JP5192199B2 - 蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体 - Google Patents
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Description
上述のとおり、蓄熱材の一部あるいは全部の蓄熱性能が低下すると、蓄熱性シート状成形体の製造時において有していた蓄熱性能が長期間に亘り良好に維持されず、問題であった。
(1)熱可塑性樹脂中に蓄熱材が添加されて形成される基材樹脂層と、上記基材樹脂層の少なくとも片面側に設けられるJIS K 7126で測定される酸素ガス透過度が3500(CC/m 2 ・24hr・atm)以下である表面保護層とを有し、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量が10〜70℃の間で10J/g以上であることを特徴とする蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体、
(2)上記基材樹脂層中に、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記蓄熱材40乃至260質量部が添加されていることを特徴とする上記(1)に記載の蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体、
(3)上記熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体、
を要旨とするものである。
即ち、基材樹脂層に蓄熱材を内包するマイクロカプセルを高比率で含有させる場合であっても、シート状成形体の加工適性を損なうことがない。より詳しく述べると、マイクロカプセルを高比率で基材樹脂に練り込む際に、基材樹脂(即ちポリ塩化ビニル系樹脂)の粘度があまり高くならず、練り込み作業を容易に行うことができる。加えて、上記練り込み作業時に、マイクロカプセル同士が凝集して早期に沈降してしまうことがない。したがって、マイクロカプセルの含有率の高いシート成形体であっても、成形工程が容易であり、加工適性に優れている。
熱可塑性樹脂:
まず本発明における基材樹脂層を構成する熱可塑性樹脂について説明する。上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合、スチレン・ブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、1,2−ポリブタジエン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、セロファン、セルロイド樹脂等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて用いても良い。この中でも特に加工特性が良く、蓄熱材を内包したマイクロカプセルの分散性が良好であるなどの観点からはポリ塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。
これらポリ塩化ビニル系樹脂の調整方法は、例えば、エマルジョン重合法(乳化重合法)、マイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)などを例示することができる。中でも、樹脂中に充填剤を多量に入れることができ、可塑剤との混合によりペーストプラスチゾルを形成することが可能であるという観点からはエマルジョン重合法により調整されることが好ましい。
蓄熱材は単位体積当たりの蓄熱量が大きく、安全で腐食しにくく、融解と凝固を繰り返しても安定して放熱と蓄熱作用が得られるとともに、安価であるパラフィン、有機酸、アルコール、シクロパラフィン系及び芳香族系等を用いることが好ましく、特に熱への安定性の観点からパラフィン系のテトラデカン、オクタデカン、エイコサン、ペンタコサン、トリコンタン、有機酸系(脂肪酸)のステアリン酸、アルコール系セチルアルコール等を用いることがより好ましい。このような蓄熱材は、使用目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、目的の温度範囲に融点を有する1種の蓄熱材を選択して用いたり、2種以上の蓄熱材を混合して用いたりすることも可能である。
上記蓄熱材は、基材樹脂層を構成する熱可塑性樹脂に直接練り込んで使用することもできるし、あるいは、マイクロカプセル内に上記蓄熱材を内包させ、これを熱可塑性樹脂に混合させることもできる。
上記マイクロカプセルとは、皮膜の内側に蓄熱材を内包することのできる微小な粒子である。マイクロカプセルの皮膜を形成する膜材としては特に制限されず、例えば、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、アミノプラスト樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの膜剤は、単独であるいは混合して皮膜を形成することができる。特にユリア樹脂及び/またはメラミン樹脂により形成された皮膜が好ましい。また、蓄熱材をマイクロカプセル化する方法としては特に制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。なお、このような蓄熱材を内包したマイクロカプセルとしては、市販されている蓄熱材を内包したマイクロカプセルを適宜用いてもよい。
上述する熱可塑性樹脂及び蓄熱材を用いて本発明のシート状成形体を成形する場合には、これらをまず配合し、蓄熱性熱可塑樹性脂組成物として扱うことが一般的である。上記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、蓄熱材及び任意の他成分を好ましい含有量となるように計量して配合し、混合攪拌することで製造することができる。このような混合攪拌の方法は特に制限されるものではなく、樹脂の組成、粘度、各成分の添加量等により適宜選定することができ、具体的には、ディゾルバーミキサー、ホモミキサー等の攪拌機を用いる方法が例示される。
