ところで、霧化させたミストは、その粒径により浮遊性や表面張力(濡れ性)などの特性が異なる。すなわち、粒径10μm未満の超微細ミストは、ドライミストとも呼ばれ、極めて微細であるため、表面張力が高く、浮遊性が高いが、物に付着したときの濡れ性が低いといった特徴を有している。粒径10〜50μmの微細ミストは、ウェットミストとも呼ばれ、上記のドライミストと比較して粒子径が相対的に大きいため、表面張力が弱く、物に付着したときの濡れ性が高いといった特徴を有している。粒径50μmを越える比較的粗大なミストは、水滴に近い性質を持っている。
これらの中で、濡れ性に優れたウェットミストは、洗濯物である衣類等に付着して効率的に洗濯物を湿らせながら、乾燥過程で衣類等のシワを低減させることができるので、このウェットミストを多く含むミストを回転ドラム槽内に充満させることが、衣類等のシワを低減させる効果を得る上で重要である。また、霧化ユニットで発生するミストを衣類の置かれた場所にまで導き入れる際に、導入管路の管壁等にできるだけ衝突させることなく、すなわち、管壁等に凝結して損失されることなく、効率的に多くのミストを衣類の置かれた場所に送り込むことが重要である。
上記の特許文献1、2で開示された洗濯乾燥機や衣類乾燥機では、このような観点が欠如しており、したがって、必ずしも効率良く衣類等のシワを低減させたり、乾燥・脱臭したりすることができなかった。
しかも、特許文献1に開示された洗濯乾燥機では、噴霧装置から噴霧されたミストの一部はそのまま内槽内の衣類に達するものの、その他の大部分は温風循環経路の内壁面に衝突し、多くが内壁面で凝集して水滴となって損失された後、内槽へ達することになる。この洗濯乾燥機では、ミストが内壁面に衝突するときの破砕効果によりマイナスイオンが発生して静電気の除電効果を高めることができるとしているが、噴霧装置から噴霧されたミストの大部分が途中で消失して内槽内の衣類にまで届かず、衣類を湿らせて、シワを有効に低減するのは困難であるという問題があった。
また、特許文献2に開示された衣類乾燥機では、電解ミスト発生器が乾燥室の底板下に設けられた機械室に配置され、発生した電解ミストをヒータの下流側に供給して、ヒータからの熱風と混合することにより電解ミストを高温化した上で、ダクト室から上方に向けて放出し、複数のスリットや孔が形成された乾燥室の底板がなす吹き出し部を通して吹き出させ乾燥室に供給している。このような構成においては、吹き出し部に複数のスリットや孔が形成されているとは言え、大部分のミストはスリットや孔の形成されていない底板の下面に衝突して、凝集して水滴となって損失されることになる。したがって、このような衣類乾燥機では、電解ミスト発生器から発生したミストの大部分が途中で消失して、乾燥室内の衣類にまで届かないため、衣類を湿らせて、シワを低減することまではできないという問題があった。さらに、このように水滴が形成されて湿気たダクト室に熱風が供給されるため、湿気の多い熱風が乾燥室にも導入され、多少の脱臭効果は期待できても、衣類を十分に乾燥させることはできなかった。
なおかつ、ミスト発生手段を超音波霧化方式にした場合、時間あたりのミスト発生量は、水温、発振回路への入力電圧等により変化する。
例えば、1.6MHzで発振する超音波振動子を用いた場合、他の条件を固定し、水温のみを5℃から30℃に変化させると、ミスト発生量は約1.5倍になる。また、発振回路に入力する電圧のみを95Vから107Vに変化させると、ここでもミスト発生量は約1.5倍になる。
通常、前述した水温変化、電圧変化は家庭で普通に起こる変化であるため、ミスト発生量が最小条件の場合に、衣類の乾燥率を90%から96%になるように調整すると、ミスト発生量が最大条件ではミスト発生量が過剰になるため、衣類の乾燥率70%近くまで濡れてしまうため、湿らせる手段として採用したミストを用いる意味がなくなってしまう。
逆に最大条件で衣類の乾燥率を90%から96%になるようにミスト発生量を調整すると、最小条件では、衣類は殆ど湿らず乾燥率99%近辺にしかならないという問題があった。
また、1つの循環送風経路に熱空気導入路とミスト供給部を設置したミスト導入路とを併設して双方の機能を満足するには、通路構造が複雑になって大型化の原因になるし、循環送風経路での水槽に対する排気、送風を図る送風ファンを、循環送風経路内に設けたミスト供給部から供給するミストの水槽内への導入に併用する場合、通路構造の複雑さが関係して、循環送風経路内にミスト供給部を備えない場合の風量と比較して、圧力損失による風量低下を招く場合がある。このような風量低下があればその低下分だけ水槽へのミスト導入量が低下し、ミスト処理の必要時間が長くなるので、乾燥などへの移行が遅れ、乾燥工程の時間も長くなる。
