JP5070671B2 - 親水性材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高い親水性と柔軟性を有するフイルム、粒子を形成可能な親水性材料に関するものである。
シクロデキストリンは、6〜8個のピラノグルコースがα−1,4結合した環状オリゴ糖で、一般に、それぞれα−、β−、γ−シクロデキストリンまたはシクロヘキサアミロース、シクロヘプタアミロース、シクロオクタアミロースと呼ばれる。環構造に由来した疎水性空洞を有し、この空洞にイオンや分子を取り込む(包接する)ことができる。このような性質を利用して、複数のシクロデキストリンなどの環状分子をポリマーのような直鎖状分子が貫通した超分子(非共有結合的集合体)が知られている。
例えば、α−シクロデキストリンに水溶性ポリマーであるポリエチレングリコールが貫通した包接化合物が開示されている(特許文献1参照)。1分子のα−シクロデキストリンがポリエチレングリコールの繰り返し単位2個に対して水不溶性の包接化合物を形成すること(すなわちポリエチレングリコールに対してシクロデキストリンは1106重量%であること)が記載されている。また、このようなポリエチレングリコールのα−シクロデキストリン包接化合物にはフイルム形成性はなかった。
一方、シクロデキストリンの空洞を貫通させた直鎖状高分子の両末端に嵩高い生分解性基を備えた構造を有する医薬、医療材料が開示されており、担持量や放出特性が制御可能な薬物担体、血小板代謝抑制性の血液適合性材料、組織再建後に消失する埋植材料、として使用できることが記載されている(特許文献2〜4参照)。
さらに、シクロデキストリンと包接化合物を形成する生分解性ポリマーとして、ポリ(ε−カプロラクトン)を用いた包接化合物が開示されている(非特許文献1参照)。この場合、1分子のα−シクロデキストリンがポリ(ε−カプロラクトン)の繰り返し単位1個に対して水不溶性の包接化合物を形成すること(すなわちポリエチレングリコールに対してα−シクロデキストリンは848重量%であること)、1分子のγ−シクロデキストリンがポリ(ε−カプロラクトン)の繰り返し単位2個に対して水不溶性の包接化合物を形成すること(すなわちポリエチレングリコールに対してγ−シクロデキストリンは565重量%であること)が記載されている。
これら文献ではいずれもシクロデキストリンの飽和水溶液を使用し、水または水混和性の有機溶媒に溶解させた水溶性または水不溶性のポリマーをシクロデキストリン飽和水溶液と接触させて、できるだけ多くのシクロデキストリンを包接させようと意図した結果、少量のシクロデキストリンを包接した例を開示するものではなかった。さらに、シクロデキストリンの包接効果として、フイルムや粒子の形態において親水性、含水性や柔軟性の向上効果を発現することを開示するものではなかった。多量のシクロデキストリンを包接したポリエチレングリコールやポリ(ε−カプロラクトン)ではフイルムや粒子を作製することができなかった。
特許第2762398号公報 特開平8−92130号公報 特開平10−306104号公報 特開平11−319069号公報 カワグチ ワイ(Kawaguchi Y.)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、33巻、4472−4477(2000)
高い親水性、含水性と柔軟性を有するフイルム、粒子を形成可能な親水性材料を提供することにある。
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
(1)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成され、水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーに対してシクロデキストリン系環状化合物が0.3〜30重量%であることを特徴とする水不溶性の親水性材料。
(2)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成され、水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーに対してシクロデキストリン系環状化合物が0.3〜10重量%であることを特徴とする水不溶性の親水性材料。
(3)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成され、水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーに対してシクロデキストリン系環状化合物が0.3〜3重量%であることを特徴とする水不溶性の親水性材料。
(4)シクロデキストリン系環状化合物がシクロデキストリンであることを特徴とする(1)に記載の親水性材料。
(5)シクロデキストリン系環状化合物がシクロデキストリンであることを特徴とする(2)に記載の親水性材料。
(6)シクロデキストリン系環状化合物がシクロデキストリンであることを特徴とする(3)に記載の親水性材料。
