JP4697202B2 - 凹型組合せベーカリー製品及びその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、ペストリー等に代表される層状生地とパン、シュー、スポンジ、バターケーキ、マフィンに代表される熱凝固性生地とを組合せたベーカリー製品の製造法に関する。
市場ニーズの一つにベーカリーと他の食材との組合せベーカリー製品があり、そのなかでもベーカリーを器に見立て他の食材と組み合わせるタイプは人気がある。一例としてはフルーツをペストリー上に乗せたフルーツのデニッシュ、パイや層状生地をリング状に型抜きした側面部分と円形に型抜きした底面部分を組み合わせて凹型にし、この凹部にフルーツやクリームなどを詰めたものであるヴィエノワズリーなどがある。
しかし、フルーツをのせたデニッシュ、パイのように特に何の形状に工夫もせず板状のパイのうえに他の食材をのせたものは他の食材をのせた下部の層が浮かず、綺麗な層になりづらい。また生地をくり抜いて凹型にするのでは製造工程が煩雑で、またその形状に成型する際に必ず余り生地が発生してしまい、経済的でない。(図1)
特許文献1では、焼成されたパンを可食性容器とするものとして、凸型の容器と凹型の容器の隙間にパン生地を入れてカップ状のパンを製造する提案がなされている。
しかしながら、特許文献1をはじめとして、可食性容器は当然ながら容器としての強度を付与するための焼成工程が必要であり、中に入れる具に加熱が必要無い場合は可食性容器自体を焼成した後に具を詰めればいいが、具にも加熱が必要な場合は、可食性容器部分を予め焼成しておき、さらに具を詰めて焼成を再度行う必要があり、可食性容器自体は二度焼成工程に供されることとなる。焼成工程が増えることの工程上の煩雑さと、2度焼成に供される可食性容器部分が堅く焼き締まるため、ソフトな食感の可食性容器を作り出すのが困難である。
当然、焼成前には容器としての強度が不足している為、容器としての機能を果たし得ず、具をつめることは出来ない。
特許文献2では、ほぼ同時に焼成できるものとしては、型枠に菓子の外皮の材料を注入するとともに焼成乃至蒸成して凹部を有する外皮を形成し、外皮を型枠内に位置せしめた状態で凹部内に可食性の充填材料を充填し、次に外皮の上部開口をいまだ焼成乃至蒸成していない生のふた用の生地にて閉塞した後、焼成乃至蒸成する事を特徴とする提案がされている。しかしながら、型枠を、しかもかなり複雑な形状の型枠を使用するため、容器使用に伴う弊害が解消されず、焼成も2段回にするなど煩雑である。
特開昭55−064740号公報 特開昭51−115958号公報
本発明は、平易な方法にて凹型組合せベーカリー製品の製造法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、
(1)としては、層が側面に露出するように湾曲して環状に配置した層状生地と、その環状の層状生地の内側に配置した熱凝固性生地を、焼成する事を特徴とする凹型組合せベーカリー製品の製造法であり、(2)としては、層状生地がペストリーまたはパイである(1)記載の凹型組合せベーカリー製品の製造法であり、(3)としては、熱凝固性生地がパン、シュー、スポンジ、バターケーキ、マフィンである(1)記載の凹型組合せベーカリー製品の製造法であり、(4)としては、(1)ないし(3)により作成された凹型組合せベーカリー製品である。
本発明により、層状生地と熱凝固性生地を特定の配置で組み合わせることにより、平易な方法にて、凹型の可食性容器を製造することが可能である。またこの可食性容器は焼成後に他のフィリングといった具を乗せることも可能であるが、焼成前にも容器としての強度を有し、耐熱性のある具材を凹部に詰めての同時焼成も可能である。
本発明における層状生地とは、デニッシュ、クロワッサンなどに代表されるペストリー生地や、折りパイ生地などに代表されるパイ生地など、フラワーシートを折りこんだペストリーなど、小麦粉および水を必須成分とする混捏物の層と固状ないし塑状の油脂組成物やジャムやフラワーシートによって構成される層とが交互に層をなした生地を指す。
本発明の層状生地の製造法としては、従来の層状生地の製造法と何ら変わりがなく、油脂組成物およびフラワーシートをパン生地内部に包み込んだ後、折り重ねて展延したものである。
本発明における層状生地は前述の通り、小麦粉および水を必須成分とする混捏物の層と固状ないし塑状の油脂組成物、フラワーシートによって構成される層とが交互に層をなした生地であり、このような層状生地はその層に対して水平な方向(層が広がる面の方向)より、層に対して垂直な方向により大きく膨張する(図2参照)ので望ましい。
