JP7528511B2 - 紡績糸および繊維構造物 - Google Patents

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Description

本発明は紡績糸および繊維構造物に関する。
ポリエステルやポリアミドに代表される熱可塑性樹脂を用いた合成繊維は、強度、耐熱性、耐薬品性、ウォッシュアンドウェアー性など各種の特性に優れるため、衣料用途や産業資材用途、不織布用途に広く用いられている。
衣料用途の中で、紡績糸を用いた織編物は、風合いや自然な外観から、ジャケット、コート、シャツ、肌着やスポーツ衣料など多岐に渡り使用されている。紡績糸は繊維長が数十ミリメートルの短繊維を数本から数十本、撚り合わせてできる糸であり、短繊維として、綿などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維および羊毛などの獣毛繊維を用いることで、優れた吸湿性や保温性などを特長とした織編物を得ることができる。しかしながら、それらの繊維の性質上、強度面が弱く、多量の汗や水分を吸収するとそれらを繊維内部まで取り込むため、乾きにくく、ベタツキなどの不快感を生ずるといった欠点がある。
これらの課題を解決するため、機械的性質、化学的性質、吸水速乾性などに優れているポリエステル繊維からなる紡績糸、または、ポリエステル繊維と天然繊維や再生繊維との混紡によってなる紡績糸が用いられている。
衣料用途における様々な要求特性を満たすため、より高機能なポリエステル繊維を含む紡績糸の開発が進められているが、近年においては衣服着用時の束縛感の抑制や動作の追従性が求められるようになり、ストレッチ性能に関する要求が高い。特に、シャツ、肌着やスポーツ衣料など細番手紡績糸(30~60番手)を用いた薄手生地においてストレッチ性能の要求が高い。一般的に、細番手紡績糸に太繊度短繊維(単繊維繊度2.2dtex以上)を使用すると紡績糸の糸ムラやネップに繋がり、最終的な生地の品位低下を招くため、細繊度短繊維(単繊維繊度2.2dtex未満)の開発が進められている。
ストレッチ性能を得る方法として、ポリウレタン系の繊維を混用し、ストレッチ性を付与する方法がある。しかしながら、ポリウレタン系繊維はポリウレタン固有の性質として風合いが硬く、織物の風合いやドレープ性が低下するといった問題があった。さらに、ポリウレタン系繊維はポリエステル用の染料には染まり難く、ポリエステル繊維と併用したとしても、染色工程が複雑になるばかりか所望の色彩に染色することが困難であった。
ポリウレタン系繊維を用いない方法として、サイドバイサイド複合を利用した潜在捲縮発現性繊維が種々提案されている。潜在捲縮発現性繊維とは熱処理により捲縮が発現する、あるいは熱処理前より微細な捲縮が発現する能力を有する繊維のことを言う。
例えば、特許文献1には、2成分のポリマー(ポリエステル)をサイドバイサイド型に貼り合わせた潜在捲縮性複合繊維を用いた紡績糸及び織物が提案されている。
この潜在捲縮性複合繊維の紡績糸を用いれば、スパイラル捲縮が発現でき、該構造がバネのように伸び縮みすることで、織物にストレッチ性を付与することができる。
特許文献2には、短繊維繊度1.0~6.0dtexのサイドバイサイド型捲縮短繊維を少なくとも10質量%含有しエア交絡紡績糸を用いた伸縮嵩高性織編物、特許文献3にはフィラメントではあるが、ポリエステル成分とポリアミド成分とがサイドバイサイドに接合され、単繊維繊度が0.8~3.5dtexである糸を用いた布帛が提案されている。
特開平7-150429号公報 特開2004-183113号公報 国際公開第17/038239号
特許文献1には、単繊維繊度2.2dtexのサイドバイサイド型潜在捲縮性複合繊維を用いた例も記載されているが、2種のポリマーの溶融粘度差に伴う口金紡出直後の糸曲がりが大きく、少しの口金面の汚れにより、糸切れを発生し、紡糸操業性は悪かった。特に、短繊維では生産効率、コストの観点から、数百Hから数千Hの口金での生産が必要であるため、口金紡出後のポリマー冷却工程での整流が難しく、糸曲がり部分にて糸切れが生じやすいといった課題がある。これら課題は特に2.2dtex以下の細繊度になるほど顕著である。そのため、得られる紡績糸の品質も改善が望まれるものであった。
また、特許文献2,3においても特許文献1と同様2.2dtex以下の細繊度であると紡糸操業性が悪く、細番手紡績糸への適用が困難であった。
本発明は、従来技術の課題を克服し、紡績性に優れることで品質に優れ、さらには細番手であっても従来比品質が向上された紡績糸であって、十分なストレッチ性能に優れた繊維構造物を与え得る紡績糸および繊維構造物を提供することを課題とするものである。
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用する。
(1)偏心芯鞘複合短繊維から構成され、芯部分および鞘部分を備えており、前記芯部分は第1のポリマー、鞘部分は第2のポリマーから構成されており、
前記偏心芯鞘複合短繊維の横断面において、前記鞘部分の厚さの最小値Sと前記偏心芯鞘複合短繊維の繊維径Dとの比(S/D)は、0.01~0.1であり、前記鞘部分の厚さが前記最小値Sの1.05倍以下である前記鞘部分の一部であって、横断面の外縁の一部を構成する部分の長さの、前記偏心芯鞘複合短繊維の横断面の外縁全体の長さに対する比率は、33%以上であり、単繊維繊度は0.5~2.2dtexであり、スナール指数は4.0以下である紡績糸。
(2)前記偏心芯鞘複合短繊維が、180℃における無荷重熱処理後の発現捲縮数が50山/25mm以上となる潜在捲縮を有する(1)記載の紡績糸。
(3)前記第1のポリマーが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とし、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1種から生成する単位を2~7モル%含み、かつ、イソフタル酸から生成する単位を5~13モル%含む共重合ポリエステルであり、
前記第2のポリマーが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とし、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1種から生成する単位を0モル%以上0.5モル%未満含み、かつ、イソフタル酸から生成する単位を0モル%以上1モル%未満含むポリエステルである(1)または(2)に記載の紡績糸。
(4)前記偏心芯鞘複合短繊維の含有量が、前記紡積糸の全体に対し、45~100質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載の紡績糸。
(5)前記紡績糸の番手が、20~100番手である、(1)~(4)のいずれかに記載の紡績糸。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の紡績糸を用いた、繊維構造物。
本発明の紡績糸は、特定の偏心芯鞘複合短繊維から構成されることで、紡績性に優れることで品質に優れ、さらには細番手であっても従来比品質が向上された紡績糸を得ることができるようになり、十分なストレッチ性能に優れた繊維構造物を与えることができるようになった。特に実質的に無撚りにすることで撚りによる拘束を減少させているので、ストレッチ発現が向上した繊維構造物とすることができるようになった。
