについても分散前と分散後で結晶型が変化していないことが確認されている。さらにこの分散の際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下の粒子サイズにすることが有効である。またこれらの分散に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロルベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、電荷発生層の厚みは一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。また、電荷発生層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
電荷輸送層としては、公知の技術によって形成されたものを使用できる。それらの電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂を含有して形成されるか、あるいは高分子電荷輸送材を含有して形成される。
電荷輸送材料としては、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物があげられる。これらの電荷輸送材料は単独または2種以上混合して用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送材料は単独あるいは2種以上混合して用いることができるが、モビリティーの観点から、以下の構造のものが好ましい。
(式中、R14は、水素原子またはメチル基を示す。また、nは1又は2を意味する。Ar6及びAr7は置換又は未置換のアリール基、あるいは−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、置換基としてはハロゲン原子、炭素数が1〜5の範囲のアルキル基、炭素数が1〜5の範囲のアルコキシ基、又は炭素数が1〜3の範囲のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
(式中R15、R15'は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、を表わす。R16、R16'、R17、R17'は同一でも異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基、あるいは、−C(R18)=C(R19)(R20)、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表わし、R18、R19、R20は水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアリール基を表す。mおよびnは0〜2の整数である。)
(式中R21は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、置換又は未置換のアリール基、または、―CH=CH―CH=C(Ar)2を表す。Arは、置換又は未置換のアリール基を表す。R22、R23は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキル基で置換されたアミノ基、置換又は未置換のアリール基を表す。)
さらに電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材など高分子電荷輸送材を用いることもできる。これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。電荷輸送材料と結着樹脂との配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。
また、高分子電荷輸送材を単独で用いることもできる。高分子電荷輸送材としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの電荷輸送性を有する公知のものを用いることができる。特に、特開平8−176293号公報や特開平8−208820号公報に示されているポリエステル系高分子電荷輸送材は、高い電荷輸送性を有しており、とくに好ましいものである。高分子電荷輸送材はそれだけでも電荷輸送層として使用可能であるが、上記結着樹脂と混合して成膜してもよい。
電荷輸送層の厚みは一般的には、5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。さらに電荷輸送層を設けるときに用いる溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロンゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
また、画像形成装置中で発生するオゾンや酸化性ガス、あるいは光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、感光層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等があげられる。光安定剤の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体があげられる。また、感度の向上、残留電位の低減、繰り返し使用時の疲労低減等を目的として、少なくとも1種の電子受容性物質を含有させることができる。電子受容物質としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロム無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、クロラニル、ジニトロアントラキノン、トリニトロフルオレノン、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、フタル酸等をあげることができる。これらのうち、フルオレノン系、キノン系やCl, CN, NO2等の電子吸引性置換基を有するベンゼン誘導体が特に好ましい。
また、フッ素樹脂粒子を含有した保護層を用いたり、あるいは保護層を省略する場合であっても電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含有させたものを用いることで、クリーニングブレードと感光体ドラムの摺擦摩擦力が低減し、感光体摩耗を抑制し、球状のトナーを用いた場合に於いても良好なクリーニング性を維持することが可能である。そして上述の受酸効果を有する化合物微粒子がその一部を表面に露出させた状態で内包された樹脂粒子と併用することで、長寿命で画像流れも生じない画像形成装置を得ることができる。
電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含有させる場合には、電荷輸送層中の、フッ素系樹脂の含量は、電荷輸送層全量に対し、0.1〜40wt%が適当であり、1〜30wt%がより好ましく、特には3〜10%が好ましい。含量が0.1wt%未満ではフッ素系樹脂粒子の分散による摩擦低減効果が接触型帯電器との組合せに於いては十分でなく、一方、40wt%を越えると光通過性及び電荷輸送性顕著に低下し、かつ、繰返し使用による残留電位の上昇が生じてくる。黒用の感光体ドラムにおける電荷輸送層中の、フッ素系樹脂の含量は、カラー用の感光体ドラムのそれよりも少なく、且つ0〜3wt%が適当であり、0〜2wt%が適当である。3wt%よりも多い場合は、高速画像形成時電荷移動速度が低下し易い。
フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体の中から1種あるいは2種以上を適宜選択するのが望ましいが、特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。前記フッ素系樹脂の一次粒径は0.05〜1μmが良く、更に好ましくは0.1〜0.5μmが好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時の凝集が進みやすくなる。又、1μmを上回ると画質欠陥が発生しやすくなる。
保護層としては、バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散したもの、通常の電荷輸送層材料にフッ素樹脂、アクリル樹脂などの潤滑性微粒子を分散させたもの、シリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができるが、感光体ドラムの耐久性を高めるため、保護層は架橋構造を有する樹脂を含有したものであることが好ましく、電気特性、画質維持性などの観点から電荷輸送性材料をさらに含む(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ものであることがより好ましい。
架橋構造を形成するものとしては種々の材料を用いることが出来るが、特性上フェノール樹脂、シロキサン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく、特にフェノール樹脂またはシロキサン系樹脂からなるものが好ましい。なお、保護層には、架橋構造を有する樹脂の他に、必要に応じて、架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性微粒子、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子が含まれていてもよく、保護層の形成に際しては、必要に応じてシリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。また、保護層の形成方法の詳細については後述するが、保護層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む保護層形成用溶液が用いられる。
また、保護層は、架橋構造を持った、メチロール基を有するフェノール誘導体と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送性物質とを含有したものであってもよい。ここで、当該フェノール誘導体含有層の赤外吸収スペクトルが下記式で示される条件を満たすことで電気特性に優れ高画質化が図れる為より好ましい。
(P2/P1)≦0.2 式2
ただし、式2中、P1は1560cm-1〜1640cm-1に存在する最大吸収ピークの吸光度を、P2は1645cm-1〜1700cm-1に存在する最大吸収ピークの吸光度を示す。
上記式2で上述の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推察する。すなわち、メチロール基を有するフェノール誘導体を用いて塗膜を形成する過程において、フェノール誘導体のメチロール基のうちの一部は、ホルミル基等の酸化物になると考えられる。このようなホルミル基等の酸化物は、感光体ドラム中の電荷輸送を妨げるキャリアトラップとして作用し、感光体ドラムの電気特性を低下させると考えられる。ここで、赤外吸収スペクトルにおいて、1560cm-1〜1640cm-1に存在する最大吸収ピーク(P1)は、フェノール誘導体の芳香族C−C伸縮振動に相当する。また、1645cm-1〜1700cm-1に存在する最大吸収ピーク(P2)は、ホルミル基等の酸化物に由来すると考えられる。
つまり、吸光度比(P2/P1)が小さい感光体ドラムは、感光体ドラム中のホルミル基等の酸化物が少なく、キャリア輸送性に優れると考えられる。そして、上記特定の材料を用い且つ吸光度比(P2/P1)を0.2以下にすることで、電気特性に優れ、高画質化が達成できると考えられる。なお、吸光度比(P2/P1)は、0.18以下が好ましく、0.17以下がより好ましい。吸光度比(P2/P1)が0.2を超えると、キャリア輸送性が低下し、感光体ドラムの電気特性が不十分となり、画質が低下する。
上記メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物があげられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。
アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等があげられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体としては、フェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料としては、下記一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)で示される化合物であることが好ましい。
F−[(X1)m1−(R1)m2−Y]m3 (I)
上記式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X1は酸素原子又は硫黄原子を、R1はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Yは水酸基、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)又はアミノ基(−NH2)を示し、m1及びm2はそれぞれ独立に0又は1を、m3は1〜4の整数を示す。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 (II)
上記式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は1〜4の整数を示す。
F−[D−Si(R3)(3-a)Qa]b (III)
式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R3は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)又は置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。
また、上記可とう性を有する2価の基Dとしては、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β−2−、−CγH2γ−4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C6H4−、−N=CH−、−(C6H4)−(C6H4)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等があげられる。また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
F−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]n4 (IV)
