JP3835289B2 - 火花点火式直噴エンジン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気筒内の燃焼室に燃料噴射弁により燃料を直接噴射して、点火プラグ周りに成層化させるようにした火花点火式直噴エンジンに関し、特に、燃料噴射弁の先端部に設ける噴口の構造の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の火花点火式直噴エンジンでは、各気筒毎の燃料噴射弁をその先端部の噴口が気筒内の燃焼室に臨むように配設するとともに、ピストンの冠面に所定形状のキャビティを形成し、前記燃料噴射弁から噴射させた燃料を一旦、対向するキャビティの底壁面に衝突させた上で、このキャビティ内に混合気を閉じこめて点火プラグ側に輸送し、その周囲に混合気を成層化させるようにしている(例えば特開平11−161338号公報を参照)。
【0003】
前記のような直噴エンジンに用いられる燃料噴射弁は、一般的に、単一の噴口から燃料を旋回流として噴射させて略円錐状の燃料噴霧を形成する旋回流型のものであり、このような旋回流による燃料噴霧は、気筒内圧が高いときには噴霧の拡がり角が小さくなって中実の円錐状となる一方、気筒内圧が低いときには噴霧の拡がり角が大きくなって中空の円錐状となる。
【0004】
従って、前記の旋回流型燃料噴射弁によれば、エンジンを成層燃焼状態とするために相対的に少量の燃料を気筒の圧縮行程で噴射するときには、高圧の気筒内で噴霧の拡がり角が小さくなり燃料噴霧の分散が抑制されるので、混合気を点火プラグ周りに集め易い。また、均一燃焼状態では相対的に多くの燃料を気筒の吸気行程で噴射することになるが、このときには気筒内圧が低いので噴霧の拡がり角が大きくなり、燃料を広く分散させて燃焼室全体に略均一な混合気を形成することができる。
【0005】
しかしながら、前記旋回流型燃料噴射弁では、気筒内圧の高い圧縮行程で所定量以上の燃料を噴射しようとすると、燃料噴霧の中心付近における燃料の密度が高くなり過ぎて、混合気の過濃部分におけるスモークの生成が問題となる。このため、従来の直噴エンジンでは成層燃焼を行える運転領域が燃料噴射量の少ない低負荷域に限定されることになり、運転領域全体について見たときには成層燃焼運転による燃費率の低減効果が十分に得られないという実状がある。
【0006】
この点について、特開2000−38974号公報には、燃料噴射弁の先端部に4個以上の噴口を環状に配設し、各噴口からそれぞれ燃料を噴出させて一体的に1つの燃料噴霧を形成するようにした多噴口型の燃料噴射弁が開示されており、このものでは、前記旋回流型のものと同様に円錐状の燃料噴霧を形成して、燃料を広範囲に亘って均一に噴射することができるという知見が示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本願の発明者らは、前記後者の従来例(特開2000−38974号)の如き多噴口型燃料噴射弁を火花点火式直噴エンジンに適用して、従来からの旋回流型燃料噴射弁の欠点を改良すべく、エンジンの種々の運転状態における混合気の形成過程について試験研究を重ねた結果、4個以上の噴口を環状に配設した多噴口型の燃料噴射弁について以下のような性質があることを見出した。すなわち、
▲1▼ 多噴口型の燃料噴射弁では、エンジンの中負荷域において成層燃焼状態とすべく所定量以上の燃料を気筒の圧縮行程で噴射したときでも、旋回流型の燃料噴射弁を用いたときのような燃料の過集中が起きず、燃焼に伴うスモークの生成は見られない。反面、燃料噴射量の少ない低負荷域では燃料噴霧の中心付近における燃料の密度が低くなり、混合気の着火安定性が損なわれることがある。
【0008】
▲2▼ 一方、均一燃焼となる高速高負荷領域において多量の燃料を気筒の吸気上死点近傍から噴射する場合には、スモークの排出量が極めて多くなる。これは多噴口型燃料噴射弁の場合、雰囲気圧が低下しても噴霧が大きく拡がることがなく、噴霧の貫徹力も低下しないことから、吸気上死点近傍で燃料を噴射するとピストン冠面への付着量が極めて多くなることに因ると考えられる。そして、そのことを防止するために燃料噴射時期を相対的に遅角側に設定すると、燃料の気化霧化が不十分となって出力が低下してしまう。
【0009】
このような多噴口型燃料噴射弁の性質に鑑み、本願発明の目的は、燃料噴射弁の先端に設ける複数の噴口の配置構成に工夫を凝らして、相対的に高負荷側まで良好な成層燃焼を実現できるという多噴口型燃料噴射弁の長所を生かしながら、燃料噴射量の少ない低負荷域での着火安定性を改善し、さらに、均一燃焼状態となる高速高負荷領域においてスモークの増大を防止しつつ、十分な出力を確保することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本願発明では、燃料噴射弁の先端部に6個以上の噴口を全体として長円状となるように配設するとともに、その燃料噴射弁がエンジンの各気筒に装着された状態で噴口同士を結ぶ長円の長手方向が気筒列方向となるようにして、該各噴口からそれぞれ噴出する燃料により一体的に形成される燃料噴霧の形状が気筒中心線の方向に狭い扁平状となるようにした。
【0011】
具体的に、請求項1の発明では、複数の気筒と、該各気筒内の燃焼室にその周縁部から燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、当該燃焼室の天井部の略中央に配置された点火プラグとを備えるとともに、燃焼室の底部となるピストンの冠面にキャビティを設けて、所定の運転状態で前記燃料噴射弁により噴射した燃料噴霧を前記キャビティの壁面により点火プラグ側に案内して成層化させるようにした火花点火式直噴エンジンを前提とする。そして、前記燃料噴射弁の先端部には燃焼室内に燃料を噴射する6個以上の噴口を長円状に配設し、且つその長円の長手方向を気筒列方向に設定した。
【0012】
前記の構成により、エンジンの所定運転状態で各気筒の圧縮行程に燃料噴射弁により燃料の噴射が行われると、該燃料噴射弁先端の6個以上の噴口からそれぞれ燃料が噴出して、全体として1つの燃料噴霧を形成するようになる。この際、前記噴口の個数が6個以上であることから、各噴口の大きさ及び相互の間隔がいずれも十分に小さなものとなり、このことで各噴口から噴出する燃料の微粒化が促進されるとともに、それらが繋がって一体的な燃料噴霧を形成し易く、また、燃料噴霧内での燃料分布の偏りも少なくなる。
【0013】
また、噴口が全体として長円状となるように配置され、且つその長円の長手方向が気筒列方向とされていることで、燃料噴霧の形状が気筒列方向に広く且つ気筒中心線方向には狭い扁平状となる。このことで、まず、燃料噴射量の相対的に少ない低負荷域においても、扁平状の燃料噴霧ではその中心付近における燃料の密度があまり低くはならず、よって混合気の着火安定性が確保できる。しかも、気筒列方向に広い燃料噴霧は気筒内のスワール流によって移動しても相対的に長い時間、点火プラグの電極付近に滞在することになるので、このことによっても混合気の着火安定性が向上し得る。
【0014】
