JP4211549B2 - 火花点火式直噴エンジン - Google Patents
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Description
この種のエンジンでは、燃料の拡散を抑えつつも気化、霧化を促進し、かつ点火プラグの電極近傍に着火可能な適度の空燃比の混合気が偏在する状態を確保することが要求される。
このような技術としては、例えば、下記特許文献1に開示されるように、燃料を直接点火プラグの電極に噴射するとともに、噴霧の下方又は側方近傍に気流を生成して、噴霧の広がりを抑える技術が知られている。
つまり、直接電極に燃料を噴射するのではなく、電極を挟んでその周辺に燃料が偏在するように、複数の噴口を位置させることによって、燃料を複数の噴口から噴射されることによってその燃料の微粒化が図られ、しかも、各噴口から噴射された噴霧の分布中心が点火プラグの電極を避けた位置にあるため、燃料が液滴化して電極へ付着する量を減少することができるものである。
ところが、上述したマルチホール型インジョクタを使用した場合、成層燃焼時、点火プラグの電極近傍に燃料噴霧が指向するように噴口が配置されるため、均一燃焼時は燃料噴霧が吸気バルブの傘部に衝突し、燃料が燃焼室内上方側に反射することによって、燃料噴射弁配置側とは反対側の燃焼室内に燃料を十分に分布させることができない虞がある。
上記燃料噴射弁には、少なくとも当該燃料噴射弁側から燃料噴射方向先端側を見て、軸心が上記両吸気バルブの可動範囲外で、かつ上記点火プラグの電極の下面に近接する空間に指向する電極下方側噴口と、当該燃料噴射弁側から燃料噴射方向先端側を見て、軸心が上記両吸気バルブの可動範囲内で、上記点火プラグの電極の側方に近接する空間において上記電極下方側噴口の軸心よりも上方位置に指向する電極側方側噴口と、が備えられるとともに、
上記電極側方側噴口の軸心は、上記吸気バルブのリフト量が大きい吸気行程中期において、上記吸気バルブの傘部上面より上方に位置するよう設定され、かつ
上記燃料噴射弁から噴射される燃料噴射時期をエンジンの運転状態に応じて設定する燃料噴射時期制御手段を備え、
該燃料噴射時期制御手段は、均一燃焼時燃料噴射時期を吸気行程中期に設定するよう構成してある。
本発明の第1の構成によれば、電極下方側噴口は吸気バルブの可動範囲外に配置されるとともに、電極側方側噴口の軸心は吸気行程中期において吸気バルブ傘部の上面より上方に位置するように設定され、燃料噴射時期が吸気行程中期に設定されるため、均一燃焼時、電極下方側噴口から噴射される燃料は吸気バルブに衝突することが抑制されるとともに、電極側方側噴口から噴射される燃料も、その軸心が吸気バルブ傘部の上面より上方に位置する吸気行程中期において噴射されるため、吸気バルブに衝突することが抑制される。
更には、吸気流速が速い吸気行程中期に燃料が噴射されるため、燃料と空気とのミキシングが効果的に行われ、混合気の更なる均一化を図ることができる。
従って、均一燃焼時における混合気の均一化を向上することができる。
また、成層燃焼時は、電極下方側噴口と、電極側方側噴口とによって、微粒化された燃料が点火プラグの電極近傍に集められるため、着火性を向上することができる。
本発明の第2の構成によれば、点火プラグの電極が三つの噴口から噴射される燃料噴霧によって囲まれるため、成層燃焼時、点火プラグの電極近傍に微粒化された混合気を十分に集めることができ、着火性を向上することができる。
ここで、電極側方側噴口から噴射された燃料の吸気バルブとの衝突を抑制するためには、電極側方側噴口は吸気バルブの傘部の上面より可能な限り上方側に離間して位置させることが望ましいものの、過剰に上方側に指向させると燃焼室の天井壁に燃料噴霧が衝突する虞がある。