上記式(IV)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zはアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n1、n2及びn3はそれぞれ独立に0又は1を、n4は2〜4の整数を示す。
上記一般式(I)〜(IV)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基Fとしては、下記一般式(VI)で示される化合物が好ましい。
ここで、上記式(VI)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr1〜Ar5のうち1〜4個は、上記式(I)〜(IV)で示される化合物における−[(X1)m1−(R1)m2−Y]、−[(X2)n1−(R2)n2−(Z)n3G]、又は、−[D−Si(R3)(3-a)Qa]で示される部位と結合手を有する。kは0又は1を示す。
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等があげられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等があげられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等があげられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の平均粒径は保護層の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
また、保護層には、保護層の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(VII−1)で示される化合物を添加することもできる。
Si(R30)(4-c)Qc (VII−1)
上記式(VII−1)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
上記一般式(VII−1)で示される化合物の具体例としては以下のようなシ
ランカップリング剤があげられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトシキシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等をあげることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
また、保護層には、その強度を高めるために、一般式(VII−2)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R31)(3-d)Qd)2 (VII−2)
上記式(VII−2)中、Bは2価の有機基を、R31は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3の整数を示す。
また、保護層には、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、トルク低減、塗布膜表面の均一性向上のため、下記一般式(VII−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることもできる。
上記式(VII−3)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。
一般式(VII−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンをあげることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等をあげることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、感光体ドラム表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。
微粒子の一例として、ケイ素原子含有微粒子をあげることができる。ケイ素原子含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン微粒子等があげられる。ケイ素原子含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、平均粒径が好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜30nmであり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。
ケイ素原子含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、平均粒径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmであり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、感光体ドラムの表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、感光体ドラム表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や”第8回ポリマー材料フォーラム講演予稿集 p89”に示される様な、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al2O3、SnO2−Sb2O3、In2O3−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al2O3、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In2O3、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物をあげることができる。 また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等をあげることができる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、感光体ドラムを作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等があげられる。保護層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
酸化防止剤としては以下のような化合物があげられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」があげられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
また、保護層には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を含有させてもよい。この場合、絶縁性樹脂は、所望の割合で添加することができ、これにより、電荷輸送層との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥等を抑制することができる。
保護層は、上述した構成材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層上に塗布して硬化させることで形成される。
