特許文献1に開示された洗濯乾燥機40に用いられている噴霧装置47は、図12(b)に示すように、給水管に接続される入水口47aと、ミストを噴射する噴霧口47bとを有し、乾燥工程において温風循環経路46内へミストを噴霧するように構成されており、単に入水口47aから供給された水を内部機構により機械的にミスト状態にして噴霧口47bから噴射するものである。したがって、噴霧口47bから噴射されるミストは、粗大な液滴を主体とするものであり、浮遊性に劣るため、この洗濯乾燥機40では、ミストを内槽43内の隅々にまで十分に充満させることができず、衣類全体を湿らせることができず、乾燥終了後に衣類全体にわたってシワを有効に低減することができないという問題があった。
本発明者らは、ミストを用いて洗濯物のシワを低減する方法について鋭意検討を行ってきた。本発明者らの詳細な検討によれば、洗濯物を適度に湿らせ、その後に乾燥させることにより、洗濯物のシワを伸ばすことが可能になる。すなわち、この洗濯物を湿らせる際に、乾燥率90〜96%(理想的には95%)にミストで均一に湿らせるとともに、乾燥する際に、乾燥率99%以上に乾燥させることが重要であることが分かってきた。なお、ここでいう乾燥率とは、洗濯する前の状態での洗濯物の重量を湿らせた後の洗濯物の重量で除した値に100を掛けて%表示したものである。
本発明者らが得た知見によると、洗濯物を乾燥率90〜96%で均一に湿らせることにより、洗濯物の繊維同士を結合する水素結合を解離させて、繊維同士が自由に動ける状態にすることができる。そして、この状態で回転ドラム内で回転されることによって、洗濯物に入っていたシワが伸ばされ、次に乾燥率99%以上に乾燥させることによって、シワが伸びた状態の繊維同士に新たな水素結合を形成させて繊維を固定することができる。すなわち、シワが確実にのばされた状態で洗濯物を乾燥させることができる。
しかしながら、ミストの発生手段として、超音波霧化方式を採用した場合、単位時間あたりのミスト発生量は、ミスト発生源となる水の温度、超音波振動子を駆動する発振回路部への入力電圧等の変化により増減する。例えば、1.6MHzで発振する超音波振動子を用いた場合、他の条件を固定し、水温のみを5℃から30℃に変化させると、ミスト発生量は約1.5倍になる。また、発振回路に入力する電圧のみを95Vから107Vに変化させると、ここでもミスト発生量は約1.5倍になる。通常、前述した水温変化、電圧変化は家庭内での普通の使用環境下においてに起こり得る変化であるため、仮に、ミスト発生量が最小となる条件で、洗濯物の乾燥率がシワのばしに最適な90〜96%の範囲になるように調整すると、ミスト発生量が最大となる条件ではミスト発生量が過剰になり、洗濯物の乾燥率70%近くまで低下し、なおかつ不均一に濡れてしまうため、ミストを用いる意味がなくなってしまう。逆に、ミスト発生量が最大となる条件で、洗濯物の乾燥率がシワのばしに最適な90〜96%の範囲になるように調整すると、ミスト発生量が最小となる条件では洗濯物が殆ど湿らず、洗濯物の乾燥率が99%程度にしかならないという問題があった。
さらに、ミスト発生により水が消費されるに伴い、霧化装置内に貯留される水の水位が大きく低下すると、水の温度が上昇し、単位時間あたりのミスト発生量が変化するだけでなく、超音波振動子が劣化したり、破壊されたりすることがある。超音波振動子には使用上限温度が存在し、この上限温度を超えて使用すると、超音波振動子が劣化しやすくなる。超音波振動子の使用上限温度は、圧電素子の内部構造に由来する。例えば、超音波振動子は、チタン酸ジルコン酸鉛等からなる圧電セラミックス体と、その下面および外周面に溶融銀を塗って固形化した電極とを有し、その表面はステンレス箔やチタン箔からなる表面保護材やさらにその上に施されたメッキ層で覆われることにより保護されている。通常、電極が配された圧電セラミックス体と表面保護材とはエポキシ樹脂系等の接着剤を用いて接着されているが、この接着剤の材質によりその使用可能な上限温度が制限される。すなわち、エポキシ樹脂系接着剤の接着強度は、雰囲気温度が約40℃を超えると低下し始め、約60℃を超えるとかなり低下するため、このようなエポキシ樹脂系接着剤が用いられる超音波振動子においては、実用面での使用上限温度が約50℃であるとされている。
接着剤の材質が変われば、その使用上限温度が変わるため、超音波振動子の使用上限温度を一義的に定めるのは難しいが、エポキシ樹脂系接着剤が用いられる超音波振動子の場合、常温以上、50℃以下の温度範囲で使用するのが望ましい。また、他の接着剤が用いられる超音波振動子の場合、常温以上で、かつ、使用上限温度以下の温度範囲で使用するのが望ましい。霧化装置内の水温が超音波振動子の使用上限温度を超える温度になると、超音波振動子の劣化が進行しやすくなり、また、表面保護材やメッキ層が剥がれることになる。
また、霧化装置内の水位が極端に低下した状態(例えば、水位がゼロレベルの、謂わば空焚き状態)が長く続き、超音波振動子の温度が急上昇してキューリー点を越えると、磁化特性を失い、圧電セラミックス体電圧を負荷しても超音波を発振しなくなる、すなわち、超音波振動子が破壊されてしまうことになる。
そのため、超音波振動子を用いてミストを発生させる場合、温度監視、水位の下限監視が重要となる。また、ミスト発生により消費された水を補給するに際して、所定の水位(満水水位)に達したときに給水を停止させるためには、水位の上限監視も必要になる。
水温を監視するための水温検知手段として、一般的には水温センサ(サーミスタ等)が用いられるが、霧化ユニットに水温センサを組み込んで、霧化ユニットに溜められた水の温度が超音波振動子の使用上限温度に達する前に、超音波振動子の発振を停止させるように構成することが考えられる。また、霧化装置内の水位の上限および下限を監視するための水位検知手段として、一般的にはフロートスイッチや、電極間の導通を利用する導通センサが用いられるが、霧化ユニットにこれらの水位検知手段の一つを組み込んで、ミスト発生時に霧化ユニットに溜められた水の水位がゼロレベルに達する前に、超音波振動子の発振を停止させるとともに、給水時に所定の水位に達したときに給水を停止させるように構成することが考えられる。複数の導通センサで霧化装置内の水位の上限および下限を監視しようとすると、上限水位、下限水位に各1個の導通センサを配置しなければならず、さらに、霧化装置内の水位の下限水位に至る経過を監視して事前に対処しようとすると、上限水位と下限水位との間の中間水位に導通センサを配置しなければならない。
しかしながら、これらの温度検知手段や水位検知手段をすべて霧化装置に組み込もうとすると、霧化装置をコンパクトに構成することができず、ドラム式洗濯乾燥機内に搭載することが困難となる。例えば、水温センサおよび、フロートスイッチまたは複数の導通センサを霧化装置に取り付ける場合、霧化装置の寸法は、それらを取り付けない場合に比べて約2倍の大きさになる。
