JP5217149B2 - 生分解性球状粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、主に医薬医療用機器であるカテーテル、ニードル、注射器などが有する、その粒子サイズよりも小さな微小口径を有する管を通して搬送される生分解性球状粒子に関する。
医学の分野では、治療の安全性や、患者に負担をかけない低侵襲治療の考え方が重視されるようになっている。それに伴い、より安全な材料を設計・合成する技術や、体内に投与する技術が発達している。その一つは、細い口径の管を通した治療あるいは薬投与の技術である。管の口径が細いことで、患者の体を無駄に切開することもなくなり、体内への管の挿入に伴う痛みも激減した。カテーテルによる治療はその顕著な例である。もう一つは、体内に残らない生分解性・体内吸収性の材料に関する技術である。ポリ乳酸やポリグリコール酸、ポリカプロラクトンなどから成る縫合糸や整形外科材料は臨床現場でも使用されており、最近ではこれらの素材を活用した再生医療の研究成果も多数報告されている。体内で分解・吸収されるポリマー粒子についても主に薬剤のキャリアとして知られている(特許文献1、2参照)。
また、肝臓などの臓器の手術に伴う切開に先立って、塞栓材料を血管内に注入することにより、確実かつ迅速に止血し、出血を最小限にすることができる。また、かかる塞栓材料を用いた技術、療法として、出血防止のための用途の他に、切除不能な腫瘍に対し、止血により栄養を遮断する動脈塞栓術への用途、さらには抗癌剤と血管塞栓材料とを組み合わせて投与して腫瘍内での抗癌剤濃度を高く維持する化学塞栓療法が知られている。一方で、カテーテルおよびその操作手法の発達により、適当なキャリア微粒子や塞栓材料を局所位へ選択的に正確に送り込むことが可能となっている。
血管塞栓材料としては、これまでゼラチンスポンジ、ポリビニルアルコール、分解性デンプン粒子(DSM)、ヨウ化ケシ油、架橋コラーゲン繊維、エチルセルロースマイクロカプセル、シアノアクリレート、ステンレスコイルなどが用いられていた。中でもポリマー粒子からなる塞栓材料は、造影剤などに分散させた状態で、生体内に配置されたマイクロカテーテルを介して、マイクロシリンジなどにより患部に向けて注入することにより体内に導入することができる。かかるポリマー粒子の塞栓材料は深部に位置する患部まで到達して塞栓を形成することができる。
しかしながら、ポリマー粒子からなるキャリア微粒子や塞栓材料には以下のような問題点がある。
(1)形状が不定形で粒度分布が広いため、目的部位でその機能が発揮されないことがある。
(2)カテーテル、ニードルまたは注射器などの医薬医療用機器の管内において凝集あるいは高粘度化して詰まることがある。特にカテーテルの内径よりも小さい粒子を通過させる際に詰まりが起こることが多い。
(3)患部に至る途中の正常な血管内において凝集あるいは高粘度化するため、目的部位まで到達させることができないことがある。
(4)塞栓材料として用いた場合、材質が硬く、血管の断面形状にフィットしないため、血流量を低下させることはできても、完全に塞栓できない場合がある。
(5)さらに、生体内分解性材料としては、血液に接する箇所とそうでない箇所など、置かれた環境の微小な違いにより分解速度が大きく異なることがある。
(6)粒径が適当でないため、目的部位に留置できないことがある。
(7)特にカテーテルの内径よりも小さい粒子において、カテーテルを通過した後に、もとの形状に復元せずに、つぶれたままの状態で患部に送られるため、目的部位よりも遠位で塞栓することがある。
従来技術として、生分解性ポリマーであるポリ乳酸(以下、PLAと記載)またはポリ(乳酸/グリコール酸)コポリマー(以下PLGAと記載)からなる粒子や(非特許文献1参照)、特定の薬剤を含有する生分解性材料が開示されているが(特許文献3参照)、これは基材ポリマーの疎水性が高く、上記の(2)〜(5)の問題があった。
一方、ポリエチレングリコール(以下、PEGと記載)と、PLAまたはPLGAからなるブロックコポリマーとして、PLA−PEG、PLA−PEG−PLA、PLGA−PEG−PLGAなどの構造からなる基材ポリマーに薬剤を混合して徐放させるという技術の製薬・獣医薬用途への適用が開示されている(特許文献4参照)。しかし、これは基材ポリマーの柔軟性と成形に必要な強度の調整が困難であり、上記の(1)〜(5)のいずれかの問題があった。
また、水不溶性のPEG系コポリマーからなる血管塞栓材料が開示されている(特許文献5)。しかし、これも基材ポリマーの柔軟性と成形に必要な強度との調整が困難であり、上記の(1)〜(5)および(7)のいずれかの問題があった。
上記の生分解性粒子をカテーテルからの注入によって搬送する際のカテーテル管内での詰まりを改善する技術として、フィルムの引張弾性率が1500MPa以下である、ポリエチレングリコール系コポリマー等の水不溶性ポリマーからなる粒子が開示されている(特許文献6)。しかしながら、ここに開示される技術は、同文献の実施例に示されるようにカテーテル管の内径よりも小さい粒子サイズのカテーテル通過性を改善する技術にとどまっており、カテーテル管の内径よりも大きな径の粒子の通過性を改善するための発明に至っていないため、カテーテル管の内径よりも大きい径を持った粒子によるカテーテル管内での詰まりを防止するために必要なコポリマーの分子量範囲、あるいは組成等が見いだされていない。
更に、特許文献5,6にはカテーテル通過後の復元性に関する(7)の問題については何ら記載されておらず、復元するために必要なコポリマーの分子量範囲、あるいは組成等が見いだされていない。
特許第3242118号公報 特許第3428972号公報 特開平5−969号公報 特公平5−17245号公報 特開2004−167229号公報 特開2004−313759号公報 バスティアン・P(Bastian P),バートカウスキー・R(Bartkowski R)ら著,「ケモエンボリゼーション・オブ・エクスペリメンタル・リバー・メタスタシーズ(Chemo−embolization of experimental liver metastases.)」,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス・アンド・バイオファーマシューティクス(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics),1998年,第43巻,p243−254.
