JP4696909B2 - 火花点火式直噴エンジンおよびその組付方法 - Google Patents

火花点火式直噴エンジンおよびその組付方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数の噴口を有する燃料噴射弁を備えた火花点火式直噴エンジンおよびその組付方法に関するものである。
従来、点火プラグを備えるとともに、燃料を燃焼室内に直接供給する燃料噴射弁(インジェクタ)を備え、成層燃焼を行うことによって燃費改善を図るようにして火花点火式直噴
エンジンが知られている。成層燃焼のために、燃料噴射弁の噴口を直接電極に指向させた場合は、電極に燃料が液滴となって付着し易く、着火性が悪化するという問題がある。このため、下記特許文献1に示すように、燃焼室周縁部に配設した燃料噴射弁を、例えば8つの噴口を有するマルチホール型として、そのうちの3つの噴口を、点火プラグの電極近傍の下方に指向された下側噴口(特定噴口)、電極近傍で左方に指向された左側噴口、電極近傍で右方に指向された右側噴口として、この3つの噴口からの燃料噴霧によって電極近傍に濃混合気層を形成する成層化を得るようにしたものが開示されている。
また、特許文献1には、上記3つの噴口以外の5つの噴口を、均一燃焼のために、電極から離れた部分となるピストン頂面に指向させたものが開示されている。そして、特許文献1のものでは、燃料噴射弁の軸心にもっとも近い軸線(軸心)を有する噴口が、ピストン側が噴口のうち下側噴口の真下方向に位置される噴口となるように設定されたものが開示されている。
また、特許文献1には、さらに次のような技術内容も開示されている。すなわち、エンジンの低回転・低負荷域となる所定運転領域において、成層燃焼のために、圧縮行程途中で燃料噴射を行って電極周りにリッチな混合気を生成する一方、その他の運転領域では吸気行程中に燃料噴射を行って均一燃焼を行うことが開示されている。また、複数の噴口から噴射された燃料噴霧同士の相互干渉効果を利用して、点火プラグの電極周りに効果的にリッチとすることも提案されている。なお、特許文献2にも、特許文献1と同様なマルチホール型の燃料噴射弁を燃焼室周縁部に設けたものが開示されている。
さらに、特許文献3には、マルチホール型燃料噴射弁を、点火プラグと同様に燃焼室の略中央部に設けたものが開示されている。この特許文献3のものは、燃料噴射弁からの燃料噴霧をピストン頂面に指向させて、ピストン頂面で反射されて上昇される燃料噴霧が電極近傍を通過するようにしたものとなっている。
特開2005−98119号公報 特開2005−273554号公報 特開2005−256791号公報
ところで、成層燃焼のために、燃料噴射弁の噴口を電極近傍に指向させた場合、電極近傍の下方(電極先端の延長方向)に指向される下側噴口からの燃料噴霧がもっとも重要となる。この下側噴口(特定噴口)からの燃料噴霧が、電極から上下方向(気筒軸線方向)に大きく位置ずれしてしまうことは、電極周りに適正な濃混合気層を形成する上で、また燃料噴霧が直接電極に当接しないようにする上で重要となる。
一方、エンジンにおいては、各気筒間であらかじめ点火順が設定されており、エンジン始動のためにクランキングが行われたときに、クランキング後に燃料噴射がもっとも早い時期となる気筒について初回の点火が行われて、その後は、上記点火順にしたがった点火が行われることになる。例えば、直列4気筒エンジンにおいて点火順が、3番気筒、2番気筒、4番気筒、1番気筒の順に設定されているとき、エンジン始動時において、例えば4番気筒から点火が開始されたときは、順次1番気筒、3番気筒、2番気筒というようになるが、各気筒間においてクランキング後にもっとも始めに点火が行われる気筒がどの気筒になるのかということは確定していないものとなる。
ところで、燃料噴射弁は製造誤差を有するものであり、例えば燃料噴射弁の軸線と各噴口の軸線との間の開き角等に若干の製造誤差例えば±3.5度程度の誤差を有するものである。また、点火プラグについては、その製造誤差によって、燃焼室内への突出量が相違す
るものであり、特に絶縁碍子部分を極めて精度よく仕上げるのが難しいために、燃焼室内への電極の突出量というものについてもある程度の誤差(例えば±0.7mm)は避けられないものとなる。
上述のように、点火プラグおよび燃料噴射弁の双方の製造誤差によって、各気筒間において、電極先端と特定噴口(下側噴口)との距離にかなりの相違を生じることになる。とりわけ、上記距離が近い気筒においては、特定噴口からの燃料噴霧によって電極が濡れやすくなり、エンジン始動に問題を生じさせることになる。そして、エンジン始動時は、噴射される燃料が十分に昇圧されていない低圧状態であるために噴射された燃料の微粒化も十分でなく、とりわけ極冷間時では燃料の微粒化がより一層得にくいことから、極冷間時でのエンジン始動をいかに確実に行うかが問題となる。
本発明は、以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、極冷間時でのエンジン始動を確実に行えるようにした火花点火式直噴エンジンおよびその組付方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明における火花点火式直噴エンジンにあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
各気筒について、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離に関連した値となる距離データを把握する距離データ把握手段と、
外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記距離データ把握手段で得ている前記距離がもっとも大きくなっている特定気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、極冷間時におけるエンジン始動時には、電極と特定噴口の軸線との距離がもっとも大きい特定気筒、つまり噴射燃料によって電極がもっとも濡れにくい気筒をもっとも始めに点火させる気筒としてあるので、初回の点火での着火を確実に行うことができる。そして、初回の点火で確実に着火させることにより、エンジン回転数がすみやかに上昇して、この分噴射される燃料の圧力も上昇されて、これ以後に噴射される燃料の微粒化が促進されて、以後に点火される気筒の着火性も向上されることになる。このようにして、極冷間時でのエンジン始動を確実に行うことが可能になる。
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項4に記載のとおりである。すなわち、
前記距離データ把握手段が、前記電極を通して流れるイオン電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段によって検出されたイオン電流の大きさを記憶する記憶手段とから構成されており、
前記点初爆気筒設定手段は、前記記憶手段に記憶されているイオン電流の大きさから前記特定気筒を判別するように設定されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、検出されるイオン電流は、電極回りに存在する混合気の空燃比に応じた大きさとなり、イオン電流に対応した空燃比がリーンであることは電極と特定噴口の軸線との距離が大きいと判断することができる。したがって、あらかじめ得ておいた各気筒についての検出イオン電流の大きさを記憶しておくことにより
、この距離がもっとも大きくなる気筒を判別することができる。
前記距離データ把握手段が、前記電極の燃焼室内への突出量と前記特定噴口の軸線位置に関するデータとに基づいて決定された前記距離データを記憶する記憶手段を備えており、前記初爆気筒設定手段は、前記記憶されている距離データから前記特定気筒を判別するように設定されている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、電極と特定噴口の軸線との距離の相違に極めて大きな影響を与える電極の燃焼室内への突出量と特定噴口の軸線位置に関するデータとに基づいて、各気筒について電極と特定噴口からの燃料噴霧との距離を決定することができる。
前記特定気筒を初爆させる際に、該特定気筒の吸気行程において前記燃料噴射弁から燃料噴射が行われた後、該特定気筒についての初回の点火が実行される、ようにしてある(請求項4対応)。この場合、吸気行程での燃料噴射によって、圧縮行程で燃料噴射する場合に比して燃料の微粒化が促進されることになり、燃料による電極の濡れ防止がより一層十分なものとなって、エンジン始動性をより高める上で好ましいものとなる。
前記目的を達成するため、本発明における火花点火式直噴エンジンにあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項5に記載のように、