保護層は、上述した電荷輸送材料を用いて形成されることから、保護層形成用塗布液に触媒を添加すること、又は保護層形成用塗布液作製時に触媒を用いることが好ましい。用いられる触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒、さらに系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
また、メチロール基を有するフェノール誘導体から、合成時の触媒を除去するために、フェノール誘導体をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿等の処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
例えば、イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂があげられる。
また、無機固体としては、Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4,MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO3)2等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等があげられる。
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、感光体ドラムの生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層の形成に使用される電荷輸送材料としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部とすることが好ましい。
保護層形成用塗布液を用いて保護層を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。なお、複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
電荷輸送層上に保護層形成用塗布液を塗布後には、硬化処理を行う。通常、硬化処理の際には、フェノール誘導体の架橋反応を促進し、保護層の機械強度を上げるためには硬化温度は高く、硬化時間長いほど好ましい。しかし、そうした場合には、吸光度比(P2/P1)が0.2を超えやすく、電気特性が著しく悪化してしまう。そこで、保護層のIRスペクトルが上記条件を満たすように、硬化温度、硬化時間、架橋雰囲気又は硬化触媒で制御することが好ましい。すなわち、保護層のIRスペクトルが上記式2で示される条件を満たすようにするために、硬化処理の際の硬化温度は100〜170℃が好ましく、100〜150℃が、さらに100〜140℃がより好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。
また、硬化処理(架橋反応)を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の、いわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)下が吸光度比(P2/P1)を小さくするのに効果的である。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気(酸素含有雰囲気)下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は100〜160℃(好ましくは110〜150℃)とすることが可能である。また、硬化時間は30分〜2時間(好ましくは30分〜1時間)とすることが可能である。また、一般式(I)で示される化合物において、(−(X1)m1−(R1)m2−Y)で示される部位が−CH2−OHの場合が最も硬化温度による電気特性の影響が大きい傾向があり、酸化に対して敏感であるので、上記好ましい温度範囲で硬化処理を行うことが好ましい。 さらに、硬化処理の際には、硬化触媒を使用することが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類(g)ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類等の光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、無水カルボン酸化合物等があげられる。
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等があげられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物があげられる。
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等があげられる。
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等があげられる。
ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス(アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセトナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸があげられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これら硬化触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
また、保護層を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ、硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等をあげることができる。さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子をあげることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(VII−4)で示される2座配位子があげられる。
上記式(VII−4)中、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
多座配位子としては、上記の中でも、下記一般式(VII−4)で示される2座配位子がより好ましく、下記一般式(VII−4)中のR32とR33とが同一のものが特に好ましい。R32とR33とを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、保護層形成用塗布液のさらなる安定化を図ることができる。
多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、有機金属化合物の使用量1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは1モル以上である。
保護層の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012fm/s・Pa以下であることがさらに好ましい。
ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性と捕らえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈して良い。
つまり、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層においてガスが浸透しにくい。したがって、画像形成プロセスにより生じる放電生成物の浸透が抑制され、保護層に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
また、赤外吸収スペクトルの吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすように保護層を形成しようとする場合には、空気雰囲気下では硬化温度を比較的低く設定することが必要である。そのため、保護層の25℃における酸素透過係数を下げることは困難であるが、吸光度比(P2/P1)が上記条件を満たすようにすると共に、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たすようにすることで、電気特性がさらに向上し、さらに高画質を達成できる感光体が得られる。
保護層の膜厚は、0.5〜15μmが好ましく、1〜10μmがさらに好ましく、1〜5μmがより好ましい。
以下、実施例と比較例を用いて詳しく説明するが、以下に説明する実施例は本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
(感光体ドラムIの作製)
4部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30部および有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3部を添加、混合撹拌して下引層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された外径60mmのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い下引層を形成した。
電荷発生材料として、塩化ガリウムフタロシアニンを用い、その15部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部およびn−ブチルアルコール300部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、上記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60部とをテトロヒドロフラン235部及びモノクロロベンゼン100部に十分に溶解混合して得られた塗布液を、上記電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
さらに、下記に示す構成材料を、イソプロピルアルコール5部、テトラヒドロフラン3部、蒸留水0.3部に溶解させ、イオン交換樹脂(アンバーリスト15E:ローム・アンド・ハース社製) 0.5部を加え、室温で攪拌することにより24時間加水分解を行った。
構成材料
下記に示す化合物1 2.0部
メチルトリメトキシシラン 2.0部
テトラメトキシシラン 0.5部
コロイダルシリカ 0.3部
フッ素グラフトポリマー(ZX007C:富士化成製) 0.5部
加水分解したものからイオン交換樹脂を濾過分離した液に対し、アルミニウムトリスアセチルアセトナート(Al(aqaq)3)を0.1部、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)0.4部を加え、このコーティング液を上記電荷輸送層上にリング型浸漬塗布法により塗布し、室温で30分風乾した後、150℃で1時間加熱処理して硬化し、膜厚約3umの保護層を形成した。これを感光体ドラムIとする。この感光体ドラムIの最表面は架橋構造を有するシロキサン樹脂を含有した保護層によって構成されており、耐久性が高められている。
(感光体ドラムIIの作製)
電荷輸送層までは感光体ドラムIと同様に作製した。
次に、下記に示す化合物2を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、ネイキュア2500X(楠本化学)0.2部、及びイソプロパノ−ルを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬コーティング法で前記電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmの保護層を形成した。これを感光体ドラムIIとする。
(感光体ドラムIIIの作製)
電荷発生層までは感光体ドラムIと同様に作製した。
次に、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量40,000)60部とをテトロヒドロフラン280部及びトルエン120部に十分に溶解混合した後、4フッ化エチレン樹脂粒子10部を加え、さらに混合した。このとき、室温を25℃に設定し、混合工程における液温度を25℃に保った。その後、ガラスビーズを用いたサンドグラインダーにて分散し、4フッ化エチレン樹脂粒子分散液を作成した。このとき、サンドクラインダーのベッセルに24℃の水を流し、分散液の温度を50℃に保持した。得られた塗布液を上記電荷発生層の上に浸漬塗布し、乾燥することにより、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。これを感光体ドラムIIIとする。この感光体ドラムIIIは、保護層は省略されているものの、最表面を構成する電荷輸送層にフッ素樹脂粒子が含有されており、クリーニングブレードと感光体ドラムの摺擦摩擦力が低減させることで感光体摩耗に対する耐久性が高められている。
(感光体ドラムIVの作製)
電荷輸送層までは感光体ドラムIと同様に作製した。
次に、下記に示す化合物3を5部、レゾール型フェノール樹脂(PL−4852、群栄化学社製)を7部、メチルフェニルポリシロキサンを0.03部、及びイソプロパノ−ルを20部混合して溶解し、保護層形成用塗布液を得た。この塗布液を浸漬コーティング法で前記電荷輸送層上に塗布し、130℃で40分乾燥させ、膜厚3μmの保護層を形成した。これを感光体ドラムIVとする。この感光体ドラムIVの最表面はメチロール基を有するフェノール誘導体を含有した保護層によって構成されており、耐久性が高められている。
(感光体ドラムVの作製)
電荷輸送層までは感光体ドラムIと同様に作製し、保護層の作製を行わなかった。これを感光体ドラムVとする。すなわち、この感光体ドラムVは、表面が電荷輸送層によって構成されたものである。
以下の説明において、各物性値の測定は以下の方法にて行った。
<各粒子の体積平均粒径(D50v)>
コールターカウンター(ベックマンーコールター社製、TAII)を用いて測定した粒子の体積による粒径分布の大粒子側から計算した50%目の粒子径となる粒子径である。
<各粒子の個数平均粒径>
FE−SEM(撮影条件:加速電圧5KV)を用いて倍率10000倍に拡大した粒子像を撮影し、得られた画像情報を画像解析装置に導入して画像解析を行うことにより求めた。
また、平均粒径の値は、無作為にサンプリングした100個の粒子を測定して得られたデータを元に、個数平均粒径として算出した。
<各粒子の平均形状係数SF>