本発明の目的は、主に医薬医療用途であるカテーテルやニードル、注射器などの器具が有する、その粒子サイズよりも小さい内径を持つ微小口径の管内、あるいは血管内において凝集詰まりを起こすことなく、かつ管内通過後にもとの形状を復元でき、特定期間経過後に材料がスムーズに分解し、最終的に分解成分が吸収され得る、または体外へ排出可能であるような生分解性の球状粒子を提供することにある。
1.水溶性ポリマーと生分解性ポリマーとを含み、該水溶性ポリマーの該生分解性ポリマーに対する重量含有比率が0.60〜0.70である基材を有することを特徴とする球状粒子。
2.37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有し、平均粒子径が100μm以上であり、かつ飽和含水状態において、その粒径の60%以上、85%以下の口径を有するカテーテルを通過させた後の粒径が該カテーテルの口径よりも大きいことを特徴とする球状粒子。
3.水溶性ポリマーと生分解性ポリマーとを含む基材を有することを特徴とする前記2に記載の球状粒子。
4.該水溶性ポリマーと該生分解性ポリマーとが結合した水不溶性コポリマーを基材とすることを特徴とする前記1または3に記載の球状粒子。
5.該水溶性ポリマーの該生分解性ポリマーに対する重量含有比率が0.60〜0.70であることを特徴とする前記3または4に記載の球状粒子。
6.該水溶性ポリマーが、ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体であることを特徴とする前記1、3、4または5に記載の球状粒子。
7.該ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであることを特徴とする前記6に記載の球状粒子。
8.該ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体の重量平均分子量が1,000以上、40,000以下であることを特徴とする前記6または7に記載の球状粒子。
9.該生分解性ポリマーがα−ヒドロキシ酸単位を含有することを特徴とする前記1、3、4ないし8のいずれかに記載の球状粒子。
10.該α−ヒドロキシ酸単位が、ポリ乳酸または/およびポリグリコール酸であることを特徴とする前記9に記載の球状粒子。
11.該水不溶性コポリマーの重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする前記4〜10のいずれかに記載の球状粒子。
12.37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量および/または重量平均分子量の割合が、浸漬前に対して80%以下であることを特徴とする前記1〜11のいずれかに記載の球状粒子。
13.血管塞栓材料として用いられることを特徴とする前記1〜12のいずれかに記載の球状粒子。
14.粒径が100〜2000μmであることを特徴とする前記1〜13のいずれかに記載の球状粒子。
本発明によれば、以下に説明するとおり、主に医薬医療用途であるカテーテル、ニードル、注射器などの器具が有する、その粒子サイズよりも小さい内径を持つ管内、あるいは血管内において凝集詰まりを起こすことなく、かつ管内通過後にもとの形状を復元でき、さらに留置部位や留置環境によらず特定の期間後に生体内でスムーズに分解し、最終的には分解成分が吸収され得るか、または体外へ排出可能である粒子を提供できる。
本発明における球状粒子は、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有するものであり、かかる特性を有するがゆえに医薬医療用途、特に体内に留置する塞栓材料用途に用いることが可能となる。
本発明において、粒子が37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有することとは、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中に浸漬し一定期間経過した後の粒子の乾燥重量または、粒子を構成するポリマーの重量平均分子量が、浸漬前の80%以下に減少することを意味する。浸漬する時間は特に限定されず、長時間の経過後に分解するものであってもよい。
本発明において、球状の粒子とは、任意の一方向から粒子を円として観察した場合の、円の内径の最大長に対する最大長垂直長の比率が0.8以上、1.00以下の範囲に含まれるような粒子を意味し、真球形状は言うまでもなく、ラグビーボール型の楕円体や回転楕円体などの形状も含む。
本発明の球状粒子は、平均粒子径が100μm以上である場合にあって、かつ飽和含水状態とした場合に、口径がその粒子サイズよりも小さな微小口径の管内を抵抗なく通過した後も上記球状形状(球形)を保持していることが好ましい。特に粒径に対する口径の大きさが60%以上、85%以下の微小口径の管内を通した後も球形が保持されていることが好ましい。このような微小口径の管内を通過するとき、球状粒子はその粒径の15%以上、40%以下の大きさ分、圧縮される方向に変形する。従って、本発明の球状粒子は、圧縮負荷を与えてかかる変形をさせた場合に、負荷を除去すれば球形に戻る特性を有するものであり、元の形状に復元することが好ましい。とりわけ塞栓材料用途で用いられる場合は、カテーテルは塞栓する血管よりも細いため、粒子はカテーテルを通過した直後に血管を塞栓できる形状を有するものでなければならない。従って、飽和含水状態とした場合の球状粒子について、その粒径の60%以上、85%以下の口径を有するカテーテル内に球状粒子を通過させたとき、何らの外的な操作を加えることがなくとも、通過後の球状粒子の粒径が自然にカテーテル口径以上となることが好ましい。
なお、本発明において、粒径とは、粒子径と区別して用いているが、粒子径が複数の粒子の平均の径等を表すのに対し、粒径は1個の粒子の径として用いている。
また、ここでいう飽和含水状態とは、常温の純水中に浸漬した材料について、数時間が経過してもその含水率の変化が5%以内になった状態をいう。
すなわち、例えば血管塞栓用途に用いられた場合、マイクロカテーテルなどを用いて投与したあとにおける血管内の粒子のように、血液中の水分により飽和含水状態となった状態において球形を保持できない粒子は、特定方向の粒径が小さくなるために目的部位よりも遠位側を塞栓してしまう可能性が非常に高く、適当ではない。
