JP4693288B2 - 光ファイバ用フェルール及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の光ファイバの先端部を挿着するために用いられる光ファイバ用フェルール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、情報伝達量及び速度の点から高速・大容量通信手段として光ファイバを用いた光信号による情報通信が広く行われつつある。これら情報伝達は、通信網としての整備から情報機器間データ移送まで幅広い応用展開が見込まれている。
【0003】
これらの光ファイバを用いた情報伝達では、光ファイバ用フェルールに挿通保持された光ファイバの端面同士を接続する光コネクタが使用される。
【0004】
かかる光ファイバ用フェルールは、その軸方向に光ファイバ心線及び前記光ファイバ心線を被覆層で覆った光ファイバを挿通する挿入孔が形成され略円筒形状を有している。
【0005】
また、前記細孔の内径は0.126mm程度とされており、この光ファイバ用フェルールは、いずれも細径の光ファイバを保持、接続する目的から、サブミクロンの非常に高い寸法精度が要求されるが、今後は更に小型化していくと考えられ、より高精度が求められる。
【0006】
さらに、複数本の光ファイバからなる多心ファイバを挿入保持する多心フェルールは、一度に多量の情報を交換する接続器などに用いられ、横一列に多数の光ファイバを挿通する複数の挿入孔を有した構造や、より一層の小型化のため、複数の行列に光ファイバを挿入した構造の多心フェルールが提案されている。
【0007】
これらの光ファイバ用フェルールや多心フェルールの挿入孔に、光ファイバ心線を保持するには、挿入孔の内壁と光ファイバとの間に間隙を設け、接着剤を充填して行うか、もしくは挿入孔と光ファイバとの間に接着剤を充填して行われ、光ファイバを強固に固定するため、挿入孔の内壁に凹凸を形成することが本願出願人より提案されている(特開平7−239425号公報参照)。
【0008】
また、直径が0.1〜5μmの空孔を略均一に有するセラミックスを用いて光ファイバー用フェルールを形成することにより、挿入孔の内壁に現れた気孔によって内壁が平滑でなくなり、この気孔に接着剤が入り込むことによって光ファイバの固定強度を高めることが提案されている(特開平11−52180号公報参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の光ファイバー用フェルールのように、細孔の内壁に凹凸を形成する場合、金型に溝を形成して製作するため、コストが高くなり、また細孔の内壁を同心円状に研磨する必要があるため、加工時間が長くなって製造コストが高くなるという欠点を有していた。
また、直径0.1〜5μmの空孔を略均一に有するセラミックスからなる光ファイバー用フェルールは、細孔の内壁以外に光ファイバ用フェルールの外周部や端面にも0.1〜5μmの空孔が存在することから、機械的強度が低下し、この光ファイバ用フェルールをスリーブに挿入することによって、他の光ファイバ用フェルールと接続する際、大きな曲げモーメントが生じ、破損しやすく、長期間の使用に供することができないという欠点を有していた。
【0010】
本発明は、上述の欠点に鑑み案出されたもので、その目的は光ファイバを強固に固定するとともに、高強度を有し長期間の使用に供することができる光ファイバ用フェルールを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ用フェルールは、光ファイバの挿入孔を有し、セラミックスからなるフェルールであって、前記挿入孔の内壁には複数の溝が網目状に形成されているとともに、前記挿入孔の内壁近傍の結晶粒子は、内壁表面における平均長さが1μm以下、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さが1〜20μmであり、前記結晶粒子同士の間隙が前記溝を構成していることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の光ファイバ用フェルールは、光ファイバの挿入孔を有し、セラミックスからなるフェルールであって、前記挿入孔の内壁には、レーザ照射により形成された溶融層が存在するとともに、前記溶融層の表面には固化時に生じた複数の溝が網目状に形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の光ファイバ用フェルールは、前記溝間の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
