JP4684440B2 - マンノオリゴ糖を含有する過酸化脂質上昇抑制組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、マンノースを主体としたオリゴ糖類を主成分とする過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物、およびその組成物を用いた飲食物および飼料に関するものである。
【0002】
生命活動の維持には酸素が欠かせないが、生体内の活性酸素は強い毒性を持っている。近年の研究により酸素障害が成人病や老化等に深く関わっていることが分かってきている。特に生体膜の構成成分である不飽和脂肪酸は酸素ラジカルによる酸化を受けやすく脂質過酸化連鎖反応を介して過酸化脂質を生成する。この過酸化脂質が動脈硬化、肝臓病のみならず発癌、老化等に関与しているものと推定されている。このような疾患の予防のために、個々の食物中の抗酸化物質の検索、作用機序の解明についての研究が進められているが、まだ充分に解明されるに至っていない。また、抗酸化物質の食物への添加が考えられるが、食物の持つ本来の風味が変わることや経済的な欠点も残る。
【0003】
近年、D−マンノースがβ−1,4結合した化合物であるβ−1,4マンノビオースなどのβ−1,4−マンノオリゴ糖の持つ生理機能が注目されており、家畜の有害菌汚染防止物質としても知られている(特開平8−38064)。また人間の糖タンパク質の糖鎖の重要な部分構造にはD−マンノースがβ−1,4結合したマンノオリゴ糖が含まれており、飲食品原料としてのみならず、医薬品の原料としての応用も期待されている(特昭58−21278、特開平8−9989)。
【0004】
また、本発明は未利用資源の有効活用にも関するものである。
コーヒーの抽出残渣は従来、そのほとんどが焼却あるいは産業廃棄物として処理されてきた。近年になり、コーヒー抽出残渣が堆肥原料あるいは活性炭原料として利用されるようになってきたが、それらは未利用資源の高度利用という観点からは十分とはいえず、更なるコーヒー抽出残渣の高度利用の方法を確立することは重要課題となっている。
【0005】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、マンノース残基を有する単糖、およびオリゴ糖類の生理機能については有害細菌の感染を予防するために飼料へ添加する方法(特開平08−38064)、植物の生長を促進させるために植物または土壌に施用する方法(特開昭63−215606)等が提案されているが、ヒトが摂取するにあたり、どのような生理機能を示すかは、ほとんど不明であり、コンニャクの加水分解物であるグルコマンナンオリゴ糖を摂取することによるビフイドバクテリウム増殖方法(特開昭58−212780)が提案されているのみである。しかもその内容は、ビフイドバクテリウム菌を増殖させる方法であり、その他の腸内有害菌も増殖させてしまう虞れがある。また、コンニャクの加水分解物には糖鎖中にマンノース残基以外にグルコース残基が多く含まれており、マンノース残基以外の糖残基がほとんど含まれていないマンノオリゴ糖についての報告はまだない。
【0006】
マンノース残基を有する単糖類およびオリゴ糖類の製造方法としては、例えば、コンニャク、ユリ等に含まれるグルコマンナンや、グアガム、ローカストビーンガム等に含まれるガラクトマンナン等を酸や酵素で加水分解する方法(特開昭63−49093)、コプラミールから酵素加水分解によりマンノビオースを製造する方法(特開平11−18793)等が提案されている。
【0007】
しかし、グルコマンナンやガラクトマンナンの加水分解物からグルコース、ガラクトース等が混在しマンノースを主要構成糖とするマンノオリゴ糖と呼ぶにはかけ離れた物であった。
【0008】
また、コーヒー抽出残渣を加水分解することにより、糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ないマンノオリゴ糖類を得ることはできる(米国特許第4,484,012号、米国特許第4,508,745号、米国特許第4,798,730)が、着色物質、脂質、蛋白質、塩、酸等が混在しているため、食品、医薬品等への適用が制限される。
【0009】
さらに、コプラミールを加水分解およびマンノースを縮合または転移反応させることにより、糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ないマンノオリゴ糖類を得ることができる(特開平11−018791)が、これらの生理機能および飲食料品への利用については未知である。
