JP4686970B2 - 血管塞栓材料 - Google Patents

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Description

本発明は、生体内において血管を塞ぎ、血流の閉塞に使用する血管塞栓材料に関する。
詳しくは、天然および/または合成ポリマーにより血管内部を塞ぎ、血流の閉塞に使用する塞栓形成材料であって、最終的に生体内で分解され、分解成分が代謝または体外へ排出可能な、生体内に残存しない血管塞栓材料に関する。
さらに詳しくは、特定の水膨潤性、分解性、形状を有する血管塞栓材料または特定のコポリマーからなる血管塞栓材料に関する。
外科的手術に伴う切開に先立って、出血を最小限にする目的で、塞栓材料を血管内に注入することにより、確実かつ迅速に止血することができることが知られている。また、出血防止の目的の他に、切除不能な腫瘍に対し、止血により栄養を遮断する動脈塞栓術が知られている。また、制癌剤と血管塞栓材料とを組み合わせて投与して腫瘍内での抗癌剤濃度を高く維持する化学塞栓療法が知られている。
カテーテルおよびその操作手法の発達により、適当な塞栓材料を塞栓しようとする部位へ選択的に正確に送り込むことが可能となった。このような血管内塞栓材料として、従来、液体材料または固体材料が使用されてきた。
液体材料としては、有機溶媒そのものや、モノマーあるいはポリマーを有機溶媒に溶解した溶液が知られている。代表的な例としては、エタノール(例えば非特許文献1参照)、シアノアクリレート(例えば非特許文献2参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体の溶液(例えば特許文献1参照)が挙げられる。これら液体材料は、血管の径や、血管の分岐状態および血管の形状とは無関係に、目的とする区域の血管内をほぼ完全に充填できるという利点がある。しかし、これらは低粘度の液体であるために、注入部位での濃度コントロールが難しいという問題があった。更に、遠位部の抹消にまで流出したり静脈側に漏出する場合があるという問題もあった。また、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を使用しているため生体への影響が懸念される。
一方、固体材料としては金属材料、有機合成材料および天然物由来材料がある。金属材料の代表的な例としては、Ni-Ti製コイルやステント(例えば非特許文献3参照)が知られている。有機合成材料の代表例としては、ポリビニルアルコール粒子(例えば非特許文献4参照)、アクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体粒子(例えば特許文献2参照)、ゼラチン被覆架橋ポリアクリレート粒子(例えば特許文献3、4参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体フォーム(例えば特許文献1、5、6参照)が知られている。天然物由来材料としては架橋デンプン粒子(例えば非特許文献5参照)、架橋ゼラチン粒子(例えば特許文献7、8参照)、アルギン酸ゲル(例えば特許文献9、10参照)が知られている。これら固体材料は留置あるいは注入時の扱いが容易で操作性に優れるという利点があるが、複雑な血管形状に対応しきれないという問題があった。
特に、粒子の形状を有する血管塞栓材料には以下のような問題点がある。
(1)目的とする血管の部位で塞栓できないことがある。
(2)カテーテル内で凝集して、カテーテルを詰まらせることがある。
(3)目的とする血管までの途中にある正常な血管で凝集して、患部に到達させることができないことがある。
(4)血流量を低下させるものの、完全に塞栓できない場合がある。
(5)生体内で非分解性の材料を使用した場合、必ずしも永久的な血流の遮断を必要としなくても、分解・吸収されずに長期にわたり体内に残存する。
生分解性または生体吸収性の材料を使用した例として、ポリ乳酸粒子(非特許文献6参照)、ゼラチンスポンジ(特許文献11参照)、架橋デンプン粒子(非特許文献5参照)が知られている。これらの材料は生体内で加水分解するか酵素により分解されるという特徴を有する。しかしこれらの材料は上記の(1)〜(4)の問題があった。また、デンプン粒子は血液中のアミラーゼによって分の時間的オーダーで加水分解されるため、長期にわたる止血、塞栓には不適当であった。さらに、生分解性のポリ乳酸またはポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマーからなる、特定の薬剤を含有する血管塞栓材料が開示されているが(特許文献12参照)、これとても上記の(1)〜(4)の問題があった。
ポリエチレングリコール(以下、PEGと記載)と、ポリ乳酸(以下、PLAと記載)またはポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマー(以下PLGAと記載)からなるブロックコポリマーとして、PLA−PEG、PLA−PEG−PLA、PLGA−PEG−PLGAなどの基材ポリマーに薬剤を混合して徐放させるという医薬・製薬用途への適用が開示されている(特許文献13参照)。
特表2000−502321号公報(第1−20頁) 特開平06−56676号公報(第1−8頁) 米国特許第5635215号明細書 特表平6−508139号公報(第1−6頁) 特表2000−505045号公報(第1−25頁) 特表2000−506514号公報(第1−25頁) 特開昭60−20934号公報(第1−4頁) 特開昭60−222046号公報(第1−5頁) 特許第3103368号公報(第1−5頁) 特開平6−329542号公報(第1−4頁) 国際公開第98/03203号公報 特開平5−969号公報 特公平5−17245号公報 コウダ・エムら(Koda M. et al.)キャンサー(Cancer)、2001;92(6):1516−24 エヌビーシーエー・トライアル・インベスティゲーターズ(The n-BCA Trial Investigators)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol)、2002;23(5):748−55 アンソニー・エムら(Anthony M. et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol).2000;21(8):1523−31 ダーディン・シー・ピーら(Dardeyn C.P. et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol).1995;16:1335−1343 クマダ・ティーら(Kumada T. et al.)、ニホンリンショウ(日本臨床) 2001;59 Suppl 6:539−44 ウイット・シーら(Witte C. et al.)、ヨーロッピーアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス・アンド・バイオファーマシューティクス(Eur J Pharm BioPhar)2001;51:171−181
本発明の目的は、カテーテル内や目的外の血管内において凝集詰まりを起こすことなく目的部位を確実に閉塞することができ、塞栓部位や塞栓環境によらず特定の期間後に血流閉塞状態から解放され、材料の分解成分が代謝または体外へ排出可能である血管塞栓材料、血管塞栓剤および血管の塞栓方法を提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1)30%以上の水膨潤率を有し、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有し、平均粒子径が50μm以上である略球状の粒子の形状を有する血管塞栓材料。
(2)37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることを特徴とする(1)に記載の血管塞栓材料。
(3)水膨潤率が100%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の血管塞栓材料。
