JP4676583B2 - クリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体等を製造するクリーンルームの間仕切り用フィルム又はシート(以下「フィルム・シート」と記す)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体等を製造するクリーンルームの間仕切り用フィルム・シートとして、合成樹脂製の帯電防止性透明軟質フィルムが使用されている。
中でも、塩化ビニル系樹脂製の軟質フィルム・シートは、帯電防止性、防炎性、透明性、柔軟性の面で特に優れるため、上記のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートとして多用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の間仕切り用フィルム・シートは、一般に難燃性が要求されるため、この様な用途に使用される塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートは、可塑剤として、リン酸エステル系可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物から得られるものが一般的である。
【0004】
一方、最近では、上記の塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートをクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートとして使用した場合に、当該間仕切り用フィルム・シートから放出される気体成分(アウトガスと呼ばれている)によって、シリコンウエハー等が汚染され、半導体等の不良率が増加するという問題がクローズアップされている。
特に、より精密な半導体等が製造されるようになった今日では、上記の問題が深刻化してきている。
【0005】
上記の塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートにおけるアウトガスの原因となる物質としては、リン酸エステル系可塑剤、安定剤中に含まれるトリフェニルリン酸エステル等が挙げられている。
しかしながら、上記のような塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートから、この様な成分を全て除くと、所望の難燃性が付与されない等、クリーンルームの間仕切り用フィルム・シートとして要求される諸物性を損なうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、難燃性等のクリーンルームの間仕切り用フィルム・シートに要求される諸物性を損なうことなく、アウトガスに起因する問題をも解決し得るクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、リン酸エステル系可塑剤が添加された塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートの両面にフッ素系樹脂製フィルムが積層されてなる透明性フィルム又はシートの片面又は両面に帯電防止性層が積層されてなることを特徴とするものである。
また、本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、該透明性フィルム又はシートの片面又は両面に、導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより帯電防止性層が形成されているフィルム又はシートであるクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート、該透明性フィルム又はシート表面の導電性材料を含む塗料が塗布されていない部分の面積が70%以上であり、帯電防止性層の抵抗値が1010Ω未満であるクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート、塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートが、塩化ビニル系樹脂100重量部当たり30〜80重量部の可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を形成して得られる透明なフィルム又はシートであって、全可塑剤中の30重量%以上が導電性可塑剤としたフィルム又はシートであるクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート、導電性可塑剤が、化1に示す導電性可塑剤であるクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシートである。
[化1]
(式中、R、Rは炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状アルキル基、A、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、m、nは1〜7の整数を示す。但し、RとAの炭素数の合計及びRとAの炭素数の合計は5〜17である。)
さらに、本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートの表面に、導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより帯電防止性層が形成されているフィルム又はシートであるクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシートである。
本発明における透明フィルムとは、透明フィルムや半透明フィルム及び透明や半透明のフィルム上の一部に不透明の印刷を施したものを指す。
【0008】
上記塩化ビニル系樹脂製のフィルム・シートは、塩化ビニル系樹脂100重量部当たり、30〜80重量部の可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を成形して得られるものが好ましい。
【0009】
