JP4682340B2 - 感光性樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばプリント配線基板製造用ソルダーレジスト、無電解メッキレジスト、ビルドアップ法プリント配線基板の絶縁層あるいは印刷版や液晶表示板製造用のブラックマトリックスやカラーフィルター等に適した感光性樹脂材料として使用することのできる感光性樹脂の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源、省エネルギー、作業性向上、生産性向上を理由に各種分野で光硬化型の樹脂組成物が多用されてきている。さらにIC、LSIの高密度化に伴いプリント配線基板やフラットパネルディスプレイの高精細化等も急速に進んでおり、当該分野では高解像度、高い寸法安定性が感光性樹脂に求められている。
【0003】
当該分野で使用される感光性樹脂のパターン形成時の現像は、環境問題に関わり、希アルカリ液での現像タイプが、溶剤現像タイプに替って主流になってきている。アルカリ現像型レジストは、エポキシ樹脂のエポキシ基に不飽和一塩基酸を導入すると共に酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートが、主成分に用いられている。
この樹脂の製造方法やそれを利用した塗装方法は公知である(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、樹脂製造上および樹脂の安定性、インキ組成物のカルボキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートを主成分とする主材とエポキシ樹脂を主成分とする硬化剤とを混合し、基材に塗布するまでのインキ安定性、さらに、主材と硬化剤を混合したインキ組成物を基材に塗布、60〜80℃の雰囲気下で溶剤を乾燥、ネガフィルムを被せ露光、その後未露光部を希アルカリで現像、レジストパターン形成時、未露光部が完全に現像できないあるいは残膜を生じるといった現像安定性に問題を抱えていた。
こうした樹脂製造上の安定性、主材・硬化剤配合後のインキ組成物の安定性、レジストパターン形成時の現像安定性に関する問題点を解決する手段として、エポキシ(メタ)アクリレート合成時の新規触媒の開発やエポキシアクリレートの構造の改良、さらに合成触媒の失活方法など、種々の検討がなされている(例えば特許文献2〜4参照)。しかし、これらの公知技術は、充分な現像安定性を得るものではなかった。
【0004】
さらに、エポキシ樹脂と不飽和カルボン酸を反応させて得られる活性エネルギー線硬化型樹脂の製造において、酸素濃度が2〜12%の気体の雰囲気下で反応する方法も知られている(例えば特許文献5参照)。しかし、この方法は、樹脂製造上の安定性や充分な現像安定性を得るものではなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−243869号公報
【特許文献2】
特開平03−100009号公報
【特許文献3】
特開平08−003274号公報
【特許文献4】
特開平05−320312号公報
【特許文献5】
特開2002−293876号公報
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、紫外線などの活性エネルギー線により重合硬化する樹脂の製造方法において、不飽和一塩基酸の重合を防止して安定的に製造でき、得られた感光性樹脂が安定であり、かつソルダーレジストインキ組成物としてもインキ安定性に優れ、さらに現像安定性に優れ、ソルダーレジストインキ硬化物として電気特性、機械特性、耐熱性、耐溶剤性、密着性、可とう性等も優れた感光性樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させて得られる感光性樹脂の製造において、有機リン化合物および重合禁止剤の存在下で、より高い酸素濃度を有する気体の雰囲気下で反応、触媒を失活させ、その後、酸無水物を反応させることにより、上記課題が解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを、3価の有機リン化合物触媒および重合禁止剤の存在下で、酸素を含有する気体を反応系の液面下部から導入し、酸素濃度が18〜24%の気体の雰囲気下、温度100〜150℃で反応させ、且つ、該酸素による3価の有機リン化合物触媒の酸化物への転換率を95%以上とした反応生成物に、さらに酸無水物を温度100〜150℃で反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法であって、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の1当量に対する不飽和一塩基酸の当量が0.9〜1.1である感光性樹脂の製造方法、
(2)多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物生成物と酸無水物との反応において、有機酸金属塩触媒を存在させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法であって、該有機酸金属塩が、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びオクチル酸から選ばれる有機酸のカリウム、ナトリウム、リチウム、クロム又はジルコニウムの塩である上記(1)の感光性樹脂の製造方法、
(3)有機リン化合物触媒の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜1.00×10-2モルである上記(1)の感光性樹脂の製造方法、
(4)重合禁止剤の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.1×10-2〜1.5×10-2モルである上記(1)の感光性樹脂の製造方法、
(5)前記気体が、酸素を含有する気体と不活性ガスとからなるものである上記(1)の感光性樹脂の製造方法、
(6)酸素を含有するガスが、空気である上記(5)の感光性樹脂の製造方法、
(7)前記気体が、空気である上記(1)の感光性樹脂の製造方法、
(8)前記気体が、空気と酸素とからなるものである上記(1)の感光性樹脂の製造方法、及び
(9)有機酸金属塩触媒の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜0.5×10-2モルである上記(2)の感光性樹脂の製造方法、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる多官能エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものである。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール重付加型エポキシ樹脂、フェノール−クレゾール共縮合型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールメタン型エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変成エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート型エポキシ樹脂及びこれらに臭素原子や塩素原子などのハロゲン原子を導入したものなどを挙げられる。中でもクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好適に使用することが出来る。これらエポキシ樹脂は1種単独で又は2種類以上を任意の割合で混合して使用することが出来る。
