JP2004147916A - 血管塞栓材料 - Google Patents

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Kazuhiro Tanahashi
一裕 棚橋
Kenichi Tabata
憲一 田畑
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Abstract

【課題】体内の管形状に応じて遠位抹消部位を選択的に塞栓し、かつ生分解性を有する塞栓材料を提供する。
【解決手段】フマル酸とプロピレングリコールから合成される数平均分子量3,000〜10,000の非晶質ポリエステルからなる生分解性血管塞栓材料。さらには該ポリエステルのガラス転移点が45℃以下であることが好ましい。さらには、形状が粒子状、特に平均粒子径が0.1〜2000μmである生分解性血管塞栓材料。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管塞栓材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
癌などの悪性腫瘍、子宮筋腫などの良性腫瘍、血管の奇形、動静脈瘤の治療において、また血管からの出血の防止においては、従来腫瘍や奇形部位を外科的に切除したり、金属製の治具を外科的に埋植して血管を固定する方法が一般的であったが、最近ではカテーテル技術を使ったより低侵襲な治療に代わりつつある。すなわち、下肢や上腕等の血管からカテーテルを挿入し、カテーテル先端部を目的の治療部位まで送達させた後、金属や有機合成材料から成る塞栓材料や薬剤を血管内に留置あるいは投与する治療法である。材料を血管内に留置することによって腫瘍部位に通じる血流が途絶えるため、栄養や酸素の供給が途絶えて腫瘍部位は壊死する。また、奇形部位および出血部位では物理的に血流が止まるだけでなく、血栓形成反応が誘発されて、生成した血栓が引き金となって血管組織の修復が進展していく。血流を遮断するだけでなく、更に抗癌剤、抗炎症剤等の薬剤の投与を併用することによって更に有効な治療効果が得られている。
【0003】
従来、塞栓治療においては液体材料と固体材料が使用されてきた。液体材料としては有機溶媒や、モノマーあるいはポリマーを有機溶媒に溶解した溶液が既に知られている。代表的な例としては、エタノール(例えば非特許文献1参照)、シアノアクリレート(例えば非特許文献2参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液(例えば特許文献1参照)が挙げられる。これら液体材料は病変部の血管の径や分岐状態あるいは形状とは無関係に、目的とする区域の血管内をほぼ完全に充填できるという利点があるが、低粘度の液体であるために注入部位での濃度コントロールが難しく、更に、遠位部の抹消にまで流出したり静脈側に漏出したりするという欠点がある。また、ジメチルスルフォキシド等の有機溶媒を使用しているため生体への影響が懸念される。固体材料には金属材料、有機合成材料および天然物由来材料があり、金属材料の代表的な例としては、Ni−Ti製コイルやステント(例えば非特許文献3参照)が、有機合成材料の代表例としては、ポリビニルアルコール粒子(例えば非特許文献4参照)、アクリル酸−ビニルアルコール共重合体粒子(例えば特許文献2参照)、ゼラチン被覆架橋ポリアクリレート製粒子(例えば特許文献3、4参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体フォーム(例えば特許文献1、5、6参照)が挙げられる。天然物由来材料としては架橋デンプン粒子(例えば非特許文献5参照)、架橋ゼラチン粒子(例えば特許文献7、8参照)、アルギン酸ゲル(例えば特許文献9、10参照)が挙げられる。これらの固体材料は留置あるいは注入時の扱いが容易で操作性に優れるという利点があるが、複雑な血管形状に対応できないという欠点があり、血管のサイズに合わせて粒子の大きさを選定する必要があったり、十分な塞栓を得るために血管内に材料を複数個留置しなければならない場合がある。
【0004】
いずれにしても従来の血管塞栓材料の多くは非分解性の材料から成っていた。しかし、病態によっては必ずしも永久的な血流の遮断を必要としない場合があり、その場合には不要になった時点で塞栓材料が分解されるか、体内に吸収されていることが望ましい。このような生分解性、生体吸収性の塞栓材料の代表例として,ポリ乳酸粒子(例えば非特許文献6参照)、コラーゲンスポンジ(例えば特許文献11参照)、デンプン粒子(例えば非特許文献5参照)が挙げられる。これらの材料は生体内で加水分解するか酵素により分解されるという特徴を有するが、基本的には上記の固体材料であり複雑な血管形状に対応できないという欠点がある。また、デンプン粒子は血液中の酵素アミラーゼによって分の時間的オーダーで加水分解されてしまうため、長期にわたって止血、塞栓するには不向きである。
【0005】