図1は、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の一例であり、その繊維断面における重心位置を説明するための繊維横断面の概略図である。 図2は、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維における繊維径(D)と最小厚み(S)を説明するための繊維断面の概略図である。 図3は、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の繊維断面におけるIFR(繊維断面におけるA成分、B成分の界面の曲率半径)を説明するための繊維断面の概略図である。 図4は比較例3で製造した偏心芯鞘複合繊維の繊維断面の概略図である。 図5は最終分配プレートにおける分配孔配置の実施形態例を示す概念図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維は、芯部分および鞘部分を備えており、前記芯部分は第1のポリマー、鞘部分は第2のポリマーから構成されている。なお、以下記載に際して第1のポリマーを「A成分」、第2のポリマーを「B成分」と称する場合がある。
ここで言うポリマーとしては、繊維形成性の熱可塑性重合体が好適に用いられ、本発明の目的に鑑み、加熱処理を施した際に収縮差を生じるポリマーの組み合わせが好適であり、ポリマーの溶融粘度差が10Pa・s以上となる分子量または組成が異なるポリマーの組み合わせが好適である。
上記溶融粘度は、チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率を200ppm以下とし、測定温度を紡糸温度と同様にした場合の歪速度1216s-1における値である。複合繊維を構成するポリマーの溶融粘度が40Pa・s以上異なるということは、例えば、紡糸線において、溶融粘度の高いポリマー成分に応力が集中することとなる。そのため、主要ポリマーに応力が集中し、優れた力学特性を発現したり、組み合わせた成分の配向により顕著な差が生まれたりすることとなり、好適な捲縮を発現させることが可能となる。上限としては紡績性の観点から溶融粘度差は180Pa・s以下であることが好ましい。
本発明の目的を達成するため、偏心芯鞘複合短繊維に用いる好適なポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリフェニレンサルファイド、およびこれらの共重合ポリマーが挙げられる。これらの分子量を変更して図1に示すA成分に高分子量ポリマーを、またB成分に低分子量ポリマーを使用することが好ましい。あるいは一方成分をホモポリマーとし、他方成分を共重合ポリマーとして使用することもできる。
また、ポリマー組成が異なる組み合わせについても、例えば、A成分/B成分でポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートなどの種々の組み合わせが挙げられる。
特に、ポリマーとしてはポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好ましく用いられ、中でもポリエステルは力学特性等も兼ね備えるため、より好ましい。ここで言うポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートや、それらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらのポリエステルをブレンドしたものが好ましく挙げられる。
上記ポリマーの中で本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維における好適なポリマーの組み合わせとして、A成分は、エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とする共重合ポリエステルであり、共重合成分として2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(BHPP)またはそのエステル形成誘導体(以下、エステル形成誘導体も含めてBHPPということがある)とイソフタル酸(IPA)を用いて改質されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルであり、B成分は実質的にエチレンテレフタレート単位であるポリエステルであることが好ましい。
上記好ましいA成分中のBHPPの共重合割合は全ジオール成分中2~7モル%とすることが好ましい。BHPPの共重合割合が2モル%未満では、収縮特性が不十分となり、紡績糸にした場合、その伸長率、伸長回復率が小さく十分な伸縮機能が得られないことがある。一方、7モル%を越えると、ポリマーの融点低下するため、熱安定性が損なわれる傾向にある。好ましくは3~6モル%である。
なお、ジオール成分の残部はエチレングリコール残基であることが好ましい。
また、好ましいA成分中のIPAの共重合割合は全ジカルボン酸成分中5~13モル%とすることが好ましい。IPAの共重合割合が5モル%未満では、実質的に大きな捲縮が得られにくく、一方、13モル%を越えると、ポリマーの融点が低下するため、熱安定性が損なわれる傾向にある。
また、好ましいA成分の共重合ポリエステルとして、IPAの代わりにもしくはIPAと併用して5-ナトリウムイソフタル酸(5-SIPA)を共重合成分とする共重合ポリエステルも、好ましい態様として挙げることができる。
なお、ジカルボン酸成分の残部はテレフタレート残基であることが好ましい。
A成分に、BHPPとIPAを用いて改質されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル、B成分に実質的にエチレンテレフタレート単位であるポリエステルの組み合わせは、A成分/B成分でポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせと比較すると、生地に加工した際に、ハリコシが良く、シャツなどの薄手生地に好適である。これは、ポリブチレンテレフタレート、およびポリトリメチレンテレフタレートはポリエチレンテレフタレートよりも剛性が低いためである。
本発明で好ましく用いられるB成分としては上記実質的にエチレンテレフタレート単位であるポリエステルが挙げられるが、例えば、共重合成分としてのBHPPから生成する単位の含有量が全ジオール成分中0モル%以上0.5モル%未満であり、IPAから生成する単位の含有量が全ジカルボン酸成分中0モル%以上1モル%未満のポリエチレンテレフタレートが挙げられる。このようなポリエチレンテレフタレートは、上記のとおり、BHPPを全ジオール成分中0.5モル%未満共重合することができるものであり、その共重合割合は好ましくは0.25モル%未満であり、最も好ましくはゼロ(0)モル%である。
また、上記好ましいポリエチレンテレフタレートは、上記のとおり、IPAを全ジカルボン酸成分中1モル%未満共重合するものであり、その共重合割合は好ましくは0.5モル%未満であり、最も好ましくはゼロ(0)モル%である。本発明で好ましく用いられる上記ポリエチレンテレフタレートにおいて、BHPPとIPAの共重合割合が多くなると、A成分との熱収縮差が不十分となりやすくなり、得られる複合繊維を紡績糸とした場合、その伸長率と伸長回復率が小さく十分な伸縮機能が得られない。
