JP4640169B2 - 火花点火式直噴エンジン - Google Patents
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Description
各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極の先端近傍でかつその延長線付近を通るように指向され、
あらかじめ設定された所定運転領域において、筒内空燃比が理論空燃比よりもリーン(λ>1)となるように少なくとも圧縮行程で燃料噴射を行って成層リーン燃焼を行うようにした火花点火式直噴エンジンにおいて、
排気通路に設けられたNOx吸収・還元触媒と、
前記所定運転領域において、各気筒について点火時点での電極周りの局所空燃比に関連した値を把握する局所空燃比把握手段と、
前記所定運転領域において、前記空燃比把握手段によって把握されている局所空燃比が相対的にリーンとなっている特定気筒についてのみ、筒内空燃比が理論空燃比以下のリッチ(λ≦1)となるように燃料噴射量を増大補正する空燃比補正手段と、
前記空燃比補正手段によって前記特定気筒の筒内空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように空燃比補正が行われるとき、気筒間においてトルク差が少なくなるように該特定気筒の点火時期を他の気筒に比してリタードさせる点火時期補正手段と、を備え、
前記所定運転領域において、各気筒への燃料噴射が、圧縮行程に設定された最終の噴射時期となる基本噴射時期以外に、該基本噴射時期よりも早い時期でも行われるように設定され、
前記空燃比補正手段によって空燃比補正が行われるとき、該特定気筒についての前記早い時期における燃料噴射時期のみが他の気筒に比して進角されるようにしてある。
上記解決手法によれば、電極周りの局所空燃比が相対的にリーンになっている特定気筒は、他の気筒に比してスモークやNOxの発生が少ない気筒となる。したがって、この特定気筒についてのみ筒内空燃比を理論空燃比よりもリッチとなるように空燃比補正することによって、スモークやNOxの排出量そのものの増大を抑制しつつ、特定気筒からCO等の酸素濃度不足物質を多く排出させて、NOx吸収・還元触媒でのNOxの放出、還元を効果的に行わせることができる。このことは、NOx吸収・還元触媒が一時的に多量のNOxを吸収しておく必要性も低下して、NOx吸収・還元触媒の小型化を図る上でも好ましいものとなる。勿論、NOx吸収・還元触媒の小型化は、排気抵抗の低減ともなって、エンジン効率向上の上でも好ましいものとなる。また、NOx吸収・還元触媒からのNOxの放出、還元のために、全気筒について筒内空燃比を理論空燃比よりもリッチにするリッチスパイクを頻繁に行う場合に比して、スモーク低減となる。さらに、NOx吸収・還元触媒からのNOxの放出、還元のためにリッチスパイクを行う場合でも、リッチスパイクを行う期間を短くできて成層リーン燃焼を行う期間をより十分に確保する上でも好ましいものとなる。
また、電極周りの空燃比を把握する手法は種々提案されているので、容易に実用化する等の上でも好ましいものとなる。
さらに、燃料噴射時期を進角させることにより、電極周りの局所空燃比がリッチ化され過ぎるのを防止しつつ、上記効果を得ることができる。また、基本噴射時期そのものは変更することなく、基本噴射時期よりも早い時期となる前段噴射の噴射時期を進角させるようにしてあるので、電極周りを適度にリッチ化するという成層化を確実に得る上でも好ましいものとなる。
前記所定運転領域が、エンジンの低回転・低負荷域とされた成層燃焼域での高負荷域とされている、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、成層リーン燃焼を、従来一般に行われているエンジンの低回転・低負荷域に設定しつつ、この低回転・低負荷域のうちNOxが多くなる高負荷域において、請求項1に対応した効果を得ることができる。
前記燃料噴射弁が、燃焼室周縁部に配設されて、前記複数の噴口として、前記特定噴口の他に、ピストン頂面方向に指向される他の噴口を有し、
各気筒について、それぞれ2つの吸気弁が設けられ、
前記燃料噴射弁が前記2つの吸気弁間に位置されている、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、燃料噴射弁を燃焼室周縁部に設けたいわゆるサイド噴射とされる。そして、一部の噴口はピストン頂面に指向されているので、もっぱら電極回りをリッチ化する成層燃焼の他に、気筒内に極力均一に燃料分布させた均一燃焼を行う場合にも対応できる噴射態様を得ることが可能となる。また、特に自動車用として広く普及している吸気2弁式のエンジンに本発明を適用する上で好ましいものとなると共に、燃料噴射弁を、2つの吸気弁の間という大きな空間を有効に利用して配設することができる。
前記特定噴口、左側方噴口および右側方噴口の各噴口から前記電極までの距離が20mm以上に設定され、
前記特定噴口と前記左側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、エンジンの低回転・低負荷域となる所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該左側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定され、
