JP2003227339A - 火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造 - Google Patents

火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造

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JP2003227339A
JP2003227339A JP2002029432A JP2002029432A JP2003227339A JP 2003227339 A JP2003227339 A JP 2003227339A JP 2002029432 A JP2002029432 A JP 2002029432A JP 2002029432 A JP2002029432 A JP 2002029432A JP 2003227339 A JP2003227339 A JP 2003227339A
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combustion chamber
fuel
cylinder
squish area
intake
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Muneyuki Oota
統之 太田
Osamu Aoki
理 青木
Fumihiko Saito
史彦 斉藤
Akira Kageyama
明 陰山
Yoshihisa Nooi
芳尚 乃生
Masanao Yamakawa
正尚 山川
Yoshiyuki Fujiwara
義幸 藤原
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Mazda Motor Corp
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    • F02FCYLINDERS, PISTONS OR CASINGS, FOR COMBUSTION ENGINES; ARRANGEMENTS OF SEALINGS IN COMBUSTION ENGINES
    • F02F1/00Cylinders; Cylinder heads 
    • F02F1/24Cylinder heads
    • F02F1/42Shape or arrangement of intake or exhaust channels in cylinder heads
    • F02F1/4214Shape or arrangement of intake or exhaust channels in cylinder heads specially adapted for four or more valves per cylinder
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
    • F02B75/00Other engines
    • F02B75/12Other methods of operation
    • F02B2075/125Direct injection in the combustion chamber for spark ignition engines, i.e. not in pre-combustion chamber
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  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 気筒2内燃焼室6の天井部略中央に点火プラ
グ16を配設し、該燃焼室6の周縁部にインジェクタ1
8を配設するとともに、ピストン5の冠面にレモン形の
凹部50を形成し、その凹部50に沿って流れるタンブ
ル流Tに対向するようにインジェクタ18により燃料を
噴射させて、混合気を点火プラグ16の電極周りに成層
化するようにした火花点火式直噴エンジン1において、
凹部側壁面50aへの燃料の付着を十分に抑制しなが
ら、所要の強さのスキッシュ流Sにより混合気の拡散を
抑えて、着火安定性を向上する。 【解決手段】 気筒中心線Zに沿って見て、燃料噴霧中
心線Fが延びる方向をX方向とし且つ該X方向に直交す
る方向をY方向としたときに、点火プラグ16の電極の
Y方向両側に近接するプラグ側方部位P,Pのスキッシ
ュエリア幅SLを、気筒2の直径をBとし且つ気筒中心
線Zに沿って見た燃料噴霧のプラグ側方部位Pにおける
幅をWとして、略0.15×B≦SL≦(B−W)/2
なる関係を満たすように設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気筒内の燃焼室に
噴射した燃料噴霧の挙動をタンブル流により制御して、
点火プラグの電極周りに混合気を成層化させるようにし
た火花点火式直噴エンジンに関し、特に、気筒の圧縮行
程後期に混合気の適切な成層化を補助するような強いス
キッシュ流を生成可能な燃焼室の構造の技術分野に属す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の火花点火式直噴エン
ジンとして、例えば特開2000−104550号公報
に開示されるように、成層燃焼時に気筒内の燃焼室に生
成するタンブル流に対向して燃料を噴射するように該燃
焼室の周縁部に噴口を臨ませて燃料噴射弁を配設すると
ともに、ピストンの冠面には燃料の噴射軸線(燃料噴霧
の中心線)に対して左右両側に燃料噴霧の拡散を阻止す
るように一対の立壁を設けたものがある。すなわち、こ
のものでは、気筒内の燃焼室に強いタンブル流を生成
し、このタンブル流に対向するように前記燃料噴射弁に
より燃料を噴射して、タンブル流との衝突により燃料の
微粒化や気化霧化を促進し、且つ左右両側の立壁によっ
て燃料の拡散を抑制しながら、燃料噴霧や混合気をタン
ブル流に載せて点火プラグ側に輸送するようにしてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来例の
直噴エンジンの場合、まず、混合気を強いタンブル流に
載せて点火プラグ側に輸送するようにしているので、点
火時期までに点火プラグ電極の周りに到達した混合気が
その後、電極付近を通過してしまうことになり、この混
合気に点火することのできる期間が短いことから、点火
時期制御の自由度が極めて低い。また、着火安定性にも
問題がある。
【0004】また、強いタンブル流との衝突によって燃
料噴霧の一部が噴射軸線の左右に飛び散ることになり、
この燃料が立壁に付着することが避けられないので、排
気中の未燃HCの濃度が高くなってしまうし、その立壁
が気筒の中心線付近に位置することから、特に均一燃焼
状態のときに燃焼初期の火炎核の成長や火炎面の伝播が
立壁によって阻害されることになり、燃焼性が低下する
という不具合もある。
【0005】これに対し、本願の発明者らは、気筒の圧
縮行程で燃焼室を流れるタンブル流を比較的弱いものと
し、このタンブル流の強さに均衡する比較的小さな貫徹
力でもって燃料を噴射することで、燃料噴霧の拡散を抑
えながら徐々に減速させて、気筒の点火時期までに点火
プラグの電極の付近に混合気を到達させ、且つそこに滞
留させるという新規な層状混合気の形成方法を既に提案
している(特開2001−159315号公報参照)。
【0006】すなわち、前記提案例の火花点火式直噴エ
ンジンでは、気筒内の燃焼室周縁部に臨むように燃料噴
射弁を配設するとともに、ピストンの冠面には気筒中心
線に沿って見て前記燃料噴射弁からの燃料の噴霧方向に
長い凹部を形成し、気筒の吸気行程で燃焼室に生成する
比較的弱いタンブル流を前記凹部に沿ってスムーズに流
れるようにすることで、その流れをあまり減衰させずに
保持できるようにする。そして、気筒の圧縮行程中期以
降に前記凹部内を燃料噴射弁に向かって流れるタンブル
流に対向するように、燃料を噴射する。
【0007】そのような弱いタンブル流との衝突では燃
料噴霧があまり大きく飛び散ることはなく、しかも、ピ
ストン冠面の凹部が点火プラグの電極付近で拡がるレモ
ン形状とされているので、燃料の凹部側壁面への付着量
は従来例(特開2000−104550号公報)の立壁
への付着量に比べればはるかに少ない。また、凹部側壁
面は気筒の中心線からは十分に離れているので、燃焼初
期の火炎核の成長や火炎面の伝播を阻害することもな
い。加えて、前記凹部よりも外周側のピストン冠面には
スキッシュエリアが形成されており、凹部の内方に向か
うスキッシュ流によって混合気の拡散が抑制されるよう
になっている。
【0008】ところで、前記の如く、ピストンの冠面に
設ける凹部の側壁面は点火プラグの電極から離れている
ほど燃料の付着量が少なくなり、また、火炎伝播等にも
悪い影響を及ぼし難いものであるが、このためには該凹
部の開口幅を拡げなくてはならないので、自ずとスキッ
シュエリアの面積が小さくなってしまい、スキッシュ流
によって混合気の拡散を抑えることが難しくなる。反対
に、凹部の開口幅を狭めればスキッシュエリアの面積は
容易に確保できるようになるが、この場合には凹部側壁
面への燃料の付着量は増大する傾向にある。
【0009】この点について、本願発明者らは、前記提
案例(特開2001−159315号公報)と同様の構
