JP4688749B2 - ループパイル織編物 - Google Patents
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Description
さらに、本発明は、ふっくらとしていて、柔らかな、良好な風合を有し、しかもパイル糸からの原綿の抜け落ちのないループパイル織編物を製造するための素材(原反)を提供することである。
また、本発明者らは、パイル糸として、紡績糸、ゴム弾性を持たないフィラメント糸および水溶性糸からなるものを用いた場合には、フィラメント糸として用いる合成繊維、半合成繊維、絹などの天然繊維などの種類を選ぶことによって、ループパイル織編物におけるループパイルの風合や触感などを調整したり、変えたりできることを見出した。
(1) 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(a1)紡績糸と水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(a2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆であり;
(a3)複合撚糸の撚数が、紡績糸の撚数の1.3〜3倍である;並びに、
(a4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が98〜20質量および水溶性糸の割合が2〜80質量%である;
という上記の要件(a1)〜(a4)を備える複合撚糸(a)であることを特徴とするループパイル織編物[以下「ループパイル織編物(A0)」という]である。
(2) 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(b1)撚り方向を同じくする紡績糸の2本以上と水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(b2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆である;
(b3)複合撚糸の撚数が、2本以上の紡績糸のそれぞれの撚数のいずれに対しても、0.3〜2倍の範囲にある;並びに、
(b4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が98〜40質量および水溶性糸の割合が2〜60質量%である;
という上記の要件(b1)〜(b4)を備える複合撚糸(b)であることを特徴とするループパイル織編物[以下、「ループパイル織編物(B0)」という]である。
(3) 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(c1)紡績糸、ゴム弾性を持たないフィラメント糸および水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(c2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆である;
(c3)複合撚糸の撚数が、紡績糸の撚数の0.3〜2倍である;並びに、
(c4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が15〜70質量%、ゴム弾性を持たないフィラメント糸(以下「非ゴム弾性フィラメント糸」という)の割合が10〜60質量%および水溶性糸の割合が5〜75質量%である;
という上記の要件(c1)〜(c4)を備える複合撚糸(c)であることを特徴とするループパイル織編物[以下、「ループパイル織編物(C0)」という]である。
(4) ループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)、複合撚糸(c)における水溶性糸が、水溶性のフィラメント糸である前記(1)〜(3)のいずれかのループパイル織編物;
(5) ループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)、複合撚糸(c)における水溶性糸が、水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体よりなるフィラメント糸である前記(4)のループパイル織編物;
(6) 水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体よりなるフィラメント糸が、エチレンに由来する構造単位の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られるフィラメント糸である前記した(5)のループパイル織編物;および、
(7) ループパイル織編物における上記の複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)から形成されたループパイルの割合が、ループパイルを形成する当該複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)中の水溶性糸を水で溶解除去した後のループパイルの質量がループパイルの全質量に対して40質量%以上になる割合である前記(1)〜(6)のいずれかのループパイル織編物;
である。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかのループパイル織編物から、ループパイルを形成する複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去したことを特徴とするループパイル織編物である。
さらに、本発明は、