また、A成分/B成分がポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、またはポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせは、生地に加工した際の生地伸長率および生地伸長回復率が、十分に得られ、ストレッチ性能に優れているものといえる。なかでも、A成分に、BHPPとIPAを用いて改質されたポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル、B成分に実質的にエチレンテレフタレート単位であるポリエステルの組み合わせの方が、生地伸長回復率の面で優れており、より好ましい形態である。
さらに、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維は、通常加熱処理を施した際に収縮差を生じるポリマーの組み合わせで構成されるため熱処理時に捲縮を発現する。なかでもストレッチ性を有する生地を得るために、180℃における無荷重下熱処理時の発現捲縮数が50山/25mm以上となる潜在捲縮能を有することが好ましい。発現捲縮数50山/25mm以上において生地としたときの伸縮性が著しく低下することなく、優れたストレッチ性が得られる。発現捲縮数の上限は特にない。前記の発現捲縮数(潜在捲縮能)は、組み合わせるポリマー種やその面積比(後述)、偏心芯鞘の断面構造等を調整することにより達成することができる。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維におけるA成分とB成分の繊維横断面における複合面積比率については、捲縮発現から鑑みるとA成分である高収縮成分の比率を多くすることで微細なスパイラル構造を実現でき、また、偏心芯鞘複合短繊維として優れた物理特性を有する点から、両成分の比率は、A成分:B成分=70:30~30:70(面積比)の範囲が好ましく、65:35~45:55の範囲がより好ましい。
本発明で用いる偏心芯鞘短繊維では、芯部分を構成する第1のポリマー、鞘部分を構成する第2のポリマーという2種の異なるポリマーが接合してなる複合断面を有している。そしてこれらポリマー特性が異なる2種のポリマーが実質的に分離せず接合された状態で存在している。
ここで、本発明で言う偏心とは、偏心芯鞘複合短繊維断面においてA成分ポリマーで構成される芯部分の重心点位置が偏心芯鞘複合短繊維断面中心と異なっていることを指す。この点について、図1を用いて説明する。
図1において、水平ハッチングがB成分であり、30degハッチング(右上がり斜線)がA成分であって、複合短繊維断面におけるA成分の重心点が重心点aであり、偏心芯鞘複合短繊維断面の重心が重心点Cである。
本発明においてはA成分の重心点aと偏心芯鞘複合短繊維断面の重心点Cが離れていることが好ましく、これにより熱処理後に繊維が高収縮成分側に大きく湾曲することになる。このため、偏心芯鞘複合繊維が繊維軸方向に湾曲し続けることにより、3次元的なスパイラル構造をとり、良好な捲縮を発現することになるのである。ここで、重心位置が離れているほど、より良好な捲縮が発現し、良好なストレッチ性能が得られるのである。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維においては、その横断面において、前記鞘部分の厚さの最小値Sと前記偏心芯鞘複合短繊維の繊維径Dとの比(S/D)は、0.01~0.1である。好ましくは、0.02~0.08である。この範囲であれば、耐摩耗性などに優れ、十分な捲縮発現力とストレッチ性能を得ることが出来る。
上記のように鞘部分の厚さの最小値Sと前記偏心芯鞘複合短繊維の繊維径Dとの比(S/D)が0.01以上であることは、A成分がB成分に完全に覆われていることを意味する。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維においては、A成分がB成分に完全に覆われていることにより、繊維や生地に摩擦や衝撃が加わっても白化現象や毛羽立ちなどが生じることがないので生地品位を保つことができる。加えて、従来の単純貼り合わせ構造では表面露出して複合繊維の欠点となる高分子量ポリマーや高弾性ポリマー等についても偏心芯鞘複合短繊維の一方成分として用いることが出来るのである。
また、一方のA成分は他方のB成分で完全に覆われていることで、例えば耐熱性や摩耗性の低いポリマー、あるいは吸湿性のポリマーなどを用いても繊維特性を良好に保持できる効果も備えることが出来る。
本来それぞれのポリマーは貼り合わせ界面のみで接していることで良好なストレッチ性能を得ることが出来るのであり、高収縮成分が低収縮成分で完全に覆われているとストレッチ性能が低下する。ところが、B成分の厚みを本発明の範囲とすることで、ストレッチ性能と耐摩耗性の両特性を満足する偏心芯鞘複合短繊維とすることが可能となるのである。
図2に示した繊維断面を用いて更に詳細に説明する。ここで芯鞘複合短繊維におけるB成分で構成される鞘部分の最薄部が厚さの最小値Sである。さらに、厚さの最小値Sの1.05倍以下である前記鞘部分の一部であって、横断面の外縁の一部を構成する部分(以下最小厚み部分と称することもある)の長さの、前記偏心芯鞘複合短繊維の横断面の外縁全体の長さに対する比率(S比率)は、33%以上である。これは、繊維の輪郭に沿ってA成分が存在していることを意味しており、同一面積比の従来の偏心芯鞘複合繊維と比較すると、本発明が、繊維断面においてそれぞれの成分の重心位置がより離れており、微細なスパイラルを形成し、良好な捲縮を発現する。より好ましくは、厚みの最小値Sの1.05倍以下である最小厚み部分の長さの偏心芯鞘複合短繊維の横断面の外縁全体長さに対する比率(S比率)は、40%以上であることで、捲縮斑がなく、さらに良好なストレッチ性能が得られる。
さらに、繊維断面におけるA成分とB成分の界面の曲率半径IFRとして、繊維径Dを2で除した値Rとしたとき下記式1を満足することが好ましい。ここで言う曲率半径IFRとは、図3に示したように繊維横断面において、A成分を覆っているB成分の厚みの最大値となるA成分とB成分の界面の曲率に接する円(鎖線)の半径を指す。
(IFR/R)≧1・・・(式1)
これは、界面がより直線に近いことを意味している。本発明は従来の貼り合わせ型捲縮繊維の断面に近い形態でA成分とB成分の界面を直線に近い曲線とすることで、従来の偏心芯鞘複合繊維ではなし得なかった高い捲縮を発現することができるので好ましい。より好ましくは、1.2以上である。
ここで言う前記鞘部分の厚さの最小値Sおよび繊維径D、界面の曲率半径IFR、A成分とB成分の面積比、最小厚み部分の長さ、偏心芯鞘複合短繊維の横断面の外縁全体の長さは、以下のように求める。
すなわち、偏心芯鞘複合短繊維をエポキシ樹脂などの包埋剤にて包埋し、この横断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で10本以上の繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。この際、金属染色を施すとポリマー間の染め差を利用して、A成分とB成分の接合部のコントラストを明確にすることができる。撮影された各画像から同一画像内で無作為に抽出した10本の外接円径を測定した値が本発明で言う繊維径Dに相当する。ここで、10本以上の観察が不可能の場合は、他の繊維を含めて合計で10本以上を観察すればよい。ここで言う外接円径とは、2次元的に撮影された画像から繊維軸に対して垂直方向の断面を切断面とし、この切断面に2点以上で最も多く外接する真円の径を意味する。