各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
各気筒について、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離に関連した値となる距離データを把握する距離データ把握手段と、
外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記距離データ把握手段で得ている前記距離がもっとも小さい気筒以外の気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、極冷間時でのエンジン始動時に、各気筒間においてもっとも早く点火される気筒として、上記距離がもっとも小さくなっている気筒を除外するように、つまり燃料による濡れの可能性がもっとも高い気筒を除く他の気筒をもっとも早く点火が行われる気筒としてあるので、初回の点火による着火の確実性を高めて、エンジン始動を確実に行うことができる。
前記目的を達成するため、本発明における火花点火式直噴エンジンにあっては次のような第の解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項に記載のように、
各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
各気筒間において、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離がもっとも大きくなる特定気筒を記憶している記憶手段と、
外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記記憶手段に記憶されている特定気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
を備えているようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に対応した効果を同様の効果を得ることができる。
前述した第1の解決手法〜第の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項、請求項に記載のとおりである。すなわち、
前記電極が燃焼室の略中央部に配設され、
前記燃料噴射弁が、燃焼室周縁部に配設されて、前記複数の噴口として、前記特定噴口の他に、ピストン頂面方向に指向される他の噴口を有し、
各気筒について、それぞれ2つの吸気弁が設けられ、
前記燃料噴射弁が前記2つの吸気弁間に位置されている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、燃料噴射弁を燃焼室周縁部に設けたいわゆるサイド噴射とされる。そして、一部の噴口はピストン頂面に指向されているので、もっぱら電極回りをリッチ化する成層燃焼の他に、気筒内に極力均一に燃料分布させた均一燃焼を行う場合にも対応できる噴射態様を得ることが可能となる。また、特に自動車用として広く普及している吸気2弁式のエンジンに本発明を適用する上で好ましいものとなると共に、燃料噴射弁を、2つの吸気弁の間という大きな空間を有効に利用して配設することができる。
前記電極近傍に指向される噴口として、前記特定噴口の他に、該電極の左側方に指向された左側方噴口と、該電極の右側方に指向された右側方噴口とを有し、
前記特定噴口、左側方噴口および右側方噴口の各噴口から前記電極までの距離が20mm以上に設定され、
前記特定噴口と前記左側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて
、エンジンの低回転・低負荷域となる所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該左側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定され、
前記特定噴口と前記右側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、前記所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該右側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定されている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、電極周りでの成層化状態が、燃料噴射弁から電極を見たとき、濃混合気が略V字状となって電極の下方および左右側方を囲んだ状態となって、成層化として極めて好ましい状態が得られる。
前記目的を達成するため、本発明における火花点火式直噴エンジンの組付方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項に記載のように、
各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向され、
外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、各気筒のうち、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離がもっとも大きくなっている特定気筒に設定するようにした火花点火式直噴エンジンの組付方法であって、
各気筒間において、1つの点火順をあらかじめ設定しており、
各気筒毎に取付けられる点火プラグと燃料噴射弁との組み合わせの選択が、前記あらかじめ設定された点火順に、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離が順次小さくなるように行われ、
各気筒毎に、前記選択された組み合わせでもって点火プラグと燃料噴射弁とを取付ける、
ようにしてある。上記解決手法によれば、各気筒間において、点火順序が、上記距離が大きい順、つまり電極が燃料によって濡れる危険性の低い順とされるので、エンジン始動をより一層確実に行う上で好ましいものとなるという効果を得るためのエンジンの組付方法が提供される。
本発明によれば、極冷間時でのエンジン始動性を高めることができる。
以下に、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明するが、まず全体の概要について説明し、その後、燃焼室内への電極突出量に応じた特定噴口の軸線位置の設定(燃料噴射弁の選択)の点、およびエンジン始動時における初爆気筒の選択の点について説明する。
図1は、火花点火式直噴エンジン1を示し、このエンジン1は、紙面直角方向に直列に複数の気筒2を有する直列多気筒(実施形態では4気筒)エンジンとされている(図1では1つの気筒のみが示される)。各気筒2は、シリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有しており、気筒2内にはピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されている。このピストン5とシリンダヘッド4との間の気筒2内には燃焼室6が区画されている。燃焼室6は、気筒2の天井部における略中央部からシリンダヘッド4の下端面付近まで延びる2つの傾斜面を有するいわゆるペントルーフ型燃焼室とされている。
シリンダヘッド4には、図2に示すように、2つの吸気ポート10(2つの吸気ポートを区別するときは符合10A、10Bでもって示すこととする)と、2つの排気ポート11とが形成されている(図1ではいずれも1つのみ開示)。この2つの吸気ポート10は、その各一端が各気筒2天井部における傾斜面の一方から燃焼室6に開口され、その各他端側が燃焼室6から斜め上方に延びて、エンジン1の一側面(図1中右側面)に互いに独立して開口されている。各吸気ポート10の燃焼室6側の開口端には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される吸気弁12が配置されている(図1ではいずれも1つのみ開示)。2つの排気ポート11には、その各一端が各気筒2の天井部における傾斜面の他方から燃焼室6に開口され、その各他端側は、途中で1つに合流した後略水平に延びてエンジン1の他端面(図1中左側面)に開口されている。各排気ポート11の燃焼室6側の開口端には、それぞれ所定のタイミングで開閉作動される排気弁13が配置されている(図1ではいずれも1つのみ開示)。
各吸気ポート10は、吸気通路30に接続されている。この吸気通路30には、それぞれ図示を略すが、その上流側から下流側へ順次、エアクリーナ、吸入空気量センサ、スロットル弁、サージタンク等が配設されている。なお、上記スロットル弁は、実施形態では、アクセルペダルとは機械的な連係が遮断されて、アクセル開度に応じて電子的にその開度が変更制御されるようになっている。また、上記サージタンクは、各気筒毎に対して個々独立した独立分岐管によって接続されている(図2で示す吸気通路30はこの独立分岐管が示される)。