本発明の第3の構成によれば、電極側方側噴口から噴射される燃料噴霧が、上記吸気バルブ側の燃焼室天井壁と略平行に設定されるため、電極側方側噴口から噴射された燃料噴霧が燃焼室の天井壁側に衝突することを抑制することができる。
本発明者等の鋭意研究の結果、各噴口の軸心間の開き角が、15〜25°の範囲であれば、相互干渉効果が過剰に大きくなることを抑制しつつ、適切な相互干渉効果が得られることを確認した。
つまり、開き角が小さ過ぎると、各燃料噴霧間の空気ボリュームが少なく、相互干渉効果がより大きく作用することによって噴霧貫徹力が過剰に大きくなり、噴射された燃料噴霧が点火プラグの電極近傍を通過し、点火プラグの電極近傍に集めることができないという問題が生じる。
逆に、開き角が大きすぎると、各燃料噴霧が離れ過ぎ、相互干渉効果を得ることができないという問題が生じる。
そして、本発明者等によれば、これらの問題が生じない開き角が、15°〜25°であることを、解析、実験で確認した。
本発明の第4の構成によれば、両噴口の軸心間の開き角が、15〜25°の間に設定されるため、相互干渉効果が過剰に大きくなることを抑制しつつ、適切な相互干渉効果が得られるため、着火性を向上することができる。
本発明の第5の構成によれば、吸気行程噴射時、電極側方側噴口の軸線がピストン上縁部より上方に位置されるため、電極側方側噴口から噴射された燃料噴霧がピストン上部に衝突することを抑制することができる。
このエンジン1は、複数の気筒、例えば、4つの気筒2、2、2、2(図1では1つのみ開示)が直列に設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配置されたシリンダヘッド4とを有しており、各気筒2内にはピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されている。この各ピストン5とシリンダヘッド4との間の気筒2内には燃焼室6がそれぞれ区画それており、その燃焼室6は、図2に拡大して示すように、気筒2の天井部における略中央部からシリンダヘッド4の下端面付近まで延びる2つの傾斜面を形成することにより、互いに差し掛けられた屋根のような形状をなすいわゆるペントルーフ型燃焼室とされている。一方、ピストン5よりも下方のシリンダブロック3内にはクランク軸7が回転自在に支持されており、このクランク軸7とピストン5とはコネクティングロッド8を介して連結されている。
また、高圧燃料ポンプ26は、カム軸(不図示)の端部側に配設され、カム軸の回転に応じて駆動されるよう構成されている。
(燃料噴射制御)
燃料噴射制御は、エンジン温度に応じて燃料噴射制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。
燃料噴射制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば、80度)以上の温間時は図4(a)に示す温間時のマップに、エンジン温度が所定値よりも低い冷間時は図4(b)に示す冷間時のマップに切換えられる。
温間時のマップは、図4(a)ように、エンジンの運転状態が低負荷低回転領域にある時、成層燃焼領域とされ、その領域では、燃料噴射弁18による燃料噴射時期を圧縮行程の所定時期、例えば、一括噴射の場合、圧縮上死点前(BTDC)0°〜60°の範囲に燃料を噴射させて、点火プラグ16の近傍に混合気が層状に偏在する状態で燃焼させる成層燃焼が行われる。この成層燃焼領域では、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン側になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御される。