成の火花点火式直噴エンジンを用いてさらなる実験研究
を重ねた結果、凹部の開口幅を十分に大きくしてその側
壁面への燃料の付着を軽減しながら、特に点火プラグの
付近でスキッシュエリアの面積を十分に確保できるよう
な適切な寸法範囲を見出し、もって、本願発明を完成す
るに至った。
【0010】すなわち、本願発明の目的は、前記提案例
の如き火花点火式直噴エンジンにおいて、主に、ピスト
ンの冠面に設ける凹部及びスキッシュエリアの大きさを
最適化することで、該凹部側壁面への燃料の付着を十分
に抑制しながら、所要の強さのスキッシュ流により混合
気の拡散を抑えて着火安定性を向上することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の解決手段では、気筒中心線に沿って見たと
きに点火プラグ電極の左右両側のプラグ側方部位におけ
る凹部の開口幅、言い換えると、当該部位におけるスキ
ッシュエリアの大きさを所定範囲内の値に設定するよう
にした。
【0012】具体的に、請求項1の発明では、気筒内燃
焼室の天井部に点火プラグを配設し、該燃焼室の周縁部
に燃料噴射弁を配設するとともに、前記天井部に対向す
るピストンの冠面に凹部を形成して、成層燃焼運転時に
は前記凹部に沿って流れる燃焼室のタンブル流に対向す
るように前記燃料噴射弁により燃料を噴射させるように
した火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造を前提とす
る。
【0013】そして、前記気筒の中心線に沿って見て、
即ち気筒中心線の延びる方向のいずれか一端側から見た
平面視において、前記燃料噴射弁からの燃料噴霧の中心
線が延びる方向をX方向とし且つ該X方向に直交する方
向をY方向としたときに、前記点火プラグの電極を通り
且つX方向に垂直な断面による前記燃焼室天井部の断面
形状をピストンの冠面に向かって開口する略コ字状とす
る。また、前記ピストン冠面の凹部は、気筒中心線に沿
って見たときにX方向に長く開口し且つその開口幅が前
記点火プラグ電極をY方向の両側から挟むプラグ側方部
位で最大となるように形成し、その凹部を除いたピスト
ン冠面の外周側部分には、燃焼室の天井部と対峙する平
面状のスキッシュエリアを、少なくとも前記プラグ側方
部位を含むように形成する。
【0014】そして、前記スキッシュエリアのプラグ側
方部位におけるY方向の長さSLを、気筒の直径をBと
し、且つ、気筒の圧縮行程で噴射された燃料噴霧を気筒
中心線に沿って見たときの当該燃料噴霧の前記プラグ側
方部位における幅をWとして、 略0.15×B ≦
SL ≦ (B−W)/2 なる関係を満たすように設
定する構成とする。
【0015】前記の構成により、エンジンの成層燃焼運
転時に気筒内の燃焼室においてピストン冠面の凹部に沿
って流れるタンブル流に向かい略正面から衝突するよう
に、燃料噴射弁により燃料が噴射されると、この燃料噴
霧は、タンブル流に衝突して微粒化や空気との混合が促
進されるとともに、該タンブル流により減速されて、気
筒の点火時期までに可燃混合気となって点火プラグの電
極付近に滞留するようになる。
【0016】その際、気筒の圧縮行程中期以降には、ピ
ストン冠面において少なくともプラグ側方部位のスキッ
シュエリアとこれに対向する燃焼室の天井部との間にお
いて凹部内に向かうY方向のスキッシュ流が生成され
る。このスキッシュ流により燃料噴霧の横方向への飛散
が抑制されて凹部の側壁面への燃料の付着量が減少する
とともに、点火プラグ電極の周りに滞留する混合気の拡
散が抑制されて、該混合気に安定して着火可能な期間が
長くなり、点火時期制御の自由度が高まるとともに着火
安定性が向上する。
【0017】ここで、前記スキッシュエリアは、少なく
とも凹部のY方向両側のプラグ側方部位においてそれぞ
れY方向の長さSLが気筒の直径Bの略0.15倍以上
とされており、このことで、点火プラグの電極に向かっ
てY方向両側から混合気を寄せ集めるような強いスキッ
シュ流が容易に得られるので、混合気の濃度が十分に高
くなって良好な着火安定性が得られるようになる。
【0018】一方、前記スキッシュエリアの長さSL
は、気筒の圧縮行程における燃料噴霧の幅Wに対して、
SL≦(B−W)/2となるように設定されている。こ
れは、燃料噴霧が幾何学的に凹部の側壁面に接触しない
範囲であり、このことで、前記の強いスキッシュ流によ
って燃料噴霧の飛散が抑えられることとも相俟って、凹
部側壁面への燃料の付着は最小限度のものとなる。
【0019】つまり、ピストン冠面のスキッシュエリア
の幅(Y方向の長さ)を少なくともプラグ側方部におい
て前記式1の関係を満たすように設定することで、ピス
トン冠面の凹部側壁面への燃料の付着を十分に抑えなが
ら、混合気の側方への拡散を抑制する所要の強さのスキ
ッシュ流を生成させて、着火安定性を向上できる。
【0020】請求項2の発明では、燃焼室は、天井部の
X方向略中央部分にY方向に延びる帯状の平面部が形成
されるとともに、該平面部からX方向の両端側に向かっ
て徐々にピストン冠面に接近するように延びる2つの傾
斜面部が形成されたペントルーフ型のものとし、前記ピ
ストン冠面のスキッシュエリアには、少なくとも、前記
燃焼室天井面の平面部と対峙してY方向に延びる帯状の
平面部を形成する構成とする。
【0021】この構成により、燃焼室の天井部とピスト
ン冠面との間で互いに対峙する2つの平面部において点
火プラグの電極に向かってY方向の両側から流れる強い
スキッシュ流が生成されるようになり、このことで、前
記請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0022】請求項3の発明では、請求項2の発明にお
けるピストン冠面の凹部を、気筒中心線に沿って見て、
プラグ側方部位からX方向の両端側に向かって徐々に開
口幅が狭くなるレモン形状とし、前記ピストン冠面のス
キッシュエリアは、前記凹部のY方向両側においてそれ
ぞれ該凹部の開口部に沿うように形成する構成とする。
【0023】この構成では、ピストン冠面のスキッシュ
エリアが凹部のレモン形状の開口部に対しそのY方向両
側に沿うように形成されているので、このスキッシュエ
リアの全体で当該凹部の内方に向かうようなスキッシュ
流が生成されることになり、混合気の拡散をY方向だけ
でなくX方向についても抑制して、着火安定性をさらに
向上することができる。
【0024】請求項4の発明では、請求項3の発明にお
ける燃焼室天井部の一方の傾斜面部に吸気ポートが開口
され、また、他方の傾斜面部には排気ポートが開口され
ており、さらに、前記一方の傾斜面部の外周側の端部よ
りも外周側には燃料噴射弁の先端部を収容する孔部が開
口されている。そして、ピストン冠面のスキッシュエリ
アは、前記燃焼室天井部の吸気側及び排気側の傾斜面部
並びにそれらの中間の平面部とそれぞれ対峙する吸気
側、排気側及び中間のエリアからなるものとし、前記中
間のスキッシュエリアと天井部の平面部との間の間隔を
吸気側スキッシュエリアと吸気側傾斜面部との間の間隔
よりも狭くする構成とする。
【0025】すなわち、提案例(特開2001−159
315号公報)のように気筒内のタンブル流によって燃
料噴霧の挙動を制御するようにした直噴エンジンの場
合、燃焼室には気筒の圧縮行程後期までタンブル流が残
り、燃料噴霧との衝突によって大幅に減衰するものの、
天井部の付近では点火プラグの電極周りに滞留する混合
気を吸気側から排気側に押し流そうとする流れが残存す
る。
【0026】そこで、この発明では、点火プラグの電極
付近に位置するピストン冠面の中間スキッシュエリアと
これに対峙する天井部の平面部との間の間隔を狭くし
て、その中間スキッシュエリアにおいて混合気をY方向
の両側から寄せ集めるような強いスキッシュ流を生成す
るとともに、吸気側スキッシュエリアとこれに対峙する
吸気側傾斜面部との間の間隔は相対的に広くして、前記
混合気に対して吸気側から作用するスキッシュ流の強さ
を相対的に弱くしており、従って、吸気側のスキッシュ
流が混合気の排気側(X方向)への移動を助長すること
はない。
【0027】請求項5の発明では、請求項4の発明にお
ける排気側スキッシュエリアと燃焼室天井部の排気側傾
斜面部との間の間隔を、吸気側スキッシュエリアと吸気
側傾斜面部との間の間隔よりも狭くするものとする。こ
うすることで、前記排気側スキッシュエリアにおいて混
合気に対し排気側から作用するスキッシュ流が吸気側か
らのスキッシュ流よりも強くなるので、混合気の排気側
への拡散を抑制しながら、その混合気が燃焼室に残るタ
ンブル流によって排気側に流されることも阻止できる。
【0028】請求項6の発明では、気筒の直径を略60
mm以上であって且つ略90mm以下とする。すなわ
ち、気筒の直径が略90mmよりも大きい場合には、ピ
ストン冠面に形成する凹部の開口幅をその側壁面への燃
料の付着が殆どなくなるように大きくしても、その外周
側のピストン冠面に十分に大きなスキッシュエリアを容
易に確保できるから、前記請求項1の発明に記載の関係
式はあまり重要ではなくなる。
【0029】一方、気筒の直径が略60mmよりも小さ
い場合には、前記関係式を満たすようにスキッシュエリ
アの長さSLを設定していても、スキッシュエリアの面
積は相対的に小さくなってしまうし、凹部の開口幅もあ
まり大きくはならないから、前記請求項1の発明の作用