(7)フイルム形成能を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の親水性材料。
(8)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成され、フイルム形成能を有し、フイルムの含水率が100%以上であることを特徴とする親水性材料。
(9)水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーとシクロデキストリンからなる包接化合物から構成され、フイルム形成能を有し、フイルムの含水率が100%以上であることを特徴とする親水性材料。
(10)ポリエチレングリコール系ポリマーが、ポリエチレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール誘導体と、生分解性ポリマーが化学的に結合したポリマーからなることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の親水性材料。
(11)ポリエチレングリコール系ポリマーが、ポリエチレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール誘導体の末端に生分解性ポリマーが化学的に結合したポリマーであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の親水性材料。
(12)医療用デバイスとして使用することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の親水性材料。
(13)水不溶性ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成される親水性材料の製造方法であって、重合反応により水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーを製造する工程においてシクロデキストリン系環状化合物を添加することを特徴とする親水性材料の製造方法。
(14)シクロデキストリン系環状化合物がシクロデキストリンであることを特徴とする(13)に記載の親水性材料の製造方法。
(15)(1)〜(12)記載の親水性材料を少なくとも含有する粒子。
(16)親水性材料の含有量が0.1重量%〜90重量%であることを特徴とする(15)記載の粒子。
(17)平均粒子径が20〜2000μmであることを特徴とする(16)記載の粒子。
(18)粒子径分布が平均粒子径±100μmであることを特徴とする(17)記載の粒子。
(19)生体内の管状の器官を塞栓するための粒子であることを特徴とする(18)記載の粒子。
(20)血管を塞栓するための粒子であることを特徴とする(19)記載の粒子。
(21)(1)〜(12)のいずれかに記載の親水性材料もしくは(15)〜(20)のいずれかに記載の粒子を少なくとも含むことを特徴とする血管塞栓材料。
本発明の親水性材料は、高い親水性と柔軟性を有する。したがって、フイルムや粒子として有用な材料である。特に、医療用デバイス用の素材として有用であり、生分解性を有する生体内に残存しない材料として使用することができる。
本発明は、水不溶性ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物からなる包接化合物から構成される親水性材料である。
本発明においてシクロデキストリンとは、6〜8個のピラノグルコースがα−1,4結合した環状オリゴ糖で、一般に、それぞれα−、β−、γ−シクロデキストリンまたはシクロヘキサアミロース、シクロヘプタアミロース、シクロオクタアミロースと呼ばれるものを言う。これに加えて、多数のグルコースが環状に結合した大環状シクロデキストリンや5個以下のグルコースが環状に結合したシクロデキストリンであってもよい。グルコース間の結合は、α−1,4結合、α−1,6結合、α−1,3結合のいずれか、または複数の結合様式を含んでいてもよい。
本発明においてシクロデキストリン系環状化合物とは、シクロデキストリンから誘導される化合物やシクロデキストリンと同じ化学的組成を有する化合物であれば特に限定されないが、アルキル化シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン、アセチル化シクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリンなどを挙げることができる。また、シクロデキストリンに直接および/または間接的に薬剤を化学的に結合させて使用することもできる。
本発明において水不溶性は、常温(23℃)において当該ポリマーを水中に浸漬した時に30分以内に水に溶解しないことを言う。