また、繊維径Dを測定した画像を用いて、10本以上の繊維について、鞘部分の厚さの最小値を測定した値が、本発明で言う厚さの最小値Sに相当する。さらには、これら繊維径Dと厚さの最小値S、曲率半径IFR、偏心芯鞘複合単繊維の横断面の外縁全体の長さについては、単位をμmとして測定し、少数第3位以下を四捨五入する。以上の操作を撮影した10画像について、測定した値およびその比(S/D)の単純な数平均値を求める。
また、A成分とB成分の面積比は上述で撮影した画像、および画像解析ソフト三谷商事社製「WinROOF2015」を用いて、繊維全体の面積およびA成分、B成分の面積を求めた後、面積比を求める。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の単繊維繊度は、0.5dtex以上2.2dtex以下である。0.5dtex未満の場合、カード工程でシリンダーへ巻き付き、カードネップの発生に繋がる。繊度が太くなると紡績糸1本当たりの構成単糸本数が減少し、紡績糸の太さムラやネップが増加するが、シャツ、肌着やスポーツ衣料などに使用される薄手生地向け紡績糸(30番手~60番手)において、2.2dtexを超えると、紡績糸の太さムラやネップが極端に増加する。より好ましくは0.8detx以上1.8dex以下であり、更に好ましくは1.0detx以上1.5dex以下である。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維は、次の製糸方法によって製造することができる。
A成分およびB成分のポリマーを溶融し、複合溶融紡糸装置を用いて所定の質量比率で複合流とした後、孔径0.2~0.6mmの吐出孔を100~2000孔有する紡糸口金を通して、融点よりも高い紡糸温度で溶融紡糸する。紡糸温度はポリマー融点よりも+20~+60℃高い温度で設定するのが好ましい。ポリマー融点よりも+20℃以上高く設定することで、ポリマーが紡糸機配管内で固化して閉塞することを防ぐことができ、かつ高めに設定する温度を+60℃以下とすることでポリマーの過度な熱劣化を抑制することができるため好ましい。
溶融方法としては、プレッシャーメルター法およびエクストルーダー法が挙げられ、いずれの方法でも問題はないが、均一溶融と滞留防止の観点からエクストルーダーによる溶融方法を採用することが好ましい。溶融ポリマーは配管を通り、計量された後、口金パックへと流入される。この際、熱劣化を抑えるために、配管通過時間は30分以下であることが好ましい。パックへ流入された溶融ポリマーは紡糸口金より紡出される。
また、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維は、生産効率の観点から、通常は多ホールの口金が用いられ、100H以上のものを用いる必要がある。短繊維の価格相場を考慮すると、300H以上であることがより好ましく、600H以上であればさらに好ましい。
一般的に、ホール数を増やすほど、紡出後の糸条を均一冷却することが困難となり、加えて、口金直下で乱流を生じ、安定紡糸が困難となる。また、2成分による偏心芯鞘複合紡糸、およびサイドバイサイド複合紡糸では、通常ポリマー吐出後に糸曲がりを生じるため、安定紡糸がより困難となる。しかしながら、本発明のような断面とすることで、口金吐出時の2種のポリマーの流速差のために起こる糸曲がりを抑制できるのである。すなわち、特定形状の鞘成分が存在することで、ポリマー流が曲がる方向とは逆方向への力が生じる結果、口金吐出時の2種のポリマーの流速差から生じる紡糸線と垂直方向への力を抑制することができる。加えて、糸条の冷却、口金吐出面から糸条の収束位置を以下のように制御することで、口金ホール数の多い口金を用いても、安定して紡糸することが可能となる。
糸条の冷却方法について、口金直下で急冷することが好ましく、風温が10~50℃で、冷却開始位置が口金直下0~200mmの位置に有り、冷却長が10~400mmの冷風吹き出し装置を用いて、30~120m/分で冷却することが好ましい。冷却開始位置の更に好ましい範囲は、20mm~100mmの位置であり、口金面が冷えにくく、より効果的に糸揺れを抑制できる。この冷却工程は、口金直下で生じる乱流を抑制し糸揺れを抑制すること、また、糸条を急冷することでポリマーの固化位置を上昇させ糸揺れによる糸切れを発生しにくくすることができる。本発明のような断面とすることでポリマー吐出後の糸曲がりを抑制することができたため、100H以上の口金による紡糸であっても口金直下での冷却開始が可能となり、その結果、100H以上の口金による複合繊維の製造が可能となったのである。口金直下の急冷で、同様の効果が得られる方法として、吸引開始位置が口金直下0~200mmの位置に有り、吸引長が10~400mmの吸引冷却装置を用いて、30~120m/分で吸引を行い冷却する方法でもよい。
また、口金直下の急冷後に整流することが好ましく、風温が10~50℃で冷却長が100~700mmの冷風吹き出し冷却装置を用いて、20~90m/分で冷却し、口金直下の冷却風の風速以下の条件で冷却することが好ましい。口金直下の冷却風の風速よりも高いと糸揺れが大きくなり、糸切れ、および糸融着を発生し、安定紡糸ができなくなる場合がある。
口金吐出面から糸条の収束位置までの距離は2000mm以下であることが好ましい。口金吐出面から糸条の収束位置までの距離を2000mm以下とすることで冷却風による糸条揺れ幅を抑え、糸条の収束に至るまでの随伴気流を抑制できるため、糸切れの少ない安定した製糸性が得やすいので好ましい。紡糸工程における糸条の収束位置のより好ましい範囲は1600mm以下である。
紡糸した未延伸糸を延伸する工程では、未延伸糸を30~300ktexに束ねて、2~5倍で蒸気下もしくは熱水中で延伸する。その後、緊張熱処理を行って、押し込み式捲縮機(クリンパー)などを用いて捲縮付与をする。
次いで、捲縮付与後の延伸トウを乾燥し、仕上げ油剤水溶液をスプレーでトウに付与し、トウを切断して、本発明の偏心芯鞘複合短繊維を製造することができる。
本発明で用いる偏心芯鞘複合繊維の捲縮数(熱処理前の捲縮数)は8~20山/25mmであることが好ましい。また、捲縮度は8~25%であることが好ましい。ここで言う捲縮数、および捲縮度は、延伸トウを切断した後の数値を指す。
捲縮数が8山/25mm以上であることで、短繊維同士の絡合性に優れカード通過性に優れる。捲縮数が20山/25mm以下であることで、カード通過性に優れる上、カード通過後にネップが多発したり、紡績糸の太さムラが極端に増えたりすることがなく、高次加工性や紡績糸の品質を良好なものとできる。
また、捲縮度が8%以上であることで、短繊維同士の絡合性に優れカード通過性に優れ、捲縮度が25%以下であることで、カード通過性に優れる上、カード通過後にネップが多発したり、紡績糸の太さムラが極端に増えたりすることがなく、高次加工性や紡績糸の品質を良好なものとできる。
捲縮数のより好ましい範囲として、10~17山/25mmであり、更により好ましい範囲として、11~15山/25mmである。