(9) 上記(1)に記載されている要件(a 1 )〜(a 4 )を備える複合撚糸(a)、上記(2)に記載されている要件(b 1 )〜(b 4 )を備える複合撚糸(b)、上記(3)に記載されている要件(c 1 )〜(c 4 )を備える複合撚糸(c)を熱処理した後に、当該熱処理後の複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)をパイル糸として用いてループパイル織編物を作製し、そのループパイル織編物からループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)中の水溶性糸を水で溶解除去することを特徴とするループパイル織編物の製造方法である。
本発明でパイル糸として用いている複合撚糸(a)〜(c)は、紡績糸と共に水溶性糸が存在するか、または紡績糸と共に水溶性糸および非ゴム弾性フィラメントが存在するために、毛羽が少なく、さらに水溶性糸および非ゴム弾性フィラメント糸が補強の役割を果たすことから、本発明による場合は、高速の織機や編機を使用して、糸切れなどのトラブルを発生することなく、当該複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物(A0)、ループパイル織編物(B0)およびループパイル織編物(C0)を高い生産性で円滑に製造することができる。
更に、本発明において、ループパイルを形成する複合撚糸(a)〜(c)として、水溶性糸が水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体よりなるフィラメント糸からなるものを用いた場合には、複合撚糸の撚数が紡績糸の撚数よりも高くて複合撚糸に強くトルクが発生していても、複合撚糸を熱処理して固定することでトルクを減ずることができ、それによって当該複合撚糸をループパイルとするループパイル織編物を良好な工程性で円滑に製造することができる。
ループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去して得られる本発明のループパイル織編物は、その優れた風合を活かして、タオル地、タオル類、衣類用途、寝装寝具などの用途に有効に使用することができる。
本発明のループパイル織編物(A0)[ループパイルを形成している複合撚糸(a)中の水溶性糸を水で溶解除去する前のループパイル織編物]では、ループパイルを形成している糸(パイル糸)の少なくとも一部が、上記の要件(a1)〜要件(a4)を備える複合撚糸(a)からなっている。
すなわち、本発明のループパイル織編物(A0)におけるループパイルの少なくとも一部を形成する複合撚糸(a)では、複合撚糸(a)の撚り方向(紡績糸と水溶性糸の2種類の糸を撚り合わせる際の撚り方向)(以下複合撚糸の撚りを「上撚」ということがある)が、複合撚糸(a)を構成する紡績糸の撚り方向(以下紡績糸の撚りを「下撚」ということがある)と逆になっていて、複合撚糸(a)(単位:回/m)が、紡績糸の撚数(単位:回/m)の1.3〜3倍である[上記の要件(a1)]ことが必要である。
また、本明細書でいう「複合撚糸の撚数」(上撚の撚数)とは、紡績糸と水溶性糸を撚り合わせたときの撚数、または紡績糸と非ゴム弾性フィラメント糸と水溶性糸を撚り合わせたときの撚数をいい、実際には撚糸工程時の設定撚数に準じた値となる。
それに対して、本発明のループパイル織編物(A0)におけるループパイルを形成する複合撚糸(a)では、上撚の撚数[複合撚糸(a)の撚数]の方を、下撚の撚数(紡績糸の撚数)を1.3〜3という特定の範囲にしている点で、上撚の撚数の方が下撚の撚数と同じであるかまたはそれよりも少ない従来技術と大きく相違する。
本発明のループパイル織編物(A0)では、そのループパイルを形成する複合撚糸(a)の上撚の撚数が下撚の撚数の1.3〜3倍であることにより、ループパイル織編物(A0)を水で処理してループパイルを形成している複合撚糸(a)中の水溶性糸を溶解除去したときに、水溶性糸が溶解除去された箇所に空隙が形成されてループパイルがふっくらとした、柔らかい風合になると共に、ループパイルを形成している残存紡績糸に実撚が残っているため、ループパイルを形成している紡績糸からの原綿の抜け落ちが防止される。
一方、ループパイルを形成する複合撚糸(a)における上撚の撚数が下撚の撚数の3倍を超えると、上撚をかける際の撚糸工程(複合撚糸を製造するための合撚工程)で糸切れなどのトラブルを生じて、複合撚糸の生産性の低下、得られた複合撚糸の強度低下、複合撚糸を用いての織編時の工程不良などを招き、更には複合撚糸のトルクが強くなり過ぎて、紡績糸と水溶性糸との合撚工程やループパイル織編物を製造する際の製編織工程での工程不良、生産性の低下などが生ずる。
本発明のループパイル織編物(A0)のループパイルを形成している複合撚糸(a)では、上撚の撚数が下撚の撚数の1.4〜3倍であることが好ましく、1.5〜2倍であることがより好ましい。
その際の水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる水溶性糸としては、後に詳述するように、エチレンに由来する構造単位(以下「エチレン単位」という)の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られる繊維からなる水溶性糸が特に好ましく用いられる。
複合撚糸(a)における紡績糸および水溶性糸の割合を前記範囲にすることによって、糸強力、撚の安定性などに優れる複合撚糸(a)を得ることができ、またループパイル織編物(A0)を製造する際の製編織性にも優れる。しかも、ループパイル織編物(A0)を水(温水、熱水)で処理して、ループパイルを形成している複合撚糸(a)中の水溶性糸を水で溶解除去する際に、水溶性糸の除去が良好に行われて、ふくらみがあって、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物を得ることができる[以下、ループパイル織編物(A0)を水(冷水、温水、熱水)で処理してループパイルを形成している複合撚糸(a)中の水溶性糸を溶解除去して得られるループパイル織編物を「ループパイル織編物(A1)」ということがある]。