効果はあまり有効なものとはいえない。つまり、本願発
明の作用効果は、気筒の直径が前記範囲内の寸法である
ときに特に有効なものとなるのである。
【0030】次に、請求項7の発明では、前記請求項1
の発明と同じ前提構成を有する火花点火式直噴エンジン
において、その燃焼室を、天井部の略中央部分に帯状の
平面部が形成されるとともに、該平面部の幅方向両端側
から徐々にピストン冠面に接近するように延びる2つの
傾斜面部が形成されたペントルーフ型のものとし、ま
た、その天井部の一方の傾斜面部に吸気ポートを開口さ
せ、他方の傾斜面部には排気ポートを開口させるととも
に、前記一方の傾斜面部の外周側の端部よりも外周側に
は燃料噴射弁の先端部を収容する孔部を開口させる。
【0031】そして、前記ピストン冠面の凹部を、気筒
中心線に沿って見て、前記燃料噴射弁からの燃料噴霧の
中心線が延びる方向に長く開口し、且つその開口幅が前
記点火プラグ電極を両側から挟むプラグ側方部位におい
て最大となる一方、そこから長さ方向の両端側に向かっ
て徐々に狭くなるレモン形状とし、その凹部を除いたピ
ストン冠面の外周側部分に、前記天井部の吸気側及び排
気側の傾斜面部並びにそれらの中間の平面部とそれぞれ
対峙する吸気側、排気側及び中間のスキッシュエリアを
形成して、そのうちの中間のスキッシュエリアと天井部
の平面部との間の間隔を吸気側スキッシュエリアと吸気
側傾斜面部との間の間隔よりも狭くする構成とする。
【0032】この構成により、前記請求項1の発明と同
様に、エンジンの成層燃焼運転時に気筒の圧縮行程で燃
料噴射弁により噴射した燃料噴霧をタンブル流によって
減速させて、可燃混合気として点火プラグの電極付近に
滞留させることができる。その際、前記請求項3の発明
と同様に、レモン形状の凹部の周囲を囲むスキッシュエ
リアにおいて当該凹部の内方に向かうようにスキッシュ
流が生成され、これにより混合気の拡散を抑えて着火安
定性を向上することができる。
【0033】さらに、前記請求項4の発明と同様に、燃
料の噴射方向に対し左右両側から前記混合気に作用する
スキッシュ流を十分に強くしながら、当該混合気に対し
て吸気側から作用するスキッシュ流の強さを相対的に弱
くすることができるので、燃焼室に残るタンブル流によ
って混合気が排気側へ流されることを助長することな
く、混合気の拡散を十分に抑制できる。
【0034】請求項8の発明では、前記請求項7の発明
において、排気側スキッシュエリアと燃焼室天井部の排
気側傾斜面部との間の間隔を、吸気側スキッシュエリア
と吸気側傾斜面部との間の間隔よりも狭くするものとす
る。こうすることで、前記請求項5の発明と同様に、点
火プラグの電極付近に滞留する混合気の拡散を十分に抑
制しながら、この混合気に排気側から作用するスキッシ
ュ流の強さを吸気側に比べて強くして、タンブル流によ
る混合気の排気側への移動を阻止することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基いて説明する。
【0036】図2は本発明に係る火花点火式直噴エンジ
ン1の全体的な構成を示す。このエンジン1は、複数の
気筒2,2,…(1つのみ図示する)が直列に設けられ
たシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に
配置されたシリンダヘッド4とを有し、それら各気筒2
内にピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されてい
て、そのピストン5の冠面とシリンダヘッド4の下面と
の間の気筒2内に燃焼室6が区画形成されたものであ
る。また、前記気筒2,2,…を囲むシリンダブロック
3の側壁部には、図示しないがウオータジャケットが形
成されており、さらに、該シリンダブロック3の下側部
分には、気筒2,2,…に連通するようにクランク室7
が形成され、その内部にクランク軸8が回転自在に配設
されている。このクランク軸8の一端側にはその回転角
度を検出するための電磁式のクランク角センサ9が配設
されている。
【0037】前記各気筒2の燃焼室6は、詳しくは後述
するが、図示の如く気筒列方向に見たときに、天井部の
略中央で左右両側の2つの傾斜面60a,60b(図5
参照)が互いに差し掛けられた屋根のような形状をなす
いわゆるペントルーフ型のものである。そして、該2つ
の傾斜面60a,60bに吸気ポート10及び排気ポー
ト11がそれぞれ2つずつ開口していて、その各ポート
開口部に吸気及び排気弁12,13が配置されている。
前記吸気ポート10,10は、図3にも示すようにそれ
ぞれ燃焼室6から斜め上方に向かって直線的に延びてい
て、エンジン1の一側面(図の右側面)に互いに独立し
て開口しており、一方、前記2つの排気ポート11,1
1は途中で1つに合流して略水平に延び、エンジン1の
他側面(図の左側面)に開口している。
【0038】前記吸気弁12及び排気弁13は、シリン
ダヘッド4の内部に軸支された2本のカム軸14,14
により弁軸方向に押圧されて開作動されるもので、該2
本のカム軸14,14がそれぞれ前記クランク軸8に同
期して回転されることで、吸気弁12及び排気弁13が
それぞれ各気筒2毎に所定のタイミングで開閉作動され
るようになっている。また、吸気側のカム軸14にはク
ランク軸8に対する回転位相を所定の角度範囲において
連続的に変化させる周知構造の可変動弁機構15が付設
されていて、この可変動弁機構15により前記吸気弁1
2の開閉作動時期が変更される。
【0039】前記燃焼室6の上方には、図5にも示すよ
うに、4つの吸排気弁12,13に取り囲まれるように
して点火プラグ16が配設されている。この点火プラグ
16の先端の電極は燃焼室6の天井壁60から所定距離
だけ突出しており、一方、該点火プラグ16の基端部に
は点火回路17が接続されていて、各気筒2毎に所定の
点火タイミングで点火プラグ16に通電するようになっ
ている。一方、前記燃焼室6の底部となるピストン5の
冠面には、気筒中心線Zに沿って見たときにレモン形状
となる凹部50(図1参照)が設けられている。
【0040】また、前記燃焼室6の周縁部には、2つの
吸気ポート10,10の下方に挟まれるようにしてイン
ジェクタ(燃料噴射弁)18が配設されている。このイ
ンジェクタ18は、先端部の噴口から燃料を旋回流とし
て噴出させて、インジェクタ18の軸心の延びる方向に
沿うようにホローコーン状に噴射する公知のスワールイ
ンジェクタである。このスワールインジェクタ18によ
る燃料噴霧は、大気圧下の雰囲気では中空の円錐状とな
り、雰囲気圧力が低いときほど燃料噴霧の拡がり角が大
きくなって噴霧全体としての貫徹力が小さくなる一方、
雰囲気圧力が高くなると拡がり角が小さくなり、全体と
して円錐形状ではあっても徐々に中心部の燃料の密度が
高くなって噴霧全体としての貫徹力も大きくなる。ま
た、燃料の噴射圧力(燃圧)が高いほど燃料噴霧の貫徹
力が大きくなる。
【0041】前記インジェクタ18の基端部には、全気
筒2,2,…に共通の燃料分配管19が接続されてい
て、燃料供給系20から供給される高圧の燃料を各気筒
2に分配するようになっている。この燃料供給系20に
ついての詳しい説明は省略するが、例えば、燃料タンク
から汲み上げた燃料を高圧燃料ポンプにより昇圧した後
に高圧レギュレータにより流量調節し、余剰の燃料は燃
料タンクに戻すことで、燃料分配管19へ供給する燃料
の圧力状態を適正な範囲(例えば略3MPa〜略20M
Paくらい)に調節する。尚、前記燃料分配管19には
その内部の燃料の圧力状態(燃圧)を検出する燃圧セン
サ19aが付設されている。
【0042】前記エンジン1の一側面には、各気筒2の
吸気ポート10,10にそれぞれ連通する吸気通路21
が接続されている。この吸気通路21は、エンジン1の
燃焼室6に対し図外のエアクリーナで濾過した吸気を供
給するものであり、その上流側から下流側に向かって順
に、エンジン1に吸入される吸入空気量を検出するホッ
トワイヤ式エアフローセンサ22と、吸気通路21を絞
る電気式スロットル弁23と、サージタンク24とがそ
れぞれ配設されている。前記電気式スロットル弁23
は、図外のアクセルペダルに対し機械的には連結されて
おらず、図示しない電動式駆動モータにより駆動されて
開閉するようになっている。
【0043】また、前記サージタンク24よりも下流側
の吸気通路21は、各気筒2毎に分岐する独立通路とさ
れていて、該各独立通路の下流端部がさらに2つに分岐
してそれぞれ吸気ポート10,10に連通している。こ
の2つの吸気ポート10,10の双方の上流側には、燃
焼室6におけるタンブル流の流速を調節するための吸気
流動調節弁25が配設され、例えばステッピングモータ
(図示せず)によって開閉作動されるようになってい
る。この吸気流動調節弁25,25はいずれもバタフラ
イバルブの一部を切り欠いたもので、この実施形態では
弁軸よりも下側の部分を切り欠いている。そして、吸気
流動調節弁25が閉じられたときには吸気が前記の切り
欠き部分のみから下流側に流れて、燃焼室6に強いタン
ブル流を生成する。一方、吸気流動調節弁25が開かれ
るに従い、吸気は該切り欠き部分以外からも流通するよ
うになり、タンブル流の強度は徐々に弱められる。
【0044】尚、前記吸気ポート10や吸気流動調節弁
25の形状は上述したものに限られず、例えば、吸気ポ
ートは上流側で1つに合流するいわゆるコモンポートで