本発明において、水溶性ポリマーとは、常圧下で飽和濃度以下の濃度でポリマーを水の中に添加したとき、添加した量の全てが溶解し、均一な溶液を与えるポリマーのことをいう。ポリマーの溶解に必要な時間や温度は特に限定されない。かかる水溶性ポリマーとしてはポリアルキレングリコールもしくはその誘導体を用いることが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール(以下、PEGと記載)、ポリプロピレングリコールが挙げられるが、生体適合性があり、医薬医療用途において実績のあるPEGがもっとも好ましい。水溶性ポリマーの分子量は特に限定されないが、体内特に血管内で使用された場合には、腎糸球体を通過して体外に排出され、より安全性が高い40000以下の分子量が好ましい。
また、水不溶性ポリマーとは、かかる水溶性ポリマーの定義から外れるポリマーをいう。
本発明の球状粒子の造粒方法としては、転動造粒法、流動層造粒法、噴霧層造粒法、撹拌造粒法、解砕造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法、液滴固化造粒法など公知の方法を採用することができる。例えば、液滴固化造粒法では、水不溶性コポリマーをジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルまたはイソプロピルエーテルなどに溶解し、これを界面活性剤、保護コロイド剤などを含有する水相に分散し、公知の油/水型(以後、O/W型と記載)または水/油/水型(以後、W/O/W型と記載)液中乾燥法あるいはそれに準じた方法、スプレードライ法などの方法により粒子状にすることで製造することができる。ここで用いる界面活性剤、保護コロイド剤としては安定なO/W型エマルションを形成しうるものであれば特に限定されないが、例えばアニオン性界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体など)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチンなどが挙げられる。これらの中から、1種類あるいは複数を組み合わせて使用してもよい。とりわけ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンが好ましく、通常は水溶液として用いる。その水溶液濃度は、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.05重量%以上であり、かつ80重量%以下が好ましく、より好ましくは60重量%以下の範囲の中から選ばれ、この濃度を調整することにより、球状粒子の粒子形状および/または粒径を調整することができる。また、水不溶性コポリマー溶解液のポリマー濃度を調整することによっても、粒子形状および/または粒径の調整が容易に可能となる。
なお、上記製造方法によって製造された粒子は一般的に球状粒子であるが、様々な粒径の粒子を含んでいる。目的の粒径、目的の粒度分布を有する粒子を得るためには、複数の篩いを使用する方法が挙げられる。複数の篩いを目の細かい方を下にして順に積み重ね、最も目の粗い最上段の篩いに、上記製造方法で調製した粒子を分散した液を投入すると、粒子はその粒径よりも小さいメッシュサイズの篩いの上に留まるため、粒子を粒径毎に分けることができる。篩いのメッシュサイズは特に限定されず、目的の粒径と粒度分布に合わせて適宜選択してよい。
本発明において、生分解性ポリマーとは、生体内で分解および/または溶解し、吸収、代謝または体外へ排出される性質を有するポリマーをいう。かかる生分解性ポリマーの種類は、特に限定されるものではなく、天然ポリマー、人工的に合成されたポリマーのいずれであってもよく、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ酸無水物、ポリペプチド、ポリ(α−シアノアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリ(オルソエステル)、ポリフォスファゼン、ポリアミノ酸、生分解性ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリイミノカーボネート、核酸、多糖類などがあり、具体的な代表例としてゼラチン、キチン、キトサン、デキストラン、アラビアゴム、アルギン酸、デンプン、ポリ乳酸(以下、PLAと記載)、ポリグリコール酸(以下、PGAと記載)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(以下、PLGAと記載)、ヒドロキシ末端ポリ(ε―カプロラクトン)−ポリエーテル、ポリカプロラクトン、n−ブチルシアノアクリル酸、および上記ポリマーから成る共重合体などが挙げられる。ポリエステル、多糖類、ポリペプチドなどが好ましいが、α−ヒドロキシ酸単位を含有するものであることが最も好ましい。α−ヒドロキシ酸単位を含有するものの例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸が挙げられる。かかる生分解性ポリマーであって、PEGもしくはPEG誘導体と化学的に結合する性質を有する生分解性ポリマーの原料としては、特に限定されるものではないが、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシカプリン酸、ラクチド、グリコリド、リンゴ酸などを挙げることができ、これらのいずれか1つ以上を含有していることが好ましく、さらには2種類以上を組み合わせて使用しコポリマーとすることがより好ましく、特に乳酸(またはラクチド)とグリコール酸(またはグリコリド)の組み合わせが好ましい。この場合、乳酸とグリコール酸との重量比は100:0〜30:70であることが好ましい。なお、上記の内、乳酸やラクチドのように分子内に光学活性を有する化合物の場合は、D体、L体、D,L体、D体とL体の混合物のいずれであってもよい。
