JP3980395B2 - 生体材料 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、トリメチレンカーボネート重合体及びその製造方法並びにこれを用いて成形した生体材料に関し、生体材料の成形性、柔軟性、機械的強度、形態保持性に優れ、生体の欠損部の補綴に際しては、組織再生までの間に他組織の侵入防止、癒着防止を行い組織再生の促進を行うと共に生体内では分解吸収される生体材料を提供することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、骨組織、軟骨組織のような硬組織あるいは上皮組織、結合組織、神経組織のような軟組織が外傷、炎症、腫瘍、老化などにより欠損部を生じたり、あるいは手術等によって損傷を受けた場合には、同種、異種、自家移植や種々の方法によって生体組織の補綴、修復等を行っている。
これらに用いられる材料に関しても、非分解性材料から生体内分解性材料まで、生体非活性材料から生体親和性材料までに及ぶ数多くの研究がされている。
また、骨の補綴では、顆粒、フィラー、多孔質体のヒドロキシアパタイトで、血管、食道、気管や臓器等の組織欠損部を補綴する場合には、生体由来の天然高分子材料や脂肪族ポリエステル等の合成高分子材料が併用されている。
【0003】
これらの材料の中で、組織が修復された後に消失し、しかも生体の欠損部と的確に接合するような任意形状に成形加工ができる材料としては、生体内分解性の高分子材料が挙げられる。
このような高分子材料として、コラーゲン、ゼラチン等の天然高分子材料を使用する方法が知られている。この天然物由来材料には、生体親和性を有するものが多いものの、その組成等が一定しないため、更には、感染性を内在したウイルスや抗原性を完全に除去することが困難であるため、体力の低下している患者への使用に際しては、常に危険性が伴うという問題がある。
【0004】
また、コラーゲン等の材料では、親水性が高いために水を含有することによる強度低下を生じ易く、生体内での移植部位の周囲組織からの圧力により収縮、変形するため、目的の形態を維持することが困難となる。
このような収縮を防止するため、コラーゲンをグルタルアルデヒド等の架橋剤で架橋させ、その構造を維持させる方法もあるが、本質的に必要とされる機械的強度には到達していない。
【0005】
一方、このようなコラーゲンに代えて、免疫学的に問題の少ない合成系材料であるポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを骨格とする生体材料が開発されている。このポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、生体内分解性、機械的強度、成形加工性など種々の点で優れた材料であるため、各種組成の材料が吸収性縫合糸などで上市されている(宮畑,生体材料,19(4),143(2001))。
【0006】
このような生体に使用されるポリマーは、主として乳酸、グリコール酸の重合体またはその共重合体であるため、この材料の物性が高結晶性または非晶性の組成でも剛直性を示すことから、生体との接着面での親和性が悪く、材料と生体組織との接合性に欠点がある。
これらの欠点を補い柔軟性のある材料とするために、特表平3-502651号公報では、トリメチレンカーボネートを含むポリマーから製造する医療用具を開示している。
また、特開平3-177423号公報では、トリメチレンカーボネートと光学不活性ラクチドからなる共重合体を、特開平4-231963号公報および特表平6-508388号公報では、トリメチレンカーボネートで構成される共重合体からなる外科用修復器具をそれぞれ開示している。
【0007】
このような所定の強度を有する材料を得るためには、ポリマーを高分子量化することが必要であり、一般的な高分子量化に際して利用される重合方法である開環重合法では、亜鉛、スズ、イットリウム、アルミニウム等の金属を含有する重合触媒が使用される。
また、脱水重縮合法でも特開平7-18063号公報に開示されるようなスズ系等の触媒を用いることが必要である。このように、いずれの方法から製造したポリマーでも触媒としてスズ化合物等が使用されており、得られたポリマーはこのような触媒を含有し、溶媒等による精製ではこれを殆ど除去できないという問題がある。
【0008】
このような材料を生体内に移植すると、金属成分は生体内でイオン化し、溶出したイオンは発がん性、アレルギーの要因となる。また、この影響を減少させるため、例えば特開昭 63-145327号公報では、触媒含有ポリマーをあらかじめ水に混和しない有機溶媒で溶解し、酸性水溶液を用いて洗浄する方法を開示している。更に、ドイツ公開特許第4218268号公報では、触媒含有ポリマーを酢酸に懸濁させた後、水で精製する方法を開示している。
このように、ポリマーを洗浄し触媒を除去する方法は検討されているものの、その除去効果が不充分であり、更には、金属成分を限界まで減少させるために、充分な酸で洗浄するとポリマーが加水分解され分子量が低下し、生体材料として使用に適さない強度のものしか得られない。
また、ポリマー中に酸が局所に残存するとポリマーの分解が局部的に生じ、材料全体としての強度が不充分となるため、残存酸、アルカリ等の除去処理は完全に行う必要があり、その場合の処理方法とその効果に於いて経済的に問題がある。
【0009】
