JP2004313759A - 血管塞栓材料 - Google Patents

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Megumi Nakanishi
恵 中西
Kenichi Tabata
憲一 田畑
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Abstract

【課題】
血管内部を塞ぎ、血流の閉塞に使用する塞栓形成材料であって、最終的に生体内で分解され、分解成分が代謝または体外へ排出可能な、生体内に残存しない血管塞栓材料を提供する。
【解決手段】
飽和含水状態でのフィルム引張弾性率が1500MPa以下の生分解性ポリマー、または生分解性ポリマーに水溶性ポリマーを化学的に結合したコポリマーを使用した血管塞栓材料。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生体内において血管を塞ぎ、血流の閉塞に使用する塞栓形成材料に関する。
さらに詳しくは、飽和含水状態でのフィルム引張弾性率が1500MPa以下の生分解性ポリマー、または生分解性ポリマーに水溶性ポリマーを化学的に結合したコポリマーにより血管内部を塞ぎ、血流の閉塞に使用する塞栓形成材料であって、最終的に生体内で分解され、分解成分が代謝または体外へ排出可能な、生体内に残存しない血管塞栓材料に関する。
肝臓などの臓器の手術に伴う切開に先立って、出血を最小限にする目的で、塞栓材料を血管内に注入することにより、確実かつ迅速に止血することができる。また、出血防止の他に、切除不能な腫瘍に対し、止血により栄養を遮断する動脈塞栓術、さらには抗癌剤と血管塞栓材料とを組み合わせて投与して腫瘍内での抗癌剤濃度を高く維持する化学塞栓療法が有効な療法として知られている。このような出血時における血管の閉塞、血流制御、腫瘍への血液供給の遮断などを目的として、血管塞栓材料が使用されている。
カテーテルおよびその操作手法の発達により、適当な塞栓材料を塞栓しようとする部位へ選択的に正確に送り込むことが可能となった。このような血管内塞栓形成材料としては、ポリマー粒子、ポリマーゲル、金属コイルが知られている。
血管塞栓材料としては、これまでゼラチンスポンジ、ポリビニルアルコール、分解性デンプン粒子(DSM)、ヨウ化ケシ油、架橋コラーゲン繊維、エチルセルロースマイクロカプセル、シアノアクリレート、ステンレスコイルなどが用いられている。ポリマー粒子からなる塞栓材料は、造影剤などに分散させた状態で、生体内に配置されたマイクロカテーテルを介して、マイクロシリンジなどにより患部に向けて注入することにより導入することができる。このようなポリマー粒子の塞栓材料によれば、深部に位置する患部まで到達して塞栓を形成することができる。
しかしながら、ポリマー粒子からなる塞栓材料には以下のような問題点がある。
(1)形状が不定形で粒子径分布が広いため、血管の目的部位で塞栓できないことがある
(2)カテーテル内で凝集あるいは高粘度化して、カテーテルを詰まらせることがある。
(3)患部に至る途中の正常な血管で凝集あるいは高粘度化して、患部に到達させることができないことがある。
(4)材質が硬く、血管の断面形状にフィットしないため、血流量を低下させるものの、完全に塞栓できない場合がある。
(5)ポリマーには造影性がないので、患部の塞栓状態および塞栓部位をX線透視下において確認することができない
(6)さらに、生体内分解性塞栓形成材料としては、血液に接する箇所とそうでない箇所など、置かれた微小環境の違いにより同じ粒子であっても、また同じ種類の粒子であっても分解速度が大きく異なることがある。
従来技術として、生分解性のポリ乳酸またはポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマーからなる、特定の薬剤を含有する血管塞栓材料が開示されているが(特許文献1参照)、これは基材ポリマーの疎水性が高く、上記の(1)〜(5)の問題があった。
一方、ポリエチレングリコール(以下、PEGと記載)と、ポリ乳酸(以下、PLAと記載)またはポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマー(以下PLGAと記載)からなるブロックコポリマーとして、PLA−PEG、PLA−PEG−PLA、PLGA−PEG−PLGAなどの基材ポリマーに薬剤を混合して徐放させるという医薬・製薬用途への適用が開示されている(特許文献2参照)。
特開平5−969号公報 特公平5−17245号公報
本発明の目的は、カテーテル内や目的外の血管内において凝集詰まりを起こすことなく目的部位を確実に閉塞することができ、塞栓部位や塞栓環境によらず特定の期間後に血流閉塞状態が解除され、材料が生体内で分解し、分解成分が代謝または体外へ排出可能な血管塞栓材料を提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1)飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下である水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
(2)飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1〜1000MPaである水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
(3)飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1〜400MPaである水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
