JP4677870B2 - ポリアミドフィラメント - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミドフィラメントに関するものであり、さらに詳しくは断面形状として扁平度が2〜6の扁平断面を有し、フィラメント数が2本であるポリアミドフィラメントにおいてフィラメント間のたるみを抑制し、扁平断面の反転を最小限とすることにより、カバリング糸の鞘糸として用いたとき、高次通過性と製品品位を向上させるのに有効なポリアミドフィラメントに関するものである。
一般に衣類に用いる布帛には柔らかさ、保温性、肌触り、通気性等のためにマルチフィラメントを用いることが多い(紡績糸を含む)。モノフィラメントの場合、一般に堅く、保温性や肌触り、通気性をコントロールすることが非常に難しいからである。一方、パンティーストッキングのような透明性が重視される分野では透明性を向上させるためにフィラメント数を少なくすることが試みられている。これは、フィラメント数を減らすことにより、フィラメント表面積を減少させ、反射光を減らすことによって人間の目に入ってくる白色光を少なくして、透明性を上げようとするものである。しかしながら、フィラメント数を単純に減らすことは、上述の通り柔らかさおよびカバリング糸の鞘糸に用いた場合被覆性が低下して耐久性を低下させてしまうという問題点があった。
フィラメント数を減らしながら、粗硬な風合いを防ぐ方法の一つとして特許文献1のように断面形状の扁平化がある。これによりたとえば小判形状の断面とすることで2方向のみではあるが曲げ剛性が低下し、ソフトな風合いとなる。しかしながら、上記特許文献1において具体的に開示されたポリアミドフィラメントは5フィラメントと多いため、弾性糸の被覆性は良好であるものの、表面積が逆に広くなっており表面反射光が強く、これを用いてパンティストッキングとすると、透明性は未だ不十分であるだけであった。
一方、フィラメント数が少ないポリアミドマルチフィラメントを溶融紡糸してそのまま高速巻取する際、フィラメント数が少ないポリアミドマルチフィラメントでは、ローラーとの糸離れが悪く、操業性の改善が試みられてきた。例えば、特許文献2では交絡が全く入らない2フィラメントでさえも空気処理を施すことによりゴデーローラー出口部で逆巻きしようとする単糸を入れ替えることにより、逆巻き安定限界張力は大幅に低下することが記載されている。ポリアミドマルチフィラメントではなく、例えばポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントの場合では、単に巻取張力を高くして巻けばよいが、ポリアミドマルチフィラメントでは遅延的回復が大きく、ヤング率が低いためパッケージフォームの悪化をもたらしてしまう。
同様に特許文献3においてもフィラメント数が2または3の単糸繊度が太いポリアミド繊維糸条を高速直接延伸法で得るのに際し、給油後に交絡処理することが提案されており、単糸たるみやパッケージフォームも良好となっている。このように2フィラメントにおいても交絡処理することが提案されている。
しかしながら、これらの提案は実質的には丸断面に対してであり、これを単純に扁平断面を有するフィラメント数2本のポリアミドフィラメントに単純に応用すると、条件によってフィラメントの反転、単糸間のたるみが頻発することが本発明者らの検討により判明した。すなわち丸断面のフィラメントでは、フィラメントが反転しても高次工程のトラブルや製品品位の低下は生じないこと、さらに後述のごとく断面形状からたるみは形成されにくい。
特開平7−157902号公報(段落番号[0049]) 特開昭60−94616号公報(第7頁、右上欄第3行目〜13行目) 特開2003−113531号公報(段落番号[0010]〜[0012]、[0017]〜[0030])
しかしながらフィラメント数が2本で、扁平断面を有するポリアミドフィラメントにおいては、交絡処理により単糸間にズレが生じるたるみや、扁平面の反転が生じやすく、これにより高次通過性と製品品位の低下を引き起こすことが本発明者らの検討により判明した。
そこで、本発明は、かかる従来の問題を解決し、高次通過性に優れ、製品品位の向上を実現するポリアミドマルチフィラメントを提供することを課題とするものである。
この課題を解決するために、本発明は、次の構成を採用するものである。
(1)断面形状として扁平度が2〜6の扁平断面を有し、フィラメント数が2本であり、伸度が20〜80%のフラットヤーンであり、糸条長手方向に10m当たり、単糸間隔が2mmを越える単糸間のたるみが1個以下であり、扁平面の反転が生じている頻度が10cm当たり2回以下であることを特徴とするポリアミドフィラメント。