混捏物の層は、強力粉の他に通常薄力粉または中力粉を併せて含み、それらの配合比によって生地の硬さが調製される。混捏物の層には特に油脂を使用する必要はないが、所望なれば通常使用されている練込み用油脂を使用することもできる。
折り重ねる回数、すなわち折り数は油脂量によって異なるが、最終展延時で通常4層〜216層、望ましくは8層〜128 層さらに望ましくは16〜36層が好ましい。
混捏物の層と油性層からなる多層生地自体の調製方法は、従来より公知の方法に準じて行えばよい。
油性層は、従来より使用されているバター、マーガリン、特にパイ専用に開発されたマーガリン、あるいは牛脂などの固状ないし塑状の油脂組成物を使用することができる。特に限定はされないが、一例としては、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独又は混合油或いはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が適する。
この油性層を、混捏物の層を構成する小麦粉全量に対し10〜100重量部、好ましくは20〜60重量部の範囲で使用する。
これらの油脂を使用した油中水型の油脂組成物の油脂の融点が15〜45℃のものが良い。油脂の融点が15℃未満の場合は、生地に油脂が融解して生地と油脂の層が形成し難くなる。油脂の融点が45℃を超える場合は、油脂を混合した生地が硬くなり展延性が悪くなる。
油性層、特にマーガリン中の水性層には、従来より使用されている乳製品・香料・乳化剤・糖を加えてものであっても良い。
また、今日においては、以上に示したような原料・工程を経て、既に多層構造を有した層状生地が市販されており、それら市販品を適宜用いることも可能である。
本発明における熱凝固性生地とは、成形の段階で自由に変形できる程度の可塑性があり、加熱により凝固するものであれば特に限定はされないが、可食性容器の底面部を形成するので、上部からの圧力に耐えれる程度の堅牢さがあった方が望ましい。
一例としては、小麦粉を必須成分とし、必要に応じて食塩、油脂類、乳製品、糖類、卵類、調味料(グルタミン酸類、核酸等)、イースト、化学膨張剤、フレーバー、水等の副原料を添加・混捏し、(若しくは発酵工程ありで)焼成等の加熱をしたものの中で、上記層状をなして膨張の方向に指向性がある層状生地以外のものを指す。特に限定はされないが、ドーナツ、クッキー、スナック、などが、望ましくはシュー、スポンジ、バターケーキ、マフィンなどが挙げられる。
熱凝固性生地の膨化の度合いは特に限定はされないが、熱凝固性生地は可食性容器の底面部を形成し、側面部を形成する層状生地と密着しさえすれば殆ど膨化しなくてもかまわない。
本発明の熱凝固性生地の製造法としては、従来より公知の方法を使用することができる。
熱凝固性生地は、強力粉の他に通常薄力粉または中力粉を併せて含み、それらの配合比によって生地の硬さが調製される。混捏物の層には特に油脂を使用する必要はないが、所望なれば通常使用されている練込み用油脂を使用することもできる。
層状生地と熱凝固性生地それぞれの製造方法は従来より公知の方法に準じて行えばよいが、そのそれぞれを組み合わせる工程は焼成の前であれば特に限定はされない。一般には層状生地であるパイ生地以外の、1回以上の発酵工程を有する層状生地や熱凝固性生地の場合は、ホイロ(第2発酵または最終発酵と呼ばれる)の後が望ましい。ホイロの後に内側の熱凝固性生地を組み合わせることにより、外側の層状生地が発酵中に十分に膨化することが可能である。
組合せ方は、層状生地の方は、まず図1のように層が水平方向に積層する形で且つ、その断面が水平側面に露出するように置いた場合に、層状生地はz軸を芯として湾曲して環状に配置する必要があるため、図1におけるx、y軸の方向の一端が長い、棒状あるいはひも状であることがのぞましい(図3参照)。
熱凝固性生地はその環状の層状生地の内側に配置し、(図4参照)その環状に配置した層状生地の回りにセルクルと呼ばれる筒状の型を使用するのが望ましいが、セルクルを使用しなくても、形状がやや低くなるものの容器としての機能は発現する。
環状に配置した層状生地は層が側面に露出するように湾曲していれば特にその形は限定されない。すなわちここで言う環状とは厳密に円である必要はなく、層状生地が一周して端面同士が接触またはそれに順ずる程度まで接近している状態を指し、好ましくは可食性容器としての機能を考えると端面同士が接触し、環が閉じている状態が望ましい。一例としては多角形や楕円・円などが挙げられる。