あってもよい。この場合、吸気流動調節弁はコモンポー
トの断面形状に対応する形状のバタフライバルブをベー
スとして、前記したものと同様に該バタフライバルブの
一部分を切り欠いた形状とすればよい。
【0045】一方、エンジン1の他側面には、燃焼室6
から既燃ガス(排気)を排出する排気通路26が接続さ
れている。この排気通路26の上流端部は、各気筒2毎
に分岐して排気ポート11に連通する排気マニホルド2
7であり、該排気マニホルド27の集合部には排気中の
酸素濃度を検出するリニアO2センサ28が配設されて
いる。このリニアO2センサ28は排気中の酸素濃度に
基づいて空燃比を検出するために用いられるもので、理
論空燃比を含む所定の空燃比範囲において酸素濃度に対
しリニアな出力が得られるようになっている。
【0046】また、前記排気マニホルド27の集合部よ
りも下流側の排気通路26は排気管29により構成され
ていて、この排気管29にはその上流側から略理論空燃
比近傍の排気中のHC、CO、NOxを浄化する三元触
媒30と、この三元触媒30の劣化状態を判定するため
のラムダO2センサ31と、理論空燃比よりもリーンな
排気中のNOxを浄化可能ないわゆるリーンNOx触媒
32(NOx吸蔵還元触媒、NOx吸着還元触媒を含
む)とが順に配設されている。
【0047】さらに、前記排気マニホルド27の下流側
には、そこから分岐するようにして排気の一部を吸気系
に還流させる排気還流通路33(以下、EGR通路とい
う)の上流端が接続されている。このEGR通路33の
下流端は前記スロットル弁23とサージタンク24との
間の吸気通路21に接続され、その近傍には開度調整可
能な電気式の流量制御弁からなるEGR弁34が配設さ
れていて、このEGR弁34によりEGR通路33を流
れる排気の還流量が調整されるようになっている。
【0048】前記可変動弁機構15、点火プラグ16の
点火回路17、インジェクタ18、燃料供給系20(高
圧レギュレータ)、電気式スロットル弁23、吸気流動
調節弁25、電気式EGR弁34等は、いずれもエンジ
ンコントロールユニット40(以下、ECUという)に
よって作動制御される。一方、このECU40には、少
なくとも、前記クランク角センサ9、エアフローセンサ
22、リニアO2センサ28、ラムダO2センサ31等か
らの各出力信号が入力され、加えて、アクセルペダルの
開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ
38からの出力信号と、エンジン回転速度(クランク軸
8の回転速度)を検出する回転速度センサ39からの出
力信号とが入力されるようになっている。
【0049】そして、前記ECU40は、各センサから
入力される信号に基づいて、吸排気弁12,13の開閉
作動時期、インジェクタ18による燃料噴射量、噴射時
期及び噴射圧力、スロットル弁23により調節される吸
入空気量、吸気流動調節弁25の開度、EGR弁34に
より調節される排気の還流割合等をそれぞれエンジン1
の運転状態に応じて制御する。すなわち、例えば、エン
ジン1が温間で且つ低速低負荷側の運転状態にあるとき
には、インジェクタ18により気筒2の圧縮行程の所定
時期に燃料を噴射させて、点火プラグ16の近傍に混合
気が層状に偏在する状態で燃焼させる(成層燃焼状
態)。このときには、エンジン1の吸気損失を低減する
ためにスロットル弁23の開度を相対的に大きくするよ
うにしており、このときの燃焼室6の平均的な空燃比は
理論空燃比よりもリーンになる。
【0050】一方、高速ないし高負荷側の運転状態では
インジェクタ18により主に気筒2の吸気行程で燃料を
噴射させて吸気と十分に混合し、燃焼室6全体に均一な
混合気を形成した上で燃焼させる(均一燃焼状態)。こ
のときには、大部分の運転領域において混合気の空燃比
が略理論空燃比(A/F≒14.7)になるように、燃
料の噴射量やスロットル弁23の開度等を制御するが、
特に全負荷付近では空燃比を理論空燃比よりもリッチな
状態(例えばA/F=13くらい)に制御して、高負荷
に対応した大出力を得られるようにしている。
【0051】尚、前記エンジン1の低速低負荷側では、
EGR弁34を開弁させてEGR通路33により排気の
一部を吸気通路21に還流させるようにしており、これ
によりNOxの生成を抑制することができる。また、エ
ンジン冷間時には燃焼安定性の確保を最優先し、エンジ
ン1の全ての運転状態で均一燃焼状態とするとともに、
EGR弁34は全閉とするようにしている。
【0052】(層状混合気の形成)この実施形態の直噴
エンジン1の特徴は、上述の如き成層燃焼状態のとき
に、燃焼室6の空気流動を利用して点火プラグ16の電
極の周りにリッチな混合気塊を滞留させるようにしたこ
とにある。すなわち、エンジン1を成層燃焼状態とする
ときには、気筒2の圧縮行程中期以降に燃焼室6を流れ
るタンブル流Tに対して略正対する方向から衝突するよ
うに、燃焼室6周縁部に配置したインジェクタ18によ
り適当な貫徹力でもって燃料を噴射させる(図13参
照)。こうすると、燃料噴霧はタンブル流Tにより徐々
に減速されながら点火プラグ16側に移動し、その間に
燃料液滴の気化霧化や空気との混合が促進されて、当該
気筒2の点火時期までに可燃混合気となって点火プラグ
16の電極の周りに滞留するようになる(図14参
照)。その際、タンブル流Tの強度及び燃料噴霧の貫徹
力をいずれも相対的に弱いものとすれば、燃料噴霧はタ
ンブル流Tとの衝突によってあまり飛散することもな
く、混合気塊となって点火プラグ16の電極の周りに滞
留するのである。このために、この実施形態のエンジン
1では、成層燃焼時に気筒2の吸気行程におけるタンブ
ル比が、略1.1〜略2.3の範囲の値になるように吸
気流動調節弁25の開度を制御している。
【0053】前記のような混合気形成のために、この実
施形態のエンジン1では、ピストン5の冠面に形成する
凹部50とインジェクタ18との間の配置関係を概ね以
下のようなものとしている。具体的には、図1に示すよ
うに気筒中心線Zに沿って見たとき、即ち、気筒中心線
Zの延びる方向のいずれか一端側から見た平面視におい
て、ピストン5冠面の凹部50の長さ方向とインジェク
タ18による燃料の噴射方向(燃料噴霧の中心線Fが延
びる方向、以下X方向ともいう)とが大略一致してい
る。これは、吸気ポート10,10から燃焼室6へ吸気
の流入する方向と凹部50の長さ方向とが一致するとい
うことであり、このことで、気筒2の吸気行程から圧縮
行程にかけてタンブル流Tが前記凹部50の壁面に沿っ
てインジェクタ18に向かうように流れ、このタンブル
流Tが比較的弱いものであっても、気筒2の圧縮行程後
期まで安定して保持される。
【0054】一方、図3に示すように気筒列方向に見る
と、インジェクタ18の軸心(この実施形態では燃料噴
霧の中心線Fに一致する)が気筒2の横断面に対して所
定の傾斜角度δ(好ましくはδ=25°〜40度、図例
では略30°)をなすように配置されており、また、該
インジェクタ18による燃料噴霧の拡がり角θは雰囲気
圧力、即ち燃焼室6の圧力状態によって変化するもので
あるが、この実施形態のものでは、気筒2の圧縮行程中
期以降における燃料噴霧の拡がり角θは例えばθ=20
°〜60°の範囲とされている。このことで、気筒2の
圧縮行程中期以降の燃料噴射時点において前記の如くピ
ストン5冠面の凹部50に沿って流れるタンブル流Tに
対して、インジェクタ18により燃料噴霧の大部分を略
正対して衝突させることができる。
【0055】尚、前記燃料噴霧拡がり角θの定義として
は、図4に模式的に示すように、インジェクタ18の先
端部A点から20mm下流の位置において噴霧中心線F
の通る仮想平面と燃料噴霧の輪郭とが交差する2点B,
Cを決定し、∠BACをもって燃料噴霧の拡がり角θを
定義する(θ=∠BAC)。ここで、燃料噴霧の輪郭に
ついては例えばレーザシート法により求めるようにすれ
ばよい。これは、まず、インジェクタにより噴射させる
流体として燃料性状相当の試料を用い、この試料の圧力
を所定値(例えば10MPa)に設定するとともに、噴
霧の撮影が可能なレーザ通過窓と計測用窓とを備えた圧
力容器内を気筒の圧縮行程中期以降の燃料噴射時期に相
当する圧力状態(例えば0.25MPa)に加圧する。
【0056】そして、常温下において、1パルス当たり
の噴射量が9mm3/strokeになるように、インジェクタ1
8に所定パルス幅の駆動パルス信号を入力して燃料を噴
射させ、その際、燃料噴霧に対しその噴霧中心線を通る
ように厚さ1mm程度のレーザシート光を照射しておい
て、このレーザシート光面に対して直交する方向から高
速度カメラにて噴霧画像を撮影する。そして、前記駆動
パルス信号の入力時期から1.56ミリ秒後の撮影画面
に基づいて噴霧の拡がり角θを計測すればよい。
【0057】前記のようにピストン5冠面の凹部50と
インジェクタ18との位置関係を定め且つ該インジェク
タ18による燃料噴霧拡がり角θを設定したことで、エ
ンジン1の各気筒2の燃料噴射時点(図13参照)にお
いて前記の如くピストン5冠面の凹部50に沿って流れ
るタンブル流Tに対し、燃料噴霧の大部分を略正対して
衝突させることができる。そして、各気筒2毎に点火時
期から逆算した所定のタイミングでもってインジェクタ
18を作動させて、燃料を噴射させるようにすれば、燃
料噴霧をタンブル流Tにより狙い通りに減速させて、ち
ょうど気筒2の点火時点までに点火プラグ16の電極付