このような技術的な課題は、上記の特許文献1には開示されておらず、また、それを解決するための方法も開示されていない。したがって、この特許文献1に開示された洗濯乾燥機40では、超音波振動子を用いてミストを発生させる場合の上記課題を解決することができず、また、乾燥した衣類全体を適度に湿らせ、衣類に付いたシワを低減させることはできない。
本発明は、以上のような課題に鑑みて為されたものであり、簡単な構成でコンパクトに構成された霧化ユニット(霧化装置)を備え、ミストを発生させる超音波振動子の劣化や破壊を防止するとともに、衣類表面を効果的に適正な乾燥率に湿らせることにより、優れたシワ低減効果を発揮することができるドラム式洗濯乾燥機を提供することを目的としている。
請求項1に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、多数の透孔が形成され洗濯物を収容して回転駆動される回転ドラムが水槽内に設けられ、該水槽内の給水、排水および前記回転ドラムの回転制御により洗濯、すすぎ、脱水・乾燥の各行程を実施するとともに、前記各行程とは別に独立した行程もしくは前記脱水・乾燥行程において前記回転ドラム内にミストを発生させて洗濯物のシワをのばし消臭を行う霧化ユニットを備えてなるドラム式洗濯乾燥機において、前記霧化ユニットは、ミスト発生源としての水を上方位置に設けられる給水口から供給されて貯留する霧化室と、前記霧化室下方に設けられて該霧化室内に貯留された水に対して超音波振動を加えて霧化する超音波振動子と、前記霧化室側壁に設けられて該霧化室内に貯留された水の満水水位を検知する水位センサとを備えてなり、前記水位センサにより前記霧化室内に溜められた水が満水水位にあることが検知された後、前記超音波振動子を発振させてミストを発生し続け、前記霧化ユニットの最大ミスト発生条件にて前記霧化室内に溜められた水の水位が前記超音波振動子の超音波発振面のレベルになるまで水を消費する時間Tに対して1/n(n:安全係数)の時間が経過するまでの間に、前記霧化室内で満水水位になるように該霧化室内に水を補給し、前記時間Tの1/nの時間が経過した時点で前記水位センサにより前記霧化室内に溜められた水の水位を検知し、前記水位センサにより満水水位になっていることが検知された場合は、そのまま超音波の発振を継続するとともに、前記水位センサにより満水水位になっていることが検知されない場合は、超音波の発振を停止することを特徴とするものである。
この請求項1に係る発明のドラム式洗濯乾燥機によれば、霧化ユニットに備えられる水位センサは、霧化室内に貯留された水の満水水位を検知するためのものであり、超音波振動子が劣化したり、破壊したりする恐れのある下限水位を検知する水位検知手段を別に備えることなく、簡単な構成で霧化ユニットをコンパクトに構成することができる。
また、水位センサにより霧化室内に溜められた水が満水水位にあることが検知された後に、霧化室内に水を供給しながら超音波振動子を発振させてミストを発生し続け、しかも、霧化ユニットの最大ミスト発生条件にて霧化室内に溜められた水の水位が超音波振動子の超音波発振面のレベルになるまで水を消費する時間Tに対して1/nの時間が経過するまでの間に、霧化室内で満水水位になるように水を補給し、時間Tの1/nの時間が経過した時点で水位センサにより霧化室内に溜められた水の水位を検知し、満水水位になっていることが検知されない場合は、超音波の発振を停止するため、単位時間当たりのミスト発生量が変化しても、超音波振動子が発振している間に、霧化室内に溜められた水の水位が上記の下限水位に至ることがなく、超音波振動子の劣化や破壊を確実に防止することができる。安全係数nは、ミスト発生中における水位検出のための時間間隔を決定するものである。
さらに、霧化により消費される水を補給しながら、超音波振動子を発振させてミストを発生させるため、霧化室内の水が超音波発振に伴って加熱されても、補給される水によって冷却されるので、超音波発振に伴う霧化室内の水温上昇を小さな温度範囲に抑えて、ほぼ一定の適正温度範囲に維持することができる。これにより、超音波振動子の劣化や破壊を防止することができるとともに、適正なミスト発生量を維持して、衣類表面を効果的に適正な乾燥率に湿らせることができ、優れたシワ低減効果ならびに消臭効果を発現させることができる。
請求項2に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記請求項1に係る発明のドラム式洗濯乾燥機において、前記超音波振動子を発振させてミストを発生させる前に、前記霧化室内の水を入れ替えるに要する時間だけ前記給水口から水が供給され、前記水位センサにより前記霧化室内に溜められた水が満水水位にあることが検出された後、霧化により消費される水を前記給水口から補給しながら、前記超音波振動子を発振させてミストを発生させることを特徴とするものである。
この請求項2に係る発明のドラム式洗濯乾燥機によれば、超音波振動子を発振させる前に、水溜め容器内の水に残っているか残っていないかに係らず、霧化室内の水を完全に入れ替えて、水の水位を満水水位にすることができる。また、超音波振動子を発振させる前に霧化室内の水を完全に入れ替えるため、清潔な水を霧化して回転ドラム内に導入することができる。さらに、霧化室内の水を完全に入れ替えた上で、霧化により消費される水を補給しながら、超音波振動子を発振させてミストを発生させるため、超音波発振に伴う霧化室内の水温上昇を小さな温度範囲に抑えて、ほぼ一定の適正温度範囲に維持することができる。これにより、超音波振動子の劣化や破壊を防止することができるとともに、適正なミスト発生量を維持して、衣類表面を効果的に適正な乾燥率に湿らせることができ、優れたシワ低減効果ならびに消臭効果を発現させることができる。
請求項3に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記請求項1または2に係る発明のドラム式洗濯乾燥機において、前記水位センサは、霧化室側壁に対して上下方向に配設される1組の導電センサで構成されることを特徴とするものである。
この請求項3に係る発明のドラム式洗濯乾燥機によれば、水位センサが1組の導電センサで構成されるため、水位センサの配設のためのスペースが小さくなり、霧化ユニットのコンパクト化を図ることができる。しかも、水位センサは、霧化室内に貯留された水の満水水位を検知するためのものであり、導電センサのうち上方に位置する導電センサは、霧化室内に溜められた水の満水水位に当たる位置に設けられるが、超音波振動子が劣化したり、破壊したりする恐れのある下限水位を検知するものではないため、超音波振動子が霧化室の底壁に配設される場合であっても、導電センサのうち下方に位置する導電センサを、超音波振動子と干渉しない底壁から少し離れた適当な位置に設けることができ、霧化ユニットを合理的によりコンパクトに構成することができる。