一方、高速高負荷領域で多量の燃料を噴射する場合でも、前記の如き扁平状の燃料噴霧では自ずとピストン冠面への付着量が減少し、しかも気筒の半径方向については燃料を広範囲に分散させることができる。このことで、燃料噴射時期を可及的に進角させて十分に空気と混合し且つ気化霧化させて、良好に燃焼させることができる上に、そのときのピストン冠面への燃料付着に起因するスモーク量の増大も防止できる。
【0015】
請求項2の発明では、燃料噴射弁の噴口を、それぞれ噴出する燃料により一体的に形成される1つの燃料噴霧の気筒中心線方向の拡がり角が略25°以上であって略35°以下になり、且つ該燃料噴霧の気筒列方向の拡がり角が略35°以上であって略45°以下になるとともに、その気筒列方向の拡がり角が気筒中心線方向の拡がり角よりも略10°以上大きくなるように配置するものとする。こうすることで、燃料噴霧の形状を最適化して、請求項1の発明の作用効果を十分に得ることができる。
【0016】
尚、前記燃料噴霧の拡がり角としては、大気圧下で燃料噴射弁により噴射した燃料噴霧の中心線を通るようにストロボ光を照射し、このストロボ光面に対し略直交する方向から高速度カメラにて撮影した撮影画像において、以下のように測定したものとする。すなわち、例えば図10(a)に一例を示す撮影画像において、燃料噴射弁の先端部T(多噴口型燃料噴射弁の環状に配置された複数の噴口の略中心部)から燃料噴霧の中心線に沿って20mm離れた位置における燃料噴霧の幅方向両端部をB,Cとしたときに、図示の如く∠BTCの狭角を噴霧の拡がり角とすればよい。
【0017】
請求項3の発明では、燃料噴射弁の噴口を10個以下にするものとする。すなわち、燃料噴射弁先端部の限られたスペースに複数の噴口を配設する場合、その個数があまり多いと、個々の噴口の大きさが小さくなり過ぎて、目詰まり等の不具合が起きる虞れがあるが、この発明では噴口の個数を10個以下にすることで、斯かる不具合を未然に防止することができる。
【0018】
請求項4の発明では、燃料噴射弁の先端部において噴口を周方向に互いに略等間隔を空けて配置するものとする。こうすることで、燃料噴霧内での燃料分布の均一化が図られ、混合気の燃焼性がさらに向上する。
【0019】
請求項5の発明では、燃料噴射弁の先端部を燃料噴霧の中心線の方向から見て、噴口同士を結ぶ長円の中心に対して燃焼室天井部側に位置する噴口の個数を燃焼室底部側よりも多くするものとする。こうすれば、燃料噴霧内での燃料分布が燃焼室天井部側で相対的に高くなるので、低負荷域では着火安定性がさらに向上するとともに、高速高負荷領域ではピストン冠面への燃料付着量をさらに少なくすることができる。
【0020】
請求項6の発明では、燃料噴射弁の先端部に対し気筒中心線方向に対向するピストンの外周部分に、キャビティの底壁面よりも所定以上高く且つピストン外周端から半径方向に所定以上の厚みを有するトップランド部を形成する。
【0021】
すなわち、従来までの旋回流型燃料噴射弁を用いた直噴エンジンでは、一般的に、ピストンのキャビティ周壁を燃料噴射弁に対応する位置で抉って、円錐状の燃料噴霧との干渉を避け得るように凹陥部を形成しており、このことで、その凹陥部の周囲ではキャビティ周壁の高さないし厚みが小さくなるから、ピストンのトップリング溝との間に所要の肉厚を確保しようとすれば、凹陥部を設けた分だけトップリング溝の位置をピストン冠面から下げなくてはならなかった。この結果、ピストンの外周面と気筒内周面との間の消炎層の体積(クエンチングボリューム)が増大してしまい、均一燃焼時に未燃炭化水素の排出量が大くなるという不具合があった。
【0022】
この点について、本願発明では、前記請求項1の発明に係る燃料噴射弁の噴口の配設構造によって、燃料噴霧の形状が気筒中心線方向に狭い扁平状となり、このことによって燃料噴霧とピストンとの干渉が大幅に軽減できるから、前記の如き凹陥部を設ける必要がなくなり、キャビティの周壁が燃料噴射弁の先端部に対応する部位において所定以上の高さ及び厚みを有するものとなる。このことで、前記従来までの直噴エンジンと比較してピストンのトップリング溝の位置をピストン冠面寄りに高く設定することができるようになり、これにより、ピストン外周の消炎層の体積が減少して、未燃炭化水素の排出量が減少する。
【0023】
次に、請求項7の発明は、複数の気筒と、該各気筒内の燃焼室にその周縁部から燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、当該燃焼室の天井部の略中央に配置された点火プラグとを備えるとともに、燃焼室の底部となるピストンの冠面にキャビティを設けて、所定の運転状態で前記燃料噴射弁により気筒の圧縮行程で噴射した燃料噴霧を前記キャビティの壁面により点火プラグ側に案内して成層化させるようにした火花点火式直噴エンジンを前提とする。
【0024】
そして、前記燃料噴射弁の先端部に燃焼室内に燃料を噴射する6個以上の噴口を環状に配設して、該各噴口を、それぞれ噴出する燃料により一体的に形成される1つの燃料噴霧の気筒中心線方向の拡がり角が略25°以上であって略35°以下になり、且つ該燃料噴霧の気筒列方向の拡がり角が略35°以上であって略45°以下になるとともに、その気筒列方向の拡がり角が気筒中心線方向の拡がり角よりも略10°以上大きくなるように形成した。
【0025】
この構成によれば、前記した請求項2の発明と同様に、火花点火式直噴エンジンにおいて気筒内に噴射される燃料噴霧の形状が気筒列方向に広く且つ気筒中心線方向に狭い扁平状となり、且つその燃料噴霧の拡がり角が最適なものとなることで、請求項1の発明の作用効果が十分に得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0027】
図2は本発明に係る火花点火式直噴エンジン1の全体構成を示し、このエンジン1は、車両に搭載された多気筒ガソリンエンジンである。このエンジン1は、複数の気筒2,2,…(1つのみ図示する)が直列に並ぶように設けられたシリンダブロック3を有し、このシリンダブロック3上にシリンダヘッド4が配置されるとともに、各気筒2内にはピストン5が上下方向に往復動可能に嵌挿されていて、そのピストン5の冠面とシリンダヘッド4の下面との間の気筒2内に燃焼室6が区画形成されている。また、前記気筒2,2,…を囲むシリンダブロック3の側壁には、図示しないがウオータジャケットが形成されており、さらに、該シリンダブロック3の下側部分には、気筒2,2,…に連通するようにクランク室7が形成され、ここにクランク軸8が収容されている。このクランク軸8の一端側にはその回転角度(クランク角)を検出するための電磁式のクランク角センサ9が配設されている。
【0028】
前記各気筒2の詳しい構造は図3に拡大して示すようになっていて、燃焼室6の天井部には互いに差し掛けられた屋根のような形状をなす2つの傾斜面が形成されており、その2つの傾斜面にそれぞれ吸気ポート10及び排気ポート11が2つずつ開口していて、その各開口端に吸気及び排気弁12,12,13,13が配置されている。前記2つの吸気ポート10,10はそれぞれ燃焼室6から斜め上方に向かって延びていて、シリンダヘッド4の一側面に互いに独立して開口しており、一方、前記2つの排気ポート11,11は途中で1つに合流して略水平に延び、シリンダヘッド4の他側面に開口している。
【0029】