本発明は、通常の食生活習慣の大幅な変更を伴うことなく、しかも過酸化脂質の上昇抑制効果が優れ経済的で簡便な飲食物を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらのような課題を解決するために鋭意検討の結果、マンナンを多く含む食品素材、主に、コーヒー抽出粕加水分解物から、糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1〜10のマンノオリゴ糖類又はマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが1〜10分子結合したマンノースを主体としたオリゴ糖類に過酸化脂質の上昇を抑制する効果を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、無着色、無酸の糖鎖中にマンノース残基以外の糖残基の含有量が少ない重合度1〜10のマンノオリゴ糖類を得ることで、食品への適用範囲を飛躍的に広げることができることを見いだした。
【0011】
本発明は、マンノースを主体とした単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類又はマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが1〜10分子結合したマンノースを主体としたオリゴ糖類を主成分とすることを特徴とする過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物に関する。当該組成物は、マンノースもしくはマンノースを主体とした単糖が2〜10分子結合した単一の化合物、または、それらの中から選ばれた2種以上のオリゴ糖を主成分とする組成物を意味する。
本発明の組成物において、マンノースが1〜10分子結合した単一の化合物ないしはそれらの中から選ばれた2種以上の化合物を含有する過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物であることが望ましい。
【0012】
本発明の組成物において、総固形分に対し、マンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類の合計含有割合が60重量%以上が好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0013】
本発明における組成物の糖組成においてはマンノース残基の割合が70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上であるものが望ましい。マンノース残基の割合が70%に満たないと、効果が大きく期待できないとともに、甘味度も増し適用の幅が狭まる傾向にある。構成糖としては、マンノース以外には、加水分解する出発物質にもよるがグルコース、ガラクトースなどが含まれるが必要に応じて除去することもできる。組成物中の遊離のマンノース含量については50%以下に抑えられたものが望ましい。50重量%を越えると、マンノース由来の苦味のために、適用の範囲に制約を受ける傾向にある。さらに、マンノースを主体としたオリゴ糖類は、マンノースが2〜6分子結合したオリゴ糖類であることが好ましい。そして、その結合様式は、βー1,4結合であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、マンナンを加水分解処理することによって得られたマンノースを主成分とする過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物が好ましい。また、当該マンナンがコーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣から得られるものであることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明においては、コーヒー抽出残渣を加水分解処理することによって得られたマンノースを主成分とする過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物が好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記に説明した本発明に係る組成物を含有する飲食物および飼料にも関する。なお、本発明に係る組成物は、飲食物、飼料のみならず化粧品、医薬品等幅広い分野で使用することが可能である。本発明の組成物は、飲食物として人が口から摂取することにより過酸化脂質の上昇を抑制する効果を発揮する。
【0017】
本発明の組成物は、例えばココナッツ椰子から得られるコプラミール、フーク、南アフリカ産椰子科植物HuacraPalm、ツクネイモマンナン、ヤマイモマンナンよりマンナンを抽出後、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製された糖混合物および/またはコンニャクイモ、ユリ、スイセン、ヒガンバナ等に含まれるグルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム等に含まれるガラクトマンナンを酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で分離精製し構成糖としてマンノースの比率を高めたものであってもよい。