上記の塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体であるポリ塩化ビニルの他、塩化ビニルとエチレン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、マレイン酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーとの共重合体、あるいはこれらの混合物等が使用できる。
【0010】
塩化ビニル系樹脂に添加される可塑剤としては、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;ポリエステル系可塑剤;トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;等から選ばれる一種あるいは二種以上を使用することができる。
また、塩化ビニル系樹脂に添加される導電性可塑剤以外の可塑剤を添加する場合には、難燃性の面から、導電性可塑剤以外の可塑剤として、リン酸エステル系可塑剤等の難燃性可塑剤のみ、或いは難燃性可塑剤を主体とする混合可塑剤を用いることが好ましい。
【0011】
上記の塩化ビニル系樹脂には、難燃剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、滑剤等を適宜添加しても良い。
特に顔料として、黄やオレンジ系の顔料を添加することによって、防虫効果を持たせることができ、特に好ましい。
【0012】
難燃剤としては、トリクレジルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、ブロモホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等のリン酸エステル;塩素化パラフィン、四臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;ジンクボレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、三酸化アンチモン等の無機系難燃剤;含リンポリオール、含臭素ポリオール、四塩化無水フタル酸、四臭化無水フタル酸等の反応性難燃剤等が使用できる。
【0013】
酸化防止剤としては、アルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル、β,β’−チオプロピオン酸エステル、有機亜リン酸エステル、芳香族アミン、フェノール・ニッケル複合体等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0014】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリロニトリル置換体等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
安定剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウムなどの金属石鹸、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ジフェニルデシルホスファイトなどの有機ホスファイト系安定剤、ジブチル錫ラウレートなどの錫系安定剤などが使用できる。
また、これらの安定剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク等の無機充填剤が好ましい。
【0017】
滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸;流動パラフィン、ポリエチレンワックス類、塩素化炭化水素類等の炭化水素類;ステアリン酸、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸及び脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸モノグリセリド等の脂肪酸エステル等の滑剤が使用できる。
【0018】
顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、クロム酸バリウム、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、鉛シアナミド、鉛酸カルシウム、イソインドリノンイエロー、ローダミンレーキ、アンスラキノンイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエロー3G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ダイヤジンイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジシンイエロー、ベンジシンイエローG、ベンジシンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンフアストイエロー5G、バルカンフアストイエローR、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリジンイエロー等の黄色系顔料もしくは染料が使用できる。
【0019】
上記の塩化ビニル系樹脂組成物は、カレンダー法、押出法、インフレーション法等の公知の手段により、所望の厚さのフィルム・シートに成形される。勿論、本発明のフィルム・シートは、間仕切り用フィルム・シートとしての透視性を確保し得る程度に透明であることが必要である。
【0020】
上記の透明性フィルム・シートには、次のような手段により、帯電防止性を付与することができる。例えば、
▲1▼塩化ビニル系樹脂製フィルム・シートの両面にフッ素系樹脂製フィルムを積層してなる透明性フィルム・シートの片面又は両面に、導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより、帯電防止性を付与する手段。
▲2▼塩化ビニル系樹脂組成物中に含まれる全可塑剤中の30重量%以上を導電性可塑剤にし、さらに、透明性フィルム・シートの片面又は両面に導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより、より高い帯電防止性を付与する。