各排気ポート11は、排気通路31に接続されている。この排気通路31には、それぞれ図示を略すが、その上流側から下流側へ順次、リニア酸素センサ、三元触媒、NOx吸収剤が配設されている。なお、上記リニア酸素センサは、排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられるもので、理論空燃比を含む所定範囲において酸素濃度に対してリニアな出力が得られるようになっている。また、NOx吸収剤は、排気中の酸素濃度の高い雰囲気でNOxを吸収する一方、酸素濃度の低下に伴い吸収したNOxを放出し、その放出NOxを排気中のHC、CO等により還元浄化するNOx吸収還元タイプのものとされている。
燃焼室6の上部には、4つの吸排気ポート10,11(4つの吸排気弁12、13)に囲まれた燃焼室6の略中心に、点火プラグ16が配設されている(図2をも参照)。この点火プラグ16の先端の電極Eは、燃焼室6の天井部から所定距離だけ突出した位置にある。また、燃焼室6の周縁部には、2つの吸気ポート10間で、その各吸気ポート10下方において、燃料噴射弁18が配設されている。この燃料噴射弁18は、複数の噴口、具体的には6つの噴口を備えたマルチホール型の燃料噴射弁とされている。各噴口は、当該各噴口から噴射される燃料噴霧が後述するよう点火プラグ16の電極E近傍及びピストン5上方側に指向するよう、その燃料噴射弁18の燃料噴射方向が設定されている。
図2において、一方の吸気ポート10Aに関連して、スワール弁40が設けられている。すなわち、2つの吸気ポート10Aと10Bとは、シリンダヘッド4内において隔壁4aによって互いに個々独立されている一方、吸気通路30の下流端部(独立分岐管の下流端部)には、隔壁4aに連なる隔壁30aが形成されて、2つの吸気ポート10Aと10Bとは、燃焼室6側から上流側に向けて所定距離だけ互いに独立した通路となるように構成されている。そして、隔壁30aには、一方の吸気ポート10Aの開度変更を行うスワール弁40が配設され、このスワール弁40の駆動が電磁式のアクチュエータ40aによって行われる。これにより、スワール弁40を全開としたときは、2つの吸気ポート10A、10Bからほぼ同量の吸気が導入されて、燃焼室6内でのスワールの生成は実質的に行われないことになる。スワール弁40を全閉とすることにより、他方の吸気ポート10Bからのみ燃焼室6内に吸気が供給されて、燃焼室6内には図2矢印で示すように吸気のスワールが生成されることになる。スワール弁40の開度を調整することにより、スワールの強さが変更される。
図3に示すように、燃料噴射弁18の基端部には、全気筒2に共通の燃料分配管19が接続されており、その燃料分配管19は、燃料供給系20から供給される高圧の燃料を各気筒2に分配供給するようになっている。この燃料供給系20は、燃料分配管19と燃料タンク21とを接続する燃料通路22を有し、この燃料通路22には、その上流側から下流側に向けて順次、低圧燃料ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25、高圧燃料ポンプ26及び燃圧を調節可能とされる高圧レギュレータ27が接続されている。高圧燃料ポンプ26及び高圧レギュレータ27は、リターン通路29により燃料タンク21側に接続されている。なお、符合28は、燃料タンク21側に戻す燃料の圧力状態を整える低圧レギュレータである。これにより、低圧燃料ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料は、低圧レギュレータ24により調圧された後、燃料フィルタ25を介して高圧燃料ポンプ26に圧送される。そして、高圧燃料ポンプ26によって昇圧した燃料の一部を高圧レギュレータ27により流量調節しながらリターン通路29によって燃料タンク21側に戻すことで、燃料分配管19へ供給する燃料の圧力状態を適正値、例えば、12MPa〜20MPaに調整する。
図4には、エンジン1を制御するための制御系統が示される。この図4において、50は、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)である。このコントローラ50によって、点火回路17(点火時期制御用)、燃料噴射弁18(燃料噴射量および燃料噴射タイミング制御用)、燃料供給系20の高圧レギュレータ27(燃圧調整用)、スワール弁40(のアクチュエータ40a)が制御される他、前述した吸気通路30に配設された電子制御式のスロットル弁が制御される。このコントローラ50には、エンジン回転数センサS1からのエンジン回転数信号、アクセル開度センサS2からのアクセル開度信号、温度センサS3からのエンジン冷却水温度信号が、クランク角センサS4からのクランク角信号、外気温センサS5で検出された外気温度、後述するイオン電流検出回路42で検出されたイオン電流の大きさが入力される。
次に、コントローラ50による制御の内容について説明する。
1.燃料噴射制御
燃料噴射制御は、エンジン温度に応じて燃料噴射制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。燃料噴射制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば60度C)以上の温間時は、図5に示す温間時のマップが選択される。温間時のマップは、エンジンの運転状態が低負荷・低回転の所定運転領域にある時、成層燃焼領域とされ、その他の運転領域では均一燃焼領域とされる。また、冷間時の燃料噴射制御マップは、図示を略すが、全ての運転領域において均一燃焼領域とされる。
成層燃焼領域では、燃料噴射弁18による燃料噴射時期を圧縮行程の所定時期、例えば、一括噴射の場合、圧縮上死点前(BTDC)0°〜60°の範囲に燃料を噴射させて、点火プラグ16の近傍に混合気が層状に偏在する状態で燃焼させる成層燃焼が行われる。この成層燃焼領域では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御される。また、成層燃焼領域以外の領域は、均一燃焼領域とされており、吸気行程において燃料噴射弁18から燃料を噴射させて吸気と十分に混合し、燃焼室6内に均一な混合気を形成した上で燃焼させる均一燃焼が行われる。この均一燃焼領域では、大部分の運転領域で混合気の空燃比が略理論空燃比(A/F≒14.7)になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御されるが、全負荷運転状態では、空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比(A/F=13程度)に制御して、高負荷に対応した大出力が得られるようになっている。なお、エンジン冷間時は、前述したように、全運転領域において均一燃焼が行われる(空燃比は理論空燃比あるいはそれよりもリッチ)。
また、上記低回転・低負荷域となる所定運転領域での高負荷域では、図7に示すように、
例えば2段階での分割噴射が実行される。図7に示す分割噴射では、遅い時期に燃料噴射が行われる後段噴射の開始は、例えばBTDC30度〜40度の範囲に設定され、早い時期に燃料噴射が行われる前段噴射は、後段噴射時期よりも例えばクランク角で40度程度早い時期に噴射が開始される。上記所定運転領域での高負荷域において、要求される燃料噴射量のうち、後段噴射で噴射される燃料量はほぼ一定量とされて、燃料噴射量の変更は、前段噴射での燃料噴射量の変更によって行われる。
2.燃圧制御
燃圧制御は、エンジン温度に応じて燃圧制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。燃圧制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば、60度C)以上の温間時は、図6に示す温間時のマップが選択される。この図6のマップでは、成層燃焼領域では、エンジン回転数の増大に応じて燃圧が徐々に大きくなるように変化され(最低燃圧a1が例えば12MPaとされ、最高燃圧a2が例えば20MPaとされる)。また、均一燃焼領域では、常時、成層燃焼領域での最高燃圧a2という一定値とされて、エンジン回転数上昇に伴う燃圧上昇が抑制された状態となる。なお、エンジン温度が所定値よりも低い冷間時は、常時、成層燃焼領域での最高燃圧a2に相当する燃圧とされる。また、エンジン始動時の燃圧は、高圧燃料ポンプ26がカム軸によって駆動される関係で燃圧が十分に上がらないことから、例えば、0.5MPa程度になっている。
3.スワール制御
エンジン低回転・低負荷域となる所定運転領域では、スワール弁40が開かれて、燃焼室6内に吸気のスワールが生成される。この場合、スワール弁40の開度は、上記所定運転領域においては、エンジン負荷の大小にかかわらず例えば常に全閉としてもよいが、低負荷域では開度が大きくされ(全開に近い)、エンジン負荷の増大に伴って徐々に開度が小さくされ、高負荷域で全閉となるように設定することもできる。
