JP4678909B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はタイヤ補強用ゴム組成物および該ゴム組成物をタイヤサイドウォール部分に配置される補強ゴム層に用いたランフラットタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に空気入りタイヤは、タイヤパンク時に図3に示すごとく剛性の低いサイドウォール部11がタイヤ幅外方向に突出するように折れ曲がり、かつトレッド部12はタイヤ半径方向内方に移動し、タイヤは平坦化する。そこで走行を継続するとタイヤビード部13はリムウェル14に落込み、タイヤがリムから外れてしまい、もはや走行ができなくなる危険を伴う。あるいはビード部内側上辺13aがトレッド部のタイヤ内側域12aと激しい摩擦を繰返し、タイヤの破損を招来する。
【0003】
そこでタイヤのパンク時においても安全走行を可能ならしめるいわゆるランフラットタイヤの構造は、タイヤカーカスプライの内側に接してビード部からショルダー部にわたり、両端方向に厚さを漸減する三日月状の補強ゴム層を配置するもの、あるいはカーカスプライ本体部分とその折返し部の間にビード部からトレッド部端にわたる補強ゴム層を配置するもの、さらに複数のカーカスプライあるいは補強プライの間に2層の補強ゴム層を配置するもの等が提案されている。これら従来の技術はサイドウォール部に補強ゴムを配置して剛性を高め、上記危険を軽減しようとするものである。しかし上述のごとくカーカスプライ本体部分の内側に配設された補強ゴム層をもってタイヤのサイドウォール部等の破損の発生を軽減するには、補強ゴム層は高モジュラス、低発熱性のゴム組成物であることが必要である。ここで低発熱性を実現するには天然ゴムを主体としたゴム成分を用いることが望ましいが、天然ゴムは加硫戻り特性が悪く、特に、タイヤパンク時の繰返し屈曲変形に伴う発熱により、補強ゴム層の破損を招来する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ランフラットタイヤのサイドウォール部に配置される補強ゴム層において、タイヤパンク時のタイヤの剛性を維持し、かつ発熱を抑制するとともに、繰返し屈曲変形を受けた場合においてもゴム破損を軽減し長距離走行を可能ならしめる補強ゴム層および該補強ゴム層を用いたランフラットタイヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムの20〜80重量部とブタジエンゴムの80〜20重量部を含むゴム成分100重量部に対して、N,N′−m−キシレン−ビス−シトラコンイミドを0.3〜2.0重量部配合したタイヤ補強用ゴム組成物である。
【0006】
また他の発明は、トレッド部とその両端から両側に延びるサイドウォール部と、ビード部と、該ビード部に埋設される1対のビードコアのまわりを両端を折返して係止されるトロイド状カーカスプライと、このカーカスプライの半径方向外側でトレッド部内側に配置される複数枚のプライよりなるベルト層と、カーカスプライの本体部分とその折返し部の間またはカーカスプライのタイヤ内腔側で少なくともサイドウォール部に配置される補強ゴム層を備え、該補強ゴム層は前記第1の発明のゴム組成物を用いたランフラットタイヤである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0008】
図1は本発明の実施の形態を示すランフラットタイヤの断面図の右半分である。ここで本発明のランフラットタイヤ1は、コードを実質的にタイヤのラジアル方向、たとえばタイヤ周方向に対して75〜90°の角度に配列した少なくとも1枚のカーカスプライ3をビードコア6のまわりを内側から外側に折返して巻き上げている。そして折返し部3aは、該カーカスプライのクラウン部の外側に配置された、ベルト層4の下側でベルト層端部と一部重複するように固定される。タイヤ走行時の繰返し変形に伴いカーカスプライの折返し部3aはビード部方向に引張られ、さらにベルト層端部BE近傍でゴムの変形と相まって、折返し部端縁近傍で応力集中が生じやすい。したがって前記折返し部3aをベルト層の下側に固定することにより、応力集中を軽減し、サイドウォール部2の剛性を高めることができる。しかし、カーカスの折返し部はベルト層端部と重複部分を形成することなく、サイドウォール部あるいはビード部に係止されることも可能である。なお、カーカスプライのコードはポリエステル、アラミド等の有機繊維コードを用いることができるが、スチールコード、たとえば1×2、1×3、1×4、1×5等の構造のものも用いられる。