本発明において水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーとは、ポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコールをその成分とするブロック共重合体などであって、水不溶性のものを指す。もともとポリエチレングリコールは水溶性であるから、ここで言う水不溶性とはポリエチレングリコール単位以外の寄与により、ポリエチレングリコール単位を含むポリマーの全体が水に溶解しないことを指す。したがって、少なくとも30分以上、上記温度の水中においてもフイルムや粒子の形態を保持することができる。
本発明における水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーに使用するポリエチレングリコールの重量平均分子量は特に限定されないが、重量平均分子量200〜50000の範囲が好ましく使用できる。ポリエチレングリコールの重量平均分子量が200以上であると、水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーの親水性が増し、均一な生分解性が得られる。一方、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が50000以下であれば、生体内で分解した水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーから生成するポリエチレングリコールが体外に排出されにくくなることもない。
本発明における水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(以下、ブロックBと記載する)と生分解性ポリマー(以下、ブロックAと記載する)が化学的に結合したコポリマーであることが好ましく、ポリエチレングリコールの両末端生分解性ポリマーが化学的に結合したポリマー(A−B−A型ブロックコポリマー)またはポリエチレングリコールの片末端に生分解性ポリマーが化学的に結合したコポリマー(A−B型ブロックコポリマー)、ポリエチレングリコールと生分解性ポリマーが交互に結合した((A−B)n型マルチブッロクコポリマー)がさらに好ましい。また、ポリエチレングリコールの両末端に生分解性ポリマーが化学的に結合したポリマーであってポリエチレングリコールの重量平均分子量が2000〜50000、ポリマー全体の重量平均分子量が3000〜200000である水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマー、またはポリエチレングリコールの片末端に生分解性ポリマーが化学的に結合したポリマーであってポリエチレングリコールの重量平均分子量が2000〜50000、ポリマー全体の重量平均分子量が3000〜200000である水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーが特に好ましい。
また、上記ブロックBとしては、グリセリンまたはペンタエリスリトール、とポリエチレングリコールからなる分岐ポリエチレングリコール、またポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールからなるブロックコポリマーを好ましく用いることができる。
A−B−A型ブロックコポリマー、A−B型ブロックコポリマー、(A−B)n型マルチブッロクコポリマーの重量平均分子量が3000未満であると、コポリマーはゲル状で、フイルム形成性に劣る。一方、重量平均分子量が200000を越えると材料の生体内での分解にかかる時間が長くなり過ぎる。したがって、上述のようにポリマー全体の重量平均分子量が3000〜200000が好ましい。
本発明において生分解性ポリマーとは、リン酸緩衝生理食塩水中で加水分解可能なポリマーを言う。このようなポリマーとしては、α−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシカプリン酸等)、α−ヒドロキシ酸の環状二量体(例えば、ラクチド、グリコリド等)およびヒドロキシジカルボン酸(例えば、リンゴ酸等)、環状エステルであるトリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキサノン、1,4−ジオキセパン−7−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,3−ジオキサンー2−オン、1,4−ジオキサン−2−オンから生成可能なポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネートおよびこれらの共重合体が好ましく用いられる。
生分解性ポリマーを含有する水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーにシクロデキストリン系環状化合物が包接した包接化合物を親水性材料の構成成分として使用することにより、特に生体内で加水分解などにより水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーが分解して生体内から消失させることが可能である。本発明の親水性材料からなる、親水性が高く、高含水性で柔軟性に優れたフイルムや粒子はとりわけ医療用デバイスとして好ましく用いることができる。