その層状生地同士の端面部分、および層状生地と熱凝固性生地との接触面(図4のaの部位)は焼成中に外れないよう、焼成前の状態で十分に密着させて膨張性生地の可食性容器としての機能をより高めることができ、よりその商品価値は高まる。
層状生地同士の端面部分の場合は層状生地を円弧状にした後に端面同士を圧迫することで、層状生地と熱凝固性生地との接触面の場合は、熱凝固性生地を上部から層状生地に押し付けることで、密着させることで生地同士を可能である。
なお、熱凝固性生地は可塑性が強い場合は層状生地の環状の内壁に沿って変形し、かつ層状生地の層にしみ込むため、特に密着のための手段は必要ない。
また、本願発明は特に焼成の際に型を必要とはしないものの、層状生地を筒状の型に入れて焼成させる場合は、特に層状生地同士の密着も必要ない。
層状生地と熱凝固性生地は、用いる生地の比重や配置により一概にはいえないものの、その重量比は(層状生地重量)/(熱凝固性生地重量)で下限が2以上、好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上が望ましい。2未満の場合、層状生地に対して熱凝固性生地が多すぎるため、凹部の容積が小さく、可食性容器としての機能を発揮しにくい。
一方上限は、20以下、好ましくは15以下が望ましい。20を上回ると、底部の生地の強度が足りなくなり、底が抜けるなどする為、こちらも可食性容器としての機能を発揮しにくい。
ホイロとよばれる二次発酵が必要な場合も、その条件は特に限定はなく、公知の方法に準じて行えばよい。ただ、ホイロにより生地が膨張するため、その膨張時に層状生地同士の密着がほどけていない方が望ましい。層状生地の環は隙間が開いていても可食性容器としての機能は果たせるが、閉じている方がより機能は高い。
容器内に設置された生地の焼成は公知の方法に準じて行えばよい。焼成条件は、装置および生地の量等により変化するので一概には規定できないが、通常、一般的には200℃前後で約15〜25分程度焼成することで当該組合せベーカリー製品を得ることができる。
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
<実施例1>
<熱凝固性生地(スポンジ生地)の調製>
以下の配合及び工程によりスポンジ生地を調整した。
(配合)
薄力粉100部、グラニュー糖100部、全卵100部、マーガリン(商品名、ニューコンボル800、不二製油株式会社製)50部、ベーキングパウダー2.5部
(工程)
上記配合にてシュガーバッター法(油脂と砂糖で先ず泡立てるシュガーバッター法)にて、以下の要領で熱凝固性生地を作成した。
A.マーガリンとグラニュー糖をミキサーで白っぽくなるまですり合わせた。
B.これに溶いた全卵を数回に分けて添加し、すり合わせた。
C.これに篩った、薄力粉を添加し、軽く混ぜ合わせ、熱凝固性生地を得た。
<層状生地(ペストリー生地)の調整>
以下の配合及び工程によりペストリー生地を調整した。
(配合)
中力粉100部、生イースト5部、上白糖15部、食塩1.2部、脱脂粉乳2部、全卵10部、マーガリン(商品名、ニューコンボル800、不二製油株式会社製)10部、加糖卵黄調製品(商品名、プロダッシュ800、不二製油株式会社製)、水45部
(工程)
ミキシングタイム:低速3分、中速4分→油脂添加→低速3分、中速4分、中高速5分
捏ね上げ温度 :25℃
フロアタイム :60分
発酵室温度/湿度:27℃ 75%
分割重量 :2000g
冷却寝かせ(リタード)時間:−18度/1時間
折り込み回数 :3つ折り3回
成型方法 :最終生地厚8mmに展延し、210mm×20mm(約50g)の帯状にカットする。
以上のようにして調整したペストリー生地を、層の露出した切断面を横に向け、すなわち側面に積み重なった層が露出するように環を作り、端をつなげた。
このペストリー生地を直径90mm、高さ35mmのセルクルの中に配置した。
32℃/湿度75%のホイロで1時間発酵させ、スポンジ生地を10gペストリー生地の輪の中に絞り、平らにならしてペストリー生地の環の内壁に密着させた、上火200℃、下火190℃で15分間焼成した。
焼成中にペストリー生地が縦方向へ、スポンジ生地は外へと膨化し、それぞれより強く接着し、ペストリー生地は内・外への膨化が落ち着くと堅牢な構造をとって可食性容器として使用できるベーカリー製品となった。
