JP4693796B2 - エアビーム構造物 - Google Patents
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Description
エアビーム構造物は、気密でありその内部に気体(多くの場合は空気である。)を充填することで強度を出すことのできる袋をビームとして用いた、多くの場合複数の袋を有する膜構造物である。なお、本願では、「ビーム」の語は、水平方向に伸びるもののみを意味するわけではなく、構造物の強度を出すためのものという程度の意味で用いられている。例えば、本願では、「ビーム」の語は、通常「ビーム」の語が意味する梁、桁のみならず、縦方向等の他の方向に伸びる柱も含む。
エアビーム構造物は、膜材を用いるため、美しい曲線を実現できるのに加えて、通常の構造物に比べて構築や撤去が簡易に行えるという特徴があり、例えば、学校の体育祭の際に用いられるアーチや、万博のパビリオンなどに応用されている。
従来から存在するこのようなエアビーム構造物は、上述のアーチ状の袋同士を接続するために、平行に並べられるアーチ状の袋同士を接続するためのアーチ状の袋に直交する他の袋を備えるのが一般的である。このような他の袋を必要とするエアビーム構造物は、空気を入れる袋の数及び体積が多くなり、袋に多くの空気を供給しなければならないため、設置に時間がかかるという難点がある。
このような他の袋の代わりに、隣り合うアーチ状の袋同士を接続するロッドを用いる技術も、例えば特開平11−148255号の公開特許公報に示されたように存在している。しかしながら、このロッドは、アーチ状の袋に空気を入れ、隣り合うアーチ状の袋同士を大まかに位置決めしてから隣り合うアーチ状の袋同士を接続していくという用い方をするものとなっている。空気を入れられたアーチ状の袋は、それ単体では自立できないことが多いため、それを立てた状態で位置決めし、隣り合うアーチ状の袋同士をロッドで接続する作業はかなり面倒である。
本願発明は、少なくともその側面を膜材によって形成され、その内部と連通された気体注入口を備え、且つ空気を入れられた状態でその両端が下端となったアーチ状の柱となる気密な柱部材を複数備えているとともに、空気を入れられた複数の前記柱部材が略平行となるようにされてなるエアビーム構造物の設置方法(以下、単に、「設置方法」という場合がある。)である。
そして、この設置方法では、複数の前記柱部材を、空気を入れた状態の複数の前記柱部材の位置決めを行うものであり、且つ前記柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性を有する棒状の少なくとも1本のロッドで互いに接続し、その後、前記気体注入口から前記柱部材に空気を注入するようにしている。
この設置方法では、一定の剛性を有する少なくとも1本のロッドで柱部材を接続してから、柱部材の内部に空気を入れることとしている。ロッドは、その内部に空気を入れる必要のないものである。したがって、この方法によれば、柱部材同士を接続するために従来技術で述べた他の袋を必要としないので、エアビーム構造物を設置するにあたって必要となる空気の量を多くする必要がないので、設置に要する時間が従来よりも短くて済む。また、この設置方法で用いるロッドは、柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性を有するものであるので、複数の柱部材が、空気を入れたときに互いに所望の位置に位置決めされた状態で自立することに貢献できる。このような点から見ると、ロッドが備えるべき剛性は、空気を入れられた状態の複数の柱部材同士の位置決めを行える程度以上のものとするのが好ましい。
したがって、この設置方法を用いれば、エアビーム構造物を、より簡単に、且つより短時間で設置できるようになる。
なお、本願におけるロッドが備えるべき剛性は、前記柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性であればよく、それが行えるのであれば、多少剛性が小さくても構わない。むしろ、ロッドが弾性を備えている方が望ましい場合もある。本願発明では、柱部材に空気を入れる前に柱部材にロッドを接続し、その状態で柱部材に空気を入れる。したがって、空気を入れられることにより立ち上がっていく柱部材の姿勢の如何により、ロッドに予期せぬ荷重がかかる場合がある。そのような場合にロッドが変形すると、最終的なエアビーム構造物の形状が歪んでしまうおそれがある。そのような事態が生じないようにするには、一旦変形しても元の形状に戻る程度の弾性をロッドが有するのが好ましいといえる。