▲3▼塩化ビニル系樹脂製フィルム・シートの片面又は両面に導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布し、さらに、透明性フィルム・シートの片面又は両面に導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより、より高い帯電防止性を付与する。
▲4▼塩化ビニル系樹脂組成物中に含まれる全可塑剤中の30重量%以上を導電性可塑剤にし、塩化ビニル系樹脂製フィルム・シートの片面又は両面に導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布し、さらに、透明性フィルム・シートの片面又は両面に導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより、より高い帯電防止性を付与する
等である。
【0021】
上記の手段で使用される塗料中に含まれる導電性材料としては、カーボンブラック、グラファイト、銀、酸化錫等が使用できるが、塗装適性等の見地から、カーボンブラックあるいはグラファイト等のカーボンを主体とするものが好適である。
【0022】
また、これらの導電性材料を混入させる塗料としては、各種の樹脂バインダーを含む溶剤系、水系、紫外線硬化型等の塗料が使用できるが、基体となる塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シート又は透明性フィルム・シートとの接着性の見地から、架橋タイプあるいは非架橋タイプの塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤系塗料が好適である。
【0023】
上記の導電性材料を含む塗料は、例えば、連続した線状(波線等も含む)、格子状、細目状、連続した模様状に塗布される。
また、カーボンブラック等の導電性材料を含む塗料は、一般に黒色系で不透明であるが、上記した通り、間仕切り用フィルム・シートは透視性を確保する必要があるため、この塗料を塗布する場合には、フィルム表面の導電性材料を含む塗料が塗布されていない部分の面積比(開口率)が70%以上、更に好ましくは、90%以上となるようにするのが望ましい。
【0024】
上記の導電性材料を含む塗料による塗膜の抵抗値としては、1010Ω未満とするのが望ましく、特に107Ω未満とするのが望ましい。
導電性材料を含む塗料による塗膜の抵抗値が高すぎると、クリーンルーム間仕切り用として要求される帯電防止性を付与することができない。
【0025】
一方、上記の手段において使用する導電性可塑剤としては、従来より知られている導電性可塑剤、例えば化1に示す一般式で表されるフタル酸エステル系の導電性可塑剤が使用できるが、特に好ましくは、化1に示すフタル酸エステル系の導電性可塑剤である。
【0026】
[化1]
(式中、R1,R2は炭素数3〜15の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、A1,A2は炭素数2〜4のアルキレン基、m,nは1〜7の整数を示す。
但し、R1とA1の炭素数の合計及びR2とA2の炭素数の合計は5〜17である。)
【0027】
上記のフタル酸エステル系の導電性可塑剤は、炭素数1〜13の直鎖状あるいは分岐状のアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜7モル付加させ、アルコールとアルキレンオキサイドの合計炭素数が5〜17である末端ヒドロキシル化合物と、フタル酸とを反応させて得られるものである。
【0028】
上記の導電性可塑剤の添加量は、塩化ビニル系樹脂に添加する全可塑剤中の30重量%以上、好ましくは50重量%以上である。
【0029】
本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートに用いられる透明性フィルム・シートは、上記のようにして得られた塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートの両面にフッ素系樹脂製フィルムを積層してなる。
このフッ素系樹脂製フィルムとしては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、三フッ化塩化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等から選ばれる一種あるいは二種以上の混合物などのフッ素系樹脂からなる透明フィルムが使用できる。
【0030】
さらに、フッ素系樹脂製フィルムとしては、上記フッ素系樹脂からなるフッ素系樹脂層とアクリル系樹脂層又は/及び塩化ビニル系樹脂層を積層したフィルムを使用することができる。特に、フッ素系樹脂層とアクリル系樹脂層、塩化ビニル系樹脂層を順次積層したフィルムは、高周波ウェルダー適性に優れ、かつ塩化ビニル系樹脂製軟質フィルムと熱ラミネートすることもできるため、特に好ましい。また、フッ素系樹脂層とアクリル系樹脂層又は/及び塩化ビニル系樹脂層を積層したフッ素系樹脂製フィルムは共押出法やラミネート法等で製造することができる。
該フッ素系樹脂製フィルム中の塩化ビニル系樹脂層にも、上記した塩化ビニル系樹脂製軟質フィルムと同様に、可塑剤、難燃剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、滑剤等を適宜添加しても良い。
【0031】
また、上記のフッ素系樹脂製フィルムと前記の塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートとを積層するには、通常接着剤が使用される。この接着剤としては、塩化ビニル系接着剤やアクリル系接着剤等の公知の接着剤が使用できる。
さらに、該接着剤にも、上記した塩化ビニル系樹脂と同様に、可塑剤、難燃剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、滑剤等を適宜添加しても良い。
フッ素系樹脂製フィルムとして、フッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、塩化ビニル系樹脂層を順次積層したフッ素系樹脂製フィルムを用いた場合には、熱ラミネート法や、高周波ウェルダーにより、塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シートと接着することが可能である。
【0032】