【0018】
さらに、コーヒー生豆または焙煎したコーヒー豆を酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解の中から選ばれる1種または2種以上の方法で処理し、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。
【0019】
あるいは、使用済みコーヒー残渣を、酸加水分解、高温加熱加水分解、酵素加水分解の中から選ばれる1種または2種以上の方法で可溶化処理した水溶液を活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、イオン交換膜処理等の方法で精製することによって得ることができる。
【0020】
一般に、焙煎粉砕コーヒーを商業用の抽出器にて抽出すると、その際に焙煎コーヒーに含まれるガラクトマンナンの側鎖であるガラクトースが可溶化したり、アラビノガラクタンが加水分解によって可溶化する。従って、コーヒー残渣中にはマンナンが豊富であり、しかも直鎖構造をとっているものと推定される。一方、セルロースは分解されにくく残渣として残っているが、セルロースを分解せずにマンナンを特異的に加水分解する条件を適宜選択することにより、マンノースを主体とするオリゴ糖を得ることができる。
【0021】
本発明において使用されるコーヒー抽出残渣は通常の液体コーヒーあるいはインスタントコーヒー製造工程において抽出されたものであれば、常圧下、加圧下抽出であろうと、またいかなる起源、製法のコーヒー抽出残渣であっても使用することができる。
【0022】
コーヒー抽出残渣を酸および/または熱により加水分解しオリゴ糖類を高純度に含むように調製した組成物を液体コーヒー、インスタントコーヒー等にそのまま添加して使用することもできるが、必要に応じて活性炭、イオン交換樹脂等で脱色、脱臭、脱酸等の精製処理をしたものを添加した方がコーヒー本来の味、香りのより豊かなコーヒーを提供することができる。
【0023】
更に、カラムクロマトグラフィー等で特定の重合度をもつマンノオリゴ糖に分画した上で使うこともできる。
以下に本発明において、コーヒー抽出残渣からマンノースを主成分とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を製造する代表的な方法を述べるが、必ずしも以下の製法に限定されるものではない。
【0024】
コーヒー抽出残渣を分解する方法としては、酸および/または高温により加水分解する方法と酵素により分解する方法が挙げられる。酸および/または高温により加水分解する方法としては特開昭61−96947号、特開平2−200147号等に開示されている。商業用のコーヒー多段式抽出系において出てくる使用済みコーヒー残渣を反応容器中において酸触媒を添加して加水分解することもできるし、酸触媒を添加せずに高温で短時間処理して加水分解することによっても得ることができる。管形栓流反応器を使用するのが便利であるが比較的高温で短時間の反応を行わせるのに向いているものならば、いかなる反応器を使用しても良好な結果が得られる。反応時間と反応温度を調節し、可溶化して加水分解させることによってDP10〜40のマンナンをDP1〜10のマンノオリゴ糖に分解し、その後コーヒー残渣と分離してマンノオリゴ糖類を得る。
【0025】
「マンナン」という用語は、広くd−マンノースからなる多糖を意味する。単糖d−マンノースはアルドヘキソースであり、d−グルコース中のカルボキシル基に隣接する炭素に結合している水酸基の立体配置が逆になっているものである。
【0026】
「オリゴ糖」は、単糖の数が比較的少ないポリマーを意味する。とくに、本明細書においては、単糖の数が10以下であるポリマーをさす。マンノースは、便宜上DP1のオリゴ糖とするが、厳密にいうとオリゴ糖は2以上の単糖からなるものをさす。
【0027】
「重合度」または「DP」とは、オリゴ糖を構成している単糖の数を意味する。従って、たとえばマンノースが4つの単糖から構成されているマンノオリゴ糖の重合度は4であるのでDP4と記載する。
【0028】
「コーヒー残査」とは、たとえば大気条件中で抽出した後のいわゆるコーヒー抽出粕を意味する。
また、酵素により分解する方法としては、例えばコーヒー抽出残渣を水性媒体に懸濁させ、ここへ例えば市販のセルラーゼおよびヘミセルラーゼ等を加えて撹拌しながら懸濁させればよい。酵素の量、作用させる温度およびその他の条件としては、通常の酵素反応に用いられる量、温度、条件であれば特に問題はなく、使用する酵素の最適作用量、温度、条件およびその他の要因によって適宜選択すればよい。
【0029】