(4)水不溶性の水溶性ポリマー系コポリマーを含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(5)水不溶性の水溶性ポリマー系コポリマーが水不溶性の多糖系コポリマー、水不溶性のデキストラン系コポリマー、水不溶性のポリビニルアルコール系コポリマーおよび水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーから選ばれる少なくとも1種のコポリマーを含有することを特徴とする(4)に記載の血管塞栓材料。
(6)飽和含水状態でのフイルムの引張弾性率が4〜400MPaであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(7)粒子径分布幅が平均粒子径±100μmであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(8)水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーを含むことを特徴とする血管塞栓材料。
(9)水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーが、ポリエチレングリコール誘導体と生分解性ポリマーとが化学的に結合した構造のコポリマーであることを特徴とする(8)に記載の血管塞栓材料。
(10)水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーが、ポリエチレングリコール誘導体の水酸基に生分解性ポリマーが化学的に結合した構造のコポリマーであることを特徴とする(8)または(9)に記載の血管塞栓材料。
(11)水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーが、L−乳酸またはL−ラクチドから合成されるポリマーを生分解性ポリマーの構造として含むポリエチレングリコール系コポリマーと、D−乳酸またはD−ラクチドから合成されるポリマーを生分解性ポリマーの構造として含むポリエチレングリコール系コポリマーとの混合物であることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(12)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーを構成するポリエチレングリコール誘導体が、3以上の水酸基を有する化合物とポリエチレングリコールとが化学的に結合した構造を有するものであることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(13)水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーの重量平均分子量が3,000〜100,000であり、ポリエチレングリコール系コポリマーに存在するポリエチレングリコール誘導体の重量平均分子量が2,000〜50,000であることを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(14)水膨潤率が100%以上であることを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(15)37℃において形状が粒子状であることを特徴とする(8)〜(14)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(16)平均粒子径が50〜2,000μmであることを特徴とする(8)〜(15)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(17)粒子径分布幅が平均粒子径±100μmの範囲にあることを特徴とする(8)〜(16)のいずれかに記載の血管塞栓用材料。
(18)37℃において形状が略球形であることを特徴とする(8)〜(17)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(19)37℃のリン酸緩衝生理食塩水に浸漬し、28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることを特徴とする(8)〜(18)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(20)精製水、生理食塩水、水溶性X線造影剤の少なくともいずれかに対して、膨潤性を有することを特徴とする(8)〜(19)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(21)水溶性X線造影剤を材料内に保持することを特徴とする(8)〜(20)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(22)血管の形状にあわせて材料形状が変形することにより血流閉塞可能な、塞栓時の形状に柔軟性を有することを特徴とする(8)〜(21)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(23)(1)〜(22)のいずれかに記載の血管塞栓材料を生理食塩水に分散したことを特徴とする血管塞栓剤。
本発明の血管塞栓材料は、カテーテル内や目的外の血管内において凝集詰まりを起こすことなく目的部位を確実に閉塞することができ、塞栓部位や塞栓環境によらず所定期間経過後に血流閉塞状態から解放され、その後は分解により血流閉塞状態を解放し、その分解成分は代謝し、または体外へ排出可能である。
本発明の血管塞栓材料および血管塞栓剤は、容易に目的とする血管の部分に送達することができ、血管を傷つけることなく腫瘍、病変、出血部位の近辺において血管形状に追従して変形して確実に塞栓し、血流を閉塞させうると共に、目的達成後は分解消失することを意図した治療用の材料である。このような意図を満たす材料を鋭意検討した結果、柔軟性、分解性、形状(粒状、略球形、粒子径、粒子径分布の幅)、素材ポリマー組成のそれぞれの観点から、好ましい態様を見出すに至ったものである。
本発明の血管塞栓用材料は、柔軟性を有するものであることが好ましい。柔軟性を有する材料として、含水・膨潤する材料が好ましく使用できる。含水・膨潤するとは、材料が含水可能であり、材料が含水することにより膨潤し、重量や体積が増すことを言う。粒子であれば、その材料の水への膨潤率を柔軟性の指標とすることができる。また粒子状やその他の形状の材料であっても、材料を構成する化合物または組成物をフイルムとし、その飽和含水状態での含水率や弾性率を、柔軟性の指標とすることができる。
本発明では、血管塞栓材料が粒子の場合、水による膨潤率は以下のとおり測定できる。
精製水に12時間程度浸漬した膨潤状態の粒子の直径をR、乾燥時のそれをR0とすると、水膨潤率(%)=(R3−R0 3)/R0 3×100にしたがって算出することができる。(R3とはRの3乗、R0 3とはR0の3乗を意味する。)顕微鏡で粒子径の変化を観察し、10個の粒子の体積変化の平均値を水膨潤率とすることができる。ここで、膨潤状態とは23℃の雰囲気におかれた精製水中に12時間程度浸漬させ、十分に水を含んだ状態をいい、乾燥とは予め風乾した後、さらに12時間程度真空乾燥を行い水分を除去することを指す。なお、本発明の実施例では(株)キーエンス社製の“超深度形状測定顕微鏡VK−8500”を粒子径の直接観察に使用した。
血管を傷つけず、血管の内部形状に追従して変形できる柔軟性という観点から、水膨潤率は30%以上が好ましく、100%以上が特に好ましい。水膨潤率が小さい場合、マイクロカテーテルの内径よりも小さな粒子であっても粒子がマイクロカテーテルを通過しない。また、水膨潤率は700%以下が好ましく、500%以下がより好ましい。
また本発明では、含水率はキャストフイルムを用いて以下のとおり測定できる。
まず血管塞栓用粒子または血管塞栓用材料を構成する化合物または組成物を、それが溶解可能な有機溶媒に溶解し、溶液を得る。溶液を内径85mmのシャーレに展開し、乾燥させて厚さ約30μmのフイルムを得る。
精製水に12時間以上浸漬した飽和含水状態のフイルムの重量Wと乾燥状態のフイルムの重量W0の重量変化の測定から得られる含水率も水膨潤性の指標とすることができ、下式にしたがって算出することができる。
含水率(%)=(W−W0)/W0×100
血管を傷つけず、血管形状に追従して変形できる柔軟性という意味から、フイルムの含水率は30%以上が好ましく、100%以上が特に好ましい。飽和含水状態のフイルムの含水率が低い場合、マイクロカテーテルの内径よりも小さな粒子であってもその粒子はマイクロカテーテルを通過しにくくなる。