(2)トータル繊度が7〜22Tであることを特徴とする(1)記載のポリアミドフィラメント。
(3)カバリング糸の鞘糸に用いられる上記(1)または(2)記載のポリアミドフィラメント。
本発明は、上記の構成を採用することにより、フィラメント数が2本で、扁平断面を有するポリアミドフィラメントにおいて、単糸間のズレによるたるみや扁平面の反転を抑制することにより、例えばカバリング糸の鞘糸として用いた場合、高次通過性と製品品位の向上を実現する。さらにそのカバリング糸をストッキングに用いることにより優れた透明性と耐久性・風合いの向上を実現することができる。
本発明のポリアミドフィラメントの物性としては、断面形状として扁平度が2〜6の扁平断面を有し、フィラメント数が2本であり、伸度が20〜80%のフラットヤーンである。すなわち、2フィラメントの扁平断面のフィラメント延伸糸である。
本発明のように扁平断面を有し、フィラメント数2本であるようなポリアミドフィラメントにおいて、従来と同様の交絡処理、具体的には交絡圧空圧を従来と同程度とするような交絡処理を行うと、単糸間でループ状のたるみや扁平面が反転するねじれを生じやすい。傾向として同繊度の場合、扁平度が高いほどたるみを生じやすく、扁平度が低いほど扁平面の反転が生じやすい。
一方、交絡処理を行わない場合もしくは低圧空過ぎると、ゴデーローラーからの糸離れが悪くなる。これは、交絡処理により単糸の入れ替わりが行われなくなるためで、ゴデーローラー巻き付きによる糸切れ多発やパッケージフォーム不良などを引き起こしやすくなる。
したがって、繊度、扁平度等によるが、交絡圧空圧としては0.1〜0.25MPaを中心に検討することが好ましい。
たるみが生じたポリアミドフィラメントを弾性糸(スパンデックス)を芯糸とするカバリング糸の鞘糸として用い、カバリング糸にした場合、カバリング糸の製造工程中にたるみがガイドに引っかかったり、糸切れなどが多発し、いわゆる高次通過性の低下を引き起こすと共に、カバリング糸表面からたるみ部分が浮いたり、カバリング撚数に長手方向のムラが生じることとなる。このようなカバリング糸を用いたストッキング製品に用いた場合、カバリング糸からのたるみ、さらにカバリング撚数のムラに起因するヨコムラを生じ製品品位低下を引き起こし、好ましくない。
また、扁平面の反転が生じている場合、カバリング糸の鞘糸においても扁平面が反転する。扁平断面のため、スパンデックスの周りをきれいに被覆している中での扁平断面の反転は、扁平断面のエッジによりスパンデックスにダメージを与え、破損の原因となったり、カバリング糸の光沢が変わるために製品品位を低下させてしまう。
本発明のポリアミドフィラメントのごとき、2フィラメントで扁平断面を有するときに交絡処理により前述のごとき作用を受ける原因としては、断面形状が扁平断面の場合、交絡処理時の圧空でより強く作用を受けること、さらにフィラメント数が2本と少ないこともより強く作用を受ける原因となるためである。また、本発明のポリアミドフィラメントのトータル繊度を後述のような好ましい範囲とする場合には、単糸繊度が比較的太いため、上記作用を強く受ける原因となる。また交絡処理により一旦単糸間にズレが生じるとずれていない部分での単糸間の集束性が強く、容易には元に戻らないことも関係していると推定する。
たるみの評価方法としては、黒台紙の上で糸長手方向に目視にて100m観察する。たるみが発生している部分は、たるみが発生している前後に0.088cN/デシテックスの張力を掛けた状態で単糸間の隙間(糸条方向に対して垂直方向に最長部分、単糸の太さは含まない)を測定する。単糸間隔が2mmを越えるたるみ数をカウントし、10m当たりのたるみ数を算出する。なお、糸をパッケージから引き出すときには解舒時に張力をかけすぎて糸条の状態を変化させないよう、0.088cN/デシテックス以下の張力で糸を引き出すものとする。
本発発明においては上記たるみが10m当たり1個以下であることが必要である。
一方、扁平面の反転の生じている頻度評価は、黒台紙の上に糸長50cmを固定する。拡大鏡、顕微鏡、マイクロスコープ等で糸を観察し、扁平面が反転している個数を測定し、10cm当たりの反転の数を算出する。ここで、片方のフィラメントのみ反転している場合は1回、実撚により2フィラメントが並んで反転している場合にも1回とカウントする。これは、カバリング糸上で扁平面が反転する場合、片方のフィラメントのみ反転している時も、2フィラメントが並んで反転しているときもカバリング上では1つの欠点として現れるためである。なお、糸をパッケージから引き出すときには解舒時に張力を糸条の状態を変化させないよう、0.088cN/デシテックス以下の張力で糸を引き出すものとする。