ループパイル織編物(A0)において、ループパイルを形成するパイル糸に占める複合撚糸(a)の割合が少ないと、ループパイル織編物(A0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去しても、ふっくらとしていて、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物が得られにくくなる。
すなわち、ループパイル織編物(B0)のループパイルを形成する複合撚糸(b)は紡績糸2本以上と水溶性糸から構成されていて、複合撚糸(b)を構成する2本以上の紡績糸の撚り方向が同じであり、且つ複合撚糸(b)の撚り方向が該2本以上の紡績糸の撚り方向と逆になっている。
2本以上の紡績糸の撚り方向が同じであることにより、該2本以上の紡績糸と水溶性糸を紡績糸の撚り方向と逆の方向に撚り合わせた複合撚糸(b)では、全ての紡績糸が部分的にまたは完全に解撚されて元の紡績糸よりも長くなった状態になっているため、ループパイル織編物(B0)を水(冷水、温水、熱水)で処理してループパイル中の水溶性糸を溶解除去したときに、ふっくらとして、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物が得られる[以下、ループパイル織編物(B0)を水(温水、熱水)で処理してループパイルを形成している複合撚糸(b)中の水溶性糸を溶解除去して得られるループパイル織編物を「ループパイル織編物(B1)」ということがある]。
例えば、600回/m(Z撚)の紡績糸2本と水溶性糸を撚り合わせて(上撚りして)複合撚糸(b)を製造する場合は、該2本の紡績糸と水溶性糸を600回/m×(0.3〜2倍)=180〜1200回/mの撚数でS方向に撚り合わせて複合撚糸(b)にする。
また、例えば、500回/m(S撚)の紡績糸Dおよび800回/m(S撚)の紡績糸Eという撚数の異なる2本の紡績糸を水溶性糸とZ方向に撚り合わせて(上撚りして)複合撚糸(b)を製造する場合は、500回/m×(0.3〜2倍)=150〜1000回/mと、800回/m×(0.3〜2倍)=240〜1600回/mの共通した数値範囲である240〜1000回/mの範囲のZ撚をかけて複合撚糸(b)にする。
その際の水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる水溶性糸としては、エチレン単位の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られる繊維からなる水溶性糸が特に好ましく用いられる。
複合撚糸(b)における紡績糸および水溶性糸の割合を前記範囲にすることによって、製編織性、糸強力、撚の安定性などが良好になる。しかも、複合撚糸(b)をパイル糸として用いてループパイル織編物(B0)を製造し、当該ループパイル織編物のループパイルを形成している複合撚糸(b)中水溶性糸を水で溶解除去する際に、水溶性糸の除去が良好に行われて、ふくらみがあって、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物(B1)を得ることができる。
複合撚糸(b)では、水溶性糸の本数は1〜3本、特に1〜2本であることが撚糸機のクリル本数を減らせる点で、また複合撚糸(b)をパイル糸として用いて作製したループパイル織編物(B0)におけるループパイル中の水溶性糸の溶解除去の容易性などの点から好ましい。
ループパイル織編物(B0)において、ループパイルを形成するパイル糸に占める複合撚糸(b)の割合が少ないと、ループパイル織編物(B0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去しても、ふっくらとしていて、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物が得られにくくなる。
すなわち、本発明のループパイル織編物(C0)におけるループパイルの少なくとも一部を形成する複合撚糸(c)では、複合撚糸(c)の撚り方向(紡績糸、非ゴム弾性フィラメント糸および水溶性糸の3種類を撚り合わせた際の撚り方向)(上撚の方向)が、複合撚糸(b)を構成する紡績糸の撚り方向(下撚の方向)と逆になっている。
複合撚糸(c)の撚り方向(上撚の撚り方向)が紡績糸の撚り方向(下撚の撚り方向)と逆になっていることにより、複合撚糸(c)を製造するために上撚を行った際に、上撚が紡績糸の撚り(下撚)を多少解撚する方向に働き、前記解撚により紡績糸の糸長が多少長くなり、糸長が長くなった紡績糸が非ゴム弾性フィラメント糸や水溶性糸を覆った状態で撚糸が行われる。
上撚の撚数が下撚の撚数の0.3倍未満であると、撚の安定性が乏しくなり、得られる複合撚糸(c)に斑が発生して、強力などのバラツキ、毛羽抑え不足、紡績糸による非ゴム弾性フィラメント糸および水溶性糸への覆い不足などにより、複合撚糸(c)をパイル糸として用いてループパイル織編物を製造する際の製編織性が劣るものとなり易い。しかも、複合撚糸(c)を製造するための撚糸工程時に紡績糸の撚(下撚)の解撚が不十分になり、それに伴ってループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を溶解除去した際に、ふっくらとして、柔らかな、風合の良好なループパイル織編物が得られにくくなる。