ロッドを複数本、例えば、2本以上とすると、複数の柱部材の位置決めを、再現性をもって行うことが容易になる。
ロッドのうちの少なくとも1本は、複数の前記柱部材のすべてと接続されていてもよいし、また、そうでなくともよい。例えば、ロッドは、隣り合う柱部材同士を接続するようなものであってもよい。ロッドのうちの1本が、複数の柱部材のすべてと接続されれば、空気を入れられた複数の柱部材の互いの位置関係を一意に定めやすくなる。ロッドのうちの少なくとも2本を、複数の柱部材のすべてと接続させれば、空気を入れられた複数の柱部材の互いの位置関係を一意に定められるようになる。複数の柱部材のすべてと接続されるロッドがある場合でも、それ以外の他のロッドを更に用いてもよい。
なお、ロッドと柱部材は、直接接続されてもよいし、何らかの部材を介して接続されてもよい。また、ロッドと柱部材の接続は、着脱自在とするのが好ましい。
前記ロッドが複数である場合には、それらは互いに平行となるようになっていてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、前記ロッドのそれぞれは、空気を入れられた前記複数の柱部材に対して直交し、且つ複数本のロッドが互いに略平行となるような状態で、複数の前記柱部材のそれぞれと接続されていてもよい。このようにすることで、柱部材に対して直交する方向におけるエアビーム構造物の強度を十分なものにできる。
そのエアビーム構造物は、少なくともその側面を膜材によって形成され、その内部と連通された気体注入口を備え、且つ空気を入れられた状態でその両端が下端となったアーチ状の柱となる気密な柱部材を複数備えているとともに、空気を入れられた複数の前記柱部材が略平行となるようにされてなる。
そして、このエアビーム構造物は、空気を入れた状態の複数の前記柱部材の位置決めを行うものであり、且つ前記柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性を有する少なくとも1本のロッドと、前記ロッドを、前記柱部材のそれぞれと接続するための取付け手段と、を有する。
このようなエアビーム構造物は、少なくとも1本のロッドと、ロッドを柱部材のそれぞれと接続するための取付け手段とを有しているので、柱部材に空気を入れる前に予め柱部材をロッドと接続することができる。それにより、このエアビーム構造物は、上述の設置方法の場合と同様の理由で、より簡単に、且つより短時間で設置できるようなものになる。
ロッドは、柱部材の内側に接続されてもよいし、外側に接続されてもよい。
また、エアビーム構造物は、複数の前記柱部材を覆う膜材である外膜を有していてもよい。この場合、前記取付け手段は、前記外膜の外側に設けられていてもよい。これは、外膜を介して取付け手段が柱部材に取付けられる例である。なお、外膜の外側に取付け手段を設けることにより、柱部材に空気を入れる前の外膜が潰れている状態でも、外膜の外側にある取付け手段に容易にロッドを接続できるので、エアビーム構造物の設置者が外膜の下に潜り込んで作業を行わなくても済むという利点がある。
取付け手段は、どのような形状、構成とされていてもよい。取付け手段は、前記ロッドを潜らせることのできるループとすることができる。このようなループを取付け手段とすれば、それとロッドの接続が簡単であり、且つ取付け手段とロッドの接続を着脱自在にもすることができ便利である。なお、ループのうち、最も外側に位置する柱部材に取付けられるものは、その外側の開口がロッドが貫通できないようにして塞がれていてもよい。
本願発明におけるロッドは、その長さ方向の複数の部分に分割されており、且つそれら複数の部分は、略直線となるように接続可能となっていてもよい。このようにすることで、1本のロッドを短くできるので、使用しないときにおけるエアビーム構造物の収納を行い易くなる。複数の部分に分割されたロッド同士の接続は、どのようにして行われても構わない。例えば、分割されたロッドの互いに接続される端部の一方に、ロッドの長さ方向に沿うボルトを、他方に、ロッドの長さ方向に沿い、上記ボルトと螺合するナットを設けることにより、分割されたロッドを接続可能にすることができる。複数の部分に分割されたロッド同士の接続に他の部材を用いるようにしてもよい。例えば、ロッドの断面形状に対応した断面形状の孔を持つパイプに、分割されたロッドの互いに接続される端部を挿入することにより、分割されたロッドの接続をなすようにしてもよい。