またさらに、本発明の光ファイバ用フェルールは、前記挿入孔の内壁表面から垂直方向に30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明の光ファイバ用フェルールの製造方法は、セラミックス部材にパルスレーザを照射し溶融過程により前記挿入孔を形成するとともに、該挿入孔の内壁に溶融層を残すことによって、前記溶融層の表面に網目状の溝を生じさせることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の光ファイバ用フェルールによれば、挿入孔内壁に溝を網目状に形成することから、該光ファイバ用フェルールの挿入孔に光ファイバを挿入保持する際、溝に接着剤が入り込み、アンカー効果によって光ファイバを強力に接着できるものである。
【0016】
また、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、挿入孔内壁の溝間の表面粗さRaが0.2μm以下であることから、光ファイバを挿入孔に強固に、かつ傷をつけることなく保持することができる。
【0017】
さらに、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、前記挿入孔の内壁近傍の結晶粒子が内壁表面での平均長さが1μm以下であり、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さが1〜20μmであることから、挿入孔内壁の溝の深さ、溝間の距離を調整し、挿入孔に光ファイバ心線を保持する際、より高いアンカー効果を得られるとともに、チッピング等が生じるのを防止することができる。
【0018】
またさらに、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、前記挿入孔の内壁表面から垂直方向に30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることから、光ファイバ用フェルール自体を緻密体とし、機械的強度、耐候性の高い光ファイバ用フェルールを得ることができる。
【0019】
さらにまた、本発明の光ファイバ用フェルールの製造方法によれば、セラミックス部材にパルスレーザを照射し、その溶融過程により前記挿入孔を形成するとともに、該孔内壁に溶融層を残すことによって網目状の溝を加工して得られることから、挿入孔を形成すると同時にその内壁に網目状の溝を容易に形成することができる。また、挿入孔の位置精度が高いため単心並びに多心の光ファイバ用フェルールを容易に製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明実施形態を図によって説明する。
【0021】
図1(a)は本発明の光ファイバ用フェルールの一実施形態を示す断面図であり、(b)は同図(a)の光ファイバの挿入孔の内壁を示す部分上面図であり、(c)は同図(b)の挿入孔の内壁近傍の結晶粒子を示す模式図である。
【0022】
本発明の光ファイバ用フェルール1は、図1(a)に示すように、その中心に光ファイバを挿通保持する挿入孔2が形成されており、この光ファイバ用フェルールを光ファイバコネクタとする場合には、図2に示すように、この光ファイバ用フェルール1の後方をバックボディ4に保持しておいて、挿入孔2に光ファイバ5を挿入して接着固定する。そして一対の光ファイバ用フェルール1の先端面同士を当接させれば光ファイバコネクタとすることができる。
【0023】
本発明の光ファイバ用フェルール1は、ジルコニア、アルミナ、ムライト、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミなどの他、SiO2−Al2O3系、SiO2−B2O3系の結晶化ガラス等のガラスセラミックス、及びAl2O3を主成分としZrO2を混合したジルコニア分散アルミナセラミックス、アルミナの結晶粒界に粒径がナノレベルの非常に微細なジルコニア粒子を分散させ、粒界強度を飛躍的に向上させたジルコニア分散アルミナセラミックス、Al2O3を主成分としてAl2B2O9を混合したセラミックス等の各種複合セラミックス等から成り、これらの中でも耐候性、曲げ強度等がより優れた部分安定化ジルコニアがより好ましい。
【0024】
この部分安定化ジルコニアは、ZrO2を主成分とし、安定化剤としてY2O3、MgO、CeO2、Dy2O3、CaO等を含有するものであり、耐候性が優れ、高靭性、そして研磨しやすいため、長期間の使用に供する高精度な光ファイバ用フェルールを得ることができる。
【0025】
ここで、本発明の光ファイバ用フェルール1の挿入孔2内壁には、図1(b)に示すように網目状の溝3が形成されていることが重要である。
【0026】
前記挿入孔2の内壁に網目状の溝3を形成しておくことから、挿入孔2に光ファイバを保持する際、前記溝3に接着剤が十分に入り込み、アンカー効果が作用することによって、挿入孔2に光ファイバを強固に保持することができる。
また、前記挿入孔2内壁の溝3間の表面粗さRaが0.2μm以下としておくことが好ましい。これによって光ファイバを挿入孔2に強固に、かつ光ファイバに傷をつけることはなく保持することができる。
なお、前記溝3間の表面粗さRaを0.2μm以下とするには、挿入孔2をレーザ加工によって形成することで、レーザ光の熱による滑らかな溶融表目を得ることができる。
【0027】