また、成層燃焼領域以外の領域は、均一燃焼領域とされており、燃料噴射弁18により気筒2の吸気行程中期、例えば、吸気上死点後100°〜120°付近の吸気弁12が最大リフトするクランク角を中心に、吸気弁が最大リフト量の3/4以上リフトする略最大リフトのクランク角範囲内、例えば、吸気上死点後60°〜150°のクランク角範囲内に燃料を噴射させて吸気と十分に混合し、燃焼室6内に均一な混合気を形成した上で燃焼させる均一燃焼が行われる。この均一燃焼領域では、大部分の運転領域で混合気の空燃比が略理論空燃比(A/F≒14.7)になるように、燃料噴射量やスロットル開度が制御されるが、全負荷運転状態では、空燃比を理論空燃比よりもリッチな空燃比(A/F=13程度)に制御して、高負荷に対応した大出力が得られるようになっている。
また、冷間時のマップは、図4(b)に示すように、全運転領域において均一燃焼が行われる。
燃圧制御は、エンジン温度に応じて燃圧制御マップが切換えられ、その切換えられたマップに従ってその制御が行われる。
燃圧制御マップは、エンジン温度が所定値(例えば、80度)以上の温間時は図5(a)に示す温間時のマップに、エンジン温度が所定値よりも低い冷間時は図5(b)に示す冷間時のマップに切換えられる。
温間時のマップは、図5(a)に示すように、成層燃焼領域では、エンジン回転数の上昇につれて燃圧が12MPaから20MPaの間で変更される一方、少なくとも高回転側の均一燃焼領域では、一律20MPaに設定される。
また、冷間時のマップは、図5(b)に示すように、均一燃焼が行われる全運転領域において一律20MPaに設定される。
ただし、上述したとおり、高圧燃料ポンプ26はカム軸の回転に応じて駆動されるようになっており、始動時はカム軸の回転が低くく燃圧が十分に上がらないことから、始動時の燃圧は、例えば、0.5MPa程度になっている。
図6はマルチホール型の燃料噴射弁18の軸心を中心に燃料噴射方向先端側を見た時の軸心に対する各噴口の軸心との三次元傾斜角を模式的に示した図、図7はピストンが下死点位置おけるシリンダヘッドの縦断面図、図8は図7のA−A矢視図、図9はマルチホール型の燃料噴射弁18の各噴口から燃料が噴射されている状態を示す斜視図である。
全噴口の噴口径は同一径とされており、例えば、0.15mmに設定されている。
尚、L1が請求項における電極下方側噴口の軸心、L2、L3が請求項における電極側方側噴口の軸心に該当する。
そして、各噴口の軸心L1乃至L8は、軸心L、吸気弁の最大リフト位置V、ピストン上死点位置P1、ピストン下死点位置P2、点火プラグの電極Eに対して次のような傾斜角関係とされている。
また、第1噴口から噴射される燃料の噴霧角A1は、図8に示すように、吸気弁12、12の間に位置するよう配置されている。
第2噴口の軸心L2は、軸心Lから点火プラグの電極E側方(図中左側)の所定位置に指向するよう配置されている。
第3噴口の軸心L3は、軸心Lから点火プラグの電極E側方(図中右側)の所定位置に指向するよう配置されている。
尚、第2噴口の軸心L2、噴霧角A2、第3噴口の軸心L3、噴霧角A3は、ともに吸気弁12の最大リフト位置V、Vの可動範囲内に位置されている。
また、第2噴口の噴霧角A2、第3噴口の噴霧角A3は、図8に示すように、吸気バルブのリフト量が大きくなる吸気行程中期において吸気弁12、12の上方側に位置されるとともに、その外周縁が、図7に示すように、燃焼室6の吸気側天井壁6aに略平行になるよう設定されている。
また、第1噴口乃至第3噴口の各軸心L1乃至L3、各噴霧角A1乃至A3は、図7に示すように、ピストンが上死点位置(図8中二点鎖線で示す)であってもピストン上縁部より上方に位置するよう設定されている。
第5噴口の軸心L5は、軸心Lからピストン側(図中下方側)で、ピストン下死点位置P2よりも上方側の所定位置(図中センター位置)に指向するよう配置されている。