【0009】
本発明で用いる不飽和一塩基酸は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸,桂皮酸,ソルビタン酸,アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、1個の水酸基と2個以上の(メタ)アクロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと多塩基酸無水物との反応物等が挙げられる。中でもアクリル酸が好適に使用することが出来る。これら不飽和一塩基酸は、2種以上を併用しても良い。
【0010】
多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応において、多官能エポキシのエポキシ基の1当量に対する不飽和一塩基酸の当量は、0.9〜1.1、特に0.95〜1.05の範囲とすることが好ましい。不飽和一塩基酸の当量が0.9未満であると残存するエポキシ基の影響により、反応中に高分子量化やゲル化が起こり易くなり、1.1を超えると未反応の酸が多くなりすぎ、インキ配合後のインキ安定性の低下や臭気の問題を発生する傾向となる。
【0011】
多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応において触媒として用いる有機リン化合物としては、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリ(メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ヒドロシキフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、ジフェニルトリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリス(2,6−メトキシフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン類;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィン化合物やテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の4級ホスホニウム塩などが挙げられる。なかでも、触媒活性が高いこと、および触媒失活が容易にできることから三置換有機リン化合物が好ましい。さらにこれらの中でも、トリアリールホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0012】
有機リン化合物触媒の使用量は、多官能エポキシ樹脂のエポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜1.00×10-2モル、特に0.1×10-2〜0.5×10-2モルの範囲が好ましい。有機リン化合物の使用量が0.05×10-2モル未満だとエポキシと酸との反応促進効果が小さく、1.00×10-2モルを超えるとエポキシ基が関与する副反応が起こる可能性が高まり、またインキ組成物の現像安定性が低下するため好ましくない。
【0013】
多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応においては、触媒として有機リン化合物以外の他の触媒を併用することが出来る。他の触媒としては、3級アミン類、第4級アンモニウム塩類、イミダゾール類、ホスホニウム塩類、有機酸金属塩類が挙げられる。この中でも有機酸金属塩類を併用することが好ましく、その使用量は、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の仕込み100重量部に対し、0.001〜0.5重量部が好ましい。
【0014】
多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応において用いる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、有機酸銅塩、フェノチアジン等が挙げられる。なかでもフェノール性水酸基を有する2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノールが、反応時の不飽和基の重合防止、反応触媒の失活のコントロール性、インキ組成物の紫外線硬化性のバランスの取れた面で好ましい。
【0015】
重合禁止剤の使用量は、前記バランスを考慮し、多官能エポキシ樹脂のエポキシ1当量に対し、0.1×10-2〜1.5×10-2モル、特に0.2×10-2〜1.5×10-2モルの範囲が好ましい。
重合禁止剤の使用量が0.1×10-2モル未満だと重合禁止効果が不十分となり、反応中にゲル化を生じる。さらに、触媒への酸化防止効果が低下し、触媒の不活性化が進行しすぎ、反応が進行しない恐れがあり、2.50×10-2モルを超えると、触媒への酸化防止効果が高くなり、触媒の不活性化が進行せず、インク特性が低下する。さらに、感光特性が悪くなる恐れがある。
【0016】
本発明においては、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応は、有機リン化合物および重合禁止剤の存在下で、酸素濃度が18〜24%の気体の雰囲気下で行うことが必要である。
酸素濃度が18%未満であると、反応中の不飽和一塩基酸の重合が起こりやすくなり、反応中のゲル化を引き起こし易くなる。仮に感光性樹脂が得られたとしても、樹脂自体が不安定であり、かつソルダーレジストインキ組成物のインキ安定も低下する。さらに、有機リン化合物触媒の失活(酸化物への転換)が進まず、有機リン化合物触媒が残存し、インキ組成物の現像安定性を低下させる。
酸素濃度が24%を超えると、有機リン化合物触媒の失活が進みすぎ、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応が進行しにくくなり長時間の反応時間を要する。さらに、感光性樹脂が着色し、インキ組成物の感光性を低下させる。
よって、酸素濃度が18〜24%の気体を用いることにより、酸素濃度が2〜12%の気体を用いる場合に比べて、不飽和一塩基酸の重合を効果的に抑制することが可能となり、製造中のゲル化の防止を行うことができる。さらに、効率よく触媒を失活させることが可能となる。