前記特定噴口と前記右側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、前記所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該右側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、電極周りでの成層化状態が、燃料噴射弁から電極を見たとき、濃混合気が略V字状となって電極の下方および左右側方を囲んだ状態となって、成層化として極めて好ましい状態が得られる。
1.燃料噴射制御
燃料噴射制御は、エンジン温度に応じて燃料噴射制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。燃料噴射制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば60度C)以上の温間時は、図5に示す温間時のマップが選択される。温間時のマップは、エンジンの運転状態が低負荷・低回転の所定運転領域にある時、成層燃焼領域とされ、その他の運転領域では均一燃焼領域とされる。また、冷間時の燃料噴射制御マップは、図示を略すが、全ての運転領域において均一燃焼領域とされる。
燃圧制御は、エンジン温度に応じて燃圧制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。燃圧制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば、60度C)以上の温間時は、図6に示す温間時のマップが選択される。この図6のマップでは、成層燃焼領域では、エンジン回転数の増大に応じて燃圧が徐々に大きくなるように変化される(最低燃圧a1が例えば12MPaとされ、最高燃圧a2が例えば20MPaとされる)。また、均一燃焼領域では、常時、成層燃焼領域での最高燃圧a2という一定値とされて、エンジン回転数上昇に伴う燃圧上昇が抑制された状態となる。なお、エンジン温度が所定値よりも低い冷間時は、常時、成層燃焼領域での最高燃圧a2に相当する燃圧とされる。また、エンジン始動時の燃圧は、高圧燃料ポンプ26がカム軸によって駆動される関係で燃圧が十分に上がらないことから、例えば、0.5MPa程度になっている。
エンジン低回転・低負荷域となる所定運転領域では、スワール弁40が閉じられて、燃焼室6内に吸気のスワールが生成される。この場合、スワール弁40の開度は、上記所定運転領域においては、エンジン負荷の大小にかかわらず例えば常に全閉としてもよいが、低負荷域では開度が大きくされ(全開に近い)、エンジン負荷の増大に伴って徐々に開度が小さくされ、高負荷域で全閉となるように設定することもできる。
(1)アイドル域
図5に示される低負荷域のうちもっとも低負荷となるアイドル域では、成層ロバスト性が悪くて、燃焼安定性が確保できる範囲での点火時期や燃料噴射時期の変更幅が小さいものとなる。また、各気筒に着目したとき、電極周りが相対的にリーンとなる距離Xが大きい気筒については燃焼安定性が相対的に悪く、距離Xが小さい気筒については燃焼安定性が相対的に良いものとなる。よって、アイドル域では、距離Xが最大となる気筒(図17の例では3番気筒)について空燃比をリッチ化する補正を行って、燃焼安定性を確保するようにしてある。このとき、燃焼安定性に余裕のある距離Xが最小の気筒(図17の例では1番気筒)の空燃比をリーン化する補正を行うようにしてある(距離Xが中間値にある気筒については空燃比の補正なし)。アイドル域では、実際のエンジン回転数が目標アイドル回転数(例えば550rpm)となるように空燃比がフィードバック制御されるが、上記リッチ化の補正、リーン化の補正は、このフィードバック補正値を補正することによって行うようにしてある。なお、例えばエンジン回転数が所定回転数以下でかつアクセル開度が0であるときに、アイドル域であると判定するようにしてある。
成層燃焼域での低負荷域であっても、アイドル域以外の領域では、アイドル域に比して燃焼安定性の余裕がある領域となる。このような領域にあるときは、空燃比センサS6で検出される実際の空燃比(筒内空燃比)が目標空燃比(目標空燃比は理論空燃比よりもリーンで、λ>1)となるように、空燃比フィードバック制御が行われる。このとき、距離Xが最小の気筒についてはフィードバック補正値をリーン化補正し、距離Xが最大となっている気筒についてはフィードバック補正値がリッチ化補正される。なお、実際の空燃比は、空燃比センサS6で検出される検出値数回分(少なくとも全気筒分の排気ガスを検出できる回数)の平均値とされる。
図5に示す高負荷域では、空燃比センサS6で検出される空燃比(筒内空燃比)が目標空燃比となるように、空燃比フィードバック制御が行われるが、フィードフォワード制御を行うようにすることもできる。高負荷域での目標空燃比は、理論空燃比よりもリーン(λ>1)であるが、低負荷域あるいは後述する中負荷域よりもリッチに設定される。また、高負荷域では、距離Xが最大となっている特定気筒(図17に示す実施形態では3番気筒)の空燃比(筒内空燃比)のみが、理論空燃比以下のリッチにされ(理論空燃比と同一の場合も含み、λ≦1とされる)、他の気筒とトルク差が少なくなるように点火時期がリタードされ(MBTからのリタード)、前段噴射時期が進角される(後段噴射時期は他の気筒と同様に変更なし)。前段噴射での燃料噴射時期の進角量は、エンジン回転数が大きくなるのに応じて大きくされる(前段噴射が、圧縮行程噴射のみならず、吸気行程噴射となってもよい)。なお、上記距離Xが最大となっている特定気筒以外の他の気筒については、空燃比のリッチ化補正は行われず、点火時期のリタードも行われず、燃料噴射時期の進角も行われない。