フマル酸とプロピレングリコールから成るポリエステルであるポリプロピレンフマレート(PPF)またはその共重合体については、フマル酸が有する二重結合を利用してPPF分子どうしをラジカル架橋して得られる材料が細胞や組織の足場に成りうること、数ヶ月の長期にわたり時間と共に加水分解することが報告されている(例えば非特許文献7、8参照)。また、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体からなる粒子をPPFで架橋被覆した粒子に骨形成を促す物質を含有させると、その物質の粒子外への放出がコントロールできることも報告されている(例えば非特許文献9参照)。しかしながら 、これらの報告においては、PPFを架橋せずに粒子化し、これを用いて血流を遮断することには言及されていない。
【0006】
【特許文献1】特表2000−502321号公報(第1−20頁)
【0007】
【特許文献2】特開平06−56676号公報(第1−8頁)
【0008】
【特許文献3】米国特許第5635215号明細書
【0009】
【特許文献4】特表平6−508139号公報(第1−6頁)
【0010】
【特許文献5】特表2000−505045号公報(第1−25頁)
【0011】
【特許文献6】特表2000−506514号公報(第1−25頁)
【0012】
【特許文献7】特開昭60−20934号公報(第1−4頁)
【0013】
【特許文献8】特開昭60−222046号公報(第1−5頁)
【0014】
【特許文献9】特許第3103368号公報(第1−5頁)
【0015】
【特許文献10】特開平6−329542号公報(第1−4頁)
【0016】
【特許文献11】国際公開第98/03203号パンフレット
【0017】
【非特許文献1】コウダ・エムら(Koda M. et al.)キャンサー(Cancer)、2001;92(6):1516−24
【0018】
【非特許文献2】エヌビーシーエー・トライアル・インベスティゲーターズ(The n−BCA Trial Investigators)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol)、2002;23(5):748−55
【0019】
【非特許文献3】アンソニー・エムら(Anthony M. et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol).2000;21(8):1523−31
【0020】
【非特許文献4】ダーディン・シー・ピーら(Dardeyn C.P. et al.)、アメリカン・ジャーナル・オブ・ニューロラジオロジー(Am J Neuroradiol).1995;16:1335−1343
【0021】
【非特許文献5】クマダ・ティーら(Kumada T. et al.)、ニホンリンショウ(日本臨床) 2001;59 Suppl 6:539−44
【0022】
【非特許文献6】ウイット・シーら(Witte C et al.)、ヨーロッピーアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス・アンド・バイオファーマシューティクス(Eur J Pharm BioPhar)2001;51:171−181
【0023】
【非特許文献7】フィッシャー・ジェー・ピーら(Fisher J.P. et al.)、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J Biomed Mater
Res)2002;59:547−556
【0024】
【非特許文献8】サッグス・エル・ジェーら(Suggs L.J. et al.)、バイオマテリアルズ(Biomaterials) 2000;21:1207−1213
【0025】
【非特許文献9】ヘドバーグ・イー・エルら(Hedberg E.L. et al.)、第28回アニュアル・ミーティング・オブ・ソサイアティー・オブ・バイオマテリアルズ(28th annual meeting of Society for Biomaterials)、 演題498
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
特に腫瘍などにおいては、より末梢の血管を塞栓する必要等があるにもかかわらず、固体材料では液体材料のように遠位で塞栓できないために、塞栓以後に発達した側副血行路を通して腫瘍部に血流が送られ塞栓効果が無くなる場合があり、患者の予後を悪化させている。患者が回復した後のクオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life (QOL))や安全性を考慮すると不要になった塞栓材料は体内に無いことが望ましい場合がある。生分解性材料であって、体内に挿入するまではカテーテルによる注入や操作性を妨げない性状であり、体内に挿入した後には管形状に対応できるほど柔軟になる塞栓材料はこれまで実現していない。