前記吸気弁12,12,…及び排気弁13,13,…は、それぞれ、シリンダヘッド4に配設された2本のカム軸14,14がタイミングベルトを介して前記クランク軸8により回転駆動されることで、各気筒2毎に所定のタイミングで開閉作動されるようになっている。尚、図1にのみ示すが、吸気側のカム軸14には、クランク軸8に対する回転位相を所定の角度範囲において連続的に変化させる公知の油圧式可変動弁機構15(Valiable Valve Timing:以下、VVTと略称する)が付設されていて、このVVT15の作動により前記吸気弁12の開閉作動時期が変更可能とされている。
【0030】
また、前記燃焼室6の天井部の略中央には、4つの吸排気弁12,13に取り囲まれるようにして点火プラグ16が配設されており、該点火プラグ16の基端部には点火回路17(図1にのみ示す)が接続されていて、各気筒2毎に所定の点火タイミングで点火プラグ16に通電するようになっている。一方、燃焼室6天井部の吸気側の周縁部には、2つの吸気ポート10,10の下方においてそれらに挟まれるようにインジェクタ(燃料噴射弁)18が配設されている。このインジェクタ18は、その先端部に設けた複数の噴口52,52,…(図1(b)参照)から気筒中心線Zに向かい且つピストン5の冠面に向かうように斜めに燃料を噴射する多噴口型のものであり、詳しくは後述するが、6個以上の噴口が全体として長円状となるように配設されていて、該各噴口からそれぞれ噴出する燃料が一体的に1つの燃料噴霧S(図6参照)を形成するようになっている。
【0031】
さらに、燃焼室6の底部となるピストン5の冠面には、気筒中心線Zに対して吸気側(図3の手前側)に偏心して断面が楕円形状のキャビティ5aが形成されており、前記インジェクタ18の作動により燃料が気筒2の圧縮行程で噴射されると、この燃料噴霧Sがキャビティ5aにより捕集(トラップ)され、該キャビティ5aの壁面に沿って点火プラグ16側に移動して、該点火プラグ16の電極の周りに混合気塊を形成するようになる。つまり、このエンジン1は、成層燃焼状態のときに燃料噴霧Sをピストン5のキャビティ5aの壁面により案内して成層化させるようにしたいわゆるウォールガイド方式の直噴エンジンである。
【0032】
前記ピストン5の冠面の形状は、基本的に燃焼室6の天井部に対応するように吸気側及び排気側にそれぞれ傾斜面を形成し、そのうちの主に吸気側の部分を抉ってキャビティ5aを形成したものである。従って、キャビティ5aの周壁の高さは、図6や図8にも示されるように、ピストン5の中央付近で最も高く、そこから吸気側に向かって徐々に低くなっているが、最も低いピストン5の吸気側の端部(インジェクタ18の先端部に対して気筒中心線Zの方向に対向するピストン5の外周部分)でも、キャビティ5aの周壁は所定以上の高さ及び所定以上の厚みを有している(例えば約5mm)。このことで、前記ピストン5では、トップリング溝5bの位置を冠面寄りに高く設定してトップランド部の高さを必要最小限度ものとしながら、尚かつトップリング溝5bとキャビティ5aとの間には所要の肉厚が確保されている。
【0033】
前記の如く各気筒2毎に配設されたインジェクタ18,18,…は、全ての気筒2,2,…に共通の燃料分配管19に接続されていて、燃料供給系20から供給される高圧の燃料が燃料分配管19により各気筒2に分配されるようになっている。詳しくは、燃料供給系20は、図4に一例を示すような構成とされ、燃料分配管19と燃料タンク21とを連通する燃料通路22の上流側から下流側に向かって、低圧燃料ポンプ23、低圧レギュレータ24、燃料フィルタ25、高圧燃料ポンプ26及び高圧レギュレータ27が順に配設されており、前記低圧燃料ポンプ23により燃料タンク21から吸い上げられた燃料が低圧レギュレータ24により調圧され、燃料フィルタ25により濾過されて、高圧燃料ポンプ26に圧送される。
【0034】
そして、前記高圧燃料ポンプ26によってさらに昇圧された燃料の一部が高圧レギュレータ27により流量調整されて燃料分配管19へ供給され、残りの燃料が低圧レギュレータ28によって圧力調整されつつ、リターン通路29によって燃料タンク21に戻される。このことで、燃料分配管19へ供給される燃料の圧力状態が適正なものに調整される。尚、前記のような供給燃圧の調整は燃料分配管19に配設された燃圧センサ30の出力に基づいて行われるものである。また、燃料供給系20としては例えばリターンレスシステムを用いることもできる。
【0035】
前記図2においてエンジン1の右側に位置するシリンダヘッド4の一側面には、各気筒2の吸気ポート10,10にそれぞれ連通する吸気通路32が接続されている。この吸気通路32は、エンジン1の各気筒2の燃焼室6に対して図外のエアクリーナにより濾過した空気を供給するためのものであり、図示の如くその上流側から下流側に向かって、バタフライバルブからなる電気式スロットル弁33とサージタンク34とが順に配設されている。その電気式スロットル弁33は、図外のアクセルペダルに対し機械的には連結されておらず、図示しない電動モータにより駆動されて、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に対応する適切な開度となるように開閉される。
【0036】
また、前記サージタンク34よりも下流側の吸気通路32は、各気筒2毎に分岐する独立通路とされていて、これら各独立通路の下流端部がさらに2つに分岐して個別に吸気ポート8,8に連通しており、その分岐路のうちの一方にスワール制御弁35が設けられている。このスワール制御弁35は、図3に一例を示すようにバタフライバルブからなり、図示しないアクチュエータにより開閉されるようになっている。そして、スワール制御弁35が閉じられれば、吸気の殆どがスワール制御弁35の無い他方の分岐路のみから気筒2内6に吸い込まれるようになり、これにより該気筒2内に強いスワール流が生成される。
【0037】
前記図2においてエンジン1の左側に位置するシリンダヘッド4の他側面には、各気筒2の燃焼室6から燃焼ガス(排気)を排出する排気通路36が接続されている。この排気通路36の上流端は、各気筒2毎に分岐して排気ポート11に連通する排気マニホルド37により構成され、該排気マニホルド37の集合部には排気中の酸素濃度を検出するリニアO2センサ38が配設されている。このリニアO2センサ38は排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出するために用いられるものであり、理論空燃比を含む所定の空燃比範囲において酸素濃度に対しリニアな出力が得られる。
【0038】
また、前記排気マニホルド37の集合部よりも下流側の排気通路36は排気管39により構成されていて、この排気管39の上流側から下流側に向かって順に、略理論空燃比近傍の排気中のHC、CO、NOxを浄化する三元触媒40と、この三元触媒40の劣化状態を判定するためのラムダO2センサ41と、理論空燃比よりもリーンな排気中のNOxを浄化可能ないわゆるリーンNOx触媒42とが配設されている。
【0039】
さらに、前記排気マニホルド37の下流側には、そこから分岐するようにして排気通路36を流れる排気の一部を吸気系に還流させる排気還流通路43(以下、EGR通路という)の上流端が接続されている。このEGR通路43の下流端は前記スロットル弁33とサージタンク34との間の吸気通路32に接続され、その近傍には開度調整可能な電気式の流量制御弁からなるEGR弁44が配設されていて、このEGR弁44によりEGR通路43を流れる排気の還流量が調整されるようになっている。