これに対応するには送風ファンの回転数を上げる必要があり消費電力の無駄な増大となる。
本発明の目的は、循環送風経路の加熱空気導入路にミスト供給部を持ったミスト導入路を併設して、通路構造が簡単でかさ張らずミスト供給部からのミストを安定に導入できるドラム式洗濯乾燥機を提供することにある。
上記のような目的を達成するために、請求項1に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、送風ファンにより水槽内の空気を排気して除湿した後加熱し、前記水槽内に加熱空気導入路を経て温風供給口を通じ送風することを繰り返し、前記水槽に収容され多数の透孔を持ち回転軸線が水平か前面側から背面側に下方に傾斜した回転ドラム内の衣類等を乾燥させる循環送風経路と、この循環送風経路内に粒径が10〜50μmの濡れ性に富むウェットミストを主体とするミストを発生させて前記送風ファンによる送風を伴い前記温風供給口を通じ前記水槽内に導入されるようにするミスト供給部と、を備え、前記循環送風経路内において、この循環送風経路の前記温風供給口への連通口に前記ミスト供給部からのミストを導入するミスト導入路が、前記加熱空気導入路から仕切る仕切り壁を略上下方向に設けることで形成されるとともに、前記ミスト供給部の水貯め容器と前記ミスト導入路とを接続する接続口は前記温風供給口よりも高位に位置することを特徴としている。
この請求項1に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、ドラム式洗濯乾燥機が循環送風経路にウェットミストを供給するミスト供給部を持っていることによって、循環送風経路を通じ回転ドラム内の衣類等を湿らせあるいは濡らすミスト処理ができ、その後の循環送風経路本来の機能による衣類等に対する乾燥等との組み合わせにより、消臭やシワのばし等が行える。特に、循環送風経路における水槽への温風供給口に接続する接続口に加熱空気を導入する加熱空気導入路に対し、ミスト供給部からのウェットミストを前記接続口に導入するミスト導入路を仕切って併設したので、ミスト導入路においても単純な通路構造を経て途中での凝集なくスムーズに温風供給口へと導入し、回転ドラム内の衣類等を効率よく湿らせまたは濡らすことができる。
請求項2に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、前記ミスト導入路は、送風ファンによる送風をミスト供給部と循環送風経路に分流すると共に、分流後の送風の一部をミスト供給部に導入し、仕切り壁により循環送風経路に流れる送風からミスト導入路を流れる分流風が独立する構造を特徴とすることができる。
この請求項2に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、濡れ性に優れた粒径10〜50μmのウェットミストを主体とするミストを、ミスト供給部から前記接続口まで移動経路が短く、ミスト導入路をなす仕切り壁により、送風の分流をスムーズに起こし、しかも、循環送風経路に流れる送風ファンからの送風に乱されることなく微風によりミスト導入路から接続口を介して水槽内に導入されて自重で落下するという、移動経路の途中での他との衝突や接触による凝集を抑制する状態で、回転ドラム4内に導入して充満させ、優れた濡れ性を生かして衣類等の表面を効果的に湿らせあるいは濡らすことができ、その後の乾燥等との組み合わせによる、衣類等の消臭やシワのばしに好適となる。
請求項3に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、ミスト導入路は、循環送風経路の送風側最下流部にあって、その上流側に位置する循環送風経路の前記接続口への加熱空気導入路に隣接していることを特徴とすることができる。
この請求項3に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、送風側最下流部が加熱空気導入路をなして前記接続口に連通するだけの単純な循環送風経路において、その下流側に仕切りを有して延長し接続口に連通させたミスト導入路を設けてミスト供給部を収容するだけでよくなり、通路構造が単純化する。
