近年、携帯電話やチューナー等の機器の小型化や高性能化に伴い、機器の内部に内蔵される部品としてのバンドパスフィルタにおいても、他のICやコンデンサ等の部品と同様に、より小型で低価格なものが要求されている。また誘電体層が積層されてなる積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵し、表面にICやコンデンサ等の部品を実装することにより、より小型化した高周波モジュールという要求も増えてきている。
また、高周波モジュールを構成する積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しようとした場合には、バンドパスフィルタと上面に実装されるICやコンデンサ等の部品やパターンとの干渉を防ぐ為に、バンドパスフィルタの上下面を、例えば対向する一対の接地電極を配設することによりシールドする必要がある。
しかしながら、特許文献1に示されたバンドパスフィルタにおいては、中心周波数の両側にポールを形成することが出来るものの、フィルタの上面側にシールド電極が設けられておらず、高周波モジュールのように基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しつつ上面にICやコンデンサ等の部品を実装するような用途に用いた場合、バンドパスフィルタが上面のICやコンデンサ等の部品やパターンの影響を受けフィルタ特性が悪化してしまう。
また、バンドパスフィルタと積層基板の上面に実装されるICやコンデンサ等の部品やパターンとの干渉を防ぐ目的で、新たに積層基板の上面とバンドパスフィルとの間(例えばバンドパスフィルタの上端)にシールド電極を設けた場合、シールド電極(接地電極)と入出力のコンデンサ電極および2つの共振回路間に接続されているポール形成用コンデンサとの間に浮遊容量が発生する。浮遊容量が発生すると、信号が浮遊容量を通じて接地側に流れてしまうことにより通過帯域の挿入損失が劣化したり、浮遊容量により共振回路のQ値が低下し減衰特性が劣化してしまう。この問題を解決するためには、浮遊容量を生じる、シールド電極と入出力のコンデンサ電極および2つの共振回路に接続されているポール形成用コンデンサ(コンデンサ電極を対向させることにより形成)との間を広げる手段が有効であるが、この場合、バンドパスフィルタ(積層バンドパスフィルタ)としての薄型化が困難となる。
また、2つの共振回路間に接続されているポール形成用コンデンサは、例えば特許文献1の図4や図11に示されているC5のように、2つのコンデンサを直列に接続し形成しているため所望のポール形成用コンデンサの容量値を得るのに単独でコンデンサを形成する場合に比べ、それぞれのコンデンサ電極において2倍以上の大きさが必要となり、全体の形状が大きくなってしまう。
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、通過帯域の両側に減衰極を設けることが出来るとともに、高周波モジュールのように積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しつつ上面にICやコンデンサ等の部品を実装するような用途に用いても通過帯域や減衰特性等の特性が劣化せず、かつ低背化が可能な積層バンドパスフィルタを提供することにある。
本発明のバンドパスフィルタは、入力端子に接続された第1の共振器と、出力端子に接続された第2の共振器と、前記第1の共振器および前記第2の共振器を接続する結合素子とからなるバンドパスフィルタであって、前記第1の共振器は、一方端が前記入力端子に接続され他方端が接地された第1のインダクタと、一方端が接地された第1の接地容量と、一方端が前記第1の接地容量の他方端と接続され他方端が前記入力端子に接続された第3のインダクタとを備え、前記第2の共振器は、一方端が前記出力端子に接続され他方端が接地された第2のインダクタと、一方端が接地された第2の接地容量と、一方端が前記第2の接地容量の他方端と接続され他方端が前記出力端子に接続された第4のインダクタとを備え、前記結合素子は、前記入力端子および前記出力端子の間を接続する第5のインダクタと、前記第1の接地容量と前記第3のインダクタとの接続点および前記第2の接地容量と前記第4のインダクタの接続点を接続する結合容量とを備えるバンドパスフィルタにおいて、複数の誘電体層が積層されてなり、上下端に一対の接地電極が対向して形成されている積層基板と、前記誘電体層の層間に形成されて前記第1乃至第5のインダクタを生じる第1乃至第5のインダクタ線路と、前記誘電体層の層間に前記各接地電極とそれぞれ前記誘電体層を挟んで対向して形成され、前記各接地電極との間に前記第1の接地容量および前記第2の接地容量を生じる第1の接地容量電極および第2の接地容量電極と、該第1の接地容