本発明において、水不溶性ポリエチレングリコール系ポリマーに対するシクロデキストリン系環状化合物(またはシクロデキストリン)の(包接の)割合は、重合時に仕込む原料の重量比から算出することができる。ポリマー、包接ポリマーは溶解するが、フリーのシクロデキストリンは溶解しない有機溶媒を用いて分別できることを利用する。例えば、未包接のフリーのシクロデキストリンはクロロホルムや塩化メチレンなどの溶媒に溶解しないので、不溶物が存在する場合には仕込みの重量から差し引くことによって算出することができる。また、核磁気共鳴スペクトルから有機溶媒溶解成分中の水不溶性ポリエチレングリコールに対するシクロデキストリン系環状化合物の重量比を算出することもできる。
本発明においては、水不溶性のポリエチレングリコール系ポリマーに対してシクロデキストリン系環状化合物が0.3〜30重量%であることが必要であり、0.3〜10重量%が好ましく、0.3〜3重量%がさらに好ましい。30重量%よりも多い場合には、シクロデキストリン系環状化合物の一部が包接化合物を形成せず、フリーで存在し、有機溶媒に溶解せず、不溶成分が生じるため、キャストフイルムには不溶成分の異物が見られる。また、0.3%未満では本発明の特徴である親水性、含水性、柔軟性の向上効果がほとんど得られない。特に、0.3〜3重量%が含水率が高く、柔軟なフイルムが得られるために好ましく使用できる。
次に本発明の親水性材料の製造方法について説明する。
本発明において、シクロデキストリン系環状化合物(またはシクロデキストリン)の添加は水不溶性ポリマー重合時に、原料であるモノマー、ダイマー、オリゴマーと共に加えることが好ましい。また、重合前に予め水溶性ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物(またはシクロデキストリン)からなる包接化合物を形成し、この包接化合物と共に原料であるモノマー、ダイマー、オリゴマーを加えて水溶性ポリマーにブロック重合し、シクロデキストリン系環状化合物(またはシクロデキストリン)包接水不溶性ポリマーを得ることがさらに好ましい。例えば、80℃の精製水に溶解させたポリエチレングリコールにシクロデキストリンを加え溶解させた後、室温で数日間放置後、水分を除去することによって水溶性ポリマーとシクロデキストリン系環状化合物(またはシクロデキストリン)からなる包接化合物を予め得た上で重合時に原料として使用することができる。
本発明における水不溶性ポリエチレングリコール系コポリマーとして、A−B−A型ブロックコポリマーの製造方法を例示する。ポリエチレングリコールは常法によりエチレンオキサイドを重合して合成するか、市販品を入手して得る。ポリエチレングリコールの平均分子量は特に限定されるものではないが、200〜50000が好ましい。平均分子量が特定されたポリエチレングリコールとして、”マクロゴール”の名前で市販されているものが好ましく使用される。ポリエチレングリコールを合成する場合、例えば、エチレンオキサイドの開環重合法により合成する場合には、合成したポリエチレングリコールの分子量分布が狭いことが好ましい。
次に、ポリエチレングリコール(ブロックB)と後述する生分解性ポリマー(ブロックA)の原料(例えば、乳酸、グリコール酸等の単量体またはラクチド、グリコリド等の環状二量体)の共重合を、後述する適当な触媒を用いて、例えば、溶融重合法、開環重合法によって行った後、生成したA−B−A型コポリマーを分別沈殿法で精製する。すなわち、ブロックAに相当する生分解性ポリマーとブロックBに相当するポリエチレングリコールの双方のポリマーが溶解する有機溶媒(以下、このような溶媒を良溶媒という)にA−B−A型コポリマーを溶解させ、この溶液を撹拌しながら、その中にブロックAに相当する生分解性ポリマーまたはブロックBに相当するポリエチレングリコールのいずれか一方は溶解するが、他方は溶解しない有機溶媒(以下、このような溶媒を貧溶媒という)を滴下し、精製した沈殿物を系外に取り出す操作を繰り返し、その分画を取り出す方法により、分子量分布の狭い共重合体、すなわち、Mw/Mnの比の値の小さなA−B−A型コポリマーを製造することができる。
貧溶媒を滴下し沈殿が生成した後の白濁物の温度を変化させて、一度沈殿物を溶解させた後に再び元の温度にゆっくりと戻して沈殿を生成させることにより、分別精度を上げることもできる。
前記溶融重合、開環重合は、乾燥空気あるいは乾燥窒素気流中、撹拌翼を備えた重合槽中に、原料である所定の平均分子量のポリエチレングリコールと生分解性ポリマー原料を投入し、加熱して混合物を触媒とともに撹拌することにより得られる。また、例えば、ベント付き二軸混練押出機またはそれに類似する撹拌および送り機能を有する装置を用いて、生分解性ポリマー原料および触媒を溶融状態で撹拌、混合、脱気しつつ、連続的にA−B−A型コポリマーを取り出すことにより重合を遂行することもできる。