酸素濃度が18〜24%の気体の導入量は、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸と有機溶媒との総量1kgあたり0.01〜0.1L/minとすることが好ましい。
【0017】
酸素濃度が18〜24%の気体としては、酸素を含有する気体、例えば空気と不活性ガスとからなる混合ガス、空気と酸素とからなる混合ガス、および空気自体を使用することができる。コストの面からは空気自体を使用することが好ましい。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなど反応系において不活性であるものであれば良く、一般的には、窒素が好ましい。
【0018】
反応装置内を、酸素濃度が18〜24%の気体の雰囲気とするために、混合ガスを使用する場合は、予め混合ガスとして調整されたものを反応装置内に導入してもよいし、または混合ガスを構成するガスを別々に反応装置内に導入し、反応系内で混合してもよい。
前記気体の導入方法としては特に制限はない。例えば、反応系の液面より上部から吹き込む方法や、気体導入管を液面下に設定してバブリングする方法があるが、混合気体のバブルを反応系に均一に分散させ、安定した製造を行うという面からは、気体導入管を液面下に設定してバブリングする方法がより好ましい。
酸素を含有する気体と不活性ガスとを別々に反応装置内に導入する場合は、酸素を含有する気体と不活性ガスの導入管は、別々でも1つになっていても良いが、製造の安定化の面から、酸素を含有する気体を反応系の液面下部から導入し、不活性ガスを反応系の液面上部から導入することが好ましい。
【0019】
本発明における、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応の反応温度は、100〜150℃、好ましくは110℃〜140℃である。
反応温度が100℃未満であると、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応が進行しにくくなり長時間の反応時間を要する。さらに、有機リン化合物触媒の失活が進まず、有機リン化合物触媒が残存し、インキ組成物の現像安定性を低下させる。
反応温度が150℃を超えると、反応中の不飽和一塩基酸の重合が起こりやすくなり、反応中のゲル化を引き起こし易くなる。仮に感光性樹脂が得られたとしても、樹脂自体が不安定であり、かつソルダーレジストインキ組成物のインキ安定も低下する。さらに、有機リン化合物触媒の失活が進みすぎ、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応が進行しにくくなり長時間の反応時間を要する。さらに、感光性樹脂が着色し、インキ組成物の感光性を低下させる。
反応時間は、反応温度にもよるが、通常1〜15時間、好ましくは2〜10時間の範囲で行い、固形分酸価3KOHmg/g以下の多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応生成物を得る。
【0020】
本発明における、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応においては、有機リン化合物触媒量、重合禁止剤量、気体の酸素濃度および反応温度の最適化により、有機リン化合物触媒である、3価のリン化合物を5価のリン化合物に酸化させ、不活性化させることが重要であり、得られた感光性樹脂は、インキ組成物で良好な現像安定性を得ることができる。
前記の多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応においても、3価のリン化合物を酸化させ5価のリン化合物とすることができ、転換率は80%以上、好ましくは、95%以上として、触媒としての作用を不活性化させることが可能である。
さらに、より不活性化を促進するために、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応終了後に、さらに反応温度と同じ反応温度である100〜150℃、好ましくは110〜140℃で、1〜10時間、好ましくは2〜5時間加熱を継続して、前記反応条件で、当該有機リン化合物触媒の98%以上を不活性な5価のリン化合物に酸化させても良い。
3価のリン化合物から5価のリン化合物への転換率の測定は、種々の方法が挙げられるが、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)にて、3価のリン化合物と5価のリン化合物の検量線を作製し、得られた樹脂の3価のリン化合物から5価のリン化合物への転換率を求める方法が好ましい。
【0021】
本発明の製造方法においては、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させた後、さらに酸無水物を反応させることが必要である。
これにより、多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応により生成した水酸基に、酸無水物の開環付加反応(以下、単に「開環付加反応」ということがある。)が起こり、カルボキシル基が樹脂中に導入される。
【0022】
開環付加反応において用いる酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上併用することができる。
酸無水物の付加量は、感光性樹脂の固形分酸価で20〜150KOHmg/gの範囲となる量が好ましく、さらに好ましくは、40〜120KOHmg/gの範囲となる量である。固形分酸価が20KOHmg/g未満であると、十分な現像姓が得られず、さらに基材との密着性、耐熱性が低下する。固形分酸価が150KOHmg/gを超えると、硬化物塗膜の機械的物性やメッキ耐性等が低下する。
【0023】
開環付加反応の反応温度は、前記の多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応におけると同じく、100〜150℃、好ましくは110℃〜140℃である。
この反応温度が100℃未満であると、開環付加反応が進行しにくくなり長時間の反応時間を要し、150℃を超えると、ゲル化する。
開環付加反応の反応終点は、赤外分光スペクトルの1770cm-1および1850cm-1の酸無水物のピークが消失することで確認できる。
【0024】
開環付加反応においては、反応時間の短縮、得られた樹脂の熱安定性、ソルダーレジストインキ組成物としてのインキ安定性、現像性ライフ等の向上させるために、有機酸金属塩触媒を存在させることができる。
有機酸金属塩触媒としては、反応温度の100〜150℃でエポキシ樹脂と酸無水物の反応促進効果があり、且つ100℃未満ではエポキシ樹脂と開環されたカルボキシル基との反応の促進効果の無いものであれば特に制限は無いが、例えば、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびオクチル酸等のカリウム、ナトリウム、リチウム、クロム、ジルコニウム等の塩を使用することができ、中でもナフテン酸の金属塩が好ましい。