また本発明では飽和含水状態のフイルムおよび乾燥状態のフイルムの弾性率および引張伸度は以下のとおり測定できる。フイルムは上述の方法で調製できる。
試験環境 :試験室温度23℃、試験室湿度50%
試験片形状 :短冊形(7.5mm×80mm)
チャック間距離:20mm
引張速度 :10mm/分
これらの測定条件以外はJIS−K7161(1994)に記載の方法にしたがって測定した。なお、本発明の実施例では(株)オリエンテック社製の“RTM−100”を引張試験機として使用した。
血管を傷つけず、血管形状に追従して変形できる柔軟性という観点から、飽和含水状態におけるフイルムの引張弾性率が1,500MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が4〜400MPaであることがさらに好ましい。飽和含水状態でのフイルムの引張弾性率が乾燥状態でのフイルムの引張弾性率の60%以下であることが特に好ましい。加えて、シリンジから血管への注入時にかかる高圧においても材料が破損しないだけの耐変形性の獲得という意味で、飽和含水状態でのフイルムの引張伸度が100%以上であることが特に好ましい。
本発明の血管塞栓材料は生体内で分解性を有することが好ましい。生体内での分解性の指標として37℃のリン酸緩衝生理食塩水中における粒子の重量減少により規定することができる。本発明の血管塞栓材料は、37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることが好ましい。また、浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の50%以下であることがさらに好ましい。リン酸緩衝生理食塩水としては、例えばナカライテスク社製のリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4;10倍濃縮)を10倍希釈して使用することができる。本発明の実施例では、試験管中に血管塞栓材料約20mg(乾燥重量W0)を10mLのリン酸緩衝生理食塩水中に分散させ、試験管をローテーターで2秒で1回転の速度で回転し、試験官の内容物を振とうさせながら、37℃の環境下に置いた。所定期間経過後、水溶性成分をマイクロピペットで除去した後、精製水で3回水洗・水溶性成分除去を繰り返した後、風乾・真空乾燥し、重量Wを測定した。
本発明の血管塞栓材料は37℃において粒子状、さらに略球形の粒子状であることが好ましい。また、平均粒子径や粒子径の分布幅が後述のとおりの特定の範囲にあることがさらに好ましい。
粒子状の血管塞栓材料を調製するには以下の方法が例示される。
血管塞栓材料の素材となるポリマー(詳細は後述する)を、例えばジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、イソプロピルエーテルなどに溶解し、溶液とする。これを界面活性剤、保護コロイド剤などを含有する水相に分散し、公知のO/W型、W/O/W型液中乾燥法、それに準じた方法、またはスプレードライ法などの方法により粒子状の血管塞栓材料とすることができる。
別の方法としては、血管塞栓材料の原料となる材料をメタノール、アセトン、テトラヒドロフランなどの水混和性の有機溶媒などに溶解し、溶液を得る。溶液を構成する有機溶媒を水、または界面活性剤を含有する水に置換していく方法により粒子状の血管塞栓材料を得ることができる。ここで用いる界面活性剤、保護コロイド剤としては安定な油/水エマルジョンを形成しうるものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えばアニオン性界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、デスオキシコール酸など)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが例示される。これらの中から、複数を組み合わせて使用してもよい。
また、界面活性剤、保護コロイド剤として、水溶性のA−B型ブロックコポリマーであって、Aは生分解性ポリマー、Bはメトキシポリエチレングリコールからなるコポリマーを好ましく使用することができる。これら界面活性剤、保護コロイド剤の中で、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンが特に好ましく使用できる。
界面活性剤、保護コロイド剤の好ましい濃度は、水溶液として0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜10重量%の中から選ばれる。
このようにして製造された粒子は一般的に略球形の粒子であるが、一部に不定形の粒子が混じることがある。このような粒子を取り除く目的で、または分級の目的で、適当な目開きのふるいを複数使用して目的の平均粒子径および目的の粒子径分布の粒子を得ることができる。この場合、ふるいにかける粒子は、乾燥粒子であっても水浸漬状態の湿潤粒子であってもよい。
本発明の血管塞栓材料が粒子状の場合、その粒子径およびその分布の測定には、電気抵抗法または光散乱法が使用できる。
電気抵抗法を使用する手段としては、サイエンティフィック・インスツルメント社製コールター・マルチサイザーIIまたはIIIが使用できる。光散乱法による手段としてはリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”が使用できる。
前者の手段は生理食塩水中において測定を行うため、血管内に近い環境下において測定することができる。後者は、精製水中において測定を行う。いずれの場合も、平均粒子径として体積平均の値を採用する。
本発明の血管塞栓材料の平均粒子径としては、50μm以上、さらに60μm以上が好まい。一方2,000μm以下、さらに1,500μm以下であることが好ましい。平均粒子径が低い場合、目的とする血管以外の部位を塞栓することがある。また、塞栓の対象となる実際の血管径を考慮すると、上述の下限値と上限値範囲にあることが好ましい。さらに塞栓の対象となる血管径に合わせて、平均粒子径を適宜選択することが好ましい。
本発明の血管塞栓材料の粒子径はより確実な塞栓を実現する目的から粒子径が揃っていることが好ましい。例えば粒子径の分布幅が平均粒子径±100μmの範囲内であることが好ましく、平均粒子径±50μmの範囲内であることがさらに好ましい。なお、粒子径の分布幅とは、体積換算の平均粒子径D50に対して、D1〜D99の粒子径の範囲を言う。
本発明の血管塞栓材料は、略球形粒子であることが好ましい。略球形粒子であれば血管において完全な閉塞が可能となるからである。
本発明の血管塞栓材料は天然ポリマー、人工的に合成された合成ポリマーであって水溶性のポリマーを原料の1つとして含み、水不溶性成分の共重合のよるブロックコポリマー化、架橋、変性などの方法で水不溶化したものが使用される。本発明の水溶性ポリマーとしては、アガロース、ヒアルロン酸、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、大豆蛋白、アルギン酸塩、ガム、大豆レシチン、ペクチン酸、テンプン、寒天、デキストリンマンナンなどの天然ポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、水溶性ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、アクリルおよび/またはメタクリルコポリマー、ポリ(ビニルメチルエーテル−co−無水マレイン酸)、ビニルピロリドン系コポリマーなどの合成ポリマーを挙げることができる。このうち、デンプン、デキストランなどの多糖、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、ポリアクリル酸コポリマーなどの合成ポリマーが好ましく使用できる。
まず、水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーについて説明する。