【0009】
次に本発明では、カーカスプライの本体部分とその折返し部3aの間にビードコアの上辺近傍からベルト層端部近傍に延びる補強ゴム層8が配置される。該補強ゴム層8は、厚肉でかつ、ほぼ一定の厚さを有してタイヤ最大幅付近に位置する中央部8Aと、この中央部8Aから半径方向外方および内方に延びる厚さを漸減するテーパ状の外方部8Bおよび内方部8Cで構成される。図においては、前記中央部8Aは厚さが3〜5mmの範囲のもので比較的薄肉で形成されている。前記外方部8Bはカーカスプライの折返し部3aの端縁近傍で前記ベルト層4と重なって終端する。一方、前記内方端8Cは、ビードエーペックス9の外側面に接続し、その端縁はリムフランジ上端高さ位置よりも下方で終端している。このように補強ゴム8をビードエーペックス9に連結させしかもカーカスプライの折返し部3aをベルト層端部の内側に配置しているため、パンク時の内圧低下時においてもサイドウォール部の剛性を効果的に改善できる。
【0010】
なお、補強ゴム層はカーカスプライ本体部分のタイヤ内側のサイドウォール部にインナーライナーとの間に配置することもでき、また、両者の構造の併用も可能である。
【0011】
本発明の補強ゴム層に用いられるゴム組成物は、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムの20〜80重量部と、ブタジエンゴムの80〜20重量部を含むゴム成分100重量部に対して、N,N′−m−キシレン−ビス−シトラコンイミドを0.3〜2.0重量部配合したことを特徴とする。
【0012】
ゴム成分として発熱の抑制、耐屈曲特性を維持する観点から天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムとブタジエンゴムの混合系が用いられる。ブタジエンゴムが少なすぎると発熱が大きくなり、一方、天然ゴム/イソプレンゴムが少ないと耐屈曲性が低下する。したがって、ゴム成分のうちブタジエンゴムは20〜80重量部の範囲で配合される。ここでブタジエンゴムは、シス含量が40重量%以上、好ましくは80重量%以上のハイシスポリブタジエンを使用することが好ましい。
【0013】
次に、N,N′−m−キシレン−ビス−シトラコンイミドはゴム成分100重量部に対して0.3〜2.0重量部配合される。0.3未満では発熱に伴う加硫戻り、すなわち熱劣化が防止できず、一方2.0重量部を超えると、硬くかつ引張強度が低下し、繰返し変形に伴う補強ゴム層の破損が生じやすくなる。
【0014】
次に本発明では、カーボンブラックをゴム成分100重量部に対して40〜80重量部配合することが望ましい。40重量部未満では加硫後のゴム組成物に十分な補強効果が得られず、一方80重量部を超えると発熱が大きくなる。好ましくは50〜70重量部である。
【0015】
ここで、カーボンブラックの窒素吸着法比表面積N2SAは100m2/g以上のものを用いることにより、加硫ゴムの補強効果が一層改善される。
【0016】
さらに本発明の補強ゴム層のゴム組成物は複素弾性率E*が6.0〜9.0Mpaの範囲とすることによりタイヤパンク時のサイドウォール部の剛性の維持と耐屈曲性を向上することができる。
【0017】
ここで複素弾性率E*は、加硫ゴムをタイヤから取出し、岩本製作所粘弾性スペクトロメータで測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±2%、周波数10Hzにて測定される。
【0018】
なお、本発明のランフラットタイヤのビード部7には、前記ビードコア6からカーカスプライ3の本体部分とその折返し部3aとの間で半径方向外方に延びる断面三角形状の前述のビードエーペックス9が配置される。該ビードエーペックス9はJISA硬度が65〜90度の硬質ゴムからなり、たとえばリムフランジ上端と前記タイヤ最大幅との中間高さ位置まで延在する。
【0019】