本願発明のエアビーム構造物は、前記柱部材は3つ以上とされ、前記取付け手段は、前記柱部材のうち両端に位置するものに取付けられるものは、その外側の開口が閉じられた所定幅の膜材にて形成されたループとされ、前記柱部材のうち両端に位置しないものに取付けられるものは、その内部をロッドが貫通できないように仕切られた所定幅の膜材にて形成されたループとされ、且つ、前記ロッドは、隣り合う柱部材同士を接続するものとされているとともに、前記ロッドのうち、前記柱部材のうち両端に位置するものに接続される端部は、当該柱部材に取付けられたループの内側の開口に、前記柱部材のうち両端に位置しないものに接続される端部は、当該柱部材に取付けられたループの開口の一方に、挿入されるようにされてなるものであってもよい。このようにすれば、ループからのロッドの脱落を防ぎ易くなるとともに、1本のロッドを短くできるので、使用しないときにおけるエアビーム構造物の収納を行い易くなる。
エアビーム構造物100は、その全体を覆う本体膜材110と、互いに平行な3本のビーム部120とを備えている。
中膜材113の前端部は前膜材111と前膜材111の弧の全長にわたって接続されており、中膜材113の後端部は後膜材112と後膜材112の弧の全長にわたって接続されている。中膜材113と前膜材111、中膜材113と後膜材112の接続はともに、必ずしも気密である必要はない。中膜材113と前膜材111、中膜材113と後膜材112の接続はどのように行ってもよいが、この実施形態では、溶着によりこれを行っている。
前膜材111には、また、透明な膜材により形成の窓111Cが設けられている。
中膜材113の周囲には、ループ113Dが設けられている。ループ113Dは、図1等に示したような、直線状の棒である補助棒Lを通すためのものである。ループ113Dは、所定幅の膜材の両端を、中膜材113の表面に、例えば融着によって固定することによって形成されている。ループ113Dは、中膜材113の前方、中程、後方に取付けられているものを一組として、中膜材113の弧に沿う方向に所定の間隔で5組取付けられている。この実施形態では、中膜材113の前方、中程、後方に取付けられたループ113Dは、必ずしもそうする必要はないが、3本のビーム部120に対応する位置に設けられている。また、ビーム部120と1本の補助棒Lが通される一組のループ113Dの数が必ずしも一致する必要はない。また、一組とされた3つのループ113Dは、この実施形態では、エアビーム構造物100が設置されたときに、その3つの高さが揃うようにされている。
補助棒Lは、本願発明のロッドに相当するものである。補助棒Lは、この実施形態では、FRP製の棒である。補助棒Lの断面形状はこの実施形態では円形であるが、これに限定されるものではない。補助棒Lの断面形状は、楕円形、矩形、6角形等の適当な形状とでき、また管状とすることもできる。補助棒Lは、一組とされた3つのループ113Dに通すことができるような長さ、及び径とされている。補助棒Lは、多少剛性が小さくても構わず、むしろ多少の弾性を有している方がこのましい。補助棒Lは、それらがループ113Dに通されたときに、ビーム部120に空気を入れられた状態のエアビーム構造物100の剛性に寄与できる程度の剛性を備えているのが好ましい。この実施形態の補助棒Lは、それらがループ113Dに通され、ビーム部120に空気が入れられたときに、ビーム部120の位置決めを行える程度の剛性を備えている。エアビーム構造物100を設置するときに、補助棒Lは、一組とされた3つのループ113Dに通される。その状態で5本の補助棒Lは、互いに平行となる。なお、補助棒Lは1本以上であれば必ずしも5本である必要はない。補助棒Lが5本以外である場合には、ループ113Dの組を、補助棒Lと同じにすればよい。
なお、この実施形態の補助棒Lはいずれも、すべてのビーム部120に接続されるようになっているが、補助棒Lのうちの適当なものは、すべてのビーム部120に接続されないようになっていても構わない。その場合、補助棒Lはその長さを図1等に示したものより短くすることができる。なお、そのような場合でも、補助棒Lは、ビーム部120のうちの少なくとも2つを接続するようなものとされる。