生分解性ポリマー原料として、例えば、α−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシカプリン酸等)、α−ヒドロキシ酸の環状二量体(例えば、ラクチド、グリコリド等)およびヒドロキシジカルボン酸(例えば、リンゴ酸等)、環状エステルであるトリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、1,4−ジオキサノン、1,4−ジオキセパン−7−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,3−ジオキサンー2−オン、1,4−ジオキサン−2−オンから選択される1種または2種以上が使用される。上記α−ヒドロキシ酸の環状二量体の中では、ラクチド、グリコリドが好ましい。ヒドロキシジカルボン酸の中では、リンゴ酸が好ましい。生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とグリコール酸(またはグリコリド)の組み合わせが好ましく、乳酸とグリコール酸の比率は100:0〜40:60が好ましい。また、生分解性ポリマー原料の2種以上を使用する場合には、乳酸(またはラクチド)とε−カプロラクトンの組み合わせが好ましく、乳酸とε−カプロラクトンの比率は100:0〜40:60が好ましい。なお、上記の内、分子内に光学活性を有するものは、D−体、L−体、D,L−体のいずれであってもよい。
A−B−A型コポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)の両末端に乳酸またはラクチドを重合して得られるポリ乳酸−PEG−ポリ乳酸(ポリラクチド−PEG−ポリラクチド)、ポリ(乳酸/グリコール酸)−PEG−ポリ(乳酸/グリコール酸)(ポリ(ラクチド/グリコリド)−PEG−ポリ(ラクチド/グリコリド))、ポリ(乳酸/ε−カプロラクトン)−PEG−ポリ(乳酸/ε−カプロラクトン)が特に好ましい。
重合に使用する触媒としては、通常のポリエステルの重合に使用される触媒であれば特に限定されない。例えば、塩化スズ等のハロゲン化スズ、2−エチルヘキサン酸スズ等の有機酸スズ、ジエチル亜鉛、乳酸亜鉛、乳酸鉄、ジメチルアルミニウム、カルシウムハイドライド、ブチルリチウムやt−ブトキシカリウム等の有機アルカリ金属化合物、金属ポルフィリン錯体またはジエチルアルミニウムメトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。
前記分別沈殿法に使用する良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランやハロゲン系有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)またはこれらの混合溶媒を例示することができる。
良溶媒の使用量は、原料の仕込量や共重合組成により異なるが、通常A−B−Aコポリマーの濃度として、1〜50重量%になるような量、好ましくは1〜25重量%になるような量である。
前記分別沈殿法に使用する貧溶媒としては、アルコール系や炭化水素系の有機溶媒が好ましい。
本発明におけるフイルム形成能とは、該親水性材料を有機溶媒に溶解させた後、シャーレなどに展開し乾燥させて作製したフイルム、または該親水性材料を真空乾燥した後、熱プレスや口金からの引き取りなどの溶融法により作製したフイルムが、厚み10〜50μmにおいてフイルムを形成することを言い、少なくとも触手により崩壊することなくフイルムの形状を保持できるものが好ましい。すなわち、以下のようにしてフイルムを作製して、水膨潤状態において含水率や弾性率の測定が可能な材料が好ましい。
[含水率の測定]
水中に3時間以上浸漬し飽和含水させた水膨潤状態の重量をW、乾燥時の重量をW0とすると、
含水率(%)=(W−W0)/W0×100
で表すことができる。粒子、フイルムなどを純水中または生理食塩水に浸漬して含水率を測定することができる。含水率が100%以上であることが好ましい。
含水率が100%以上であれば、含水状態におけるフイルムや粒子の柔軟性が高く、生体を傷つけ難く、また高い生体適合性が期待できる。
[体積膨張率の測定]
また、水膨潤性の指標として、粒子における体積膨潤率を用いることもできる。
水膨潤時の体積および半径をそれぞれV、R、乾燥時の体積および半径をそれぞれV0、R0とすると、
体積膨潤率(%)=(V−V0)/V0×100
または、
体積膨潤率(%)=(R3−R03)/R03×100
で表すことができる。顕微鏡下に乾燥時、および純水中または生理食塩水中に浸漬した時の粒子の半径、体積を測定し、算出することができる。体積膨潤率としては、50〜700%が好ましく用いられる。
[機械特性(引張特性)の測定]
試験環境 :試験室温度23℃、試験室湿度50%
試験片形状 :短冊形(80mm×7.5mm)
引張試験機 :RTM−100型;(株)オリエンテック製
チャック間距離:20mm
試験速度 :10mm/分
試験片は包接化合物を塩化メチレンなどの有機溶媒に溶解後、シャーレに展開し、厚さ10〜50μmのフイルムを得、短冊形に切り出して、測定することができる。