以上の構成からなる本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、従来の塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム・シート単体からなる間仕切り用フィルム・シートと比較して、アウトガスの発生が著しく抑制されたものである。
また、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性、柔軟性の面でも、従来の軟質塩化ビニル系樹脂フィルム・シート単体からなる間仕切り用フィルム・シートを比較して、何ら遜色のないものである。
さらに、本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、耐光性に優れ、殺菌灯などの強い紫外線を長時間受けても添加剤がブリードすることが無く、クリーンルームや滅菌室に非常に有効である。
【0033】
【実施例】
実施例1
表1に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物を、ロール温度175℃のカレンダー装置を用いて成形し、厚さ0.3mmの塩化ビニル系樹脂製シートを得た。
【0034】
【表1】
【0035】
次いで、得られた塩化ビニル系樹脂製軟質シートの片面に、塩化ビニル系接着剤を介して、ポリフッ化ビニリデン製フィルムを積層し、透明性フィルム・シートを得た。
得られた透明性フィルム・シートの両面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を亀甲模様状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、本発明のクリーンルーム間仕切り用シートを得た。
得られたクリーンルーム間仕切り用シートは、アウトガスの発生がなく、また、耐光性、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性及び柔軟性の面でも、クリーンルームの間仕切り用シートとして十分適用し得るものであった。
【0036】
尚、上記した実施例1の間仕切り用シートを図1に示す。図1は、実施例1の間仕切り用シートの部分拡大断面図であり、図中の符号1は、間仕切り用シート、符号10Aは塩化ビニル系樹脂製シート、符号10Bは導電性材料を含む塗料による塗膜、符号11はフッ素系樹脂製フィルム、符号12は、フッ素系樹脂製フィルム11と塩化ビニル系樹脂製軟質シート10とを接着するための接着剤を示している。
【0037】
(比較例1)
実施例1と比較するため、実施例1における塩化ビニル系樹脂製軟質シートの両面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を亀甲模様状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、クリーンルーム間仕切り用シートとした。
この間仕切り用シートは、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性及び柔軟性の面では、クリーンルームの間仕切り用シートとして十分に適用し得るものであったが、アウトガスが発生し、殺菌灯の光を24時間照射すると、ブリードを起こすという欠点を有するものであった。
【0038】
(実施例2)
表2に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物をロール温度175℃のカレンダー装置を用いて形成し、厚さ0.3mmの塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートを得た。
【0039】
【表2】
*1 新日本理化社製「サンソサイザーC−1100」(商品名)
【0040】
得られた塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートの両面に、塩化ビニル系接着剤を介して、ポリフッ化ビニリデン製フィルムを積層し、透明性フィルム・シートを得た。
得られた透明性フィルム・シートの両面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を亀甲模様状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、本発明のクリーンルーム間仕切り用シートを得た。
得られたクリーンルーム間仕切り用シートは、アウトガスの発生がなく、また、耐光性、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性及び柔軟性の面でも、クリーンルーム間仕切り用シートとして十分に通用し得るものであった。
【0041】
尚、上記した実施例2の間仕切り用シートを図2に示す。図2は、実施例2の間仕切り用シートの部分拡大断面図であり、図中の符号2は間仕切り用シート、符号20は、塩化ビニル製の帯電防止性透明軟質シート、符号21はフッ素系樹脂製フィルム、符号22は、フッ素系樹脂製フィルム21と塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートとを接着するための接着剤を示している。
【0042】
(比較例2)
実施例2と比較するため、実施例2における塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートの片面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を亀甲模様状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、本発明のクリーンルーム間仕切り用シートを得た。
この間仕切り用シートは、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性及び柔軟性の面では、クリーンルーム間仕切り用シートとして十分に適用し得るものであったが、アウトガスを発生し、殺菌灯の光を24時間照射すると、ブリードを起こすという欠点を有するものであった。
【0043】
(実施例3)
表3に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物をロール温度175℃のカレンダー装置を用いて形成し、厚さ0.3mmの塩化ビニル系樹脂製軟質シートを得た。