本発明においては上記頻度が2回以下である必要があり、好ましくは1回未満である。上記範囲で扁平面の反転が解舒撚によるものだけであることが好ましい。
本発明のポリアミドフィラメントの扁平度は、2〜6の扁平断面であり、紡糸機でのローラーを走行する際、並列に並んだ状態で配置されやすく、そのまま並列に並んだ状態で巻き取られたり、扁平断面同士が重なり合うように巻き取られ、集束しやすい。この時、扁平度が2未満であるときには、各単糸は反転しやすく、上述のように糸条の集束性や製品品位の低下を招く。一方6を越える場合には糸の強度低下が大きいことから好ましくない。
ここで、パッケージとは、ドラム、チーズ、ボビン等巻き取られたものであれば限定されない。
本発明のポリアミドフィラメントの断面形状としては、小判型、楕円型、W型、瓢箪型、Z型、X型、十字型、ドッグボーン型など特に限定はないが、長軸側の長さLと短軸側長さSの比(L/S)を扁平度とし、この値が2〜6となるものを指す。なお、図1は扁平断面の一例であり、Aが小判型、Bが楕円型、CがW型、Dが瓢箪型、EがZ型、FがX型、Gが十字型、Hがドッグボーン型の断面である。この中でも単糸同士が重なり合いやすい形状が好ましく、W型、小判型、楕円型、瓢箪型、Z型が好ましい。中でも接する面が直線の場合、表面反射が少なくパンティーストッキングとしたとき透明性が向上するため好ましく、小判型がより好ましい。
また、扁平度は上記のとおり長軸側の長さL、短軸側の長さSの時、扁平度=L/Sを意味するが、その断面に外接する長方形を仮定したときにその長辺を長軸側の長さL、短辺を単軸側の長さSとする。例えば小判型、楕円型、W型、瓢箪型、Z型、X型、十字型、ドッグボーン型の場合、そのL、Sは図1に示す長さとなる。
本発明のポリアミドフィラメントはフラットヤーンであるが、これは仮撚加工等捲縮加工の施されていない長繊維を意味する。本発明においてフラットヤーンを用いる理由は、仮撚糸とすると透明性が低下するためである。
本発明においては上記フラットヤーンの伸度は20〜80%であることが必要であるが、例えばカバリング糸の鞘糸に用いた場合、伸度を上記範囲とし、かつ強度を高く設計することにより、トータル繊度を細繊度化し、透明性をより高める設計が可能となるためである。この中でも伸度が30〜50%の範囲に設定することにより、強度と高次通過性を共に向上させることができる。
本発明のポリアミドフィラメントの適用繊度としては特に限定はないが、フィラメント数を2本に限定しており、太すぎると単糸繊度が太くなり過ぎて風合いが粗硬となってしまうこと、さらに衣料用として最低限の耐久性を維持することを考慮するとトータル繊度として7〜22Tであることが好ましい。なかでもカバリング糸の鞘糸に用いる場合には、トータル繊度7〜12Tにすることにより耐久性と透明性のバランスに優れたストッキングを得ることができ、より好ましい。
本発明のポリアミドフィラメントはパッケージフォーム(バルジ、サドル)も良好であり、糸落ちに対しても非常にタフである。良好なパッケージフォームは、パッケージからの解舒安定性を生み、高次通過性や製品品位の安定性にも寄与する。
なお、扁平断面により単糸間の集束性が非常に高いと同様にパッケージからの糸解舒性が悪化する懸念がある場合には、適切なトラバース設定による綾角の設定を行うことにより、良好な解舒性となる。そのため、綾角をほとんど取れないボビンへの巻取よりもチーズ巻きがより好ましい。
本発明でいうポリアミドは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミドであることが好ましい。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではそれを構成するε−カプロアミド単位として、ポリヘキサメチレンアジパミドではそれを構成するヘキサメチレンアジパミド単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、ポリカプロアミドの場合は、ヘキサメチレンアジパミド単位、ポリヘキサメチレンアジパミドの場合には、カプロアミド単位の他、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