水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーとしては、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、多分岐型ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール誘導体を原料成分として得られるブロックコポリマー、2種以上のブロックコポリマー同士が物理的相互作用を有するステレオコンプレックス形成性ブロックコポリマーなどであって、水不溶性のものを指す。シクロデキストリンとポリエチレングリコールから形成されるポリロタキサンのようにポリエチレングリコールまたはその誘導体と物理的に相互作用することにより水不溶化するものであってもよい。多分岐型ポリエチレングリコールとしては、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールなどの3以上の水酸基を有する化合物とポリエチレングリコールが化学的に結合した構造の化合物が示される。具体的には、3分岐型の“サンブライトGL”、4分岐型の“サンブライトPTE”、8分岐型の“サンブライトHGEO”(いずれも日本油脂(株)製)が好ましく使用できる。もともとポリエチレングリコールは水溶性であるから、ここで言う水不溶化とはポリエチレングリコールの構造以外の構造の寄与により、ポリエチレングリコールの構造を含むポリエチレングリコール系ポリマーの全体が水中に溶出しないことを指す。具体的には、23℃において当該物質を水中に浸漬した時に30分以内に水に溶解しないことを言う。
ポリエチレングリコール系コポリマーに含まれるポリエチレングリコールの構造部分の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量として2,000〜50,000の範囲が好ましく使用できる。この範囲であると、血管塞栓材料の均一な生分解性が得られ、また生体内で分解したコポリマーから生成するポリエチレングリコールが体外に排出されにくくなることもないからである。またポリエチレングリコール系コポリマーの重量平均分子量としては、3,000〜100,000の範囲が好ましい。
水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーとしては、ポリエチレングリコール誘導体(以下、ブロックBと記載する)と生分解性ポリマー(以下、ブロックAと記載する)が化学的に結合した構造のコポリマーであることが好ましい。さらにブロックBの水酸基にブロックAが化学的に結合した構造のコポリマーであることがさらに好ましい。ブロックの結合形態としては、以下の構造のものが好ましく使用できる。
ポリエチレングリコールの片末端の水酸基に生分解性ポリマーが化学的に結合したコポリマー(A−B型ブロックコポリマー)、
ポリエチレングリコールの両末端の水酸基に生分解性ポリマーが化学的に結合したコポリマー(A−B−A型ブロックコポリマー)、
ポリエチレングリコールと生分解性ポリマーが交互に結合した((A−B)n型マルチブッロクコポリマー)、
ポリエチレングリコール誘導体としてグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールなどの3以上の水酸基を有する化合物とポリエチレングリコールが化学的に結合した多分岐型ポリエチレングリコールの3以上の水酸基に生分解性ポリマーが化学的に結合した構造の多分岐型コポリマー(An−B型ブロックコポリマー)。
また、ポリエチレングリコール誘導体の重量平均分子量が2,000〜50,000、上述のブロックコポリマーの重量平均分子量が3,000〜100,000であるコポリマーが好ましい。
A−B−A型ブロックコポリマー、A−B型ブロックコポリマー、An−B型ブロックコポリマー、(A−B)n型マルチブッロクコポリマーについて述べると、平均分子量が小さいとコポリマーがゲル状となりやすく、血管内に挿入するときに、カテーテルや血管に粘着し、血管内の狙った部位を塞栓することができない場合があるからである。一方、平均分子量が大きいと材料の生体内での分解にかかる時間が長くなる場合があるからである。
水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーの平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
本発明の実施例では以下の方法を用いた。
カラム:TSKゲルXLシリーズ(内径7.8mm×長さ30cm;東ソー社製)
溶離液:クロロホルム、カラム温度:35℃、流速:1.0ml/分
検出方法:屈折率(RI8010屈折率計;東ソー社製)
検量線:ポリスチレン標準サンプル平均分子量1,110,000、707,000、397,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,490、5,870、2,500および1,050、500の平均分子量の各ポリスチレン標準サンプルを使用して作成したものを使用。
データ処理:Class Vp データ解析ワークステーション(島津製作所製)
水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーとしては、GPCによって測定されたピークより算出される数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比、すなわちMw/Mnの比が2以下の分子量分布が狭いコポリマーであることが均一な分解性発現の点から好ましい。
本発明の水不溶性ポリエチレングリコール系コポリマーにおいて、A−B−A型ブロックコポリマーの製造方法を例示する。ポリエチレングリコールは常法によりエチレンオキサイドを重合して合成するか、市販品を入手して得る。ポリエチレングリコールの平均分子量は特に限定されるものではないが、上述のとおり2,000〜50,000が好ましい。平均分子量が特定されたポリエチレングリコールとして、“マクロゴール”(三洋化成工業社製)または“サンブライト”(日本油脂社製)の販売名で市販されているものが好ましく使用される。エチレンオキサイドの開環重合法により合成する場合には、合成したポリエチレングリコールの分子量分布が狭いことが好ましい。
次に、ポリエチレングリコール(ブロックB)と後述する生分解性ポリマー(ブロックA)の原料(例えば、乳酸、グリコール酸等の単量体またはラクチド、グリコリド等の環状二量体)との共重合を、後述する適当な触媒を用いて行う。例えば、乳酸、グリコール酸などのヒドロキシカルボン酸から重合する場合には縮合重合法が、ラクチド、グリコリドなどの環状化合物から重合する場合には開環重合法が好ましく用いられる。生成したA−B−A型コポリマーは分別沈殿法で精製する。すなわち、ブロックAおよびブロックBの構造が、それぞれポリマーとして単独で存在するとした場合、それぞれのポリマーが溶解する有機溶媒(以下、このような溶媒を良溶媒という)に、得られたA−B−A型コポリマーを溶解する。この溶液を撹拌しながら、その中にブロックAの構造を有するポリマーおよびブロックBの構造を有するポリマーに対して、いずれか一方は溶解するが、他方は溶解しない有機溶媒(以下、このような溶媒を貧溶媒という)を滴下する。そして、生成した沈殿物を系外に取り出す操作を繰り返すことにより、分子量分布の狭い共重合体、すなわち、Mw/Mnの比の値の小さなA−B−A型コポリマーを製造することができる。
貧溶媒を滴下し沈殿が生成した後の白濁物の温度を変化させて、一度沈殿物を溶解させた後に再び元の温度にゆっくりと戻して沈殿を生成させることにより、分別精度を上げることもできる。
前記分別沈殿法に使用する良溶媒としては、ポリマーによって適当に決定されるが、例えば、テトラヒドロフラン、ハロゲン系有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)、アセトン、メタノールまたはこれらの混合溶媒を例示することができる。
良溶媒の使用量は、原料の仕込量や共重合組成により異なるが、通常コポリマー溶液の濃度として、1〜50重量%になるような量、好ましくは1〜25重量%になるような量である。
前記分別沈殿法に使用する貧溶媒としては、ポリマーによって適当に決定されるがアルコール系や炭化水素系の有機溶媒が好ましい。