本発明に係る球状粒子は、基材としては水不溶性コポリマーからなることが好ましく、かかる水不溶性コポリマーは、水溶性ポリマーと生分解性ポリマーとが結合した水不溶性コポリマーからなることが好ましい。ここでいう基材とは粒子の形状や立体構造、基本骨格を維持するために必須の構成成分のことをさす。水溶性ポリマーがポリアルキレングリコールである場合は、例えばポリアルキレングリコールもしくはその誘導体をその一成分とするブロックコポリマーが挙げられる。ポリアルキレングリコールまたはその誘導体と物理的に相互作用することにより水不溶化するものであってもよい。とりわけ、PEGもしくはPEG誘導体と生分解性ポリマーが結合した水不溶性コポリマーであることが好ましく、特に限定はされないが、PEGの両末端あるいは片末端に生分解性ポリマーが結合したコポリマー、またはPEGと生分解性ポリマーが交互に結合したコポリマーが好ましく用いられる。
かかるポリアルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール誘導体の重量平均分子量は1,000〜40,000であることが好ましい。1,000より小さいと水不溶性コポリマーの親水性が低く、均一な生分解性が得られないことがある。一方、40,000より大きいと、生体内で分解したコポリマーから生成するPEGが体外に排出されにくくなることがある。また、PEG誘導体の構造は、特に限定されることはなく、マルチアームPEG誘導体も含めた構造のものを好ましく用いることができる。PEGもしくはPEG誘導体と生分解性ポリマーとの重量比は、特に限定されるものではないが、80:20〜5:95の範囲でより好ましく用いることができる。
本発明の水不溶性コポリマーの重量平均分子量は、1,000が好ましく、2,000がより好ましい。上限としては、100,000以下が好ましく、より好ましくは90,000以下である。重量平均分子量が1,000未満であるとゲル状となりカテーテルやニードルの管の表面に粘着し、治療等において目的とする部位まで到達することができない場合があり、一方、重量平均分子量が100,000を超えると生体内で分解するための時間が長くなり過ぎることがある。重量平均分子量の測定方法については、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法で測定することができる。
(分子量測定方法)
精秤した10mgの粒子を2mlのクロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記)用フィルター“マイクレスLG13”(MILLIPORE SLLGH13NL)等を用いてろ過する。そのろ液についてGPC用カラム(東ソーTSK−gel−GMHHR−M)2本、カラム温度35℃、移動相をクロロホルム1ml/min、サンプル打ち込み量100μlの条件下で測定を行い、示差屈折率計(東ソー製RI−8010等が好ましい。)にて検出する。カラムのキャリブレーションは、測定直前に東ソー標準ポリスチレン等を用いて行う。
なお、平均分子量は、データ解析用ワークステーション((株)島津製作所製“Class−Vp”)等を用いて測定することが可能であり、標準ポリスチレンの分子量とカラム溶出時間の関係から得られる検量線を用いる等の手法により算出することができる。
以下、本発明に係る水不溶性コポリマーの製造方法の代表的な例として、ポリアルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール誘導体と生分解性ポリマーとからなる水不溶性ポリアルキレングリコールコポリマーの製造方法を例示する。水不溶性ポリアルキレングリコールコポリマーを合成するための方法は特に限定されるものではないが、溶融重合、開環重合などが挙げられる。例えば、乾燥空気あるいは乾燥窒素気流雰囲気下の撹拌翼を備えた重合槽中に、原料である所定の平均分子量の水溶性ポリマー(ポリアルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール誘導体)と生分解性ポリマー原料(モノマー等)を投入し、その混合物を触媒とともに均一に撹拌しながら加熱することで、水不溶性のコポリマーが得られる。使用する触媒は、通常のポリエステルの重合に使用される触媒であれば特に限定されるものではない。例えば、塩化スズ等のハロゲン化スズ、2−エチルヘキサン酸スズ等の有機酸スズ、ジエチル亜鉛、乳酸亜鉛、乳酸鉄、ジメチルアルミニウム、カルシウムハイドライド、ブチルリチウムやt−ブトキシカリウム等の有機アルカリ金属化合物、金属ポルフィリン錯体またはジエチルアルミニウムメトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。また、ベント付き二軸混練押出機またはそれに類似する撹拌および送り機能を有する装置を用いて、生分解性ポリマー原料、ポリアルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール誘導体および触媒を溶融状態で均一に撹拌、混合、脱気しつつ、連続的に生成した水不溶性コポリマーを取り出すことにより重合を遂行することもできる。さらに、生成した水不溶性コポリマーを良溶媒に溶解し、これを貧溶媒に滴下し沈殿が白濁物として生成した後、白濁物の温度を変化させて再度沈殿物を溶解させた後に再び元の温度にゆっくりと戻して沈殿を再生成させるという再沈操作により、分別精度を向上させることもできる。前記分別沈殿法に使用する良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランやハロゲン系有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム)またはこれらの混合溶媒を例示することができる。前記分別沈殿法に使用する貧溶媒としては、アルコール系や炭化水素系の有機溶媒が好ましい。そして、生分解性ポリマーと水溶性ポリマーの種類、さらにはそれらの分子量を適宜選択することによって、多様な種類の水不溶性ポリアルキレングリコール系コポリマーを製造することができる。
上記においては、水不溶性ポリアルキレングリコールコポリマーについて例示したが、ポリアルキレングリコールの代わりにポリヒドロキシメチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ポリビニルピロリドンなどを用いても、同様に水不溶性コポリマーを得ることができる。
