JP2010162063A - 塞栓材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】血管,血管瘤,又は血管奇形を含む、血流を伴う組織又は器官に用いる塞栓材であって、下記の(1)及び(2)の性質を有する多孔体を構成成分として含むことを特徴とする、塞栓材である。
(1)主たる構成成分が、水溶性高分子である。
(2)生理食塩水による膨潤率が、質量ベースで2500%以上。
【選択図】なし
Description
特に、脳動脈瘤や大動脈瘤の破裂は、くも膜下出血や、脳血栓,即死の原因ともなるため、それを除去又は消滅することが好ましい。
1)外科的に患部を切り開き、瘤の根本を金属製のクリップで閉塞し、瘤を壊死・脱離させる、いわゆるクリッピングと呼ばれる方法
2)血管の内側から、ステント(管腔内移植片)や金属コイルを詰めることによって、瘤内を器質化する、いわゆる血管内治療
等が、主に行われている。
2)の場合に、閉塞が不十分になる原因としては、瘤内部に詰めるいわゆる塞栓材として、コイルを用いるため、瘤内へのコイルの充填率を上げるには、高価なコイルを大量に必要とする他、コイルの構造上、瘤内の充填率には限界があること等が挙げられる。
血管,血管瘤,又は血管奇形を含む、血流を伴う組織又は器官に用いる塞栓材であって、下記の(1)及び(2)の性質を有する多孔体を構成成分として含むことを特徴とする、塞栓材。
(1)主たる構成成分が、水溶性高分子である。
(2)生理食塩水による膨潤率が、質量ベースで2500%以上である。
圧縮法によるヤング率が、5kPa以下であることを特徴とする、第一の発明に記載の塞栓材。
押しつけ法による圧縮率が、30%以下であることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載の塞栓材。
下記(A)の条件下で測定した吸水時間が、5秒以下であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれかに記載の塞栓材。
(A)1cm3の多孔体を、100mlの生理食塩水上に落とした時間をスタートとし、吸水して完全に多孔体が膨らむまでの時間
(1)の水溶性高分子が、コラーゲン,ゼラチン,ヒアルロン酸からなる群から選択される、少なくとも1以上の水溶性高分子であることを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれかに記載の塞栓材。
血管瘤が動脈瘤であることを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれかに記載の塞栓材。
尚、本発明の塞栓材は、カテーテルにより血管,血管瘤,又は血管奇形を含む、血流を伴う組織又は器官等の患部に移送するため、動脈瘤等の、逆流防止弁の無い組織,器官の治療において、特に有効である。
本発明の塞栓材は、下記の(1)及び(2)の性質を有する多孔体を構成成分として含むことを特徴とするものである。
(2)生理食塩水による膨潤率が、質量ベースで2500%以上である。
(多孔体の構造)
本発明の塞栓材である多孔体とは、血液を吸収することのできる連通孔を有する構造物であり、その孔の形状に制限は無く、例えば、長繊維及び/又は短繊維からなる繊維塊等の綿状物、スポンジのようなものが挙げられるが、繊維塊が、毛細管現象等によって、血液を吸収する速度が速い点で好ましい。
本発明の多孔体の、主たる構成成分は、水溶性高分子である。
「主たる構成成分」とは、質量ベースで、全構成成分中の、おおよそ60%以上,好ましくは80%以上,更に好ましくは90%以上,特に好ましくは95%以上を占める構成成分を意味する。
尚、鮭皮コラーゲン(SC)は、井原水産(株)製のアテロ化マリンコラーゲン(水溶液),牛皮コラーゲン(BC)は、KOKEN(株)製のAteloCell(水溶液,スポンジ(多孔体(繊維塊))),ブタコラーゲンは、新田ゼラチン製のCellmatrix(水溶液,スポンジ(多孔体(繊維塊)))等として、水溶液,パウダー等種々の形態で購入することができる。
(1)膨潤率
本発明の塞栓材に用いられる多孔体は、生理食塩水による膨潤率が、質量ベースで2500%以上であることが必要であり、好ましくは、3000%以上,より好ましくは4000%以上である。
2500%以上の膨潤率を達成することで、患部に送り届けた多孔体の内部に、空洞が残る恐れが無く、より完全な塞栓を達成することができ、瘤の再発等の血流の再通による弊害を防止することができるからである。
尚、この膨潤率は、短時間で達成できる程好ましく、後述の(4)の吸水時間内に完全に膨潤することが好ましい。