その使用量は、エポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜0.5×10-2モル、特に、0.1×10-2〜0.4×10-2モルの範囲で使用することが、反応時間の短縮、得られた樹脂の熱安定性、ソルダーレジストインキ組成物としてのインキ安定性、現像性ライフの点等から好ましい。
反応時間は、通常5〜10時間であるが、有機酸金属塩触媒を存在させた場合は短縮され、通常0.5〜4時間となる。
【0025】
本発明の製造方法により得られた感光性樹脂は、該樹脂の水酸基に対して、イソシアネート基含有の(メタ)アクリレート化合物を反応させ多官能化し、感光性樹脂の光硬化性、物性を改善することも可能である。
【0026】
本発明の方法によって得られた感光性樹脂を用いた感光性樹脂組成物(以下、「本発明の感光性樹脂組成物」ということがある。)においては、活性エネルギー光線に対する硬化性や感光性樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合の塗工性を向上させる目的で、希釈剤を添加することが出来る。
かかる希釈剤としては、有機溶媒および/または重合性不飽和化合物溶剤が使用出来る。
【0027】
有機溶媒としては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のアセテート類が挙げられる。
これらの溶剤は1種もしくは2種以上を併用してもよい。
【0028】
重合性不飽和化合物としては、活性エネルギー光線硬化性のあるモノマー類が好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレート、メラミンアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリジプロピレングリコールジアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、N−ピロリドン、N−アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、グリセリンジアクリレート、イソボロニルアクリレート、ジシクロペンテニツオキシエチルアクリレートおよびこれらに対応する各種メタクリレートが挙げられる。これら重合性不飽和化合物の1種もしくは2種以上を併用しても良い。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物においては、紫外線照射などにより光硬化させるために光重合開始剤を添加することができる。
かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノンー1;アシルホスフィンオキサイド類及びキサントン類等が挙げられる。
光重合開始剤の配合量は、本発明の感光性樹脂の固形分100重量部に対して、0.5〜30重量部で配合することが好ましい。
【0030】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じてタルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、着色性顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤等を含有することができる。
【0031】
本発明で得られた感光性樹脂は、後硬化(ポストキュア)することも可能であり、そのために封止剤を用いることができる。封止剤は、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂を挙げることができ、さらにジシアンジアミド、イミダゾール化合物などのエポキシ硬化剤と共に用いることができる。
封止剤の配合は、本発明の感光性樹脂のカルボキシル基1当量に対し、封止剤のエポキシ当量で0.5〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量の範囲で配合する。
【0032】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、プリント配線基板用途に適用される感光性レジスト材料だけではなく、広範の印刷版、液晶表示材料用、プラズマディスプレイ用の感光性材料として用いることが可能であり、露光感度が高く、かつアルカリ水溶液による現像性が良好である。しかも、現像後の硬化で電気特性、機械特性、耐熱性、耐薬品性等に優れた硬化塗膜を形成しうる感光性樹脂材料である。
【0033】
【実施例】
以下に実施例および比較例を示して、本発明を具体的に説明する。なお、部及び%とあるのは、特に断らない限り、全て重量基準である。
【0034】
実施例1
攪拌器装置、温度計、気体導入管、還流冷却管を設置した60リットルの反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール217g(1.0モル)及びトリフェニルホスフィン41.5g(0.16モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、130℃に10時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.0KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの98%を酸化物に転換させ、失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg、テトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)及びナフテン酸リチウム70.7g(金属含有量3%、0.3モル)を仕込み120℃で2時間加熱し、反応させて樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(A−1)を得た。
【0035】
実施例2
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール54.3g(0.25モル)及びトリフェニルホスフィン83.1g(0.32モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように、吹き込みながら、125℃に8時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンノ98%を酸化物に転換させ、失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg、テトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)及びナフテン酸リチウム35.3g(金属含有量3%、0.15モル)を仕込み120℃に1.5時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(A−2)を得た。
【0036】
実施例3