本発明の球状粒子は、単独の水不溶性ポリマーから成っていてもよいし、複数の水不溶性ポリマーのブレンドから成っていてもよい。
本発明の球状粒子において、水溶性ポリマーと生分解性ポリマーの含有量は、H−NMRを測定することによって知ることができる。具体的には、水溶性ポリマーと生分解性ポリマーのそれぞれに特徴的な化学構造に由来するプロトンのケミカルシフトのシグナルの積分値、繰り返し単位に含まれる水素原子の数および繰り返し単位の分子量から求められる。たとえば、ポリエチレングリコールとポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体から成る水不溶性コポリマーの場合には、ポリエチレングリコールのエチレン基の4つの水素原子に由来するケミカルシフト3.4−3.7ppmのシグナルの相対積分値がA、乳酸単位のメチル基の3つの水素原子に由来するケミカルシフト1.4−1.6ppmのシグナルの相対積分値がB、グリコール酸単位のメチレン基の2つの水素原子に由来するケミカルシフト4.7−4.9ppmのシグナルの相対積分値がCであった場合、それぞれの繰り返し単位の分子量44、72、58を用いて、ポリエチレングリコールの含有量は下記式で表される。
含有量(%)=100×(44×A/4)/((44×A/4)+(72×B/3)+(58×C/2))
本発明の水溶性ポリマーと生分解性ポリマーとを含む血管塞栓材料において、水溶性ポリマーの生分解性ポリマーに対する重量含有比率は0.60〜0.70が好ましい。0.60より少ない場合には、特に粒子に成型した場合に柔軟性が不足して、カテーテル内径よりも大きい径の粒子がカテーテルを通過できない。また、0.70よりも多い場合には、カテーテル通過後に形状が元に戻らず復元性が得られない。
本発明の球状粒子は、腫瘍の栄養血管を閉塞して、腫瘍を兵糧攻めにする、いわゆる塞栓治療には最も好ましく用いられ、生分解し体内に残留しないという高い安全性を有する。本発明の球状粒子の形状は特に限定されないが、特に人体を対象とした医薬医療用途を考慮した場合、37℃において粒子形状を保持することが好ましく、さらには球状粒子であることが好ましい。37℃において液状、ジェル状など粒子形状を保持しない場合、強度が低いために目的とする部位に留置できない可能性が生じる。一方、形状を保持した粒子であればより効果的に体内留置および目的とする機能を発揮することが可能となる。
本発明の球状粒子は血管塞栓材料としてそのまま使用することができ、あるいは使用時に適当な造影剤あるいは分散媒に分散して使用することができる。造影剤としては、水溶性が好ましく、公知のものを用いることができ、イオン性、非イオン性のいずれであってもよい。具体的には、“イオパミロン”(シェーリング社製)、“ヘキサブリックス”(栄研化学)、“オムニパーク”(第一製薬製)、“ウログラフィン”(シェーリング社製)、“イオメロン”(エーザイ製)などを挙げることができる。この場合、血管塞栓材料と造影剤を使用前に混合してから所定の部位へ注入することができる。血管塞栓材料の含水性が高いと、造影剤の一部が水とともに血管塞栓材料内部に含浸・保持されて、造影性を効率良く発現するため、より好ましい。分散媒としては、分散剤(例えばポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロースなど)、保存剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖など)を注射用蒸留水に溶解したもの、あるいはゴマ油、コーン油などの植物油が挙げられる。分散された血管塞栓材料をカテーテルにおいて用いる際、先端が体内の所望箇所近傍まで導かれたカテーテルを介して、適当な動脈から腫瘍支配動脈へ、X線透視により造影剤位置をモニタリングしつつ、投与する。
また、この生分解性血管塞栓材料には通常の注射剤に用いられる防腐剤、安定化剤、等張化材、可溶化剤、分散剤、賦形剤などを添加してもよい。
本発明の血管塞栓材料は、油性造影剤であるヨウ化ケシ油(リピオドール・ウルトラフルイド)などと併用してもよい。また、ヨウ化ケシ油と制癌剤(例えば、スマンクス、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、アドレアマイシン、塩酸イリノテカン、フルオロウラシル、塩酸エピルビシン、シスプラチン、パクリタキセル、ロイコボリンカルシウム、ビンブラスチン、アルトレタミン、ブレオマイシン、塩酸ドキソルビシン、ピシバニール、クレスチン、レンチナン、シクロホスファミド、チオテパ、テガフール、硫酸ビンブラスチン、塩酸ピラルビシン)などを併用してもよい。
本発明の球状粒子は、薬効成分を含まなくても血管塞栓材料としての目的を達することができるが、さらなる効果付与の目的で、薬効成分を含有することも好ましい。薬効成分としては、薬効が知られるものであれば特に限定されるものではないが、前記した制癌剤、管新生阻害剤、ステロイド系ホルモン剤、肝臓疾患薬、痛風治療薬、糖尿病薬、循環器用薬、高脂血症薬、気管支拡張薬、抗アレルギー薬、消化器官用薬、抗精神薬、化学療法剤、抗酸化剤、ペプチド系薬物、タンパク系薬物(例えば、インターフェロン)などが挙げられる。
本発明の球状粒子は、特定の期間経過後に生体内で分解し、分解成分が吸収または体外へ排出される材料であることが望まれるため、37℃のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと省略)(pH7.2〜7.5)浸漬28日後における残存重量が、浸漬前の80%以下である特性を有することが好ましい。すなわち、血管塞栓材料が分解によりその分子量が低下し、37℃のPBSに溶けやすくなるため、かかる指標により生分解性を評価することが可能となる。なお、ここで言う重量とは、乾燥状態における粒子の重量をいう。さらには該残存重量が70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。PBS浸漬28日後の重量測定方法については、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法で測定することができる。
(PBS浸漬28日後の重量測定方法)