量電極および第2の接地容量電極にそれぞれ前記誘電体層を挟んで対向して形成され、前記結合容量を生じる一対の結合容量電極とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは上記構成において、前記第1乃至第5のインダクタ線路は前記第1の接地容量電極および前記第2の接地容量電極の間に位置する前記誘電体層間に形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは上記構成において、前記一対の結合容量電極は、平面透視して前記第1の接地容量電極の外周および前記第2の接地容量電極の外周よりも内側に形成されていることを特徴とするものである。
本発明のバンドパスフィルタは、入力端子に接続された第1の共振器と、出力端子に接続された第2の共振器と、前記第1の共振器および前記第2の共振器を接続する結合素子とからなるバンドパスフィルタであって、前記第1の共振器は、一方端が前記入力端子に接続され他方端が接地された第1のインダクタと、一方端が接地された第1の接地容量と、一方端が前記第1の接地容量の他方端と接続され他方端が前記入力端子に接続された第3のインダクタとを備え、前記第2の共振器は、一方端が前記出力端子に接続され他方端が接地された第2のインダクタと、一方端が接地された第2の接地容量と、一方端が前記第2の接地容量の他方端と接続され他方端が前記出力端子に接続された第4のインダクタとを備え、前記結合素子は、前記入力端子および前記出力端子の間を接続する第5のインダクタと、前記第1の接地容量と前記第3のインダクタとの接続点および前記第2の接地容量と前記第4のインダクタの接続点を接続する結合容量とを備えることから、入力および出力端子の間は、第5のインダクタと結合容量からなる並列共振回路にて接続される。そのため、この並列共振回路の並列共振周波数すなわち通過帯域の低域側の周波数にて入力および出力端子の間のインピーダンスがほぼ無限大(=オープン状態)となり減衰極が発現する。また、第1および第2の共振器が、一方端が接地された第1および第2の接地容量と、第3および第4のインダクタとからなる直列共振回路を含む構成であるため、この直列共振回路の直列共振周波数すなわち通過帯域より高域側の周波数にて一対の共振器のインピーダンスがゼロ(ショート状態)となり、入力された信号は接地側に流れ、出力される信号が減少し減衰極が発現する。よって、通過帯域の両側に減衰極を設けることが可能となる。
また、結合容量は、第1の接地容量と第3のインダクタとの接続点および第2の接地容量と第4のインダクタの接続点を接続するので、結合容量を生じさせる容量電極と、接地容量を生じさせる容量電極とを兼用させることができる。そのため、所望の結合容量および接地容量を生じさせるための容量電極の数を抑えることができる。また、接地容量を形成する容量電極は、その一方の電極を接地電極とすることにより、例えば積層基板の上下端に接地電極を設けることもできるので、積層基板の内外の間の電磁的なシールドを良好とすることともに、新たに接地電極を設ける必要がなくなる。このような理由によりバンドパスフィルタを、例えば積層基板に形成するときの薄型化を容易とすることができる。この場合、各接地電極は、それぞれ、接地容量を形成する電極と対向するように配設されるので、結合容量(ポール形成用容量)との間に浮遊容量を生じることはなく、浮遊容量に起因する、通過帯域の挿入損失の劣化や共振回路のQ値の低下等の特性の劣化は効果的に防止することができる。そのため、浮遊容量を防止する手段を講じる必要はなく、薄型化や特性の確保等に有利である。
また、第1の共振器と第2の共振器との結合を磁気結合でなく、第5のインダクタで結合したことにより、磁気結合により生じるインダクタで結合した場合に比べ他の素子からの影響を受けにくいものとなり、特性を安定化することができる。
したがって、本発明のバンドパスフィルタによれば、通過帯域および減衰特性等の特性に優れるとともに、低背化や高周波モジュールの形成等が容易なバンドパスフィルタを提供することができる。
また、本発明のバンドパスフィルタは、複数の誘電体層が積層されてなり、上下端に一対の接地電極が対向して形成されている積層基板と、前記誘電体層の層間に形成されて前記第1乃至第5のインダクタを生じる第1乃至第5のインダクタ線路と、前記誘電体層の層間に前記各接地電極とそれぞれ前記誘電体層を挟んで対向して形成され、前記各接地電極との間に前記第1の接地容量および前記第2の接地容量を生じる第1の接地容量電極および第2の接地容量電極と、該第1の接地容量電極および第2の接地容量電極にそれぞれ前記誘電体層を挟んで対向して形成され、前記結合容量を生じる一対の結合容量電極とを