捲縮度のより好ましい範囲として、9~20%であり、さらに好ましい範囲として、10~16%である。
本発明に用いる偏心芯鞘複合短繊維の上記好ましい捲縮数、および捲縮度を得るためには、緊張熱処理温度、緊張熱処理時間、押し込み式捲縮機に入る際のトウの温度、押し込み式捲縮機の押し込み圧、および捲縮付与後のトウの乾燥温度の設定が重要である。
緊張熱処理は、張力を保った状態で熱セットを行い、その後、冷却水でガラス転移温度以下に冷却して分子鎖を構造固定することで、後の捲縮付与後のトウの乾燥工程での捲縮発現が抑制することができ、高次加工工程での熱処理により高い捲縮発現能を発揮することができる。
緊張熱処理温度として、100~190℃が好ましく、緊張熱処理時間として、3~20秒未満が好ましい。処理温度が100℃未満、もしくは処理時間が3秒未満の場合、後の捲縮後のトウの乾燥工程で、極端に捲縮発現が発現し、潜在捲縮特性が低下することがある。また、処理温度が190℃より高い、もしくは処理時間が20秒より長いと潜在捲縮特性が低下することがある。
押し込み式捲縮機に入る際のトウの温度は、20~60℃であることが好ましい。20℃未満の場合、捲縮度が低くなり上記捲縮度が得られないことがあり、また、60℃より高い場合、捲縮度が高くなり上記捲縮度が得られないことがある。
押し込み式捲縮機の押し込み圧は、98~294kpaが好ましい。98kpa未満の場合、捲縮数、もしくは捲縮度が低くなり、294kpaより高いと捲縮数、もしくは捲縮度が高くなりやすい。
捲縮付与後のトウの乾燥温度は、80~120℃が好ましい。80℃より低いと、トウを十分に乾燥することができないことがあり、120℃より高いと乾燥工程で捲縮が発現してしまい、高次加工工程での熱処理により、十分な捲縮発現が得られない。
本発明で規定する断面形状であることで、製糸工程での捲縮発現がほどよく抑制され、好ましい捲縮を比較的容易に得ることができる。詳細なメカニズムは解明されていないが、A成分を覆うB成分の厚みが薄い部分が、A成分の収縮を適度に抑制できているためと考えられる。サイドバイサイド型断面のようなA成分がむきだしの断面の場合、特に、2成分ポリマーの溶融粘度差が大きいと、製糸工程中、例えば、捲縮付与後のトウの乾燥で捲縮が発現し、延伸トウのカット後の捲縮数や、捲縮度が高くなりやすいため、製糸工程中での捲縮コントロールが比較的難しい。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の繊維長は、高次加工工程での工程通過性の観点から20~120mmであることが好ましく、より好ましくは30~90mmである。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の切断強度は、1.5~5.0cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは2.5~4.0cN/dtexである、切断強度が1.5より低いと、紡績工程に、糸切れや工程トラブルが生じる。また、切断強度が5.0cN/dtexより高いと、ソフト性およびピリング性に乏しくなる。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の切断伸度は、10~50%であることが好ましく、より好ましくは20~40%である。切断伸度が10%未満、または50%より高いと、紡績工程で糸切れや工程トラブルが生じる。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維は、鞘厚みや薄皮部の周囲長を精密に制御する観点から、特開2011-174215号公報や特開2011-208313号公報、特開2012-136804号公報に例示される分配プレートを用いた方法が好適に用いられる。従来公知の複合口金を用いて偏心芯鞘型の断面を有する繊維を製造する場合、芯の重心位置や鞘厚みの精密な制御が非常に困難となる場合が多い。例えば、鞘厚みが薄くなり、芯成分が露出された場合には、摩擦や衝撃による布帛の白化現象や毛羽の原因となり、逆に鞘厚みが厚くなってしまった場合には、捲縮発現が低下するために、ストレッチ性能が低下するといった問題が生じる場合がある。
このような分配プレートを用いた方法では、複数枚で構成される分配プレートの内、最も下流に設置された最終分配プレートにおける分配孔の配置により、単糸の断面形態を制御することができる。
本発明の複合短繊維は、芯成分を成すポリマー(A成分)および鞘成分を成すポリマー(B成分)の分配孔の配置により断面形態を制御することができる。具体的には、図5に例示するように、偏心芯鞘型の複合断面における芯成分を成すポリマー(A成分)の分配孔5-(c)を囲むように、鞘成分を成すポリマー(B成分)の分配孔5-(a)、同5-(b)を配置することで、本発明で必要となる偏心芯鞘型の複合断面形成が可能であり、好ましい。
ここで、薄皮を形成するポリマー(B成分)の分配孔5-(a)の孔数は、芯成分の完全被覆および薄皮厚みの均一化という観点から、6個以上とすることが好ましい。また、薄皮を形成する分配孔5-(a)の分配孔数や分配孔辺りのポリマーの吐出量を変更するようにアレンジすることで、複合繊維の断面において、S/Dや最小厚みの長さを制御することが可能である。
このように、分配プレートにより断面形成されたポリマー流は、縮流され、紡糸口金の吐出孔より吐出される。このとき、吐出孔は、複合ポリマー流の流量、すなわち吐出量を再度計量する点と紡糸線上のドラフト(=引取速度/吐出線速度)を制御する目的がある。孔経および孔長は、ポリマーの粘度および吐出量を考慮して決定するのが好適である。本発明の偏心芯鞘複合短繊維を製造する際には、吐出孔径は0.1~2.0mm、L/D(吐出孔長/吐出孔径)は0.1~5.0の範囲で選択することができる。
ここで、本発明の偏心芯鞘複合短繊維は、前述したとおりであるが、図1の如くB成分でA成分を完全に覆っていることが好ましい。本発明のような断面とすることで、口金吐出時の2種のポリマーの流速差のため起こる、吐出線曲がり(ニーイング現象)を抑制できるのである。すなわち、鞘成分が存在することで、ポリマー流が曲がる方向とは逆方向への力が生じる結果、口金吐出時の2種のポリマーの流速差から生じる、紡糸線と垂直方向への力を、抑制することができるのである。
また、従来の単純貼り合わせ構造(バイメタル構造)の場合では、口金吐出後の紡糸線上での細化時のそれぞれのポリマーにかかる応力バランスに差が生じ、伸長変形に斑が生じ、これが繊度斑として顕在化する場合があった。この傾向は、粘度差の大きいポリマーの組み合わせや、吐出量を絞るなどして、細繊度化する場合は非常に顕著に現れるものであるが、本発明においては、片方のポリマーで覆われていることで応力バランスが繊維断面内で均衡化して繊度斑が抑制できるのである。
さらには、A成分に高分子量ポリマーを用い、B成分に低分子量ポリマーを用いる場合には、B成分で完全に覆われていることで高速製糸安定性に優れることも見出されている。これは、低分子量ポリマーが外側に配置されることで口金吐出後の伸長変形に高分子量ポリマーが追従しやすくなった効果である。
これにより、細繊度糸においてもストレッチ性能向上以外の付加価値向上や製糸安定性向上のためのポリマー選択の自由度が飛躍的に上がり、生産性の向上にも寄与する。