なお前記ベルト層4は、スチールコード、芳香族ポリアミド等の高弾性ベルトコードをタイヤ赤道に対して5〜30度の角度を有して配列した、たとえば2枚のプライ(以下ベルトプライ4A、4Bという)からなり、各コードはプライ間で交差するようにコードの傾斜方向を互いに違えて重ね置きしている。なおベルトプライのうち最も幅広となる、内側のベルトプライ4Bのプライ幅を、トレッド接地幅の0.90〜1.05倍にし、トレッド部5の略全幅をタガ効果を有して補強している。ここでトレッド接地幅とは、JATMAで規定する標準リムに装着されかつJATMAで規定する最高空気圧を充填したタイヤに、この最高空気圧に基づく最大荷重を負荷したときに接地するトレッド接地面積のタイヤ幅方向の幅を意味する。
【0020】
図2に本発明の他の実施例のタイヤ断面図の右半分を示す。図においてカーカスプライ3の内側に隣接してサイドウォール部からビード部7方向とトレッド部5方向に厚さを漸減して延びる第2の補強ゴム層10が配置されている。カーカスプライ本体部分と折返し部3aの間に配置される補強ゴム層8の複素弾性率E*を比較的高く、たとえば7〜10Mpaに設定し、一方、第2の補強ゴム層10の複素弾性率E*を比較的小さく、たとえば6.5〜8Mpaとし、一方、損失正接(tanδ)を小さく設定することにより前者の補強ゴム層8にパンク時の剛性を分担させ、後者の補強ゴム層10には屈曲変形に伴う発熱抑制と応力緩和分担させ、ランフラット性能を一層向上させることも可能である。
【0021】
【実施例】
図1に示す構造のタイヤサイズが225/60ZR16サイズのタイヤを製作し、490kg荷重で2500ccクラスの車両に4輪装着した。テストは空気圧を0にし、60km/hの一定速度でタイヤを走行させ、タイヤ破壊までの走行距離を測定した。距離の長いほどランフラット性に優れていることを示す。
【0022】
各テストに用いたタイヤの補強ゴム層のゴム組成物およびその加硫ゴム特性とともに、それを用いたランフラットタイヤの性能を表1に示している。なお、表1に示していない配合剤の種類および配合量は表2に示すとおりである。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
【発明の効果】
上述のごとく本発明は天然ゴム等のゴム成分を主体とする系にN,N′−m−キシレン−ビス−シトラコンイミドを所定量配合したゴム組成物をランフラットタイヤの補強ゴム層に用いたため、タイヤパンク時においてもタイヤが破壊することなく長距離走行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のランフラットタイヤの断面図の右半分である。
【図2】 本発明のランフラットタイヤの断面図の右半分である。
【図3】 従来のランフラットタイヤのパンク時の状態を示す断面概略図である。
【符号の説明】
1 タイヤ、2 サイドウォール部、3 カーカスプライ、4 ベルト層、5トレッド部、6 ビードコア、7 ビード部、8 補強ゴム層、9 ビードエーペックス、10 第2の補強ゴム層。
Claims (2)
- トレッド部とその両端から両側に延びるサイドウォール部と、ビード部と、該ビード部に埋設される1対のビードコアのまわりを両端を折返して係止されるトロイド状カーカスプライと、前記ビードコアから前記カーカスプライの本体部分とその折返し部との間で半径方向外方に延びる断面三角形状のビードエーペックスと、前記カーカスプライの半径方向外側でトレッド部内側に配置される複数枚のプライよりなるベルト層と、カーカスプライ本体部分とその折返し部の間に配置される第1の補強ゴム層を備え、
前記第1の補強ゴム層は、タイヤ最大幅付近に位置する中央部と、前記中央部から半径方向外方および内方に延びる厚さを漸減するテーパ状の外方部および内方部から構成され、前記内方部端は、前記ビードエーペックスの外側面に接続し、かつ、天然ゴムおよび/またはイソプレンゴムの20〜80重量部とブタジエンゴムの80〜20重量部を含むゴム成分100重量部に対して、N,N′−m−キシレン−ビス−シトラコンイミドを0.3〜2.0重量部配合したゴム組成物からなり、
前記ビードエーペックスは、JIS A硬度が65〜90度の硬質ゴムからなる、ランフラットタイヤ。 - さらに前記カーカスプライの半径方向内側に隣接して前記サイドウォール部から前記ビード部方向と前記トレッド部方向に厚さを漸減して延びる第2の補強ゴム層を備え、
前記第1の補強ゴム層の複素弾性率E*が7〜10MPa、および前記第2の補強ゴム層の複素弾性率E*が6.5〜8MPaである、請求項1記載のランフラットタイヤ。
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