請求項4に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記請求項1〜3のいずれか一項に係る発明のドラム式洗濯乾燥機において、前記安全係数nは、1.5以上の値に設定されることを特徴とするものである。
この請求項4に係る発明のドラム式洗濯乾燥機によれば、安全係数nが1.5以上の値に設定されるため、単位時間当たりのミスト発生量が変化しても、超音波振動子が発振している間に、水溜め容器内に溜められた水の水位が、超音波振動子が劣化したり、破壊したりする恐れのある下限水位に至ることがなく、したがって、超音波振動子の劣化や破壊を確実に防止することができる。
請求項5に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記請求項1〜4のいずれか一項に係る発明のドラム式洗濯乾燥機において、前記安全係数nは2であることを特徴とするものである。
この請求項5に係る発明のドラム式洗濯乾燥機によれば、安全係数nは2であれば、単位時間当たりのミスト発生量が大きく変化しても、より確実に水溜め容器内に溜められた水の水位が下限水位に至ることを防止でき、超音波振動子の劣化や破壊をさらに確実に防止することができる。
本発明によれば、高い温度のミストを発生させ、衣類等の表面に水分を凝縮させることにより、効果的に衣類等を湿らせることができる霧化ユニットおよびこのような霧化ユニットを備えたドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
以下、本発明のドラム式洗濯乾燥機に係る最良の実施の形態について、図面に基づき説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態に係る霧化ユニット30を備えたドラム式洗濯乾燥機1の構造・動作について、図1〜図6に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機の構造を説明するための側面断面図であり、図2は、ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路および霧化ユニットの配置を説明するための筐体背面側から見た斜視図である。また、図3は、ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路および霧化ユニットにおける乾燥空気とミストの流れを説明するための筐体背面側から見た一部切り欠き断面図であり、図4は、ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路と霧化ユニットとの接続構造を説明するための筐体背面側から見た一部切り欠き断面図である。また、図5は、ドラム式洗濯乾燥機の霧化ユニットと水槽との接続構造を説明するための側面断面図であり、図6は、その拡大側面断面図である。
本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1は、洗濯乾燥機筐体2内に図示しないサスペンション構造によって水槽3が宙吊り状態に配設され、水槽3内に有底円筒形に形成された回転ドラム4がその軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設されている。水槽3の正面側には回転ドラム4の開口端に通じる衣類出入口が形成され、洗濯乾燥機筐体2の正面側に形成された上向き傾斜面に設けられた開口部を開閉可能に閉じる扉5を開くことにより、衣類出入口を通じて回転ドラム4内に対して洗濯物を出し入れすることができる。扉5が上向き傾斜面に設けられているため、洗濯物を出し入れする作業を、腰を屈めることなく実施でき、一般には横向きにある開口部から洗濯物を出し入れするドラム式洗濯機の作業性の悪さが改善されている。
回転ドラム4には、その周壁4aおよび底壁4bに水槽3内に通じる多数の透孔4cが形成されるととともに、その底壁4bには、水槽3に形成された導風口18に対向する円周方向に沿った複数位置に底面開口4dが形成されており、さらに、周壁4a内面の複数位置に攪拌突起4eが設けられている。この回転ドラム4は、水槽3の背面側に取り付けられたモータ6によって正転および逆転方向に回転駆動される。また、水槽3には、給水管路7および排水管路8が配管接続され、図示しない給水弁および排水弁の制御によって水槽3内への給水および水槽3内からの排水がなされる。
扉5を開いて開口部から回転ドラム4内に洗濯物および洗剤を投入して、ドラム式洗濯乾燥機1の運転を開始すると、水槽3内には給水管路7から所定量の注水がなされ、モータ6により回転ドラム4が回転駆動されて洗濯工程が開始される。回転ドラム4の回転により、回転ドラム4内に収容された洗濯物は回転ドラム4の内周壁に設けられた攪拌突起4eによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた適当な高さ位置から落下する攪拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗濯がなされる。
所要の洗濯時間が経過した後、汚れた洗濯液は排水管路8から排出され、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗濯液を脱水し、その後、水槽3内に給水管路7から給水してすすぎ・脱水工程が実施される。このすすぎ・脱水工程においても、回転ドラム4内に収容された洗濯物は、回転ドラム4の回転により攪拌突起4eにより持ち上げられて落下する攪拌動作が繰り返され、すすぎ洗いが実施される。そして、すすぎ洗いを実施した後、再度、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた水を脱水して、すすぎ・脱水工程を終了する。
このドラム式洗濯乾燥機1には、回転ドラム4内に収容した洗濯物を乾燥する機能が設けられ、水槽3内の空気を排気して除湿し、加熱した乾燥空気を再び水槽3内に送風する循環送風経路9が設けられている。この循環送風経路9の途中には、洗濯乾燥機筐体2内の下位の位置に、蒸発器10などの除湿手段、凝縮器11などの加熱手段および送風ファン12などの送風手段が設けられている。循環送風経路9は、水槽3から送風ファン12に至る間の循環空気導入管路13と、送風ファン12から水槽3に至る間の乾燥空気送風管路14とで構成されており、乾燥空気送風管路14おける水槽3底面に形成された導風口18に近接した上方の位置に後述する霧化ユニット30が接続されている。