前記縮合重合法、開環重合法は、乾燥空気あるいは乾燥窒素気流中、撹拌翼を備えた重合槽中に、原料である所定の平均分子量のポリエチレングリコール誘導体と生分解性ポリマーの原料を投入し、加熱して混合物を触媒とともに撹拌することにより得られる。その他の方法として、ベント付き二軸混練押出機またはそれに類似する撹拌および送り機能を有する装置を用いて、生分解性ポリマーの原料および触媒を溶融状態で撹拌、混合、脱気しつつ、生成したA−B−A型コポリマーを連続的に取り出すことにより重合を遂行することもできる。
生分解性ポリマーの原料としては以下の化合物から選択される1種または2種以上が例示される。
α−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシカプリン酸等)、α−ヒドロキシ酸の環状二量体(例えば、ラクチド、グリコリド等)、ヒドロキシジカルボン酸(例えば、リンゴ酸等)、環状エステルであるトリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキサノン、1,4−ジオキセパン−7−オン。
α−ヒドロキシ酸の環状二量体の中では、ラクチド、グリコリドが好ましい。ヒドロキシジカルボン酸の中では、リンゴ酸が好ましい。生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とグリコール酸(またはグリコリド)の組み合わせが好ましく、乳酸とグリコール酸の重量比は100:0〜50:50が好ましい。また、生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とε−カプロラクトンの組み合わせが好ましく、乳酸とε−カプロラクトンの重量比は100:0〜40:60が好ましい。なお、上記の内、乳酸やラクチドのように分子内に光学活性を有する化合物の場合は、D体、L体、D,L体、D体とL体の混合物のいずれであってもよい。
A−B型、A−B−A型、AnB型(n>3)、(A−B)n型のコポリマーを構成する好ましい組合せとして、生分解性ブロックAはポリ乳酸、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリ(乳酸/ε−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド/ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸/ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド/ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸/トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド/トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコール酸/トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)が好ましく使用できる。また、例えばポリ(L−ラクチド)−PEGとポリ(D−ラクチド)−PEGとの組合せのように、L体のラクチド構造を含むポリエチレングリコール系ポリマーとD体のラクチド構造を含むポリエチレングリコール系ポリマーとはブレンドによりステレオコンプレックスを形成し熱安定性に優れるため、好ましく使用できる。ここで、「/」は共重合成分であることを示す。
重合に使用する触媒としては、通常のポリエステルの重合に使用される触媒であれば特に限定されない。例えば、塩化スズ等のハロゲン化スズ、2−エチルヘキサン酸スズ等の有機酸スズ、酸化ジブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ(ポリマー)などの有機スズである。その他に、ジエチル亜鉛、乳酸亜鉛、乳酸鉄、ジメチルアルミニウム、カルシウムハイドライド、ブチルリチウムやt−ブトキシカリウム等の有機アルカリ金属化合物、金属ポルフィリン錯体またはジエチルアルミニウムメトキシド等の金属アルコキシド等が例示される。
以上のように水不溶性のポリエチレングリコール系コポリマーについて説明してきたが、これを用いた血管塞栓材料には、必要に応じて、又は本発明の効果を損なわない範囲において、当該成分以外のポリマーが含まれていても良い。
本発明において、粒子の形状を有する血管塞栓材料を実際に治療に用いる場合、粒子を水系の液体、好ましくは生理食塩水に分散した状態の塞栓剤として用いることが好ましい。生体の皮膚を通じて、大腿動脈を二重針で穿刺後、内針を抜去し、外筒を血管内腔に留置した後、これを通してガイドワイヤーを血管内に挿入し、これを軸としてガイディングカテーテルおよびマイクロカテーテルを血管内に挿入する。X線透視画像を見ながら、例えば肝動脈、胃十二指腸動脈、腸管膜動脈、胃動脈、子宮動脈、内頸動脈、交通動脈、脳底動脈、大脳動脈、小脳動脈などの目的の血管までマイクロカテーテルの先端を到達させた後に、粒子を分散した塞栓剤を入れたシリンジをカテーテルに取り付けて注入する。目的の血管をX線透視下で観察しやすいように造影剤を塞栓剤に混合する方法が好ましく用いられる。
本発明の塞栓剤は、そのまま、または使用時適当な分散媒あるいはヨウ化ケシ油などの造影剤に分散して使用することができる。造影剤としては、公知のものを用いることができ、イオン性造影剤であっても非イオン性造影剤であってもよい。具体的には、“イオパミロン”(シェーリングAG社製)、“ヘキサブリックス”(栄研化学(株)社製)、“オムニパーク”(第一製薬(株)社製)、“ウログラフィン”(シェーリングAG社製)、“イオメロン”(エーザイ(株)社製)などを挙げることができる。本発明の塞栓剤と造影剤を使用前に混合してから所定の部位へ注入することができる。水膨潤性の高い場合、造影剤の一部が含水とともに塞栓材料内部に保持されて造影性を発現する。分散媒としては、分散剤(例えばポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖など)を注射用蒸留水に溶解したもの、あるいはゴマ油、コーン油などの植物油が挙げられる。分散された塞栓材料は、適当な動脈から腫瘍支配動脈に血管造影剤でモニターしながら挿入されたカテーテルを用いて、投与される。また、この塞栓剤には通常注射剤に用いられる防腐剤、安定化剤、等張化材、可溶化剤、分散剤、賦形剤などを添加してもよい。
本発明の塞栓剤は、油性造影剤であるヨウ化ケシ油(リピオドール・ウルトラフルイド)などと併用してもよい。また、ヨウ化ケシ油と制癌剤であるスマンクス、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、アドレアマイシン、塩酸イリノテカン、フルオロウラシル、塩酸エピルビシン、シスプラチン、ビンブラスチンなどを併用して使用してもよい。
本発明の血管塞栓材料は、薬効成分を含まなくても、本発明の目的を達成することができる。ただ、さらなる効果の付与の目的で、薬効成分を含むことができる。薬効成分としては、薬効が知られるものであれば特に限定されるものではないが、制癌剤(例えば、スマンクス、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、アドレアマイシン、塩酸イリノテカン、フルオロウラシル、塩酸エピルビシン、シスプラチン、パクリタキセル、ロイコボリンカルシウム、ビンブラスチン、アルトレタミン、ブレオマイシン、塩酸ドキソルビシン、ピシバニール、クレスチン、レンチナン、シクロホスファミド、チオテパ、テガフール、硫酸ビンブラスチン、塩酸ピラルビシン)、血管新生阻害剤、ステロイド系ホルモン剤、肝臓疾患薬、痛風治療薬、糖尿病薬、循環器用薬、高脂血症薬、気管支拡張薬、抗アレルギー薬、消化器官用薬、抗精神薬、化学療法剤、抗酸化剤、ペプチド系薬物、蛋白系薬物(例えば、インターフェロン)、などを挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
