JP2009242975A - 長短結束複合糸及びそれを用いてなる布帛 - Google Patents

長短結束複合糸及びそれを用いてなる布帛 Download PDF

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潤二 濱田
Sachiko Adachi
祥子 安達
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Abstract

【課題】結束紡績法により、長繊維糸条の比率が高くても、長繊維糸条と短繊維糸条のズレ防止を向上し、結束紡績糸の特徴を保持しながら、後加工の通過性や製品品位が良好で安価な長短結束複合糸に関するものであり、特に細番手にも適した長短結束複合糸とそれを用いてなる布帛を提供する。
【解決手段】3層構造の長短結束複合糸であって、長繊維糸条からなる芯糸1の周囲に、短繊維糸条からなる鞘糸が筒状に並行に取り囲み、さらにその外層に短繊維糸条が巻き付いて結束部が構成され、芯糸の長繊維糸条が全体の50〜80重量%を占め、実質的に無撚である長短結束複合糸。
【選択図】図1

Description

本発明は、3層構造の長短結束複合糸において、長繊維が高混率で、細番手ながら、後加工の通過性や製品品位や機能性が良好で安価な長短複合糸に関するものであり、特に細番手に適した長短結束複合糸である。
従来から、結束紡績法によって紡績された結束紡績糸は、優れた抗ピル性や吸水性などの機能性を発揮することや生産性を有することから衣料用途に限らず産業用途にも多数提案、生産、販売されている。
また、結束紡績糸は実質的に無撚りであるために強力が弱いという欠点を有するが、その欠点を補うため、ドラフト装置でドラフトされた短繊維糸条の中心部に長繊維糸条を供給し、旋回空気流を作用させて、短繊維糸条で長繊維糸条を包み込んで形成され、長繊維糸条の糸強力を有する長短複合糸がある。
ところが、従来の長短結束複合糸は、芯糸の長繊維糸条の比率が50重量%以上とすると長繊維糸条と短繊維糸条がズレ易いという問題があり、後加工での糸切れや、ヌードヤーンやネップの形成による製品品位の低下が発生しやすいため、芯糸の長繊維糸条の比率は50重量%未満、特に20〜35重量%程度とすることが好ましいとされてきた。(特許文献1,2)
この問題の解決方法として、特許文献3には長繊維糸条に撚りを掛けることにより、長繊維糸条が、該長短結束複合糸の長手方向では周期的に位置を変えて分布させる試みが行われていた。しかしながらこの方法では、長繊維糸条に撚りを掛ける必要があるために、工程が複雑になり、また工程管理が困難となることや長繊維糸条に撚り構造があるために長繊維糸条の特徴が充分に発揮されないことがあった。
さらには特許文献4では、結束部が、糸長さ方向と結束巻き付きする方向を挟む角度である巻き付け角度が20度〜70度の範囲にすることや、鞘糸が必要とする本数を40〜500本とすることで、短繊維で構成する結束繊維による結束力を高め、長繊維と短繊維がズレ易いを防止する長短複合糸が提案されている。またこの方法だと安価で実施でき、撚糸工程など長短複合糸に比較的弱いアクションで良い場合は、長繊維と短繊維のズレ易さを防止できるが、織布工程や編成工程および染色工程を通過させるときのアクションでは、長繊維糸条と短繊維糸条のズレ防止は完全にはならないため、撚糸工程による追撚が必要であり、工程が増えることで高価になり、また追撚することで糸の形態も変化し、吸水性などの機能が損なわれた。
特開2006−225827号公報 特開平10−183437号公報 特開平10−1834号公報 特開2005−48294号公報

そこで本発明は、結束紡績法により、長繊維糸条の比率が高くても、長繊維糸条と短繊維糸条のズレ防止を向上し、結束紡績糸の特徴を保持しながら、後加工の通過性や製品品位が良好で安価な長短複合糸に関するものであり、特に細番手にも適した長短結束複合糸とそれを用いてなる布帛を提供することを目的とする。
今までは結束紡績法で長繊維糸条の比率を高くして長短複合糸の鞘糸が巻き付きして結束力を高めることが長繊維糸条と短繊維糸条のズレ防止が良好となると考えられていたが、鋭意検討した結果、該短繊維糸条からなる鞘糸の巻き付きして結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性を向上させることにより、長繊維糸条と短繊維糸条のズレ防止が良好となることがわかった。すなわち本発明は、次の構成を有する。すなわち、
(1)3層構造の長短結束複合糸であって、長繊維糸条からなる芯糸の周囲に、短繊維糸条からなる鞘糸が筒状に並行に取り囲み、さらにその外層に短繊維糸条が巻き付いて結束部が構成され、芯糸の長繊維糸条が全体の50〜80重量%を占め、実質的に無撚であることを特徴とする長短結束複合糸。
(2)綿番手で50〜100番手であることを特徴とする請求項1に記載の長短結束複合糸。