また、吐出線曲がりの抑制という観点においては、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維に使用するポリマーの溶融粘度差も重要となる。溶融された、偏心芯鞘複合短繊維を成す2種類のポリマーは、縮流される際、2種類のポリマーの圧力損失を一致させるために、ポリマー流動方向と垂直断面において、断面積を変化させる結果、流速差を生じ、これらが重心の偏りを持って吐出されるため、吐出線曲がりを生じるのである。
すなわち、溶融粘度の高いポリマーは、断面積が大きくなるために流速は遅く、逆に、溶融粘度の低いポリマーは断面積が小さくなるために、流速は速くなるのである。このため、使用するポリマーの溶融粘度差を小さくすることで、ポリマー間の流速差が緩和され、吐出線曲がりを抑制することができるのである。この観点を推し進めると、組み合わせるポリマーの溶融粘度差はより小さいことが好適であるが、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維では、捲縮発現等を考慮すると、組み合わせるポリマーの溶融粘度差はより大きいことが好適である。
このようにして、吐出線曲がりが抑制されると、紡糸線上での単繊維どうしの干渉を抑制できるため、紡糸口金上での吐出孔密度の増大、すなわち口金当たりの吐出孔数を増加させることが可能となり、多糸条化による高度化や生産効率の向上を達成することができる。
このとき、紡糸ドラフトは300倍以下とすると糸条間での物性バラツキが抑制された均質な繊維が得られ好ましい。
本発明の複合短繊維の下記式で表される紡糸ドラフトは50~300が好ましい。
紡糸ドラフト=Vs/V0
Vs:紡糸速度(m/分)
V0:吐出線速度(m/分)
紡糸ドラフトを50倍以上とすることで、口金孔から吐出されたポリマー流が長時間口金直下に留まることを防止し、口金面汚れを抑制することができることから、製糸性が安定する。また、紡糸ドラフトを300倍以下とすることで過度な紡糸張力による糸切れを抑制することが可能となり、偏心芯鞘複合短繊維を安定した製糸性で得ることができるので好ましい。より好ましくは80~250倍である。
以下、本発明の、上記偏心芯鞘複合短繊維を用いた紡績糸について説明する。
本発明の紡績糸において、偏心芯鞘複合短繊維の混率は45~100質量%であることが好ましい。
他の繊維を混紡する際の混率は、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維の特徴を十分発揮できる観点から上記偏心芯鞘複合短繊維が45質量%以上、他の繊維が55質量%以下であることが好ましく、上記偏心芯鞘複合繊維が65質量%以上、他の繊維が35質量%以下であることがより好ましい。また、他の繊維の特徴も十分発揮できる観点から、上記偏心芯鞘複合短繊維が90質量%以下、他の繊維が10質量%以上であることが好ましい。上記範囲にあることにより、適度なストレッチ性能を有しながら、他の繊維の特徴も兼ね備えた繊維構造物を得ることができる点で実用上優れた利点を有する。
紡績糸を構成する他の繊維の種類は特に限定されるものではなく、ポリエステル繊維、アククリル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン、綿、麻、ウール、絹の少なくとも1種類を用いたものが、本発明の効果を発揮できるので好ましい。
特に、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維100質量%、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維/綿混、本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維/ウール混、などが好ましい。
また、複合短繊維と他の繊維を混ぜる工程は打綿や練条、ギル機もしくは撚糸工程で混ぜればどの工程でも構わない。
上記偏心芯鞘複合短繊維を用いた本発明の紡績糸にする際の、紡績方法としては、できあがる紡績糸が実質的に無撚りとなる方法であれば特に限定されないのであるが、空気流の作用により短繊維成分を結束させて紡績糸を形成する汎用の空気精紡機において、特に好ましいのは、ムラタボルテックススピナー(村田機械社製:以下MVSと記す)を用いる方法があげられる。一般的なスパンリング糸は、精紡機にあるリングに取り付けられたトラベラ部分を繊維が通過し高速回転することで、機械的に繊維内外へ均一に撚りを入れるため、撚りのトルク作用にて撚り戻り(以下スナール)が発生するが、MVSは繊維束を一旦バラバラにし空気流の作用により再び引き揃え糸の中心にある無撚りの繊維群に外側の繊維が空気旋回流によりZ方向に繊維群が巻き付いて糸を構成しており、撚りトルクは小さい構造となっている。
空気流の作用を利用する紡績方法は各種、提案、開発、利用されているが、本発明は撚りによる糸の拘束を抑制することが好ましく、MVSを用いた紡績方法はこれを最も達成しうる紡績方法の一つである。
ここで、本発明における実質的に無撚り構造糸とは、撚りのトルクの作用によるスナールの発生がない、もしくはきわめて小さい状態のものであることをいい、スナール指数(JIS L1905:2012 9.17.2 B法)が4.0以下のものである。ストレッチ性の点からスナール指数は好ましくは1~3である。
上記偏心芯鞘複合短繊維を用いた本発明の紡績糸にする際は、MVSを用いて好ましく製造することができる。紡績糸の番手は、シャツ、肌着、スポーツ衣料などの薄手生地に加え、デニムやユニフォームによく用いられる20~100番手が好ましいが、用途によって適宜選ぶことができる。本発明においては、特に60番手を超える細番手であっても紡績性がよいことから、60番手超、100番手以下の細番手においても、中番手並の操業性や品質の紡績糸を得ることができる。従来の潜在捲縮性複合繊維では、このような細番手の紡績糸への適用が困難であったことを鑑みると、利点といえる。また、これから得られる繊維構造物は、薄地でもストレッチ性に優れる点で特に好ましい。
また、MVSを使用した実質的に無撚りである紡績糸にすることにより、撚りによる繊維同士の束縛を抑制し、熱処理後に潜在捲縮性複合繊維が繊維軸方向に湾曲し続けることによる3次元的なスパイラル構造で発現したストレッチ性を阻害しない紡績糸を提供できる点で特筆すべき利点といえる。
なお本発明の紡績糸は、必要に応じてフィラメントと複合しても構わない。
次に、本発明の紡績を使用した繊維構造物について説明する。
本発明の紡績糸を使用した繊維構造物としては、パイル織物を含めた織物や編物などの布帛、およびこれらの布帛を用いた衣料などの繊維製品などが挙げられ、その用途によって適宜選ぶことができる。
例えば、織物に用いる場合は、織物の緯糸および/または経糸として使用することができ、通常の製織工程で製織することができる。また編物に用いる場合は、通常の丸編みや、経編工程で編成することが好ましい。製織編工程は、一般的に使用される工程で良く、織機および編機の種類は特に限定されない。また、織編物の組織、密度は、求められる風合いや物性および機能性により選択され限定されるものではない。
得られた生機は、使用される素材によって選別されるが、一般的な染色工程、条件で染色仕上げ加工され、最終の仕上げにより織編物となる。また必要に応じて染色した原綿や製織編工程前の紡績糸で染色しても構わない。