第6噴口の軸心L6は、軸心Lからピストン側(図中下方側)でピストン下死点位置P2よりも上方側の所定位置(図中右側)に指向するよう配置されている。
第7噴口の軸心L7は、軸心Lからピストン側(図中下方側)でピストン下死点位置P2よりも下方側の所定位置(図中左側)に指向するよう配置されている。
第8噴口の軸心L8は、軸心Lからピストン側(図中下方側)でピストン下死点位置P2よりも下方側の所定位置(図中右側)に指向するよう配置されている。
尚、第3噴口乃至第8噴口の軸心L3乃至L8、噴霧角A3乃至A8は、それぞれ吸気弁12の最大リフト位置V、Vの可動範囲外に位置されている。
また、各噴口から噴射された全体の燃料噴霧は、軸心Lを中心とする70°以下の円錐空間内に収まるように設定されている。
そして、以上のように各噴口、噴霧角が設定された燃料噴射弁18から噴射された燃料の噴霧は、例えば、図9に示すような状態となる。
また、第2噴口の噴霧角A2、第3噴口の噴霧角A3は、吸気バルブのリフト量が大きくなる吸気行程中期において吸気弁12、12の上方側に位置されるため、第2、第3噴口から噴射された燃料噴霧の吸気弁12、12への衝突を抑制することができる。
また、第2噴口の噴霧角A2、第3噴口の噴霧角A3の外周縁が、燃焼室6の吸気側天井壁6aに略平行になるよう設定されているため、第2、第3噴口から噴射された燃料噴霧の天井壁6aへの衝突を抑制することができる。
また、第1噴口乃至第3噴口の各軸心L1乃至L3、各噴霧角A1乃至A3は、ピストンが上死点位置であってもピストン上縁部より上方に位置するよう設定されているため、第1乃至第3噴口から噴射された燃料噴霧のピストン5への衝突を抑制することができる。
また、軸心Lよりもピストン側に第4乃至第8噴口の軸心L4乃至L8が配置されているため、燃焼室6全体に混合気を存在させることができ、均一燃焼時における混合気の均質化を向上することができる。
また、第1、第4乃至第8噴口の各軸心L1、L4乃至L8は、吸気弁12の可動範囲外に配置されるため、多噴口としながらも大半の噴口を吸気弁12の可動範囲外に配置でき、各噴口から噴射される燃料噴霧が吸気弁12に衝突することを抑制することができる。
つまり、成層燃焼が行われる温間時は、微粒化された混合気を点火プラグの電極E近傍に集めるため、相互干渉効果を生じさせる必要がある一方、冷間始動時は、相互干渉効果が生じると、逆に点火プラグの電極へ濃い混合気が付着して始動性が悪化するため、相互干渉効果が生じさせないようにしたいという要求がある。
そこで、点火プラグの電極E周辺にその軸心が指向する第1乃至第3噴口の軸心L1乃至L3は、その各噴口から噴射される燃料の噴霧角αと、各噴口の開き角θとが以下に示す関係になるよう設定されている。
尚、開き角θは15°〜25°の間の角度、例えば、20°に予め設定されており、噴霧角αが燃圧、筒内圧の違いによって変化し、噴霧角αと開き角θとの関係が変化するようになっている。
まず、成層燃焼が行われる温間時、例えば、燃圧が12MPaで、筒内圧が1MPaの時は、図10(a)に示すように、第1噴口、第2噴口(第3噴口)から噴射される燃料の噴霧角α1は共に広がり、第1噴口と第2噴口(第3噴口)との開き角θ1よりもその角度が大きくなっている。
従って、各噴霧角α1は互いに接近し、第1噴口と第2噴口、および第1噴口と第3噴口から噴射された燃料噴霧間に相互干渉効果が生じる状態とされている。
尚、温間時噴霧角α1が拡大するのは、燃圧、筒内圧ともに高く、燃料と筒内空気との摩擦が大きいため、燃料が気化し、気化した燃料が外方に広がるためである。
また、均一燃焼が行われる冷間始動時、例えば、燃圧が0.5MPaで、筒内圧が0.1MPaの時は、図10(b)に示すように、第1噴口、第2噴口(第3噴口)から噴射される燃料の噴霧角α2は共に小さくなり、第1噴口と第2噴口(第3噴口)との開き角θ1よりもその角度が小さくなっている。