焼成後、ペストリー生地は内側のスポンジ生地よりも高く、スポンジ生地の上にフィリングを詰めることのできるような、凹型の容器が容易な方法で仕上がった。
食したところ、中央のソフトでしっとりした食感で、外側はペストリー生地のさっくりした食感であった。
また、実際にフィリングとして市販植物性クリーム(「フジサニートッピング200」、 不二製油株式会社製)をベーカリー製品の凹部に詰めたところ、底部からの漏出もなく、その風味も可食性容器の食感とあいまって良好なものであった。(図6参照)
<実施例2>
スポンジ生地をペストリー生地の環の中に絞る際にペストリー生地の環の内壁に密着させずに配置する以外は実施例1と同様の配合・手順でベーカリー製品を焼成した。
ホイロの時点でスポンジ生地は伸張しペストリー生地の環の内壁に密着し、焼成後の形状も実施例1と変わらないものとなった。また実施例1同様にフィリングを詰めても底部からの漏出は見られず、その風味は実施例1同様に良好なものであった。
<実施例3>
ペストリー生地を実施例1と寸法自体は同じであるが、セルクルを用いずに環状の形状にする以外は実施例1と同様の配合・手順でベーカリー製品を焼成した。
実施例1に比べ、スポンジ生地の内部から膨圧などにより外見はやや不均一にはなったものの、十分に可食性容器としての機能を果たせるベーカリー製品が得られた。また実施例1同様にフィリングを詰めても底部からの漏出は見られず、その風味は実施例1同様に良好なものであった。
<比較例1>
ペストリー生地を、層の露出した切断面を上に向け、すなわち上面に層が同心円状に露出するように輪を作り、端をつなげる以外は実施例1と同様の配合・手順でベーカリー製品を焼成した。(図5−a)
その結果、焼成中に環状のペストリー生地は内と外に向かって膨化するため環の内側が小さくなり、それに伴いスポンジ生地が上方へ伸張するため、必要以上に底の厚い、凹部の容積の小さな可食性容器しかえられなかった。また、フィリングを実際に詰めても、漏出こそ見られないものの、フィリングの量が少なくて風味のバランスを欠いたものであった。(図5−b)
<実施例4>
<リンゴの甘煮>
リンゴ(2個)の皮・芯を取り除き8つ割りにしたものに、砂糖60gをまぶして柔らかくなるまで加熱(リンゴより水分が出るため特に加水は必要ないが焦がさないように加熱する)、リンゴが半透明になるまで煮込み、無塩バター15gを加えて更に汁分がなくなる煮込み室温まで放冷。
<ベーカリー製品の作成>
生地を成型した時点で、上記作製したリンゴの甘煮を可食性容器の凹部に40重量部詰め、ホイロ、焼成工程に供する以外は実施例1と同様の配合・手順でベーカリー製品を焼成した。
実施例1に比べ、スポンジ生地の上部にリンゴの甘煮があるため、スポンジ生地の膨化がやや悪いものの、十分に可食性容器としての機能を果たせるベーカリー製品が得られた。また実施例1同様にリンゴの甘煮の底部からの漏出は見られず、また既存のアップルパイよりリンゴの甘煮の露出が大きく、商品価値の高い外見のものが得られた。
本発明により、層状生地と熱凝固性生地を特定の配置で組み合わせることにより、平易な方法にて、凹型の可食性容器を製造することが可能となった。またこの可食性容器は焼成後に他のフィリングといった具を乗せることも可能であるが、焼成前にも容器としての強度を有し、耐熱性のある具材を凹部に詰めての同時焼成も可能となった。
従来の凹型可食性容器の模式図。 層状生地の模式図。 層状生地の配置を示す模式図。 層状生地と熱凝固性生地の配置を示す模式図。 上面に層を同心円状に露出させた層状生地と熱凝固性生地の配置を示す模式図。 実施例1焼成後・フィリングを詰めた状態での図面代用写真
符号の説明
a 層状生地と熱凝固性生地との接触面

Claims (4)

  1. 層が側面に露出するように湾曲して環状に且つ接地するように配置した層状生地と、その環状の層状生地の内側に配置した熱凝固性生地を、焼成する事を特徴とする凹型組合せベーカリー製品の製造法。
  2. 層状生地がペストリーまたはパイである請求項1記載の凹型組合せベーカリー製品の製造法。
  3. 熱凝固性生地がシュー、スポンジ、バターケーキ、マフィンである請求項1記載の凹型組合せベーカリー製品の製造法。
  4. 請求項1ないし請求項3により作成された凹型組合せベーカリー製品。
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