本発明でいうポリアミドの重合度は、必要とする糸強度、初期引張抵抗度等を考慮して適宜選択して良いが、98%硫酸相対粘度で2.0〜3.3の範囲が好ましい。
さらに必要に応じて白色顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、末端基調節剤、染色性向上剤等が添加されていてもよい。また、紫外線吸収や接触冷感の付与のため、無機粒子の添加を行うことも可能である。
上記のようなポリアミドフィラメントは、溶融紡糸した扁平度が2〜6の扁平断面、フィラメント数2本のポリアミドマルチフィラメントを適度な範囲の圧空で交絡を付与しながら3000m/min以上で巻き取ることにより得られる。
すなわち、扁平度が2〜6の扁平断面で、フィラメント数2本のポリアミドマルチフィラメントはローラー間で単糸が並列に並んだ状態で配列されやすく、同繊度で比べるとローラーへの接触面積が極めて広い。そのため、最終ローラーからワインダーへの巻取においてローラー離れが悪く、ローラーに逆巻きして糸切れを生じやすい。
糸離れを良くする方法としては、一般には高張力で巻き取ることが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート繊維等では、高張力での巻取を行っている。しかしながら、ポリアミドでは遅延回復が大きく、ヤング率が比較的低い糸で高張力にて巻き取ると大幅なパッケージフォームの悪化をもたらしてしまい、糸の均一性や輸送時の糸の擦過、解舒不良を引き起こしてしまうため、好ましくない。したがって、巻取張力としては巻取糸1デシテックス当たり0.13cNの張力前後(好ましくは0.1〜0.15cN)で巻き取ることが好ましい。
巻取張力を下げるには、口金から吐出後、第1ゴデーローラー(1GD)にて引取までの間に冷却、給油後、0.1〜0.25MPa程度の圧空を用いて交絡を付与することが好ましい。その後一旦巻き取ることなく、第2ゴデーローラー(2GD)との間で延伸を行った後、3000m/min以上で巻き取ることができる。なお、好ましい圧空圧はトータル繊度と扁平度、および巻取速度等に応じて変化し、扁平度2〜6の範囲においては、扁平度が高い時には圧空は低める方が好ましく、扁平度が低い特には圧空は高めることが好ましい。
上記交絡を付与することにより扁平面の反転や単糸間のたるみを抑制しながら、単糸の相対位置を入れ替えることにより2GDからの糸離れが良くなり、巻取張力を下げて安定して巻取ることが可能となる。なお、上記単糸の相対位置を入れ替えるとは、二つのフィラメントがその表裏を変えない状態で単糸の上下関係が変わることをいい、裏表が逆転するような反転とは区別して用いるものとする。二本の単糸がその表裏を変えない状態で単糸の上下関係が変わる場合の一態様を図2に基づき説明する。図2は2GD上における単糸の動きの一態様を示す断面図である。図2は2GD3の上に扁平形状の二つの単糸1、2が重なり合って存在している状態から、上部に存在する単糸1の上下をかえないまま、水平方向にずれて2本の単糸1、2が、横に並ぶ状態となり、さらに当初重なり合った下側に存在していた単糸2がその上下をかえないまま横にずれて隣の単糸1の上に重なる。このような入れ替わり方であれば、単糸の扁平面が反転しないので、カバリング糸上で鞘糸として用いた扁平面の反転に伴う扁平断面のエッジ発生による弊害を生ずることなく、またゴデーローラーからの糸離れがよくなるので安定して巻き取ることができるのである。
偏平度が2〜6の繊維横断面形状は、例えば紡糸口金の吐出孔形状をスリット状にし、その長さ/幅の比を10以上のように大きくすることにより得ることができる。
また、溶融紡糸の方法として、口金から溶融ポリマーを吐出させ、冷却、給油後、1500〜4000m/min程度で引取り(第1ゴデーローラー)、次の第2ゴデーローラーとの間で1.0〜3.0倍程度の延伸を行った後で、3000m/min以上で巻き取ることができる。この際、第1ゴデーローラーと第2ゴデーローラーの間の延伸倍率(延伸倍率が高いと伸度は低くなる)、巻取速度(巻取速度が高いと低くなる)を適切に設計することにより、狙いとする伸度を得ることが可能となる。また、第2ゴデーロールを150〜170℃の加熱ロールとすることで熱処理を行うことは好ましく行われる。各ゴデーロールはネルソンローラー、駆動ローラーに従動型のセパレートローラがついたもの、さらに片掛けローラーのいずれでも問題はない。またローラーとフィラメントの滑りを抑制するためにローラーの表面状態を平滑にしたり、糸離れを良くするために第2ゴデーロールを溝付きにしたり、梨地とすることは好ましく行われる。