従って、各噴霧角α2は互いに離れて位置し、上述の相互干渉効果が生じない状態とされている。
尚、冷間始動時噴霧角α2が小さくなるのは、燃圧、筒内圧ともに低く、燃料と筒内空気との摩擦が小さいため、燃料の気化が悪く、燃料の外方への広がりが小さいためである。
つまり、成層燃焼時の着火性を確保するためには、第1噴口の軸心L1は、点火プラグの電極E近傍に指向させる必要があるが、第1噴口に対して第5噴口が接近し過ぎると、第1噴口と第5噴口との間において相互干渉効果が生じ、第1噴口から噴射される燃料噴霧が第5噴口側に引き寄せられ、点火プラグの電極E近傍に混合気を集めることができなくなる虞がある。
そこで、第1噴口の軸心L1と、第5噴口の軸心L5とは、その各噴口から噴射される燃料の噴霧角αと、各噴口の開き角θとが以下に示すような関係に設定されている。
尚、開き角θは、例えば、略35°に予め設定されており、噴霧角αが燃圧、筒内圧の違いによって変化し、噴霧角αと開き角θとの関係が変化するようになっている。
まず、成層燃焼が行われる温間時、例えば、燃圧が12MPaで、筒内圧が1MPaの時は、図11(a)に示すように、第1噴口、第5噴口から噴射される燃料の噴霧角α3は共に広がるものの、第1噴口と第5噴口との開き角θ2よりもその角度は小さくなっている。
従って、各噴霧角α3は互いに離れて位置し、相互干渉効果が生じない状態とされている。
また、均一燃焼が行われる冷間始動時、例えば、燃圧が0.5MPaで、筒内圧が0.1MPaの時は、図11(b)に示すように、第1噴口、第5噴口から噴射される燃料噴霧の噴霧角α4は温間時に対して更に小さくなり、冷間時においても温間時と同様、噴霧角α4は第1噴口と第5噴口との開き角θ2よりも小さくなっている。
従って、各噴霧角α4が互いに離れて位置し、相互干渉効果が生じない状態とされている。
以上のように、第1噴口と第5噴口とは、成層燃焼が行われる温間時、均一燃焼が行われる冷間始動時ともに、相互干渉効果が生じないよう、各噴口から噴射される燃料の噴霧角と、各噴口間の開き角との関係が設定されている。
つまり、開き角θが小さ過ぎると、各燃料噴霧間の空気ボリュームが少なく、相互干渉効果がより大きく作用することによって噴霧貫徹力Lが過剰に大きくなり、噴射された燃料噴霧が点火プラグ16の電極E近傍を通過し、点火プラグ16の電極E近傍に集めることができないという問題が生じる。
逆に、開き角θが大きすぎると、各燃料噴霧が離れ過ぎ、相互干渉効果を得ることができないという問題が生じる。
そして、これらの問題が生じない開き角θが、燃料噴射弁18の噴口径を0.15mm、燃圧を20MPaとした場合、15°〜25°であることを、解析、実験により確認した。
以下、図12に基づき理由を説明する。
まず、噴口から噴射された燃料噴霧は、中心付近に存在し、微粒化していない液状の燃料が分布する中心噴霧領域aと、その中心噴霧領域aの外方に存在し、微粒化された燃料が分布する周辺噴霧領域bとに分けることができる。
そして、通常、噴口から噴射された燃料噴霧は、噴口から徐々に円錐状に広がっていくものの、周辺噴霧領域bは、噴口から20mmより短いと微粒化が進んでおらず、存在しない状態にある。
一方、点火プラグ16は、各噴霧領域の内、中心噴霧領域a内に配置すると点火プラグ16の電極Eが濡れて着火しないことから、中心噴霧領域a外方の周辺噴霧領域b内に配置する必要がある。
以上より、点火プラグ16は噴口から20mm以上離れた周辺噴霧領域bに配置する必要がある。
噴霧角αとは、燃料噴射弁18からの幾何学的な燃料噴射エリアであって、その幾何学的な燃料噴射エリアとは、仮に燃焼室6内に吸気流動がないとした場合における燃料噴霧の液滴エリアのことである。
以下、具体例について説明する。