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート8.6kgを仕込み、それにフェノールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDPN638、東都化成(株)製、エポキシ当量180〕18.0kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール27.2g(0.12モル)及びトリフェニルホスフィン124.5g(0.48モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように、吹き込みながら、120℃に8時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価0.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの95%を酸化物に転換させ、失活させたフェノールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.1kg、ヘキサヒドロ無水フタル酸7.7kg(50モル)及びナフテン酸リチウム35.3g(金属含有量3%、0.15モル)を仕込み120℃に1時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価85KOHmg/gの感光性樹脂(A−3)を得た。
【0037】
実施例4
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール217g(1.0モル)及びトリフェニルホスフィン41.5g(0.16モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気と酸素を、液面上部の気体導入管から窒素を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が18〜19%となるように吹き込みながら、125℃に8時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価0.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの95%を酸化物に転換させ、失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg、テトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)及びナフテン酸リチウム70.6g(金属含有量3%、0.30モル)を仕込み120℃に1.5時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(A−4)を得た。
【0038】
実施例5
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート8.6kgを仕込み、それにフェノールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDPN638、東都化成(株)製、エポキシ当量180〕18.0kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール27.2g(0.12モル)及びトリフェニルホスフィン124.5g(0.48モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気と酸素を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が22〜23%となるように吹き込みながら、125℃に8時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価0.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの98%を酸化物に転換させ、失活させたフェノールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.1kg、ヘキサヒドロ無水フタル酸7.7kg(50モル)及びナフテン酸リチウム35.3g(金属含有量3%、0.15モル)を仕込み120℃に1時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価85KOHmg/gの感光性樹脂(A−5)を得た。
【0039】
実施例6
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール217g(1.0モル)及びトリフェニルホスフィン41.5g(0.16モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、130℃に10時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.0KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの98%を酸化物に転換させ、失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg及びテトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)を仕込み120℃に5時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(A−6)を得た。
【0040】
比較例1
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール594g(2.7モル)及びトリフェニルホスフィン7.9g(0.03モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、125℃に40時間加熱し、反応させが、樹脂固形分酸価3.0KOHmg/g以下の目的の化合物は得られなかった。
【0041】
比較例2
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにフェノールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDPN638、東都化成(株)製、エポキシ当量180〕18.0kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール11.0g(0.05モル)及びトリフェニルホスフィン314g(1.20モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、120℃に3時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.0KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの20%を酸化物に転換させ、失活させたフェノールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.1kg、ヘキサヒドロ無水フタル酸7.7kg(50モル)を仕込み120℃に3時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価85KOHmg/gの感光性樹脂(B−1)を得た。