乾燥空気送風管路14は、洗濯乾燥機筐体2内の後方(水槽3の背面側)の空間において、上流側から順に、下部管路15、可撓ダクト16および上部管路17をもって構成されており、上部管路17の下流端の下方に連通口17aが開口され、この連通口17aは水槽3の背面に設けられた導風口18に接続されている。上部管路17は、その下方部分においては筐体2の中央寄りに傾斜して立ち上げられ、途中で略90°屈曲されて、その上方部分においては水槽3の導風口18に向けて下方に傾斜している。可撓ダクト16は、可撓性を有する管材を用いて構成され、回転ドラム4の回転あるいは始動・停止に伴う下部管路15の振動が送風ファン12側に伝達されるのを防止している。蒸発器10で除湿され、凝縮器11で加熱された乾燥空気は、乾燥空気送風管路14を経由して、この導風口18から水槽3、およびその内部に位置する回転ドラム4に送り込まれる。
送風ファン12を高速で回転駆動することにより、循環送風経路9に空気の流れが発生して、洗濯物を収容した回転ドラム4内の湿気た空気は、周壁4aに設けられた透孔4cを通じて水槽3から送風ファン12側への循環空気導入管路13に排気され、送風ファン12の上流に位置する蒸発器10により水分を結露させて除湿されるとともに、凝縮器11との熱交換により加熱されることにより、高温の乾燥空気とされる。
この加熱された乾燥空気は、送風ファン12から水槽3への乾燥空気送風管路14に送り出されて、水槽3に設けられた導風口18を介して水槽3内に送り込まれる。水槽3内に送り込まれた高温の乾燥空気は、回転ドラム4の底壁4bに設けられた底面開口4dおよび透孔4cを通じて回転ドラム4内に導入され、衣類などの洗濯物の間を流通し、乾燥させながら、湿った空気となって周壁4aに設けられた透孔4cから水槽3へと抜け、再度、循環空気導入管路13へと導入される。このような循環送風経路9(循環空気導入管路13、乾燥空気送風管路14)での空気の循環により乾燥工程が実施される。
ここで、本実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1には、後述する霧化ユニット30および、回転ドラム4を回転させながら乾いた衣類のシワをのばして低減させることを目的とした「シワのばしコース」が設けられている。この「シワのばしコース」においては、蒸発器10および凝縮器11を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程におけるよりも低速で回転させるとともに、霧化ユニット30を起動させることにより、霧化ユニット30で微細な液滴からなるミスト20を発生させ、このミスト20を乾燥空気送風管路14を流通する乾燥空気流に落とし込んで、詳しくは後述するが、ミスト20中に微細なウェットミストおよびドライミストが多く存在する状態で水槽3に送り込み、回転ドラム4内に導入する。このようにして、回転ドラム4内の隅々にまでミスト20を充満させ、衣類表面を効果的に湿らせて、乾燥状態にある衣類のシワを低減させるシワ低減効果を持たせた工程が実行される。さらに、その後、霧化ユニット30を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程と同じ速度にまで上昇させるとともに、蒸発器10および凝縮器11を動作させて、通常の乾燥運転を実施して、衣類を乾燥させながらその衣類のシワをのばすことができる。
また、上記の「シワのばしコース」においては、上記のようにミスト20でシワを低減することが可能であるとともに、さらに以下の原理により脱臭効果も期待できるものである。通常、臭いは、臭い成分が分子として衣類表面に付着している。例えば、タバコ、焼肉の臭いなどがそうであるが、この臭い分子にミスト20がぶつかることで、繊維に結合している臭い分子を水分子で置換する作用により、衣類から脱離させる。そして、このようなミスト処理後に、乾燥運転を行い、臭い成分が溶解している水を高温低湿な空気により蒸発させることで、臭い分子が衣類に再付着することを防止し、脱臭することが可能となる。
つぎに、本実施の形態に係る霧化ユニット30の構造および「シワのばしコース」の構成について、図7〜図9および前掲の図面に基づき詳細に説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機の霧化ユニットの構造を説明するための側面断面図であり、図8は、その背面断面図であり、図9は、その正面断面図である。
霧化ユニット30は、水槽3の後方(背面)側に配置され、ミスト発生源としての水21を貯留する水溜め容器31(霧化室)と、水溜め容器31に貯留された水21に対して超音波振動を加える超音波振動子32と、水溜め容器31内に貯留された水21の水位を検知する水位センサ33と、を備えて構成されている。そして、霧化ユニット30の水溜め容器31が、水槽3の背面において導風口18に隣接した上方位置で、接続口31gを介して直接乾燥空気送風管路14(循環送風経路9)の上部管路17に接続されている。
水溜め容器31は、水槽3の背面外側に配置され、水溜め容器31の水槽3に対向する前方側の前方側壁31bが水槽3の背面に沿って鉛直方向に対して傾斜して形成され、後方側の後方側壁31c(霧化室側壁)が洗濯乾燥機筐体2の背面パネルに沿って略鉛直方向に形成され、水溜め容器31の底壁31a側が幅広に形成されている。なお、給水口形成側壁31dとこれに対向する給水口対向側壁31eは、互いに平行に、ともに略鉛直方向に形成されている。
また、水溜め容器31の上部管路17に接続される側の給水口形成側壁31dの上方位置には、霧化ユニット30の周辺適所に配設された注水装置34から水21を注入する給水口31fが設けられ、この給水口形成側壁31dの下方位置には開口堰31hが設けられ、これにより、開口堰31hの上方が開口され、導風口18の上方部分で上部管路17に接続する接続口31gが形成されている。なお、本実施の形態において、開口堰31hの底壁31a上面からの高さは20mmであり、水溜め容器31に貯留される水21の満水水位は20mmに設定されている。
注水装置34から給水口31fを介して水溜め容器31内に注入された水21をこの開口堰31hから接続口31gを介して導風口18上方の上部管路17にオーバーフローさせることにより、簡単な構成で水溜め容器31内の水21の水位を満水水位に保つように構成している。なお、この開口堰31hからオーバーフローした水21は、接続口31g、上部管路17および導風口18を介して水槽3に送給され、排水管路8を経由して機外に排出される。