本発明の親水性材料は、創傷被覆剤、血管塞栓材料、細胞培養用足場、医療用バッグ、薬物用担体、生体吸収性材料、止血材、神経ガイドチャンネル、臓器保護膜、含気泡造影剤、生検創封鎖材、ステントなどの医療用デバイスとして使用することができる。
本発明における平均粒子径、粒子径分布とは、純水または生理食塩水中におけるそれを指す。本発明の粒子の粒子径の測定は、市販の種々の測定装置で可能であって特に限定されないが、例えばサイエンティフィック・インスツルメント社製コールター・マルチサイザーIIまたはIIIが好ましく使用できる(電気抵抗法)。測定は生理食塩水中で行うことができるので、血管内の環境に近い形で測定することができる。また、粒子を1個1個測定するので、特異的に大きな粒子または特異的に小さな粒子も粒子径を測定することができる。平均粒子径としては、個数平均または体積平均の値を算出できる。また、乾燥時の粒子径については目開きの大きさとそのふるいで分画される重量から算出される値を平均粒子径として測定できる(ふるい法)。さらに、顕微鏡下に1個ずつ、輪郭を円とした半径を求め、数平均することにより求めることもできる(直接観察法)。
本発明の粒子は、球状粒子であることが好ましい。棒状、直方体、立方体などの形状はその粒子径が不明確で、血管に塞栓する場合に粒子の向きによって塞栓状態が異なるが、球状粒子であればより完全な閉塞が可能となる。
本発明の親水性材料からなる粒子の平均粒子径は20〜2000μmが好ましく、50〜1500μmがさらに好ましい。血管塞栓材料として用いる場合には塞栓の対象となる血管径から、このような範囲にあることが好ましい。平均粒子径が大きすぎても小さすぎても、目的の血管部位を塞栓することは難しくなるので、塞栓の対象となる血管径に合わせて適宜選択することが好ましい。また、粒子径分布については、より完全な塞栓の目的から分布幅が小さいことが好ましい。分布幅は好ましくは平均粒子径±100μm、さらに好ましくは平均粒子径±50μmの範囲である。なお、粒子径の分布幅とは、粒子の総数の99%以上がその範囲内にある粒子径の範囲をいう。
本発明の粒子は、粒子のままあるいは用時適当な分散媒あるいはヨウ化ケシ油などの造影剤に分散して血管塞栓材料として使用することができる。造影剤としては、公知のものを用いることができ、イオン性造影剤であっても非イオン性造影剤であってもよい。具体的には、イオパミロン(シェーリング社製)、ヘキサブリックス(栄研化学)、オムニパーク(第一製薬製)、ウログラフィン(シェーリング社製)、イオメロン(エーザイ製)などを挙げることができる。本発明の血管塞栓材料と造影剤を使用前に混合してから所定の部位へ注入することができる。水膨潤性の高い場合、造影剤の一部が含水とともに血管塞栓材料内部に保持されて造影性を発現する。分散媒としては、分散剤(例えばポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖など)を注射用蒸留水に溶解したもの、あるいはゴマ油、コーン油などの植物油が挙げられる。分散された血管塞栓材料は、適当な動脈から腫瘍支配動脈に血管造影剤でモニターしながら挿入されたカテーテルを用いて、投与される。また、この塞栓材には通常注射剤に用いられる防腐剤、安定化剤、等張化材、可溶化剤、分散剤、賦形剤などを添加してもよい。
本発明の血管内塞栓材料は、油性造影剤であるヨウ化ケシ油(リピオドール・ウルトラフルイド)などと併用してもよい。また、ヨウ化ケシ油と制癌剤であるスマンクス、マイトマイシン、アドレアマイシン、ビンブラスチンを併用して使用してもよい。また、薬効成分を含んでいても良い。薬効成分とは、薬効が知られるものであれば特に限定されるものではないが、制癌剤(例えば、アルトレタミン、ブレオマイシン、マイトマイシン、塩酸ドキソルビシン、ピシバニール、クレスチン、レンチナン、シクロホスファミド、チオテパ、テガフール、硫酸ビンブラスチン、塩酸ピラルビシン)、血管新生阻害剤、ステロイド系ホルモン剤、肝臓疾患薬、痛風治療薬、糖尿病薬、循環器用薬、高脂血症薬、気管支拡張薬、抗アレルギー薬、消化器官用薬、抗精神薬、化学療法剤、抗酸化剤、ペプチド系薬物、蛋白系薬物(例えば、インターフェロン)、などを挙げることができる。
次に、実施例を示し本発明を詳説するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
窒素気流下においてフラスコにD,L−ラクチド(ピュラック社製)40.3gと平均分子量8750のポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(PEG−PPG−PEG)のブロック共重合体”プルロニック”F68(80重量%ポリエチレングリコール含有、旭電化工業(株)製)17.3gを混合し、140℃で溶融・混合させた後、β−シクロデキストリン(アルドリッチ社製)8.6gを添加し、150℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)を添加し、A−B−A型コポリマー(ポリラクチド−(PEG−PPG−PEG)−ポリラクチド)を得た。コポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノ−ル中へ滴下して、白色沈殿物を得た。