図13(a)に示すように、燃料噴射弁18の噴口部A点から20mm下流の位置において、噴霧中心線が通る仮想平面と燃料噴霧の輪郭が交差する二点B、Cを決定し、∠BACをもって噴霧角αを定義する(α=∠BAC)。
また、図13(b)に示すように、燃料噴射弁18の軸心方向に対し、噴霧の最先端部との距離を噴霧貫徹力Lとして定義する。
尚、噴霧角α及び噴霧貫徹力Lの実際の計測方法としては、例えばレーザーシート法を用いればよい。
すなわち、まず、燃料噴射弁18により噴射される流体として燃料性状相当のドライソルベルトなる試料を用い、この試料の圧力を常温下において実際に使用される燃料圧力の範囲内の所定値(例えば、12MPa)に設定する。また、雰囲気圧力としては、噴霧の撮影が可能なレーザー通過窓と計測用窓とを備えた圧力容器を例えば、0.5MPaに加圧する。そして、常温下において、1パルス当たりの燃料噴射量が9mm3/strokeになるように、燃料噴射弁18に所定パルス幅の駆動パルス信号を入力して燃料を噴射させる。この際、燃料噴霧に対してその噴霧中心線を通るように厚さ5mmのレーザーシート光を照射しておいて、このレーザーシート光面に対して直交する方向から高速度カメラにて噴霧画像を撮影する。そして、上述の駆動パルス信号の入力時期から1.56ミリ秒後の撮影画面に基づいて、上述の定義に従って噴霧角θ及び噴霧貫徹力Lを決定する。
尚、撮影画像における噴霧の輪郭というのは、液滴状の試料粒子のエリアの輪郭であり、試料粒子のエリアはレーザーシート光によって明るくなるため、撮影画像において輝度の変化している部分から噴霧の輪郭を割り出すようにしている。
また、冷間時は、燃料の圧力、筒内圧ともに低くく噴霧角αが広がり難い状態下で、上記開き角が上記噴霧角αよりも大きくされるため、第1噴口と第2噴口から噴射された噴霧角αの間の空間における空気ボリューム、第1噴口と第3噴口から噴射された噴霧角αの間の空間における空気ボリュームが増加し、上述した相互干渉効果を抑制できるため、微粒化した混合気が電極Eに多量に付着して着火性が悪化することを抑制できる。
また、第2噴口の軸心L2、噴霧角A2、第3噴口の軸心L3、噴霧角A3は、吸気バルブのリフト量が大きくなる吸気行程中期において吸気弁12、12の上方側に位置されるため、吸気行程中期に第2、第3噴口から噴射された燃料噴霧の吸気弁12、12への衝突を抑制することができる。
また、第2噴口の噴霧角A2、第3噴口の噴霧角A3の外周縁が、燃焼室6の吸気側天井壁6aに略平行になるよう設定されるため、第2、第3噴口から噴射された燃料噴霧の天井壁6aへの衝突を抑制することができる。
また、第1噴口乃至第3噴口の各軸心L1乃至L3、各噴霧角A1乃至A3は、ピストン5が上死点位置であってもピストン上縁部より上方に位置するよう設定されているため、第1乃至第3噴口から噴射された燃料噴霧のピストン5への衝突を抑制することができる。
また、第1噴口の軸心L1と第2噴口の軸心L2との開き角θ、及び第1噴口の軸心L1と第3噴口の軸心L3との開き角θが、15〜25°の間に設定されるため、相互干渉効果が過剰に大きくなることを抑制しつつ、適切な相互干渉効果が得られるため、着火性を向上することができる。
また、第1乃至第3噴口から点火プラグ16の電極Eまでの距離が20mm以上に設定されるため、相互干渉効果を確実に得ることができ、着火性を向上することができるとともに、微粒化した燃料が分布する周辺噴霧領域b内に点火プラグ16の電極Eを配置することができ、微粒化していない燃料が電極Eに付着するのを抑制することができる。
また、成層燃焼時、第1噴口の軸心L1と第5噴口の軸心L5との間の開き角θが、その両噴口から噴射される燃料の噴霧角αよりも大きくされるため、両噴口から噴射された噴霧角αの間の空間における空気ボリュームが拡大し、上述した各燃料噴霧の相互干渉を抑制できるため、第1噴口から噴射される燃料噴霧が第5噴口側に引き寄せられる現象を抑制でき、点火プラグ16の電極E近傍付近に混合気を集めることができる。