<実施例1>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)40.3gと脱水済みの平均分子量20,000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)17.3gを140℃で溶融・混合後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し、180℃で反応させて、A−B−A型コポリマー(PLA−PEG−PLA)を得た。得られたコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノ−ル中へ滴下して、白色沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は約70,000であった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約330μm、分布幅が平均粒子径±40μmであった。(株)キーエンス社製の超深度形状測定顕微鏡“VK−8500”により粒子径の直接観察を行い、精製水に浸漬した直径約330μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率130%の値を得た。
また、上記精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフイルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率81%、引張弾性率184MPa、引張伸度240%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は230MPaであった。
まず、カテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。さらに、少量の生理食塩水を注入した後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
以上から、粒子径の揃った、含水・膨潤により柔軟な粒子を使用することにより、マイクロカテーテル(内径約680μmのカテーテル)内を粒子が凝集詰まりを起こすことなく通過した。一方、血管モデルとしての細径カテーテル(内径約280μmのカテーテル)においては、確実な塞栓を行うことができた。また、含水により粒子が膨潤しているため、柔軟で血管を傷つけ難く、血管形状に追随して変形し、より完全な塞栓が期待できる。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)(ナカライテスク(株)社製)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ75%であった。
<比較例1>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)40.3g、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを加え、140℃で反応させてポリ(L−ラクチド)を得た。得られたポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノ−ル中へ滴下して、白色沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は約70,000であった。
得られたポリマーを用いて、実施例1と同様の方法でポリ(L−ラクチド)の球形粒子分散液を得た。生理食塩水中における体積平均粒子径は約300μm、分布は平均粒子径±40μmであった。また、顕微鏡による観察から、飽和含水状態と乾燥状態における粒子径の変化は観察できず、水膨潤率は0%と認定した。
また、上記精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフイルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率2%、引張弾性率1,570MPa、引張伸度4%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は1,550MPaであった。
このポリ(L−ラクチド)の球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。一部に先端部を通過した粒子があったが、ほとんどの粒子はマイクロカテーテルを通過できなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ98%であった。
水膨潤性がないものであり、かつポリエチレングリコール系コポリマーを含有しない本比較例の血管塞栓材料の粒子では、粒子がカテーテルや血管内で付着・凝集しやすいためか、マイクロカテーテルの内径よりも小さな粒子であっても粒子がマイクロカテーテルを通過しなかった。
<実施例2>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド23.1gとε−カプロラクトン9.1g、平均分子量8000のポリエチレングリコール(脱水済み)23.1gを混合し、140℃で溶融・混合後、ジオクタン酸スズ8.1mgを添加し、180℃で反応させて、A−B型コポリマー(P(LA/CL)−PEG)を得た。得られたコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノ−ル中へ滴下して、白色沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は約22,000であった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、ナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子分散液を得た。粒度分布測定から、体積平均粒子径約100μm、分布が平均粒子径±40μmであった。精製水に浸漬した直径約100μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率37%の値を得た。
また、実施例1と同様の方法で、含水率40%、引張弾性率47MPa、引張伸度15%、の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は200MPaであった。
ネンブタールで麻酔した10週令のラットの大腿静脈に24Gの留置針を挿入した後、粒子60mgを生理食塩水1mLに分散した球形粒子分散液を注入した。2週間後に肺の外観の観察、組織切片の作製を行った。4匹のラットにそれぞれ球形粒子分散液の注入を行い、組織切片を観察をしたところ、4匹全てに肺梗塞が観察された。
<実施例3>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)21.6g、グリコリド(ピュラック・バイオ・ケム社製)5.8gと脱水済みの平均分子量20,000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)28.8gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(L−ラクチド/グリコリド)−ポリエチレングリコール−ポリ(L−ラクチド/グリコリド)のコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は42,000であった。
得られた精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率215%、引張弾性率7MPa、引張伸度は156%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は200MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径350μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約350μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は188%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、40%であった。
また、上記ナイロンメッシュによる分画により、生理食塩水中における体積平均粒子径約90μm、粒径分布幅が±50μmの球形粒子分散液を得た。ついで、ネンブタールで麻酔した10週令のラットの大腿静脈に24Gの留置針を挿入した後、粒子60mgを生理食塩水1mLに分散させた球形粒子分散液を注入した。2週間後に肺の外観観察、組織切片の作製を行った。4匹のラットにそれぞれ球形粒子分散液の注入を行い、組織切片を観察したところ、4匹全てに肺梗塞が観察された。