また、スズ等の金属系触媒は重合触媒であると共に分解触媒としても作用することから、このような触媒を使用して得られる重合体は、溶融成形時の分子量低下が大きく、必要とされる物性を有する生体材料を得ることは困難であった。
【0010】
Kricheldorfは、トリメチレンカーボネートの100℃、7日間の熱重合を報告している(Macromol.Chem.Phys. ,197,1043(1996))。この方法は触媒を使用していないため触媒の残存の問題は回避できるが、重合後の残存モノマーとオリゴマーについては言及していない。このような残存モノマーとオリゴマーは、ポリマーの溶融成形時の分子量低下を生起させるだけでなく、生体への移植後に生体内での分解を促進するため、生体材料として必要な強度を保持させることができない。また、生体局所での pH低下を生じるため、その部分での生体炎症反応を引き起こす原因ともなる。
また、未反応のラクチド、乳酸、トリメチレンカーボネートのモノマー、あるいはこれらモノマーの重合中に生成する2〜50量体のオリゴマーがスズ等の金属系触媒と共存すると、モノマーのカルボキシル基またはオリゴマーの末端カルボキシル基がカルボン酸として作用し、触媒金属成分が成形体表面へ移動し金属の局在化を引き起こす促進剤となる。そのため溶融成形時のポリマーの分解性が著しく増大するだけでなく、生体材料として生体内局部での炎症反応性も著しく増大する。
【0011】
このように、各種の材料からなる生体材料用の基材が知られ、多くの研究が成されているにもかかわらず、生体材料と生体組織の接合面に於いて適合する特性を有する生体材料は未だ見出されていないのが現状である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは前述の課題を解決すべく、生体組織と基材の界面での生体親和性、形態保持性に優れ、生体組織が本来のマトリックスを形成するまでの期間に於いて適切な強度と形態を維持し、生体組織の修復に伴って基材が分解吸収されるという特異的な分解性を有し、更には生体内で組織に対して異物反応等の影響を生じない生体材料用基材を得るべく鋭意研究を重ねた。
【0013】
その結果、トリメチレンカーボネート重合体の重合時に用いる金属系触媒とモノマー及び 2〜50量体のオリゴマーが、とりわけ溶融成形時の基材の分子量低下と触媒金属の局在化の要因となることを発見し、かかる知見に基づき金属系触媒を使用せず、水の共存下でトリメチレンカーボネートを重合させることにより、上述の課題を解決し、しかも任意の重合度の重合体を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、金属触媒の非存在、且つ水がトリメチレンカーボネートに対し質量比で 1:0.001 〜 1:120 の範囲で存在する条件下でトリメチレンカーボネートを重合させる方法により製造した、金属含量が0.5ppm以下で、トリメチレンカーボネート構成単位を90モル%以上含有し、モノマー含量が0.05質量%以下で、且つ2〜50量体含量が0.03質量%以下であるトリメチレンカーボネート重合体からなる生体材料に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明を更に詳細に説明する。
本発明の重合体は、金属含量が0.5ppm以下でトリメチレンカーボネート構成単位を90モル%以上含有したトリメチレンカーボネート重合体である。
このような本発明重合体は、例えば次のような方法により製造することができる。
トリメチレンカーボネートモノマーを90モル%以上含有するモノマーと水を、窒素気流下または減圧下、80〜180℃でスズ、亜鉛等の金属触媒を添加せずに、開環重合を行うことにより製造することができる。
この場合の反応時間は、反応を行う際の原料組成等によって異なり特段限定できないが、大略1〜20時間程度の反応が必要である。
また別の方法として、モノマーを水の存在下で適当な溶媒に溶解あるいは懸濁させ、溶媒中で重合することも可能である。このような溶媒として、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン等を例示できる。
【0016】
本発明で製造する重合体は、トリメチレンカーボネート含量が90モル%以上であることが必要である。
即ち、このトリメチレンカーボネート含量が90モル%未満になると、重合時の反応速度が遅く、重合体が低分子量化するため、本発明重合体を使用する生体材料が必要とする強度を得ることができない。
また、本発明で使用するモノマー、溶媒等は、原料中に含まれる金属成分の混入を防止するため、予め再結晶法、蒸留等により精製して使用することが望ましい。
【0017】
本発明で製造する重合体は、トリメチレンカーボネート含量が90モル%以上であるが、この成分以外の残余成分として、本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合成分を添加して共重合することもできる。
このような共重合成分としては、乳酸、グリコール酸、β-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類、ラクチド、グリコリド、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、p-ジオキサノン等のラクトン類を例示することができる。