また、本発明の混紡糸は繊維構造物の一部に使っても構わないし、全体に使用しても構わず、その用途や目的に沿って決めれば良い。
本発明で用いる偏心芯鞘複合短繊維を用いた紡績糸による生地のストレッチ性を評価する方法として、生地伸長率と生地伸長回復率があり、伸長率が15%以上、伸長回復率が70%以上あると、生地を身にまとった際に、ストレッチ性を感じ、束縛感を感じ難い。伸長率は快適性の点から20%以上であることがより好ましい。また、伸長回復率は寸法安定性の点から80%以上であることがより好ましい。尚、紡績糸の番手、ヨリ係数、生地構成が同一の場合、単繊維繊度が太い方が、構成本数が少なく、繊維同士の束縛が少なくなり、生地伸長率の向上は期待できるが、逆に紡績糸の品質は低下する。
なお、伸長率の測定方法は、まず本発明の紡績糸を作製し、ヨコ糸として織物に使用し、タテ糸にはポリエステル(東レ(株)製、品種名:T403-1.45T×38mm)と綿花を混綿した番手45S、ヨリ係数3.5の紡績糸を使用する。タテ糸密度110本/インチ(2.54cm)、ヨコ密度76本/インチ(2.54cm)で、エアジェット織機を用いて1/3ツイル織物を作製し、織物を無荷重下にて130℃の湿熱雰囲気下で10分熱処理を施し、ヨコ糸が長手方向となるように30cm×5cmにカットしサンプルとし、3枚のサンプルを切り出す。次いで、自動記録装置付き定速伸張形引張試験機(INSTRON製:MODEL5566)を用い、つかみ間隔を20cmとし、5cm×1mの大きさの質量と同等の初荷重をかけ、つかみに固定する。この時のつかみ間隔をL0とする。引張速度20cm/分で14.7N(1.5kg)まで伸ばし、その時のつかみ間隔(L1)をはかり、次の式により伸長率(%)を求め、3枚の平均値で表す。
生地伸長率(%)={(L1-L0)/L0}×100
L0:初荷重下のつかみ間隔(mm)
L1:14.7N(1.5kg)まで伸ばした時のつかみ間隔(mm)。
伸長回復率の測定方法は、伸長率測定同様に無荷重下で130℃の湿熱雰囲気下で10分熱処理を施した織物をヨコ糸が長手方向になるように30cm×5cmの大きさにカットし3枚サンプルとして切り出す。引張試験機を用いつかみ間隔20cmとし、5cm×1mの大きさの試料の質量と同等の初荷重をかけつかみに固定する。引張速度20cm/分にて先に求めた伸長率の80%まで伸ばして(L3)、1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間放置する。これらの操作を10回繰り返した後、再び同じ速さで初荷重条件まで引き延ばし、その時の残留伸び(L4)を測り次の式により伸長回復率を求め、3枚の平均値で表す。
伸長回復率(%)={(L3-L4)/L3}×100
L3:生地伸長率の80%の長さ(mm)
L4:10回繰り返し伸長後の残留伸びの長さ(mm)。
本発明の複合短繊維を用いた紡績糸は、シャツ、肌着、スポーツ衣料などの薄手生地用途に好適であるが、パンツやスーツなどの厚手生地用途としても使用可能であり、十分なストレッチ性を得ることができる。
<評価方法>
<製糸安定性>
各実施例について8時間の紡糸を行い、紡糸糸切れ回数から相対評価し、4段階評価した。
◎(極めて良好) :糸切れ回数0回~1回
○(良好) :糸切れ回数2回~5回
Δ(やや不良) :糸切れ回数6回~10回
×(不良) :糸切れ回数11回以上。
<繊度、繊維長>
紡糸工程後、短繊維としてカットした後に、JIS L1015(2010年)8.4A法、8.5A法に示される方法によって、繊度、及び繊維長を測定した。
<捲縮数(山/25mm)>
JIS-L1015(2010年)8.12.1の方法に従い、測定した。発現捲縮数は、短繊維を180℃の温度で5分間、無荷重で乾熱処理した後、測定した。
なお、捲縮数は、トウからカットした短繊維の試料を用いて測定した。
<捲縮度>
JIS-L1015(2010年)8.12.2の方法に従い、測定した。
なお、捲縮度は、トウからカットした短繊維の試料を用いて測定した。
<強度、伸度>
JIS-L1015(2010年)8.7の方法に従い、測定した。
<紡績操業性>
各実施例について1時間のMVS(10錘)糸切れ回数を相対評価し、4段階評価した。
◎(極めて良好) :糸切れ回数0回~10回
○(良好) :糸切れ回数10回~20回
Δ(やや不良) :糸切れ回数20回~50回
×(不良) :紡績糸作製不可
<紡績糸品質>
1000mの紡績糸を糸欠点検知機(USTER社(スイス)Evenese Tester(Tester5))で糸ムラやネップの数を測定し、相対評価した。
◎(極めて良好) :100個未満
○(良好) :100個以上、200個未満
Δ(やや不良) :200個以上~500個未満
×(不良) :500個以上。
<紡績糸番手>
JISL 1095(2010年)9.4.1の方法に従い、測定し、綿番手を求めた。
<スナール指数>
スナール指数の測定は、JISL 1095:(2012)9.17.2 B法に従い測定する。35cm間を10等分し、0~10の指数を付けた目盛版に試料を適宜な張力の下で、つかみA、ピンB、つかみCの順序にかけた後、試料をつかみA及びCで固定する。次に荷重の先端を試料のピンに接触する部分に引っ掛けながら試料をピンから外し、スナールが静止した位置を目盛版によって読み取り、30回測定の平均値をスナール指数(10段階評価)として表す。
スナール指数4.0以下:撚り戻りが少ない
スナール指数4.0以上~7.0以下:やや撚り戻りあり
スナール指数7.0以上:撚り戻りが多い
<織密度>
織密度(経糸密度と緯糸密度)の測定は、JIS L1096(2010)に記載されている単位長さあたりの糸本数の測定に準じて行った。すなわち、デンシメーターを用い、デンシメーターを織物上に置いたときに現れる干渉バンドの数を測定し、それを5箇所で行って単純平均して求めた。
<生地伸長率>
なお、伸長率の測定方法は、まず各例で製造した紡績糸をヨコ糸として織物に使用し、タテ糸にはポリエステル(東レ(株)製、品種名:T403-1.45T×38mm)と綿花を混綿した番手45S、ヨリ係数3.5の紡績糸を使用する。タテ糸密度110本/インチ(2.54cm)、ヨコ密度76本/インチ(2.54cm)で、エアジェット織機を用いて1/3ツイル織物を作製し、織物を無荷重下にて130℃の湿熱雰囲気下で10分熱処理を施し、ヨコ糸が長手方向となるように30cm×5cmにカットしサンプルとし、3枚のサンプルを切り出す。次いで、自動記録装置付き定速伸張形引張試験機(INSTRON製:MODEL5566)を用い、つかみ間隔を20cmとし、5cm×1mの大きさの質量と同等の初荷重をかけ、つかみに固定する。この時のつかみ間隔をL0とする。引張速度20cm/分で14.7N(1.5kg)まで伸ばし、その時のつかみ間隔(L1)をはかり、次の式により伸長率(%)を求め、3枚の平均値で表す。
生地伸長率(%)={(L1-L0)/L0}×100
L0:初荷重下のつかみ間隔(mm)
L1:14.7N(1.5kg)まで伸ばした時のつかみ間隔(mm)。
<生地伸長回復率>