次に、図8〜図11を参照しつつ、燃料噴射弁18の各噴口について詳述する。まず、図8〜図10は、燃料噴射弁18の各噴口から噴射された燃料噴霧の状態を互いに異なる方向から見た状態を示すものである。また、図11は、マルチホール型の燃料噴射弁18の軸線を中心に燃料噴射方向先端側を見た時の軸線に対する各噴口の軸線との三次元傾斜角を模式的に示した図である。
図11において、LBはマルチホール型の燃料噴射弁18の軸線、L1ないしL6は第1噴口〜第6噴口の各軸線、A1〜A6は第1噴口〜第6噴口から噴射された燃料の噴霧角、Eは点火プラグの電極を示している。全噴口の噴口径は同一とされており、例えば、0.15mmに設定されている。ピストン軸線方向から見たとき、点火プラグ16の電極Eを通る気筒2の直径方向延長線上に、燃料噴射弁18の軸線LBが位置するように、燃料噴射弁18が配設されている。図11において、軸線LBを中心とする径方向の目盛りは、1目盛りが5度の開き角を示しており、また、軸線LBを中心とする周方向の目盛りは、1目盛りが15度の開き角を示している。
各噴口の軸線の位置関係について説明すると、まず、点火プラグ16の電極E周りに濃混合気を成層化するための噴口が、第1噴口〜第3噴口とされている。この第1噴口は下側噴口あるいは特定噴口となるもので、その軸線L1は、軸線LBから電極E近傍で下方の所定位置に指向するよう配置されている。なお、第1噴口の軸線L1、噴霧角A1は、2つの吸気弁12の最大リフト位置の間に位置、つまり、吸気弁の可動範囲外に位置されている。また、第2噴口は、左側噴口となるもので、その軸線L2は、軸線LBから電極E近傍で側方(図中左側)の所定位置に指向するよう配置されている。さらに、第3噴口は右側噴口となるもので、その軸線L3は、軸線LBから電極E近傍で側方(図中右側)の所定位置に指向するよう配置されている。なお、第2噴口の軸線L2、噴霧角A2、第3噴口の軸線L3、噴霧角A3は、ともに吸気弁12の最大リフト位置の可動範囲内に位置されている。このように、第1噴口と第2噴口と第3噴口との各軸線は、電極Eの近傍を指向しつつ、しかも下方および左右側方から電極Eを取り囲むように設定されている。
第4噴口〜第6噴口は、それぞれピストン側噴口となるもので、電極E近傍以外となるピストン頂面に向けて燃料噴射を行うものである。第4噴口の軸線L4は、軸線LBからピストン側(図中下方側)でピストン下死点位置よりも上方側の所定位置(図中左側)に指向するよう配置されている。第5噴口の軸線L5は、軸線LBからピストン側(図中下方側)で、ピストン下死点位置よりも上方側の所定位置(図中センター位置で、第1噴口の軸線L1の真下位置)に指向するよう配置されている。第6噴口の軸線L6は、軸線LBからピストン側(図中下方側)でピストン下死点位置よりも上方側の所定位置(図中右側)に指向するよう配置されている。なお、全噴口から噴射された全体の燃料噴霧は、軸線LBを中心とする70°以下の円錐空間内に収まるように設定されている。
電極E周りに燃料噴霧を噴射する3つの噴口、つまり下側噴口、左側噴口、右側噴口のうち、下側噴口の燃料噴霧のペネトレーションが左側噴口と右側噴口からのペネトレーションよりも大きくなるように、下側噴口の軸長が左側噴口の軸長および右側噴口の軸長よりも長く設定されている。なお、電極E周り以外に燃料噴霧を噴射する各ピストン側噴口の軸長は、左側噴口の軸長および右側噴口の軸長と同一に設定されている。以上に加えて、全噴口のうち下側噴口の軸線L1が、燃料噴射弁18の軸線LBにもっとも近い位置となるように設定されており、しかも軸線L1の軸線LBに対する開き角も、他の噴口における軸線L2〜L6の軸線LBに対する開き角よりも小さくなるように設定されている。
以上説明したように、点火プラグの電極Eの下方及び両側方に、第1噴口〜第3噴口の軸線L1〜L3が配置されているため、成層燃焼時、点火プラグの電極E近傍に微粒化された混合気を集めることができ、着火性を向上することができる。また、軸線LBよりもピストン側に第4噴口〜第6噴口の軸線L4〜L6が配置されているため、燃焼室6全体に混合気を存在させることができ、均一燃焼時における混合気の均質化を向上することができる。また、第1噴口と第4噴口〜第6噴口の各軸線L1、L4〜L6は、吸気弁12の可動範囲外に配置されるため、多噴口としながらも大半の噴口を吸気弁12の可動範囲外に配置でき、各噴口から噴射される燃料噴霧が吸気弁12に衝突することを抑制することができる。
ここで、点火プラグの電極E近傍に配置される第1噴口〜第3噴口の各軸線L1〜L3とは、相互干渉効果を得るために、次のような関係に設定されている。すなわち、第1噴口〜第3噴口(第4噴口〜第6噴口についても同じ)は、電極Eに対して20mm以上離間した距離とされている。また、第1噴口の軸線L1と第2噴口の軸線L2との開き角が15度〜25度の範囲(実施形態では20度)となるように設定され、かつ、第1噴口の軸線L1と第3噴口の軸線L3との開き角が15度〜25度の範囲(実施形態では20度)となるように設定されている。これにより、第1噴口からの燃料噴霧と第2噴口からの燃料噴霧とが相互干渉効果によって電極E近傍で互いに連続したものとなり、同様に、第1噴口からの燃料噴霧と第3噴口からの燃料噴霧とが相互干渉効果によって電極E近傍で互いに連続したものとなる。この相互干渉効果が得られた状態では、図11において、電極E近傍において、軸線L1からL2に向けて伸びる連続した燃料噴霧が生成され、かつ軸線L1から軸線L3に向けて伸びる連続した燃料噴霧が生成されることになる(図11において連続した燃料噴霧の形状が略V字形状となる)。下側噴口からの燃料噴霧のペネトレーションが、左側噴口および右側噴口からの燃料噴霧のペネトレーションよりも大きくなるように設定することにより、相互干渉効果によって、軸線L1が電極Eに対して下方から接近する方向へと大きく移動されてしまう事態が防止あるいは抑制されることになる。
ここで、エンジン低回転・低負荷域での高負荷域では、筒内圧力が大きくなるため、各噴口から噴射された燃料噴霧のペネトレーションが小さくなる。このペネトレーションが小さくなるということは、特に成層化に関連した第1噴口〜第3噴口から噴射された燃料噴霧が、電極Eを通りすぎて反対側のシリンダ壁に向かう割合が減少して、電極E付近に留まる割合が大きくなることを意味する。したがって、成層化を行う所定運転領域において、特に所定運転領域の高負荷域において、スワールを生成することにより、電極E周りの濃混合気層が、気筒軸線方向から見たとき、電極Eを通って燃料噴射弁の軸線と直交する方向のうち、スワールに乗る側に移動、拡散されるので、この高負荷域において電極E周りが過度にリッチになりすぎるのを防止する上で好ましいものとなる。
上述した電極E周りでの過度なリッチ化防止のために、前述のように、スワール生成が行われると共に、圧縮行程中での分割噴射が実行される。スワール生成により、電極Eを取り囲んでいた濃混合気層はスワールの勢いによって、全体的に電極Eからシリンダ壁面方向へと移動されて、電極E周辺のうち、濃混合気層の移動方向とは反対側には濃混合気層が位置されない状態となる。これにより、初期燃焼割合が低減されて、燃費向上となる。とりわけ、エンジン低回転・低負荷域での低負荷域から、エンジン負荷の増大に伴って徐々にスワールの強さを強くする(スワール弁の開度をエンジン負荷の増大に応じて徐々に小さくする)ことにより、燃料噴射量の増大に応じた適切な強さのスワールとして、電極E周りに生成される濃混合気層を、着火性を確保しつつ燃費向上を図ることのできる最適な状態に設定することができる。
以上に加えて、前述した分割噴射を行うことによって、一括噴射(例えば図7後段噴射時期で全ての燃料噴射量を実行する噴射)を行う場合に比して、電極E周りの濃混合気層生成をより一層促進することができる。すなわち、同じ量の燃料噴射を行う場合であっても、分割噴射の場合は、前段噴射された分の燃料噴霧は、電極Eへの通電(点火)実行までの期間に燃焼室6内においてかなりの割合が拡散されてしまい、電極E周りでの濃混合気層生成には殆ど寄与しないこととなる(後段噴射された燃料噴霧のみが実質的に電極E周りでの濃混合気層生成に寄与する)。エンジン低回転・低負荷域となる所定運転領域での電極E周りの混合気濃度は、該所定運転領域での低負荷域での電極E周りの混合気濃度とほぼ同程度となるように設定するのが好ましいものである。
図12,図13は、燃料噴射弁18のシリンダヘッド4に対する取付例を示すものである。図中、45はシリンダヘッド4に形成された取付孔であり、図12では、取付孔45がシリンダヘッド4の外部への開口端面に開口されている様子が示される。シリンダヘッド4の外側端面には、取付孔45の周縁部において、2つの位置決め用の突起部4c、4dが形成されている。この2つの突起部4cと4dとの間の距離(相対向する面の間の距離)は、所定寸法となるように精度よく仕上げられている。