白色沈殿物を塩化メチレンに溶解し、透明溶液をシャーレ上に展開し、キャストフイルムを得た。厚みは約15μmであった。このフイルムを用いて、引張弾性率および含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、水はフイルム表面に広がったままで、水をハジく様子は観察されなかった。
このフイルムをエチレンオキサイドガスで滅菌処理した後、麻酔下でウィスターラット(8週令)の右背部を剃毛し、”イソジン”(明治製菓製)で消毒した後、20mm角の全層皮膚欠損創を作成し、フイルムを該欠損創に適用した。その上にガーゼを当てて伸縮性粘着テープで固定した。2週間後、フイルムを通して創面を観察したところ、皮膚欠損創の大きさは長径10mm×短径5mm程度と小さくなり、適度に創面の湿潤状態が保たれていた。
以上から、本発明の親水性材料からなるフイルムを創傷被覆シートとして使用することにより、良好な創面の回復を得ることが可能であった。
<比較例1>
β−シクロデキストリンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、白色沈殿物を得た。
白色沈殿物を塩化メチレンに溶解し、透明溶液をシャーレ上に展開し、キャストフイルムを得た。厚みは約20μmであった。このフイルムを用いて、引張弾性率および含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、直後にフイルム表面で水をハジく様子が観察され、創傷被覆シートとしては不適であることがわかった。
<実施例2>
精製水100mLに平均分子量20000のポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製)40.0gおよびα−シクロデキストリン(和光純薬工業(株)製)0.7gを添加し、80℃で溶解させた後、4℃で5日間放置した。さらに、真空乾燥機で乾燥して白色生成物を得た。この白色生成物は常温において精製水に溶解した。
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック社製)37.5gと白色生成物20.5gを140℃で溶融・混合させた後、160℃にてジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)を添加し、α−シクロデキストリンが包接したA−B−A型コポリマー(ポリラクチド−ポリエチレングリコール−ポリラクチド)を得た。コポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノ−ル中へ滴下して、白色沈殿物を得た。
白色沈殿物を塩化メチレンに溶解し、透明溶液をシャーレ上に展開し、キャストフイルムを得た。厚みは約25μmであった。このフイルムを用いて、引張弾性率および含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、水はフイルム表面に広がったままで、水をハジく様子は観察されなかった。
<実施例3>
α−シクロデキストリンの添加量が2.9g、白色生成物の添加量が21.6gとしたことを除いては、実施例2と全く同様にして白色沈殿物を得、キャストフイルムの引張弾性率、含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、水はフイルム表面に広がったままで、水をハジく様子は観察されなかった。
上記白色沈殿物をジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球状粒子を得た。ナイロンメッシュにより分画し、平均粒子径75μm、分布が平均粒子径±20μmの粒子径の揃った球状粒子を得た。この分画粒子を生理食塩水に浸漬すると平均粒子径約95μm、分布が平均粒子径±35μmの球状粒子分散液が得られた。この粒子の体積膨潤率は101%であった。
リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.3)中に上記球状粒子を加え、37℃で28日間経過後、孔径約0.2μmのメンブレンフィルターで固形分を取り、真空乾燥後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ、初期重量の約60%であった。
ネンブタールで麻酔した10週令のラットの大腿静脈に24Gの留置針を挿入した後、上記球状粒子分散液を注入した。2週間後に肺の外観の観察、組織切片の作製を行った。4匹のラットにそれぞれ球状粒子分散液の注入を行い、組織切片を観察をしたところ、4匹全てに肺梗塞が観察された。血管を閉塞した粒子の粒径は53μm〜94μmの範囲にあった。