備えることから、上記構成のバンドパスフィルタを積層基板中に形成しているので、通過帯域の両側に減衰極を設けることが可能なバンドパスフィルタ(積層バンドパスフィルタ)を提供することができる。
また、積層基板の上下端に設けられた一対の接地電極のシールド効果により、積層基板の内部に形成されるインダクタ線路や接地容量電極、結合容量電極は、外部との間で有効に電磁的にシールドされる。そのため、積層基板の上下端の外面に、ICやコンデンサ等の部品が搭載されたとしても、その部品と、積層基板の内部に形成されるバンドパスフィルタとの間で電磁的な干渉が生じることは抑制される。したがって、高周波モジュールのように積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しつつ上面にICやコンデンサ等の部品を実装するような用途に用いても通過帯域や減衰特性等の特性が劣化することは効果的に防止される。
結合容量電極と接地容量電極と接地電極とが、それぞれ間に誘電体層を挟んで配置された構造とすることにより、結合容量および接地容量を効果的に生じさせることができるので余分に誘電体層を積層する必要がなく、バンドパスフィルタの薄型化が容易となる。
また、各接地電極は、それぞれ、接地容量電極と誘電体層を間に挟んで対向して形成されるので、結合容量電極との間に浮遊容量を生じることはなく、浮遊容量に起因する、通過帯域の挿入損失の劣化や共振回路のQ値の低下等の特性の劣化は効果的に防止することができる。そのため、浮遊容量を防止する手段を講じる必要はなく、薄型化や特性の確保等に有利である。
したがって、通過帯域および減衰特性等の特性に優れるとともに、低背化や高周波モジュールの形成等が容易な積層バンドパスフィルタを提供することができる。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは、第1乃至第5のインダクタ線路は第1および第2の接地容量電極の間に位置する誘電体層間に形成されていることから、全部のインダクタ線路について、少なくとも誘電体層の厚さの分だけ第1乃至第5のインダクタと一対の接地電極、一対の接地容量電極との距離を離すことができる。そのため、第1乃至第5のインダクタ線路と一対の接地電極および第1および第2の接地容量電極との距離が離れることとなり、第1乃至第5のインダクタンス線路自体のQ値が大きくなる。したがって、より一層通過帯域の損失が少なくかつ優れた減衰特性をもつフィルタ特性が得られるものとなる。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは、一対の結合容量電極は、平面透視して第1の接地容量電極の外周および第2の接地容量電極の外周よりも内側に形成されていることから、一対の結合容量電極と一対の接地電極との間に生じる不要な接地容量(浮遊容量)を抑制することができる。すなわち、結合容量電極と接地電極との間に、第1または第2の接地容量電極が、平面透視して結合容量電極を完全に覆うように介在するため、結合容量電極と接地電極との間に不要な静電容量が生じるのを第1または第2の接地容量電極によって有効に防止することができる。そのため、信号が結合容量電極より接地側に漏れる量を減らせ挿入損失をさらに確実に少なくすることができる。また、同じ理由により一対の結合容量電極と一対の接地電極との距離を近づけることが可能となり薄型化することができる。
本発明のバンドパスフィルタについて図面を用いて以下に説明する。なお、以下の実施の形態は、Bluetooth(登録商標)用途として、通過帯域を2.4GHzから2.5GHz付近とし、通過帯域より低域側の減衰極を2.0GHz付近とし、通過帯域より高域側の減衰極を5.1GHz付近として設計したものである。
図1は本発明におけるバンドパスフィルタについて実施の形態の一例を示す等価回路図である。図1において、1は入力端子、2は出力端子、3は第1のインダクタ、4は第1の接地容量、5は第3のインダクタ、6は第2のインダクタ、7は第2の接地容量、8は第4のインダクタ、9は第5のインダクタ、10は結合容量である。第1の共振器は第1のインダクタ3と第1の接地容量4と第3のインダクタ5より形成され、第2の共振器は第2のインダクタ6と第2の接地容量7と、第4のインダクタ8より形成されている。ここで、入力端子1および出力端子2の間は、第5のインダクタ9と結合容量10からなる並列共振回路にて接続される。この並列共振回路を構成する第5のインダクタ9と結合容量10の値は、2.0GHz付近において並列共振によりインピーダンスがほぼ無限大となるように設定されているため、入力端子1および出力端子2の間のインピーダンスが、2.0GHz付近の周波数においてほぼ無限大(=オープン状態)となるために2.0GHz付近に減衰極が発現する。また、第1の共振器は、第1の接地容量4と第3のインダクタ5からなる直列共振回路、第2の共振器は、第2の接地容量7と第4のインダクタ8からなる直列共振回路を含む構成となっている。この2つの直列共振回路を構成する、第1の接地容量4と第3のインダクタ5と、第2の接地容量7と第4のインダクタ8の値は、5.1GHz付近において直列共振によりインピーダンスがほぼゼロ(ショート状態)となるような値に設定されているため、入力端子1から入力された信号は接地側に流れるため、出力端子2に出力される信号が減少し5.1GHz付近に減衰極が発現する。よって、通過帯域の両側に減衰極を設けることが可能となる。