(4)飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が乾燥状態でのフィルムの引張弾性率の80%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(5)飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が乾燥状態でのフィルムの引張弾性率の60%以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(6)飽和含水状態でのフィルムの引張伸度が10%以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(7)水不溶性ポリマーが生分解性ポリマーであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(8)水不溶性ポリマーが生分解性ポリマーと水溶性ポリマーが化学的に結合したコポリマーからなることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(9)水不溶性ポリマーがポリエチレングリコール系コポリマーであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(10)形状が37℃において粒子状であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(11)平均粒子径が20〜2000μmであることを特徴とする(10)記載の血管塞栓材料。
(12)粒子径分布が、平均粒子径±100μmであることを特徴とする(11)に記載の血管塞栓材料。
(13)形状が37℃において球状であることを特徴とする(11)〜(12)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(14)37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(15)水、生理食塩水、水溶性X線造影剤のいずれかに対して、膨潤性を有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(16)水溶性X線造影剤を材料内に保持し、X線透視化において塞栓部位や塞栓状態の確認が可能であることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
(17)血管の形状にあわせて材料形状が変形することにより血流閉塞可能な、塞栓時の形状に柔軟性を有することを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の血管塞栓材料。
本発明の血管塞栓材料は、カテーテル内や目的外の血管内において凝集詰まりを起こすことなく目的部位を確実に閉塞することができ、塞栓部位や塞栓環境によらず特定の期間後に血流閉塞状態が解除され、材料が生体内で分解し、分解成分が代謝または体外へ排出可能である。
本発明における飽和含水状態でのフィルムの引張特性とは、フィルム形成能を有する水不溶性ポリマーから得られたフィルムを含水率が一定になるまで常温で純水中に浸漬し、引張モードでの測定を行い得られた弾性率、伸度などの特性値を指す。なお、ここで含水率が一定とは、重量変化が3%以内に収まることをいう。
血管塞栓材料として、血管塞栓時の耐圧物性を保持し、カテーテル内を容易に通過する弾性を有し、かつ、塞栓を確実にコントロールできる強度を有する材料が好ましいことから、本発明の血管塞栓材料を構成する水不溶性ポリマーはフィルム形成能を有し、飽和含水状態での引張弾性率が1500MPa以下であることが必要である。さらに好ましくは1〜1000MPa、さらに好ましくは1〜400MPaである。含水状態において1500MPaを越える引張特性率を有する材料は硬く、血管内で使用する材料として適当でない。フィルム形成方法としては、キャスト法、バーコーター法などがあるが、本発明における引張弾性率とはキャスト法によって形成したフィルムによって測定したものをいう。フィルム特性は、以下のようにして評価することができる。
[測定条件]
引張試験機:RTM−100型;(株)オリエンテック製
試験室温度:25℃
試験室湿度:50%
試験片形状:短冊型(80mm×7.5mm)
試験片厚み:30μm±10μm
チャック間距離:20mm
試験速度:10mm/分
本発明において、水不溶性とは、物質の全体が水中に溶出しないことを指す。具体的には、常温において当該物質を水中に浸漬した時に30分以内に水に溶解しないことを言う。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は1000〜300000、さらには2000〜200000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であるとゲル状で、血管内に送達時にカテーテルや血管に粘着し、血管内の狙った部位を塞栓することができない場合があり、一方、重量平均分子量が300000を越えると材料の生体内での分解にかかる時間が長くなり過ぎることがあるため、上記の範囲が好ましい。
本発明は血管塞栓材料であることから、水不溶性ポリマーは生分解性ポリマーであることが好ましい。また、水不溶性ポリマーを、生分解性ポリマーと水溶性ポリマーが化学的に結合したコポリマーとすることも好ましい。
生分解性ポリマーとしては、飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシカプリン酸等)、α−ヒドロキシ酸の環状二量体(例えば、ラクチド、グリコリド等)およびヒドロキシカルボン酸(例えば、リンゴ酸等)、環状エステルであるトリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキサノン、1,4−ジオキセパン−7−オンから選択される1種または2種以上から得られるポリマーが挙げられる。