一方、複合撚糸(c)において、上撚の撚数が下撚の2倍を超えると、複合撚糸(c)を製造する際の撚糸工程で糸切れなどのトラブルを生じて、複合撚糸が得られなくなったり、複合撚糸の生産性の低下、得られる複合撚糸の強度低下、複合撚糸をパイル糸として用いてループパイル織編物を製造する際の工程不良などを生じ、それに伴う織編物の生産性の低下などが生じ易くなる。
その際の水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる水溶性糸としては、エチレン単位の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られる繊維からなる水溶性糸が特に好ましく用いられる。
複合撚糸(c)を構成する3種類の糸の割合が前記範囲であることにより、糸強力に優れ、ループパイル織編物(C0)を製造する際の取り扱い性に優れる。しかも、ループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去したときに、ふっくらとし、柔らかで、風合に優れ、しかもループパイルからの原綿の抜け落ちのないループパイル織編物(C1)が得られる。
また、複合撚糸(c)において、水溶性糸の割合が少な過ぎると、ループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去して得られるループパイル織編物(C1)では、ループパイルは柔らかさのないものとなり、風合が低下し易い。
さらに、複合撚糸(c)における水溶性糸の割合が適当な範囲であっても、紡績糸の割合が多すぎ、その一方で非ゴム弾性フィラメント糸の割合が少なすぎると、ループパイルにおける原綿の抜け落ち、パイルの強度不足などが生ずることがある。
パイル糸として複合撚糸(c)を用いて得られるループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去して得られるループパイル織編物(C1)は、ループパイルが紡績糸および非ゴム弾性フィラメント糸から形成されていることにより、ループパイルが1本の紡績糸から形成されているループパイル織編物に比べて、ループパイルからの原綿の抜け落ちがより少なくなり、しかもループパイルに変化を持たせることができる。
ループパイル織編物(C0)において、ループパイルを形成するパイル糸に占める複合撚糸(c)の割合が少ないと、ループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去しても、ふっくらとしていて、柔らかな、風合に優れるループパイル織編物が得られにくくなる。
紡績糸の撚数は特に制限されないが、撚数をT(単位:回/2.54cm)、綿番手をS(単位:番手)とすると、K=T/√Sで表される撚係数Kが2〜4の紡績糸が、紡績糸の品質安定性、複合撚糸製造時の生産性、紡績糸の入手容易性などの点から好ましく用いられる。
紡績糸が双糸または3本以上の合撚糸である場合は、それらの紡績糸を製造した際の最後の撚りの撚方向が、双糸または合撚糸の製造に用いた単糸の撚方向と逆方向になっていること、また該最後の撚りの撚数(本発明でいう紡績糸の撚数;双糸または合撚糸を製造した際の撚数)が、双糸または合撚糸の製造に用いた単糸の撚数の0.3〜0.9倍であることが、撚糸の生産性、糸のハンドリング性、風合、紡績糸の入手容易性などの点から好ましい。
また、紡績糸の番手としては、綿番手5番〜200番のものが、複合撚糸を製造する際の工程性、紡績糸の入手の容易性、市場の要求などの点から好ましく用いられる。
特に、ループパイル織編物(A0)、ループパイル織編物(B0)およびループパイル織編物(C0)のループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および複合撚糸(c)を構成する水溶性糸としては、エチレン単位の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られる繊維からなる糸が好ましく用いられる。前記特定のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の繊維からなる糸を用いて製造した複合撚糸(a)、(b)および(c)は、取り扱い性に優れ、当該複合撚糸をパイル糸として用いて製造したループパイル織編物(A0)、(B0)および(C0)を水で処理してループパイル中の水溶性糸を溶解除去する際に、水溶性糸の溶解除去をより容易に且つ円滑に行うことができ、しかも複合撚糸(a)、(b)および(c)の原糸である水溶性糸自体の製造が容易である。
その理由は明確ではないが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を構成してエチレン−ビニルアルコール系共重合体の重合度が200〜500と低いために、重合度が一般に1500〜2500のポリビニルアルコールよりなる従来の水溶性ポリビニルアルコール繊維に比べて水溶解性が高く、しかも重合体鎖中にエチレン単位を有していることによりビニルアルコール単位中の水酸基間の結合や反応などが低減して、繊維の水に対する溶解性の低下が防止されることによるものと推測される。
繊維を形成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体の重合度は、250〜450であることがより好ましい。
ここで、本明細書における「エチレン−ビニルアルコール系共重合体の重合度」および「ポリビニルアルコールの重合度」は、いずれも、JIS K 6726によって求められる、重合体を再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から、下記の数式(I)により求められる重合度(P)をいう。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62) (I)