【0040】
そして、前記VVT15、点火回路17、インジェクタ18、燃料供給系20、電気式スロットル弁33、スワール制御弁35、EGR弁44等は、いずれもエンジンコントロールユニット50(以下、ECUという)によって作動制御される。一方、このECU50には、少なくとも、前記クランク角センサ9、燃圧センサ30、O2センサ38,41等からの各出力信号が入力されるとともに、エアクリーナケースの付近に配設されて吸気通路32へ吸入される空気の流量を計測するエアフローセンサ46からの出力信号と、シリンダブロック3のウオータジャケットに臨んで冷却水温度(エンジン水温)を検出する水温センサ47からの出力信号とが入力され、さらに、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ48からの出力信号と、エンジン回転速度(クランク軸8の回転速度)を検出する回転速度センサ49からの出力信号とが入力される。
【0041】
より具体的に、この実施形態の火花点火式直噴エンジン1は、エアフローセンサ46、アクセル開度センサ48、及び回転速度センサ49からそれぞれ入力される信号に基づいて、エンジン1の運転状態、即ちエンジン1の負荷状態とエンジン回転速度とが検出され、この検出結果に応じて主に点火回路17、インジェクタ18、スロットル弁33等がECU50により制御されて、成層燃焼状態又は均一燃焼状態のいずれかの燃焼状態で運転される。すなわち、図5に制御マップの一例を示すように、温間の低速低負荷側には成層燃焼領域(イ)が設定されていて、ここではインジェクタ18により気筒2の圧縮行程で燃料を噴射し、点火プラグ16の電極周りに混合気を層状に偏在させた状態で燃焼させるようになる(成層燃焼状態)。
【0042】
また、前記成層燃焼領域(イ)ではエンジン1のポンプ損失を低減するためにスロットル弁33の開度を相対的に大きくするようにしており、このときの燃焼室6の平均的な空燃比は理論空燃比(A/F≒14.7)よりも大幅にリーンな状態になる。さらに、成層燃焼領域(イ)ではスワール制御弁35を閉じるようにしており、このことで、相対的に吸気量の少ない運転状態であっても燃焼室6には強いスワール流が生成される。
【0043】
一方、前記成層燃料領域(イ)以外は均一燃焼領域であり、インジェクタ18により主に気筒2の吸気行程で燃料を噴射させて、燃焼室6に均一な混合気を形成した上で燃焼させる。この均一燃焼領域の大部分はλ=1領域(ロ)であって、そこでは気筒2の混合気の空燃比が略理論空燃比になるように燃料噴射量やスロットル開度等が制御される。また、低速全負荷ないし高速高負荷のエンリッチ領域(ハ)では、空燃比をいわゆるパワー空燃比(A/F≒13)かそれよりもリッチな状態にして、エンジン1の信頼性を確保しながら、高負荷に対応した大出力を得られるようにしている。
【0044】
さらに、前記図5の制御マップにおいて斜線を入れて示す領域では、EGR弁44を開弁させて、EGR通路43により排気の一部を吸気通路32に還流させるようにしている。このように排気の一部を還流させて新気とともに各気筒2に供給することで、ポンピングロスを減少させて燃費性能を改善できるとともに、混合気の燃焼に伴うNOxの生成を抑制することができる。具体的には、例えばエンジン1の運転状態に対応する適切な排気の還流割合(EGR率)を予め実験的に求めて、このEGR率になるようなEGR弁44の開度の目標値をエンジン1の運転状態に対応するマップとしてECU50のメモリに格納しておき、このマップから読み出した値を目標値としてEGR弁44の開度を制御する。ここで、前記EGR率の目標値は、燃焼安定性を維持できる範囲でできるだけ多くの排気を還流するように設定するのが好ましい。
【0045】
(インジェクタの噴口の配置構成)
この実施形態の直噴エンジン1では、各気筒2毎のインジェクタ18として図1に示すような多噴口型のものを用いており、本願発明の特徴部分として、インジェクタ18の先端部には7個の噴口52,52,…が形成されている。すなわち、同図(a)に示すように、前記インジェクタ18は、ハウジング53の先端側に弁ボディ54が装着され、この弁ボディ54内の収容室55にニードル弁56が摺動自在に収容されていて、前記ハウジング55の内部に配設された図示しない電磁ソレノイドの作動によってニードル弁56がインジェクタ18の長手方向(軸線Jの方向)に進退作動することで、弁ボディ54の先端の噴口52,52,…からそれぞれ燃料を噴射するようになっている。この弁ボディ54の先端部は、同図(b)に拡大して示すように略平坦な円板状の壁部54aとされていて、その壁部54aを厚み方向、即ちインジェクタ18の軸線Jの方向に貫通するように7個の噴口52,52,…が形成されている。
【0046】
また、前記弁ボディ54の先端壁部54aには、収容室55に臨む面の外周側において環状の傾斜面からなるシート面54bが形成されており、一方、ニードル弁56の先端部外周にも前記シート面54bに対応するように先細りの環状シート面56aが形成されている。そして、ニードル弁56が前進してその先端のシート面56aと弁ボディ54のシート面54bとが液密に当接することで、燃料の通路が閉ざされる一方、ニードル弁56が後退して前記両シート面54b,56a同士が離れると、それらの間の隙間を流通して燃料が噴口52,52,…から噴出するようになる。
【0047】
ここで、前記7個の噴口52,52,…は、それぞれ、収容室55から燃料の噴出する向きに沿って徐々にインジェクタ18の外周側に向かうように傾斜しており、同図(c)に示すようにインジェクタ18の軸線Jに沿って見ると、該各噴口52,52,…は、それらを周方向に結ぶ線分が全体として長円形状となるように、周方向に略等間隔を空けて配置されている。つまり、前記7個の噴口52,52,…は、インジェクタ18の先端壁部54aにおいて長円状に配設されている。そして、インジェクタ18がエンジン1の各気筒2に装着されたときに、前記噴口52,52,…を結ぶ長円V(図に仮想線で示す)の長手方向がエンジン1の気筒列方向となる。
【0048】
そのような7つの噴口52,52,…の配置構成により、前記インジェクタ18の作動時には7つ噴口52,52,…からそれぞれ燃料が所定の拡がり角でもって噴出し、この個々の燃料噴霧が一体となって、図6に示すように、エンジン1の気筒2内燃焼室6において気筒列方向に広く且つ気筒中心線Z方向に狭い扁平状の燃料噴霧Sを形成する。すなわち、同図(a)に示すようにエンジン1の気筒列方向から見たときには、燃料噴霧Sの拡がり角α(気筒中心線方向の拡がり角)は相対的に小さくなり、一方、同図(b)に示すように気筒中心線Zの方向から見ると、燃料噴霧Sの拡がり角β(気筒列方向の拡がり角)は相対的に大きくなる。また、それぞれ小さな噴口52、52,…から噴出する燃料は十分に微粒化しており、これが略等間隔の噴口52,52,…から噴出して一体となるので、燃料噴霧S内での燃料分布の偏りは比較的小さなものとなる。
【0049】