上記α−ヒドロキシ酸の環状二量体の中では、ラクチド、グリコリドが好ましい。ヒドロキシジカルボン酸の中では、リンゴ酸が好ましい。生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とグリコール酸(またはグリコリド)の組み合わせが好ましい。また、生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とε−カプロラクトンの組み合わせが好ましい。なお、上記の内、分子内に光学活性を有するものは、D−体、L−体、D,L−体のいずれであってもよい。
生分解性ポリマーと化学的に結合する水溶性ポリマーは特に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールが有用である。水溶性ポリマーの重量平均分子量は、特には限定しないが、200〜50000であることが好ましい。
水不溶性ポリマーが生分解性ポリマーと水溶性ポリマーが化学的に結合したコポリマーである場合は、コポリマーとして、飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下であればよいが、前述の生分解性ポリマーと水溶性ポリマーを化学的に結合したコポリマーが好ましい。具体的には生分解性ポリマーがポリ乳酸、水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである態様が好ましい。
本発明の水不溶性ポリマーとして、生分解性ポリマーと水溶性ポリマーからなるコポリマーの製造方法を例示する。水不溶性ポリマーの合成方法は特に限定されないが、溶融重合、開環重合などが挙げられる。例えば、乾燥空気あるいは乾燥窒素気流中、撹拌翼を備えた重合槽中に、原料である所定の平均分子量の水溶性ポリマーと生分解性ポリマー原料を投入し、加熱して混合物を触媒とともに撹拌することにより得られる。使用する触媒としては、通常のポリエステルの重合に使用される触媒であれば特に限定されない。例えば、塩化スズ等のハロゲン化スズ、2−エチルヘキサン酸スズ等の有機酸スズ、ジエチル亜鉛、乳酸亜鉛、乳酸鉄、ジメチルアルミニウム、カルシウムハイドライド、ブチルリチウムやt−ブトキシカリウム等の有機アルカリ金属化合物、金属ポルフィリン錯体またはジエチルアルミニウムメトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。また、ベント付き二軸混練押出機またはそれに類似する撹拌および送り機能を有する装置を用いて、生分解性ポリマー原料および触媒を溶融状態で撹拌、混合、脱気しつつ、連続的に生成した水不溶性ポリマーを取り出すことにより重合を遂行することもできる。さらに、生成した水不溶性ポリマーを良溶媒に溶解し、貧溶媒を滴下し沈殿が生成した後の白濁物の温度を変化させて、一度沈殿物を溶解させた後に再び元の温度にゆっくりと戻して沈殿を生成させることにより、分別精度を上げることもできる。前記分別沈殿法に使用する良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランやハロゲン系有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)またはこれらの混合溶媒を例示することができる。前記分別沈殿法に使用する貧溶媒としては、アルコール系や炭化水素系の有機溶媒が好ましい。そして、生分解性ポリマーと水溶性ポリマーの種類、さらにはその分子量を適宜選択することによって飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下である水不溶性ポリマーを得ることができる。例えば、水不溶性ポリマーポリ乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ乳酸のコポリマーを選択した場合、その重量平均分子量を上述の1000〜300000、ポリエチレングリコール部分の重量平均分子量を200〜50000の範囲内とすることによって、飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下を達成することができる。
本発明の血管塞栓材料は形状は特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。水不溶性ポリマーを例えばジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、イソプロピルエーテルなどに溶解し、これを界面活性剤、保護コロイド剤などを含有する水相に分散し、公知のO/W型またはW/O/W型液中乾燥法あるいはそれに準じた方法、スプレードライ法などの方法により粒子状の塞栓材料とすることができる。ここで用いる界面活性剤、保護コロイド剤としては安定な油/水エマルションを形成しうるものであれば特に限定されないが、例えばアニオン性界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(ポリエキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの中から、1種類あるいは複数を組み合わせて使用してもよい。とりわけ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンが好ましい。その濃度は、0.01〜20wt%、より好ましくは0.05〜10wt%の中から選ばれる。このようにして製造された粒子は一般的に球状粒子であるが、一部に不定形の粒子が混じることがある。このような粒子を取り除く目的で、適当な目開きのふるいを複数使用して目的の平均粒子径、目的の粒子径分布の粒子を得ることができる。