繊維を形成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン単位の含有割合は、7〜12モル%であることがより好ましい。
複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および複合撚糸(c)を構成する水溶性糸として好ましく用いられるエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維は、溶融紡糸により円滑に且つ簡単に製造することができ、かかる点、一般的に湿式紡糸または乾式紡糸により製造される従来の水溶性ポリビニルアルコール繊維と相違している。
捲縮糸を用いる場合は、ループパイル織編物(C0)の製編織の段階までは捲縮しておらず、ループパイル織編物(C0)を製造した後の熱処理や、ループパイル織編物(C0)におけるループパイル中の水溶性糸を溶解除去するための熱水処理時など捲縮を発現する潜在捲縮性の非ゴム弾性フィラメント糸を用いることが好ましい。
潜在捲縮性の非ゴム弾性フィラメント糸としては、従来から知られている加熱によって捲縮を発現する非ゴム弾性フィラメント糸のいずれもが使用でき、代表例としては融点の異なる2種類以上の熱可塑性重合体をサイドバイサイド型で複合させた複合繊維、紡糸条件を選ぶことによって繊維の断面に斑を生じさせた繊維などを挙げることができる。
複合撚糸(c)を構成する非ゴム弾性フィラメント糸を構成する各フィラメントの太さ(単繊維繊度)は特に制限されないが、ループパイル織編物(C0)を製造する際の複合撚糸(c)の取り扱い性、強度、得られるループパイル織編物の品質などの点から、非ゴム弾性フィラメント糸を構成する各フィラメントの単繊維繊度は、0.3〜11デシテックスであることが好ましく、0.5〜3.3デシテックスであることがより好ましい。非ゴム弾性フィラメント糸を構成する各フィラメントの単繊維繊度が小さい場合は、一般に水溶性糸を水で溶解除去した後のループパイル部分に柔軟性や繊細な風合が付与され、一方各フィラメントの単繊維繊度が大きい場合は、一般に水溶性糸を水で溶解除去した後のループパイル部分に張り腰感、ドライ感などが付与される。
本明細書でいう「パイル長」は、基布に形成されているループパイルの根元からループパイルの先端までの高さをいう。
また、ループパイル織編物(A0)、ループパイル織編物(B0)およびループパイル織編物(C0)におけるパイル密度も特に制限されないが、ループパイルが形成されている基布面1cm2当たり、ループパイルを10〜100個、特に20〜80個程度の数で有していることが好ましい。
ループパイル織編物(A0)、ループパイル織編物(B0)およびループパイル織編物(C0)は、基布の片面のみにループパイルを有していてもよいし、基布の両面にループパイルを有していてもよい。
また、ループパイル織編物(A0)、ループパイル織編物(B0)およびループパイル織編物(C0)の基布(地)は、織布または編布のいずれであってもよい。
ループパイル中の水溶性糸を水で溶解除去して得られる本発明のループパイル織編物(A1)、ループパイル織編物(B1)およびループパイル織編物(C1)を各種のタオルやタオル地などとして用いる場合は、複合撚糸を構成する紡績糸が綿紡績糸である複合撚糸(a)、複合撚糸(b)または複合撚糸(c)をパイル糸として用い、綿糸を縦糸および横糸として用いて基布を製織してループパイル織編物を製造することによって、吸湿性および吸水性に優れるループパイル織編物を得ることができる。
例えば、タオル織機、ラッセル機、シンカーパイル丸編機などを使用してループパイルを有する生地を直接製編織してもよいし、ダブル丸編機で複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)を用いて生地を製編し、その後の加工で複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去することで、ループパイルを有する生地にしてもよい。
ループパイルを形成している複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去する際の水の温度は、水溶性糸を構成する水溶性繊維の種類や水に対する溶解度、糸の形態や太さなどに応じて調節できる。
水溶性糸がエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維や水溶性ポリビニルアルコール系繊維から形成されている場合は、通常、温度80℃以上、特に90℃以上の水を用いて処理を行うと、ループパイルを形成している複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および複合撚糸(c)中の水溶性糸を短い時間で速やかに溶解除去することができる。
以下の各例において、最終的に得られたループパイル生地(ループパイル編地)の風合および原綿の抜け落ち(ループパイルを形成している紡績糸からの原綿の抜け落ち)の度合は次のようにして評価した。
各例(対照例1〜2、実施例1〜5、比較例1および参考例1)で最終的に得られたループパイル生地を手で触れて、以下の対照例1のループパイル生地の風合および対照例2のループパイル生地の風合をベースにして、以下の表1に示す評価基準にしたがってループパイル生地の風合を評価した。
(i) 以下の各例(対照例1〜2、実施例1〜5、比較例1および参考例1)で最終的に得られたループパイル生地から試験片(サイズ:経×緯=30cm×30cm)を採取し、その試験片を家庭用洗濯機(松下電器産業株式会社製「NA−V80」)に投入した後、洗剤なしで、“おまかせ”コースで1回処理した後、洗濯機から取り出した。
