JP4686932B2 - プレス成形装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形用素材をプレスして高精度な成形品を成形するためのプレス成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレス成形装置において、成形品の仕上がり品質を上げるために、プレス時の型の位置ずれを抑えることが重要である。特に、レンズ等の光学素子を成形する成形装置においては、型の位置ずれはミクロンレベルで制御する必要がある。
【0003】
例えば、図1に示すように上下成形型と成形型に嵌合する胴型からなる構造が一般的に知られている。この構造では、胴型1がガイドの役目をして、上型103もしくは下型102が、胴型101の内周面に沿って上下動して、間に介在する加熱軟化した光学素子(不図示)をプレス成形することができる。ここで、上下成形型103,102と胴型1が嵌合する部分の隙間を小さくすることによって、上下成形型103,102の横方向の偏心は、10μm以下に規制することが可能である。しかしながら、かかる構成では、胴型101と上下成形型103,102の嵌合長が短い場合は、胴型101に対する上下成形型103,102の傾きは、数分以上発生する場合もあり、偏心感度の大きい高精度レンズを成形する際に問題となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、傾きを規制する方法としては、たとえば特開昭62−292641号公報に開示の技術がある。かかる公報に開示された成形装置の断面図を、図2に示す。この成形装置は、図2(a)に示すように、成形型が上型113、下型112、胴型111からなり、成形時は下型112と胴型111がしばりばめとなるため、横ずれを防止するとともに、下型112に対する上型113の傾き(図2(b)に示す下型112の中心線C3と、上型113の中心線C4のなす角度ε)については、胴型111と上型113の嵌合長と嵌合する隙間を、成形される素材(レンズ)の許容精度に応じて設定することで規制している。
【0005】
しかしながら、高精度のレンズを成形する場合には、上型113の傾き(角度ε)を相当に小さくしなくてはならないが、そのためには、図2(b)に示すように、嵌合の隙間dに対して嵌合長lを相当長くとる必要が生じ、成形装置全体が大きくなってしまうという問題がある。嵌合の隙間dを小さくするにしても、部品精度上の限界がある。これに対し、このような成形装置において、傾き検知用センサーを設置し実際の傾きを求めて、下型112に対する上型113の傾きを修正するようなフィードバック制御を行うことも考えられるが、構造が複雑となり、製作コストもかかってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で成形型の傾きを抑えて、高精度の成形品を得ることができるプレス成形装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のプレス成形装置は、素材をプレスして成形するプレス成形装置において、プレスに用いる一対の成形型のうち、少なくとも一方の成形型は、素材に形状を転写する成形面と反対側の面が、凸球面状に形成されるとともに、該一方の成形型を保持する母型は、前記成形型の反対側の面の球面形状に対応する凹球面状に形成され、前記凸球面と凹球面の曲率中心が、成形型の中心軸上において、プレスされた成形品の占める位置ないし成形品の中心軸上の端面から成形品の中心軸上厚以内の位置であり、プレス成形時に位置決め部材が成形型に当接することで、前記少なくとも一方の成形型が揺動し、それにより前記成形型の傾きが自動的に調整されるようになっており、前記凸球面と前記凹球面の曲率中心が、前記成形型の中心軸上において、プレスされた成形品の重心位置ないし重心位置から成形品の中心軸上厚の4分の1以内であるので、プレス成形時に、自動的に成形型の軸線同士が一致し、それにより手間のかかる傾き調整を行うことなく精度良い成形が可能となる。特に、前記凸球面と前記凹球面の曲率中心が、成形型の中心軸上において、プレスされた成形品の重心位置ないし重心位置から成形品の中心軸上厚の4分の1以内であると、より高精度な成形品の加工が可能となる。尚、ここで「位置決め部材」とは、端面が両成形型に当接する胴型であって良いが、それに限られず、成形型の端面(この場合には端面が位置決め部材になる)同士を突き当てるようにしても良い。
【0009】
請求項2に記載のプレス成形装置において、前記一対の成形型のうち、少なくとも一方の成形型は、成形型を保持する母型に接する球面形状部分に沿って、摺動すると好ましい。
【0012】
請求項3に記載のプレス成形装置において、前記凸球面部分の軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/4であると、成形装置にあわせて、成形型の摺動する範囲を最適化できる。
【0013】
請求項4に記載のプレス成形装置において、前記凹球面部分の軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/2であると、成形装置にあわせて、成形型の摺動する範囲を最適化できる。
【0014】
請求項5に記載のプレス成形装置において、成形される素材が、光学素子用素材であると、高精度な光学素子を容易に形成することができる。
【0015】