前記のような扁平状の燃料噴霧Sの構造は図7に模式的に示すようになり、該燃料噴霧Sをその軸線Fに沿って噴口52,52,…から所定距離だけ離れた部位の断面で見ると、同図(b)に示すように、燃料噴霧Sの断面形状は、インジェクタ18の先端部における噴口52,52,…の配置に対応する長円形状になっている。また、該各噴口52,52,…からそれぞれ噴出した個々の燃料噴霧が互いに重なり合って全体として1つの燃料噴霧Sを形成するため、この燃料噴霧Sは中実の扁平な円錐状となり、その中心部でも燃料の密度は十分に高くなっている。そして、そのような燃料噴霧Sの構造は、雰囲気圧力の変化によって大きく変化することがなく、燃料噴射時期の変更に伴い気筒内圧が大きく変化しても、燃料噴霧Sの構造や拡がり角は大略、同じになる。
【0050】
このため、例えばエンジン1のアイドル運転時のように燃料噴射量が少ないときでも、燃料噴霧Sの中心付近における燃料の密度は十分に高くなり、この結果、点火プラグ16周りに形成される混合気も所要の濃度状態のものとなる。また、例えばエンジン1の中負荷域で前記アイドル運転時に比べて燃料噴射量が多くなっても、個々の噴口52,52,…から噴出する燃料が多くなると同時に、その燃料の貫徹力が高くなってその分、遠くまで到達するようになるから、従来までの旋回流型インジェクタのような燃料の過集中が起きることはない。
【0051】
さらに、燃料噴霧Sの形状が気筒列方向に広い扁平状なので、このことによっても燃料噴霧S内での燃料の過集中が抑制されるとともに、特に気筒内圧の低いときには燃料を気筒の半径方向について広範囲に分散させて空気と良好に混合しかつ十分に気化霧化させることができる。しかも、気筒中心線Z方向に狭く且つ気筒列方向に広い燃料噴霧Sであるから、自ずと気筒2内周面やピストン5冠面への燃料の付着は少なくなる。
【0052】
前記扁平状の燃料噴霧Sの好ましい形状は、詳しくは後述するが、燃料噴霧Sの気筒中心線Z方向のへ拡がり角αがα=略25°〜略35°であって、且つ該燃料噴霧Sの気筒列方向への拡がり角βがβ=略35°〜略45°であり、しかも、β>α+略10°という条件を満たすものである。そして、このような条件を満たすために、この実施形態のインジェクタ18では、図1(c)に示すように、7個の噴口52,52,…を結ぶ長円Vの幅方向(図の上下方向)の寸法L1を0.4〜0.7mmとし、且つ長手方向(図の左右方向)の寸法L2を0.9〜1.0mmとしている。
【0053】
したがって、この実施形態に係る火花点火式直噴エンジン1によれば、該エンジン1が成層燃焼領域(イ)にあるときに、前記図6に示すように気筒2の圧縮行程でインジェクタ18により燃料が噴射され、この燃料噴霧Sがキャビティ5aにトラップされて点火プラグ16側に移動して、該点火プラグ16周りに成層化される。その際、エンジン1が低負荷域にあって相対的に燃料噴射量の少ないときでも、上述の如く多噴口型のインジェクタ18から噴射される扁平状の燃料噴霧Sの中心部付近では燃料の密度が十分に高くなるので、点火プラグ16の電極周りには所要の濃度の混合気塊が形成されて、良好な着火安定性が得られる。
【0054】
しかも、エンジン1の気筒列方向に広い燃料噴霧Sが気筒2内のスワール流によってキャビティ5a内を搬送されることで、混合気は相対的に長い時間、点火プラグ16の電極付近に滞在することになり、このことによっても着火安定性が向上する。
【0055】
そして、そのように混合気の着火安定性が向上することによって、自ずと燃費率が低減できるとともに、燃焼安定性を維持したままでEGR率を所定値(例えば略40%)以上に高くして、NOxの生成を十分に抑制することができる。しかも、多量の排気の還流によってポンピングロスが大幅に減少するので、燃費率はさらに低減できる。
【0056】
また、エンジン1が中負荷域にあって前記低負荷域に比べて燃料噴射量が多いときでも、多噴口型のインジェクタ18から噴射される燃料噴霧Sでは、旋回流型のもののように噴霧の中心部付近で燃料が過集中することはないので、相対的に高負荷側までスモークの生成を抑制して良好な成層燃焼を実現できる。すなわち、図5に示すような制御マップにおいて成層燃焼領域(イ)を相対的に高負荷側に拡大することができ、これにより、エンジン1の運転領域全体として見たときに燃費率の低減効果が一層、大きくなる。
【0057】
一方、エンジン1がλ=1領域(ロ)やエンリッチ領域(ハ)にあって、より多くの燃料を供給する場合には、気筒2の吸気行程において燃料が噴射される。この燃料はピストン5の下降による燃焼室6容積の増大に伴い、該燃焼室6全体に拡散して略均一な混合気を形成するようになるが、その際、燃料噴霧Sの形状がエンジン1の気筒列方向に広い扁平状であることから、多量の燃料を気筒2の半径方向に広範囲に亘って分散させて、空気と良好に混合し且つその気化霧化を促進することができる。しかも、相対的に低い雰囲気下であっても気筒列方向に拡がる燃料噴霧の貫徹力はあまり大きくはならないから、燃料の気筒2内周面等への付着を抑制できる。
【0058】
特に、燃料噴射量が最大になるにも拘わらず、その燃料を噴射可能な時間間隔が短い高速高負荷領域においては、図8に示すように、燃料の噴射が気筒2の吸気上死点近傍で開始されることになるが、このときでも、扁平状の燃料噴霧Sのピストン5冠面との干渉は旋回流型インジェクタの円錐状燃料噴霧と比べて格段に少なくなる。つまり、噴射時期の進角設定により燃料の気化霧化を十分に促進して、良好な燃焼により高出力を確保しながら、尚かつ燃料のピストン5冠面への付着を抑制して、このことに起因するスモークの増大を防止することができる。
【0059】
また、そのように扁平状の燃料噴霧Sによってピストン5との干渉を軽減できることから、この実施形態のエンジン1では、ピストン5のキャビティ5aの周壁に燃料噴霧との干渉を避けるための凹陥部を設けていない。すなわち、キャビティ5aの周壁はインジェクタ18の先端部に対応する吸気側の端部においても所定以上の高さ及び厚みを有するものとなり、このことに対応してピストン5のトップリング溝5bの位置がピストン5冠面寄りに高く設定されている。つまり、この実施形態のエンジン1では、従来までの旋回流型のインジェクタを備えたものと比べてピストン5のトップリング5bの位置を冠面寄りに高く設定することができ、その分、ピストン5外周の消炎層の体積が小さくなることで、エンジン1からの未燃炭化水素の排出量を低減できる。
【0060】
尚、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の構成を包含するものである。すなわち、インジェクタ18の先端部に形成する噴口52,52,…の個数は必ずしも7個である必要はなく、6個以上且つ10個以下のいずれかの個数とすればよい。
【0061】
また、噴口52,52,…の配置は必ずしも等間隔とする必要はなく、例えば、噴口52,52,…同士を結ぶ長円Vの中心に対して燃焼室6の天井部側に位置する噴口52,52,…の個数を、燃焼室6の底部、即ちピストン5の冠面側よりも多くしてもよい。こうすれば、そのインジェクタからの燃料噴霧Sにおいて燃料の密度が燃焼室6の天井部側で相対的に高くなると考えられ、このことで、エンジン1の低負荷域では着火安定性がさらに向上するとともに、高速高負荷領域ではピストン5冠面への燃料の付着量をさらに減少させることができる。