【0042】
比較例3
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール54.3g(0.25モル)及びトリフェニルホスフィン83.1g(0.32モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、液面上部の気体導入管から窒素を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が7〜8%となるように吹き込みながら、130℃に10時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの75%を酸化物に転換させ、失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg及びテトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)を仕込み120℃に3時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(B−2)を得た。
【0043】
比較例4
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、それにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール54.3g(0.25モル)及びトリフェニルホスフィン83.1g(0.32モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、液面上部の気体導入管から窒素を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が7〜8%となるように吹き込みながら、130℃に10時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.5KOHmg/g、トリフェニルホスフィンの75%を失活させたクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
上記反応終了後さらに130℃に20時間加熱し、トリフェニルホスフィンの95%を酸化物に転換させ、失活させた。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg及びテトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)を仕込み120℃に7時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(B−3)を得た。
【0044】
比較例5
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート8.6kgを仕込み、それにフェノールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDPN638、東都化成(株)製、エポキシ当量180〕18.0kg(100当量)を溶解させ、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤ハイドロキノン100g(0.91モル)及びトリフェニルホスフィン157g(0.6モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、120℃に8時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価0.5KOHmg/gのフェノールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、その反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エピコート828、油化シェル(株)製、エポキシ当量188〕100g(0.53モル)を加え、さらに150℃、1時間、上記同条件で空気を吹き込みながら、トリフェニルホスフィンの100%を酸化物に転換し、失活させた。
その後、その反応装置に、エチルカルビトールアセテート8.6kg、ヘキサヒドロ無水フタル酸7.7kg(50モル)を仕込み80℃に6時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価85KOHmg/gの感光性樹脂(B−4)を得た。
【0045】
比較例6
実施例1と同一反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.2kgを仕込み、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔商品名:エポトートYDCN704、東都化成(株)製、エポキシ当量205〕20.5kg(100当量)を溶解、さらにアクリル酸7.2kg(100モル)、重合禁止剤p−メトキシフェノール200g(1.6モル)、トリフェニルホスフィン280g(1.1モル)を仕込み、液面下部の気体導入管から空気を、還流冷却管からの排気ガス中の酸素濃度が20〜21%となるように吹き込みながら、110℃に5時間加熱し、反応させて、樹脂固形分酸価1.0KOHmg/gのクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。
その後、反応装置に、エチルカルビトールアセテート9.8kg、テトラヒドロ無水フタル酸7.6kg(50モル)を仕込み80℃に5時間加熱し、反応させた。
さらに、この溶液を50℃に冷却、t−ブチルハイドロパーオキサイド90g(1.0モル)を添加し、50℃に1時間加熱し、トリフェニルホスフィンを100%酸化させ、樹脂固形分酸価80KOHmg/gの感光性樹脂(B−5)を得た。
【0046】
試験例1〜6、比較試験例1〜5
実施例1〜6、比較例2〜6で得られた感光性樹脂(A−1〜A−6、およびB−1〜B−5)の40℃での安定性を評価した。
さらに下記に示す配合比率に従って各成分を配合し、3本ロールによって充分混練し、得られたレジストインキ組成物の諸物性を評価した。
【0047】
感光性樹脂固形成分(A−1〜A−6、B−1〜B−6) 100部
ブチルセロソルブ 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート 20部
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 5部
硫酸バリウム 57部
微粉シリカ 2部
フタロシアニングリーン 1部
1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート 10部