(3)前記短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.5〜1:1.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の長短結束複合糸。
(4)芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と前記結束部の本数比が、95:5〜90:10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長短結束複合糸。
(5)前記結束部が、糸長さ方向と巻き付いた方向を挟む角度(巻き付け角度)が40〜60度の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の長短結束複合糸。
(6)前記長繊維糸条の単繊維繊度が1.0〜2.0dtexであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の長短結束複合糸。
(7)請求項1〜6のいずれかに記載の長短結束複合糸を20重量%以上含むことを特徴とする布帛。
本発明により、長繊維糸条が高混率で結束紡績糸の特徴を保持しながら、後加工の通過性や製品品位が良好で安価な長短複合糸に関するものであり、特に細番手に適した長短結束複合糸とそれをもちいてなる布帛を提供することを提供できる。
以下、本発明の長短結束複合糸の最良の形態について説明する。
本発明は、上述したように、長繊維糸条からなる芯糸の周囲に、短繊維糸条からなる鞘糸が筒状に並行に取り囲み、さらにその外層に短繊維糸条が巻き付いて結束部が構成され、芯糸の長繊維糸条が全体の50〜80重量%を占め、実質的に無撚である、3層構造の長短結束複合糸である。
ここで、長繊維糸条として、通常のあらゆる合成繊維を用いることが出来ることは勿論であるが、その中でもポリエステル系やポリアミド系等の繊維糸条が適している。また、高機能繊維と言われる芳香族ポリアミド繊維やポリエチレン繊維あるいは弾性系繊維、セルロース系繊維なども長繊維の高強力を活用できるだけではなく様々な機能も付与することができるため好適であるが、特に限定されない。
長繊維糸条の構成割合は、全体の糸重量の50〜80重量%の範囲にあることが好ましく、さらには50〜65重量%の範囲であることがより好ましい。50重量%未満になると、強伸度特性均斉化や糸条の均一化の面で長繊維の効果が少なくなり、逆に80重量%を越えると、長繊維糸条の露出しやすくなる、また長繊維糸条と短繊維糸条との絡合性が悪くなり、長繊維糸条と短繊維糸条がズレ易くなるからであり、したがって、短繊維糸条による被覆性と前述のような優れた性能を兼ね備えた長短結束複合糸を得るためには、長繊維糸条の構成割合が、全体の糸重量の50〜65重量%の範囲にあることがより好ましい。
本発明の長短結束複合糸の番手は、50〜100番手(綿式)の範囲が好ましく、用途に応じて適宜選ぶことができる。近年の婦人用途インナーなどは細番手化が進んでおり、さらには60〜100番手(綿式)がより好ましい。
また、芯糸及び鞘糸の外側を短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆しているものであるが、該結束部は全てを被覆しているのではなく、短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の芯糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.5〜1:1.5であることが好ましく、さらには1:0.8〜1:1.2の範囲であることがより好ましい。短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の芯糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.5未満となると、長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)のズレ易さは良くなるが、糸均整度が悪くなり布帛の品位悪化になる。逆に短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の芯糸の糸長さ方向の長さ比が1:1.5を越えると、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が大幅に低下し、特に長繊維糸条の混率が全体の糸重量の50重量%を越える場合は短繊維糸条のズレ易すさが顕著に悪化するものであり、したがって、次工程通過後も短繊維糸条による優れた被覆性と長繊維の効果を兼ね備えた長短結束複合糸を得るためには、短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の芯糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.8〜1:1.2の範囲であることがより好ましい。