上記蓄熱性熱可塑樹性脂組成物には、熱可塑性樹脂及び蓄熱材以外の他の成分を適宜、配合させることができる。例えば、シート状成形体に難燃性を付与するために難燃剤を含有させても良い。難燃剤としては、金属水酸化物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、燐酸エステル系化合物、燐酸アンモン、炭酸アンモン、錫酸亜鉛、トリアジン化合物、メラニン化合物、グアニジン化合物、硼酸、硼酸亜鉛、炭酸亜鉛、モリブデン化合物、ハイドロタルサイト等が挙げられる。これら難燃剤は単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。
上記フタル酸エステル系可塑剤としては、具体的にはジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP、DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ジブチルベンジルフタレート(DBBP)等が挙げられる。
上記リン酸エステル系可塑剤として具体的にトリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシレニルフォスフェート(TXP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート(TBP)、トリオクチルトリメリテート(TOTM)等が挙げられる。
また、上記エポキシ系可塑剤としては植物油エポキシ化物、エポキシ樹脂等が使用でき、植物のエポキシ化物としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等が挙げられ、エポキシ樹脂としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸エチルヘキシル、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルジシクロヘキセンジエポキサイド、2,2−ビス(4−ヒドロキフェニル)プロパンとエピクロルヒドリンの重縮合物等が挙げられる。
また、上記のフタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤の他、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルセバケート等のセバチン酸エステル系可塑剤、ジ-2−エチルヘキシルアゼレート、ジオクチルアゼレート等のアゼラインエステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ポリプロピレンアジペート等のポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン等の可塑剤も使用できる。
上述する可塑剤は、単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
本発明における表面保護層は、上述のとおり、基材樹脂層から染み出した蓄熱材、あるいは基材樹脂層中に担持されている蓄熱材の酸化劣化を防止することを主目的として、基材樹脂層の少なくとも一方側に積層されるものである。表面保護層が、基材樹脂層の片側面にだけ積層されるか、あるいは両面に積層されるかは、シート状成形体の使用目的、用途分野によって適宜決定してよい。
例えば、壁紙などの化粧シートとして本発明のシート状成形体を用いる場合には、シート状成形体の一方の面は、壁などの対象物と接触することにより使用時において空気と直接に接触することがない。したがって、表面保護層は、基材樹脂層の片側面にのみ設けておき、該保護層面側が、壁面などの対象物とは接触しない側に位置するよう用いることによって、蓄熱材の酸化劣化を充分に防止することができる。
一方、衣料素材、テントシートなど、両面が空気層と接触することが予定される使用態様では、基材樹脂層の両面側に表面保護層が設けられていることが望ましい。
本発明における表面保護層は、JIS K 7126に基づいて測定される酸素ガス透過度が3500(CC/m2・24hr・atm)以下であるが、50(CC/m2・24hr・atm)以下であることが望ましい。本発明における表面保護層は、その存在により、基材樹脂層と表面保護層との境界面にとどまる蓄熱材あるいは、基材樹脂層内に担持される蓄熱材の酸化劣化を防止することができるが、該表面保護層の酸素ガス透過度が上記好ましい範囲にあることにより、この酸化劣化防止効果をより好ましく享受することができる。
上記表面保護層は、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アルキド系樹脂、エポキシ系樹脂、などの塗料を用いて、これを表面保護層形成用組成物として使用することができる。上記塗料としては無溶剤塗料、溶剤系塗料、水系塗料のいずれを用いてもよく、熱硬化型または紫外線硬化型の塗料であることが望ましい。
上記セルロース系樹脂塗料を用いて形成された表面保護層は、耐熱性、耐アルカリ性が良好である。
上記ウレタン系樹脂塗料を用いて形成された表面保護層は、上記アクリル系樹脂塗料により形成された表面保護層の特徴である、耐候性、耐熱性に加えて密着性の点でも優れている。
上記シリコーン系樹脂塗料は、ウレタン系樹脂の特徴に加えてより密着性に優れ、架橋構造である為、耐候性、耐汚性に優れている。
上記フッ素系樹脂塗料により形成された表面保護層は、密着性に優れ、熱、紫外線、耐候性、耐薬品性に優れている。
上記アルキド系樹脂塗料により形成された表面保護層は、速乾性であり耐油性、耐候性に優れている。
上記エポキシ系樹脂塗料により形成された表面保護層は、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、高強度である。
本発明のシート状成形体は、少なくとも基材樹脂層と表面保護層とからなる2層の積層構造を有する。以下に、基材樹脂層の成形方法、表面保護層の成形方法、これら2層の積層方法について順に説明する。