【0062】
さらに、前記噴口52,52,…は、必ずしも前記実施形態のように長円状に配置する必要はなく、それらが真円状に配置されていても、燃料噴霧Sの拡がり角α、βがそれぞれα=略25〜略35°、β=略35〜略45°であって且つβ−α≧略10°となるようにすればよい。このようにした場合、各噴口52の傾斜は気筒列方向の両側に位置するもので最大となり、一方、気筒中心線Z方向の両側に位置するものでは最小となるから、インジェクタ18の弁ボディ54の先端壁部54aを収容室55内から見たときには、噴口52,52,…を周方向に結ぶ線分は気筒中心線Zの方向に長い長円形状となる。
【0063】
さらにまた、前記実施形態に示すエンジン1の構成は、本願発明の火花点火式直噴エンジンの一例に過ぎず、本願発明に係る多噴口型インジェクタは前記実施形態のエンジン1に限らず、種々の構成の直噴エンジンに適用可能である。
【0064】
(実施例)
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0065】
この実施例は、前記実施形態に記載のものと同様に構成された直列4気筒の火花点火式直噴エンジン(排気量略2000mm3)を使用し、インジェクタとしては前記実施形態の如き多噴口型のものと一般的な旋回流型のものとを用いて、それぞれエンジンの様々な運転状態における燃焼安定性や燃費・出力特性の変化、さらには排気有害成分の濃度等を実験により調べたものである。この実験により、多噴口型インジェクタにおける噴口の配置構成とこれによる燃料噴霧の形状や構造等との関係、及びそれらが混合気の燃焼性や排気の状態に及ぼす影響について以下に述べるような知見が得られた。
【0066】
最初に、一般的な旋回流型インジェクタと、従来例(特開2000−38974号公報)に開示されるような多噴口型のインジェクタとを対比して、各インジェクタによってそれぞれ形成される燃料噴霧の形状を観察するとともに、混合気の燃焼性に関して多噴口型のインジェクタが有する基本的な性質を調べた。尚、この実験に用いた多噴口型インジェクタは、前記実施形態のもののように噴口を長円状に配置したものではなく、略真円形状に配設したものであり、以下、両者をそれぞれ真円タイプ、長円タイプと呼んで、区別する。
【0067】
図9、10は、それぞれ、真円タイプの多噴口型インジェクタと旋回流型のものとを対比して、気筒の圧縮行程に対応する高圧下(例えば400kPa)と大気圧下とで燃料噴霧の形状を撮影したものである。この撮影の方法としては、例えば、光通過窓と計測用窓とを備えた圧力容器内でインジェクタにより燃料性状相当の試料(燃料そのものでも良い)を噴射させるとともに、燃料噴霧に対してその中心線を通るようにストロボ光を照射して、このストロボ光面に対し略直交する方向から高速度カメラにて撮影したものである。
【0068】
前記図9は、旋回流型インジェクタからの燃料噴霧であり、同図(a)は圧力容器内を大気圧として撮影した画像のうち、インジェクタの作動開始(駆動パルス信号の入力時点)から2.2ミリ秒後のものである。また、同図(b)は圧力容器内を高圧にして撮影した画像であってインジェクタの作動開始から2.7ミリ秒後のものである。一方、図10は、多噴口型のインジェクタからの燃料噴霧を示し、同図(a)は大気圧下でインジェクタ作動開始から2.2ミリ秒後の撮影画像である。また、同図(b)は、高圧下でインジェクタ作動開始から2.7ミリ秒後の撮影画像であり、同図(c)は、図(b)に示す燃料噴霧の所定位置での横断面の撮影画像である。
【0069】
前記図9、10を対比すると、旋回流型のインジェクタでは、円錐状の燃料噴霧の拡がり角が雰囲気圧の変化によって30°〜60°くらいの範囲で大きく変化しており、一方、多噴口型のものでは雰囲気圧が変わっても噴霧の拡がり角が略40°くらいで殆ど変化しないことが分かる。尚、この実験では、燃料噴霧の形状を前記した撮影画像において測定するようにしており、例えば噴霧の拡がり角θは、前記図9(a)、10(a)にそれぞれ例示するように、インジェクタの先端部Tから所定距離離れた位置において噴霧中心線の通る仮想平面と燃料噴霧の輪郭とが交差する2つの点B,Cを決定し、∠BTCを噴霧の拡がり角としている(θ=∠BTC)。
【0070】
そして、図11は、前記真円タイプの多噴口型インジェクタと旋回流型のものとを対比して、エンジンの低速低負荷領域(エンジン回転速度=1500rpm、正味平均有効圧BMEP=1bar)においてEGR率の変化に対する燃料消費率、燃焼安定性及びスモーク濃度の変化をそれぞれ調べた結果を示す。同図によれば、真円タイプの多噴口型インジェクタでは、図に黒丸のグラフで示すように、旋回流型のもの(白丸のグラフ)に比べてスモーク濃度が大幅に低くなる一方、燃料の消費が相対的に多くなり、燃焼安定性が低下していて、EGR率が20%以上になると失火に至ることが分かる。これは、真円タイプの多噴口型インジェクタでは燃料噴霧が中空状となってその中心付近の燃料の密度が低くなることから、燃料噴射量の少ないときには点火プラグ周りに適切な濃度の混合気塊が形成され難いことに因ると考えられる。
【0071】
尚、前記燃焼安定性の評価値としては、気筒の平均有効圧の変動状態を表す関数として図示平均有効圧の平均値に対する最小値の割合を用いており、この評価値の値が100%ということは平均有効圧、即ち燃焼による圧力の変動が全くないということであり、また、評価値の値が負になっているのは失火が起きたことを示している。さらに、EGR率としては吸気中の二酸化炭素(CO2)の濃度を基準として、以下の式にて定義されるものを用いている。
【0072】
【数1】
Figure 0003835289
【0073】
また、図12は、エンジンの低速中負荷領域(エンジン回転速度=2000rpm、正味平均有効圧BMEP=4bar)において前記と同様にして燃料消費率、燃焼安定性及びスモーク濃度を調べたものである。図示の黒丸のグラフによれば、真円タイプの多噴口型インジェクタを用いれば、低負荷の時と同様にスモーク濃度が極めて低くなるとともに、EGR率に拠らず燃料消費率が少なくなり、しかも、旋回流型のもの(白丸のグラフ)と同等の燃焼安定性を得られることが分かる。このことは、燃料噴射量がある程度以上に多いときには、真円タイプの多噴口型インジェクタでも燃料噴霧の中心付近における燃料の密度が十分に高くなり、必要な燃焼安定性が得られるとともに、このときでも旋回流型のもののような燃料の過集中が起きないことを示している。
【0074】
以上から、多噴口型のインジェクタでは、旋回流型のもののように雰囲気圧によって噴霧の拡がり角が変化することがないため、雰囲気圧の高い気筒の圧縮行程においてある程度以上の燃料を噴射しても、燃料の過集中を抑制して良好な成層燃焼を実現できるが、反面、燃料噴射量の少ない低負荷域では混合気の濃度が低下してしまい、着火安定性が損なわれることが分かった。
【0075】
次に、前記の実験に用いた多噴口型インジェクタをベースとして、その噴口の大きさや配置を変更して前記と同様の実験を行った。すなわち、前記のベースとなるインジェクタの各噴口径をそれぞれ拡大したもの(以下、大口径のものという)と、ベースとなるインジェクタの6個の噴口を結ぶ円の中心にもう一つ噴口を追加したもの(以下、中心口の有るものという)と、噴霧を結ぶ円の直径を小さくして燃料噴霧の拡がり角θを小さく(θ=40°)したもの(以下、狭角化したものという)との3つのインジェクタを試作して、実験した。尚、前記中心口の有るものでは個々の噴口の大きさがベースのものよりもやや小さくなっている。