近に混合気を到達させることができる。
【0058】そのように滞留する混合気に対して確実に
点火できるように、この実施形態のエンジン1では点火
プラグ16の電極が気筒中心線Zに沿って燃焼室6の天
井部から所定量だけ突出するように配置されている。こ
のことで、点火プラグ16の電極は燃料の噴射から点火
までの間、タンブル流Tの渦の中心寄りに位置すること
になり、その周囲に混合気の滞留し易い状態に保たれ
る。
【0059】さらに、エンジン1の運転状態に応じて吸
気ポート10に設けられた吸気流動調節弁25の開度が
制御されて、タンブル流Tの流速が適切な範囲(気筒の
吸気行程でタンブル比が略1.1〜略2.3となる範
囲)に収まるように調節されるとともに、インジェクタ
18へ供給される燃圧が制御されて燃料噴霧の貫徹力が
前記タンブル流Tの流速に見合ったものとなるように調
節される。このことで、例えばエンジン回転速度の変化
に伴いタンブル流の流速が変化しても、そのタンブル流
Tの強さと燃料噴霧の貫徹力とを強過ぎず且つ弱過ぎな
い最適な範囲で均衡させて、前記の如き混合気の成層化
を実現することができる。
【0060】(燃焼室の構造)次に、本願発明の特徴部
分であるエンジン1の燃焼室構造について詳細に説明す
る。
【0061】まず、図3及び図5に示すように、各気筒
2内の燃焼室6の天井部は、シリンダヘッド4の底面に
各気筒2毎に形成された天井壁60と、この天井壁60
の傾斜面部60a,60bにそれぞれ2つずつ配設され
た吸排気弁12,13の傘部(図5では省略する)とに
よって構成される。すなわち、図3に示すように気筒列
方向に見たときに、燃焼室6の天井壁60には略中央か
ら左右両端側に向かってそれぞれ徐々にピストン5冠面
に近づくように延びる吸気側及び排気側の2つの傾斜面
部60a,60bと、それらの中間に連続して気筒列方
向(気筒中心線Zに沿って見てX方向に直交する方向、
以下Y方向ともいう)に延びる帯状の平面部60cとが
形成されている。このことで、燃焼室6の天井部は、点
火プラグ16の電極を通り且つX方向に垂直な断面で見
ると、ピストン5冠面に向かって開口する略コ字状の断
面形状となっている(図7参照)。
【0062】また、前記吸気側傾斜面部60aに開口す
る吸気ポート10,10の各開口部は排気側傾斜面部6
0bに開口する排気ポート11,11の各開口部よりも
大径である。このため、それらの間に挟まれる平面部6
0cは気筒中心線Zに対して排気側寄りにずれており、
この平面部60cのY方向略中央部に開口するプラグホ
ール61も気筒中心線Zに対して排気側にずれている。
前記各吸気ポート10の開口部周縁にはこれを取り囲む
円環状の凹部10aが形成されており、この凹部10a
の分だけ、各吸気ポート10の開口部が吸気側傾斜面部
60aよりも深い位置にある。言い換えると、吸気ポー
ト10の開口部は燃焼室6において排気ポート11の開
口部よりも高い(気筒中心線Zに沿ってピストン5冠面
から遠い)位置にある。これは、インジェクタ18が2
つの吸気ポート10,10の間に挟まれるようにしてそ
れらに近接して配置されることに対応して、吸気ポート
10,10の位置を全体として排気ポート11,11よ
りも高い位置にずらして設定したことに因る。
【0063】尚、前記吸気側傾斜面部60aよりも外周
側の天井壁60の外周縁部には、Y方向について2つの
吸気ポート10,10開口部の中間にインジェクタ18
の先端部を収容する孔部62が開口されている。また、
図例では該孔部62に連続してX方向に延びるように断
面三角形状のリセス63が形成されている(このリセス
63は無くてもよい)。
【0064】一方、図1、3及び図6(a)にも示すよう
に、前記燃焼室6の天井部に対向するピストン5の冠面
には、上述の如くX方向に長いレモン形状の凹部50が
形成されている。この凹部50の開口幅は、気筒中心線
Zに沿って見ると、点火プラグ16の電極を両側から挟
むプラグ側方部位P,Pにおいて最大となる一方、そこ
から凹部50の長さ方向(X方向)両端側に向かって徐
々に狭くなっている。また、そのプラグ側方部位P,P
における凹部50の開口幅Lは、図1に示すように気筒
2の圧縮行程においてインジェクタ18により噴射され
た燃料噴霧が点火プラグ16の付近にまで到達したとし
て、当該気筒2内の空気流動が無いと仮定したときのプ
ラグ側方部位P,Pにおける燃料噴霧の幅W以上の大き
さとされている。
【0065】従って、燃料噴霧が凹部50の幅方向の側
壁面50a,50aに接触することはなく、後述の如く
スキッシュ流Sによって燃料噴霧の側方への飛散が抑え
られることを考慮すれば、凹部側壁面50aへの燃料の
付着は最小限度のものとなる。また、ピストン5が圧縮
上死点(TDC)にあるときでも、凹部50の幅方向両
側の側壁面50a,50aはいずれも点火プラグ16の
電極から十分に離れているので、該側壁面50aによっ
て火炎核の成長が阻害されたり、火炎面の伝播性が低下
したりすることはない。
【0066】尚、図6(b)(c)に示すように、前記凹部5
0の底壁面50bは略平坦になっていて、その長さ方向
(X方向)の両端側に緩やかに湾曲して上方に向かう湾
曲部が連続しており、特に吸気側の湾曲部に連続して燃
料噴霧との干渉を避けるための切り欠き部52が形成さ
れている。また、前記凹部50の底壁面50bの幅方向
両端側には側壁面50a,50aが連続していて、この
側壁の高さは凹部50の長さ方向の略中央部(プラグ側
方部位P)において最も高くなっている。
【0067】前記凹部50を除いたピストン5冠面の外
周側部分は、前記した燃焼室天井壁60に対応する形状
とされ、この天井壁60の吸気側及び排気側傾斜面部6
0a,60b並びに平面部60cとそれぞれ対峙するよ
うに、吸気側及び排気側スキッシュエリア51a,51
b並びにそれらの中間の中間スキッシュエリア51cが
形成されている。すなわち、ピストン5冠面の外周側に
は吸気側及び排気側においてそれぞれ凹部50の開口部
に沿うように傾斜面が形成されていて、吸気側の傾斜面
が燃焼室天井壁60の吸気側傾斜面部60aと略平行な
吸気側スキッシュエリア51aとなり、反対の吸気側の
傾斜面が天井壁60の排気側傾斜面部60bと略平行な
排気側スキッシュエリア51bとなる。但し、前記吸気
側スキッシュエリア51aには、吸気弁12,12の傘
部との干渉を避けるようにバルブリセス53,53が形
成されている。
【0068】また、前記吸気側及び排気側スキッシュエ
リア51a,51bの中間に連続して、ピストン5冠面
外周側のX方向略中央部には凹部50の幅方向両側にお
いてそれぞれY方向に延びる帯状の平面部が形成されて
いて、この平面部が燃焼室天井壁60の平面部60cと
略平行な中間スキッシュエリア51cとなる。この中間
スキッシュエリア51cは、気筒中心線Zに沿って見た
ときに点火プラグ16の電極を凹部50の幅方向(Y方
向)両側から挟むプラグ側方部位P,Pを含んでいる。
【0069】そして、気筒2の圧縮行程においてピスト
ン5が上死点に向かって上昇すると、図1や図7、図1
4にも示すように、ピストン5冠面のスキッシュエリア
51と燃焼室6の天井部60との間に挟まれる空間から
凹部50の内方に向かうように空気が押し出される。す
なわち、前記中間スキッシュエリア51cと燃焼室天井
壁60の平面部60cとの間で点火プラグ16電極に向
かうように凹部50の幅方向両側から流れる強いスキッ
シュ流Sが生成される。また、前記吸気側スキッシュエ
リア51aと燃焼室天井壁60の吸気側傾斜面部60a
及び吸気弁12の傘部との間で幅方向両側から凹部50
の内方に向かい且つ吸気側から排気側に向かうスキッシ
ュ流Sが生成され、同様に、排気側スキッシュエリア5
1bと排気側傾斜面部60b及び排気弁13の傘部との
間で幅方向両側から凹部50の内方に向かい且つ排気側
から吸気側に向かうスキッシュ流Sが生成される。
【0070】但し、前記したように、吸気側スキッシュ
エリア51aにはバルブリセス53,53が形成されて
おり、しかも、吸気ポート10,10の開口部が排気側
に比べて高い位置にあるため、ここではあまり強いスキ
ッシュ流Sは生成しない。つまり、スキッシュ流Sは、
凹部50の内方に向かう開口幅方向の成分と排気側から
吸気側に向かう成分とがそれぞれ強くなる一方、吸気側
から排気側に向かう成分は相対的に弱くなっている。
【0071】前記の如く、気筒2の圧縮行程後期にはピ
ストン5冠面外周側のスキッシュエリア51a〜cと燃
焼室6天井部との間で当該燃焼室6の略中心に向かうよ
うに流れるスキッシュ流Sが生成され、これにより、点
火プラグ16の電極付近に滞留する混合気の拡散が抑制
される。すなわち、この実施形態の直噴エンジン1で
は、上述したように、各気筒2毎にその圧縮行程中期以
降にインジェクタ18により噴射させた燃料をピストン
5冠面の凹部50に沿って流れるタンブル流Tにより減
速させて、燃焼室6略中央の点火プラグ16電極の付近
に到達させるとともに、その燃料噴霧がタンブル流Tと
の衝突に伴い飛散することや、点火プラグ16の電極付
近に到達した混合気が拡散することを凹部50の幅方向
からの強いスキッシュ流Sによって抑えるようにしてい
る。
【0072】ここで、凹部50の幅方向から点火プラグ
16の電極に向かう強いスキッシュ流を得るためには、
ピストン5冠面の中間スキッシュエリア51cの面積を
十分に大きくする必要があり、少なくともプラグ側方部