本発明における基材樹脂層は、上記蓄熱性熱可塑性樹脂組成物を用いて、押出成形、カレンダー成形、プレス成形等の公知の手段によってシート状に加工すればよく、あるいは、ポリ塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を主成分とするペーストプラスチゾルを、基材(離型性を有する紙またはフィルム)にコーティングして加熱固化させる方法などによりシート状に形成してもよい。特に、蓄熱材をマイクロカプセルに内包させて用いる場合には、シート成形時において加圧工程を経ると、該マイクロカプセルの皮膜が破壊する虞があるので、上記後段に記載するように樹脂剤を基材にコーティングして固化させる方法が好ましい。より具体的には、上記蓄熱性熱可塑性樹脂組成物をポリエステルフィルム等のセパレータフィルムの上にコーティングし、140℃〜190℃の温度条件下で1〜5分間加熱することによって固化させる方法を挙げることができる。またコーティング後、紫外線を照射して、樹脂を重合させることによって硬化させてもよい。
本発明における表面保護層は、上記表面保護層成形用組成物を用いて、押出成形、カレンダー成形、プレス成形等の公知の手段によってシート成形することができ、あるいは、上記樹脂から選ばれる少なくとも1つを主成分とする塗料を、基材(離型性を有する紙またはフィルム)にコーティングし、加熱固化させることにより塗膜成形してもよい。
上述のとおり、基材樹脂層及び表面保護層は、それぞれ組成物を、押出成形方法などの従来公知の方法によりシート成形するか、あるいは、基材面に塗布してこれを固化させて塗膜を形成する方法により成形することができる。加えて、表面保護層としては、本発明に好適な樹脂で構成される市販のシートを適宜選択して用いることもできる。これら基材樹脂層と表面保護層とを積層させる方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の樹脂層を積層する方法を適宜選択して実施することができる。
また逆に、はじめに離型性を有する紙またはフィルム上に蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化して基材樹脂層の塗膜を成形した後、この基材樹脂層上に、表面保護層成形用組成物を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化して基材樹脂層を成形し、その後、上記の剥離紙またはフィルムより剥離することにより、2層積層体を成形することもできる。
また、本発明の蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体において、その用途に合わせて、表面保護層と基材樹脂層との間に、あるいは、表面保護層と基材樹脂層を積層したものの基材樹脂層側あるいは表面保護層側に、編布、織布、不織布などの繊維質基材による補強層を設けてもよい。
このような補強層を設ける(あるいは層自体を補強する)ことにより、シート状成形体自体の引裂き強度や引張強度が高まり、使用時の耐久性や寸法安定性を向上させることができる。
上記ハードコート層は、鉛筆硬度でH以上の硬度を示すものであることが好ましい。ハードコート層により表面が硬質化される為、実使用の際や使用時の擦り傷や打痕などの損傷が発生することを防止することが出来る。また上記表面滑性層は輸送時、使用時のキズ防止に効果がある。尚、ハードコート層、表面滑性層は当該蓄熱性熱可塑性シート状成形体の最外層に設けることが好ましい。積層方法は前記、表面保護層と同様な方法で積層することが可能である。
本発明の蓄熱性熱可塑性樹脂シート成形体は、示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量が10〜70℃の間で10J/g以上である。これによって、シート状成形体に充分な蓄熱性能が確保される。シート成形体の融解熱量が上記範囲を下回る場合には、例えば厚さ0.1mm、面積1m2のシート状成形体では1,000J/枚(0.28Wh)程度の蓄熱量しか発揮されず、蓄熱性能として一般的に、不充分である。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例1〜4)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、表3に示す表面保護層成形用組成物1を表5における表面保護層(実施例1〜4)の欄において示す割合でそれぞれ調整し、上記基材樹脂層の一方の面にコーティングし、180℃のオーブン中で3分間加熱することにより硬化させ、その後、常温にて24時間放置することにより養生して、厚み15μmの表面保護層を成形し、蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体を作成し、実施例1〜4とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例5、6)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、上記基材樹脂層の片側面に表4に示す表面保護層用シート1を各層の軟化点以上に加熱した後、両者を重ね合わせて熱融着させて積層させ、2層構造のシート状成形体を作成し実施例5及び実施例6とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例7)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、上記基材樹脂層の両側面に表4に示す表面保護層用シート1を各層の軟化点以上に加熱した後、基材樹脂と表面保護層を重ね合わせて熱融着させて積層させ、基材樹脂層の両側面に表面保護層が積層された3層構造のシート状成形体を形成し、実施例7とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例8)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、上記基材樹脂層の片側面に表4に示す表面保護層用