空燃比センサS6で検出される空燃比が目標空燃比(目標空燃比は理論空燃比よりもリーンで、λ>1)となるように、空燃比フィードバック制御が行われる。燃料噴射時期や点火時期は各気筒間で相違がなく、基本通りの制御(通常制御)とされる。
3:シリンダブロック
4:シリンダヘッド
5:ピストン
6:燃焼室
10(10A、10B):吸気ポート
12:吸気弁
16:点火フプラグ
16a:絶縁碍子
16b:着座面(基準位置)
17:点火回路
18:燃料噴射弁
18B:燃料噴射弁(図22〜図24)
42:イオン電流検出回路
43:絶縁抵抗検出回路
50:コントローラ
61a:特定噴口(図24)
72:NOx吸収・還元触媒
E:点火プラグの電極
E1:中心電極
E2:周辺電極
LB:燃料噴射弁の軸線
L1:第1噴口(特定噴口)の軸線
A1:第1噴口(特定噴口)から噴射された燃料の噴霧角
LS:計測器(電極の燃焼室内からの突出量を計測)
MR:記憶手段(検出値の記憶用)
Y(Y1〜Y4):電極の燃焼室内への突出量
θ(θ1〜θ4):特定噴口の軸線と燃料噴射弁の軸線とのなす角度
X(X1〜X4):電極と特定噴口の軸線との距離
S1:エンジン回転数センサ
S6:空燃比センサ(リニア酸素センサ)
Claims (5)
- 各気筒毎に、燃焼室内に電極が突出された点火プラグと燃焼室内に直接燃料噴射を行う複数の噴口を有するマルチホール型の燃料噴射弁とが設けられ、
各気筒において、前記複数の噴口のうち一部の特定噴口の軸線が、前記電極の先端近傍でかつその延長線付近を通るように指向され、
あらかじめ設定された所定運転領域において、筒内空燃比が理論空燃比よりもリーン(λ>1)となるように少なくとも圧縮行程で燃料噴射を行って成層リーン燃焼を行うようにした火花点火式直噴エンジンにおいて、
排気通路に設けられたNOx吸収・還元触媒と、
前記所定運転領域において、各気筒について点火時点での電極周りの局所空燃比に関連した値を把握する局所空燃比把握手段と、
前記所定運転領域において、前記空燃比把握手段によって把握されている局所空燃比が相対的にリーンとなっている特定気筒についてのみ、筒内空燃比が理論空燃比以下のリッチ(λ≦1)となるように燃料噴射量を増大補正する空燃比補正手段と、
前記空燃比補正手段によって前記特定気筒の筒内空燃比が理論空燃比よりもリッチとなるように空燃比補正が行われるとき、気筒間においてトルク差が少なくなるように該特定気筒の点火時期を他の気筒に比してリタードさせる点火時期補正手段と、を備え、
前記所定運転領域において、各気筒への燃料噴射が、圧縮行程に設定された最終の噴射時期となる基本噴射時期以外に、該基本噴射時期よりも早い時期でも行われるように設定され、
前記空燃比補正手段によって空燃比補正が行われるとき、該特定気筒についての前記早い時期における燃料噴射時期のみが他の気筒に比して進角される、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 請求項1において、
前記所定運転領域が、エンジンの低回転・低負荷域とされた成層燃焼域での高負荷域とされている、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 請求項1において、
エンジン回転数が大きくなるほど、前記特定気筒についての前記早い時期における燃料噴射時期の進角量が大きくされる、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 請求項1において、
前記電極が燃焼室の略中央部に配設され、
前記燃料噴射弁が、燃焼室周縁部に配設されて、前記複数の噴口として、前記特定噴口の他に、ピストン頂面方向に指向される他の噴口を有し、
各気筒について、それぞれ2つの吸気弁が設けられ、
前記燃料噴射弁が前記2つの吸気弁間に位置されている、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 請求項1において、
前記電極近傍に指向される噴口として、前記特定噴口の他に、該電極の左側方に指向された左側方噴口と、該電極の右側方に指向された右側方噴口とを有し、
前記特定噴口、左側方噴口および右側方噴口の各噴口から前記電極までの距離が20mm以上に設定され、
前記特定噴口と前記左側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、エンジンの低回転・低負荷域となる所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該左側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定され、
前記特定噴口と前記右側方噴口とのなす開き角が15度〜25の度の範囲に設定されて、前記所定運転領域で該特定噴口からの燃料噴霧と該右側方噴口からの燃料噴霧が相互干渉効果によって互いに連続したものとなるように設定されている、
ことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
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