ビーム部120は、この実施形態では、略半円形でその両端が下端となるアーチ状とされており、図6に示したように、その断面形状は矩形、より詳細には正方形とされている。ビーム部120は、この実施形態では、長尺で帯状の3枚の膜材である膜材片120A、120B、120Cを接続してなるビーム膜材122の両端部を本体膜材110に接合して形成されている。3枚の膜材片120A、120B、120Cのうち、膜材片120Bの形状は矩形で、残りの2枚の膜材片120A、120Cの形状は略半円弧状とされている。膜材片120Aと膜材片120Bの隣り合う辺は、ビーム部120の内側に折り曲げた状態で、折り曲げられた部分の全面を溶着、融着などにより接合してある。膜材片120Cと膜材片120Bの隣り合う辺も同様に、ビーム部120の内側に折り曲げた状態で、折り曲げられた部分の全面を溶着、融着などにより接合してある。図6では、膜材片120Aと膜材片120Bの接合部分、膜材片120Cと膜材片120Bの接合部分をともに、Xの符号で示している。また、膜材片120A及び膜材片120Cの膜材片120Bと溶接されていない辺(つまり、ビーム膜材122の両端部)は、互いに近接する方向に折り曲げられており、その折り曲げられた部分の全面を本体膜材110に溶着、融着などにより接続されている。本体膜材110と、ビーム膜材122に囲まれた空間は気密な閉空間となっている。なお、この閉空間を気密なものとすべく、この実施形態におけるビーム部120の長手方向の両端には、閉空間の断面形状と同じ形状の膜材がその周囲を本体膜材110及びビーム膜材122に溶着、融着などにより接合された状態で配されている。
なお、上述したように、閉空間の断面は矩形(より詳細には、本体膜材110と、膜材片120A、120B、120Cのすべてが平面であると仮定し、且つ閉空間に空気が入れられていない場合の断面形状が矩形)であるが、そこに空気を入れられた場合にもその断面形状を矩形のままに保つ必要はない。この実施形態のビーム部120は、図1では、断面正方形として図示されているが、その内部に空気を入れられた場合、断面が略円形となる。ただし、図1〜図5では、図の簡単のため、ビーム部120の断面形状を矩形として示してある。
なお、ビーム部120には、その内部の閉空間に気体(この実施形態では空気である。)を出し入れするためのバルブ121が設けられている。
バルブ121は、ビーム部120の内部の閉空間への気体の出し入れを任意に行え、且つ必要に応じて気密性を保てるようなものであればどのようなものでも用いることができる。そのような公知のバルブを、この実施形態ではバルブ121として用いている。バルブ121は、図示せぬ所定のポンプなどに接続可能とされており、そのポンプなどがビーム部120の内部への空気の充填、排気を行うようにされている。バルブ121の先端は、中膜材113の側面から外部に露出させてある。もっとも、バルブ121は、閉空間に連通していればよいのだから、ビーム膜材122に設けられていても構わない。
また、この実施形態では、ビーム膜材122を作る膜材片120A、120B、120Cの隣り合う辺同士は、閉空間の内側に曲げられた状態で接合されている。これにより、この接合部分も、膜材片120A、120B、120Cを外側に折り曲げた状態で接合したときよりも剥がれにくくなっている。
図7に示したビーム部120は、1枚物のビーム膜材122により形成されている。このビーム部120が備える閉空間は、図7に示したとおり略蒲鉾形である。なお、ビーム部120を図7に示したようなものとした場合には、閉空間の気密性を保つためにビーム部120の長手方向の両端に設けられる上述の実施形態では矩形であった膜材は、閉空間の断面形状と同じく蒲鉾形とされる。なお、この蒲鉾形の膜材は、その周囲を本体膜材110及びビーム膜材122に溶着、融着などにより接合される。
図8、図9に示したビーム部120は基本的に、図6、図7を用いて説明した上述のビーム部120と同様に構成されている。ただし、図8、図9に示したビーム部120はともに、図中130の符号で示された袋を有している。この袋130は、円筒形状であり、且つ気密に形成されている。袋130の形状は必ずしも円筒形状である必要はないが、図6、図7で示した閉空間に配することができるように、柱状の形状である必要はある。例えば、袋130は、その断面がビーム部120の断面形状に対応するものとされていてもよいし、そうでなくてもよい。袋130は、また、その断面が円形とされていても、多角形形状とされていてもよい。この実施形態の袋130は、必ずしもその限りではないが、閉空間で規制されない状態で空気を入れられたときの断面形状が円形であり、且つ袋130に空気が入れられたときの袋130の断面積が、閉空間の断面積よりも大きくなるようにされている。したがって、空気が入れられた袋130は、その外側面が閉空間を囲む膜材に押接されることになる。