伸長回復率の測定方法は、伸長率測定同様に無荷重下で130℃の湿熱雰囲気下で10分熱処理を施した織物をヨコ糸が長手方向になるように30cm×5cmの大きさにカットし3枚サンプルとして切り出す。引張試験機を用いつかみ間隔20cmとし、5cm×1mの大きさの試料の質量と同等の初荷重をかけつかみに固定する。引張速度20cm/分にて先に求めた伸長率の80%まで伸ばして(L3)、1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間放置する。これらの操作を10回繰り返した後、再び同じ速さで初荷重条件まで引き延ばし、その時の残留伸び(L4)を測り次の式により伸長回復率を求め、3枚の平均値で表す。
伸長回復率(%)={(L3-L4)/L3}×100
L3:生地伸長率の80%の長さ(mm)
L4:10回繰り返し伸長後の残留伸びの長さ(mm)。
[実施例1]
A成分のポリマーとして、IPA7.0mol%とBHPP4.0mol%を共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(溶融粘度:110Pa・s)、B成分のポリマーとして、ポリエチレンテレフタレート(溶融粘度:70Pa・s)を用い、A成分のポリマーとB成分のポリマーをいずれもエクストルーダーを用いてそれぞれ280℃で溶融後、ポンプによる計量を行い、290℃を溶融温度として、温度を保持したまま口金に流入させた。A成分とB成分の面積比は50/50とし、口金孔数600の偏心芯鞘複合繊維用紡糸口金に流入させた。各ポリマーは、口金内部で合流し、B成分のポリマー中にA成分のポリマーが包含された偏心芯鞘複合形態を形成し、口金から吐出した。なお、実施例1の紡糸においては、図1に示す偏心芯鞘複合繊維が得られるような分配板方式の口金を用いた。紡糸された糸条を1300m/分の速度で引き取りながら、冷却した。糸条の冷却は、紡糸口金から20mmの位置より、風温20℃、風速70m/分、冷却長30mmの冷風吹き出し装置により冷却後、その後、風温20℃、風速40m/分、冷却長600mmの冷風吹出し冷却装置により冷却した。糸条の冷却後、工程油剤を0.1質量%付与し、フリーローラーを経て収束0.1%ガイドで他の紡糸錘20本合糸し、未延伸糸を得た。尚、口金吐出面から糸条の収束位置までの距離1600mmとした。その後、20本の未延伸糸を引き揃えながら、90℃の温度の温水に導き、延伸倍率2.8倍で延伸した延伸糸を、160℃の加熱ローラーで、5秒間緊張熱処理してクリンパーへ導き、延伸トウの温度が30℃、トウの押し込み圧を1.5kg/cmGで機械捲縮を付与して、捲縮数12山/25mm、捲縮度12%の捲縮トウを得た。得られた捲縮トウを80℃で乾燥後、仕上げ油剤を0.2重量%付与し、回転式のカッターにより繊維長38mmに切断し、単繊維繊度1.3dtex、強度4.0cN/dtex、伸度32%、捲縮数15山/25mm、捲縮度16%のポリエステル短繊維を得た。得られたポリエステル短繊維を前述の方法で評価した。
得られた偏心芯鞘複合短繊維を用いて行った評価結果等を表1、2に示す。
該偏心芯鞘複合短繊維を、MVSを用いて、綿番手で45‘Sの紡績糸を得た。糸切れの発生も少なく、紡績性は良好であった。
得られた紡績糸を緯糸に用い、経糸にはポリエステル(東レ(株)製、品種名:T403-1.45T×38mm)と綿花を混綿した番手45Sの紡績糸用い、通常のエアジェット織機を用いて、1/3ツイル織物を得て、織密度を経が112本/2.54cmで緯が77本/2.54cmとした織物を得た。
得られた織物はストレッチ性能指標であるヨコ方向の生地伸長率が25%であり、ハリコシのある生地を得ることができた。
[実施例2~6]
実施例2は紡績糸番手、実施例3は偏心芯鞘複合短繊維のA成分のポリマーおよびB成分のポリマーの複合比、実施例4~6は異素材との混紡、実施例5は異素材に併せ、偏心芯鞘複合短繊維の繊維長等を、表1、2の通り変更した以外は、実施例1と同様にして、紡績糸及び織物を得た。得られた偏心芯鞘複合短繊維を用いて行った評価結果等を表1、2に示す。
[比較例1~4]
表1、2の通り、比較例1~2は特開平09-157941号公報に記載の口金を用いたサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維とし(比較例2は繊度も変更)、比較例3は複合形態が図4となる(ただし、薄皮が存在し、芯成分の露出は無い)ようにした以外はそれぞれ実施例1と同様にした。また比較例4として、通常ポリエステルの繊度2.2dtexを用いて65番手の紡績糸及び、それを用いて実施例1と同設計の織物を得た。得られた偏心芯鞘複合短繊維等を用いて行った評価結果等を表1、2に示す。
Figure 0007528511000001
Figure 0007528511000002
a:重心点
C:重心点
S:最小厚み
D:繊維径
IFR:曲率半径
5-(a):鞘成分を成すポリマー(B成分)の分配孔
5-(b):鞘成分を成すポリマー(B成分)の分配孔
5-(c):芯成分を成すポリマー(A成分)の分配孔

Claims (6)

  1. 偏心芯鞘複合短繊維から構成され、芯部分および鞘部分を備えており、前記芯部分は第1のポリマー、鞘部分は第2のポリマーから構成されており、
    前記第1のポリマーが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とし、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1種から生成する単位を2~7モル%含み、かつ、イソフタル酸から生成する単位を5~13モル%含む共重合ポリエステルであり、
    前記第2のポリマーが、エチレンテレフタレート単位を主たる構成単位とし、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、および2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのエステル形成誘導体から選択される少なくとも1種から生成する単位を0モル%以上0.5モル%未満含み、かつ、イソフタル酸から生成する単位を0モル%以上1モル%未満含むポリエステルであり、
    前記偏心芯鞘複合短繊維の横断面において、前記鞘部分の厚さの最小値Sと前記偏心芯鞘複合短繊維の繊維径Dとの比(S/D)は、0.01~0.1であり、
    前記鞘部分の厚さが前記最小値Sの1.05倍以下である前記鞘部分の一部であって、
    横断面の外縁の一部を構成する部分の長さの、前記偏心芯鞘複合短繊維の横断面の外縁全体の長さに対する比率は、33%以上であり、
    単繊維繊度は、0.5~2.2dtexであり、
    スナール指数は、4.0以下である、紡績糸。
  2. 前記偏心芯鞘複合短繊維が、180℃における無荷重熱処理後の発現捲縮数が50山/25mm以上となる潜在捲縮を有する請求項1に記載の紡績糸。
  3. 前記偏心芯鞘複合短繊維の含有量が、前記紡積糸の全体に対し、45~100質量%である、請求項1または2に記載の紡績糸。
  4. 前記紡績糸の番手が、20~100番手である、請求項1~のいずれかに記載の紡績糸。
  5. 空気精紡機を用いて紡績することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の紡績糸の製造方法。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の紡績糸を用いた、繊維構造物。
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