超音波振動子32は、超音波振動を発生させる圧電素子の超音波発振面32aを水溜め容器31の底壁31aに密着させて配置されており、圧電素子を作動させることにより、超音波発信方向32b(超音波発振面32aに垂直な方向)に超音波振動が伝達されて水溜め容器31内の水21に液柱22が形成される。なお、図7に示すように、超音波振動子32は、超音波発振面32aが後方側壁31c側に向くように傾斜して取り付けられているので、液柱22は、後方側壁31c方向および後述の誘水板31k方向に向けて形成される。この液柱22の形成に伴い、矢印で示すように水溜め容器31内の水21には液柱22に沿って上昇し、誘水板31kの下面に遮られて、前方側壁31bおよび後方側壁31c内面に沿って下降する水21および空気の対流が発生する。それとともに、この液柱22を通して伝達された超音波振動が水21の表面を微細に振動させ、これにより液柱22の先端付近の表面張力を弱めて、液柱22の微細な振動に応じた微細な液滴であるミスト20(霧)を発生させ、このミスト20は、前記した水21の対流運動に押し出されるようにして超音波発信方向32bに向けて放出され、水21および空気の対流に従って誘水板31kの下面および前方側壁31bと後方側壁31c内面に沿って上昇および下降し、その後、貯留された水21の表面および前方側壁31bとそ後方側壁31c内面に沿って接続口31gを介して導風口18上方の上部管路17に放出される。そして、上部管路17に放出されたミスト20は、すぐ下方の導風口18から水槽3に送り込まれ、さらに、回転ドラム4の底面開口4dを介して回転ドラム4内に導入される。
なお、液柱22は、上述したように後方側壁31c内面に向かって傾斜して形成されるので、液柱22によって水21が直接接続口31gを介して上部管路17内にこぼれてしまうのを防止することができため、水溜め容器31内の水21の余分な減少を防止することができる。
注水装置34は、水溜め容器31においてミスト20発生により消費された水21を補給するためのものであり、注水装置34の下方に設けられた給水口34aと水溜め容器31の給水口31fとの間は注水ホース35によって接続され、その間の適所に給水弁(図示せず)を備えている。注水装置34は、霧化ユニット30を起動させた最初の段階で、給水弁を開いて、水溜め容器31内の水が入れ替わるのに十分な所定時間だけ、注水装置34の給水口34aから注水ホース35を介して水21を供給するとともに、過剰な水21を後方側壁31cの開口堰31hからオーバーフローさせて、水溜め容器31内の水21の水位を満水水位に保つ。この起動初期における注水動作は、休止中に蒸発等により減った水溜め容器31内の水21を入れ替え、常に適正水位の状態下で霧化ユニット30を運転するためのものである。
ところで、ミスト発生により水が消費されるに伴い、霧化装置内に貯留される水の水位が大きく低下すると、水の温度が上昇し、単位時間あたりのミスト発生量が変化するだけでなく、超音波振動子が劣化したり、破壊されたりすることがある。
水位センサ33は、後方側壁31cに開口されたセンサ取付孔31iに挿通されて固定された2個の導通センサ33a、33bからなり、水溜め容器31の貯留水域内の略同じ鉛直線上で上下方向に離間して配設されている。本実施の形態において、上方に位置する導通センサ33aは、水溜め容器31に貯留される水21の満水水位に対応する高さ位置に配設され、下方に位置する導通センサ33bは、満水水位の略1/2に対応する高さ位置に配設されている。導通センサ33a、33bは、それぞれ単一の電極を有するものであり、双方の導通センサ33a、33b(電極)間に電流が流れることが検知されたときに、水溜め容器31内の水位が満水状態のレベル(満水水位)にあるものと判別され、このようにして水溜め容器31内の水位状態を検出することができる。
本実施の形態においては、水温センサを用いず、水位センサ33により、水溜め容器31内に貯留された水の水位および水温が適正な範囲に維持されるように制御している。つぎに、このミスト導入工程における制御シーケンスについて、図10に基づき説明する。図10は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機のミスト導入行程における超音波振動発振動作と給水動作の制御シーケンスを説明するための、(a)はミスト導入開始時のフローチャートであり、(b)はミスト導入操作時のフローチャートである。
まず、超音波振動子20を作動させてミスト20を発生させ始めるミスト導入開始時の制御シーケンスについて説明する。超音波振動子32を作動させてミスト20を発生させる前に、水溜め容器31内の水21を入れ替えるに要する時間だけ給水口31fから水21が供給され(ステップ#01)、水位センサ33により水溜め容器31内に溜められた水21が満水状態にあることが検出された(ステップ#02)後、霧化により消費される水21を給水口31fから補給しながら、超音波振動子32を作動させてミスト20を発生させる(ステップ#03)。
ミスト導入開始時におけるこのような制御シーケンスにより、超音波振動子32を発振させる前に、水溜め容器31内の水21に残っているか残っていないかに係らず、水溜め容器31内の水21を完全に入れ替えて、水21の水位を満水水位にすることができる。また、水溜め容器31内の水21を完全に入れ替えるため、清潔な水21を霧化して回転ドラム4内に導入することができる。さらに、水溜め容器31内の水21を完全に入れ替えた後の水21の温度は、雰囲気温度に近いものとなる。
つぎに、超音波振動子を作動させ続けて発生したミストを回転ドラム内に導入するミスト導入操作時の制御シーケンスについて説明する。霧化により消費される水21を給水口31fから補給しながら、超音波振動子32を作動させてミスト20を発生させ続ける(ステップ#11)。そして、霧化ユニット30の最大ミスト発生条件にて水溜め容器31内に溜められた水21の水位がゼロレベル(超音波発振面32aのレベル)になるまで水21を消費する時間Tに対して1/2(安全係数n=2とした場合)の時間が経過するまでの間に、水溜め容器31内に水21が満水水位になるように水21を補給し、時間Tの1/2の時間が経過した時点で水位センサ33により水溜め容器31内に溜められた水21の水位を検知し(ステップ#12)、水位センサ33により満水状態になったことが検知された場合は、そのまま超音波発振を継続する(ステップ#13)とともに、水位センサ33により満水水位になったことが検知されない場合は、超音波発振を停止する(ステップ#14)。
ステップ#11において、霧化により消費される水21を給水口31fから補給しながら、超音波振動子32を作動させてミスト20を発生させ続けることにより、水溜め容器31内の水温が上昇しようとするが、給水口31fから水21が補給され続けているため、水溜め容器31内の水温上昇はほぼ1〜2℃の温度範囲に留まり、ほぼ一定の適正温度範囲に維持されることになる。また、霧化装置内の水温が低いと、霧化ユニットで発生されるミストの温度が低くなるため、衣類全体を効率良く湿らせる効果が十分に得られなくなるが、水溜め容器31内の水温が雰囲気温度より少し高く維持されるため、ミストと衣類との相対的温度差が衣類全体を効率良く十分に湿すことのできる温度差となる。