なお、このような袋130を用いる場合には、閉空間は必ずしも気密である必要はない。もっとも、この変形例における閉空間は、上述の場合同様に気密であってもよい。
閉空間が気密性を必要としない場合には、膜材片120A、120B、120C同士の接合、ビーム膜材122と本体膜材110の接合の気密性に、それほど注意を払う必要はない。更にいえば、その場合には、膜材片120A、120B、120Cは、メッシュ状、ネット状等の膜材でできていても構わない。
なお、袋130を用いる場合にも、袋130を用いない場合に用いられたのと同様のバルブが必要である。バルブは、上述の場合と同様のものでよく、袋130の中に空気を出し入れすることのできるようなものであればよい。バルブは、袋130の内部に連通するようにして、袋130の適当な場所に設けられる。
エアビーム構造物100を使用するために設置するにあたっては、上述のような、エアビーム構造物100を適当な場所に配置する。このときループ113Dが表側に露出するようにする。
この状態では、エアビーム構造物100は潰れた状態となっている。
次いで、5本の補助棒Lを、3つのループ113Dで一組とされた5組のループ113Dのそれぞれに通す。ループ113Dは露出しているので、エアビーム構造物100の設置を行う者は、本体膜材110或いは中膜材113の下に潜り込む必要はない。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120の中に空気を充填する。これにより、ビーム部120が袋130を有さないときは閉空間に、ビーム部120が袋130を有する場合には袋130の中に空気が充填される。これにより、ビーム部120は一定の固さを持ち、ビームとしての機能を有することになる。3つのビーム部120の位置関係は、本体膜材110並びに補助棒Lによって規制されているので、3つのビーム部120はその内部に空気を入れられるのにともなって容易に立ち上がる。立ちあがったビーム部120は、図1に示されたような半弧形の形状を維持し、ビーム部120に固定された本体膜材110の形状を維持する。なお、ビーム部120の形状は、理想的には、前膜材111及び後膜材112がなくとも、また、補助棒Lがなくとも、中膜材113と、ビーム膜材122のみ(存在する場合には、これらと袋130のみ)で維持され得る。しかしながら、補助棒Lは、前膜材111、後膜材112とともに、ビーム部120が互いの位置関係を維持するに寄与する。
このようにして、エアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。
変形例1によるエアビーム構造物100は、基本的に、上述の実施形態のエアビーム構造物100と同様に構成されるが、図10にその平面図が示されたシートS1とともに用いられるようにされている。シートS1は、エアビーム構造物100の下方に敷かれるものである。
シートS1は、膜材であり、必ずしもこの限りではないが、この変形例1では、本体膜材110と同じ素材により形成されている。
シートS1は、また、複数の固定部S11を備えている。この固定部S11は、エアビーム構造物100をシートS1に着脱自在に固定できるようにするためのものであり、この実施形態では、ベルクロテープによって構成されている。固定部S11のそれぞれは、必ずしもこの限りではないが円形とされている。固定部S11は、シートS1の上にエアビーム構造物100を配したときに、エアビーム構造物100が有するビーム部120の下面が当接する部分に対応する位置に設けられている。
この変形例1におけるエアビーム構造物100の3つのビーム部120の両端の下面には、ベルクロテープによって形成された図示を省略の固定部が設けられている。このビーム部120の固定部は、シートS1の固定部S11に対して着脱自在な固定を行えるものとされている。
このエアビーム構造物100を用いるにあたっては、まず、シートS1をエアビーム構造物100を設置すべき適当な部分に敷く。次いで、シートS1の上にエアビーム構造物100が備える各ビーム部120の両端部を固定していく。かかる固定は、上述のように、ビーム部120に設けられた固定部を、シートS1の固定部S11に対して押圧することにより行う。