燃料噴射弁18は、前記取付孔45にがたつきなく挿入される筒部18cと、筒部18cの基端部からほぼ径方向に伸びる突起部18dとを有し、この突起部18dの先端部が、外部からの通電用のカプラが着脱自在に接続される接続端子部18eとされている。なお、実施形態では、筒部18cと突起部18dとが一体成形されているが(電気的接続部分は除く)、突起部18dを筒部18cとは別体に形成して、後に互いに周方向および筒部18cの軸線方向に移動しないように規制された状態で一体に組付するようにしてもよい。
燃料噴射弁18のシリンダヘッド4に対する取付けは、その筒部18cを所定深さまで取付孔45に挿入することにより行われる。このとき、燃料噴射弁18の突起部18cが、シリンダヘッド4に形成された一対の突起部4cと4dとの間に位置される(挟まれる)
。燃料噴射弁18のc突起部18cの幅は、一対の突起部4cと4dとの間の寸法に対応して精度よく仕上げられて、突起部18cが、一対の突起部4cと4dとの間にがたつきなく挿入される状態とされる(この状態が図13の状態である)。そして、図13の取付状態においては、各噴口の電極Eに対する位置関係が図11の状態となるように設定されている。このように、燃料噴射弁18の突起部18cは、シリンダヘッド4に形成された一対の突起部4c、4dと共に、燃料噴射弁18を所定の取付角度(回動角度)でもってシリンダヘッド4に取付けるための位置決め(用の治具)の機能をも果たすようになっている。前述したように、下側噴口の軸線L1が燃料噴射弁18の軸線LBにもっとも近い位置にあるため、燃料噴射弁18をエンジンへの取付状態からその周方向に回動させたときに、軸線L1の電極Eに対する上下方向の距離の変動量が、他の軸線L2〜L6に比して軸線L1がもっとも小さいものとなる。すなわち、軸線L1と電極Eとの上下方向距離が極力一定値となるようにする上で好ましい設定となっている。
次に、燃焼室内への電極突出量に応じた特定噴口の軸線の位置設定(燃料噴射弁の選択)の点について、図14以下を参照しつつ説明する。まず、図14は、シリンダヘッド4に実際に点火プラグ16を取付けて、電極Eの燃焼室6(の上面)からの突出量を計測する一例を示している。なお、使用される点火プラグとしては、あらかじめの検査によって、点火プラグ16のシリンダヘッド取付孔(の内面に設けられている係止段差面)に対する着座面から中央電極を覆う絶縁碍子先端までの長さの誤差が例えば±0.7mm以下のものを用いるようにしてある。このような誤差範囲の設定によって、特に大気圧状態(吸気行程および圧縮行程前半での気筒内の圧力状態に相当)において、特定噴口からの燃料噴霧が電極Eに直接当接しない態様とされ、しかも電極Eから離れすぎない態様とされる。シリンダヘッド4は、各気筒(実施形態では4気筒)に点火プラグ16が取付けられた状態で、シリンダブロック側の合わせ面4g側を上向にした状態で、基台K上に載置される。この状態で、例えばレーザ計測器LSによって、各電極Eの先端(図14では上端)の上記合わせ面4gからの距離が計測される。この計測結果が、コントローラ50に内蔵されている記憶手段(メモリ)MRに記憶される。なお、シリンダヘッド4は、その燃焼室形状等を含めて極めて精度よく仕上げられており、シリンダヘッド4そのものの製造誤差は、点火プラグ16や燃料噴射弁18(の噴口)の製造誤差に比して、無視できるものとなっている。なお、LS1はレーザ計測器LSの発光部であり、LS2はレーザ計測器LSの受光部である。
図14で示す手法によって得られた計測データは、例えば図15のようにされる。レーザ計測器LSで得られるデータは、合わせ面4gと電極E先端とのなす距離であるので、この距離が小さいほど、電極E先端の燃焼室内からの突出量Yが大となる。図15では、電極E先端の燃焼室内からの突出量が大きい方から小さい方へ順に、3番(NO3)気筒、1番(NO1)気筒、2番(NO2)気筒、4番(NO4)気筒となっている。
図16は、燃料噴射弁18の軸線LBと特定噴口(第1噴口)の軸線L1とのなす角度θを示すものであり、あらかじめの検査によって、θの所定値からの誤差が例えば±3.5度以下とされた燃料噴射弁18を用いるようにしてある。4気筒分となる合計4本の燃料噴射弁18のθが計測されて、そのデータがICタグ等によって各燃料噴射弁18に付される。実際の計測値を、小さい方から多き方へ順に、θ1、θ2、θ3、θ4とされる。特に図16から明確なように、θが大きいほど、特定噴口の軸線L1が、電極Eに接近した状態となる。
前述のように計測された電極Eの燃焼室内への突出量Y(計測データはY1〜Y4)と、角度θ(計測データはθ1〜θ4)とを照合して、その組み合わせが決定される。すなわち、突出量がもっとも大きいY1のデータ値を有する点火プラグ16に対しては、もっとも小さい角度θ1を有する燃料噴射弁18が対応付けられ、突出量が2番目に大きいY2
のデータ値を有する点火プラグ16に対しては、2番目に小さい角度θ2を有する燃料噴射弁18が対応付けられ、突出量が3番目に大きいY3のデータ値を有する点火プラグ16に対しては、3番目に小さい角度θ3を有する燃料噴射弁18が対応付けられ、突出量がもっとも小さいY4のデータ値を有する点火プラグ16に対しては、もっとも大きい角度θ4を有する燃料噴射弁18が対応付けられる。そして、このようにして対応付けられた関係となるように、シリンダヘッド4に対して燃料噴射弁18が選択的に組付けられ組付完了状態が図17に示される。なお、大気圧状態において、特定噴口からの燃料噴霧が電極と干渉しないようにされるが、特定噴口からの燃料噴霧の直径は電極E近傍において2mm程度である。
図17の組付後において、各気筒における電極Eと特定噴口の軸線L1との距離Xが、大きい方から小さい方へ順にX1〜X4で示されるが、このX1〜X4は、Y1〜Y4とθ1〜θ4とに基づいて演算により算出される(例えばX1はY1とθ1とに基づいて参照されるということ)。このように、実施形態では、もっとも大きい距離X1とされた気筒が3番気筒とされ、2番目に大きい距離X2とされた気筒が4番気筒とされ、3番目に大きい距離X3とされた気筒が2番気筒とされ、もっとも小さい距離X4とされた気筒が1番気筒とされる。そして、前記記憶手段MRには、上記距離X(X1〜X4)とこれに対応する気筒との関係が記憶されるが、少なくとも、もっとも大きい距離X1を有する気筒(3番気筒)、およびもっとも小さい距離X4を有する気筒(1番気筒)が記憶される。
図18は、前述した点火プラグ16と燃料噴射弁18とを対応づけて組付ける手順をまとめて示すものである。すなわち、ステップQ1において、実機用としてそのまま使用されるべきシリンダヘッド4に点火プラグ16を取付け、次いでステップQ2において、図14に示すように各点火プラグ16における電極Eの燃焼室内からの突出量を計測して、その計測結果(Y1〜Y4)を記憶手段MRに記憶させる。ステップQ2の後は、ステップQ3において、点火プラグ16が取付けられたシリンダヘッド4をシリンダブロックに組み付け、通常のエンジンの組立が行われる(クランクシャフト等の組付けも行われる)。
上記ステップQ1〜Q3とは並行して、ステップQ5において、全気筒分の燃料噴射弁18について、軸線LBと特定噴口の軸線L1との角度θが計測される(θ1〜θ4の計測値を得る)。このステップQ5で得られた計測値は、各燃料噴射弁18にタグ等を利用して各燃料噴射弁18特有のデータとして付される。なお、実施形態では、計測データθ(ステップQ5での処理)は、エンジン組立工場とは別の場所、より具体的的には燃料噴射弁18を製造する工場において得るようにしてあり、エンジン組立工場には、あらかじめ計測データθが付された燃料噴射弁18が納入されるようになっている。
ステップQ4では、シリンダブロック等に組付けられると共に既に点火プラグ16が取付けられているシリンダヘッド4に対して、燃料噴射弁18が取付けられる。この燃料噴射弁18の取付の際には、電極Eの燃焼室内からの突出量Y(Y1〜Y4)に応じて、角度θ(θ1〜θ4)の大きさを対応付けて行われる。
なお、ステップQ2とステップQ3との間で、シリンダヘッド4から各点火プラグ16を全て取外して、ステップQ4において再びシリンダヘッド4に各点火プラグ16を取付けるようにしてもよい。この場合、シリンダヘッド4のシリンダブロック等への組付けを、従来同様に、点火プラグ16が取付けられていない状態で行うことができる。また、ステップQ2で得られた計測データとステップQ5の計測で得られたデータとに基づいて、点火プラグ16と燃料噴射弁18とを対応付けておき(例えば1つの点火プラグ16と1つの燃料噴射弁18とからなる1気筒分のセット体を、全気筒分となる4セットに分けておく)、ステップQ4において、1つの気筒毎にセット関係にある点火プラグ16と燃料噴射弁18とを取付けるようにすることもできる。