油剤はローラー給油、ガイド給油などによってマルチフィラメントに付与され、巻取時の有効成分付着量はマルチフィラメント重量当たり0.4〜1.5重量%程度が好ましい。油剤の付与は紡糸工程中、1度でも複数回に分けて行われても問題ない。複数回に分けて行う場合には、有効成分量が低い油剤を付与した後、有効成分量が高い油剤を付与することが好ましい。
油剤の種類としては、特に制限はなく、脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤等を混合分散させて用いることができる。
本発明のポリアミドフィラメントは、織編物に使用されるが、高い扁平度とフィラメント数が少ない特徴を生かした製品設計を行うことができる。たとえば、弾性糸を芯糸に本発明のポリアミドフィラメントを巻き付けたカバリング糸をストッキングの少なくともレッグ部に用いることにより、表面積が抑制され、フィラメント数が少ないにもかかわらず被覆性に優れることから、輝線を少なくして反射光を抑えて高い透明性を実現することができる。
また、織物にすることにより広い扁平面が反射面となって、強い反射を発現させたり、低通気度に設計することができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例および比較例における各測定値は、次の方法で得たものである。
A.扁平度
被覆糸に用いる繊維の任意の位置にて横断面方向に薄切片を切り出し、透過顕微鏡で繊維横断面を5枚撮影し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて長軸長さLと短軸長さSの比=L/Sを算出し、5つの値の平均値から扁平度を求めた。
B.伸度測定
JIS L1013−1992 7.5引張強さ及び伸び率に準じて測定を行った。試験条件としては、試験機の種類としては定速緊張形、つかみ間隔50cmにて行った。
C.たるみ評価
パッケージから0.088cN/デシテックス以下の張力で糸を引き出し、黒台紙の上で糸長手方向に目視にて100m観察する。たるみが発生している部分は、たるみが発生している前後に0.088cN/デシテックスの張力を掛けた状態で単糸間の隙間(糸条方向に対して垂直方向に最長部分、単糸の太さは含まない)を測定する。単糸間隔が2mmを越えるたるみ数をカウントし、10m当たりのタルミの個数を算出する。
D.扁平面の反転評価
パッケージから0.088cN/デシテックス以下の張力で糸を引き出し、黒台紙の上に糸長50cmを固定する。拡大鏡、顕微鏡、マイクロスコープ等で糸を観察し、扁平面が反転している個数を測定し、10cm当たりの反転の数を算出する。ここで、片方のフィラメントのみ反転している場合は1回、実撚により2フィラメントが並んで反転している場合にも1回とカウントする。これは、カバリング糸上で扁平面が反転する場合、片方のフィラメントのみ反転している時も、2フィラメントが並んで反転しているときもカバリング上では1つの欠点として現れるためである。なお、2フィラメントが並んで反転している中には解舒撚も含まれている。
E.98%硫酸相対粘度(ηr)
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(b)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}。
実施例1
98%硫酸相対粘度が2.7で酸化チタンを含まないポリカプロアミド(以下ナイロン6)チップ275℃で溶融し(紡糸温度は270℃)、小判型の吐出孔形状でスリット比(スリット長さ/スリット幅)8.5となるスリット形状の吐出孔を有する紡糸口金から吐出させ、冷却、ガイド給油により油剤(油剤有効成分として脂肪酸エステル、非イオン乳化剤、制電剤を含む)付与後、交絡圧空圧0.20MPaにて交絡を付与し、第1ゴデーロールに片掛けして引取り、巻き取ることなく、155℃に加熱している第2ゴデーロールに片掛けして、第1と第2ゴデーロール間で延伸、第2ゴデーロールにて熱セットした後、東レエンジニアリング社製TW−716ワインダーを用いて、巻取張力1.3cNで巻取速度4000m/minの速度で11デシテックス2フィラメントのポリアミドフィラメントを巻き取った。