請求項6に記載のプレス成形装置において、成形される素材が、ガラスまたはプラスチックであると好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。
図3は、本実施の形態にかかるプレス成形装置の断面図である。図3に示すプレス成形装置は、それぞれつば部2a、1aと軸部2b、1bとからなる上下成形型2,1、円筒状の胴型3、不図示の押圧装置に連結されシリンダー19に沿って摺動自在な母型7、固定板18に固定されている母型8、母型8にボルト9で取り付けられた固定部材6,母型7にボルト10を用いて取り付けられた固定部材5,下成形型1にボルト17を用いて固定された固定部材14、母型8が嵌合するシリンダー16、成型時に光学素子用素材の外周を規制して光学素子の外形を形成する搬送部品4から構成されている。
【0017】
上成形型2の母型8と接するつば部2aは、外周面がテーパー形状となっており、母型8における対応した形状のテーパー孔8aに嵌合している。更に、弾性部材であるジルコニアからなるセラミックスプリング13によって、成形型2は、母型8に押しつけられて固定されている。テーパー部同士が嵌合することで、母型8に対して成形型2の偏心が規制されている。
【0018】
一方、上成形型1のつば部1aの下面(素材に形状を転写する光学面1dと反対側の面)1fは、球面状となっており、それに摺動自在に係合する母型7のくぼみ7aも対応した球面状となっている。それらの曲率中心Cは、下成形型2の軸線上にあって且つ成形される光学素子の内部に位置するようになっていると好ましいが、例えば光学素子の両端面からその軸上厚だけ離れた2点間の範囲にあれば足りる場合もあり、要求される成形品の精度にあわせて決定する。更に、下成形型1の凸球面1fの軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/4であると良い。又、母型7のくぼみ7aの凹球面の軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/2であると良い。
【0019】
弾性部材である部分安定化ジルコニアからなるセラミックスプリング11によって、下成形型1は、母型7に押しつけられて固定されているが、それにより母型7のくぼみ7aの表面に沿って上成形型1のつば部1aの摺動は阻止されることはない。
【0020】
下成形型1における円筒状の軸部1bの外周には、胴型3が嵌合しており、その下端のフランジ部3aは、下成形型1のつば部1aの上面である基準面1c上に配置されている。尚、胴型3の上下端面は、精度良く平行度が維持されている。
【0021】
下成形型1の軸部1b端面中央には、成形されるべき光学素子の光学面形状に対応した光学面1dが形成されており、光学面1dと基準面1cは、下成形型1を加工する時に、ワンチャックで(ワークを掴み変えることなく)同時加工することにより、光学面1dの中心軸と、基準面1cとなるつき当て面の傾きとを、垂直からのずれがほとんどないように抑えることが可能である。尚、上成形型2の軸部2b端面中央に形成された光学面2dと、上成形型2の軸部2bの下面である基準面2cについても同様に加工してある。又、基準面2cは、成形される光学素子のフランジを形成する面となる。
【0022】
尚、上下成形型2,1の横方向の偏心は、図示していない制御装置で制御するものとする。本実施の形態では、成形型2,1と胴型3の取り付けに、弾性部材である部分安定化ジルコニア製のセラミックスプリングを使っている。下成形型1は、固定部材5に対しセラミックスプリング11の弾性力により母型7に向かって押圧されており、一方、胴型3は、別のセラミックスプリング12の弾性力により、固定部材14に対し下成形型1に向かって押圧されている。胴型3と下成形型1を取り付けるための固定部材5,14を分けたことで、下成形型1を取り外すことなく胴型3を脱着することができ、それにより作業性が向上している。
【0023】
胴型3は、斜視図である図4に示すように、上端近傍に一対の切欠3bを形成している。更に、ドーナツ形状の搬送部品4は、下成形型1の軸部1bにおける上端近傍に形成された段部1eに嵌合する内径を有し、又、胴型3の内周(先端面取り部及び切欠3bを除く)に当接する外径を有しており、かかる構成により、成形品であるレンズのフランジ外周面を精度良く形成することができる。
【0024】
尚、母型7、8を貫通し、上下成形型2,1の中央に至るようにして、上下成形型2,1の温度を維持又は制御するための熱電対TC及びその周囲に配置されたヒータHが配置されている。
【0025】
以上のような構造の成形型を用いた成形について説明する。まず、不図示の搬送アームによって、光学素子用素材であるガラスのプリフォーム(不図示)と、搬送部品4が成形室(上下成形型2,1の間)内に搬入されてくる。搬送部品4が下成形型1の軸上となる位置で搬送アームが停止し、下降して搬送部品4が下成形型に設置される(図3参照)。
【0026】
つぎに搬送アームが上昇、移動し、プリフォームが下成形型1の軸上となる位置で停止する。更に搬送アームが下降することで、プリフォームが下成形型1に設置される。搬送部品4とプリフォームの設置が完了すると、搬送アームは成形室外に退避する。
【0027】