さらに、前記挿入孔2の内壁近傍の結晶粒子は、図1(c)に示すように内壁表面での平均長さAが1μm以下、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さBが1〜20μmとしておく。前記挿入孔2内壁の溝3は、各溝3間の距離及び深さが、前記内壁近傍の結晶粒子によって決まるため、結晶粒子の内壁表面での平均長さAを1μm以下と小さくすることによって、溝3間の距離及び挿入孔2の表面粗さを小さくすることができ、内壁に対して垂直方向の平均長さBを1〜20μmとしておくことによって、溝3の深さを1〜20μmとして、挿入孔2に光ファイバを保持する際、より高いアンカー効果が得られ、光ファイバを強固に保持することができる。また、光ファイバ用フェルール1の先端面を研磨する際、挿入孔2にチッピングが生じることはなく、強度の高い光ファイバ用フェルール1を得ることができる。
【0028】
前記挿入孔2の内壁近傍の結晶粒子を上述のような形状にするためには、後述するように挿入孔2の内壁にパルスレーザ加工を施すことによって、挿入孔2の内壁近傍の結晶粒子を溶融させることによって得ることができる。
【0029】
なお、前記挿入孔内壁近傍の結晶粒子の形状は、挿入孔2の内壁近傍の断面写真及び内壁表面の写真から測定する。内壁表面での平均長さは内壁表面の写真に、任意に直線を引き、該直線上の結晶粒子の数より大きさを算出するインターセプト法によって測定することができる。
【0030】
また、前記挿入孔2の内壁表面から30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下、さらには0.4μm以下であることが好ましい。該結晶粒子の平均粒径はインターセプト法によって測定することができる。前記挿入孔2の内壁表面より離れた内部が、小さな粒径の結晶粒子からなることで、光ファイバ用フェルール1全体の強度、耐候性を向上させることができる。
【0031】
なお、前記挿入孔2の内壁表面から30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下とするには、使用する原料の粒径を小さくし、焼成温度を低くすることによって結晶粒径を小さく保持して焼結させることができ、例えばジルコニアによって光ファイバ用フェルール1を形成する場合、原料の一次粒径を0.1μm以下とし、焼成温度を1450℃以下とすることで粒径が1μm以下の焼結体を得ることができ、さらに1400℃以下で焼成することによって粒径を0.4μm以下にすることができる。
【0032】
ここで、本発明の光ファイバ用フェルール1の製法を説明する。
【0033】
まず、出発原料として例えばジルコニアを主原料とした場合、ジルコニアの純度は95%以上、より好ましくは98%以上とし、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される一次平均粒径が0.01〜0.1μm、より好ましくは0.04〜0.07μm、二次凝集粒子の平均粒径が1〜4μmの粉末を選ぶとよい。このジルコニアに安定化剤として、純度99%以上、好ましくは99.5%以上のイットリア粉末をジルコニア粉末85〜99重量%、好ましくは90〜98重量%に対して、1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%の割合で混合する。そして、前記組成を満足するように配合された混合粉末をボールミル等により十分混合粉砕した後、バインダを添加し、混合後、必要に応じて造粒して成形用原料を得る。バインダは20〜50体積%含有することが好ましい。
【0034】
次いで、前記成形用原料を例えばプレス金型に充填してプレス成形することによって、成形体を得る。なお、前記プレス成形の他、射出成形、鋳込成形、冷間静水圧成形、押出し成形、射出成形等の手法により成形することができる。
【0035】
得られた成形体を脱脂後、酸化雰囲気柱にて1300〜1500℃の温度で、より好ましくは1350〜1450℃で0.5〜3時間焼成することにより、ジルコニア焼結体を得ることができる。
【0036】
しかる後、得られた焼結体の挿入孔にパルスレーザを照射することで、挿入孔の寸法、真円度を整えるとともに挿入孔2の内壁表面を溶融させ網目状の溝を形成する。
【0037】
前記パルスレーザは、CO2レーザ、YAGレーザ等の穿孔可能な出力を有し、パルス発振できるものであれば使用することができる。特に、波長の短さ、出力の高さ、コスト等からYAGレーザが好ましく、前記パルスレーザを挿入孔2に照射することで、挿入孔2の内壁近傍に溶融部が限定されテーパのつかない孔を開けることができる。
【0038】
また、前記パルスレーザを照射する際は、アシストガスを溶融部が除去されない程度に微弱にすることが重要であり、レーザ照射時に内壁の溶融部が吹き飛ばされず残留し、これらが固化することで内壁近傍の結晶粒子が内壁に対して垂直方向に粒成長するため、前記図1(c)のような内壁表面における平均長さAが1μm以下、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さBが1〜20μmの形状となり、この溶融部の固化にともなう収縮によって生じる割れが網目状の溝3となり、各溝3間の距離及び深さは、前記挿入孔2の内壁近傍の結晶粒子とほぼ同じ値を有し、各溝3間の距離が1μm以下、溝3の深さが1〜20μmとなる。