請求項4に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、前記ミスト導入路は、循環送風経路の送風側内部に設けた略L字型のリブにより構成されたことを特徴とすることができる。
この請求項4に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、循環送風経路の内部に、仕切り壁として、断面形状が略L字型のリブを一体成型する、あるいは、別部品化した略L字型のリブをネジ止め、あるいは超音波溶着などで固定することで、簡単な構成で分流のための壁と循環送風経路から独立したミスト導入路を形成でき、仕切り壁により、送風ファンの送風をスムーズに分流し、循環送風経路に流れる送風に乱されることなく、ミスト供給部に発生させたミストをミスト導入路内に供給することで、発生させたミストを安定して水槽を介して回転ドラム内の衣類に供給することが容易になる。
請求項5に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、ミスト導入路の接続口への開口面積は、加熱空気導入路の前記接続口への開口面積よりも小さいことを特徴とすることができる。
この請求項5に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、両開口面積の大きさの関係を、加熱空気導入路およびミスト導入路で必要な最大風量の比率に見合ったものとして無理なく安定した送風ができるようにしながら、ミスト導入路側の開口を必要最小限に小さくできることにより、加熱空気導入路側からの最大風量時の逆流を抑えられる。
請求項6に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、ミスト導入路の開口面積は、ミスト供給部と循環送風経路との接続口面積よりも小さく、加熱空気導入路の前記接続口への開口面積よりも小さいことを特徴とすることができる。
この請求項6に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、3つの開口面積の大きさの関係を、加熱空気導入路およびミスト導入路で必要な最大風量の比率に見合ったものとして無理なく安定した送風ができるようにしながら、ミスト導入路側の開口を必要最小限に小さくできることにより、加熱空気導入路側からの最大風量時の逆流を抑えられる。
請求項7に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、ミスト専用ファンは、0.15m3/min程度の風量に設定して駆動することを特徴とすることができる。
この請求項7に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、ミスト供給部からのミストを浮遊させて他に衝突したり接触して凝集により損失することを防止して接続口へ速やかに導入されることを保証できる。
請求項8に係る発明のドラム式洗濯乾燥機は、上記において、さらに、前記ミスト供給部は、粒径が10〜50μmのウェットミストを主体とするミストを供給すると共に、粒径が10μm未満のドライミストも供給し、ミストの温度が、衣類表面温度よりも高いことを利用して、衣類表面に水分を凝縮あるいは凝集させることを特徴とすることができる。
この請求項8に係る発明のドラム式洗濯乾燥機のような構成では、濡れ性に富むウェットミストを損失少なく供給するだけでなく、浮遊性に優れているが濡れ性のないドライミストも積極的に衣類に供給し、ミスト発生に伴う温度上昇を利用してドライミストの温度と衣類表面温度の温度差を作り出し、この温度差により、ドライミストが衣類や回転ドラムに接触する際に起こる、凝縮、及び凝集の作用により衣類を湿らせることにより、より一層衣類を速やかに湿らせることを保証できる。
循環送風経路においてミスト供給部からウェットミストを供給して回転ドラム内の衣類等を湿らせあるいは濡らすミスト処理をして、その後の乾燥等との組み合わせにより、消臭やシワのばし等が行えうるが、ミスト供給のためのミスト導入路を、循環送風経路の温風供給口への接続口に加熱空気を導入する加熱空気導入路に対し仕切ってあるので、このような通路併設によっても、水槽への送風が互いに関係し合わずに、ミスト供給部からのウェットミストを送風ファンによる最適な送風を伴い、循環送風経路に流れる送風に邪魔されることなく単純な通路構造を経て途中での凝集を抑えてスムーズに接続口へと導入し、回転ドラム内の衣類等を効率よく短時間で湿らせまたは濡らすことができ、しかも、ミスト導入路側をなす部材が乾燥時の送風ファンによる送風を循環送風経路の温風供給口に接続する接続口に向けて整流する役目を果たし、加熱空気をスムーズに水槽を介して回転ドラムに導入することで乾燥機能を損なわないようにできる。