次いで、補助棒Lを、3つのループ113Dで一組とされた5組のループ113Dのそれぞれに通す。ループ113Dは露出しているので、エアビーム構造物100の設置を行う者は、本体膜材110或いは中膜材113の下に潜り込む必要はない。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120が袋130を備えない場合には閉空間に、ビーム部120が袋130を備える場合には袋130の中に空気を充填する。
このようにして、エアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。シートS1を最後に折畳むことになるが、その際に、ビーム部120に設けられた固定部とシートS1の固定部S11とをそのまま固定しておいてもよい。
以上の変形例1では、ビーム部120に設けられた固定部とシートS1の固定部S11との固定を着脱自在なものとしたが、これを、着脱自在でない完全な固定にすることもできる。かかる固定は、溶着、融着、接着、縫製など、適当に行えばよい。
変形例2によるエアビーム構造物100は、基本的に、上述の実施形態のエアビーム構造物100と同様に構成される。ただし、変形例2によるエアビーム構造物100は、図11に示したように、上述の実施形態によるエアビーム構造物100が備えていた本体膜材110を備えていない。
変形例2によるエアビーム構造物100は、3つのビーム部120と、3本の補助棒Lから構成されている。ビーム部120と、補助棒Lの数がこの限りではないのは、上述の実施形態の場合と同様である。
補助棒Lは、ループ113Dを通すことによりビーム部120に固定されるようになっている。上述の実施形態のループ113Dは本体膜材110に取付けられていたが、変形例2によるエアビーム構造物100は本体膜材110を有さないので、ループ113Dは、ビーム部120のそれぞれに取付けられている。各ビーム部120の対応する位置に設けられたループ113D3つが一組とされており、それら一組のループ113Dに一本の補助棒Lが通されるようになっている。
変形例2のエアビーム構造物100の設置方法は、上述の実施形態によるエアビーム構造物100の設置方法と略同様である。
変形例2のエアビーム構造物100を使用するために設置するにあたっては、エアビーム構造物100を適当な場所に配置する。このときループ113Dが表側に露出するようにする。
次いで、3本の補助棒Lを、3つのループ113Dで一組とされた3組のループ113Dのそれぞれに通す。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120の中に空気を充填する。
このようにして、変形例2のエアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。
変形例3によるエアビーム構造物100は、基本的に、上述の実施形態のエアビーム構造物100と同様に構成される。変形例3によるエアビーム構造物100は、図12に示したように、3つのビーム部120と、本体膜材110と、補助棒Lとを備えている点で、上述の実施形態によるエアビーム構造物100と共通する。変形例3のエアビーム構造物100が、上述の実施形態によるエアビーム構造物100と異なるのは、そのループ113Dの構造についてである。
変形例3におけるエアビーム構造物100が備えるループ113Dは、変形例2の場合と同様にビーム部120に取付けられている。しかしながら、変形例3におけるループ113Dは、上述の実施形態とも、変形例2とも異なり、ビーム部120の内側に設けられている。
変形例3の補助棒Lも、上述の実施形態の場合と同様に、ループ113Dを通すことによりビーム部120に固定されるようになっている。変形例3では、各ビーム部120の対応する位置に設けられたループ113D3つが一組とされており、それら一組のループ113Dに一本の補助棒Lが通されるようになっている。
変形例3のエアビーム構造物100の設置方法は、上述の実施形態によるエアビーム構造物100の設置方法と略同様である。
変形例3のエアビーム構造物100を使用するために設置するにあたっては、エアビーム構造物100を適当な場所に配置する。このときループ113Dはエアビーム構造物100の裏側(設置面に当接する側)に位置することになる。
次いで、3本の補助棒Lを、3つのループ113Dで一組とされた3組のループ113Dのそれぞれに通す。この作業は、本体膜材110の下に潜り込んで行う必要がある。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120の中に空気を充填する。