位P,Pにおけるスキッシュエリア幅SL(中間スキッ
シュエリア51cのY方向の長さ:図6(a)にのみ示
す)を所定以上に大きくすることが好ましい。しかし、
スキッシュエリア幅SLが大きいということは、その
分、点火プラグ16の電極付近で凹部50の開口幅が狭
くなって、該凹部50の幅方向両側の側壁面50a,5
0aが点火プラグ16電極に近づくということであるか
ら、それら側壁面50a,50aへの燃料の付着量が増
大する傾向があり、また、該側壁面50a,50aが火
炎伝播等に及ぼす影響も自ずと大きくなる。
【0073】この点について、本願の発明者らは、この
実施形態の如き火花点火式直噴エンジン1において各気
筒2の直径BがB=60〜90mmくらいの場合に、ピ
ストン5冠面の凹部50の開口幅を大きくしてその側壁
面50a,50aへの燃料の付着を十分に抑制し且つ火
炎伝播等に悪い影響を及ぼさないようにしながら、中間
スキッシュエリア51cの面積を十分に大きく確保でき
るような適切な寸法範囲のあることを見出した。
【0074】具体的には、図1に示すように、気筒2の
圧縮行程で噴射された燃料噴霧を気筒中心線Zに沿って
見たときの当該燃料噴霧のプラグ側方部位P,Pにおけ
る幅をWとして、凹部50の幅方向両側に位置する各中
間スキッシュエリア51cのプラグ側方部位P,Pにお
けるY方向の長さ(スキッシュエリア幅)SLを、以下
の関係式を満たすように設定すればよい。
【0075】 略0.15×B ≦ SL ≦ (B−W)/2 ・・・(式1) この関係式について説明すると、まず、スキッシュエリ
ア幅SLを気筒2の直径Bの略0.15倍以上とするの
は、こうすることによって、中間スキッシュエリア51
cの幅が十分に広くなり、強いスキッシュ流Sによって
混合気を点火プラグ16の電極に向けて集めることがで
きるからである。すなわち、図8にスキッシュエリア幅
SL(或いは凹部50の開口幅L)と点火プラグ16付
近の局所的空燃比との関係を調べた実験結果を示すと、
全体的な傾向としてはスキッシュエリア幅SLが広いほ
ど、点火プラグ16付近の局所空燃比がリッチになり、
その中でもスキッシュエリア幅SLが所定値αよりもや
や広いときに局所空燃比が最もリッチになる。また、そ
れよりもスキッシュエリア幅SLを拡げると今度はスキ
ッシュエリア幅SLの拡大に伴い、空燃比が希薄化して
しまう。
【0076】前記の実験結果から、スキッシュ流Sを強
くして混合気の拡散を抑制するためには、スキッシュエ
リア幅SLを前記所定値α以上とするのが好ましいとい
うことができ、そして、この所定値αが気筒2の直径B
の略0.15倍に相当するのである。
【0077】尚、前記のようにスキッシュエリア幅SL
を広くし過ぎた場合に、空燃比が希薄化するのは、その
ことによって凹部50の開口幅があまりに狭くなってし
まい、その凹部50の側壁面50a,50aへの燃料の
付着量が増大して、結果的に混合気全体の空燃比が希薄
化することに因ると考えられる。この場合には壁面50
aに付着した燃料が未燃状態で排出されることになるの
で、排気中のHC濃度が極めて高くなるという問題もあ
る。
【0078】一方、スキッシュエリア幅SLを、SL≦
(B−W)/2とするということは、気筒2内の空気流
動がないと仮定した場合にプラグ側方部位P,Pにおい
て燃料噴霧が幾何学的に凹部50の側壁面50a,50
aに接触しないということである。そして、そのように
燃料噴霧が幾何学的に凹部50の側壁面50a,50a
に接触しないようにすれば、該側壁面50a,50aへ
の燃料の付着が殆ど無くなり、混合気全体の希薄化を阻
止できることは勿論、排気中のHC濃度を許容範囲内に
低減することができる。すなわち、図9に凹部50の開
口幅L(スキッシュエリア幅SL)と該凹部の側壁面5
0aへの燃料付着量との関係を調べた実験結果を示すよ
うに、燃料付着量は凹部50の開口幅Lが広いほど(ス
キッシュエリア幅SLが狭いほど)、少なくなるのであ
るが、その中でも凹部開口幅Lの減少に伴い燃料付着量
の急増する特異点βが存在し、この点βに対応するスキ
ッシュエリア幅SLが、SL=(B−W)/2なのであ
る。
【0079】そして、図10に実線のグラフで示すよう
に、凹部50の開口幅L(スキッシュエリア幅SL)と
排気中のHC濃度との関係を調べた結果、前記特異点β
に対して凹部50の開口幅Lを大きくする(スキッシュ
エリア幅SLを狭くする)ことで排気中のHC濃度を許
容値以下にすることができるが、凹部開口幅Lをあまり
大きくし過ぎると、再びHC濃度が高くなることが分か
った。これは、図に破線で示すように、凹部側壁面50
aへの燃料付着が減少して排気中のHC濃度が低くなる
ことと(図9参照)、前記したように側方からのスキッ
シュ流Sが弱くなることによって混合気全体が希薄化
し、これにより燃料の燃え残りが多くなってHC濃度が
増大する(図に一点鎖線で示す)こととが組み合わされ
た結果であると考えられる。
【0080】前記図8〜10に示す実験結果により、ス
キッシュエリア幅SLを前記式1の関係を満たすように
設定することで、ピストン5冠面の凹部50の開口幅を
大きくしてその側壁面50a,50aへの燃料の付着を
十分に抑制し且つ火炎伝播等への悪影響を解消しなが
ら、中間スキッシュエリア51cの面積を十分に確保し
て、強いスキッシュ流Sにより点火プラグ16電極の付
近に滞留する混合気の拡散を十分に抑制できることが分
かった。
【0081】尚、前記式1の関係は、気筒2の直径が略
60mm以上であって且つ略90mm以下のときに特に
重要なものとなる。すなわち、気筒2の直径が略60m
mよりも小さいときには式1を満たすようにスキッシュ
エリア幅SLを設定しても、あまり効果的ではない。反
対に、気筒2の直径が略90mmよりも大きいときに
は、凹部50の開口幅Lを十分に大きくしながら、その
外周側のピストン5冠面に所要のスキッシュエリア面積
を容易に確保できるから、前記式1の関係はあまり重要
なものではなくなるのである。
【0082】ここで、前記燃料噴霧の幅Wについて考察
する。まず、図11に示すように気筒列方向に見たと
き、インジェクタ18の噴口位置Aが点火プラグ16の
電極と略同じ高さ位置にあるとして、一般的に、インジ
ェクタ18からの燃料噴霧は、その輪郭が点火プラグ1
6電極に接するように燃料噴射方向及び噴霧拡がり角θ
を設定する。ここで、インジェクタ18の軸心が燃料噴
射方向(燃料噴霧中心線F)と略一致している場合に
は、該インジェクタの設置角(インジェクタ軸心が気筒
2の横断面に対してなす傾斜角度)をδとし、また、噴
霧中心線Fの周りに円錐状に拡がる燃料噴霧の拡がり角
をθとし、さらに、インジェクタ18の噴口位置Aから
点火プラグ16電極付近の所定位置(図例では点火プラ
グ16の軸心)までの距離をdとすると、前記燃料噴霧
の幅Wについては幾何学的に、 W/2 = (d/cosδ)× tan(θ/2) ・・・(式2) という関係がある。
【0083】従って、前記(式1)においてSL≦(B
−W)/2として規定されるスキッシュエリア幅SLの
上限については、実際に気筒2の圧縮行程における気筒
中心線Zに沿って見た燃料噴霧の幅wを求めるのではな
く、気筒の直径Bと、燃料の噴射方向、即ちインジェク
タの設置角δと、燃料噴霧の拡がり角θと、インジェク
タ18の噴口から点火プラグ16電極までの距離dとに
よって求めることもできる。
【0084】(エンジンの成層燃焼運転)次に、本願発
明の火花点火式直噴エンジン1の成層燃焼時の動作及び
作用効果について説明する。
【0085】このエンジン1が成層燃焼領域(イ)にあ
るときには、図12に示すように、気筒2の吸気行程に
おいてピストン5が上死点位置から下降すると、開状態
の吸気弁12の傘部と吸気ポート10の開口部との間隙
から吸気が燃焼室6へ流入し、同図に矢印で示すように
燃焼室6全体に亘る大きなタンブル流Tが生成される。
詳しくは、ピストン5の下降によって燃焼室6へ吸い込
まれる吸気は、主に吸気ポート10の開口端の点火プラ
グ16寄りの部位から燃焼室6へ流入し、ピストン5の
さらなる下降に伴い、排気側(図の左側)の気筒内周面
に沿って下方に向かった後に、ピストン5の冠面に沿っ
て吸気側(図の右側)へ曲げられて、そこからさらに上
方に向かって流れ、全体として燃焼室6の縦方向に旋回
するタンブル流Tとなる。
【0086】続いて、当該気筒2が圧縮行程に移行し
て、ピストン5が下死点位置から上昇すると、このピス
トン5の上昇に伴う燃焼室6容積の減少によってタンブ
ル流Tはコンパクトなものとなり、その流速も徐々に低
下する。しかし、気筒2の圧縮行程中期以降においても
ペントルーフ型の燃焼室6天井部とピストン5冠面の凹
部50との間に適切な形状の空間が残っているため、タ
ンブル流Tは崩壊することなく、当該気筒2の圧縮行程
後期まで保持される。このとき、ピストン5冠面の凹部
50に沿って排気側から吸気側(図の左側から右側)に
向かう流れがインジェクタ18の噴口の付近で折り返
し、燃焼室6の天井部に沿って吸気側から排気側へ流れ
るようになるが、特に前記凹部50に沿って吸気側に向
かう流れは、該凹部50の底壁面50bの吸気側の湾曲
部により天井部に向かうように案内されて、インジェク
タ18の噴口に向かって流れることになる。
【0087】このため、図13に示すように、気筒2の
圧縮行程中期以降にインジェクタ18により燃料が噴射