<実施例4>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)19.2g、グリコリド(ピュラック・バイオ・ケム社製)9.6gと脱水済みの平均分子量20000のメトキシポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)28.8gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(L−ラクチド/グリコリド)−ポリエチレングリコールのコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は48,000であった。
得られた精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率310%、引張弾性率6MPa、引張伸度は9%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は380MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径360μm、分布が平均粒子径±30μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約360μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は246%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、35%であった。
<実施例5>
窒素気流下においてフラスコにD,L−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)23.1g、グリコリド(ピュラック・バイオ・ケム社製)11.5gと脱水済みの平均分子量20000の4分岐型ポリエチレングリコール誘導体“サンブライトPTE−20000”(日本油脂(株)製)23.1gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(D,L−ラクチド/グリコリド)×4−ポリエチレングリコールのコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は62,000であった。
得られた精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率330%、引張弾性率4MPa、引張伸度は45%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は25MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径360μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約350μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は251%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、40%であった。
<実施例6>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)34.6gと脱水済みの平均分子量20,000の8分岐型ポリエチレングリコール誘導体“サンブライトHGEO−20000”(日本油脂(株)製)23.1gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(L−ラクチド)×8−ポリエチレングリコールの構造を有するコポリマーLを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は65000であった。
窒素気流下においてフラスコにD−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)34.6gと脱水済みの平均分子量20,000の8分岐型ポリエチレングリコール誘導体“HGEO−20000”(日本油脂(株)製)23.1gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(D−ラクチド)×8−ポリエチレングリコールの構造を有するコポリマーDを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は65,000であった。
精製コポリマーLの5重量%ジクロロメタン溶液と精製コポリマーDの5重量%ジクロロメタン溶液を1:1の重量の割合で混合したブレンド溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。セイコーインスツルメント(株)製示差走査熱量計“DSC6200”を用いてキャストフイルムの熱特性を測定したところ、コポリマーLのポリ(L−ラクチド)に由来する融解ピークが148℃、コポリマーDのポリ(D−ラクチド)に由来する融解ピークが148℃であったのに対して、コポリマーLとコポリマーDのブレンド物の融解ピークは198℃と約50℃上昇しており、148℃にはピークが見られなかった。このことからブレンド物はステレオコンプレックスを形成していると判断した。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率123%、引張弾性率21MPa、引張伸度は12%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は100MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径340μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約340μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は152%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、43%であった。
<実施例7>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)30.3g、グリコリド(ピュラック・バイオ・ケム社製)10.0gと脱水済みの平均分子量20000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)17.3gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(ラクチド/グリコリド)−ポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド/グリコリド)のコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は72,000であった。
得られた精製コポリマーと実施例4で得られた精製コポリマーを重量比で9:1の割合で混合し、5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率223%、引張弾性率40MPa、引張伸度は100%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は90MPaであった。
上記混合コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径350μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約350μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は210%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、55%であった。