【0027】
そこで、本発明者らはかかる従来技術の問題点に鑑み、種々の生分解性ポリエステルを使って血管形状に応じて塞栓する方法を検討した結果、フマル酸とプロピレングリコールからなる数平均分子量3,000〜10,000非晶質ポリエステル材料が体温付近の温度で柔軟性を有することを見い出し、本発明に到達した。即ち、本発明は、体内の管、とりわけ血管の血流を遮断する材料とその製造法を提供することを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、主として下記の構成を有する。
「(1)フマル酸とプロピレングリコールから合成される非架橋ポリプロピレンフマレートから成ることを特徴とする生分解性血管塞栓材料。
(2)非架橋ポリプロピレンフマレートの数平均分子量が3000〜10000の範囲にあることを特徴とする(1)記載の生分解性血管塞栓材料。
(3)非架橋ポリプロピレンフマレートが非晶質であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
(4)非架橋ポリプロピレンフマレートのガラス転移点が45℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
(5)形状が粒子状であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
(6)粒子径が0.1〜2000μmであることを特徴とする(5)に記載の生分解性血管塞栓材料。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の血管塞栓材料を生理食塩水に分散した塞栓剤。
(8)フマル酸とプロピレングリコールから合成されるポリエステルを有機溶媒に溶解した後、分散剤を含有する水溶液中に添加し、該ポリエステルのガラス転移点以下の温度で攪拌を行って有機溶媒を揮発させながら該ポリエステルを粒子化することを特徴とする生分解性血管塞栓材料の製造方法。
(9)カテーテルを経皮的に血管内に挿入し、その先端を塞栓部位まで送達させた後、(1)〜(6)のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料または(7)記載の塞栓剤を少なくとも含む液をカテーテルを通して塞栓部位に注入して血管を塞栓する血管塞栓方法。」
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
ポリエステルとはポリマーの繰り返し単位がエステル結合で結合されている化学構造を持ったポリマーの総称で、エステル結合とはカルボキシル基と水酸基との脱水結合である。従ってポリエステルは、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基と少なくとも1つの水酸基を有するヒドロキシル酸から成るか、あるいは分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を持つ多価カルボン酸と少なくとも2つの水酸基を有する多価アルコールから成る。フマル酸は分子内にカルボキシル基を2つ、プロピレングリコールは水酸基を2つ有し、これらを脱水縮合することでポリエステルであるポリプロピレンフマレート(以下PPFと略記する。)を得る。
【0031】
PPFの重合方法は公知の方法を用いることができる。例えば、ジエチルフマレートとプロピレングリコールを塩化亜鉛存在下150℃で攪拌してエタノールをプロピレングリコールに置換した後、0.1mmHg以下の減圧条件でプロピレングリコールを除去しながら縮合を行うことによって得られる。また、トリエチルアミン存在下にフマル酸クロリドにプロピレングリコールを添加した後に、塩を除去し、塩化亜鉛存在下で0.1mmHg以下の減圧条件でプロピレングリコールを除去しながら縮合を行うことによっても得られる。
【0032】
本発明でいう生分解性とは生体内で分解される性質を意味し、酵素が関与するか否かにかかわらず主として加水分解反応によって分解し、生体適合性のある物質を生成することである。生体適合性のある物質とは、もともと生体内にある物質と化学構造が同じであるか、酵素、免疫、肝機能、腎機能などにより代謝・排泄されうる物質である。フマル酸は、クレブス回路と呼ばれる細胞内酸素呼吸に関する一連の酵素反応の中間体であるため、この回路に乗って代謝を受けるか尿中に排出される。プロピレングリコールも同回路の中間体であるピルビン酸に代謝されることが文献に明示されている(Patty’s Industrial Hygene and Toxicology vol.II, part F, p4672)。
【0033】