尚、本発明ではこれら共重合成分の内、乳酸、グリコール酸、ラクチド、グリコリドの使用が最も好ましい。また、乳酸については、D体、L体、DL体のいずれであってもよい。
【0018】
本発明で製造する重合体中の金属含量は、0.5ppm以下であるが、このような金属含量は、「ICP発光分析法」による分析における検出限界以下であり、本発明の重合体は実質的にこのような金属成分を含まず、従って重合体中の金属除去のための煩雑な精製工程を必要としない。
前述のように、重合体中に金属触媒等の金属成分を含み、このような金属成分の含量が0.5ppmを上廻ると、重合体を生体に埋植した場合に、発ガン、アレルギー等の発現の問題を生じる可能性があり、更に重合体を溶融成形する際には、重合体の分解が促進され強度低下の要因となる。
【0019】
また、本発明では重合後に得られる反応生成物を溶媒に溶解し、再沈殿を行う。このようにすることで、重合体の成形加工時の分子量低下や生体内での生体組織反応等の原因となる未反応モノマーやオリゴマー等の不純物を容易に除去することができる。反応生成物を溶解させるための溶媒としては、アセトン、クロロホルム等を例示できる。尚、本発明で云うオリゴマーとは、トリメチレンカーボネートまたはこれとの共重合成分からなるモノマーの2〜50量体を云う。(以下、単にオリゴマーと記載する)
反応生成物を上記溶媒に溶解した後、次いでこれにエーテル、石油エーテル、ヘキサン等をその溶解液の2〜10容量倍加え、反応生成物を析出させる。
【0020】
このように製造した重合体中の残存モノマー量は、重合体に対して0.05質量%以下であり、オリゴマー量は0.03質量%以下とすることが好ましい。
即ち、残存モノマー量が0.05質量%を上廻ると、あるいはオリゴマー量が0.03質量%を上廻ると、それらが可塑剤として作用し、この重合体を用いた生体材料が必要とする機械的強度が得られない。更には、重合体の成形加工時に、その加水分解を促進し、重合体の強度低下の原因となる。更には、生体内で使用した際には、局所的に生体組織への刺激性が強くなるという問題も生じる。
【0021】
本発明のトリメチレンカーボネート重合体の製造方法について更に詳記すれば、本発明の方法は、金属触媒の非存在、且つ水がトリメチレンカーボネートに対し質量比で1:0.001〜1:120の範囲で存在する条件下でトリメチレンカーボネートを重合させることに特徴を有する。
本発明の方法では、重合時に水を共存させることにより、トリメチレンカーボネートの重合率が向上するため、水を使用しない場合に比べ、残存モノマーや残存オリゴマーの量も減少する。
また、水を共存させて重合を行うことにより、得られる重合体の分子量の調整が可能となる。
水の使用量は、水がトリメチレンカーボネートに対して質量比で1:0.001〜1:120の範囲である。
この水の添加量が1:120を上廻り水の割合が多くなると、得られる重合体が低分子量化し、任意の形状への加工が困難になるだけでなく、材料強度が不足し、また生体組織への刺激が強くなるため好ましくない。また水の割合が1:0.001より少量となると、重合体は高分子量化するため、生体材料に必要な加水分解速度が得られない。
即ち、水の添加をこのような割合とすることで、得られる重合体の数平均分子量は5,000〜700,000の範囲となる。
【0022】
このように、本発明の製造方法によって得られる重合体は、その生体親和性、形態付与性に優れ、生体内での異物反応等の原因となる金属、モノマー、オリゴマーの含有量が少ないという特徴を有する。
【0023】
このような方法で得られた重合体は、これを成形することよって生体材料として使用する。
このような成形方法としては、キャスト法、射出成形、押出成形、ホットプレス等の公知の方法がある。また、前述のように本発明の重合体は、溶融成形時の分解による強度低下が抑制されるという特徴がある。従って、成形加工時には、その優れた加工安定性により、フィルム、ブロック、チューブ等の任意の形状に成形することが可能であり、複雑な患部の形状に合わせて材料の加工が容易である。
また、本発明生体材料は、これを適当な溶媒に溶解し、この溶液を凍結乾燥することによって材料を多孔質化することもできる。
また、本発明の生体材料は、含有される残存モノマー、オリゴマーが微量であることから、保存中の加水分解による劣化を生じにくく、優れた保存安定性を示すという特徴を有する。
【0024】
本発明の生体材料は、これを組織欠損部への埋め込み後、組織が再生するまでの期間、体温程度の温度でその形態、強度を維持し、組織再生後には分解・吸収されることから、骨および周辺組織の再生膜関連材料、骨充填材、創傷被覆材、創傷補填材、癒着防止等に使用できる。
また、本発明の生体材料は、その特徴を損なわない範囲であれば、生理活性物質等の薬理学的活性剤を添加して、徐放化機能をもたせ、組織再生を促進させることもできる。使用できる薬理学的活性剤としては、抗腫瘍剤、抗癌剤、抗炎症剤、抗生物質あるいは神経成長因子、上皮成長因子、繊維芽細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、軟骨由来因子、軟骨由来成長因子、インシュリン、カルシトニン等のポリペプタイドが例示される。また、アンチセンスDNA、プラスミドDNA、RNA等の遺伝子も含有させることが可能であり、これらの複数を組み合わせて使用することもできる。