ここで、本発明における短繊維糸条が巻き付いて結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の芯糸の糸長さ方向の長さ比とは、長短結束複合糸の糸表面を走査型電子顕微鏡で倍率50倍にて撮影した糸形態写真から、結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さを測定したものである。
ここでいう短繊維糸条とは、長繊維糸条と同様に通常のあらゆる合成繊維はもとより、その中でもポリエステル系やポリアミド系などが適しており、天然繊維の木綿、絹あるいはセルロース系やアクリル繊維なども容易に適用することができる。本発明で言う「短繊維糸条」とは、木綿や羊毛のように数cmの長さの繊維をいい、紡績糸用原料や布団綿、詰め綿などの原料を指し、具体的形態のものとして、ステープルファイバー、ディスコンテニアスファイバーあるいは単にステープルと呼ばれるもの等が挙げられる。
短繊維糸条としては、単繊維繊度は0.1〜3.0dtexの範囲が好ましく、0.5〜1.5dtexの範囲が長短複合糸紡績性や長短複合糸の糸筋の滑らかさにつながるので、より好ましい。また、その繊維長としては、短紡式の51mm以下程度、長紡式の51mm以上のいずれでもあっても構わないが、布帛の綺麗さから前者が、高強力特性から後者の紡績方式のものが好ましく、空気精紡を用いる場合は、その紡績原理を考慮すると30〜44mmの範囲内とするのが最も好ましい
本発明においては、鞘糸として芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の短繊維糸条の本数比が、95:5〜90:10であることが好ましく、さらには93:7〜90:10の範囲であることがより好ましい。筒状に並行に取り囲む鞘糸の短繊維糸条の本数が少なくなると、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が低下するため、長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)のズレが発生する。また筒状に並行に取り囲む鞘糸の短繊維糸条の本数が多くなると、結束部の短繊維糸条の本数が少なくなりすぎ結束不良が発生し紡績困難となり、したがって、次工程通過後も短繊維糸条による優れた被覆性と長繊維の効果を兼ね備えた長短結束複合糸を得るためには、鞘糸として芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の短繊維糸条の本数比が、93:7〜90:10の範囲であることがより好ましい。
ここで、本発明における鞘糸として芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の短繊維糸条の本数比とは、長短結束複合糸を銅板走査型電子顕微鏡で倍率100倍にて撮影した糸断面写真から、芯糸を筒状に並行に取り囲む繊維の本数と結束部の短繊維糸条の本数を測定したものである。
本発明において、結束部の巻き付き状態は、糸長さ方向と結束部の巻き付きついた方向を挟む角度(巻き付け角度)が、40〜60度であることが好ましく、さらには50〜60度の範囲であることがより好ましい。巻き付け角度が40度未満になると、結束部で被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さが長くなり、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が低下し、長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)のズレ易すくなる。また、60度を超えると、織布工程や編成工程など後加工で糸が擦れたときに結束部がズレてしまい、長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)のズレ易すくなり、したがって、次工程通過後も短繊維糸条による優れた被覆性と長繊維の効果を兼ね備えた長短結束複合糸を得るためには、糸長さ方向と結束部の巻き付きついた方向を挟む角度(巻き付け角度)が、50〜60度の範囲であることがより好ましい。
ここで、本発明における糸長さ方向と結束部の巻き付きついた方向を挟む角度(巻き付け角度)は、長短結束複合糸の表面を、糸長さ方向に垂直な方向から走査型電子顕微鏡で倍率50倍にて撮影した糸形態写真から、巻き付け角度を測定したものである。
芯糸の長繊維糸条の単繊維繊度は、1.0〜2.0dtexであることが好ましい。2.0dtexを越えると、長繊維糸条の糸表面積が小さくなるため、鞘糸である短繊維糸条との接触面積が少なくなり、長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)のズレ易すくなったり、また長繊維糸条の曲げ剛性が高くなるため、短繊維糸条を旋回させ結束させるときに長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)がなじまないため、結束不良となり長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)がズレ易くなる。また、1.0dtex未満になると、後工程において、毛羽発生したり強力低下を生じるので、好ましくない。