以上から、本発明の親水性材料からなる粒子を血管塞栓材料として使用することにより、確実な塞栓を行うことが可能であった。
<実施例4>
α−シクロデキストリンの添加量が9.1g、白色生成物の添加量が24.8gとしたことを除いては、実施例2と全く同様にして白色沈殿物を得、キャストフイルムの引張弾性率、含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、水はフイルム表面に広がったままで、水をハジく様子は観察されなかった。
<比較例2>
α−シクロデキストリンを添加しなかったことを除いては実施例2と同様にして白色沈殿物を得、キャストフイルムの引張弾性率、含水率を測定した。結果を表1に示した。精製水中に5時間浸漬後、フイルムを水中から取り出したところ、直後にフイルム表面で水をハジく様子が観察され、血管塞栓材料として不適でることがわかった。
<比較例3>
α−シクロデキストリンの添加量が34.6g、白色生成物の添加量が37.7gとしたことを除いては、実施例2と全く同様にして白色沈殿物を得たが、この白色沈殿物は塩化メチレンに対して不溶物が存在しており、キャストフイルムには白色の異物が存在した。
添加したα−シクロデキストリンの内、一部は包接できず、フリーのα−シクロデキストリンとなり、キャストフイルムにおいて異物となったと推察される。
<比較例4>
平均分子量2000のポリエチレングリコール1.5gを10mLの精製水に溶解させた水溶液と、14.5gのα−シクロデキストリンを100mLの精製水に溶解させたシクロデキストリン飽和水溶液を室温で混合し、超音波を10分間照射後、そのまま室温で終夜放置した。遠心分離後、精製水で2度洗浄し、真空乾燥して白色生成物を得た。
白色生成物は、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトンに溶解せず、そのためキャストフイルムは得られなかった。ジメチルスルホキシドには溶解したが、溶解により包接が外れ、シクロデキストリンとポリエチレングリコールの混合物となったため、精製水に容易に溶解した。また、白色生成物を250℃で熱プレスしたが溶融せず、フイルムは得られなかった。以上から、ポリエチレングリコールとα−シクロデキストリンからなる包接化合物のフイルムは、キャスト法、溶融法では得られなかった。
核磁気共鳴スペクトルから、シクロデキストリン1分子はポリエチレングリコールの2個の繰り返し単位を包接していた。したがって、ポリエチレングリコールに対するα−シクロデキストリンの割合は1106重量%という高い値であった。このように多数のシクロデキストリンがポリマー鎖全体に多数包接した場合には、ポリマー鎖が剛直化し、含水性がなく、水に溶解や膨潤しないことに加え、有機溶媒溶解性に劣り、熱溶融しないため、フイルムや粒子として加工して使用することができなかった。
Figure 0005070671

Claims (10)

  1. ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール、のブロック共重合体と、
    ポリラクチドと、
    が化学的に結合したコポリマーに、
    α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンが包接され、
    前記コポリマーに対する前記シクロデキストリンの割合が0.3〜30重量%である、医療用材料。
  2. 前記コポリマーに対する前記シクロデキストリンの割合が0.3〜10重量%である、請求項1記載の医療用材料。
  3. 前記コポリマーに対する前記シクロデキストリンの割合が0.3〜3重量%である、請求項1記載の医療用材料。
  4. 前記コポリマーは、A−B−A型コポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項記載の医療用材料。
  5. ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール、のブロック共重合体と、
    ポリラクチドと、
    の重合時に、
    α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選択されるシクロデキストリンを添加して製造する、請求項1〜のいずれか一項記載の医療用材料の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか一項記載の医療用材料を含有する粒子。
  7. 前記医療用材料の含有量が、0.1重量%〜90重量%である、請求項記載の粒子。
  8. 平均粒子径が20〜2000μmである、請求項又は記載の粒子。
  9. 粒子径分布が平均粒子径±100μmである、請求項記載の粒子。
  10. 請求項1〜のいずれか一項記載の医療用材料又は請求項7〜10のいずれか一項記載の粒子を含む、血管塞栓材料。
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