以下、本発明のドラム式洗濯乾燥機に係る最良の実施の形態について、図面に基づき説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る霧化ユニットを備えたドラム式洗濯乾燥機の構造・動作について、図1〜図4に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るドラム式洗濯乾燥機の構造を説明するための側面断面図であり、図2は、同ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路および霧化ユニットの配置を説明するための筐体背面側から見た斜視図である。また、図3は、同ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路および霧化ユニットの構造を説明するための筐体背面側から見た一部を切り欠いて示す断面図であり、図4は、同ドラム式洗濯乾燥機の霧化ユニットと水槽との接続構造を説明するための側面断面図である。
まず、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1は、洗濯乾燥機筐体2内に図示しないサスペンション構造によって水槽3がフローティング状態に配設され、水槽3内に有底円筒形に形成された回転ドラム4がその軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設されている。水槽3の正面側には回転ドラム4の開口端に通じる衣類出入口が形成され、洗濯乾燥機筐体2の正面側に形成された上向き傾斜面に設けられた開口部を開閉可能に閉じる扉5を開くことにより、衣類出入口を通じて回転ドラム4内に対して洗濯物を出し入れすることができる。扉5が上向き傾斜面に設けられているため、洗濯物を出し入れする作業を、腰を屈めることなく実施でき、一般には横向きにある開口部から洗濯物を出し入れするドラム式洗濯機の作業性の悪さが改善されている。
回転ドラム4には図1、図4に示すように、その周壁4aおよび底壁4bに水槽3内に通じる多数の周壁透孔4cおよび底壁透孔4fが形成されるとともに、その底壁4bには、水槽3の背面壁の上部に形成された温風供給口18に対向する円周方向に沿った複数位置に底面開口4dが形成されており、底壁4b裏面には図7、図8に示すように放射状リブ4gが複数位置形成され、さらに放射状リブ4gと交差するように円周方向に円周方向リブ4hが同心円状に2箇所形成されている。
また、周壁4a内面の複数位置に撹拌突起4eが設けられている。この回転ドラム4は、水槽3の背面側に取り付けられたモータ6によって正転および逆転方向に回転駆動される。また、水槽3には、給水管路7および排水管路8が配管接続され、図示しない給水弁および排水弁の制御によって水槽3内への給水および水槽3内からの排水がなされる。
扉5を開いて開口部から回転ドラム4内に洗濯物および洗剤(ただし、洗剤は注水初期に自動投入される場合がある)を投入して、ドラム式洗濯乾燥機1の運転を開始すると、水槽3内には給水管路7から所定量の注水がなされ、モータ6により回転ドラム4が回転駆動されて洗濯工程が開始される。回転ドラム4の回転により、回転ドラム4内に収容された洗濯物は回転ドラム4の内周壁に設けられた撹拌突起4eによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた適当な高さ位置から落下する撹拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗濯がなされる。
所要の洗濯時間が経過した後、汚れた洗濯液は排水管路8から排出され、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗濯液を脱水し、その後、水槽3内に給水管路7から給水してすすぎ・脱水工程が実施される。このすすぎ・脱水工程においても、回転ドラム4内に収容された洗濯物は、回転ドラム4の回転により撹拌突起4eにより持ち上げられて落下する撹拌動作が繰り返され、すすぎ洗いが実施される。そして、すすぎ洗いを実施した後、再度、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた水を脱水して、すすぎ・脱水工程を終了する。