ジシアンジアミド 5部
【0048】
次いで予め面処理済のプリント配線基板に、スクリーン印刷法により、このレジストインキ組成物(光硬化型ポリカルボン酸樹脂組成物)を30〜40μmになるように塗布し、80℃で20分間予備乾燥後、室温まで冷却し乾燥塗膜を得た。この塗膜を、オーク製作所製平行超高圧水銀灯露光装置を用いて60秒間露光し、その後熱風乾燥器を用い150℃で30分間加熱処理して、硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜について諸物性を評価した。
感光性樹脂、レジストインキ組成物及び硬化塗膜について諸物性を評価した結果を、第1表に記載する。
なお、感光性樹脂A−1、A−2、A−3、A−4、A−5及びA−6並びにそれらを用いたレジストインキ組成物及び硬化塗膜を、各々、試験例1、2、3、4、5及び6とし、感光性樹脂B−1、B−2、B−3、B−4及びB−5並びにそれらを用いたレジストインキ組成物及び硬化塗膜を、各々、比較試験例1、2、3、4及び5とした。
また、諸物性は、下記の評価試験方法に従って、評価した。
【0049】
〈感光性樹脂の安定性〉
各感光性樹脂を密閉容器に入れ、60℃、1ヵ月後の粘度を測定し、粘度上昇率を測定。
○:粘度上昇率30%未満
×:粘度上昇率30%以上
【0050】
〈レジストインキ組成物の安定性〉
各レジストインキ組成物を試験管に所定量取り、120℃オイルバス中で感光性樹脂がゲル化するまでの時間を測定。時間のものほど安定性に優れる。ただし、本試験では、レジストインキ組成物中のジシアンジアミドは未添加で評価した。
【0051】
〈指触乾燥性〉
80℃で20分間予備乾燥後の乾燥塗膜に感度測定用ステップタブレット(コダック14段)を設置し、オーク製作所製平行超高圧水銀灯露光装置を用いて60秒間露光し、ステップタブレットを剥離する時に発生するタック性を下記の基準にて評価した。
○:タック感なく、ステップタブレットが容易に剥離可能。
△:タック感若干あり、ステップタブレットが引っかかるが剥離可能。
×:タック性あり、ステップタブレットにインキが付着し剥離し難い。
【0052】
〈感 度〉
80℃で20分間予備乾燥後の乾燥塗膜に感度測定用ステップタブレット(コダック14段)を設置し、オーク製作所製平行超高圧水銀灯露光装置を用いて60秒間露光し、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/mm2 で60秒間現像を行なった後の露光部分の除去されない部分のステップタブレットの段数を測定した。数字が大きい程感度が優れていることを示す。
【0053】
〈現像安定性〉
塗膜の予備乾燥時間を80℃で40、50、60、70、80分間それぞれ行い、その後、各乾燥塗膜を、1%炭酸ナトリウム水溶液を用い、スプレー圧2.0kgf/mm2 で現像を行い現像後の塗膜の有無を観察した。
○:現像時間60秒後、目視で塗膜無し。
△:現像時間120秒後、目視で塗膜無し。
×:現像時間120秒後、目視で残膜有り。
【0054】
〈半田耐熱性〉
硬化塗膜を、JIS C6481に準じて、260℃の半田浴に10秒間、全面が半田浴に浸かるように3回浮かせ、取り出した後、膨れまたは剥れなどの塗膜の状態を観察した。
○:外観変化無し。
×:外観変化有り。
【0055】
〈耐溶剤性〉
硬化塗膜を塩化メチレンに30分浸せきした後の塗膜状態を評価した。
○:外観変化なし
△:外観わずかに変化あり
×:塗膜が剥離したもの
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、安定的に効率良く感光性樹脂を製造することができ、かつ感光性樹脂自体が安定性に優れる。また、本発明の製造方法によって得られた感光性樹脂を用いたレジストインキ組成物は、従来から用いられている酸ペンダントエポキシアクリレートなどに比較し、硬化剤であるエポキシ樹脂と混合後のインキ安定性に優れ、かつ現像安定性にも優れるものである。
Claims (9)
- 多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを、3価の有機リン化合物触媒および重合禁止剤の存在下で、酸素を含有する気体を反応系の液面下部から導入し、酸素濃度が18〜24%の気体の雰囲気下、温度100〜150℃で反応させ、且つ、該酸素による3価の有機リン化合物触媒の酸化物への転換率を95%以上とした反応生成物に、さらに酸無水物を温度100〜150℃で反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法であって、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の1当量に対する不飽和一塩基酸の当量が0.9〜1.1である感光性樹脂の製造方法。
- 多官能エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物生成物と酸無水物との反応において、有機酸金属塩触媒を存在させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法であって、該有機酸金属塩が、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びオクチル酸から選ばれる有機酸のカリウム、ナトリウム、リチウム、クロム又はジルコニウムの塩である請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 有機リン化合物触媒の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜1.00×10-2モルである請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 重合禁止剤の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.1×10-2〜1.5×10-2モルである請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 前記気体が、酸素を含有する気体と不活性ガスとからなるものである請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 酸素を含有するガスが、空気である請求項5に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 前記気体が、空気である請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 前記気体が、空気と酸素とからなるものである請求項1に記載の感光性樹脂の製造方法。
- 有機酸金属塩触媒の使用量が、エポキシ1当量に対し、0.05×10-2〜0.5×10-2モルである請求項2に記載の感光性樹脂の製造方法。
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