本発明において平均粒子径、粒子径分布とは、25℃での純水または生理食塩水中におけるそれを指す。本発明の血管塞栓材料の粒子径の測定は、市販の種々の測定装置で可能であって特に限定されないが、例えばサイエンティフィック・インスツルメント社製コールター・マルチサイザーIIまたはIIIが好ましく使用できる(電気抵抗法)。測定は生理食塩水中で行うことができるので、血管内の環境に近い形で測定することができる。また、粒子を1個1個測定するので、特異的に大きな粒子または特異的に小さな粒子も粒子径を測定することができる。平均粒子径としては、個数平均または体積平均の値を算出できる。また、乾燥時の粒子径については目開きの大きさとそのふるいで分画される重量から算出される値を平均粒子径として測定できる(ふるい法)。さらに、顕微鏡下に1個ずつ、輪郭を円とした半径を求め、数平均することにより求めることもできる(直接観察法)。
本発明の血管塞栓材料は、球状粒子であることが好ましい。棒状、直方体、立方体などの形状はその粒子径が不明確で、血管に塞栓する場合に粒子の向きによって塞栓状態が異なるが、球状粒子であればより完全な閉塞が可能となる。
本発明の血管塞栓材料の平均粒子径は20〜2000μmが好ましい。塞栓の対象となる血管径から、このような範囲にあることが好ましい。なお、平均粒子径が大きすぎても小さすぎても、目的の血管部位を塞栓することは難しくなるので、実際の使用にあたっては塞栓の対象となる血管径に合わせて適宜選択することが好ましい。また、粒子径分布については、より完全な塞栓の目的から分布幅が小さいことが好ましい。分布幅は好ましくは平均粒子径±100μm、さらに好ましくは平均粒子径±50μmの範囲である。
本発明の血管塞栓材料は、動脈塞栓術および化学塞栓療法において、新生栄養血管を発達させないためにも、血管の再開通、つまり、37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることが好ましい。また、37℃のリン酸緩衝溶液浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の50%以下であること、37℃のリン酸緩衝溶液浸漬7日後における残存重量が、浸漬前の重量の50%以下であることがさらに好ましい。
本発明の血管塞栓材料は、そのまま、あるいは使用時に適当な分散媒あるいは造影剤に分散して使用することができる。水溶性造影剤としては、公知のものを用いることができ、イオン性造影剤であっても非イオン性造影剤であってもよい。具体的には、イオパミロン(シェーリング社製)、ヘキサブリックス(栄研化学)、オムニパーク(第一製薬製)、ウログラフィン(シェーリング社製)、イオメロン(エーザイ製)などを挙げることができる。本発明の血管塞栓材料と造影剤を使用前に混合してから所定の部位へ注入することができる。本発明の血管塞栓材料が水膨潤性の高い場合、造影剤の一部が水とともに塞栓材料内部に含浸・保持されて造影性を発現するため好ましい。分散媒としては、分散剤(例えばポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖など)を注射用蒸留水に溶解したもの、あるいはゴマ油、コーン油などの植物油が挙げられる。分散された塞栓材料は、塞栓所望箇所近傍まで導かれたカテーテルを介して、適当な動脈から腫瘍支配動脈へ、X線透視により造影剤位置をモニターしながら投与される。また、この塞栓材料には通常注射剤に用いられる防腐剤、安定化剤、等張化材、可溶化剤、分散剤、賦形剤などを添加してもよい。
本発明の血管内塞栓材料は、油性造影剤であるヨウ化ケシ油(リピオドール・ウルトラフルイド)などと併用してもよい。また、制癌剤(例えば、スマンクス、マイトマイシン、アドレアマイシン、ビンブラスチン)、管新生阻害剤、ステロイド系ホルモン剤、肝臓疾患薬、痛風治療薬、糖尿病薬、循環器用薬、高脂血症薬、気管支拡張薬、抗アレルギー薬、消化器官用薬、抗精神薬、化学療法剤、抗酸化剤、ペプチド系薬物、蛋白系薬物(例えば、インターフェロン)などと併用してもよい。
次に実施例を示し本発明を詳説するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック社製)40.3gと脱水済みの平均分子量4000のポリエチレングリコール(ナカライテスク(株)製)17.3gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ乳酸のコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿を得た。GPC法による重量平均分子量は14000であった。
得られたポリ乳酸−ポリエチレングリコール−ポリ乳酸のコポリマーを用いて、30重量%コポリマーのジクロロメタン溶液を内径85mmのシャーレに注入し、20℃で1昼夜ジクロロメタンを蒸発させることにより、フィルム化を行い、膜厚20μmのフィルムを得た。これを常温で純水に浸漬したところ、約3時間で一定(水含浸前比の重量変化117%)になった。引張試験を行ったところ、引張弾性率は550MPa、引張伸度は6%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は690MPaであった。
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球状粒子を得た。ナイロンメッシュにより分画、その後、真空乾燥、次いでふるいによる分級を行ったところ、(株)キーエンス製超深度形状測定顕微鏡”VK−8500”による直接観察法により、粒子100個辺りの粒子分布を測定したところ、平均粒子径150μm、分布±30μmの粒子径の揃った球状粒子を得た。この分画粒子を生理食塩水に浸漬すると平均粒子径約185μm、分布±50μmの球状粒子分散液が得られた。
上記球状粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、球状粒子は全く観察されなかった。