されると、この燃料噴霧の中心がタンブル流Tの流れの
強いところに略正対して衝突することになり、これによ
り、燃料液滴の気化霧化や周囲の空気との混合が促進さ
れるとともに、該燃料噴霧はタンブル流Tを押し退ける
ように進みながら徐々に減速されて、図14に示す当該
気筒2の点火時期において燃焼室6の略中央、即ち点火
プラグ16の電極周りに滞留するようになる。
【0088】その際、図1や図7に示すように、ピスト
ン5冠面外周側のスキッシュエリア51から気筒中心に
向かうように強いスキッシュ流Sが発生し、タンブル流
Tとの衝突に伴う燃料噴霧の飛散を抑えるとともに、点
火プラグ16の電極付近に滞留する混合気の拡散を抑制
して、着火性に優れた混合気塊を形成する。また、排気
側スキッシュエリア51bから混合気に向かうスキッシ
ュ流Sが燃焼室6天井部に残存して吸気側から排気側に
向かうタンブル流Tの影響を低減させて、混合気の点火
プラグ16電極周りの滞留精度を向上させる。そして、
この状態で点火プラグ16に通電されることよって前記
混合気塊に確実に着火され、そこから外周側に向かって
火炎面が伝播して良好な成層燃焼が行われる。
【0089】したがって、この実施形態に係る火花点火
式直噴エンジン1の燃焼室構造によると、エンジン1が
低速低負荷側で成層燃焼状態になるときには、気筒2の
燃焼室6におけるタンブル流T及びスキッシュ流Sによ
り燃料噴霧の挙動を制御して、運転状態の変化に依らず
混合気の最適な成層化を実現し、これによる良好な成層
燃焼の実現によって燃費及び出力を改善することができ
る。
【0090】しかも、ピストン5冠面の凹部50の開口
幅L(或いはスキッシュエリア幅SL)を広過ぎず且つ
狭過ぎない最適な範囲に設定したことで、前記エンジン
1の成層燃焼状態において、燃料の凹部50側壁面50
a,50aへの付着を十分に抑制しながら、点火プラグ
16の電極付近に滞留する混合気の拡散を抑制し且つそ
の混合気の排気側への移動を阻止することができる。こ
のことで、燃料噴着量の減少によって排気中のHC濃度
を低減できるとともに、最適な濃度状態の混合気を十分
に長く点火プラグ16周りに留めることができること
で、該混合気に安定して着火可能な期間が極めて長くな
り、これにより着火安定性が向上する上に、気筒2の点
火時期制御の自由度が高まることによって燃費及び出力
のさらなる改善が図られる。
【0091】さらに、前記ピストン5冠面の凹部50の
開口幅Lが広過ぎず且つ狭過ぎない最適な範囲に設定さ
れていることで、前記エンジン1の均一燃焼状態におい
て、燃焼初期に点火プラグ16の電極付近で火炎核の成
長や火炎面の伝播が阻害されることもなくなり、このこ
とによって、エンジン1の均一燃焼時の燃費及び出力を
さらに向上することができる。
【0092】(他の実施形態)本発明の構成は前記実施
形態のものに限定されることはなく、その他の種々の構
成を包含するものである。すなわち、前記実施形態で
は、点火プラグ16の電極を気筒中心線Zの付近(やや
排気側寄り)に位置付けているが、これに限らず、点火
プラグ16の電極を吸気弁側或いは排気弁側にずらして
配置することも可能である。
【0093】また、前記実施形態では、図6(c)や図7
に示すように、ピストン5冠面の中間スキッシュエリア
51cを燃焼室天井壁60の平面部60cに略平行に気
筒列方向(Y方向)に延びる平面部として形成している
が、これに限らず、例えば図15に示すように、中間ス
キッシュエリア51c′を、凹部50の開口部からピス
トン5冠面の外周縁部に向かって徐々に高さが低くなる
傾斜面として形成することもできる。但し、この場合に
十分に強いスキッシュ流を得るためには、中間スキッシ
ュエリア51c′の傾斜の度合いを、図に仮想線で示す
中間スキッシュエリア51c′の延長線が、例えば気筒
2の圧縮上死点前70°CA近傍で点火プラグ16の電
極付近に滞留する混合気塊の上縁部(空燃比が所定以上
にリッチな部分の燃焼室6天井部に近い側)よりも上方
に延びるように設定することが望ましい。
【0094】さらに、前記実施形態では、図3や図6
(a)等に示すように、ピストン5冠面の吸気側スキッシ
ュエリア51aにバルブリセス53を設けているが、こ
れに限るものではない。但し、混合気の拡散を狙い通り
に抑制するためには、その混合気に対してY方向の両側
から作用するスキッシュ流Sの強さを十分に強くする必
要があり、このためには中間スキッシュエリア51cと
天井壁60の平面部60cとの間の間隔は、吸気側スキ
ッシュエリア51aと吸気側傾斜面部60aとの間の間
隔よりも狭くするのが好ましい。加えて、混合気の滞留
精度を高めるためには、排気側からのスキッシュ流Sを
吸気側からのものよりも強くするのが好ましいので、吸
気側スキッシュエリア51aにバルブリセス53を設け
ない場合には、該吸気側スキッシュエリア51aと吸気
側傾斜面部60aとの間の間隔を、排気側スキッシュエ
リア51bと排気側傾斜面部60bとの間の間隔よりも
広くするのが好ましい。
【0095】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1の発明
に係る火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造によると、
気筒内燃焼室の周縁部に配設した燃料噴射弁から該燃焼
室のタンブル流に対向するように燃料を噴射させて、混
合気を点火プラグの電極周りに成層化するようにしたも
のにおいて、気筒中心線に沿って見て燃料噴霧中心線が
延びる方向をX方向とし且つ該X方向に直交する方向を
Y方向としたときに、点火プラグ電極のY方向両側に近
接するプラグ側方部位のスキッシュエリア幅SLを、気
筒2の直径をBとし且つ気筒中心線Zに沿って見た燃料
噴霧のプラグ側方部位における幅をWとして、略0.1
5×B≦SL≦(B−W)/2なる関係を満たすように
設定したことで、前記凹部の側壁面への燃料の付着を十
分に抑制しながら、混合気の側方への拡散を抑える所要
の強さのスキッシュ流を生成させて、着火安定性を向上
することができる。
【0096】請求項2の発明によると、ピストン冠面の
スキッシュエリアとして、少なくとも燃焼室天井部の平
面部と対峙してY方向に延びる帯状の平面部を形成した
ことで、点火プラグの電極に向かいY方向の両側から流
れる強いスキッシュ流を生成させて、前記請求項1の発
明の効果を十分に得ることができる。
【0097】請求項3の発明によると、ピストン冠面の
凹部をX方向に長いレモン形状とし、その開口部のY方
向両側にそれぞれ沿うようにスキッシュエリアを形成し
たことで、該スキッシュエリアの全体から凹部の内方に
向かうようなスキッシュ流を生成させて、混合気の拡散
をY方向だけでなくX方向についても抑制することがで
き、これにより着火安定性をさらに向上できる。
【0098】請求項4の発明によると、ピストン冠面の
中間のスキッシュエリアと燃焼室天井部の平面部との間
の間隔を吸気側のスキッシュエリアと吸気側傾斜面部と
の間の間隔よりも狭くしたことで、混合気の排気側への
移動を助長することなく、凹部の幅方向に流れる強いス
キッシュ流により混合気の拡散をさらに効果的に抑制で
きる。
【0099】請求項5の発明によると、排気側のスキッ
シュエリアと燃焼室天井部の排気側傾斜面部との間の間
隔を吸気側スキッシュエリアと吸気側傾斜面部との間の
間隔よりも狭くしたことで、排気側からのスキッシュ流
を吸気側からのものよりも強くして、燃焼室に残るタン
ブル流による混合気の排気側への移動を阻止できるの
で、混合気の滞留精度を向上できる。
【0100】請求項6の発明によると、気筒の直径を略
60mm以上で且つ略90mm以下としたときに、本願
発明の効果が特に有効なものとなる。
【0101】次に、請求項7の発明に係る火花点火式直
噴エンジンの燃焼室構造によると、請求項1の発明と同
様に、エンジンの成層燃焼運転時に気筒の圧縮行程で燃
料噴射弁により噴射した燃料噴霧をタンブル流によって
減速させて、可燃混合気として点火プラグの電極付近に
滞留させることができるとともに、レモン形状の凹部を
囲むスキッシュエリアから当該凹部の内方に向かうよう
なスキッシュ流を生成させて、これにより混合気の拡散
を抑えて着火安定性を向上することができる。その際、
前記請求項4の発明と同様に混合気の排気側への移動を
助長することなく、凹部の幅方向に流れる強いスキッシ
ュ流により混合気の拡散を効果的に抑制できる。
【0102】請求項8の発明では、前記請求項7の発明
において、前記請求項5の発明と同様に排気側からのス
キッシュ流を吸気側からのものよりも強くして、燃焼室
に残るタンブル流による混合気の排気側への移動を阻止
できる。これにより、混合気の点火プラグ電極付近の滞
留精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る火花点火式直噴エンジ
ンの燃焼室を気筒中心線に沿って見て、ピストン冠面の
凹部、スキッシュエリア及び燃料噴霧の相互の位置関係
を示す説明図である。
【図2】エンジンの全体構成図である。
【図3】気筒列方向に見た燃焼室の縦断面図である。
【図4】インジェクタからの燃料噴霧の拡がり角の定義
を示す説明図である。
【図5】エンジンの各気筒毎の燃焼室天井部の構成を示
す図である。
【図6】(a)ピストン冠面の構成を示す上面図、(b)Y方
向に見たピストンの縦断面図及び(c)X方向に見たピス