また、結合容量10は、第1の接地容量4と第3のインダクタ5との接続点および第2の接地容量7と第4のインダクタ8の接続点を接続するので、結合容量10を生じさせる容量電極と、第1および第2の接地容量4、7を生じさせる容量電極とを兼用させることができる。
そのため、所望の結合容量10および第1および第2の接地容量4、7を生じさせるための容量電極の数を抑えることができる。また、第1および第2の接地容量4、7を形成する容量電極は、その一方の電極を接地電極とすることにより、例えば積層基板の上下端に接地電極を設けることもできるので、積層基板の内外の間の電磁的なシールドを良好とすることともに、新たに接地電極を設ける必要がなくなる。このような理由によりバンドパスフィルタを、例えば積層基板に形成するときの薄型化を容易とすることができる。この場合、各接地電極は、それぞれ、第1および第2の接地容量4、7を形成する電極と対向するように配設されるので、結合容量10(ポール形成用容量)との間に浮遊容量を生じることはなく、浮遊容量に起因する、通過帯域の挿入損失の劣化や共振回路のQ値の低下等の特性の劣化は効果的に防止することができる。そのため、浮遊容量を防止する手段を講じる必要はなく、薄型化や特性の確保等に有利である。
また、第1の共振器と第2の共振器との結合を磁気結合でなく、第5のインダクタ9で結合したことにより、磁気結合により生じるインダクタで結合した場合に比べ他の素子からの影響を受けにくいものとなり、特性を安定化することができる。
したがって、本発明のバンドパスフィルタによれば、通過帯域および減衰特性等の特性に優れるとともに、低背化や高周波モジュールの形成等が容易なバンドパスフィルタを提供することができる。
図2は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態、特に積層バンドパスフィルタとして実施した場合の形態の一例を示す分解斜視図である。図2において、1は入力端子、2は出力端子、11は複数の誘電体層、12は一対の接地電極、13は第1のインダクタ3を生じる第1のインダクタ線路、14は第3のインダクタ5を生じる第3のインダクタ線路、15は第2のインダクタ6を生じる第2のインダクタ線路、16は第4のインダクタ8を生じる第4のインダクタ線路、17は第5のインダクタ9を生じる第5のインダクタ線路、18は第1の接地容量電極、19は第2の接地容量電極、20は一対の結合容量電極である。
第1の接地容量4は、第1の接地容量電極18と下端側の接地電極12とが対向することにより生じる接地容量であり、第2の接地容量7は、第2の接地容量電極19と上端側の接地電極12とが対向することにより生じる接地容量であり、結合容量10は、第1および第2の接地容量電極18、19が、一対の結合容量電極20と対向することにより生じる容量の合計となる。このことから図1の構成のバンドパスフィルタを積層基板中に形成することができるので、通過帯域の両側に減衰極を設けることが可能なバンドパスフィルタ(積層バンドパスフィルタ)を提供することができる。
また、積層基板の上下端に設けられた一対の接地電極12のシールド効果により、積層基板の内部に形成される第1乃至第5のインダクタ線路13〜17や第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20は、外部との間で有効に電磁的にシールドされる。そのため、積層基板の上下端の外面に、ICやコンデンサ等の部品が搭載されたとしても、その部品と、積層基板の内部に形成されるバンドパスフィルタとの間で電磁的な干渉が生じることは抑制される。したがって、高周波モジュールのように積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しつつ上面にICやコンデンサ等の部品を実装するような用途に用いても通過帯域や減衰特性等の特性が劣化することは効果的に防止される。
このようなシールド効果を得る上で、一対の接地電極12は、平面透視で前記第1乃至第5のインダクタ線路13〜17や、第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20を内側に含む領域に、全面に(いわゆるベタパターン状に)設けられることが好ましい。