【0039】
なお、前記パルスレーザによって挿入孔2を加工する際は、予め光ファイバ被覆部を挿通するための径の大きい挿入孔2を形成した焼結体に、光ファイバ心線部を挿通する径の小さい挿入孔2をパルスレーザによって穿孔することによって、位置精度が高く、加工時間、製造コストを小さくすることができる。
【0040】
また、アシストガスによりレーザ照射部の雰囲気が酸素雰囲気になっていることが好ましい。これによりレーザ照射による還元作用に伴うセラミックスの変色を抑えることができる。
【0041】
さらに、前記パルスレーザによって挿入孔2を形成した後、光ファイバ用フェルール1を熱処理してもよい。これによりレーザ加工による部分的な加熱・冷却に伴う残留応力を解放し、光ファイバ用フェルール1の強度、信頼性をより高めることができ、酸素欠陥等による変色をなくすことができる。また、レーザを照射することで挿入孔2の周辺では熱膨張に伴う応力がかかり、残留応力が生じることがある。特に、ジルコニアから成る場合、熱伝導率が低いため、挿入孔2の周辺では他のセラミックスに比べ大きな応力が生じるとともにジルコニアに酸素欠陥が生じて黒変してしまうことがある。そのため、レーザ照射後、熱処理を行うことで応力を解放したり、該黒変を解消することができる。この熱処理の温度は材質によって異なるが、500〜1600℃の温度範囲、好ましくは750〜1300℃の温度範囲で熱処理することが好ましく、黒変を解消する場合は酸素濃度を5〜100容量%の酸素雰囲気中で行うことが好ましい。なお、熱処理工程が焼成工程を兼ねていてもよい。
【0042】
以上のように得られた光ファイバ用フェルール1は、挿入孔2の内壁に網目状の溝3を形成することから、光ファイバの固定強度をより高くすることができ、高精度で長期間の使用に供することができる。
【0043】
なお、上述の実施形態では、単心の光ファイバ用フェルールを用いて説明したが、複数の光ファイバ挿入孔を有する多心ファイバ用フェルールとして用いることができ、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0044】
【実施例】
図1(a)に示すような光ファイバ用フェルールを作製するため、先ず、アルミナを0.2重量%含有した純度99%、一次平均粒径0.05μmのジルコニア粉末、純度99.9%のイットリア粉末を97:3のモル比で調合し、ボールミルによる混合を行って原料粉末を得た。この原料粉末にバインダとしてメチルセルロースを混合粉末100重量%に対して4重量%加え、二次凝集粒の平均粒径が2.5μmとなるように造粒する。
【0045】
得られた造粒粉を超硬合金からなる金型を用いて長径方向に180MPaの圧力で加圧して円筒形の成形体を作製した。こうして得られた成形体を1350〜1450℃で3時間焼成した。
【0046】
また、前記イットリア添加ジルコニア粉体100重量部に対して、バインダとしてパラフィンワックス、ポリメタクリル酸イソブチル、エチレン酢酸ビニル共重合体及びフタル酸ジオクチルを合計で13重量部加えた射出成形用原料を作製する。この原料を用い、射出成形により光ファイバ挿入孔を有したフェルール成形体を作製した。さらに成形体を450℃で48時間脱脂を行い、このようにして得られた成形体を1350〜1450℃で3時間焼成した。
【0047】
しかる後、得られた焼結体の外径を研磨加工し、長さ10.5mm、外径2.5mmの円柱体を得、次いで、YAGレーザによって長さ3mmの挿入孔を穿孔した。
【0048】
また、比較例として、射出成形により得た成形体を焼成した後、ダイヤモンドペーストによって前記同様な挿入孔を加工した試料(No.13)を用意した。
【0049】
各試料は固定強度の測定用に20個、粒径、溝の大きさなどの測定用に5個ずつの計25個ずつ作製した。
【0050】
そして、固定強度の測定のため、エポキシ接着剤であるエポテック353NDを挿入孔に充填した後、シングルモード用の光ファイバを挿入し、接着剤を固化させて接続した後、図2に示すように1対の光ファイバ用フェルールを光コネクタに組み込んで、長さ1.2mの光ファイバを有する1対のフェルールの突合せ部をお互いに接触させるように対向接続した各試料10組の光コネクタを用意した。これら光コネクタを湿度93%の環境下で、65℃にて3時間、25℃にて1時間、65℃にて3時間、−10℃で3時間と順に保持した後、25℃に戻る温度サイクルの負荷を与え、1サイクル終了の度に各対向接続部の接続損失の変動量をモニターし、合計10サイクルを行いその最大値を接続損失の変動量とした。
【0051】