更に、ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、リン酸三カルシウム等との複合化も可能である。
更に、本発明の生体材料は、細胞組織工学における各種細胞の培養基材として使用することも可能であり、使用される細胞の好適な例として、繊維芽細胞、上皮細胞、肝実細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞等が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下実施例を挙げて更に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
また、本実施例に於ける金属含量、残存モノマー量及び残存オリゴマー量は、以下の方法で測定した。
【0026】
《金属含量》
重合体を湿式灰化分解し、試料溶液とした後、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法により定量した。
200ml三角フラスコに重合体約10gを精秤し、これに濃硝酸25mlを添加後、ヒーター上で穏やかに加熱分解した。放冷後、再び濃硝酸25mlを添加し、加熱分解を行った。この分解操作を3回繰り返し重合体の大部分を分解した。放冷後、濃硫酸10mlを添加し、ヒーター上で穏やかに加熱し、重合体が炭化するまで濃縮した。放冷後、濃硝酸25mlを添加し、再び加熱濃縮した。この濃硝酸の添加を液が透明になるまで繰り返し行い、重合体を完全に分解した。
放冷後、飽和シュウ酸アンモニウム溶液5mlを添加し加熱した。この操作を2回繰り返し、硝酸を完全に除去した。放冷後、50mlメスフラスコに移し、濃硫酸5mlを添加した。放冷後水を加え50mlとし、測定用試料溶液とした。この試料溶液を用い、ICP発光分析法により金属含量を定量した。
【0027】
《残存モノマー量》
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により残存モノマー量を定量した。
【0028】
《残存オリゴマー量》
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、GPCにより残存オリゴマー量(重合体または共重合体の2〜50量体量)を定量した。
【0029】
(実施例1)
温度計、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート(ベーリンガー・インゲルハイム社製)30gと水0.05gを加え、反応容器内を1×10−1mmHgの減圧下、触媒を使用せず145℃で6時間の重合反応を行った。
反応後、生成物をクロロホルムに溶解し、これをメタノール中に加え生成物を析出させることにより精製処理を行い、トリメチレンカーボネート重合体27gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、380,000であった。また、金属含量は0.5ppm以下、残存モノマー量は0.01%以下、残存オリゴマー量は0.01%であった。
この重合体を110℃で2時間真空乾燥した後、240℃に設定したメルトインデクサーに装入し、13分後のストランドを取り出すことにより押し出し成形した。
得られた成形体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、180,000であった。この結果、分子量残存率は47%であった。尚、分子量残存率は下式で求めた結果をいう。
分子量残存率(%)=(成形体の分子量)/(重合体の分子量)×100
【0030】
(実施例2)
温度計、窒素導入管、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30gと水0.05gを加え、触媒を使用せず、100ml/分の窒素気流下、145℃で7.5時間の重合反応を行った。
反応後、実施例1と同方法により精製処理を行い、トリメチレンカーボネート重合体21gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、27,000であった。また、金属含量は0.5ppm以下、残存モノマー量は0.01%以下、残存オリゴマー量は0.01%であった。
この重合体を110℃で2時間真空乾燥した後、240℃に設定したメルトインデクサーに装入し、13分後のストランドを取り出すことにより押し出し成形した。
得られた成形体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、15,000であった。この結果、分子量残存率は56%であった。
【0031】
(実施例3)
温度計、窒素導入管、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30gと水3gとを加え、触媒を使用せず、100ml/分の窒素気流下、145℃で7.5時間の重合反応を行った。
反応後、実施例1と同方法により精製処理を行い、トリメチレンカーボネート重合体19gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、16,000であった。また、金属含量は0.5ppm以下、残存モノマー量は0.01%以下、残存オリゴマー量は0.01%であった。
この重合体を110℃で2時間真空乾燥した後、240℃に設定したメルトインデクサーに装入し、13分後のストランドを取り出すことにより押し出し成形した。