塞栓材が、血液が凝固し始めるスピードより速く膨潤する程、実際の使用に於いて十分な膨潤率が達成できるからである。
具体的には、膨潤前の重量を基準に、膨潤率を算出する。
{(膨潤後の重量−膨潤前の重量)/膨潤前の重量}×100=膨潤率(%)
このような膨潤率を有する多孔体は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)等の架橋剤を用い、水溶性高分子の種類,濃度(例えば0.1〜10質量%程度,好ましくは0.5〜5質量%),架橋時の溶媒(70%エタノールや、4MのNaCl水溶液等)等を、適宜調整することによって、製造することができる。
本発明の塞栓材に用いられる多孔体は、下記の測定方法によるヤング率が、5kPa以下であることが好ましく、より好ましくは、3kPa以下である。
(測定方法)
Development of a photocurable gelatin-based gelation material for application to periodontal regeneration (Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry Volume 199, Issues 2-3, 25 September 2008, Pages 255-260)
尚、この測定は、(株)アクシム社の精密計測システムで実施することができる。
本発明の塞栓材に用いられる多孔体は、押しつけ法による圧縮率が、30%以下であることが好ましく、より好ましくは、15%以下である。
圧縮率が高い(圧縮され難い)と、本発明の塞栓材を、患部(血管,血管瘤,又は血管奇形等)に届けるのに用いるカテーテル内に挿入することが困難となるからである。
本発明において、圧縮率とは、1cm3の試料片に対して、1cm2あたり1kgの重りを1分間乗せて圧縮した後の試料の厚さを、荷重前の試料の厚さで除した値を100倍したもの,つまり圧縮後の高さの比率(%)を意味する。
厚さで評価するのは、本発明の多孔体に適した多孔体は、圧縮率が低く、あまり面積が変化しないため、体積変化と厚さ変化が、それほど変わらないと考えられるからである。
本発明の塞栓材に用いられる多孔体は、下記(A)の条件下で測定した吸水時間が、5秒以下であることが好ましく、更に好ましくは3秒以下である。
(A)1cm3の多孔体を、上記の方法で一旦圧縮させ、それを100mlの生理食塩水上に落とした時間をスタートとし、吸水して完全に元の多孔体の大きさにまで膨らむまでの時間
本発明の塞栓材を主に構成する多孔体は、一般的な多孔体の製造方法によって製造することができるが、例えば、繊維塊の場合、以下のようにして製造することができる。
本発明の多孔体を用いて塞栓する対象は、血管,血管瘤,又は血管奇形を含む、血流を伴う組織又は器官である。
ここで言う血管には、動脈,静脈の他、癌等の腫瘍の栄養血管等が含まれる。
これらの組織又は器官のいずれに対しても、本発明の塞栓材は有効であるが、実際の治療においては、塞栓材は、カテーテルで患部に届けられることが多いため、途中の血管等に弁が無く、多孔体を患部に届ける際に、カテーテルで、弁を傷つける恐れが無く、またカテーテルが通り易いという点で、本発明の塞栓材の使用は、動脈部の塞栓等に特に有用である。
本発明の塞栓材は、圧縮して、カテーテル内に挿入し、その後、ガイドワイヤーによる押し出し等によって患部内に送り込む等の、公知の方法で行うことができる。
1)凍結乾燥したコラーゲン繊維塊の重量(10±1mgの範囲内の細片とする)を測定する。
2)コラーゲンスポンジを100mlの生理食塩水に1時間入れる。
3)膨潤後の繊維塊重量を測定する。
4)膨潤前の重量を基準に、膨潤率を算出する。
{(膨潤後の重量−膨潤前の重量)/膨潤前の重量}×100=膨潤率(%)
Development of a photocurable gelatin-based gelation material for application to periodontal regeneration (Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry Volume 199, Issues 2-3, 25 September 2008, Pages 255-260)に記載の方法で測定した。
具体的には、(株)アクシム社の精密計測システムで実施した。
尚、下記数式中の記号は、次のものを表す。
r0:接触子半径(m)
P:荷重(g)
δ:進入量(m)
κ:バネ定数
G:ずれ弾性率
E:ヤング率(kPa)
また、νは0.5とした。