また、長繊維糸条の総繊度は、必要な長短結束複合糸の番手によって決定されるが、30〜200dtexの範囲が好ましい。
本発明の長短結束複合糸は、これを100重量%用いて織編物等の布帛にすることはもちろん、他の繊維糸条と交織、交編して使用することができる。本発明の紡績糸を交編や交織して使用する場合においても、長短結束複合糸の特徴である吸水性などの機能性を満足させるためには織編物重量に対して、本発明の長短結束複合糸を少なくとも20重量%以上を含むことが好ましい。
図面を用いて本発明の長短結束複合糸の構成を詳細に説明する。図1および2は本発明にかかる長短結束複合糸の一例を示すモデル図である。1は長繊維糸条からなる芯糸、2は長繊維糸条からなる芯糸の周囲に筒状に並行に取り囲んでいる短繊維糸条からなる鞘糸、3は鞘糸2の外層に巻き付いて結束部を構成している短繊維糸条、4は短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分、5は短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されていない部分を示す。
次に、本発明の長短結束複合糸を製造する方法の一例について具体的に説明する。
まず、長繊維糸条と短繊維糸条をそれぞれ準備する。それぞれの繊維の製造方法は公知の方法によればよい。次に、これら繊維を紡績し、紡績糸とする。
紡績方法としては、できあがる長短結束複合糸が実質的に無撚りとなる方法であれば特に限定されないものであるが、空気流の作用により短繊維糸条を結束させて紡績糸を形成する汎用の空気精紡機において、適当なフィードローラーと糸道ガイドなどの長繊維糸条用の設備を介して、長繊維糸条を紡績糸形成部手前で短繊維糸条の中心部に供給することにより得る方法が好ましく用いる事ができる。
特に好ましいのは、“ムラタ・ボルテックス・スピナー”(村田機械社製:以下、MVSと記す)を用いる方法である。空気流の作用を利用する紡績方法は、各種のものが、提案、開発、利用されているが本発明の長短結束複合糸を得るためには芯糸の長繊維糸条を鞘糸の短繊維糸条によるカバー率が良いことが必須であり、MVSを用いた紡績方法はこれを最も達成しうる紡績方法の一つである。
さらに詳細にMVSを用いて説明する。
短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比を変更するには、芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と前記結束部の本数比に起因するスピンドル径、巻き付け角度に起因する紡速と結束部を構成する短繊維糸条の繊維長に起因するノズルの形状のバランスによって変更することができる。
芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の本数比は、スピンドル径によって変更できる。スピンドル径を大きくすれば、ノズル内の空気流に作用を受ける短繊維糸条が少なくなるため、芯糸を筒状に並行に取り込んだ短繊維糸条の本数が増え、結束部の本数が減る。逆にスピンドル径を小さくすれば、ノズル内の空気流に作用を受ける短繊維糸条が多くなるため、芯糸を筒状に並行に取り込んだ短繊維糸条の本数が減り、結束部の本数が増える。
結束部が、糸長さ方向と巻き付いた方向を挟む角度(巻き付け角度)は、紡速を変化することによって変更できる。紡速を早くすれば結束部のピッチが広くなるため巻き付け角度を鈍角になり、紡速を遅くすれば結束部のピッチが狭くなるため巻き付け角度を鋭角にすることができる。
以下に本発明で用いた評価方法につき具体的に説明する。
(1)番手
JIS L1095(1999)、9.4.2にしたがって測定した。
(2)U%
JIS L1095(1999)9.20 A法に準じ、ウースタむら試験機で糸走行速度25m/minで5分間測定した値を示す。
(3)紡績糸強伸度
JIS L1095(2001)、9.5.1にしたがって測定した。
(4)鞘糸の巻き付き特性
A.短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比
長短結束複合糸の糸表面を走査型電子顕微鏡で倍率50倍にて撮影した糸形態写真から、結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さをそれぞれ10箇所測定し、その平均値を算出した。
B.芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の短繊維糸条の本数比
長短結束複合糸を銅板走査型電子顕微鏡で倍率100倍にて撮影した糸断面写真から、芯糸を筒状に並行に取り囲む繊維の本数と結束部の短繊維糸条の本数をそれぞれ10箇所測定し、その平均値を算出した。
C.巻き付け角度