上記の方法によって得られたマンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を含む反応液は、必要に応じて精製を行う。精製法としては、骨炭、活性炭、炭酸飽充法、吸着樹脂、マグネシア法等で脱色を行い、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析等で脱塩、脱酸を行う。精製法の組み合わせおよび精製条件としては、マンノースが1〜10分子結合したマンノオリゴ糖類を含む反応液中の色素、塩、および酸等の量およびその他の要因に応じて適宜選択すればよい。
【0030】
次に、本発明を実施例および試験例により具体的に説明する。
実施例1
コーヒー抽出残渣を反応器に送りやすくするために、まず粉砕して粒径を約1mmにした。次いで、総固形分濃度が約14w/w%の水と粉砕物からなるスラリーを調製し4mの熱栓流反応器内において熱処理した。滞留時間8分に対応する速度で高圧蒸気とともに栓流反応器にポンプ輸送し、6.35mmφオリフィスを用いて約210℃に維持した。その後、大気圧下に噴出することによって、反応を急止した。できたスラリーを濾過して、不溶性固形分から可溶性固形分を含む液を分離した。この可溶性固形分含有液を活性炭、吸着樹脂で脱色し、さらにイオン交換樹脂で脱塩した後、濃縮、乾燥してマンノースを主体とする単糖類が1〜10分子結合したオリゴ糖類を含有する組成物を収率14%で得た。
このようにして得られた過酸化脂質の上昇抑制作用を有する組成物のDP分布は、例えばDP1;2.4%、DP2;26.6%、DP3;20.2%、DP4;17.8%、DP5;10.9%、DP6;8.9%、DP7;6.0%、DP8;3.6%、DP9;1.9%、DP10;1.7%で、糖鎖中のマンノース残基の含有量は90%であるが、DP分布および糖鎖中のマンノース残基の含有量は加水分解条件により種々の値をとりうる。オリゴ糖のDP1としてはマンノース等、DP2としてはマンノビオース等、DP3としてはマンノトリオース等、DP4としてはマンノテトラオース等、DP5としてはマンノペンタオース等、DP6としてはマンノヘキサオース等、DP7としてはマンノヘプタオース等、DP8としてはマンノオクタオース等、DP9としてはマンノノナオース等、DP10としてはマンノデカオース等で、結合様式はβ−1,4結合である。
生後4週齢のウィスター系雄性ラットを使用して、固形飼料で1週間予備飼育した。その時の体重を基準に1群5匹の2群に分けて試験食(対照群)、本発明に係る上記組成物を試験食中に5%となるように添加した試験食(MOS群)をそれぞれ4週間与えた。試験食の組成を表1に示した。
【0031】
飼料配合
【表1】
【0032】
飼育は、室温22±2℃、12時間の明暗サイクルの飼育室で行い、飼料および飲料水は自由摂取とした。試験終了時にエーテル麻酔下で開腹し、腹部下大静脈から全血採血した。採血した血液を用いて過酸化脂質を自動分析計にて測定した。結果は表2に示すように、本発明に係る組成物の摂取により、MOS群では血液中過酸化脂質濃度が有意に低減した。
【0033】
【表2】
【0034】
実施例2
コーヒーミックスの製造法
インスタントコーヒー2.0gと実施例1で調整したマンノオリゴ糖0.5gとを混合しコーヒーミックスを調製した。このミックスをお湯140mlで溶かし、官能評価した結果、従来のインスタントコーヒーの味を十分維持し、しかも、より濃厚で味わい深いコーヒー飲料であった。日常の食習慣を変えることなく血液中の過酸化脂質の上昇抑制効果が期待できる。
Claims (6)
- コーヒー豆および/またはコーヒー抽出残渣の高温加熱加水分解で得られる、マンノースを主体とした単糖類が2〜10分子結合したオリゴ糖類又はマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが2〜10分子結合したマンノースを主体としたオリゴ糖類を主成分とすることを特徴とする過酸化脂質の上昇抑制作用を有する医薬組成物。
- 総固形分に対し、マンノースを主体とする単糖類が2〜10分子結合したオリゴ糖類又はマンノースとグルコースおよびガラクトースのような単糖類の少なくとも1種とが2〜10分子結合したマンノースを主体としたオリゴ糖類の合計含有割合が60w/w%以上である請求項1に記載の組成物。
- 糖組成において、マンノース残基の割合が70w/w%以上である請求項1乃至2のいずれかに記載の組成物。
- マンノースを主体としたオリゴ糖類が、マンノースが2〜6分子結合したオリゴ糖類の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の組成物。
- マンナンを加水分解処理することによって得られる請求項1乃至4のいずれかに記載の組成物。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の組成物を含有する飼料。
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