また、結晶粒子の平均長さ、結晶粒径については、各試料を挿入孔の軸方向に対して垂直、及び平行に切断し、SEM観察によって測定した。表面粗さは、レーザ顕微鏡により挿入孔内壁の表面の凹凸の測定を行い、溝の部分の値を除いた数値の平均値を表面粗さ(Ra)とし、結晶粒子の平均長さ及び粒径については、インターセプト法を用いて測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から明らかなように、挿入孔の内壁に網目状の溝が形成されている本発明の試料(No.1〜11)は、接続損失変動量がすべての試料で0.1dB以下と非常に小さいことが判った。
【0054】
特に、挿入孔の表面粗さが0.2μm以下、内壁近傍の結晶粒子の平均長さAが1μm以下、平均長さBが1〜20μm、内部の結晶粒径が1μm以下の試料(No.1〜3、7、9〜10)は、接続損失の変動量が0.05dB以下と非常に小さいことが判った。
【0055】
これに対し、レーザ照射を行わなかったために、挿入孔の内壁に網目状の溝が形成されていない試料(No.12)は、接続損失変動量が0.3dB以上と3倍以上大きくなっていることが判った。
【0056】
【発明の効果】
本発明の光ファイバ用フェルールによれば、挿入孔内壁に溝を網目状に形成することから、該光ファイバ用フェルールの挿入孔に光ファイバを挿入保持する際、溝に接着剤が入り込み、アンカー効果によって光ファイバを強力に接着できるものである。
【0057】
また、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、挿入孔内壁の溝間の表面粗さRaが0.2μm以下であることから、光ファイバを挿入孔に強固に、かつ傷をつけることなく保持することができる。
【0058】
さらに、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、前記挿入孔の内壁近傍の結晶粒子が内壁表面での平均長さが1μm以下であり、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さが1〜20μmであることから、挿入孔内壁の溝の深さ、溝間の距離を調整し、挿入孔に光ファイバ心線を保持する際、より高いアンカー効果を得られるとともに、チッピング等が生じるのを防止することができる。
【0059】
またさらに、本発明の光ファイバ用フェルールによれば、前記挿入孔の内壁表面から垂直方向に30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることから、光ファイバ用フェルール自体を緻密体とし、機械的強度、耐候性の高い光ファイバ用フェルールを得ることができる。
【0060】
さらにまた、本発明の光ファイバ用フェルールの製造方法によれば、セラミックス部材にパルスレーザを照射し、その溶融過程により前記挿入孔を形成するとともに、該孔内壁に溶融層を残すことによって網目状の溝を加工して得られることから、挿入孔を形成すると同時にその内壁に網目状の溝を容易に形成することができる。また、挿入孔の位置精度が高いため単心並びに多心の光ファイバ用フェルールを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の光ファイバ用フェルールの一実施形態を示す断面図、(b)は同図(a)の光ファイバの挿入孔の内壁表面を示す拡大図、(c)は同図(a)の挿入孔の内壁近傍の結晶粒子を示す模式図である。
【図2】本発明の光ファイバ用フェルールを用いた光コネクタを示す断面図である。
【符号の説明】
1:光ファイバ用フェルール
2:挿入孔
3:溝
4:バックボディ
5:光ファイバ
Claims (5)
- 光ファイバの挿入孔を有し、セラミックスからなるフェルールであって、前記挿入孔の内壁には複数の溝が網目状に形成されているとともに、前記挿入孔の内壁近傍の結晶粒子は、内壁表面における平均長さが1μm以下、かつ前記内壁に対して垂直方向の平均長さが1〜20μmであり、前記結晶粒子同士の間隙が前記溝を構成していることを特徴とする光ファイバ用フェルール。
- 光ファイバの挿入孔を有し、セラミックスからなるフェルールであって、前記挿入孔の内壁には、レーザ照射により形成された溶融層が存在するとともに、前記溶融層の表面には固化時に生じた複数の溝が網目状に形成されていることを特徴とする光ファイバ用フェルール。
- 前記内壁における複数の溝間の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ用フェルール。
- 前記挿入孔の内壁表面から垂直方向に30μm以上離れた領域に存在する結晶粒子の平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバ用フェルール。
- セラミックス部材の所定位置にパルスレーザを照射し、その溶融過程によって挿入孔を形成するとともに、該挿入孔の内壁に溶融層を残すことによって、前記溶融層の表面に網目状の溝を生じさせることを特徴とする光ファイバ用フェルールの製造方法。
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