1パッケージ当たり3kg巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れなく、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、扁平度3.5、小判型となっており、伸度40%、トリクロロエチレンで油剤を抽出後、トリクロロエチレンを100℃で蒸発させて残留物の重量を測定する方法で確認したところ、油分は1.0重量%であった。単糸同士は小判型の平面同士が長手方向に並列または重なりあいながら連続して油剤の表面張力により付いており、通常の交絡による間欠的な単糸絡み合いによる集束とは全く集束原理はことなるが、集束性は非常に高かった。単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られず、10m当たりのタルミの個数は0であった。扁平面の反転数は10cm当たり1.0個であった。
巻き取ったパッケージは糸落ちの発生もなく、フォームも良好で解舒性もスムーズで優れたパッケージフォームとなっていた。
Figure 0004677870
比較例1
実施例1の製造条件に準じながら、交絡圧空圧を0.30MPaとして同様に巻取を行った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れないが、巻取張力の変動は実施例1と比べて大きかった。
断面形状は、扁平度3.5、小判型となっており、伸度40%、油分は0.9%であった。単糸同士は間欠的に互いにずれてループ状のたるみを発生しており、単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は10m当たり8個存在した。また、扁平面の反転数は10cm当たり2.5個であった。
巻き取ったパッケージの端面からはたるみに単糸の浮きが見られた。
実施例2
実施例1の製造条件に準じながら、口金形状を楕円型、スリット比5(ここでは長軸の長さ/短軸の長さ)とし、ポリマー吐出量を上げて、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、交絡圧空圧0.25MPaにて交絡を付与し、巻取張力2.0cNで巻取速度4000m/minの速度で18デシテックス2フィラメントのポリアミドフィラメントを巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れなく、巻取張力の変動は小さく安定しており、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、扁平度2.2、楕円型となっており、伸度42%、油分は1.2%であった。単糸同士は楕円型の平面同士が長手方向に並列または重なりあいながら連続して油剤の表面張力により付いており、通常の交絡による間欠的な単糸絡み合いによる集束とは全く集束原理はことなるが、集束性は非常に高かった。単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られず、10m当たりのタルミの個数は0であった。扁平面の反転数は10cm当たり1.8個であった。
巻き取ったパッケージは糸落ちの発生もなく、フォームも良好で解舒性もスムーズで優れたパッケージフォームとなっていた。
比較例2
実施例2の製造条件に準じながら、交絡圧空圧を0.35MPaとして同様に巻取を行った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れないが、巻取張力の変動は実施例2と比べて大きかった。
断面形状は、扁平度2.2、楕円型となっており、伸度42%、油分は1.1%であった。単糸同士は間欠的に互いにずれて小さなループ状のたるみを発生していたが、欠点となるような単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られなかった。逆に扁平面の反転数は10cm当たり3.2個と多く、扁平度が比較的低いため、たるみの発生は少ないものの扁平面の反転は増える傾向にあることが判った。
巻き取ったパッケージでは糸落ちの発生や端面からのたるみは見られなかった。
実施例3