生分解性の測定には公知の方法を用いることができる。材料を水または塩溶液に適当な固液比で浸漬し、適当な温度で適当な期間振とうまたは攪拌する。生体内に近い条件で測定する場合には生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水に浸漬して37℃で振とうまたは攪拌する方法が好ましく用いられる。材料の乾燥重量、体積、平均分子量、外観などを天秤、ゲル浸透クロマトグラフィー、走査型電子顕微鏡などを用いて測定し、経時変化を調べることによって生分解性能を評価する。
【0034】
塞栓材料として用いる場合のPPFは架橋してしまうと分子運動の自由度が減少する結果、体温付近でも軟化しなくなるため、実質的に架橋されていないことが必須である。本発明において、PPFが架橋しているか否かはH−NMRを用いて判断する。フマル酸由来の炭素−炭素2重結合に関与する炭素に結合した水素の化学シフトは6.8−6.9ppmであるが、この結合が単結合の場合には水素の化学シフトは2.5−2.9ppmとなるため、架橋して単結合になった場合には2.5−2.9ppm付近にピークが出現する。この2.5−2.9ppm付近のピークが無い、あったとしてもわずかであることが好ましい。また、架橋の程度が大きい場合には、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトンなどの良溶媒に溶解しなくなるため、容易に判定できる。
【0035】
本発明のPPFは疎水性物質であるため水との親和性が低く、生分解性は分子量の他に成形加工した物体の大きさに依存する。親水性が低いと水は内部に進入しにくく、表面から分解が起こり、物体が大きいほど全体が分解するのに時間を要する。分子量や成型物の大きさを適宜調節することによって目的にあった速度で分解するように設計ができる。
【0036】
PPFの分子量は任意でよいが、分子量が小さすぎると下記に述べるガラス転移点が低下して、分子が自由に動けるようになるためにポリマーは巨視的に見て液体となり目的血管以外での漏出が懸念される他、液体が粘調な場合にはカテーテルで注入することが難しい。一方、分子量が大き過ぎるとガラス転移点は増加し体温条件下でも軟化しないだけでなく、分解に長時間を要する。従って、体内挿入前後で性状を変化させるためにも、数ヶ月程度という適度な速度で分解するためにも該ポリエステルの数平均分子量は3,000〜 10,000の範囲にあることが最も好ましい。本発明においてPPFの平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた値をいう。ゲル浸透クロマトグラフィーの測定方法としては公知の測定方法を用いることができる。例えばポリスチレンの排除限界分子量が20,000,000のGPCK−806Lカラム(Shodex社製、内径8mm×長さ30cm)を使用し、移動相にクロロホルムを用いて1ml/分の流速で0.1mlのPPFのクロロホルム溶液を流すと、カラムから溶出したPPFを、カラム下流側に直列に接続したRI8010屈折径率計(東ソー社製)で検出できる。例えば、平均分子量1,110,000、707,000、397,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,490、5,870、2,500、1,050、500のポリスチレンの保持時間のデータを使ってClass Vp(島津製作所製)データ解析ワークステーションで作成した検量線と比較することによってPPFの平均分子量を知ることができる。
【0037】
結晶を形成していない非晶質のポリマーの温度を低下させたときに、ポリマー分子の分子運動が低下する結果、流動的な状態から非流動的なガラス状態に転移するという熱力学的な現象が起こる。本発明でいうガラス転移点とは、この転移温度を意味する。このような物質の熱的な状態変化は例えばDSC6200(Seiko Instruments製)のような示差熱分析(DSC:Differential Scanning Calorimetry)装置で測定できる。試料を封入した金属容器とからの金属容器とをそれぞれ所定の位置に設置し、5℃/分の速度で摂氏50℃まで昇温した後、摂氏−60℃まで同じ速度で冷却する。再び、同じ速度で摂氏−60℃から50℃まで昇温したとき、摂氏5〜25℃で観察される熱吸収がPPFのガラス転移である。非晶質のポリマーでは、結晶が融解するときに一般的に測定される熱吸収が測定されない。ガラス転移は一般的に非晶質なポリマーの熱吸収として測定される。本発明におけるPPFにおいては非晶質、特に体温以上の温度で非晶質であること、すなわち例示した測定条件で測定したDSCで明瞭な融点が検出されないことが好ましく、更には体温以下のガラス転移点を有することが好ましい。このような特性を有するPPFを用いることにより、体温付近の温度で柔軟性を有し、管形状に応じて塞栓することのできる塞栓材料となる。なお、この場合体温とは34℃〜45℃の範囲を指す。したがって、PPFのガラス転移点は45℃以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の生分解性塞栓材料には必要に応じてPPF以外の生分解性ポリマーが含まれていても良い。PPF以外の生分解性ポリマーの具体例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンおよびこれらの生分解性ポリマーの共重合体、PPFまたはポリエチレングリコールとこれらの生分解性ポリマーのの共重合体、PPFとポリエチレングリコールとの共重合体などが挙げられる。