粒子20mg(乾燥状態における重量)を精秤し、栄研器材(株)製の滅菌丸底10mlスピッツ管に入れ、純水にて10倍希釈したPBS(ナカライテスク(株)製10倍濃縮 pH7.4、Code.No.27575−31)を10ml注入する。これを37℃に設定した恒温槽“Laboster LC−110”(タバイエスペック(株)製)内で、100回転/分の“Tube Rotertor TR−350”((株)井内盛栄堂製)によって攪拌しながら、インキュベーションする。インキュベーションされた溶液を7日おきに3000回転/分で遠心分離し、上澄み液を分離後、新しいPBSと交換する。
PBS浸漬28日後の粒子について、3000回転/分で遠心分離し、上澄み液を除去し、さらに10mlの純水で洗浄する。再び3000回転/分で遠心分離して純水を除去し、粒子重量が一定になるまで真空乾燥を行い、得られた粒子の重量を精秤する。なお、ここで粒子重量が一定とは、数時間が経過しても重量変化が5%以内に収まる状態をいう。残存重量割合(W(%))は、PBS浸漬前の重量(W(g))、28日浸漬後の重量(W(g))から、W(%)=W/W×100により算出することができる。
本発明の球状粒子は、37℃のPBS浸漬28日後における重量平均分子量が、浸漬前の80%以下である特性を有することが好ましい。さらには該重量平均分子量が50%以下であることがより好ましい。37℃のPBS浸漬28日後の重量平均分子量が80%以下である特性を有することにより、体内において粒子素材の低分子化、溶出、圧潰がスムーズに行われるため、使用後、不要となった粒子の体内に占める体積が減少し、人体への影響が小さくなる。
本発明の球状粒子が粒子の場合、粒子の粒径および粒度分布の測定は、市販の種々の測定装置で可能であって、特にリーズ・アンド・ノースラップ社(株)製粒度分布測定装置“マイクロトラックシリーズ”によるものは測定を生理食塩水中で行うことができるので、血管または体内の環境に近い状態で測定することができる点で好ましい。またはこれと同等の結果が得られる装置によるものであれば問題ない。粒径は、体積平均の値より算出され、“マイクロトラックシリーズ”においては、粒子の真球度に依らず、“MV”値として表示される。本発明において粒径、粒度分布とは、25℃での純水または生理食塩水中におけるそれを指す。
粒子は粒径が100μmが好ましく、上限としては2,000μm以下であることが好ましく、1,500μm以下であることがより好ましい。この範囲であるとカテーテル、ニードルまたは注射器などを介してスムーズに体内へ留置でき、目的部位で機能を発揮することが可能であるため、好ましく、この範囲であると目的部位を効果的に塞栓可能であるため、好ましい。
以下実施例にて、粒子のカテーテル通過性について行った実験結果を示すことにより、本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。以下、実施例における測定方法を示す。
(重量平均分子量の測定方法)
精秤した10mgの粒子を2mlのクロロホルムに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記)用フィルター“マイクレスLG13”(MILLIPORE SLLGH13NL)でろ過した。そのろ液についてGPC用カラム(東ソーTSK−gel−GMHHR−M)2本、カラム温度35℃、移動相をクロロホルム1ml/min、サンプル打ち込み量100μlの条件下で測定を行い、示差屈折率計(東ソー製RI−8010)にて検出した。カラムのキャリブレーションは、測定直前に東ソー標準ポリスチレンを用いて行った。
なお、平均分子量は、データ解析用ワークステーション((株)島津製作所製“Class−Vp”)を用い、標準ポリスチレンの分子量とカラム溶出時間の関係から得られる検量線を用いて算出した。
(ポリエチレングリコール含有率算出方法)
ポリマー0.1gを1mLの重水素化クロロホルムに溶解させ、270MHz超伝導FT−NMR EX−270(JOEL社製)にてH−NMRを測定する。
ポリエチレングリコールのエチレン基の4つの水素原子に由来するケミカルシフト3.4−3.7ppmのシグナルの相対積分値をA、乳酸単位のメチル基の3つの水素原子に由来するケミカルシフト1.4−1.6ppmのシグナルの相対積分値をB、グリコール酸単位のメチレン基の2つの水素原子に由来するケミカルシフト4.7−4.9ppmのシグナルの相対積分値をCとすると、それぞれの繰り返し単位の分子量44、72、58をもちいて、ポリエチレングリコールの含有量は下記式で表される。
含有量(%)=100×(44×A/4)/((44×A/4)+(72×B/3)+(58×C/2))
(平均粒子径、粒度分布)
リーズ・アンド・ノースラップ社(株)製粒度分布測定装置“マイクロトラックシリーズ”を使用して25℃・生理食塩水中にて測定した。粒径は、体積平均の値より算出され、“マイクロトラックシリーズ”においては、粒子の真球度に依らず、“MV”値として表示される。
(PBS浸漬28日後の重量測定方法)
粒子20mg(乾燥状態における重量)を精秤し、栄研器材(株)製の滅菌丸底10mlスピッツ管に入れ、純水にて10倍希釈したPBS(ナカライテスク(株)製10倍濃縮 pH7.4、Code.No.27575−31)を10ml注入した。これを37℃に設定した恒温槽“Laboster LC−110”(タバイエスペック(株)製)内で、100回転/分の“Tube Rotertor TR−350”((株)井内盛栄堂製)によって攪拌しながら、インキュベーションした。インキュベーションされた溶液を7日おきに、3000回転/分で遠心分離し、上澄み液を分離後、新しいPBSと交換した。
PBS浸漬28日後の粒子について、3000回転/分で遠心分離した後、上澄み液を除去し、さらに10mlの純水で洗浄して、再び3000回転/分で遠心分離して純水を除去した後、粒子重量が一定になるまで真空乾燥を行い、得られた粒子の重量を精秤した。残存重量割合(W(%))は、PBS浸漬前の重量(W(g))、28日浸漬後の重量(W(g))から、W(%)=W/W×100により算出することができる。