また、ステップ#12においては、予め、ミスト発生量が最大となる条件にてミスト20を発生させたときに、水溜め容器31内に溜められた水21の水位がゼロレベルになるまで水21を消費する時間Tを求めておき、この時間Tの1/2の時間が経過するまでの間に、水溜め容器31内に水21が満水水位になるように水21を補給し、時間Tの1/2の時間が経過した時点で水位センサ33により水溜め容器31内に溜められた水21の水位を検知している。満水水位は、開口堰31hの高さにより決まる20mmであり、仮に、20mmの水位低下が36秒間で起こるとすると、18秒経過するまでに、満水水位になるように水溜め容器31内に水21を補給する。この場合、ミスト発生開始当初から水21を補給し続けても良いし、あるいは、水21の使用量を減らすため、18秒経過するまでに、水位を10mm上昇させるに相当する時間だけ水21を補給しても良い。後者の場合、給水時間は、注水装置34に設けられた給水弁を開放にしたときの給水能力により決まることになる。
ステップ#12において、水位センサ33により水位を検知するに際して、一定時間給水弁を開放して給水し続けて、満水状態を維持する操作を採り入れても良い。例えば、水位検知に要する時間が5秒間であって、水位を10mm上昇させるに要する時間が2.4秒であるとすると、7.4秒間給水弁を開いて給水し、10.6秒間給水弁を閉じて給水しない設定とし、この間(計18秒間)ミストを発生させるように設定すれば良いし、水位検知に要する時間が5秒間であって、水位を10mm上昇させるに要する時間が1.5秒であるとすると、6.5秒間給水弁を開いて給水し、11.5秒間給水弁を閉じて給水しない設定とし、この間(計18秒間)ミストを発生させるように設定すれば良い。
そして、ステップ#12における水位検知によって満水状態になっていることが検知された場合には、ステップ#13において、そのまま超音波の発振を継続し、ステップ#11以降の繰り返し実行するするとともに、ステップ#12における水位検知によって満水状態になっていることが検知されない場合には、ステップ#14において、超音波発振を停止する。
ミスト導入操作時における上記のような制御シーケンスにより、超音波振動発振動作と給水動作とを制御することにより、単位時間当たりのミスト発生量が変化しても、超音波振動子32が発振している間に、水溜め容器31内に溜められた水21の水位が、超音波振動子32が劣化したり、破壊したりする恐れのある下限水位に至ることがなく、したがって、超音波振動子32の劣化や破壊を確実に防止することができる。
さらに、霧化により消費される水21を継続的あるいは断続的に補給しながら、超音波振動子32を発振させてミスト20を発生させるため、水溜め容器31内の水21が超音波発振に伴って加熱されても、補給される水21によって冷却されるので、超音波発振に伴う水溜め容器31内の水温上昇を小さな温度範囲(1〜2℃)に抑えて、ほぼ一定の適正温度範囲に維持することができる。これにより、超音波振動子32の劣化や破壊を防止することができるとともに、適正なミスト発生量を維持して、衣類表面を効果的に適正な乾燥率に湿らせることができ、優れたシワ低減効果を発現させることができる。
上記のように、霧化装置内の水位状態を検出するために、それぞれ単一の電極を有する1組の導通センサを霧化装置の貯留水域内に上下方向に配設して構成される水位センサを用いた場合、互いの導通センサ間に電流が流れたときに、霧化装置内の水位が上方に位置する導通センサの配設位置よりも高い位置にあるものと検出される。
しかしながら、水溜め容器31内にはミスト20発生により消費される水21を補給するため、給水口31fから継続的あるいは断続的に水21が供給されており、実際の水位よりも上位にある導通センサ33aや後方側壁31cに水飛沫がかかり、水滴として付着する。そして、この導通センサ33aや後方側壁31cに付着した水滴等を介して、水滴が付着した導通センサ33aとその下位にある導通センサ33bとの間に電流が流れた場合、水溜め容器31内の水位が上方に位置する導通センサ33aの配設位置よりも高い位置にあるものと誤検出されることになる。すなわち、実際の水位よりも高い満水水位にあると誤検出されることになる。このように水溜め容器31内の水位状態を正確に判別することができず、満水水位にあると誤検出された場合、水溜め容器31内の水位が大きく低下しても、これ検出することができず、超音波振動子32が発振し続け、水温が上昇して、前述したように、単位時間あたりのミスト発生量が変化するだけでなく、超音波振動子32の劣化や破壊を招いてしまうことになる。
そこで本実施の形態では、さらに、水溜め容器31内には霧化により消費される水21を補給することにより、実際の水位よりも上位にある導通センサ33aや後方側壁31cに水飛沫がかかり、水滴として付着して、水滴が付着した導通センサ33aとその下位にある導通センサ33bとの間に電流が流ることにより、水溜め容器31内に貯留された水21の水位が上方に位置する導通センサ33aの配設位置よりも高い位置にあるものと誤検出される(すなわち、実際には満水水位にないにもかかわらず、実際の水位よりも高い満水水位にあると誤検出される)のを防止するため、導通センサ33a、33bのうち上方に配設された導通センサ33aの上方、すなわち、導通センサ33aが装着されるセンサ取付孔31iの上方に、後方側壁31cから内方に突出してこの導通センサ33aの上方を覆う庇31jが設けられている。本実施の形態では、上方に配設された導通センサ33aだけでなく、下方に配設された導通センサ33bにもこの導通センサ33bの上方を覆う庇31jが設けられている。この導通センサ33a、33bの上方を覆う庇31jは、後方側壁31cから内方に突出するにしたがい上方に変位する傾斜をもって配設されている。
したがって、この上方に配設される導通センサ33aに水滴が付着して、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのを防止することができる。また、下方に配設される導通センサ33bにもこの導通センサ33bの上方を覆う庇31jが設けられていると、これらの導通センサ33a、33bに水滴が付着するのを防止するとともに、仮に、導通センサ33aや導通センサ33aの上方を覆う庇31jに水滴が付着して下方に垂れ落ちる状態になったとしても、導通センサ33bの上方を覆う庇31jにより導通センサ33bに流れ落ちるのが防止されるため、導通センサ33a、33b間に電流が流れることなく、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのをより効果的に防止することができる。