実施例1の製造条件に準じながら、小判型の吐出孔形状でスリット比を12とし、ポリマー吐出量を下げて、交絡圧空圧0.15MPaにて交絡を付与し、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、巻取張力1.1cNで巻取速度4000m/minの速度で9デシテックス2フィラメントのポリアミドフィラメントを巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れなく、巻取張力の変動は小さく安定しており、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、扁平度4.7、小判型となっており、伸度38%、油分は1.1%であった。単糸同士は小判型の平面同士が長手方向に並列または重なりあいながら連続して油剤の表面張力により付いており、通常の交絡による間欠的な単糸絡み合いによる集束とは全く集束原理はことなるが、集束性は非常に高かった。単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られず、10m当たりのタルミの個数は0であった。扁平面の反転数は10cm当たり0.2個であった。
巻き取ったパッケージは糸落ちの発生もなく、フォームも良好で解舒性もスムーズで優れたパッケージフォームとなっていた。
比較例3
実施例3の製造条件に準じながら、交絡圧空圧を0.25MPaとして同様に巻取を行った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れないが、巻取張力の変動は実施例3と比べて大きかった。
断面形状は、扁平度4.7、小判型となっており、伸度38%、油分は1.0%であった。単糸同士は間欠的に互いにずれてループ状のたるみを発生しており、単糸間隔が2mmを越えるたるみが10m当たり15個存在した。また、扁平面の反転数は10cm当たり2.2個であった。
巻き取ったパッケージの端面からはたるみに単糸の浮きが見られた。
比較例4
実施例1の製造条件に準じながら、口金の吐出孔形状を丸型とし、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、巻取張力1.3cNで巻取速度4000m/minの速度で11デシテックス2フィラメントのポリアミドフィラメントを巻き取った。交絡圧空圧を0.20MPaとして同様に巻取を行った。100kgの原料を用いての操業性評価では操業性評価では糸切れなく、巻取張力の変動は小さく安定しており、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、丸型となっており、伸度42%、油分は1.0%であった。単糸同士は分離しやすく、集束性としては乏しかった。単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られず、扁平面の反転数は測定不能であった。交絡処理時の単糸への作用は断面形状が丸型であるため比較的小さく、さらに点接触では拘束力も小さいため、たるみが生じなかったと推定される。
巻き取ったパッケージは全糸および単糸の糸落ちが多発し、フォームもバルジが高く、高次工程での使用に際して集束性や解舒性において問題であった。
比較例5
実施例1の製造条件に準じながら、小判型の吐出孔形状でスリット比を3とし、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、同様に巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れなく、巻取張力の変動は小さく安定しており、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、扁平度1.5、小判型となっており、伸度42%、油分は1.1%であった。単糸同士は比較例4よりは改善されているが、実施例に比べて集束性に乏しかった。単糸間隔が2mmを越えるたるみの発生は見られず、扁平面の反転数は10cm当たり3.5個であった。交絡処理時の単糸への作用は丸型同様、扁平度が低いため、比較的小さく、さらに点接触では拘束力も小さいため、たるみが生じなかったと推定される。一方、扁平面の反転は最も多く存在していた。
巻き取ったパッケージは全糸および単糸の糸落ちが発生しており、フォームもバルジが高く、高次工程での使用に際して集束性や解舒性において問題であった。
比較例6
実施例1の製造条件に準じながら、小判型の吐出孔形状でスリット比を18とし、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、同様に巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では3回糸切れが発生し、製糸安定性に問題があった。巻取張力の変動が大きく、2GDからの糸離れが悪く、逆巻きしやすくなっていることが判った。