ここで、エンジン始動時における各気筒間での点火順について説明する。まず、点火順序(吸気行程順ともなる)が、例えば3番気筒、2番気筒、4番気筒、1番気筒というように設定される。エンジン始動時においては、各気筒間においてもっとも早く混合気に点火が行われる気筒が、次のように選択される。すなわち、エンジン冷機時を前提として、外気温度が例えば0度C以下の極冷間時には、もっとも大きい距離X1とされた3番気筒が特定気筒とされて、この特定気筒である3番気筒から点火が行われる(3番気筒の点火が行われた後は、通常の点火順での点火が行われる)。もっとも早く点火が行われる3番気筒においては、クランキング回転数程度の小さい回転数であるために、噴射燃料の圧力が十分に小さくて微粒化が十分に行われていない状態とされるが、もっとも大きいい距離X1とされているので、その電極Eが燃料によって濡れてしまうことがなく、確実に着火されることになる。
また、実施形態では、各気筒間において、極冷間時でのエンジン始動時にもっとも遅く点火されるのがもっとも小さい距離X4とされた1番気筒になるので、この1番気筒が点火されるまでにはエンジン回転数が十分に上昇して燃料噴射圧力も十分に上昇して、噴射される燃料の微粒化も十分促進されたものとなり、もっとも小さい距離X4とされた1番気筒での着火も確実に行われて、エンジン始動をより一層確実に行うことができる。なお、もっとも大きい距離X1とされた気筒についての点火が行われた後の点火順は、距離Xの大きさを考慮しないようにすることもできる。上述した、極冷間時でのエンジン始動時には、燃料の微粒化促進のために吸気行程での燃料噴射とされて、圧縮行程での燃料噴射は行われないようになっている。したがって、例えば、エンジン始動のためにクランキングしたときに、吸気行程となる気筒が特定気筒としての3番気筒以外の別の気筒(例えば1番気筒)であっても、この別の気筒に対しては吸気行程での燃料噴射や点火を行うことなく、3番気筒が吸気行程となった時点で始めて燃料噴射を行ってその後に3番気筒の点火が行われることとなる。
エンジン冷機時であることを前提として、極冷間時以外でのエンジン始動時、例えば外気温度が0度Cを超えるときのエンジン始動は、迅速なエンジン始動のために、各気筒間においてもっとも早く混合気に点火が行われる気筒が、次のように選択される。すなわち、もっとも小さい距離X4とされた1番気筒が最小気筒とされて、この最小気筒である1番気筒から点火が行われる(1番気筒の点火が行われた後は、通常の点火順での点火が行われる)。もっとも早く点火が行われる1番気筒においては、クランキング回転数程度の小さい回転数であるために、噴射燃料の圧力が十分に小さくて微粒化が十分に行われていない状態とされるが、もっとも小さい距離X1とされているので、その電極E回りには気筒間においてもっともリッチな混合気が存在することとなって、確実な着火が行われて、エンジン始動を迅速に行えることになる。この迅速なエンジン始動のためには、点火順に、距離Xが順次大きくなるように設定することもできる。
図19は、図18の変形例を示すものである。本実施形態では、図18のステップQ1に対応するステップQ11において、用いられるシリンダヘッドが、実際にエンジン組立に使用される実機用ではなくて、エンジンの組立には使用されないダミー用(計測用)とされ、このダミー用シリンダヘッドとしては計測用としての専用品を別途用意してもよいが、実施形態では実機用のものをそのまま流用するようにしてある。ステップQ12において、各点火プラグ16について燃焼室内からの突出量Y(Y1〜Y4)が計測され、その後ステップQ13において、ダミー用シリンダヘッドから各点火プラグ16が取外される。Q14においては、シリンダヘッド(実機用)がシリンダブロック等に組付けられる。このステップQ14は、図18のステップQ3に対応するが、シリンダヘッド4には点火プラグ16が取付けられていない状態である。上記ステップQ11〜Q14と並行して、ステップQ16(ステップQ5対応)において、各燃料噴射弁18の角度θ(θ1〜θ4
)が計測される。そして、最後に、ステップQ15において、突出量Yと角度θとを対応づけるようにして点火プラグ16と燃料噴射弁18との組み合わせせが選択されて、この選択された組み合わせの状態でもって点火プラグ16と燃料噴射弁18とがシリンダヘッドに取付けられる。
図20、図21は、シリンダヘッド4に点火プラグ16を実際に取付けることなく、点火プラグ16の燃焼室内からの突出量Y(に関するデータ)を得るようにしたものである。この点を詳述すると、図20において、点火プラグ16の先端部付近の構造は、電極Eのうちその中心電極E1の周囲が絶縁碍子16aによって囲まれて、中心電極E1はその先端部のみが絶縁碍子16aから若干露出しており、この露出された中心電極E1を、複数の周辺電極E2が取り囲むようになっている。点火プラグ16には、シリンダヘッド4の取付孔(の内周面)に形成された係止面に当接される着座面16bを有するが、例えばこの着座面16bを基準位置として絶縁碍子16a先端面までの長さ(距離)Zが、各点火プラグ16毎に計測される。絶縁碍子16a先端面からの中心電極E1の突出長さが一定となるように管理されているが、上記長さZにはかなりの誤差(例えば±0.7mm)を有することになり、この長さZの誤差が、電極Eの燃焼室内からの突出量Yに誤差を与える極めて大きな要因となる。したがって、上記長さZを計測することにより、電極Eの燃焼室内からの突出量Yが推定されることになる。なお、長さZが大きいほど、突出量Yが大きくなる関係にある。
図21において、ステップQ21において、上記長さZを、全気筒分の点火プラグ16(実施形態では4気筒なので4個の点火プラグとなる)について計測して、そのデータZ1〜Z4を得る。そして、Z1〜Z4のうち最大値をZmax、最小値をZmin、中間値(2つあり)をZxとして分類する。この後、Q22において、シリンダヘッド4をシリンダブロック等に組付ける通常のエンジン組立が行われる(図19のQ14対応)。
一方、ステップQ21、Q22と並行して、ステップQ24において、全気筒分(実施形態では4気筒分)の各燃料噴射弁18について、その角度θ(θ1〜θ4)を計測する。そして、そして、θ1〜θ4のうち最大値をθmax、最小値をθmin、中間値(2つあり)をθxとして分類する。
ステップQ23では、Zmaxの点火プラグ16に対してθminの燃料噴射弁18を対応付け、Zminの点火プラグ16に対してθmaxの燃料噴射弁18を対応付け、Zxの点火プラグ16に対してθxの燃料噴射弁18を対応付ける(Zxとθxとが対応付けられる組数は2組である)。そして、この対応付けの状態でもって、点火プラグ16と燃料噴射弁18とがシリンダヘッド4に組付けられる。図21の実施形態によれば、燃料噴射弁18については勿論のこと、点火プラグ16についてもシリンダヘッド4等への組付けを行うことなく突出量Y(に関連した値)を計測して、点火プラグ16と燃料噴射弁18との対応付けをエンジン組立工程とは全く別工程でもって行うことができる。なお、ステップQ23においては、対応付けされた点火プラグ16と燃料噴射弁18との2個セット体として組付工程に供給することにより、取付作業者は、組付に際して点火プラグ16と燃料噴射弁18との対応付けを意識することなくその取付作業を行うことができる。
図22〜図24は、本発明の別の実施形態を示すもので、燃料噴射弁18Bを燃焼室略中央部に設けた場合(センター噴射の場合)を示す。すなわち、燃焼室略中央部には、点火プラグ16が気筒軸線に対してかなり傾いた状態で配設されると共に、燃料噴射弁18Bが気筒軸線にほぼ沿うようにして配設されている。燃料噴射弁18Bは、図24に示すように、周方向等間隔に複数(実施形態では6個)の噴口61a〜61fを有する。各噴口61a〜61fの軸線はそれぞれ、燃料噴射弁18Bの軸線に対して同角度を有するように設定されて、各噴口61a〜61fからの燃料噴霧はそれぞれピストン頂面に向かうように指向されている。そして、1つの特定噴口61aが、電極E近傍の下方を通った後に、ピストン頂面に向かうように設定されている。本実施形態においては、点火プラグ16の電極Eの燃焼室内への突出量が大きいほど、燃料噴射弁18Bの軸線LBと特定噴口61aの軸線L1とのなす角度θが小さい燃料噴射弁18Bが対応付けられる。
図25、図26は、電極Eと特定噴口の軸線との距離Xを検出する別の手法を示すもので、電極(中心電極E1と周辺電極E2)を通して流れるイオン電流の大きさに応じて距離Xを判別する手法を示すものである。まず、点火プラグ16は、既知のように、その周辺電極E2がエンジン1を介してグランドされ、その中心電極E1が点火回路17に接続されている。点火回路17と点火プラグ16との間に、イオン電流を検出する電流検出回路42が設けられている。この電流検出回路42は、点火回路17から点火プラグ16へ向けての電流の流れのみを許容する逆流防止ダイオード42aを有する。また、電流検出回路42は、逆流防止ダイオード42aよりも点火プラグ16側において、互いに直列に接続された逆流防止ダイオード42b、基準電圧源42c、抵抗器42dを有して、これらの構成要素42b〜42dを介して点火プラグ16がグランドされている。さらに、電流検出回路42は、抵抗器42c間での電圧を検出する電圧計42eを有している。