【0044】
【表3】
【0045】
次いで、得られた塩化ビニル系樹脂製軟質シートの両面にアクリル樹脂層を積層したフッ素系樹脂フィルムを積層し、透明性シートを得た。
得られた透明性シートの片面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を格子状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、本発明のクリーンルーム間仕切り用シートを得た。得られたクリーンルーム間仕切り用シートは、アウトガスの発生がなく、また、耐光性、帯電防止性、実施例1,2よりも高い防炎性(難燃性)、防虫性及び柔軟性の面でも、クリーンルームの間仕切り用シートとして十分適用でき得るものであった。
【0046】
(実施例4)
表4に示す配合からなる塩化ビニル系樹脂組成物をロール温度175℃のカレンダー装置を用いて形成し、厚さ0.3mmの塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートを得た。
次いで、得られた塩化ビニル系樹脂製の帯電防止性透明軟質シートの両面に、ポリフッ化ビニリデン層の裏面にアクリル樹脂層、ポリ塩化ビニル樹脂層を順次積層したフッ素系樹脂フィルムを熱ラミネート法によって積層し、透明性シートを得た。 得られた透明性シートの両面に導電性材料としてカーボンブラックを含むアクリル系樹脂をバインダーとする溶剤塗料(塗膜の二点間抵抗値は2×103Ω)を格子状の連続模様(開口率90%)となるように塗布し、本発明のクリーンルーム間仕切り用シートを得た。得られたクリーンルーム間仕切り用シートは、アウトガスの発生がなく、また、耐光性、実施例1,2よりも高い帯電防止性を有し、防炎性(難燃性)、防虫性及び柔軟性の面でも、クリーンルームの間仕切り用シートとして十分適用でき得るものであった。
【0047】
【表4】
*1 新日本理化社製「サンソサイザーC−1100」(商品名)
【0048】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のクリーンルーム間仕切り用フィルム・シートは、帯電防止性、防炎性(難燃性)、透明性及び柔軟性の面で、クリーンルーム間仕切り用シートとして十分に適用し得るものであることは勿論のこと、アウトガスの発生についても極めて抑制されており、従って、このアウトガスによってシリコンウエハー等を汚染し、半導体等の不良率が増加するという問題も懸念されないものである。
また、クリーンルーム間仕切り用フィルム・シートを黄色顔料により黄色の半透明のものとした場合には、防虫性にも優れるものである。
さらに、帯電防止性層を表面に露出させたことにより、高い帯電防止性を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクリーンルーム間仕切り用シートの一実施例の部分拡大断面図である。
【図2】本発明のクリーンルーム間仕切り用シートの一実施例の部分拡大断面図である。
【図3】本発明のクリーンルーム間仕切り用シートの一実施例の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1,2,3 クリーンルーム間仕切り用シート
10,20,30 塩化ビニル系樹脂製軟質シート
11,21 フッ素系樹脂製フィルム
12,22 接着剤
13,23,33 導電性材料を含む塗料
31a ポリ塩化ビニル樹脂層
31b アクリル樹脂層
31c ポリフッ化ビニリデン層

Claims (6)

  1. 半導体等を製造するクリーンルームの間仕切り用として使用されるフィルム又はシートであって、
    リン酸エステル系可塑剤が添加された塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートの両面にフッ素系樹脂製フィルムが積層されてなる透明性フィルム又はシートの片面又は両面に、帯電防止性層が積層されてなることを特徴とするクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
  2. 透明性フィルム又はシートの片面又は両面に、導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に印刷することにより、帯電防止性層が形成されているフィルム又はシートである請求項1記載のクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
  3. 透明性フィルム又はシート表面の導電性材料を含む塗料が塗布されていない部分の面積が70%以上であり、帯電防止性層の抵抗値が1010Ω未満である請求項2記載のクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
  4. 塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートが、塩化ビニル系樹脂100重量部当たり30〜80重量部の可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を形成して得られる透明なフィルム又はシートであって、全可塑剤中の30重量%以上が導電性可塑剤としたフィルム又はシートである請求項1〜3いずれか1項記載のクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
  5. 導電性可塑剤が、化1に示す導電性可塑剤である請求項4記載のクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
    (式中、R、Rは炭素数3〜15の直鎖状又は分岐状アルキル基、A、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、m、nは1〜7の整数を示す。
    但し、RとAの炭素数の合計及びRとAの炭素数の合計は5〜17である。)
  6. 塩化ビニル系樹脂製軟質フィルム又はシートの表面に、導電性材料を含む塗料を任意の連続模様状に塗布することにより帯電防止性層が形成されているフィルム又はシートである請求項1〜5いずれか1項記載のクリーンルーム間仕切り用フィルム又はシート。
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