(ii) 上記(i)で洗濯機から取り出した試験片を、室温風乾で24時間乾燥した後、粘着テープ(積水化学工業株式会社製「再生PET布テープ:No.601S」)(幅×長さ=5cm×5cm)を、試験片のループパイル面に3N/25cm2の圧力下に押圧して接着させた後、手で粘着テープを試験片から剥がし、その接着−剥離操作を、試験片の同じ場所に対して合計で3回繰り返し、そのときに粘着テープに付着した原綿の量を目視により観察した。
(iii) 上記(ii)の結果を、同じ試験を行った対照例1の結果および対照例2の結果をベースにして以下の表2に示す評価基準にしたがって判定して、各例で最終的に得られたループパイル生地のループパイルを構成する紡績糸からの原綿の抜け落ち度合を評価した。
(1) 撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)1本と、水溶性糸[ポリビニルアルコールマルチフィラメント糸、56dtex、80℃の水に溶解(株式会社クラレ製「水溶性ビニロン」)]1本を、ダブルツイスター(村田機械社製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が550回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の0.92倍)。
(2) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸84質量%および水溶性糸16質量%からなっていた。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地は、上記の表1に示すように、ループパイル部分が極めてふっくらとしていて、柔らかくて、極めて良好な風合を有していた。
(6) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地から試験片を採取して、上記した方法で、家庭用洗濯機での洗濯後に原綿の抜け落ち度合(ループパイルを構成している紡績糸からの原綿の抜け落ち度合)を調べたところ、上記の表2に示すように、原綿の抜け落ちが極めて多かった。
(1) 撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)をパイル糸として用い、対照例1で使用したのと同じポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex)を地糸として用いて、対照例1で使用したのと同じシンカーパイル丸編機を使用して製編を行って、生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2)。
(2) 上記(1)で得られた乾燥後のループパイル編地は、上記の表1に示すように、ループパイル部分がふっくらとしておらず、硬くて、極めて不良な風合であった。
(3) 上記(1)で得られたループパイル編地から試験片を採取して、上記した方法で、家庭用洗濯機での洗濯後に原綿の抜け落ち度合(ループパイルを構成している紡績糸からの原綿の抜け落ち度合)を調べたところ、上記の表2に示すように、原綿の抜け落ちが極めて少なかった。
(1) 撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)1本と、対照例1で使用したのと同じ水溶性糸[ポリビニルアルコールマルチフィラメント糸、56dtex、80℃の水に溶解(株式会社クラレ製「水溶性ビニロン」)]1本を、ダブルツイスター(村田機械社製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が1000回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の1.67倍)。
(2) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸84質量%および水溶性糸16質量%からなっていた。
(3) 上記(1)で得られた複合撚糸をパイル糸として用いた以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は4点であり、ふっくらとしていて、柔らかで、良好な風合を有していた。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は4点であり、原綿の抜け落ちが少なかった。
(1) エチレン単位を10モル%の割合で含有する重合度300およびケン化度98.4モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を240℃で溶融紡糸した後、170℃で2.0倍に延伸して、エチレン−ビニルアルコール共重合体マルチフィラメント糸(56dtex)(80℃の水に溶解)を製造し、この糸を水溶性糸として用いた。
(2) 撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)1本と、上記(1)で製造した水溶性糸1本を、撚糸機(村田機械製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が1800回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の3.00倍)。その後、得られた複合撚糸を、真空セット機(ニッカム製「真空スチームセッター」)を使用して、水蒸気(80℃)で30分間熱処理した後、真空セット機から取り出した。
(3) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸84質量%および水溶性糸16質量%からなっていた。