【0076】
図13(a)〜(c)は、前記中心口の有るインジェクタからの燃料噴霧を撮影した図10(a)〜(c)と同様の画像である。この撮影画像から、前記のベースとなるインジェクタに中心の噴口を追加したことで、その分、燃料噴霧の中心付近の燃料密度が高くなることが分かる。また、図14(a)〜(c)は、同様に前記狭角化したインジェクタからの燃料噴霧の撮影画像であり、この撮影画像からは、噴口を結ぶ円の直径を小さくしたことで該各噴口からの個々の燃料噴霧がそれぞれ内側に寄って、全体的な燃料噴霧の拡がり角θが狭くなるとともに、燃料噴霧の中心付近の燃料密度が高くなることが分かる。尚、大口径のインジェクタについては図示しないが、このものでは燃料噴霧の形状はベースのもの(図10参照)と殆ど同じになった。
【0077】
そのような4種類の多噴口型インジェクタを用いて前記と同様に燃焼性や排気状態についての実験を行った結果を以下の表1にまとめて示す。この表によれば、真円タイプの多噴口型インジェクタはいずれも同様の性質を有し、成層燃焼時にスモーク濃度が極めて低くなる一方で、特に軽負荷域での燃焼安定性に問題のあることが分かる。すなわち、大口径のものではベースのものと比べても燃焼安定性に改善は見られず、中心口の有るものでも、ベースのものよりは燃焼安定性が高くなるものの、旋回流型のものと比較すると不十分であるという結果になった。尚、噴霧を狭角化したインジェクタの場合は、旋回流型のものに比べれば燃焼安定性が低いものの、ベースの多噴口型インジェクタに比べれば大きな改善が見られた。
【0078】
【表1】
Figure 0003835289
【0079】
さらに、今回の実験では、前記4種類のインジェクタのいずれを使用しても、多量の燃料を噴射するエンジンの高速高負荷領域においてスモーク濃度が極めて高くなるという問題が見出された。すなわち、前記の表1において出力やトルクの改善率がマイナスになっているのは、それらが旋回流型インジェクタに比べて低下しているということであり、同様に、スモーク改善率がマイナスになっているのはスモーク濃度が増大しているということである。この現象は特に大口径のインジェクタと噴霧を狭角化したインジェクタとで著しく、このことから、気筒内圧の低い吸気行程で燃料を噴射する場合、真円タイプの多噴口型インジェクタでは燃料噴霧の貫徹力が強くなり過ぎると考えられる。
【0080】
次に、本発明に係る長円タイプの多噴口型インジェクタの評価結果を示す。まず、長円タイプの多噴口型インジェクタとして、その先端部に7個の噴口を長円状に配設したものを3種類、試作した。すなわち、7個の噴口を結ぶ長円の縦横比を変えて、扁平状となる燃料噴霧の拡がり角を気筒中心線方向についてα=35°とし、且つ気筒列方向についてβ=50°としたもの(以下、35−50形のものという)と、同様にα=25°、β=45°としたもの(以下、25−45形のものという)と、同様にα=30°、β=40°としたもの(以下、30−40形のものという)との3つを試作して、前記と同様の実験を行った。
【0081】
図15は、前記25−45形のインジェクタからの燃料噴霧を大気圧下で撮影した画像であり、同図(a)は気筒列方向から見たものであって、気筒中心線方向の噴霧の拡がり角αが図13(a)等に示す真円タイプのインジェクタに比べて狭くなっていることが分かる。一方、図15(b)の撮影画像は気筒中心線の方向から見たものであり、気筒列方向の噴霧の拡がり角βが前記真円タイプのものに比べて広くなっていることが分かる。
【0082】
そして、前記3種類の長円タイプの多噴口型インジェクタを用いて行った実験結果をまとめて、基準となる真円タイプの多噴口型インジェクタ(ベース)と対比して示すと、以下の表2のようになった。
【0083】
【表2】
Figure 0003835289
【0084】
この表からは、まず、長円タイプのものでも、真円タイプのものと同様に成層燃焼時のスモーク濃度が極めて低くなるという多噴口型インジェクタの基本的なメリットが明らかである。また、成層燃焼時の軽負荷域での燃焼安定性については、30−50形のものには真円タイプのものと同様の問題があるが、25−45形や30−40形のものでは、真円タイプのものに比べて燃焼安定性が大きく向上し、旋回流型のインジェクタと同等レベルになっている。これは、気筒列方向への噴霧拡がり角αを小さくしたことによって、インジェクタの各噴口からそれぞれ噴出する燃料が適度に重なり合うようになり、前記図7に模式的に示したように、燃料噴霧の中心付近でも燃料の密度が十分に高くなることによると考えられる。
【0085】
さらに、前記長円タイプの多噴口型インジェクタでは、3種類のいずれについても、エンジンの高速高負荷領域においてトルクや出力を犠牲にすることなく、真円タイプのものに比べてスモーク濃度を大幅に減少できることが分かる。すなわち、ベースとなる真円タイプの多噴口型インジェクタでは旋回流型インジェクタに比べて出力が低下しながら、スモーク濃度も極めて多くなっているのに対し、長円タイプのものでは出力が向上しているにも拘わらず、スモーク濃度は旋回流型インジェクタに比べて大幅に減少するか或いは同等となっている。これは、燃料噴霧が気筒列方向に拡がっていることで、その分、噴霧の貫徹力が小さくなるとともに、気筒中心線方向に狭い燃料噴霧ではピストン冠面との干渉が大幅に軽減されるので、燃料噴射時期を気筒の吸気上死点近傍まで進角できることによると考えられれる。
【0086】
以上の実験結果により、本願発明に係る長円タイプの多噴口型インジェクタを用いて、燃料噴霧をエンジンの気筒中心線方向に狭く且つ気筒列方向に広い扁平状とすることで、燃料噴射量の少ない低負荷域において層状混合気の良好な着火性を確保できるとともに、燃料噴射量が多くなっても燃料噴霧内での燃料の過集中を防止して、スモークの殆ど生じない良好な成層燃焼を実現できることが分かった。
【0087】
また、本願発明に係る長円タイプの多噴口型インジェクタでは、燃料噴射量が最大となるエンジンの高速高負荷域において十分に高いトルク及び出力を確保しながら、燃料噴霧とピストン冠面との干渉を抑えてスモークの増大を防止できることが分かった。
【0088】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1の発明に係る火花点火式直噴エンジンによると、気筒内の燃焼室にその周縁部の燃料噴射弁から燃料を直接噴射して、この燃料噴霧をピストン冠面のキャビティにより点火プラグ周りに成層化させるようにしたものにおいて、前記燃料噴射弁の先端部に6個以上の噴口を長円状に配設するとともに、その噴口同士を結ぶ長円の長手方向を気筒列方向に設定して、該各噴口からそれぞれ噴出する燃料により一体的に形成される燃料噴霧の形状が気筒中心線方向に狭い扁平状となるようにしたので、成層燃焼状態では燃料噴射量の相対的に少ない低負荷域においても混合気の着火安定性を確保できるとともに、燃料噴射量が増大しても燃料の過集中に因るスモークの増大を防止することができ、さらに、均一燃焼状態となる高速高負荷領域において十分な出力を確保しながら、ピストン冠面への燃料付着に起因するスモークの増大を防止できる。