エンジン1を運転したとき、点火直前において、電極回りに存在する燃料噴霧によって中心電極E1と周辺電極E2との間にイオン電流が流れ、このイオン電流の大きさに応じた電圧が電圧計42eによって検出される(検出電圧が大きいほどイオン電流が大)。イオン電流は、電極E回りの混合気の空燃比の変化によって図26に示すように変化する。なお、検出されるイオン電流(記憶されるイオン電流または電圧)は微妙にその大きさが変化されるが、検出値の中での最大値を検出、記憶するようにしてある。混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであることを前提とすると、検出されるイオン電流が大きいほど空燃比がリッチであり(空燃比が理論空燃比よりもリッチな場合はこの逆)、空燃比がリッチであるということは、電極Eと特定噴口の軸線との距離Xが小さいということになる。このようにして、各気筒についてそれぞれイオン電流(つまり距離X)が検出、記憶されることになる(少なくとも距離Xが最大となる気筒と最小となる気筒が記憶される)。なお、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーンであるかリッチであるかは、例えば空燃比を現在値よりもリーン側に補正したとき(燃料噴射量を減量補正したとき)に、検出されるイオン電流値が小さくなれば現在の空燃比が理論空燃比よりもリーンであり、検出されるイオン電流値が大きくなれば現在の空燃比が理論空燃比よりもリッチであるということが理解される。なお、イオン電流検出は、エンジンの定常運転状態のときに行えばよい。
上述した電流検出回路42は、各気筒(各点火プラグ16)毎に個々に設けてよいが、イオン電流検出回路42を各気筒共通用として使用することもできる(イオン電流を検出するタイミングが各気筒間において相違するので共通化が可能)。また、イオン電流検出回路42が搭載された状態でエンジンを出荷することなく、例えばエンジン組立工場での最終検査段階で、イオン電流検出回路42をエンジンに組み込んで、前述したイオン電流の検出、記憶を行わせた後、イオン電流検出回路42をエンジンから除去するようにしてもよい(コストの大幅低減となる)。
図27は、電流検出回路42に代えて、抵抗検出回路43を用いたものであり、図25と同一構成要素には同一符合を付してその重複した説明は省略する。本実施形態では、抵抗器42d等に対して直列に電流計43aを組み込んで、点火直前のタイミング(電極周りに混合気が存在する状態)で、電流計43aで電流を検出すればよい。検出される電流は、中心電極E1と周辺電極E2との間の絶縁抵抗に相当するが、この絶縁抵抗は、電極周りの混合気の空燃比がリッチであるほど小さくなる。なお、電流計43aでの検出電流が大きいほど、絶縁抵抗が小さくなって、電極Eと燃料噴霧との間の距離が小さいということになる。
次に、図28のフローチャートを参照しつつ、前述したエンジン始動時における点火に関連した制御例について説明する。なお、図27のフローチャートは、エンジン冷機時のときにスタータモータが作動されたときに開始されるものであり、また以下の説明でRはステップを示す。まず、R51において、外気温度やエンジン冷却水温度等のデータが入力された後、R2において、極冷間時(例えば0度C以下)であるか否かが判別される。このR2の判別でYESのときは、R3において、記憶手段MRに記憶されている距離Xが最大となる特定気筒(図17に示す実施形態の場合は3番気筒)が選択された後、R3において、各気筒間において、上記特定気筒が最初に点火される(初爆)。この後は、R5において、排気ガス浄化触媒の早期活性化のために、排気温度上昇のための制御が行われる。このR5での制御は、例えば10秒程度点火時期をリタードさせることによって、排気ガスの温度上昇が積極的に図られる。R5の後は、R6において、エンジンが暖機状態になるまで、全運転領域において均一燃焼が行われる。この均一燃焼のときも、積極的に排気温度上昇のために、点火時期が正規の点火時期よりも若干リタードされる(R5でのリタード量よりは小さいリタード量とされる)。エンジンが十分に暖機された(図5に示すマップが選択されるエンジン冷却水温度が例えば60度C以上となった)後は、R7において、図5に示すマップにしたがう通常の制御が行われる。そして、R7では、成層燃焼領域での定常運転時に、各気筒についてイオン電流が検出されて、検出結果が記憶手段MRに記憶される。
前記R2の判別でNOのときは、R8において、記憶手段MRに記憶されているもっとも小さい距離X4となっている気筒(最小気筒)が選択された後、R9において、各気筒間においてR8で選択された気筒が最初に点火される。このR9の後は、前述したR5以降の処理が行われる。なお、R4、R5、R6、R9での燃料噴射は、吸気行程での噴射とされるが、特にR5での排気温度上昇の制御の際には、圧縮行程での分割噴射あるいは圧縮行程と膨張行程での分割噴射としてもよい。
以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、特許請求の範囲に記載された範囲において種々の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。燃料噴射弁18(18B)の噴口の数は、5あるいは7以上であってもよい。各噴口の径および長さをそれぞれ同一に設定してもよい。1つの気筒について、吸気ポート(切換弁)の数は1あるいは3以上であってもよい。電極E周りの濃混合気層生成を抑制するために、スワール生成と圧縮行程での分割噴射との両方を行うことなく、いずれか一方のみを行うようにしてもよく、スワールを生成しないものであってもよい。4気筒エンジンに限らず、2気筒以上の多気筒エンジンに適用できるものである。
点火順序は、実施形態に示す場合に限らず、例えば1番気筒、3番気筒、4番気筒、2番気筒の順にする等、適宜設定できる。また、極冷間時でのエンジン始動時において、各気筒間においてもっとも早く点火される気筒を、もっとも小さい距離X4となっている気筒以外の気筒(もっとも大きい距離X1となっている気筒は勿論のこと、例えば2番目に大きな距離X2となっている気筒等)に設定することもできる。さらに、極冷間時でのエンジン始動時において、各気筒間において点火が行われる順序として、距離Xが大きい気筒から距離Xが小さい気筒へと順次変化するように設定するのが、確実なエンジン始動を確保する上で好ましいものとなる(この場合、各気筒間においてもっとも距離Xが小さい気筒が最後に点火されることになる)。極冷間時でのエンジン始動時において、クランキングを所定期間行った後に、最初の燃料噴射と点火を実行するようにしてもよい(燃料噴射圧が少しでも大きくなるのを待つ)。この場合、上記所定期間としては、例えば3秒というように時間で設定してもよく、あるいはエンジン(のクランクシャフト)が例えば2回転するまでの間等エンジンの回転数によって設定することもできる。なお、極冷間時ではないときは、エンジン始動を迅速に行うという観点から、上記所定期間の設定は行われない。極冷間時であるか否かの判定しきい値となる温度は、0度Cに限らず、例えば−20度Cというように極端に低い温度にする等、エンジンの使用地域や使用燃料の相違等に応じて適宜設定し得るものである。勿論、本発明の目的として、実質的に好ましいあるいは利点として表現された発明を提供することをも暗黙的に含むものである。
本発明が適用されたエンジンの一例を示す要部側面断面図。 スワール生成部分を含む燃焼室付近の簡略平面図。 燃料系統例を示す系統図。 制御系統例をブロック図的に示す図。 成層燃焼領域と均一燃焼領域との設定例を示す図。 エンジン回転数変化に応じた燃圧変化の設定例を示す図。 分割噴射の一例を示す図。 複数噴口から噴射される燃料噴霧の状態を示す斜視図。 複数噴口から噴射される燃料噴霧の状態を示す側方から見た図。 複数噴口から噴射される燃料噴霧の状態を示す燃料噴射弁の反対側から見た図。 複数噴口の設定例の詳細を示すもので、燃料噴射弁の軸線方向から見たときの図。 シリンダヘッドに対する燃料噴射弁の取付例を示すもので、取付直前の状態を示す斜視図。 シリンダヘッドに対する燃料噴射弁の取付例を示すもので、取付完了状態を示す斜視図。 燃焼室内への電極突出量を計測する一例を示す簡略側面図。 図14での計測結果の一例を示す図。 特定噴口の軸線と燃料噴射弁の軸線とのなす角度θの変化が、特定噴口の軸線と電極との距離の変化に与える状況を示す簡略側面図。 電極の燃焼室内への突出量Yと角度θとを対応づけて組付けた状態と、そのときの電極と特定噴口からの燃料噴霧との位置関係を示す図。 点火プラグと燃料噴射弁との組付工程を示すブロック図。 図18の変形例を示すブロック図。 電極の燃焼室内への突出量に関するデータを、点火プラグ単独状態でもって得ることを説明するための要部図。 図20で得られた計測値を用いて点火プラグと燃料噴射弁とのエンジンへの組付工程を示すもので、図18、図19に対応したブロック図。 燃料噴射弁を燃焼室の略中央部に設けた場合の実施形態を示す要部斜視図。 図22の構造において、電極と燃料噴射弁の噴射方向との関係を示す簡略側面断面図。 図23を下方側(ピストン頂面側)から見たときの図。 イオン電流を検出する回路例を示す図。 イオン電流と空燃比との関係を示す図。 絶縁抵抗を検出する回路例を示す図。 エンジン始動時での点火制御例を示すフローチャート。