トナー粒子の画像を光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEXIII、ニレコ社製)に取り込み、円相当径を測定することで、トナー粒子の絶対最大長ML及びトナー粒子の投影面積Aの値を得、上記式1に基づいて平均形状係数SFを算出した。なお、真球の場合はSF=100となる。
[トナー母粒子の作製]
(樹脂微粒子分散液の調整)
スチレン370部,n−ブチルアクリレート30部,アクリル酸8部,ドデカンチオール24部,四臭化炭素4部を混合して溶解したものを、非イオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)6部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)10部をイオン交換水550部に溶解したフラスコ中で乳化重合させ、10分間ゆっくり混合しながら、これに過硫酸アンモニウム4部を溶解したイオン交換水50部を投入した。窒素置換を行った後、前記フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。その結果、150nmであり、Tg=58℃、重量平均分子量Mw=11500の樹脂粒子が分散された樹脂微粒子分散液が得られた。この分散液の固形分濃度は40重量%であった。
(着色剤分散液(1)の調整)
カーボンブラック(モーガルL:キャボット製) 60部
ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製) 6部
イオン交換水 240部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(カーボンブラック)粒子が分散された着色剤分散剤(1)を調整した。
(着色剤分散液(2)の調整)
Cyan顔料(C.I.PigmentBlue15:3(大日精化社製) 60部
ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製) 5部
イオン交換水 240部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(Cyan顔料)粒子が分散された着色剤分散剤(2)を調整した。
(着色剤分散液(3)の調整)
Magenta顔料(C.I.PigmentRed 122、大日精化社製) 60部
ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製) 5部
イオン交換水 240部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(Magenta顔料)粒子が分散された着色剤分散剤(3)を調整した。
(着色分散液(4)の調整)
Yellow顔料(C.I.Pigment Yellow 180、大日精化社製) 90部
ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製) 5部
イオン交換水 240部
以上の成分を混合して、溶解、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間攪拌し、その後、アルティマイザーにて分散処理して体積平均粒径が250nmである着色剤(Yellow顔料)粒子が分散された着色剤分散剤(4)を調整した。
(離型剤分散液)
パラフィンワックス(HNP0190:日本精蝋(株)製、融点85℃) 100部
カチオン性界面活性剤 (サニゾールB50:花王(株)製) 5部
イオン交換水 240部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて10分間分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が550nmである離型剤粒子が分散された離型剤分散液を調整した。
<トナー母粒子Kの調整>
樹脂微粒子分散液 234部
着色剤分散液(1) 30部
離型剤分散液 40部
ポリ水酸化アルミニウム(浅田化学社製、Paho2S) 0.5部
イオン交換水 600部
以上の成分を、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でホモジナイザー(ウルトラタラックスT50:IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら40℃まで加熱した。40℃で30分保持した後、D50vが4.5μmの凝集粒子が生成していることを確認した。更に加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で1時間保持し、D50vは5.3μmとなった。その後、この凝集体粒子を含む分散液に26部の樹脂微粒子分散液を追加した後、加熱用オイルバスの温度を50℃まで上げて30分間保持した。この凝集体粒子を含む分散液、1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを7.0に調整した後ステンレス製フラスコを密閉し、磁気シールを用いて攪拌を継続しながら80℃まで加熱し、4時間保持した。冷却後、このトナー母粒子を濾別し、イオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥してトナー母粒子Kを得た。このトナー母粒子の体積平均粒径D50vは5.9μmであり、平均形状係数SFは132であった。
<トナー母粒子Cの調整>
着色粒子分散液(1)のかわりに、着色粒子分散液(2)を用いる以外はトナー母粒子Kと同様にしてトナー母粒子Cを得た。トナー母粒子Cの体積平均粒径D50vは5.8μmであり、平均形状係数SFは131であった。
<トナー母粒子Mの調整>
着色粒子分散液(1)のかわりに、着色粒子分散液(3)を用いる以外はトナー母粒子Kと同様にしてトナー母粒子Mを得た。トナー母粒子Mの体積平均粒径D50vは5.5μmであり、平均形状係数SFは135であった。
<トナー母粒子Yの調整>
着色粒子分散液(1)のかわりに、着色粒子分散液(4)を用いる以外はトナー母粒子Kと同様にしてトナー母粒子Yを得た。トナー母粒子Yの体積平均粒径D50vは5.9μmであり、平均形状係数SFは130であった。
[キャリヤの作製]
フェライト粒子(個数平均粒径:50μm) 100部
トルエン 14部
スチレン/メチルメタクリレート共重合体(成分比:90/10、重量平均分子量80000) 2部
カーボンブラック(R330:キャボット社製) 0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調整し、次に、この被覆液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリヤを得た。このキャリヤは、1000V/cmの印加電界時の体積固有抵抗値が1011Ωcmであった。
[樹脂粒子の作製]
(母粒子分散液の調整)
トナー母粒子の作製時に調整した樹脂微粒子分散液と同じ樹脂微粒子分散液260部にポリ塩化アルミニウム(PAC100W:浅田化学社製)1.8部を添加し、更にイオン交換水900部を加え、丸型ステンレス鋼鉄フラスコ中でウルトラタラックスT50(IKA社製)を用いて混合、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら40℃まで攪拌した。その後、30分保持した後、粒子サイズを測定すると体積平均粒径D50vは3.1μmであった。その後、この分散液に0.1N水酸化ナトリウムを追加して、系のpHを7に調整した後、攪拌を継続しながら、80℃まで加熱し、30分間保持した。冷却後、平均粒径を測定すると体積平均粒径D50vは2.8μmであった。この樹脂粒子を濾別しイオン交換水で4回洗浄した後、再度、固形分濃度10重量%に合わせてスラリー化して、母粒子分散液を得た。この樹脂粒子の形状係数SFの平均値は138であった。