なお、衣類等の洗濯物から発生する糸くず等のリントが導通センサ33a、33b間に付着して留まった場合も、導通センサ33a、33b間に電流が流れる要因となるが、導通センサ33a、33bの上方に設けられた庇31jにより、リントが導通センサ33a、33bに付着するのが阻害され、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのをより効果的に防止することができる。
また、導通センサ33a、33bの上方を覆う庇31jが内方に向かうにしたがい上方に変位する傾斜角度をもって後方側壁31cに配設されているため、庇31jに付着した水滴はこの庇31jを介して後方側壁31c側に流れ、二次的にこの導通センサ33a、33bに付着することがなく、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのをより確実に防止することができる。
さらに、本実施の形態では、導通センサ33a、33bの上方で、且つ、給水口31fの下方に、この給水口31fから供給される水を給水口31fから離れた位置に誘導する誘水板31kが設けられている。この誘水板31kは、給水口31fが設けられる給水口形成側壁31dからこの給水口形成側壁31dに対向する給水口対向側壁31e近くまで略水平方向に延設されており、誘水板31kと給水口対向側壁31eとの間には、給水口31fから供給される水21を給水口対向側壁31eに沿わせて流す隙間31lが開口されている。
これにより、給水口31fから供給される水21は、隙間31lを介して給水口対向側壁31eに沿って流れ落ちるようになるため、給水口対向側壁31eを流れ落ちる水21が導通センサ33a、33bにかかるのが、これらの導通センサ33a、33bの上方を覆う庇31jにより回避され、導通センサ33a、33bに水滴として付着するのが防止されることになる。これにより、水溜め容器内31に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのをより確実に防止することができる。
また、誘水板31kの下面と、導通センサ33aの上方に設けられる庇31jの上面との間を略鉛直方向に連結する誘水リブ31mが後方側壁31cから内方に突出して設けられている。これにより、給水口31fから供給され、給水口対向側壁31eに沿って流れ落ちる水21は、誘水リブ31kによって流れる方向が規制され、導通センサ33a、33bの上方を覆う庇31jにより導通センサ33a、33bにかかるのが回避され、導通センサ33a、33bに水滴として付着するのがより効果的に防止されることになる。これにより、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのをさらに確実に防止することができる。
このように、水溜め容器31内に貯留された水21の水位状態が誤検出されるのを防止することにより、正確に検出された水位状態に基づいて水溜め容器31内に貯留された水21の水位を適正範囲に維持することが可能となり、超音波振動子32の劣化や破壊を防止することができる。しかも、水溜め容器内31の水位を安定させ、水温を適正な温度範囲に維持することにより、適正なミスト発生量を維持して、衣類表面を効果的に適正な乾燥率に湿らせることができ、優れたシワ低減効果を発現させることができる。
ここで、回転ドラム4内の隅々にまでミスト20を充満させるには、ミスト20の浮遊性が重要となる。すなわち、十分な浮遊性を確保するためには、粒径が10μm未満のミスト20を用いるのが望ましい。ミスト20の粒径が10μm以上になると、ミスト20自身の重量により簡単に落下し、回転ドラム4内に充満させるには効率が悪い。しかし、粒径10μm以上のミスト20は、ウェットミストと呼ばれ、高い濡れ性を有するという特徴がある。すなわち、粒径10μm以上のウェットミストは、回転ドラム4内に導入するまでの途中の管路に衝突することにより、その管路に凝縮して付着しやすく、回転ドラム4内に到達するまでに量が減少してしまう。さらに、粒径10μm以上のウェットミスト同士が互いに結合して、さらに大きな粒径のミスト20になり、前記の管路への付着現象が顕著になる傾向がある。しかしながら、本実施の形態では、接続口31gを導風口18の上方近傍に位置させており、移動経路を極力短く設定しているため、ウェットミストの減少を極めて少量に抑えることができる。
一方、粒径10μm未満のミスト20は、ドライミストと呼ばれ、浮遊性が高く、粒径が小さいことから表面張力が大きく、低い濡れ性を有するという特徴があるため、途中の管路には付着せずに、効率的に回転ドラム4内にまで到達させ、回転ドラム4内を粒径10μm未満のミスト20で充満させることができる。しかしながら、粒径10μm未満のドライミストは、そのままでは濡れ性が低いので、回転ドラム4内に充満させても、衣類を十分に湿らせるまでには至らない。そこで、本実施の形態では、水溜め容器31内の水温をできるだけ高い温度に維持し、超音波振動子32を作動させてミスト20を発生させている。ミスト20を発生させる場合、水溜め容器31内の水温が高いほど、発生するミスト20の量(霧化量)が増大する(霧化効率が向上する)とともに、発生するミスト20の温度も高くなるので、この高い温度のミスト20を回転ドラム4内に充満させると、粒径10μm未満のドライミストでも、ミスト20の温度よりも低い温度にある衣類の表面および回転ドラム4の周壁4a等に容易に凝縮して結露し、このとき回転ドラム4を回転駆動させ、衣類をかき混ぜることにより、衣類全体を効率的に湿らせることができる。
しかしながら、超音波振動子32には前述したように使用上限温度が存在し、水溜め容器31内の水21の温度が上昇し、この上限温度を超えて使用すると、単位時間当たりのミスト20の発生量が変化するだけでなく、超音波振動子32が劣化したり、破壊されたりすることがある。本実施の形態において使用される超音波振動子32は、チタン酸ジルコン酸鉛等からなる圧電セラミックス体と、その下面および外周面に溶融銀を塗って固形化した電極とを有し、その表面はステンレス箔やチタン箔からなる表面保護材で覆われることで保護されており、電極が配された圧電セラミックス体と表面保護材とはエポキシ樹脂系等の接着剤を用いて接着されている。したがって、水溜め容器31内の水温を、超音波振動子32の使用上限温度である50℃以下の適正な温度範囲(例えば、45〜50℃)に維持することにより、超音波振動子32の劣化を抑制することができ、さらに、長期間にわたって良好な高温ミストの発生性能を維持することができる。
以上の霧化ユニット30を用いたドラム式洗濯乾燥機1において、衣類のシワをのばして低減することを目的とした「シワのばしコース」を実行する際の動作について、以下に説明する。