得られた成形体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、10,000であった。この結果、分子量残存率は63%であった。
【0032】
(比較例1)
温度計、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30gのみを加え、反応容器内を1×10−1mmHgの減圧下、触媒を使用せず145℃で6時間の重合反応を行った。
反応後、生成物をクロロホルムに溶解し、これをメタノール中に加え生成物を析出させることにより精製処理を行い、トリメチレンカーボネート重合体29gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、900,000と非常に高分子量となった。
【0033】
(比較例2)
温度計、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30gと触媒としてオクタン酸第一スズ0.003gを加え、反応容器内を1×10−1mmHgの減圧下、145℃で6時間の重合反応を行った。
反応後、生成物をクロロホルムに溶解し、これをメタノール中に加え生成物を析出させることにより精製処理を行い、トリメチレンカーボネート重合体28gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、180,000であった。また、金属含量は15ppm、残存モノマー量は0.01%以下、残存オリゴマー量は0.01%であった。
この重合体を110℃で2時間真空乾燥した後、240℃に設定したメルトインデクサーに装入し、13分後のストランドを取り出すことにより押し出し成形した。
得られた成形体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、28,000であった。この結果、分子量残存率は16%と非常に低かった。
【0034】
(実施例4)
温度計、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30g、L-ラクチド(アルドリッチ社製試薬)1.5gおよび水0.05gを加え、反応容器内を1×10−1mmHgの減圧下、触媒を使用せず145℃で6時間の重合反応を行った。
反応後、生成物をクロロホルムに溶解し、これをメタノール中に加え生成物を析出させることにより精製処理を行い、トリメチレンカーボネート−乳酸共重合体15gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、90,000であった。また、重合体の組成分析をH−NMRを使用し行った結果、トリメチレンカーボネート構成単位と乳酸構成単位のモル比は95:5であった。
また、金属含量は0.5ppm以下、残存モノマー量は0.01%以下、残存オリゴマー量は0.01%であった。
この重合体を110℃で2時間真空乾燥した後、240℃に設定したメルトインデクサーに装入し、13分後のストランドを取り出すことにより押し出し成形した。
得られた成形体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、52,000であった。この結果、分子量残存率は58%であった。
【0035】
(比較例3)
温度計、排気口を備えた内容積150mlの反応容器に、トリメチレンカーボネート30g、L-ラクチド15gおよび水0.05gを加え、反応容器内を1×10−1mmHgの減圧下、触媒を使用せず145℃で18時間の重合反応を行った。
反応後、生成物をクロロホルムに溶解し、これをメタノール中に加え生成物を析出させることにより精製処理を行い、トリメチレンカーボネート−乳酸共重合体3gを得た。
得られた重合体の数平均分子量をGPCにより測定した結果、3,000と非常に低分子量となった。
【0036】
<生体適合性評価>
実施例1で製造した本発明重合体を、ホットプレスを使用して厚さ約200μmのフィルムに成形した。これをエチレンオキサイドで滅菌した後、このフィルムを犬の下顎骨の人為的欠損部に移植した。
その結果、約12週間には複合体フィルムが消失しており、骨欠損部は再建されていた。また、移植部周辺の生体組織には異物反応は見られなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の生体材料は、生体組織と基材の界面での生体親和性、形態保持性に優れ、生体組織が本来のマトリックスを形成するまでの期間に於いて適切な強度と形態を維持し、生体組織の修復に伴って基材が分解吸収されるという特異的な分解性を有する。
更には、生体内で組織に対して異物反応等の影響を生じないという特徴を有する。
Claims (1)
- 金属触媒の非存在、且つ水がトリメチレンカーボネートに対し質量比で 1:0.001 〜 1:120 の範囲で存在する条件下でトリメチレンカーボネートを重合させる方法により製造した、金属含量が0.5ppm以下で、トリメチレンカーボネート構成単位を90モル%以上含有し、モノマー含量が0.05質量%以下で、且つ2〜50量体含量が0.03質量%以下であるトリメチレンカーボネート重合体からなる生体材料。
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