長短結束複合糸の表面を走査型電子顕微鏡で倍率50倍にて撮影した糸形態写真から、糸長さ方向と結束部の巻き付きついた方向を挟む角度(巻き付け角度)を10箇所測定し、その平均値を算出した。なお、糸長さ方向は、長短結束複合糸中心に引いた直線とし、結束部の巻き付いた方向は結束部を構成している短繊維糸条の中心に引いた直線とした。
(5)鞘糸の定着性
INTEC製 糸縫合力試験機を用い、JIS L 1095(1999)の規格に準じ、低速(120回/分)で往復シゴキ回数を50回実施した長短結束複合糸の表面を走査型電子顕微鏡で倍率50倍にて撮影した糸形態写真から、糸長1m当たりに芯糸を構成している長繊維糸条が表層部から確認できる箇所の数より判定した。
判定基準は、×:10箇所以上またはヌードヤーンの発生、△:5〜9箇所、○:1〜4箇所、◎:0箇所の4段階評価で行った。
(6)抗ピル性試験法(ICI法5時間)
JIS L 1076(1999)A法に基づいて評価を行う。
評価結果は、以下の通り5段階で級判定を行った。また、各級の中間レベルの場合は、3−4(3級と4級の中間レベル)のように表示した。
5級:ピリングの発生がほとんどないもの
4級:ピリングの発生が少々あるもの
3級:ピリングの発生がかなりあるもの
2級:ピリングの発生が多いもの
1級:ピリングの発生が著しく多いもの。
(実施例1)
長短結束複合糸の短繊維としてポリエチレンテレフタレート短繊維(T301、0.8dtex×35mm、東レ(株)製)を使用し、通常の紡績方式を経て1.0g/mの太さのスライバーを作成した。また、長繊維糸条としてポリエチレンテレフタレート長繊維(ポリエチレンテレフタレート56dtex−36F、東レ製)を用いた。
スライバーをMVSに仕掛け、フィラメント用のフィードローラ装置と糸道ガイドを介して、前述の長繊維糸条をフロントトップローラー〜セカンドトップローラ間から短繊維束の幅方向中心位置に供給し、表1示すような紡績条件で綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。糸切れの発生も少なく、紡績性は良好であった。また、得られた紡績糸について、鞘糸の定着性を評価した結果、定着性に優れていた。
得られた長短結束複合糸をヨコ糸として、タテ糸をポリエチレンテレフタレートFYとし、通常の織機を用いて、織組織を3/1ツイルとした織物を得た。得られた布帛について、各評価を行った結果、表1に示すように、抗ピル性に優れたものであった。
(比較例1)
使用した長繊維糸条を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。
比較例1で得られた長短結束複合糸は、長繊維糸条の露出しヌードヤーンが発生してため、短繊維糸条による結束不良が発生して、MVS紡出が困難となり、MVS紡績中にヌードヤーンが発生し、各種測定が不可能であった。
また実施例1と同様な織物を得ようとしたが、工程通過不良が発生して、評価不可であった。
(比較例2、3)
MVSの紡績条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。
比較例2で得られた長短結束複合糸は、短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比が1:1.8となり、また巻き付け角度が約38°となるため、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が大幅に低下しため、MVS紡績中に擦れ玉による鞘糸がズレ、ヌードヤーンが発生した。
また、比較例3で得られた長短結束複合糸も、短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.4、巻き付け角度が約69°となるため、糸均整度が悪く、また結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が大幅に低下しため、鞘の定着性評価で鞘糸がズレが発生した。
双方とも実施例1と同様に、織物を得たが、充分な鞘糸の定着を保持できないために、良好な抗ピル性を得ることができなかった。
(比較例4)
MVSの紡績条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。
比較例2で得られた長短結束複合糸は、芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と結束部の短繊維糸条の本数比が85:15となり、筒状に並行に取り囲む鞘糸の短繊維糸条の本数が少なくなったため、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が低下するため、鞘の定着性評価で鞘糸がズレが発生した。
比較例4も実施例1と同様に、織物を得たが、充分な鞘糸の定着を保持できないために、良好な抗ピル性を得ることができなかった。
(比較例5)
MVSの紡績条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。