【0089】
請求項2の発明によると、燃料噴霧の気筒中心線方向の拡がり角及び気筒列方向の拡がり角をそれぞれ最適化することで、請求項1の発明の効果を十分に得ることができる。
【0090】
請求項3の発明によると、噴口を10個以下として、個々の噴口の大きさをある程度以上、大きくできるようにしたので、目詰まり等の不具合を未然に防止できる。
【0091】
請求項4の発明によると、噴口を周方向に略等間隔に配置することで、燃料噴霧内での燃料分布を均一化して、混合気の燃焼性をさらに向上できる。
【0092】
請求項5の発明によると、燃焼室天井部側に位置する噴口の個数を燃焼室底部側よりも多くすることで、燃料噴霧内での燃料分布を燃焼室天井部側で相対的に高くして、低負荷域での着火安定性をさらに向上しながら、高速高負荷領域での燃料付着量をさらに軽減できる。
【0093】
請求項6の発明によると、燃料噴射弁の先端部に対応するピストンの外周部分に所定以上の高さ及び厚みを有するキャビティ周壁を形成したので、ピストンのトップリング溝の位置を冠面寄りに高く設定して外周の消炎層の体積を減少させることができ、これにより未燃炭化水素の排出量を低減できる。
【0094】
また、請求項7の発明に係る火花点火式直噴エンジンによると、前記請求項1の発明と同じ前提構成において、前記請求項2の発明と同様に燃料噴霧を気筒列方向に広く且つ気筒中心線方向に狭い最適な扁平形状とすることができるから、該請求項2の発明と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る火花点火式直噴エンジンのインジェクタについて、(a)は概略構成を示す図であり、(b)(c)は噴口の配置構成を示す拡大図である。
【図2】火花点火式直噴エンジンの全体構成図である。
【図3】エンジンの気筒内燃焼室の概略構造を示す斜視図である。
【図4】燃料供給系の構成を模式的に示す説明図である。
【図5】エンジンの成層燃焼領域及び均一燃焼領域を設定した制御マップの一例を示す図である。
【図6】気筒内に圧縮行程で噴射された燃料噴霧の形状を(a)気筒列方向及び(b)気筒中心線方向からそれぞれ見て示す説明図である。
【図7】燃料噴霧の構造を模式的に示す説明図である。
【図8】気筒内に吸気上死点近傍で噴射される燃料噴霧とピストンの冠面との干渉状態を気筒列方向から見て示す説明図である。
【図9】旋回流型インジェクタからの燃料噴霧を(a)大気圧下及び(b)高圧下でそれぞれ撮影した画像である。
【図10】真円タイプの多噴口型インジェクタからの燃料噴霧を(a)大気圧下及び(b)(c)高圧下でそれぞれ撮影した画像である。
【図11】エンジンの低速低負荷領域において、EGR率の変化に対する燃料消費率、燃焼安定性及びスモーク濃度の変化をそれぞれ示したグラフ図である。
【図12】エンジンの低速中負荷領域における図11相当図である。
【図13】中心口の有る多噴口インジェクタからの燃料噴霧の図10相当図である。
【図14】狭角化した多噴口型インジェクタからの燃料噴霧の図10相当図である。
【図15】長円タイプの多噴口型インジェクタからの燃料噴霧を大気圧下で撮影した画像である。
【符号の説明】
F 燃料噴霧の中心線
S 燃料噴霧
V インジェクタの噴口を結ぶ長円
Z 気筒中心線
1 エンジン
2 気筒
5 ピストン
5a キャビティ
6 燃焼室
16 点火プラグ
18 インジェクタ(燃料噴射弁)
52,52,… インジェクタの噴口

Claims (7)

  1. 複数の気筒と、該各気筒内の燃焼室にその周縁部から燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、当該燃焼室の天井部の略中央に配置された点火プラグとを備えるとともに、燃焼室の底部となるピストンの冠面にキャビティを設けて、所定の運転状態で前記燃料噴射弁により噴射した燃料噴霧を前記キャビティの壁面により点火プラグ側に案内して成層化させるようにした火花点火式直噴エンジンにおいて、
    前記燃料噴射弁の先端部には、燃焼室内に燃料を噴射する6個以上の噴口が長円状に配設され、且つその長円の長手方向が気筒列方向に設定されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  2. 請求項1において、
    燃料噴射弁の噴口は、それぞれ噴出する燃料により一体的に形成される1つの燃料噴霧の気筒中心線方向の拡がり角が略25°以上であって略35°以下になり、且つ該燃料噴霧の気筒列方向の拡がり角が略35°以上であって略45°以下になるとともに、その気筒列方向の拡がり角が気筒中心線方向の拡がり角よりも略10°以上大きくなるように配置されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  3. 請求項1において、
    燃料噴射弁の噴口が10個以下であることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  4. 請求項1において、
    燃料噴射弁の先端部において噴口が周方向に互いに略等間隔を空けて配置されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  5. 請求項1において、
    燃料噴射弁の先端部を燃料噴霧の中心線の方向から見て、噴口同士を結ぶ長円の中心に対して燃焼室天井部側に位置する噴口の個数が燃焼室底部側よりも多いことを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  6. 請求項1において、
    燃料噴射弁の先端部に対し気筒中心線方向に対向するピストンの外周部分には、キャビティの底壁面よりも所定以上高く且つピストン外周端から半径方向に所定以上の厚みを有するトップランド部が形成されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
  7. 複数の気筒と、該各気筒内の燃焼室にその周縁部から燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、当該燃焼室の天井部の略中央に配置された点火プラグとを備えるとともに、燃焼室の底部となるピストンの冠面にキャビティを設けて、所定の運転状態で前記燃料噴射弁により噴射した燃料噴霧を前記キャビティの壁面により点火プラグ側に案内して成層化させるようにした火花点火式直噴エンジンにおいて、
    前記燃料噴射弁の先端部には燃焼室内に燃料を噴射する6個以上の噴口が環状に配設されていて、該各噴口は、それぞれ噴出する燃料により一体的に形成される1つの燃料噴霧の気筒中心線方向の拡がり角が略25°以上であって略35°以下になり、且つ該燃料噴霧の気筒列方向の拡がり角が略35°以上であって略45°以下になるとともに、その気筒列方向の拡がり角が気筒中心線方向の拡がり角よりも略10°以上大きくなるように形成されていることを特徴とする火花点火式直噴エンジン。
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