1cm3の試料片に対して、1cm2あたり1kgの重りを1分間乗せて圧縮した後の試料の厚さを測定した。
そして、その厚さを、荷重前の試料の厚さで除した値を100倍したもの,つまり圧縮後の厚さの比率(%)で評価した。
1cm3の多孔体を、一旦上記に記載の方法で圧縮させ、100mlの生理食塩水上に落とした時間をスタートとし、吸水して完全に多孔体が膨らむまでの時間を測定し、吸水時間とした。
指で圧縮した1cm3の各多孔体を、5mlの血液中に加え5分経過後に取り出してホルマリン固定した後、病理組織標本を作成する常法に従ってパラフィン包埋し、薄切り切片を作成し、その切片を顕微鏡で観察し、血液凝固状態を確認した。
被験物である多孔体を、指で丸く圧縮し、5Fr血管造影用のカテーテルを用い、ビーグル犬の正常腎臓動脈内に注入した。
注入前,注入直後,及び注入5分後の血管造影像と、注入1ヶ月後の腎動脈の腎臓流入部の組織切片の顕微鏡写真によって、血流の閉塞性を評価した。
本発明の塞栓材を、下記の方法で、製造した。
尚、架橋剤として、EDCを用い、水溶性高分子の種類,濃度,架橋時の溶媒(70%エタノール又は4MのNaCl水溶液)等を変更することによって、膨潤率の異なる多孔体(繊維塊)からなる塞栓材を製造した。
1)原料となるコラーゲン水溶液の各々1mlずつを、48ウェルプレート(IWAKI製,tissue culture用)に添加し、−70℃で凍結を行った。
2)2日間、凍結乾燥を行った。
3)架橋剤として、1%のEDC(和光純薬製)及び表1に記載の各溶媒を含む、架橋剤溶液を準備した。
4)上記の架橋剤溶液を、1)で凍結乾燥した各繊維塊に1mlずつ添加し、4℃で24時間静置した。
5)超純水で5回以上洗浄し、再度、凍結乾燥を行った。
上記のコラーゲン多孔体の場合に倣って行った。
但し、3)、4)の工程として、1)の時点で、各濃度のゼラチン含有水溶液に1%濃度となるようにEDCを加え、24時間放置した。
上記のようにして製造した多孔体(繊維塊)からなる、実施例及び比較例の塞栓材の各々について、上述の(1)〜(4)の物性試験を行った結果を、併せて表1に記載する。
0.1,0.5,又は1%ゼラチン水溶液:GELATIN TYPE A、MP Biomedicals, LLC
0.5,1.0,1.5,2.0,又は3.0%ブタコラーゲン水溶液:コラーゲンBM,新田ゼラチン
0.5,1,1.5%鮭皮コラーゲン(SC)水溶液(pH3):井原水産(株)
次に、実施例及び比較例の各塞栓材(多孔体(繊維塊))を用い、上述の(5)の血液凝固性確認試験を行った。結果を、図1〜図16に示す。
この空洞は、塞栓したい部位の器質化の遅延を引き起こす原因ともなる。
このような不完全な塞栓は、血流の再通を引き起こし、患部が血管瘤であった場合には、再瘤化,患部が腫瘍の栄養血管であった場合には、腫瘍の成長再開等の引き金になる可能性がある。
実施例3の塞栓材(サケコラーゲン多孔体(繊維塊))を用い、上記(6)の血管塞栓効果確認試験を行った。
これらの各実施例及び比較例の結果から、本発明の塞栓材であれば、患部を確実に器質化せしめ、瘤の再発や腫瘍の再成長等が殆ど起こらないと考えられる。
Claims (6)
- 血管,血管瘤,又は血管奇形を含む、血流を伴う組織又は器官に用いる塞栓材であって、下記の(1)及び(2)の性質を有する多孔体を構成成分として含むことを特徴とする、塞栓材。
(1)主たる構成成分が、水溶性高分子である。
(2)生理食塩水による膨潤率が、質量ベースで2500%以上である。 - 圧縮法によるヤング率が、5kPa以下であることを特徴とする、請求項1記載の塞栓材。
- 押しつけ法による圧縮率が、30%以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の塞栓材。
- 下記(A)の条件下で測定した吸水時間が、5秒以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の塞栓材。
(A)1cm3の多孔体を、100mlの生理食塩水上に落とした時間をスタートとし、吸水して完全に多孔体が膨らむまでの時間 - (1)の水溶性高分子が、コラーゲン,ゼラチン,ヒアルロン酸からなる群から選択される、少なくとも1以上の水溶性高分子であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の塞栓材。
- 血管瘤が動脈瘤であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の塞栓材。
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