シート2を各層の軟化点以上に加熱した後、両者を重ね合わせて熱融着させて積層させ、2層構造のシート状成形体を作成し実施例8とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例9)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、上記基材樹脂層の片側面に表4に示す表面保護層用シート3を各層の軟化点以上に加熱した後、両者を重ね合わせて熱融着させて積層させ、2層構造のシート状成形体を作成し実施例9とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表5における基材樹脂層(実施例10)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、上記基材樹脂層の片側面に表4に示す表面保護層用シート3を各層の軟化点以上に加熱した後、両者を重ね合わせて熱融着させて積層させ、2層構造のシート状成形体を作成し実施例10とした。
表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表6における基材樹脂層(比較例1、2)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形し、これに保護層を積層することなしに、1層のみからなる蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体を作成し、比較例1及び比較例2とした。
また表1に示す基材樹脂層構成材料と、表2に示す蓄熱材を、表6における基材樹脂層(比較例3)の欄において示す割合で配合して混合攪拌した後、減圧下において充分に脱泡し蓄熱性熱可塑樹性脂組成物を調製し、コーティングにより厚み100μmの基材樹脂層を成形した。次いで、表3に示す表面保護層成形用組成物1を表6における表面保護層(比較例3)の欄において示す割合で調整し、上記基材樹脂層の一方の面にコーティングし、180℃のオーブン中で3分間加熱することにより硬化させ、その後、常温にて24時間放置することにより養生して、厚み15μmの表面保護層を成形し、蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体を作成し、比較例3とした。
上述のとおり作成した実施例1〜10及び比較例1〜3について、その蓄熱性能の評価及び、加熱試験前後の蓄熱性能維持率の評価を下記のとおり行った。尚、実施例の評価結果については表5において、比較例の評価結果については表6において、それぞれ示した。
実施例1〜10及び比較例1〜3それぞれを、200mm角の大きさにカットして試験片を作成した。そして該試験片について、DSC6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて走査により融解熱量(J/g)を測定した。このような測定の結果、蓄熱量が10〜70℃の間で10(J/g)以上となる蓄熱性シート状成形体を合格とし、それ以外のものを不合格とした。
蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体が、加熱環境下において長期間使用されることによっても、その蓄熱性能が維持されるか否かを評価するために以下の試験を行った。
まず、実施例1〜10及び比較例1〜3それぞれを、200mm角の大きさにカットした。そして、DSC6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて走査により融解熱量(J/g)を測定し、10〜70℃の間での融解熱量Aを得た。
一方、実施例1〜10及び比較例1〜3それぞれを、同様にシート状成形体を同様に200mm角の大きさにカットし、これを60℃のオーブン中に500時間置いて加熱試験に供した。加熱試験終了後、オーブンから試験片を取り出してDSC6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて走査により融解熱量(J/g)を測定し、10〜70℃の間での融解熱量Bを得た。このようにして得られた融解熱量Aおよび融解熱量Bを用いて以下の式1により算出することによって、上記加熱試験前後の融解熱量(J/g)を比較し、実施例及び比較例各々の融解熱量(J/g)変化率を求め、耐熱性を評価した。評価基準は下記の通りである。
変化率(%)=(A−B)/A×100 (式1)
◎:融解熱量(J/g)変化率が10%以下であった
○:融解熱量(J/g)変化率が11〜20%以下であった
△:融解熱量(J/g)変化率が21〜40%以下であった
×:融解熱量(J/g)変化率が41%以上であった
表面保護層形成用組成物1
* 表3において示される酸素ガス透過度は、アクリル系樹脂100質量部、架橋剤5質量部を含有する表面保護層形成用組成物1を用いて成形された厚さ15μmのシートの酸素ガス透過度を測定した結果である。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂中に蓄熱材が添加されて形成される基材樹脂層と、
上記基材樹脂層の少なくとも片面側に設けられるJIS K 7126で測定される酸素ガス透過度が3500(CC/m 2 ・24hr・atm)以下である表面保護層とを有し、
示差走査熱量計(DSC)で測定される融解熱量が10〜70℃の間で10J/g以上であることを特徴とする蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体。 - 上記基材樹脂層中に、上記熱可塑性樹脂100質量部に対して、上記蓄熱材40乃至260質量部が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体。
- 上記熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱性熱可塑性樹脂シート状成形体。
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