(受酸粒子分散液a〜cの調整)
イオン交換水1300部中に下記表1に示すハイドロタルサイト化合物100部及びアニオン性界面活性剤(ネオゲンSC:第一工業製薬(株)製)4部を入れ、乳化分散させた。その後、ゴーリンホモジナイザーにて130℃に加熱、500kg/cm2加圧の条件で30分間運転し、その後冷却して取り出し、受酸粒子分散液a〜cを得た。
(樹脂粒子Aの調整)
上記母粒子分散液100部と受酸粒子分散液a15部を混合し、硝酸でpHを5以下にして、更にポリ塩化アルミニウム(浅田化学社製、PAC100W)0.36部を加え、凝集粒子を調整した。この粒子を濾別しイオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥して樹脂粒子Aを作製した。この樹脂粒子Aは、表面に受酸粒子の一部が露出したものである。樹脂粒子Aの体積平均粒径は3.1μmであり、平均形状係数SFは142であった。
(樹脂粒子Bの調整)
上記母粒子分散液100部と受酸粒子分散液b15部を混合し、硝酸でpHを5以下にして、更にポリ塩化アルミニウム(浅田化学社製、PAC100W)0.36部を加え、凝集粒子を調整した。この粒子を濾別しイオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥して樹脂粒子Bを作製した。この樹脂粒子Bも、表面に受酸粒子の一部が露出したものである。樹脂粒子Bの体積平均粒径は2.9μmであり、平均形状係数SFは145であった。
(樹脂粒子Cの調整)
上記母粒子分散液100部と受酸粒子分散液c15部を混合し、硝酸でpHを5以下にして、更にポリ塩化アルミニウム(浅田化学社製、PAC100W)0.36部を加え、凝集粒子を調整した。この粒子を濾別しイオン交換水で4回洗浄した後、凍結乾燥して樹脂粒子Cを作製した。この樹脂粒子Cも、表面に受酸粒子の一部が露出したものである。樹脂粒子Cの体積平均粒径は3.2μmであり、平均形状係数SFは139であった。
まず、クリーニングブラシを備えた画像形成装置を用いた実施例1〜10及び比較例1〜8について説明する。ここでの実施例1〜10及び比較例1〜8の各試験には、図1に示す画像形成装置の構成と同様な構成の富士ゼロックス製DocuCentre Color 500を用いた。実施例1〜10及び比較例1〜8では、トナー像形成ユニットの感光体ドラム及びトナー収容体に収容した樹脂粒子や外添剤を下記表2に示すものに交換した。トナー収容体に収容した現像剤の作製にあたっては、まず、前記トナー母粒子K、C、M、Yのそれぞれ100部にメタチタン酸(個数平均粒径40nm、i−ブチルトリメトキシシラン処理)1部、シリカ(個数平均粒径12nm、ジメチルジメトキシシラン処理、気相酸化法)1.5部を及び下記表2に示す樹脂粒子及びその他の外添剤をサンプルミルで混合し、45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナーを作製した。次いで、キャリア100部とこのトナー6部をV−ブレンダーで、40rpm×20分間攪拌し、212μmの目開きを有するシーブで篩分することによりそれぞれの現像剤を作製した。
表2に示す各実施例及び各比較例では、低温低湿(10℃、20%RH)及び高温高湿(28℃、80%)条件下でカラーモードで各2万枚、計4万枚の走行試験を行い、「画像流れ」「ブレードビビリ」「フィルミング」「クリーニング性」「感光体摩耗」「感光体傷」「帯電器汚れ」について各評価を行った。以下に、それらの評価基準を示す。
(画像流れ)
走行試験中の高温高湿下で画像密度30%のハーフトーン画像を採取し官能評価を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎→画像流れ未発生
○→1晩放置後極軽微に発生、10枚以内で消滅
×→画像流れが部分的に発生、10枚以内で消滅しない
××→画像流れがほぼ全面で発生、10枚以内で消滅しない
(ブレードビビリ)
走行試験中の高温高湿下で感光体ドラムの低速回転時、回転開始時及び停止時それぞれにおけるクリーニングブレードのビビリ音について官能評価を実施した。評価基準は以下の通りである。
◎→ビビリ音未発生(聞き取れない)
○→回転開始時及び停止時極軽微に発生
×→回転開始時、停止時及び低速回転時いずれもビビリ音発生
(フィルミング)
走行試験後の感光体ドタム表面上の付着物の有無を観察し、目視による官能評価を行った。また画像密度30%のハーフトーン画像を採取し画質への影響の有無の官能評価を行った。判断基準は以下の通りである。
◎→感光体付着物なし
○→感光体付着物があるが、画質欠陥未発生
×→感光体付着物があり、画質欠陥が部分的に発生
××→感光体付着物があり、画質欠陥が全面で発生
(クリーニング性)
低温低湿下での走行中のプリント画像中のクリーニング不良画像の有無を評価するとともに、感光体ドラム表面にA3サイズの画像密度100%画像を定期的に形成し未転写のままクリーニングさせクリーニング後の感光体ドラム表面における残留トナーの有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎→プリント画像中、未転写画像共にクリーニング性問題なし
○→プリント画像中クリーニング性問題なし、未転写画像に機微にクリーニング不良発生
×→プリント画像中クリーニング不良発生
(感光体摩耗)
感光体ドラムの、初期の膜厚と4万枚走行後の膜厚の差分により感光体ドラムの摩耗レートを求めた。
(感光体の傷)
走行試験後の感光体ドラム表面の10点平均粗さRzを粗さを、東京精密製サーフコム1400Aを用い、JIS B0601(1994)で規定される測定方法に準拠して測定した。
(接触帯電器汚れ)
走行試験後の接触帯電器の帯電ロールにおける付着物の有無を観察し、目視による官能評価を行った。また画像密度30%のハーフトーン画像を採取し画質への影響の有無の官能評価を行った。評価基準は以下の通りである。
○→接触帯電器汚れ軽微
×→接触帯電器汚れはあるが、画質欠陥未発生
××→接触帯電器汚れが酷く、画質欠陥発生
結果を表3に示す。
実施例1〜3では感光体ドラムの電荷輸送層にフッ素樹脂粒子を含有し摩耗量低減を図っているが、受酸成分含有の樹脂粒子をトナー粒子に外添することで、ブレードビビリはほとんど発生せず良好な結果であった。それに対し受酸成分含有樹脂粒子を含まない比較例1に於いては、早期にブレードビビリが発生した。またトナーに研磨剤として酸化セリウムを外添した比較例2ではブレードビビリはほとんど発生しないものの、感光体ドラムの摩耗及び傷が悪化し、また酸化セリウムが接触帯電器に付着することによる画質劣化が発生した。
また受酸成分含有の樹脂粒子に代えてハイドロタルサイト化合物をトナーに外添した比較例3,6,8ではいずれも、初期的には画像流れやブレードビビリは未発生で良好であったが、ハイドロタルサイト化合物の、感光体ドラム表面及び帯電ロール表面へのフィルミング(膜状の付着)が徐々に悪化し、それに伴いクリーニング性の悪化、帯電性の悪化が発生した。また、感光体ドラムの、ハイドロタルサイト化合物がフィルミングした部位では画像流れが発生した。これは、感光体ドラムに付着したハイドロタルサイト化合物がNOX等の放電生成物を吸着し、更に吸湿することで画像流れが発生したものと考えられる。