一対の結合容量電極20と、第1および第2の接地容量電極18、19と、一対の接地電極12とが、それぞれ間に誘電体層11を挟んで配置された構造とすることにより、結合容量10および第1および第2の接地容量4、7を効果的に生じさせることができるので余分に誘電体層を積層する必要がなく、バンドパスフィルタの薄型化が容易となる。
また、一対の接地電極12は、それぞれ、第1および第2の接地容量電極18、19と誘電体層11を間に挟んで対向して形成されるので、一対の結合容量電極20との間に浮遊容量を生じることはなく、浮遊容量に起因する、通過帯域の挿入損失の劣化や共振回路のQ値の低下等の特性の劣化は効果的に防止することができる。そのため、浮遊容量を防止する手段を講じる必要はなく、薄型化や特性の確保等に有利である。
したがって、通過帯域および減衰特性等の特性に優れるとともに、低背化や高周波モジュールの形成等が容易な積層バンドパスフィルタを提供することができる。
なお、入力端子1および出力端子2は、本実施形態では、第1および第3のインダクタ線路13、14の接続点と、第2および第4のインダクタ線路15、16の接続点とに配置されており、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17と同じ層間に配置されているが、他の層間に設けても構わない。
また、本実施形態においては、第1および第2のインダクタ線路13、15と一対の接地電極12との接続、第3のインダクタ14と第1の接地容量電極18と一対の接地容量20との接続、第4のインダクタ16と第2の接地容量電極19と一対の接地容量20との接続は、貫通導体(ビア導体)をもちいて行われている。また、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17は、本実施形態において、一つの層間に、互いに端部同士が直接接することにより電気的に接続されて形成されているが、例えば第1乃至第5のインダクタ線路13〜17を異なる層間に形成し、電気的な接続を、例えば、複数の誘電体層11を厚み方向に貫通する貫通導体(ビア導体)(図示せず)を介して行ってもよい。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17は第1および第2の接地容量電極18、19の間に位置する誘電体層間に形成されていることから、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17について、少なくとも誘電体層11の厚さの分だけ第1乃至第5のインダクタ線路13〜17と一対の接地電極12、第1および第2の接地容量電極18、19との距離を離すことができる。そのため、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17と一対の接地電極12、および、第1および第2の接地容量電極18、19との距離が離れることとなり、第1乃至第5のインダクタンス線路13〜17自体のQ値が大きくなる。したがって、より一層通過帯域の損失が少なくかつ優れた減衰特性をもつフィルタ特性が得られるものとなる。
また、本発明のバンドパスフィルタは、好ましくは、一対の結合容量電極20は、第1の接地容量電極18および第2の接地容量電極19の間に位置する誘電体層11間に形成されているのがよい。これにより、結合容量電極20と接地電極12との間に第1または第2の接地容量電極18、19が介在することとなり、結合容量電極20と接地電極12との間に不要な接地容量(浮遊容量)が生じるのを抑制することができる。
より好ましくは、一対の結合容量電極20は、平面透視して第1の接地容量電極18の外周および第2の接地容量電極19の外周よりも内側に形成されているのがよい。これにより、一対の結合容量電極20と一対の接地電極12との間に生じる不要な接地容量(浮遊容量)をより有効に抑制することができる。すなわち、結合容量電極20と接地電極12との間に、第1または第2の接地容量電極18、19が、平面透視して結合容量電極20を完全に覆うように介在するため、結合容量電極20と接地電極12との間、さらには結合容量電極20の端部と接地電極12との間に不要な静電容量が生じるのを第1または第2の接地容量電極18、19によってより有効に防止することができる。そのため、信号が一対の結合容量電極20より一対の接地電極12側に漏れる量を減らせ挿入損失をさらに確実に少なくすることができる。また、同じ理由により一対の結合容量電極20と一対の接地電極12との距離を近づけることが可能となり薄型化することができる。ここで、高周波モジュールのように積層基板の内部にバンドパスフィルタを内蔵しつつ上面にICやコンデンサ等の部品を実装するような用途に用いても、複数の誘電体層11の上下端に設けられた一対の接地電極12のシールド効果により、バンドパスフィルタと上面に実装されるICやコンデンサ等の部品やパターンとの干渉が防げるため、通過帯域や減衰特性が劣化したりせず所望のフィルタ特性が得られるものとなる。