このドラム式洗濯乾燥機1には、回転ドラム4内に収容した洗濯物を乾燥する機能が設けられ、水槽3内の空気を排気して除湿し、加熱した乾燥空気を再び水槽3内に送風する循環送風経路9が設けられている。この循環送風経路9の途中には、洗濯乾燥機筐体2内の下位の位置に、蒸発器10などの除湿手段、凝縮器11などの加熱手段および送風ファン12などの送風手段が設けられている。循環送風経路9は、水槽からの排気を図る水槽3から送風ファン12に至る間の循環空気導入管路13と、送風ファン12から水槽3に至る間の乾燥空気送風管路14とで構成されており、乾燥空気送風管路14おける水槽3背面壁に形成された温風供給口18に近接した上方の位置に霧化ユニット30が接続されている。
乾燥空気送風管路14は、洗濯乾燥機筐体2内の後方(水槽3の背面側)の空間において、上流側から順に、下部管路15、可撓ダクト16および上部管路17をもって構成されており、上部管路17の下流端の下方に連通口17aが開口され、この連通口17aは水槽3の背面に設けられた温風供給口18に接続されている。上部管路17は、その下方部分においては筐体2の中央寄りに傾斜して立ち上げられ、途中で略90°屈曲されて、その上方部分においては水槽3の温風供給口18に向けて下方に傾斜している。可撓ダクト16は、可撓性を有する管材を用いて構成され、回転ドラム4の回転あるいは始動・停止に伴う下部管路15の振動が送風ファン12側に伝達されるのを防止している。蒸発器10で除湿され、凝縮器11で加熱された乾燥空気は、乾燥空気送風管路14を経由して、この温風供給口18から水槽3、およびその内部に位置する回転ドラム4に送り込まれる。
送風ファン12を高速で回転駆動することにより、循環送風経路9に空気の流れが発生して、洗濯物を収容した回転ドラム4内の湿気た空気は、周壁4aに設けられた透孔4cを通じて水槽3から送風ファン12側への循環空気導入管路13に排気され、送風ファン12の上流に位置する蒸発器10により水分を結露させて除湿されるとともに、凝縮器11との熱交換により加熱されることにより、高温の乾燥空気とされる。
この加熱された乾燥空気は、送風ファン12から水槽3への乾燥空気送風管路14に送り出されて、水槽3に設けられた温風供給口18を介して水槽3内に送り込まれる。水槽3内に送り込まれた高温の乾燥空気は、回転ドラム4の底壁4bに設けられた底面開口4dおよび底壁透孔4fを通じて回転ドラム4内に導入され、衣類などの洗濯物の間を流通し、乾燥させながら、湿った空気となって周壁4aに設けられた透孔4cから水槽3へと抜け、再度、循環空気導入管路13へと導入される。このような循環送風経路9(循環空気導入管路13、乾燥空気送風管路14)での空気の循環により乾燥工程が実施される。
ここで、本実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1には、後述する霧化ユニット30および、回転ドラム4を回転させながら乾いた衣類のシワをのばして低減させることを目的とした「シワのばしコース」が設けられている。この「シワのばしコース」においては、蒸発器10および凝縮器11を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程におけるよりも低速で回転させるとともに、霧化ユニット30を起動させることにより、霧化ユニット30で微細な液滴からなるミスト20を発生させ、このミスト20を、乾燥空気送風管路14を流通する乾燥空気流に落とし込んで、詳しくは後述するが、ミスト20中に微細なウェットミストおよびドライミストが多く存在する状態で水槽3に送り込み、回転ドラム4内に導入する。このようにして、回転ドラム4内の隅々にまでミスト20を充満させ、衣類表面を効果的に湿らせて、乾燥状態にある衣類のシワを低減させるシワ低減効果を持たせた工程が実行される。さらに、その後、霧化ユニット30を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程と同じ速度にまで上昇させるとともに、蒸発器10および凝縮器11を動作させて、通常の乾燥運転を実施して、衣類を乾燥させながらその衣類のシワをのばすことができる。なお、上記の「シワのばしコース」においては、必ずしも回転ドラム4を回転させなくてもよい。