なお、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.3)中に上記球状粒子を加え、37℃で28日間経過後、孔径約0.2μmのメンブレンフィルターで固形分を取り、真空乾燥後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、75%であった。
また、上記ナイロンメッシュによる分画により、生理食塩水中における平均粒子径は約90μm、分布は±50μmの球状粒子分散液を得た。ついで、ネンブタールで麻酔した10週令のラットの大腿静脈に24Gの留置針を挿入した後、この球状粒子分散液を注入した。2週間後に肺の外観観察、組織切片の作製を行った。4匹のラットにそれぞれ球状粒子分散液の注入を行い、組織切片を観察したところ、4匹全てに肺梗塞が観察された。
<実施例2>
ポリ乳酸−ポリエチレングリコール(平均分子量20000)−ポリ乳酸のコポリマー(重量平均分子量約40000)を用いて、実施例1と同様の方法でフィルム化を行い、膜厚32μmのフィルムを得た。これを水に浸漬し、約2時間で一定(重量変化181%)になった。引張試験を行ったところ、引張弾性率は160MPa、引張伸度は76%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は270MPaであった。
実施例1と同様の方法で上記精製コポリマーの球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約185μm、分布は±40μmであった。 このコポリマーの球状粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、球状粒子は全く観察されなかった。
<実施例3>
ポリ乳酸−ポリエチレングリコール(平均分子量4000)−ポリ乳酸のコポリマー(重量平均分子量約22000)を用いて、実施例1と同様の方法でフィルム化を行い、膜厚32μmのフィルムを得た。これを水に浸漬し、約4時間で一定(重量変化174%)になった。引張試験を行ったところ、引張弾性率は1060MPa、引張伸度は9%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は1330MPaであった。
実施例1と同様の方法で上記精製コポリマーの球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約185μm、分布は±60μmであった。 このコポリマーの球状粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、球状粒子は全く観察されなかった。
<実施例4>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック社製)26.8g、グリコール酸13.4gおよび脱水済みの平均分子量4000のポリエチレングリコール(ナカライテスク(株)製)17.3gを混合し、140℃で溶解・混合させた後、実施例1と同様に180℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し反応させ、ポリ乳酸/グリコール酸−ポリエチレングリコール(平均分子量4000)−ポリ乳酸/グリコール酸のコポリマー(重量平均分子量約16000)を得た。次いで、実施例1と同様の方法でフィルム化を行い、膜厚30μmのフィルムを得た。これを水に浸漬し、約4時間で一定(重量変化215%)になった。引張試験を行ったところ、引張弾性率は18MPa、引張伸度は29%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は29MPaであった。
実施例1と同様の方法で上記精製コポリマーの球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約310μm、分布は±50μmであった。 このコポリマーの球状粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、球状粒子は全く観察されなかった。
<実施例5>
D−ラクチド(ピュラック社製)26.8gを実施例4と同様の方法で、ポリ乳酸/グリコール酸−ポリエチレングリコール(平均分子量4000)−ポリ乳酸/グリコール酸のコポリマー(重量平均分子量約8900)を合成して、フィルム化を行い、膜厚31μmのフィルムを得た。これを水に浸漬し、約4時間で一定(重量変化196%)になった。引張試験を行ったところ、引張弾性率は2MPa、引張伸度は46%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は3MPaであった。
実施例1と同様の方法で上記精製コポリマーの球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約310μm、分布は±50μmであった。このコポリマーの球状粒子分散液をシリンジからCORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(マストランジット;全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、抵抗なく注入することができた。その後、カテーテルを長手方向に切開し、カテーテル内を目視観察したところ、球状粒子は全く観察されなかった。
以上から、粒子径の揃った親水性かつ、含水により引張弾性率が小さく、柔軟な粒子を使用することにより、マイクロカテーテル(内径約680μmのカテーテル)内を粒子の凝集詰まりを起こすことなく通過した。また、含水により柔軟であるため、血管を傷つけ難く、血管形状に追随して変形し、より完全な塞栓が期待できる。
<比較例1>