<実施例8>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)38.9g、グリコリド(ピュラック・バイオ・ケム社製)13.0gと脱水済みの平均分子量9,000〜10,000のポリビニルアルコール(80%加水分解;アルドリッチ社製)5.8gを混合し、180℃で溶解・混合させた後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(L−ラクチド/グリコリド)−ポリビニルアルコールのコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は86,000であった。
得られた精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率48%、引張弾性率380MPa、引張伸度は33%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は770MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径320μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約320μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は35%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、63%であった。
<実施例9>
窒素気流下においてフラスコにD,L−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)56.0g、脱水済みの平均分子量35,000〜40,000のデキストラン(アイ・シー・エヌ バイオメディカル社製)1.7gを混合し、180℃で溶解・混合させた後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ(D,L−ラクチド)−デキストランのコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は95000であった。
得られた精製コポリマーの5重量%ジクロロメタン溶液をシャーレに展開し、膜厚約30μmのキャストフィルムを得た。24時間精製水中に浸漬したフイルムを用いて、含水率32%、引張弾性率350MPa、引張伸度は25%の値を得た。なお、乾燥状態のキャストフイルムの引張弾性率は920MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬して体積平均粒子径330μm、分布が平均粒子径±40μmの球形粒子分散液を得た。精製水に浸漬した直径約330μmの粒子10個の水膨潤率の測定から、水膨潤率は37%の値を得た。
上記球形粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1,400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、残存する球形粒子は全く観察されなかった。
次に、血管モデルとしての細径カテーテルに対する塞栓について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストン・サイエンティフィック)社製カテーテルSPINNAKER 1.5F(スピネーカー;全長約1,650mm、先端部の長さ150mm、先端部内径約280μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。先端部を通過した粒子は見られなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、67%であった。

Claims (16)

  1. ポリビニルアルコール、酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、メトキシポリエチレングリコール、多分岐型ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群から選択される水溶性ポリマーと、ポリ乳酸、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ポリ(ラクチド/グリコリド)、ポリ(乳酸/ε−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド/ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸/ε−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド/ε−カプロラクトン)、ポリ(乳酸/トリメチレンカーボネート)、ポリ(ラクチド/トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコール酸/トリメチレンカーボネート)及びポリ(グリコリド/トリメチレンカーボネート)からなる群から選択される生分解性ポリマーと、が化学的に結合したコポリマーを含有し、
    30%以上の水膨潤率を有し、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有し、平均粒子径が50μm以上である球状の粒子の形状を有する血管塞栓材料。
  2. 37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の血管塞栓材料。
  3. 前記水膨潤率が100%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血管塞栓材料。
  4. 飽和含水状態でのフイルムの引張弾性率が4〜400MPaであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  5. 粒子径分布幅が平均粒子径±100μmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  6. 前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコールである、請求項1〜5のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  7. 前記生分解性ポリマーが、前記ポリエチレングリコールの片末端の水酸基に化学的に結合している、請求項6記載の血管塞栓材料。
  8. 前記生分解性ポリマーが、前記ポリエチレングリコールの両末端の水酸基に化学的に結合している、請求項6記載の血管塞栓材料。
  9. 前記水溶性ポリマーは、多分岐型ポリエチレングリコールである、請求項1〜5のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  10. 前記生分解性ポリマーが、前記多分岐型ポリエチレングリコールの3以上の水酸基に化学的に結合している、請求項9記載の血管塞栓材料。
  11. 前記コポリマーの重量平均分子量が3,000〜100,000であり、前記コポリマーに存在する前記水溶性ポリマーの重量平均分子量が2,000〜50,000であることを特徴とする請求項〜1のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  12. 平均粒子径が50〜2,000μmであることを特徴とする請求項〜1のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  13. 精製水、生理食塩水又は造影剤に対して、膨潤性を有することを特徴とする請求項〜1のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  14. 影剤を材料内に保持することを特徴とする請求項13のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  15. 血管の形状にあわせて材料形状が変形することにより血流閉塞可能な、塞栓時の形状に柔軟性を有することを特徴とする請求項14のいずれか一項記載の血管塞栓材料。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項記載の血管塞栓材料を生理食塩水に分散したことを特徴とする血管塞栓剤。
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