第1乃至第5のインダクタ線路13〜17は、第1の接地容量電極18と第2の接地容量電極19の間に形成されていることから、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17と、第1および第2の接地容量電極18、19および一対の接地電極12との距離を離すことができるため、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17のQ値を大きくすることができ、通過帯域の損失が少なくかつ優れた減衰特性をもつフィルタ特性が得ることができる。
また、結合容量10は、第1の接地容量電極18および第2の接地容量電極19と、一対の結合容量電極20と対向することにより生じる容量の合計となることから、一対の結合容量電極20おのおのの面積を小さくすることができるため、一対の結合容量電極20を、平面透視して第1の接地容量電極18の外周および第2の接地容量電極19の外周よりも内側に形成することが容易となる。
なお、本発明のバンドパスフィルタは、例えば複数の誘電体層11がセラミックスから成る場合、焼成後に各誘電体層となるセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)に所定の孔開け加工を施すとともに、各電極のパターン形状および貫通導体となる貫通孔やグリーンシートに導体ペーストを塗布し、これらを積層して焼成することによって製作される。あるいは、誘電体層がフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂のような樹脂から成る場合、樹脂基板を用い、その表面に被着させた銅箔をエッチングして各電極パターンの形成を行ない、層間接続用のビアを形成して積層プレスすることによって製作される。ビアは、例えば、後述するような導体層と同様の金属材料を、あらかじめ誘電体層に設けておいた貫通孔内に充填することにより形成、ビアの数形状や径は適宜設定される。
複数の誘電体層11を始めとする誘電体層には、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス等のセラミックス材料やガラスセラミックス等の無機系材料、または四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂;ETFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂;PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂、ポリイミド等の樹脂系材料等が用いられる。
入力端子1、出力端子2、一対の接地電極12、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17、第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20には、高周波信号伝送用の金属材料から成る導体層が用いられる。例えば、Cu層、Mo−Mnのメタライズ層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Wのメタライズ層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Cr−Cu合金層、Cr−Cu合金層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Ta2N層上にNi−Cr合金層およびAuメッキ層を被着させたもの、Ti層上にPt層およびAuメッキ層を被着させたもの、またはNi−Cr合金層上にPt層およびAuメッキ層を被着させたもの等が用いられ、厚膜印刷法あるいは各種の薄膜形成方法やメッキ法等により形成される。その厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
なお、本発明のバンドパスフィルタ(積層バンドパスフィルタ)において、複数の誘電体層11を始めとする誘電体層には、アルミナセラミックス、ムライトセラミックス等のセラミックス材料やガラスセラミックス等の無機系材料、または四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合樹脂;ETFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂;PFA)等のフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂、ポリイミド等の樹脂系材料等が用いられる。