カーギル・ダウ社製ポリ乳酸(重量平均分子量約150000)を用いて、実施例1と同様の方法でフィルム化を行い、膜厚20μmのフィルムを得た。これを水に約5時間浸漬し、重量変化が認められなかった(重量変化104%)ので、引張試験を行った 。引張弾性率は1520MPa、引張伸度は4%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は1830MPaであった。実施例1と同様の方法でポリ乳酸の球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約185μm、分布は±40μmであった。このポリ乳酸の球状粒子分散液をシリンジからCORDIS社製カテーテルMASS TRANSIT(全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、注入開始後、カテーテル入り口のコネクター部分で球状粒子が凝集し、強い抵抗と共に注入不可となった。
以上から、引張弾性率が大きく、硬いポリマーは、カテーテル内で詰まりやすく、カテーテルを通過できなかった。
<比較例2>
ポリサイエンス社製ポリ(L−乳酸)(重量平均分子量約300000)を用いて、実施例1と同様の方法でフィルム化を行い、膜厚28μmのフィルムを得た。これを水に約5時間浸漬し、重量変化が認められなかった(重量変化102%)ので、引張試験を行った。引張弾性率は1840MPa、引張伸度は10%であった。なお、乾燥状態での引張弾性率は1980MPaであった。実施例1と同様の方法でポリ乳酸の球状粒子分散液を得た。生理食塩水中における平均粒子径は約185μm、分布は±30μmであった。このポリ乳酸の球状粒子分散液をシリンジからCORDIS社製カテーテルMASS TRANSIT(全長約1400mm、先端部の長さ180mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、注入開始後、カテーテル入り口のコネクター部分で球状粒子が凝集し、強い抵抗と共に注入不可となった。
以上から、引張弾性率が大きく、硬いポリマーは、カテーテル内で詰まりやすく、カテーテルを通過できなかった。
Figure 2004313759
Figure 2004313759

Claims (17)

  1. 飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1500MPa以下である水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
  2. 飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1〜1000MPaである水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
  3. 飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が1〜400MPaである水不溶性ポリマーからなることを特徴とする血管塞栓材料。
  4. 飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が乾燥状態でのフィルムの引張弾性率の80%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  5. 飽和含水状態でのフィルムの引張弾性率が乾燥状態でのフィルムの引張弾性率の60%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  6. 飽和含水状態でのフィルムの引張伸度が10%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  7. 水不溶性ポリマーが生分解性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  8. 水不溶性ポリマーが生分解性ポリマーと水溶性ポリマーが化学的に結合したコポリマーからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  9. 水不溶性ポリマーがポリエチレングリコール系コポリマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  10. 形状が37℃において粒子状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  11. 平均粒子径が20〜2000μmであることを特徴とする請求項10記載の血管塞栓材料。
  12. 粒子径分布が、平均粒子径±100μmであることを特徴とする請求項11に記載の血管塞栓材料。
  13. 形状が37℃において球状であることを特徴とする請求項11〜12のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  14. 37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の重量の80%以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  15. 水、生理食塩水、水溶性X線造影剤のいずれかに対して、膨潤性を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  16. 水溶性X線造影剤を材料内に保持し、X線透視化において塞栓部位や塞栓状態の確認が可能であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の血管塞栓材料。
  17. 血管の形状にあわせて材料形状が変形することにより血流閉塞可能な、塞栓時の形状に柔軟性を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の血管塞栓材料。
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