また、均一燃焼時、ピストン側に配置される第4乃至第8噴口から燃料が噴射されるため、燃焼室全体に混合気を分散させることができ、燃焼室6内における混合気の均一化を図ることができる。
また、均一燃焼時、吸気流速が早い吸気行程中期に燃料が噴射されるたため、燃料と空気とのミキシングが効果的に行われ、混合気の均一化を向上することができる。
6:燃焼室
6a:天井壁
12、12:吸気弁
16:点火フプラグ
18:燃料噴射弁
23:低圧燃料ポンプ(燃圧調整手段)
24:低圧レギュレータ(燃圧調整手段)
26:高圧燃料ポンプ(燃圧調整手段)
27:高圧レギュレータ(燃圧調整手段)
50:エンジンコントロールユニット(燃料噴射時期制御手段)
V:吸気弁の最大リフト位置(吸気弁の可動範囲)
L:軸心
L1:第1噴口の軸線(電極下方側噴口の軸心)
L2:第2噴口の軸線(電極側方側噴口の軸心)
L3:第3噴口の軸線(電極側方側噴口の軸心)
α1、α2、α3、α4:噴霧角
θ1、θ2:開き角
Claims (5)
- 燃焼室内に配設される点火プラグと、先端部が二つの吸気バルブの間における上記燃焼室内の周縁に臨むように配設される燃料噴射弁とを備え、該燃料噴射弁から噴射される燃料噴射方向が上記点火プラグの電極近傍に指向された火花点火式直噴エンジンにおいて、
上記燃料噴射弁には、
少なくとも当該燃料噴射弁側から燃料噴射方向先端側を見て、軸心が上記両吸気バルブの可動範囲外で、かつ上記点火プラグの電極の下面に近接する空間に指向する電極下方側噴口と、
当該燃料噴射弁側から燃料噴射方向先端側を見て、軸心が上記両吸気バルブの可動範囲内で、上記点火プラグの電極の側方に近接する空間において上記電極下方側噴口の軸心よりも上方位置に指向する電極側方側噴口と、が備えられるとともに、
上記電極側方側噴口の軸心は、上記吸気バルブのリフト量が大きい吸気行程中期において、上記吸気バルブの傘部上面より上方に位置するよう設定され、かつ
上記燃料噴射弁から噴射される燃料噴射時期をエンジンの運転状態に応じて設定する燃料噴射時期制御手段を備え、
該燃料噴射時期制御手段は、均一燃焼時の燃料噴射時期を吸気行程中期に設定するよう構成されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。 - 上記電極側方側噴口は、上記点火プラグの電極両側の空間にそれぞれ位置するよう二つ設けられており、
上記電極下方側噴口及び二つの電極側方側噴口は、燃料噴射弁の軸心を中心に燃料噴射方向先端側を見て上記点火プラグの電極を中心に略三角形状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の火花点火式直噴エンジン。 - 上記電極側方側噴口から噴射される燃料噴霧の外周縁が、上記吸気バルブ側の燃焼室天井壁と略平行に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の火花点火式直噴エンジン。
- 上記電極下方側噴口と電極側方側噴口との軸心間の開き角が、15〜25°の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の火花点火式直噴エンジン。
- 上記電極側方側噴口の軸心は、上記燃料噴射弁側から燃料噴射方向先端側を見て、吸気行程上死点におけるピストン位置でのピストン上縁部より上方に位置されるていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の火花点火式直噴エンジン。
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