例えば、複数の誘電体層11がセラミックスから成る場合、焼成後に各誘電体層となるセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)に切断加工や孔開け加工を施して、所定の寸法、形状に加工するとともに、これらを積層して焼成することによって製作される。あるいは、誘電体層がフッ素樹脂やガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂のような樹脂系材料から成る場合、樹脂基板を、層間絶縁樹脂等を介して積層し、積層プレスすることによって製作される。
また、入力端子1、出力端子2、一対の接地電極12、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17、第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20には、高周波信号伝送用の金属材料から成る導体層が用いられる。例えば、Cu層、Mo−Mnのメタライズ層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Wのメタライズ層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Cr−Cu合金層、Cr−Cu合金層上にNiメッキ層およびAuメッキ層を被着させたもの、Ta2N層上にNi−Cr合金層およびAuメッキ層を被着させたもの、Ti層上にPt層およびAuメッキ層を被着させたもの、またはNi−Cr合金層上にPt層およびAuメッキ層を被着させたもの等が用いられ、厚膜印刷法あるいは各種の薄膜形成方法やメッキ法等により形成される。その厚みや幅は、伝送される高周波信号の周波数や用途等に応じて設定される。
例えば、Cuのメタライズ層は、Cu粉末に有機溶剤、バインダを添加混練して作製した金属ペーストを、誘電体層11となるグリーンシートの表面に、スクリーン印刷法等の印刷法で、所定パターンに印刷することにより形成することができる。
入力端子1、出力端子2、一対の接地電極12、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17、第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20は、生産性や電気的な特性の設計等を考慮すれば、露出表面に被着されるメッキ層を除いて、同じ材料で形成されることが好ましい。
また、Cuメタライズ層上のNiメッキ層やAuメッキ層は、Cuメタライズ層を、NiやAuの電解メッキ液中に浸漬しながらメッキ用の電流を各Cuメタライズ層の露出部分に供給することにより形成される。
また、複数の誘電体層11が樹脂系材料の場合、樹脂基板を用い、その表面に被着させた銅箔をエッチングして各電極パターンの形成を行ない、層間接続用のビアを形成して積層プレスすることによって製作される。
ビア導体は、例えば、複数の誘電体層11にあらかじめ形成された貫通孔(ビア)内に、上記入力端子1、出力端子2、一対の接地電極12、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17、第1および第2の接地容量電極18、19、一対の結合容量電極20等を形成するのと同様の導体材料を充填することにより形成されている。
貫通孔は、例えば、複数の誘電体層11となるグリーンシートに上記孔開け加工を施すことにより形成される。
このグリーンシートのビア内に、真空吸引を併用してスクリーン印刷を行なう手法によりCuの金属ペーストを充填することにより、各ビア導体が形成される。
また、樹脂系材料の場合であれば、ビア導体は、例えば、各容量電極やインダクタ線路を形成する導体層と同様の金属材料を、あらかじめエッチング等の手段で誘電体層に設けておいた貫通孔内にめっき法等の手段で充填することにより形成、
なお、ビア導体の数や形状、径は適宜設定される。
図3は、図1および図2の本発明のバンドパスフィルタの周波数特性を示すグラフである。図3においては、横軸は周波数(単位:GHz)を、縦軸はバンドパスフィルタの信号通過量S21(単位:dB)を表わす。
図3に示すように、本発明のバンドパスフィルタでは、通過帯域の両側の2.0GHz付近と5.1GHz付近に減衰極が発現していることがわかる。
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、第1乃至第5のインダクタ線路13〜17を複数の層を使って形成したり、複数の誘電体層10を部分的に高誘電率材料や磁性体などを用いることによって、より小型化することが可能となる。