トンの縦断面図である。
【図7】X方向に見て、Y方向のスキッシュ流により混
合気の拡散が抑制される様子を示す説明図である。
【図8】スキッシュエリア幅を変更して、そのときの点
火プラグ電極付近の局所空燃比の変化を調べた実験結果
のグラフ図である。
【図9】凹部の開口幅を変更して、そのときの凹部側壁
面への燃料付着量の変化を調べた実験結果のグラフ図で
ある。
【図10】凹部の開口幅(スキッシュエリア幅)を変更
して、そのときの排気中のHC濃度の変化を調べた実験
結果のグラフ図である。
【図11】気筒中心線に沿って見たときのプラグ側方部
位における燃料噴霧幅を求める演算式の説明図である。
【図12】気筒の吸気行程においてピストンの下降に伴
い燃焼室に生成されるタンブル流の説明図である。
【図13】気筒の圧縮行程中期以降にタンブル流に向か
って略正対するように噴射される燃料噴霧の説明図であ
る。
【図14】気筒の点火時期近傍で点火プラグ電極付近に
滞留する混合気の説明図である。
【図15】中間スキッシュエリアを傾斜面とした他の実
施形態に係る図7相当図である。
【符号の説明】
1 火花点火式直噴エンジン 2 気筒 5 ピストン 6 燃焼室 10 吸気ポート 11 排気ポート 16 点火プラグ 18 インジェクタ(燃料噴射弁) 50 ピストン冠面の凹部 51 スキッシュエリア 51a 吸気側スキッシュエリア 51b 排気側スキッシュエリア 51c 中間スキッシュエリア(平面部) 60 燃焼室の天井壁 60a 吸気側傾斜面部 60b 排気側形斜面部 60c 平面部 62 孔部 F 燃料噴霧の中心線 L 凹部のプラグ側方部位での開口幅 P プラグ側方部位 S スキッシュ流 T タンブル流 Z 気筒中心線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02B 23/08 F02B 23/08 U F02F 1/24 F02F 1/24 H J 3/26 3/26 A (72)発明者 斉藤 史彦 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 陰山 明 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 乃生 芳尚 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 山川 正尚 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 藤原 義幸 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 Fターム(参考) 3G023 AA02 AB03 AC05 AD02 AD06 AD08 AD09 AD14 AD29 AE05 AG01 AG03 3G024 AA04 DA01 DA06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 気筒内燃焼室の天井部に点火プラグを配
    設し、該燃焼室の周縁部に燃料噴射弁を配設するととも
    に、前記天井部に対向するピストンの冠面に凹部を形成
    して、成層燃焼運転時には前記凹部に沿って流れる燃焼
    室のタンブル流に対向するように前記燃料噴射弁により
    燃料を噴射させるようにした火花点火式直噴エンジンの
    燃焼室構造であって、 前記気筒の中心線に沿って見て、前記燃料噴射弁からの
    燃料噴霧の中心線が延びる方向をX方向とし且つ該X方
    向に直交する方向をY方向としたときに、前記点火プラ
    グの電極を通り且つX方向に垂直な断面による前記燃焼
    室天井部の断面形状がピストンの冠面に向かって開口す
    る略コ字状であり、 前記ピストン冠面の凹部は、気筒中心線に沿って見たと
    きにX方向に長く開口し且つその開口幅が前記点火プラ
    グ電極をY方向の両側から挟むプラグ側方部位で最大と
    なるように形成され、 前記凹部を除いたピストン冠面の外周側部分には、燃焼
    室の天井部と対峙する平面状のスキッシュエリアが少な
    くとも前記プラグ側方部位を含むように形成され、 前記スキッシュエリアのプラグ側方部位におけるY方向
    の長さSLは、気筒の直径をBとし、且つ、気筒の圧縮
    行程で噴射された燃料噴霧を気筒中心線に沿って見たと
    きの当該燃料噴霧の前記プラグ側方部位における幅をW
    として、 略0.15×B ≦ SL ≦ (B−W)/2 なる関係を満たすように設定されていることを特徴とす
    る火花点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 燃焼室は、天井部のX方向略中央部分にY方向に延びる
    帯状の平面部が形成されるとともに、該平面部からX方
    向の両端側に向かって徐々にピストン冠面に接近するよ
    うに延びる2つの傾斜面部が形成されたペントルーフ型
    のものであり、 前記ピストン冠面のスキッシュエリアには、少なくと
    も、前記燃焼室天井面の平面部と対峙してY方向に延び
    る帯状の平面部が形成されていることを特徴とする火花
    点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  3. 【請求項3】 請求項2において、 ピストン冠面の凹部は、気筒中心線に沿って見て、プラ
    グ側方部位からX方向の両端側に向かって徐々に開口幅
    が狭くなるレモン形状のものであり、 前記ピストン冠面のスキッシュエリアは、前記凹部のY
    方向両側においてそれぞれ該凹部の開口部に沿うように
    形成されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジ
    ンの燃焼室構造。
  4. 【請求項4】 請求項3において、 燃焼室の天井部の一方の傾斜面部に吸気ポートが開口さ
    れ、他方の傾斜面部には排気ポートが開口されており、 前記一方の傾斜面部の外周側の端部よりも外周側には、
    燃料噴射弁の先端部を収容する孔部が開口され、 ピストン冠面のスキッシュエリアは、前記燃焼室天井部
    の吸気側及び排気側の傾斜面部並びにそれらの中間の平
    面部とそれぞれ対峙する吸気側、排気側及び中間のエリ
    アからなり、 前記中間のスキッシュエリアと天井部の平面部との間の
    間隔が吸気側のスキッシュエリアと天井部の吸気側傾斜
    面部との間の間隔よりも狭いことを特徴とする火花点火
    式直噴エンジンの燃焼室構造。
  5. 【請求項5】 請求項4において、 排気側のスキッシュエリアと燃焼室天井部の排気側傾斜
    面部との間の間隔が吸気側のスキッシュエリアと吸気側
    傾斜面部との間の間隔よりも狭いことを特徴とする火花
    点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1つにおいて、 気筒の直径が略60mm以上であって且つ略90mm以
    下であることを特徴とする火花点火式直噴エンジンの燃
    焼室構造。
  7. 【請求項7】 気筒内燃焼室の天井部に点火プラグを配
    設し、該燃焼室の周縁部に燃料噴射弁を配設するととも
    に、前記天井部に対向するピストンの冠面に凹部を形成
    して、成層燃焼運転時には前記凹部に沿って流れる燃焼
    室のタンブル流に対向するように前記燃料噴射弁により
    燃料を噴射させるようにした火花点火式直噴エンジンの
    燃焼室構造であって、 前記燃焼室は、天井部の略中央部分に帯状の平面部が形
    成されるとともに、該平面部の幅方向両端側から徐々に
    ピストン冠面に接近するように延びる2つの傾斜面部が
    形成されたペントルーフ型のものであり、 前記天井部の一方の傾斜面部に吸気ポートが開口され、
    他方の傾斜面部には排気ポートが開口されるとともに、
    前記一方の傾斜面部の外周側の端部よりも外周側には燃
    料噴射弁の先端部を収容する孔部が開口され、 前記ピストン冠面の凹部は、気筒中心線に沿って見て、
    前記燃料噴射弁からの燃料噴霧の中心線が延びる方向に
    長く開口され、且つその開口幅が前記点火プラグ電極を
    両側から挟むプラグ側方部位において最大となる一方、
    そこから長さ方向の両端側に向かって徐々に狭くなるレ
    モン形状のものであり、 前記凹部を除いたピストン冠面の外周側部分には、前記
    天井部の吸気側及び排気側の傾斜面部並びにそれらの中
    間の平面部とそれぞれ対峙する吸気側、排気側及び中間
    のスキッシュエリアが形成され、 前記中間のスキッシュエリアと天井部の平面部との間の
    間隔が吸気側スキッシュエリアと吸気側傾斜面部との間
    の間隔よりも狭いことを特徴とする火花点火式直噴エン
    ジンの燃焼室構造。
  8. 【請求項8】 請求項7において、 排気側のスキッシュエリアと燃焼室天井部の排気側傾斜
    面部との間の間隔が吸気側のスキッシュエリアと吸気側
    傾斜面部との間の間隔よりも狭いことを特徴とする火花
    点火式直噴エンジンの燃焼室構造。
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