このようにして、変形例3のエアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。
なお、この変形例3のエアビーム構造物100は、変形例2の場合と同様に、本体膜材110を備えないものであってもよい。本体膜材110を備えないのであれば、ビーム部120に補助棒Lを接続する際に、作業者は本体膜材110の下側に潜り込む必要がないので、その作業に煩雑さはない。
変形例4によるエアビーム構造物100は、基本的に、上述の実施形態のエアビーム構造物100と同様に構成される。変形例4によるエアビーム構造物100は、3つのビーム部120と、本体膜材110と、補助棒Lとを備えている点で、上述の実施形態によるエアビーム構造物100と共通する。変形例4のエアビーム構造物100が、上述の実施形態によるエアビーム構造物100と異なるのは、そのループ113Dの構造と、補助棒Lの長さについてである。
変形例4におけるエアビーム構造物100の構成を、概略的に図13に示す。図13において、ループ113Dは、断面で示されている。
変形例4におけるエアビーム構造物100が備えるループ113Dは、上述の実施形態の場合と同様に、本体膜材110を介して各ビーム部120に取付けられている。
この変形例4におけるループ113Dは、3個を一組として5組とされている。
各ループ113Dの構造は以下のようなものとされている。両端のビーム部120に取付けられるループ113Dは、所定幅の膜材でありその両端を中膜材113に固定されているループ本体113DXと、ループ本体113DXの外側の開口に、その周囲をループ本体113DXと中膜材113に固定するようにして取付けられているループ蓋113DYとを備えている。ループ蓋113DYがあるため、このループ113Dを補助棒Lは貫通できない。また、中央のビーム部120に取付けられるループ113Dは、上述のものと同様に構成されたループ本体113DXと、ループ本体113DXの内部(変形例4では、必ずしもその限りではないが、その幅方向の中央)に位置するようにして、且つその周囲をループ本体113DXと中膜材113に固定されているループ仕切113DZとを備えている。ループ仕切113DZがあるため、このループ113Dを補助棒Lは貫通できない。
他方、補助棒Lは、隣り合うビーム部120の中心から中心までの長さに等しくされている。別の言葉でいうと、変形例4による補助棒Lは、上述の実施形態における補助棒Lを、その長さ方向を基準として略2等分したものとされている。補助棒Lは、この変形例4では、10本とされている。
変形例4のエアビーム構造物100の設置方法は、上述の実施形態によるエアビーム構造物100の設置方法と略同様である。
変形例4のエアビーム構造物100を使用するために設置するにあたっては、エアビーム構造物100を適当な場所に配置する。
次いで、10本の補助棒Lを、隣り合うビーム部120同士を接続するようにしてループ113Dに挿入する。具体的には、両端のビーム部120に取付けられるループ113Dに挿入される端部を、図13に示したようにしてそのループ113Dの内側の開口に、中央のビーム部120に取付けられるループ113Dに挿入される端部を、そのループ113Dの両側にある開口の一方に、それぞれ挿入する。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120の中に空気を充填する。
このようにして、変形例4のエアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。
変形例5によるエアビーム構造物100は、基本的に、変形例4のエアビーム構造物100と同様に構成される。変形例5によるエアビーム構造物100が、変形例4のエアビーム構造物100と異なるのは、そのループ113Dの構造と、補助棒Lの長さについてである。
変形例5におけるエアビーム構造物100の構成を、概略的に図14に示す。図14において、ループ113Dと、後述するパイプは、断面で示されている。
変形例5におけるエアビーム構造物100が備えるループ113Dは、変形例4の場合と略同様である。異なるのは、変形例5のループ113Dのうち、中央のビーム部120に取付けられたループ113Dは、ループ仕切113DZを備えていない。したがって、補助棒Lは、ループ113Dを貫通できる。
変形例5の補助棒Lは、変形例4の場合と同様、適当な長さで、より詳細には、上述の実施形態の場合と比較して略半分の長さに分割されている。変形例5の補助棒Lの分割された各部分は、略直線状、この実施形態では直線状に、接続できるようになっている。