(5) 上記(4)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(6) 上記(5)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は4点であり、ふっくらとしていて、柔らかで、良好な風合を有していた。
また、上記(5)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は5点であり、原綿の抜け落ちが極めて少なかった。
(1) 撚数が800回/m(Z撚)の木綿100%の40番手の紡績糸(都築紡績社製「TS40単糸」)2本と、対照例1で使用したのと同じ水溶性糸[ポリビニルアルコールマルチフィラメント糸、56dtex、80℃の水に溶解(株式会社クラレ製「水溶性ビニロン」)]1本を、ダブルツイスター(村田機械社製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が700回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の0.88倍)。
(2) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸84質量%および水溶性糸16質量%からなっていた。
(3) 上記(1)で得られた複合撚糸をパイル糸として用いた以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は4点であり、ふっくらとしていて、柔らかで、良好な風合を有していた。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は5点であり、原綿の抜け落ちが極めて少なかった。
(1) 撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)1本と、捲縮を有しないポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex、株式会社クラレ製「クラベラ糸」)1本と、対照例1で使用したのと同じ水溶性糸[ポリビニルアルコールマルチフィラメント糸、56dtex、80℃の水に溶解(株式会社クラレ製「水溶性ビニロン」)]1本を、ダブルツイスター(村田機械社製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が1000回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の1.67倍)。
(2) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸68質量%、ポリエステルマルチフィラメント糸19質量%および水溶性糸13質量%からなっていた。
(3) 上記(1)で得られた複合撚糸をパイル糸として用いた以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は4点であり、ふっくらとしていて、柔らかで、良好な風合を有していた。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は4点であり、原綿の抜け落ちが極めて少なかった。
(1) 実施例1の(1)で製造したのと同じ複合撚糸と、撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)を本数比1:1の割合でパイル糸として用い、それ以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2、ループパイルを形成する糸のうち、複合撚糸の割合=53質量%)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は3点であった。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は4点であり、原綿の抜け落ちが少なかった。
(1) 撚数が1500回/m(Z撚)の木綿100%の120番手の紡績糸[Royal Textile Mills Ltd.(インド)製「Royal 120」]1本と、対照例1で使用したのと同じ水溶性糸4本を、ダブルツイスター(村田機械社製「36M」)に供給して、撚数(上撚)が2500回/m(S撚)となるようにして撚り合わせて複合撚糸を製造した(複合撚糸の撚数=紡績糸の撚数の約1.67倍)。
(2) 上記(1)で得られた複合撚糸から所定長(1m)の糸を切り取って、試料糸とし、その試料糸の上撚を解除して、紡績糸と水溶性糸の2種類の糸に分離し、分離したそれぞれの糸の質量を測定し、その測定結果から複合撚糸におけるそれぞれの糸の割合を求めたところ、該複合撚糸は紡績糸18質量%および水溶性糸82質量%からなっていた。
(3) 上記(1)で得られた複合撚糸をパイル糸として用いた以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は2点であり、ふっくら感が足りずと、風合が不良であった。なお、この比較例1で得られたループパイル生地は、ループパイルを形成する糸(紡績糸)が少なく、やせた、貧弱な外観を有していた。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は4点であり、原綿の抜け落ちは少なかった。
(1) 実施例1の(1)で製造したのと同じ複合撚糸と、撚数が600回/m(Z撚)の木綿100%の20番手の紡績糸(都築紡績社製「TS20単糸」)を本数比1:2の割合でパイル糸として用い、それ以外は、対照例1の(3)と同様にして生地の一方の表面側にループパイルを有するループパイル編地(生機)を製造した(ループパイル長=2.8mm、ループパイルの密度=40個/cm2、ループパイルを形成する糸のうち、複合撚糸の割合=35質量%)。