<製造例1>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)4.96g、グリコリド(ベーリンガー・インゲルハイム社製)1.66gと脱水済みのPEG(日本油脂工業製SUNBRIGHT DKH−20T)2.88gを混合し、150℃で溶解・混合させた後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業製)を0.1mol/Lの濃度になるように溶解したトルエン溶液460μLを添加して反応させ、PLGA−PEG−PLGA構造を有するコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のジエチルエーテル/アセトン混合液中へ滴下して白色沈殿を得た。上述のGPC法による重量平均分子量は58,000であった。
<製造例2>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)1.42g、グリコリド(ベーリンガー・インゲルハイム社製)1.44gと脱水済みのPEG(日本油脂工業製SUNBRIGHT MEH−20T)2.88gを混合し、150℃で溶解・混合させた後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業製)を0.1mol/Lの濃度になるように溶解したトルエン溶液460μLを添加して反応させ、PLGA−PEG−PLGA構造を有するコポリマーを得た。このコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のジエチルエーテル/アセトン混合液中へ滴下して白色沈殿を得た。上述のGPC法による重量平均分子量は42,000であった。
<実施例1>
製造例1,2に示した精製コポリマーを7:3の重量比率でジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリ(ラクチド/グリコド)共重合体に対する重量含量比率は0.61であった。
かかる粒子のカテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、何の問題もなく注入可能であり、先端部を通過した粒子の形状は球形であった。最大径540μmを有する粒子はカテーテルの中で30%変形したにもかかわらず通過した粒子の形状は球形であり、カテーテル内径よりも大きい径に復元していた。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ30%であった。
<実施例2>
製造例1,2に示した精製コポリマーを55:45の重量比率でジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリ(ラクチド/グリコド)共重合体に対する重量含量比率は0.69であった。
カテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、何の問題もなく注入可能であり、先端部を通過した粒子の形状は球形であった。最大径540μmを有する粒子はカテーテルの中で30%変形したにもかかわらず通過した粒子の形状は球形であり、カテーテル内径よりも大きい径に復元していた。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ35%であった。
<実施例3>
製造例1,2に示した精製コポリマーを65:35の重量比率でジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところから、ポリエチレングリコールのポリ(ラクチド/グリコド)共重合体に対する重量含量比率は0.63であった。
カテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、何の問題もなく注入可能であり、先端部を通過した粒子の形状は球形であった。最大径540μmを有する粒子はカテーテルの中で30%変形したにもかかわらず通過した粒子の形状は球形であり、カテーテル内径よりも大きい径に復元していた。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ30%であった。
<比較製造例1>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)40.3g、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを加え、140℃で反応させてポリ(L−ラクチド)を得た。得られたポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は約70,000であった。
<比較例1>
比較製造例1にて得られたポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリラクチドに対する重量含量比率は0.00であった。このポリ(L−ラクチド)の球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。一部に先端部を通過した粒子があったが、ほとんどの粒子はマイクロカテーテルを通過できなかった。また、CORDIS(コーディス)社製カテーテル MASS TRANSIT(全長約1,400mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。一部に先端部を通過した粒子があったが、ほとんどの粒子はマイクロカテーテルを通過できなかった。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ98%であった。
<比較製造例2>
窒素気流下においてフラスコにL−ラクチド(ピュラック・バイオ・ケム社製)40.3gと脱水済みの平均分子量8,000のポリエチレングリコール(日本油脂製 DKH−80H)8.3gを140℃で溶融・混合後、ジオクタン酸スズ(和光純薬工業(株)製)8.1mgを添加し、180℃で反応させて、A−B−A型コポリマー(PLA−PEG−PLA)を得た。得られたコポリマーをクロロホルムに溶解し、大過剰のメタノール中へ滴下して、白色沈殿物を得た。GPC法による重量平均分子量は約47,000であった。
<比較例2>
上記精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を