更に、不図示の押圧装置の動作により、下成形型1が上昇して、プレスを開始する。ここで、胴型3の上下端面の平行度が確保されているので、下成形型1に取り付けられた胴型3の上端が、上成形型2の基準面2cにつき当たることにより、上下成形型2,1が傾いていた場合でも、母型7の球面状のくぼみ7aに沿って下成形型1が摺動し、上成形型2と胴型3のつき当て面が互いに密着するので、成形型2,1の傾きはプレス力により自動的に修正される。又、成形される素材に成形品の外周形状を転写する搬送部品4が、成形品であるレンズのフランジ上面を転写する上成形型2の基準面2cに載置される。
【0028】
プレスが完了し、所定時間経過してプリフォームが冷却した後、下成形型1を下降させ、図4に一点鎖線で示す搬送アームCAを成形室に進入させる。搬送アームCAは、胴型3の軸上で停止し、一対のアームを切欠3b内に進入させることで、搬送部品4の外周を保持し、そのまま搬送アームCAを上方及び成形室外に移動させることで、搬送部品4と一体で成形品である光学素子が回収されるようになっている。尚、搬送アームCAは、一対のアームで搬送部品4を把持するタイプに限らず、成形品と搬送部品4とを一体で上方から吸着するタイプでも良い。回収された後、成形品は搬送部品4から抜き出され、後加工が行われる。
【0029】
本実施の形態では、胴型3の上端面の直径を15mm、下端面の直径を20mmとし、上下端面の平行度を1μm以内に抑えている。よって、胴型3の上下端面が上下成形型2,1のそれぞれの基準面2c、1cにつきあたることで、上下成形型2,1の光学面2d、1dの傾きは30"以内を確保している。胴型3は、光学面2d、2dの傾きを規制するだけでなく、成形される光学素子(レンズ等)の軸上厚を規制する役目も合わせもっている。
【0030】
本実施の形態により成形された光学素子であるレンズは、相対する光学面の傾きが極めて小さく、また、型のつき当て面が成型時に必ず密着するので、成形ショット間の軸上厚のばらつきがほとんどない良好な精度を有している。
【0031】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、下成形型1に代えて、或いはそれに加えて上成形型2を揺動させるようにしても良い。又、一対の基準面は平面としたが、テーパー面とすることもでき、それによりセンタリング効果が得られる。胴型は、下成形型でなく上成形型に嵌合していても良い。弾性部材は、コイルばねに限らず、皿ばね、ばね座金、板ばねであってよく、又、その材質は、セラミックスに限らず、耐熱性Ni基合金、耐熱性Fe基合金のいずれかであってよい。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、簡単な構造で成形型の傾きを抑えて、高精度のプレス成形品を得るためのプレス成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術のプレス成形装置の断面図である。
【図2】従来技術のプレス成形装置の断面図である。
【図3】本実施の形態にかかるプレス成形装置の断面図である。
【図4】本実施の形態のプレス成形装置における下成形型1の上端周囲を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
1 下成形型
1c 光学面
1d 基準面
1f つば部の凸球面
2,2’ 上成形型
2c 光学面
2d 基準面
3 胴型
4 搬送部品
5、6 固定部材
7,8 母型
7a くぼみ
11,12,13 セラミックスプリング
Claims (6)
- 素材をプレスして成形するプレス成形装置において、プレスに用いる一対の成形型のうち、少なくとも一方の成形型は、素材に形状を転写する成形面と反対側の面が、凸球面状に形成されるとともに、該一方の成形型を保持する母型は、前記成形型の反対側の面の球面形状に対応する凹球面状に形成され、前記凸球面と凹球面の曲率中心が、成形型の中心軸上において、プレスされた成形品の占める位置ないし成形品の中心軸上の端面から成形品の中心軸上厚以内の位置であり、プレス成形時に位置決め部材が成形型に当接することで、前記少なくとも一方の成形型が揺動し、それにより前記成形型の傾きが自動的に調整されるようになっており、
前記凸球面と前記凹球面の曲率中心が、前記成形型の中心軸上において、プレスされた成形品の重心位置ないし重心位置から成形品の中心軸上厚の4分の1以内であることを特徴とするプレス成形装置。 - 前記一対の成形型のうち、少なくとも一方の成形型は、成形型を保持する母型に接する球面形状部分に沿って、摺動することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形装置。
- 前記凸球面部分の軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/4であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形装置。
- 前記凹球面部分の軸線を含む断面における円弧の長さが、球面の円周の1/20から1/2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形装置。
- 成形される素材が、光学素子用素材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレス成形装置。
- 成形される素材が、ガラスまたはプラスチックであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレス成形装置。
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