補助棒Lの分割された部分同士を接続するため、変形例5では、パイプL1を用いる。パイプL1は、補助棒Lの分割された部分同士を接続するのに必要な数、つまり、この実施形態では5つ準備されている。各パイプL1は、筒状であり、その内径が、補助棒Lの端部の外径と同じになるようにされている。この実施形態では、ループ113Dの中にパイプL1が隠れるようになっており、外部からパイプL1を見えないようにすることで、エアビーム構造物100の美観を高められるようになっている。
変形例5のエアビーム構造物100の設置方法は、上述の実施形態によるエアビーム構造物100の設置方法と略同様である。
変形例5のエアビーム構造物100を使用するために設置するにあたっては、エアビーム構造物100を適当な場所に配置する。
次いで、10本の補助棒Lを2本一組とし、パイプL1で接続しながら、図14に示したような状態となるようにして、ループ113Dに挿入する。
次いで、3つのバルブ121に、順に、或いは一度にポンプなどを接続し、ビーム部120の中に空気を充填する。
このようにして、変形例5のエアビーム構造物100の設置が終わる。
使用後、エアビーム構造物100を分解する場合には、基本的に、上述の場合と逆の手順を実行すればよい。
110 本体膜材
113 中膜材
120 ビーム部
121 バルブ
122 ビーム膜材
130 袋
133D ループ
Claims (6)
- 少なくともその側面を膜材によって形成され、その内部と連通された気体注入口を備え、且つ空気を入れられた状態でその両端が下端となったアーチ状の柱となる気密な柱部材を複数備えているとともに、空気を入れられた複数の前記柱部材が略平行となるようにされてなるエアビーム構造物の設置方法であって、
複数の前記柱部材を、空気を入れた状態の複数の前記柱部材の位置決めを行うものであり、且つ前記柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性を有する棒状の少なくとも1本のロッドで互いに接続し、
その後、前記気体注入口から前記柱部材に空気を注入する、
エアビーム構造物の設置方法。 - 前記ロッドは複数本であり、且つ複数本の前記ロッドのそれぞれは、空気を入れられた前記複数の柱部材に対して直交し、且つ複数本のロッドが互いに略平行となるような状態で、複数の前記柱部材のそれぞれと接続されている、
請求項1記載のエアビーム構造物の設置方法。 - 少なくともその側面を膜材によって形成され、その内部と連通された気体注入口を備え、且つ空気を入れられた状態でその両端が下端となったアーチ状の柱となる気密な柱部材を複数備えているとともに、空気を入れられた複数の前記柱部材が略平行となるようにされてなるエアビーム構造物であって、
空気を入れた状態の複数の前記柱部材の位置決めを行うものであり、且つ前記柱部材に空気を入れた状態のエアビーム構造物の剛性に寄与できる程度の剛性を有する少なくとも1本のロッドと、
前記ロッドを、前記柱部材のそれぞれと接続するための取付け手段と、
を有するとともに、
複数の前記柱部材を覆う膜材である外膜を有しており、
且つ、前記取付け手段は、前記外膜の外側に設けられている、
エアビーム構造物。 - 前記取付け手段は、前記ロッドを潜らせることのできるループである、
請求項3記載のエアビーム構造物。 - 前記柱部材は3つ以上とされ、
前記取付け手段は、前記柱部材のうち両端に位置するものに取付けられるものは、その外側の開口が閉じられた所定幅の膜材にて形成されたループとされ、前記柱部材のうち両端に位置しないものに取付けられるものは、その内部をロッドが貫通できないように仕切られた所定幅の膜材にて形成されたループとされ、
且つ、前記ロッドは、隣り合う柱部材同士を接続するものとされているとともに、
前記ロッドのうち、前記柱部材のうち両端に位置するものに接続される端部は、当該柱部材に取付けられたループの内側の開口に、前記柱部材のうち両端に位置しないものに接続される端部は、当該柱部材に取付けられたループの開口の一方に、挿入されるようにされてなる、
請求項3記載のエアビーム構造物。 - 前記ロッドは、その長さ方向の複数の部分に分割されており、且つそれら複数の部分は、略直線となるように接続可能となっている、
請求項3記載のエアビーム構造物。
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