【0039】
本発明でいう塞栓材料とは血管、リンパ管、気管、消化管、胆管、膵管、尿管、尿道、精管、卵管に代表される体内の管構造に充填することによって体液等の流れを遮断する材料を指す。本発明のポリエステルを塞栓材料として用いる際の形状は特に限定されないが、体内に注入しやすいという点で好ましくは粒状のものが用いられる。粒状の場合、粒子の大きさについては特に限定されず、分解速度を考慮した上で、注入するカテーテルの内径および塞栓しようとする管のサイズに合うように適宜調製できる。塞栓する管が血管の場合には平均粒径として0.1μm〜2000μmが好ましく、さらに100μm〜1500μmがより好ましい。
【0040】
このような粒子の調製方法は特に限定されないが、よく知られたスプレー法、エマルジョン法が好ましく用いられる。例えばエマルジョン法では、クロロホルム、塩化メチレン、アセトン、テトラヒドロフランなどの良溶媒に溶解したPPFを水中で滴下し、好ましくは100〜1000回転/分、更に好ましくは100〜400回転/分の速度で6時間以上攪拌する。PPFの濃度や攪拌回転数は作ろうとする粒子のサイズに合わせて適宜変えられる。攪拌時の温度は特に限定されないが、粒形を維持するためにTg以下であることが好ましい。粒子の凝集を防ぐ目的で水中に分散剤を添加するのが好ましい。該ポリエステルから成る粒子を調製する際に使用する分散剤は特に限定されず、公知の分散剤を任意で用いることができる。例えば、ポリビニルアルコールやポリエチレングリコールなどのポリマーや、イオン性・非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。攪拌後、蒸留水で洗浄して粒子を得る。
【0041】
このような粒子を実際に治療に用いる場合には、粒子単独ではカテーテル内を通過させることが困難であるため、粒子を水系の液体、好ましくは生理食塩水に分散した状態(塞栓剤)で用いられる。大腿動脈を二重針で穿刺後、内針を抜去し外筒を血管内腔に留置した後、これを通してガイドワイヤーを血管内に挿入し、これを軸としてガイディングカテーテルおよびマイクロカテーテルを血管内に挿入する。X線透視画像を見ながら、例えば肝動脈、胃十二指腸動脈、腸管膜動脈、胃動脈、子宮動脈、内頸動脈、交通動脈、脳底動脈、大脳動脈、小脳動脈などの目的の血管までマイクロカテーテルの先端を到達させた後に、粒子を分散した塞栓剤を入れたシリンジをカテーテルに取り付けて注入する。目的の血管をX線透視下で観察しやすいように造影剤を塞栓材料に混合する方法が好ましく用いられる。注入した部位で塞栓材料は血管を塞栓し血流が遮断される。
【0042】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものでない。
【0043】
【実施例】
<合成例1>
フマル酸ジエチル150gとプロピレングリコール200gを、ヒドロキノン、塩化亜鉛存在下に150℃で8時間攪拌しフマル酸ジエステルを得た。更にこのフマル酸ジエステルを減圧下150℃で攪拌した後、得られた生成物をエタノールで生成してPPFを得た。反応時間を6.5、11.5、19.5時間と変化させることにより数平均分子量が2,000、4,000、15,000であるPPFを得た。ガラス転移温度はそれぞれ、0.5℃、13.5℃、19.0℃であった。PPFの平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた値をいう。ゲル浸透クロマトグラフィーの測定方法としては公知の測定方法が用いられる。ポリスチレンの排除限界分子量が20,000,000のGPCK−806Lカラム(Shodex社製、内径8mm×長さ30cm)を使用し、移動相にクロロホルムを用いて1ml/分の流速で0.1 mlのPPFのクロロホルム溶液を流し、カラムから溶出したPPFを、カラム下流側に直列に接続したRI8010屈折径率計(東ソー社製)で検出した。平均分子量1,110,000、707,000、397,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,490、5,870、2,500、1,050、500のポリスチレンの保持時間のデータを使ってClass Vp(島津製作所製)データ解析ワークステーションで作成した検量線と比較してPPFの平均分子量を求めた。
【0044】
これらのPPF0.3gをジクロロメタン3mlに溶解した後、0.1%ポリビニルアルコール水溶液300ml中に滴下し、室温で8時間攪拌しジクロロメタンを揮発させて粒子を得た。攪拌後粒子を水で水洗した。各粒子径は20〜150μmの範囲内であった。