得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画
粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アン
ド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリラクチドに対する重量含量比率は0.11であった。カテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。一部に先端部を通過した粒子があったが、ほとんどの粒子はマイクロカテーテルを通過できなかった。また、CORDIS(コーディス)社製カテーテルMASS TRANSIT(全長約1,400mm、先端部内径約680μm)に注入したところ、注入開始後すぐに強い抵抗と共に注入不可となった。一部に先端部を通過した粒子があったが、ほとんどの粒子はマイクロカテーテルを通過できなかった。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ98%であった。
<比較例3>
製造例1,2に示した精製コポリマーを3:7の重量比率でジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を得た。この球形粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、球形粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリ(ラクチド/グリコド)共重合体に対する重量含量比率は0.83であった。
カテーテル通過性について調べた。球形粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、何の問題もなく注入可能であった。しかしながら、カテーテルを通過した粒子は変形したまま潰れており、球形をとどめていなかった。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ40%であった。
<比較例4>
製造例2に示した精製コポリマーをジクロロメタンに溶解し、O/W液中乾燥法により、球形粒子を調製したが粒子は球状にならなかった。この粒子を真空乾燥し、次いでナイロンメッシュにより分画した。この分画粒子を生理食塩水に浸漬し、粒子を含む分散液を得た。粒度分布をリーズ・アンド・ノースラップ社製の“マイクロトラックHRA−X100”で測定すると、体積平均粒子径約450μm、分布幅が平均粒子径±90μmであり、最大粒径は約540μmであった。粒子をクロロホルム−dに溶解してH−NMRを測定したところ、ポリエチレングリコールのポリ(ラクチド/グリコド)共重合体に対する重量含量比率は1.04であった。
カテーテル通過性について調べた。粒子分散液をシリンジからBOSTON SCIENTIFIC(ボストンサイエンティフィック)社製カテーテルFasTRACKER−10 Infusion Catheter(全長約1,550mm、先端部内径380μm)に注入したところ、何の問題もなく注入可能であった。しかしながら、カテーテルを通過した粒子は変形したまま潰れており、球形をとどめていなかった。なお、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に上記球形粒子を加え、37℃で28日間経過後、処理前の重量と比較して残存重量を求めたところ40%であった。
Figure 0005217149
Figure 0005217149
本発明は、血管塞栓材料に限らず、カテーテル、ニードル、注射器など管を通して搬送される医薬の担体や医療用機器などにも応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。

Claims (11)

  1. 水溶性ポリマーと生分解性ポリマーとを含む基材を構成成分とし、
    前記水溶性ポリマーの前記生分解性ポリマーに対する重量含有比率は、0.60〜0.70であり、
    37℃のリン酸緩衝生理食塩水中において分解性を有し、平均粒子径が100μm以上であり、かつ飽和含水状態において、前記平均径の60%以上85%以下の口径を有するカテーテルを通過させた後の平均径が該カテーテルの口径よりも大きいことを特徴とする球状粒子。
  2. 前記水溶性ポリマーと前記生分解性ポリマーとが結合した水不溶性コポリマーを基材とすることを特徴とする請求項1に記載の球状粒子。
  3. 前記水不溶性コポリマーの重量平均分子量は、1,000〜100,000であることを特徴とする請求項に記載の球状粒子。
  4. 前記水溶性ポリマー、ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の球状粒子。
  5. 前記ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項に記載の球状粒子。
  6. 前記ポリアルキレングリコールもしくはその誘導体の重量平均分子量は、1,000以上40,000以下であることを特徴とする請求項またはに記載の球状粒子。
  7. 前記生分解性ポリマーは、α−ヒドロキシ酸単位を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の球状粒子。
  8. 前記α−ヒドロキシ酸単位が、ポリ乳酸または/およびポリグリコール酸であることを特徴とする請求項に記載の球状粒子。
  9. 37℃のリン酸緩衝生理食塩水浸漬28日後における残存重量および/または重量平均分子量の割合が、浸漬前に対して80%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の球状粒子。
  10. 血管塞栓材料として用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の球状粒子。
  11. 前記平均径が100〜2000μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の球状粒子。
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