断面形状は、扁平度7.0、小判型となっており、伸度38%、油分は1.1%であった。単糸同士は間欠的に互いにずれてループ状のたるみを発生しており、単糸間隔が2mmを越えるたるみが10m当たり3個存在した。また、扁平面の反転数は10cm当たり0.2個であった。
巻き取ったパッケージの端面からはたるみに単糸の浮きが見られた。
比較例7
実施例1の製造条件に準じながら、小判型の吐出孔形状でスリット比を6とし、ホール数を増やし、第1と第2ゴデーロール間の延伸倍率を調整し、同様に巻き取った。100kgの原料を用いての操業性評価では糸切れの発生なく、巻取張力の変動は小さく安定しており、巻取張力の変動は小さく安定していた。
断面形状は、扁平度2.6、小判型となっており、伸度42%、油分は1.1%であった。単糸同士は間欠的に単糸が交錯して物理的な拘束点が存在していた。単糸間隔が2mmを越えるたるみは存在しなかった。また、扁平面の反転数は、フィラメント数が5本であるため、間欠的に交絡が入っており、扁平面の反転は測定不能なほど多かった。
巻き取ったパッケージは糸落ちの発生もなく、フォームも良好で解舒性もスムーズで優れたパッケージフォームとなっていた。
得られた実施例および比較例のポリアミドフィラメントを鞘糸に、芯糸にポリウレタン弾性糸(オペロンテックス社製ライクラT−178C 繊度20デシテックス)を用い、ドラフト倍率2.9倍、カバリング撚数として、11デシテックスの時には2200T/m、9デシテックスの時には2400T/m、18デシテックスの時には1700T/mの条件にてS撚のカバリング、Z撚のカバリングを行ない、各2種のカバリング糸を得た。
上記カバリング糸を用いて永田精機(株)製のスーパー4編機(針数400本)で、S方向シングルカバリング弾性糸とZ方向シングルカバリング弾性糸とを交互に編機の給糸口に供給し、レッグ部編地がカバリング弾性糸のみで編成した。精練・染色(98℃×20min)、仕上げ及び型板セット(スチームセット、105℃×60sec)してパンティストッキング製品とした。
仕上げたパンティーストッキングを足形にいれて伸長した状態でカバリング糸の被覆状況を観察した。実施例のポリアミドフィラメントを用いた製品では、スパンデックスの周りをリボン状態で被覆され、スパンデックスの露出部分は少なく、被覆性良好であった。また、パンティーストッキングの製品品位としても優れていた。
一方、比較例1〜3および比較例5〜6では、少量のためHボビン繰りおよびカバリング時に糸切れこそ生じなかったものの、カバリング時の張力変動が大きく、得られたカバリング糸を観察したところ、カバリング糸上で単糸がたるんだ部分や扁平面が反転した部分が多く見られ、それに伴い、長手方向に撚ムラが見られた。また、パンティーストッキングにもヨコムラが発生し、製品品位として問題であった。
さらに、比較例4では、丸断面で単糸繊度も太く曲げ剛性が高いために被覆状態が長手方向にムラが生じていると共にスパンデックスの露出部分が多く、摩耗耐久性が低くなることが懸念された。また、パンティーストッキングにもヨコムラが発生し、製品品位として問題であった。
比較例7では、小判型の断面形状で、5フィラメントであるため、スパンデックスの露出部分は少なく、被覆性良好であった。また、パンティーストッキングの製品品位としても優れていた。しかしながら、実施例1と比較して、フィラメント数が多く、表面反射光が強いため、パンティーストッキングの透明性は低下していた。
扁平度を説明するための扁平断面の一例 図2は2GD上における単糸の動きの一態様を示す断面図
符号の説明
L:長軸側の長さ、S:短軸側の長さ、A:小判型、B:楕円型、C:W型、D:瓢箪型、E:Z型、F:X型、G:十字型、H:ドックボーン型
1.フィラメント、2.フィラメント、3.2GD

Claims (3)

  1. 断面形状として扁平度が2〜6の扁平断面を有し、フィラメント数が2本であり、伸度が20〜80%のフラットヤーンであり、糸条長手方向に10m当たり、単糸間隔が2mmを越える単糸間のたるみが1個以下であり、扁平面の反転が生じている頻度が10cm当たり2回以下であることを特徴とするポリアミドフィラメント。
  2. トータル繊度が7〜22Tであることを特徴とする請求項1記載のポリアミドフィラメント。
  3. カバリング糸の鞘糸に用いられる請求項1または2記載のポリアミドフィラメント。
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