【0045】
粒子径は粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA)にて測定した。
合成例1
市販ポリ乳酸(PLA−0020、和光純薬工業)0.3g(ガラス転移点42℃)をジクロロメタン3mlに溶解した後、0.1%ポリビニルアルコール水溶液300ml中に滴下し、室温で8時間攪拌しジクロロメタンを揮発させて粒子を得た。攪拌後粒子を水で水洗した。粒子径は20〜150μmの範囲内であった。
【0046】
<粒子形状の観察>
合成例1、合成例2で得られた各粒子を顕微鏡用カバーグラス上で室温(26℃)、37℃で1時間放置後、粒子の形態の変化を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察した。その結果、PPF(平均分子量15,000)およびポリ乳酸(PLA)はいずれの温度でも粒状であったのに対し、PPF(平均分子量2,000)はいずれの温度でも粒形を維持できなかった。PPF(数平均分子量4,000)は室温でのみ粒形を維持した。
【0047】
<生分解性の観察>
合成例1、合成例2で得られた各粒子0.1gを容器中のリン酸緩衝生理的食塩水10mlに浸漬し、37℃の条件で容器を穏やかに振とうした。1週間後の分子量変化を測定した結果、PPF(数平均分子量:2,000、4,000、15,000)はそれぞれ70、75、80%分子量が低下したが、ポリ乳酸の分子量低下は90%であった。
【0048】
[実施例1]
ネンブタールで麻酔した10週令のラットの大腿静脈に24Gの留置針を挿入したのち、合成例1で得られた各粒子100mgを生理食塩水1mlに分散した分散液0.125ml(粒子数約3500個)を注入した。コントロールとして粒子を含まない生理食塩水のみの注入を行った。1週間後に肺の外観を観察すると共に組織の薄切標本を作製して病理観察を行った。各試料につき4匹のラットを用いた。その結果、PPF(数平均分子量4,000、15,000)で壊死が観察された。PPF(数平均分子量4,000)はPPF(数平均分子量15,000)やPLAと比較してより辺縁部の細い血管を塞栓していた。
【0049】
[比較例1]
粒子を合成例2で得られた粒子に変更した以外は実施例1と同様に実施した。PLAでも肺梗塞が観察されたが、PPFほど細かい血管は塞栓できていなかった。
【0050】
【表1】
Figure 2004147916
【0051】
【発明の効果】
本発明の血管塞栓材料によれば、体内の目的の管構造に投与しやすい形状、例えば血管であれば粒子状に成型し投与することによって、体内の管形状に応じて遠位抹消部位を選択的に塞栓できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のPPFおよびPLAの室温及び37℃における粒子の電子顕微鏡写真である。

Claims (9)

  1. フマル酸とプロピレングリコールから合成される非架橋ポリプロピレンフマレートから成ることを特徴とする生分解性血管塞栓材料。
  2. 非架橋ポリプロピレンフマレートの数平均分子量が3000〜10000の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の生分解性血管塞栓材料。
  3. 非架橋ポリプロピレンフマレートが非晶質であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
  4. 非架橋ポリプロピレンフマレートのガラス転移点が45℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
  5. 形状が粒子状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料。
  6. 粒子径が0.1〜2000μmであることを特徴とする請求項5に記載の生分解性血管塞栓材料。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の血管塞栓材料を生理食塩水に分散した塞栓剤。
  8. フマル酸とプロピレングリコールから合成されるポリエステルを有機溶媒に溶解した後、分散剤を含有する水溶液中に添加し、該ポリエステルのガラス転移点以下の温度で攪拌を行って有機溶媒を揮発させながら該ポリエステルを粒子化することを特徴とする生分解性血管塞栓材料の製造方法。
  9. カテーテルを経皮的に血管内に挿入し、その先端を塞栓部位まで送達させた後、請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性血管塞栓材料または請求項7記載の塞栓剤を少なくとも含む液をカテーテルを通して塞栓部位に注入して血管を塞栓する血管塞栓方法。
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