(4) 上記(3)で得られたループパイル編地(生機)を、90℃の熱水中に30分間浸漬して(浴比=1:10)、ループパイル編地のループパイル中の水溶性糸を溶解除去した後、ループパイル編地を熱水中から取り出して、80℃で1回水洗し、150℃で乾燥した。
(5) 上記(4)で得られた乾燥後のループパイル編地の風合を上記した方法で評価したところ、評点は2点であった。
また、上記(4)で得られたループパイル編地におけるループパイルからの原綿の抜け落ち度合を上記した方法で調べたところは、評点は5点であり、原綿の抜け落ちが極めて少なかった。
Claims (9)
- 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(a1)紡績糸と水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(a2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆であり;
(a3)複合撚糸の撚数が、紡績糸の撚数の1.3〜3倍である;並びに、
(a4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が98〜20質量および水溶性糸の割合が2〜80質量%である;
という上記の要件(a1)〜(a4)を備える複合撚糸(a)であることを特徴とするループパイル織編物。 - 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(b1)撚り方向を同じくする紡績糸の2本以上と水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(b2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆である;
(b3)複合撚糸の撚数が、2本以上の紡績糸のそれぞれの撚数のいずれに対しても、0.3〜2倍の範囲にある;並びに、
(b4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が98〜40質量および水溶性糸の割合が2〜60質量%である;
という上記の要件(b1)〜(b4)を備える複合撚糸(b)であることを特徴とするループパイル織編物。 - 複合撚糸よりなるループパイルを有するループパイル織編物であって、ループパイルを形成する前記複合撚糸が、
(c1)紡績糸、ゴム弾性を持たないフィラメント糸および水溶性糸を撚り合わせた複合撚糸である;
(c2)複合撚糸の撚り方向が、紡績糸の撚り方向と逆である;
(c3)複合撚糸の撚数が、紡績糸の撚数の0.3〜2倍である;並びに、
(c4)複合撚糸の質量に基づいて、紡績糸の割合が15〜70質量%、ゴム弾性を持たないフィラメント糸の割合が10〜60質量%および水溶性糸の割合が5〜75質量%である;
という上記の要件(c1)〜(c4)を備える複合撚糸(c)であることを特徴とするループパイル織編物。 - ループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)、複合撚糸(c)における水溶性糸が、水溶性のフィラメント糸である請求項1〜3のいずれか1項に記載のループパイル織編物。
- ループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)、複合撚糸(c)における水溶性糸が、水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体よりなるフィラメント糸である請求項4に記載のループパイル織編物。
- 水溶性のエチレン−ビニルアルコール系共重合体よりなるフィラメント糸が、エチレンに由来する構造単位の含有割合が5〜15モル%である重合度200〜500のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を溶融紡糸して得られるフィラメント糸である請求項5に記載のループパイル織編物。
- ループパイル織編物における上記の複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)から形成されたループパイルの割合が、ループパイルを形成する当該複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)中の水溶性糸を水で溶解除去した後のループパイルの質量がループパイルの全質量に対して40質量%以上になる割合である請求項1〜6のいずれか1項に記載のループパイル織編物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のループパイル織編物から、ループパイルを形成する複合撚糸中の水溶性糸を水で溶解除去したことを特徴とするループパイル織編物。
- 請求項1に記載されている要件(a 1 )〜(a 4 )を備える複合撚糸(a)、請求項2に記載されている要件(b 1 )〜(b 4 )を備える複合撚糸(b)、請求項3に記載されている要件(c 1 )〜(c 4 )を備える複合撚糸(c)を熱処理した後に、当該熱処理後の複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)をパイル糸として用いてループパイル織編物を作製し、そのループパイル織編物からループパイルを形成する複合撚糸(a)、複合撚糸(b)および/または複合撚糸(c)中の水溶性糸を水で溶解除去することを特徴とするループパイル織編物の製造方法。
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