1:エンジン
3:シリンダブロック
4:シリンダヘッド
5:ピストン
6:燃焼室
10(10A、10B):吸気ポート
12:吸気弁
16:点火プラグ
16a:絶縁碍子
16b:着座面(基準位置)
17:点火回路
18:燃料噴射弁
18B:燃料噴射弁(図22〜図24)
41:切換スイッチ
42:イオン電流検出回路
61a:特定噴口(図24)
E:点火プラグの電極
E1:中心電極
E2:周辺電極
LB:燃料噴射弁の軸線
L1:第1噴口(特定噴口)の軸線
A1:第1噴口(特定噴口)から噴射された燃料の噴霧角
LS:計測器(電極の燃焼室内からの突出量を計測)
MR:記憶手段(検出値の記憶用)
Y(Y1〜Y4):電極の燃焼室内への突出量
θ(θ1〜θ4):特定噴口の軸線と燃料噴射弁の軸線とのなす角度
X(X1〜X4):電極と特定噴口の軸線との距離
S5:外気温度センサ

Claims (9)

  1. 各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
    各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
    各気筒について、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離に関連した値となる距離データを把握する距離データ把握手段と、
    外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記距離データ把握手段で得ている前記距離がもっとも大きくなっている特定気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
    を備えていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  2. 請求項1において、
    前記距離データ把握手段が、前記電極を通して流れるイオン電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段によって検出されたイオン電流の大きさを記憶する記憶手段とから構成されており、
    前記点初爆気筒設定手段は、前記記憶手段に記憶されているイオン電流の大きさから前記特定気筒を判別するように設定されている、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  3. 請求項1において、
    前記距離データ把握手段が、前記電極の燃焼室内への突出量と前記特定噴口の軸線位置に関するデータとに基づいて決定された前記距離データを記憶する記憶手段を備えており、
    前記初爆気筒設定手段は、前記記憶されている距離データから前記特定気筒を判別するように設定されている、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
    前記特定気筒を初爆させる際に、該特定気筒の吸気行程において前記燃料噴射弁から燃
    料噴射が行われた後、該特定気筒についての初回の点火が実行される、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  5. 各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
    各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
    各気筒について、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離に関連した値となる距離データを把握する距離データ把握手段と、
    外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記距離データ把握手段で得ている前記距離がもっとも小さい気筒以外の気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
    を備えていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  6. 各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
    各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
    各気筒間において、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離がもっとも大きくなる特定気筒を記憶している記憶手段と、
    外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、前記記憶手段に記憶されている特定気筒に設定する初爆気筒設定手段と、
    を備えていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  7. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    前記電極が燃焼室の略中央部に配設され、
    前記燃料噴射弁が、燃焼室周縁部に配設されて、前記複数の噴口として、前記特定噴口
    の他に、ピストン頂面方向に指向される他の噴口を有し、
    各気筒について、それぞれ2つの吸気弁が設けられ、
    前記燃料噴射弁が前記2つの吸気弁間に位置されている、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  8. 請求項1ないし請求項のいずれか1項において、
    前記電極近傍に指向される噴口として、前記特定噴口の他に、該電極の左側方に指向された左側方噴口と、該電極の右側方に指向された右側方噴口とを有し、
    前記特定噴口、左側方噴口および右側方噴口の各噴口から前記電極までの距離が20mm以上に設定され、
    前記特定噴口と前記左側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、エンジンの低回転・低負荷域となる所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該左側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定され、
    前記特定噴口と前記右側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、前記所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該右側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定されている、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  9. 各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
    各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極下方の所定位置に指向され、
    外気温またはエンジン冷却水温が0度以下の判定しきい値以下となる極冷間時でのエンジン始動時において、クランキング開始直後に最初に混合気に対して点火を行う初爆気筒を、各気筒のうち、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離がもっとも大きくなっている特定気筒に設定するようにした火花点火式直噴エンジンの組付方法であって、
    各気筒間において、1つの点火順をあらかじめ設定しており、
    各気筒毎に取付けられる点火プラグと燃料噴射弁との組み合わせの選択が、前記あらかじめ設定された点火順に、前記点火プラグの軸線上における前記電極と前記特定噴口の軸線との間の距離が順次小さくなるように行われ、
    各気筒毎に、前記選択された組み合わせでもって点火プラグと燃料噴射弁とを取付ける、
    ことを特徴とする火花点火式直噴エンジンの組付方法。
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