比較例5で得られた長短結束複合糸は、結束部を構成する短繊維糸条の繊維長が短くなり、結束部を構成する短繊維の本数が少なくなったため、短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比が1:1.7ととなるため、結束部で被覆されていない部分の耐シゴキ性が大幅に低下しため、鞘の定着性評価で鞘糸がズレが発生した。
(比較例6)
MVSの紡績条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短結束複合糸を得た。
比較例6で得られた長短結束複合糸は、巻き付け角度が約65°となるため、シゴキに対して結束部に掛かる力が強くなるため、鞘の定着性評価で結束部がズレてしまい、鞘糸がズレが発生した。
比較例6も実施例1と同様に、織物を得たが、充分な鞘糸の定着を保持できないために、良好な抗ピル性を得ることができなかった。
(比較例7)
長繊維糸条としてポリエチレンテレフタレート長繊維(ポリエチレンテレフタレート56dtex−24F、東レ製)を用いた以外は、実施例1と同様な紡績条件で、綿方式の番手で60’sの長短複合糸を得た。
比較例7で得られた長短結束複合糸は、、芯糸の長繊維糸条の単繊維繊度が、2.3dtexとなるため、長繊維糸条の曲げ剛性が高くなるため、短繊維糸条を旋回させ結束させるときに長繊維糸条(芯糸)と短繊維糸条(鞘糸)がなじまないため、結束不良となり、MVS紡績中に擦れ玉による鞘糸がズレ、ヌードヤーンが発生した。
実施例1と同様に、織物を得たが、充分な鞘糸の定着を保持できないために、良好な抗ピル性を得ることができなかった。
Figure 2009242975
本発明にかかる長短結束複合糸の一例を示すモデル図である。 本発明にかかる長短結束複合糸の一例の断面モデル図である。
符号の説明
1:長繊維糸条からなる芯糸
2:長繊維糸条からなる芯糸の周囲に鞘糸が筒状に並行に取り囲んでいる短繊維糸条
3:鞘糸が筒状に並行に取り囲んでいる短繊維糸条さらにその外層に巻き付いて結束部を構成している短繊維糸条
4:短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分
5:短繊維糸条が巻き付いた結束部でと被覆されていない部分

Claims (7)

  1. 3層構造の長短結束複合糸であって、長繊維糸条からなる芯糸の周囲に、短繊維糸条からなる鞘糸が筒状に並行に取り囲み、さらにその外層に短繊維糸条が巻き付いて結束部が構成され、芯糸の長繊維糸条が全体の50〜80重量%を占め、実質的に無撚であることを特徴とする長短結束複合糸。
  2. 綿番手で50〜100番手であることを特徴とする請求項1に記載の長短結束複合糸。
  3. 前記短繊維糸条が巻き付いた結束部で被覆されている部分と被覆されていない部分の鞘糸の糸長さ方向の長さ比が1:0.5〜1:1.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の長短結束複合糸。
  4. 芯糸を筒状に並行に取り囲んだ短繊維糸条の本数と前記結束部の本数比が、95:5〜90:10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長短結束複合糸。
  5. 前記結束部が、糸長さ方向と巻き付いた方向を挟む角度(巻き付け角度)が40〜60度の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の長短結束複合糸。
  6. 前記長繊維糸条の単繊維繊度が1.0〜2.0dtexであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の長短結束複合糸。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の長短結束複合糸を20重量%以上含むことを特徴とする布帛。
JP2008089945A 2008-03-31 2008-03-31 長短結束複合糸及びそれを用いてなる布帛 Pending JP2009242975A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009249758A (ja) * 2008-04-04 2009-10-29 Toyobo Co Ltd 被覆性及び耐摩耗性に優れた芯鞘複合糸及び織編物
JP2011219886A (ja) * 2010-04-07 2011-11-04 Toyobo Specialties Trading Co Ltd 軽量保温編地に好適な長短複合糸
CN102704058A (zh) * 2012-06-26 2012-10-03 东华大学 丝束与丝网上下换位喂入复合纺纱方法、复合纱及应用
CN103132199A (zh) * 2013-03-25 2013-06-05 东华大学 一种三元结构复合纱线及其制备装置和方法

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