水溜め容器31内の水温を超音波振動子32の使用上限温度を超えない範囲でできるだけ高い温度(所定温度)、例えば50℃に維持し、この水溜め容器31の底壁31aに配設された超音波振動子32を作動させて、高温のミスト20を発生させ、循環送風経路9を経由してドラム式洗濯乾燥機1の回転ドラム4内に導入する。ここで、水溜め容器31内に加熱手段を配置して、この加熱手段により水溜め容器31内の水温を上昇させることも可能であるが、本実施の形態においては、水溜め容器31内の貯水容量を少なくするとともに、超音波振動子32を発振させることにより、水溜め容器31内の水温を上昇させている。すなわち、簡単な構成で安価に高温のミスト20を発生させることができるように構成している。
このような高い水温でミスト20を発生させ、回転ドラム4内に導入し、前述したように、ウェットミストとドライミストとを回転ドラム4内の隅々にまで充満させて、回転ドラム内全体にわたって均一に湿度を上昇させるとともに、回転ドラム4を低い回転速度で回転駆動させることにより、衣類のどの表面部分にも水分が凝縮して満遍なく衣類を湿らせることができる。
そして、このように衣類全体が湿った状態となった後に、回転ドラム4および送風ファン12を高い回転速度で回転駆動させ、蒸発器10および凝縮器11を起動して乾燥運転を実行することにより、衣類に付いたシワが水分により解放され、このような状態の衣類をかき混ぜることにより、シワをのばして低減することができる。
本実施の形態における霧化ユニット30には、側壁31bに開口堰31dが設けられ、霧化ユニット30を起動させる最初の段階で、注水装置33から水溜め容器31に水21を注入して、開口堰31dからオーバーフローさせる動作を自動的に行うように制御している。この開口堰31dは水溜め容器31の底壁31aから少なくとも20mm以上の高さ位置に設けられており、過度に水位が低下した状態で超音波振動子32を作動させることにより、超音波振動子32が劣化しやすくなるのを防止している。
さらに、本実施の形態においては、ミスト20を回転ドラム4内に導入する際に、送風ファン12を低い回転速度で回転させてもよい。このときの循環送風経路9内での空気流の送風量はとしては、0.05m3 /min〜1.00m3 /minが望ましい。この送風量が0.05m3 /min未満であると、ウェットミストが回転ドラム4内に導入される際に、回転ドラム4内にある衣類が障害となって、回転ドラム4内に十分入り込めず、その一部が水槽3と回転ドラム4との間に流れ落ちることもあり、さらに、ドライミストの回転ドラム4内に導入される量が減って、前述したような効果が十分に得られないことになる。また、循環送風経路9内での空気流の送風量が1.00m3 /minを超えると、ウェットミストが乾燥空気送風管路14(上部管路17)の管壁に衝突してウェットミストの存在比率を減少させることになる。
実施の形態に係る霧化ユニット30に貯留される水21と発生させたミスト20の流れについては詳しく前述したので、つぎに、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1の循環送風経路9(上部管路17)と霧化ユニット30における接合構造との関係について、図11に基づいて補足的に説明する。図11は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路と霧化ユニット周辺での水およびミストの流れを説明するための背面断面図である。
霧化ユニット30に貯留される水21は、前述したように、水溜め容器31の上方に設けられた給水口31fから導入され、誘水板31kの上を給水口対向側壁31eに向かって流れ、誘水板31kと給水口対向側壁31eとの間に形成された隙間31lから給水口対向側壁31eに沿って貯留水域に流れ落ち、貯留される。また、ミスト20は、超音波振動子31の発振により水溜め容器31内の空間で発生し、上部管路17との接続口31gを介して循環送風経路9に導入される。図11において、水溜め容器31内の水21およびミスト20の流れが黒く塗りつぶされた矢印で示され、領域Aで示される部分の内面が水21が流れる領域であり、領域Bで示される部分の内面が水21が貯留される領域であり、領域Cで示される部分の内面および領域Bで示される部分の循環送風経路9側の外面がミスト20が付着して水21で濡らされる領域である。
通常、循環送風経路9の上部管路17と霧化ユニット30は、それぞれ前面側の成形品と背面側の成形品とを樹脂成形により製作し、双方の成形品を互いに溶着して接合することにより完成品となる。本実施の形態に係る霧化ユニット30では、水溜め容器31内を流れ、貯留される水21の流れは、一部を開口堰31hからオーバーフローさせて上部管路17側に流す水21も含めて、非常に限定的な範囲(領域)に留まるものであり、また、上部管路17に放出されるミスト20の流れも、乾燥した空気の流れに乗せて接続口31gのすぐ下方に位置する導風口18から水槽3に送り込まれるため、非常に限定的な範囲(領域)に留まるものである。
すなわち、図11において領域A〜Cで示される範囲は、本実施の形態に係る霧化ユニット30によれば、いずれも限定的な範囲に留まるため、上部管路17および霧化ユニット30の製作に当たっての成形品の溶着部分も非常に限定された範囲に対して行えば良い。したがって、本実施の形態に係る霧化ユニット30ならびにこの霧化ユニット30を使用するドラム式洗濯乾燥機1の製造コストを低く抑えることができる。
上記の実施の形態においては、ミスト20発生中における水位検出の時間間隔を決定する安全係数nを2として、霧化ユニット30の最大ミスト発生条件にて水溜め容器31内に溜められた水21の水位がゼロレベルになるまで水21を消費する時間Tに対して1/2の時間が経過するまでの間に、水溜め容器31内に水21が満水水位になるように水21を補給し、時間Tの1/2の時間が経過した時点で水位センサ33により水溜め容器31内に溜められた水21の水位を検知し、満水状態になったか否かを判定している。この安全係数nは、1.5以上の値に設定されれば良く、好ましくは、上記の実施の形態において示したように、2に設定されるのが良い。安全係数nが1.5以上の値に設定されれば、単位時間当たりのミスト発生量が変化しても、超音波振動子32が発振している間に、水溜め容器31内に溜められた水21の水位が、超音波振動子32が劣化したり、破壊したりする恐れのある下限水位に至ることがなく、したがって、超音波振動子32の劣化や破壊を確実に防止することができる。安全係数nは2であれば、単位時間当たりのミスト発生量が大きく変化しても、より確実に水溜め容器31内に溜められた水21の水位が下限水位に至ることを防止でき、超音波振動子32の劣化や破壊をさらに確実に防止することができる。
なお、上記の実施の形態では、霧化ユニット30内のミスト発生源として水21を用いた例を説明したが、用途に応じて、Agイオン電解液、洗剤液、消臭液、除菌液等を用いてもよく、それぞれの液剤(ミスト発生源)に対応した効果を得ることができる。