また実施例4〜6,9では、最表面に、電荷輸送性を有しかつ架橋構造を有する保護層を設けた感光体ドラムを使用したことから、耐摩耗性や傷に対する耐性が著しく向上している。受酸成分含有の樹脂粒子をトナー中に含有することで、画像流れやブレードビビリがほとんど発生せず良好な結果であった。また、モース硬度が3以上であって、個数平均粒径が0.03μm以上0.8μm以下の範囲内にある無機粒子を加えた実施例7,8,10では、画像流れやブレードビビリについてさらに良好な結果を得た。それらに対し、シロキサン系架橋硬化膜を保護層として有する感光体ドラムを用いるとともに受酸成分含有の樹脂粒子がトナー中に含有していない現像剤を用いた比較例4においては、画像流れ、ブレードビビリが早期に発生し、その後クリーニングブレードの先端にブレードのメクレが発生した。また、トナーに研磨剤として酸化セリウムを含有した比較例5でも画像流れやブレードビビリは比較的早期に発生した上、クリーニングブレードのダメージによる悪化と考えられる、クリーニング性の悪化および帯電器汚れが発生した。またトナーに潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を添加した比較例7ではブレードビビリ、クリーニング性能は良好であったが、画像流れが顕著に悪化した。
次に、クリーニングブラシを備えた画像形成装置を用いた実施例11〜21および比較例9〜18について説明する。ここでの実施例11〜21及び比較例9〜18の各試験には、図3に示すトナー像形成ユニットの構成と同様な構成のトナー像形成ユニットを備えた富士ゼロックス製Color DocuTech60を用いた。実施例11〜21及び比較例9〜18では、感光体ドラム及びトナー収容体に収容した樹脂粒子や外添剤を下記表4に示すものに交換した。なお、トナー収容体に収容した現像剤の作製は、上述の実施例1〜10における現像剤の作製と同様に行った。また、クリーニング装置としては、以下に示す2種類のクリーニング装置のうちのいずれか一方をそれぞれ用いた。ここで用いたいずれのクリーニング装置も、2本のクリーニングブラシと、2本の回収ロールと、2枚のスクレーパ部材を備えた図3に示すようなものである。
(クリーニング装置I)
2本のクリーニングブラシはいずれも下記に示す特性のものである。
ブラシ材質:導電性ナイロン、繊維太さ:2デニール(約17μm)、電気抵抗:1×105Ω、毛足長さ:4mm、繊維密度:50,000本/6.45cm2、感光体ドラムへの食い込み量:約1.0mm、周速:60mm/s、回転方向:感光体ドラムの回転方向に対して逆回転。
ただし、感光体ドラム回転方向上流側の第1クリーニングブラシのブラシ繊維には+200Vのクリーニングバイアスを印加し、下流側の第2クリーニングブラシのブラシ繊維には、−400Vのクリーニングバイアスを印加した。
2本の回収ロールはいずれも下記に示す特性のものである。
材質:導電性カーボンを分散したフェノール樹脂、電気抵抗:1×106Ω、曲げ弾性率(JIS K7171:94):100MPa、磨耗量(JIS K6902:98):2mg、ロックウェル硬度(JIS K7202:95、Mスケール):120、クリーニングブラシへの食い込み量:1.5mm、周速:70mm/s。
ただし、上流側の第1クリーニングブラシに接する回収ロールには+600Vの回収バイアスを印加し、下流側の第2クリーニングブラシに接する回収ロールには−800Vの回収バイアスを印加した。
2枚のスクレーパ部材はいずれも下記に示す特性のものである。
材質:SUS304、厚み:80μm、回収ロールへの食い込み量:1.3mm、フリーレングス(自由長):8.0mm。
(クリーニング装置II)
このクリーニング装置IIは、2本のクリーニングブラシがいずれも、毛足長さが2mと短く、感光体ドラムへの食い込み量が0.6mmと少ない点を除いては、クリーニング装置Iと同じである。
表4に示す各実施例及び各比較例では、低温低湿(10℃、20%RH)及び高温高湿(28℃、80%)条件下でカラーモードで各2万枚、計4万枚の走行試験を行い、ここでは、「画像流れ」「フィルミング」「感光体摩耗」「感光体傷」について、上述の実施例1〜10における評価基準のもと評価を行った。評価結果を表5に示す。
実施例11〜13では受酸成分含有の樹脂粒子をトナー粒子に外添することで、形状係数130の球状のトナーを用いた場合に於いても、画像流れやフィルミングを発生せず良好な結果であり、それに対し受酸成分含樹脂粒子を含まない比較例に於いては画像流れが発生した。また比較例10に於いては樹脂微粉として1.5μmのPMMAを現像剤に添加したが画像流れ抑制効果は十分発揮できていないこと、比較例11に於いては研磨剤として酸化セリウムを添加したが、やはり画像流れ抑制効果は不十分であることより、受酸成分含有樹脂粒子による放電生成物除去効果は、PMMA添加や酸化セリウム添加に比べて有効であるといえる。また比較例13に於いてはクリーニングブラシの毛足長さを短くし剛性を高めることで放電生成物の掻き取り性は向上し画像流れは抑制されているものの、感光体の極端な傷の悪化が発生するという結果であった。
また比較例12においては受酸成分であるハイドロタルサイト化合物をそのまま現像剤に添加しているが、初期に於いては画像流れ抑制効果は見られたものの、長期走行に伴いハイドロタルサイト化合物の、感光体ドラムへのフィルミングが発生し、画像流れが引き起こされた。ハイドロタルサイト化合物を用いても画像流れが発生した理由として、付着したハイドロタルサイト化合物が放電生成物を吸着し、更に吸湿することで画像流れが発生したものと考えられる。これに対して、受酸効果を有する化合物微粒子がその一部を表面に露出させた状態で内包された樹脂粒子を添加した各実施例においては、受酸成分が樹脂粒子表面に固定化されていることで、放電生成物の吸着効果を発現させると共に、受酸成分の感光体ドラムへの付着を好適に抑制できていることが分かる。
また、耐摩耗性が高く画像流れが発生しやすい架橋構造を有する保護層を作成した感光体を用いた比較例14〜18に於いては、保護層を有しない感光体と比較して画像流れや外添剤フィルミングの悪化傾向が見られるのに対し、保護層を有する感光体を用いた実施例14〜21に於いては画像流れやフィルミングは未発生で良好な結果が得られており、保護層により傷が付きにくくクリーニングブラシの均一な摺擦を可能とすることで、受酸成分含有樹脂粒子による放電生成物の除去効果を好適に発現させているものと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、高画質な画像を得ることができる、画像形成装置、電子写真用トナー、および電子写真用現像剤を提供することができる。
1…画像形成装置、10…トナー像形成ユニット、11…感光体ドラム、11a…回転軸、11b…表面、111…保護層、12…帯電器、121…帯電ロール、13…露光器、14…現像装置、141…トナー収容体、142…現像ロール、15…クリーニング装置、151…クリーニングブレード、151a…ブレード先端、153,154…クリーニングブラシ、16…除電ランプ、20…1次転写ロール、30…中間転写ベルト、40…一括転写装置、50…定着装置、60…用紙トレイ、70…ベルトクリーナ