また、上記の「シワのばしコース」においては、上記のようにミスト20でシワを低減することが可能であるとともに、さらに以下の原理により脱臭効果も期待できるものである。通常、臭いは、臭い成分が分子として衣類表面に付着している。例えば、タバコ、焼肉の臭いなどがそうであるが、この臭い分子にミスト20がぶつかることで、臭い分子の繊維との結合を水分子と置換するか、あるいは水自身に溶かし込む作用により、衣類から脱離させる。そして、このようなミスト処理後に、乾燥運転を行い、臭い成分が溶解している水を高温低湿な空気により蒸発させることで、臭い分子が衣類に再付着することを防止し、脱臭することが可能となる。
ここで、綿や麻などのセルロース系繊維類のシワのばしメカニズムについて説明すると、衣類にできたシワは通常繊維同士が図13(a)に示すように水素結合して互いに拘束し合うことで安定化されている。そこで、衣類の繊維を均一に湿らせると図13(b)に示すように繊維同士の水素結合がなくなり、繊維同士が自由に動けるようになる。この状態で回転ドラム4を回転させて持ち上げて落して叩くことを繰り返すことで図13(c)に示すように繊維が伸び衣類のシワのばしができる。シワのばし後乾燥することで伸びた繊維同士が図13(d)に示すように再度水素結合して伸びた状態に固定し合い衣類はシワが延びた状態に安定する。
また、ミスト処理による消臭メカニズムについて説明する。衣類への臭いの付着は、図14(a)に示すように臭い分子が繊維と結合することでなされる。また、そこでで、繊維をミストで均一に濡らすと、水で濡らすような場合の乾燥負荷を増大させずにミスト粒子をなしている水分子が図 14(b)に示すように繊維に対する臭い分子の結合を水分子で置換し、臭い分子の結合を切り、繊維から離れやすくする。そこで、送風すると図14(c)に示すように繊維から離れやすくなっている臭い分子を衣類から持ち運んで消臭することができる。
したがって、本実施の形態のドラム式洗濯乾燥機1において、ミスト処理後に乾燥させることによって、シワのばしと消臭ができる。しかも、乾燥工程において水槽3、回転ドラム4内を経て排気される臭い分子を持ち運んでいる湿った空気は蒸発器10によって湿気を結露水として凝集されるが、この結露水に衣類から持ち運んできた臭い分子が捕捉されて結露水と共に排水されるので、一旦衣類から分離され循環空気によって持ち運ばれた臭い分子が循環して衣類に付着することはない。
次に、本発明に係る霧化ユニット30の構成および「シワのばしコース」について、図5、図6および前掲の図面に基づき詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1の霧化ユニットの構造を説明するための側面断面図であり、図6は、その背面断面図である。
霧化ユニット30は、この温風供給口18に近接した上方の位置に配設され、ミスト発生源としての水21を貯留する水貯め容器31と、水貯め容器31に貯留された水21に対して超音波振動を加える超音波振動子32と、水貯め容器31に水21を注入する注水装置33と、水貯め容器31内の水温を測定する水温センサ25と、を備えて構成されている。そして、霧化ユニット30の水貯め容器31が、水槽3の背面において温風供給口18に隣接した上方位置に配置され、温風供給口18の上方に位置する接続口31eを介して直接乾燥空気送風管路14(循環送風経路9)の上部管路17に接続されている。
水貯め容器31は、水槽3の背面外側に隣接して固定され、水貯め容器31の水槽3に対向する前方側の側壁31bが水槽3の背面に沿って鉛直方向に対して傾斜して形成され、後方側の側壁31bが洗濯乾燥機筐体2の背面パネルに沿って鉛直方向に形成され、水貯め容器31の底壁31a側が幅広に形成されている。
この水貯め容器31には、ミスト発生源としての水21が貯留されており、その上部にこの水21を注水装置33から注入する注水口31cが設けられ、上部管路17に対向する側の側壁31bに開口堰31dが設けられ、これにより、温風供給口18の上方部分で上部管路17に接続する接続口31eが設けられている。注水口31cから水貯め容器31内に注入された水21をこの開口堰31dから接続口31eを介して温風供給口18上方の上部管路17にオーバーフローさせることにより、簡単な構成で水貯め容器31内の水21を一定の水位に保つように構成している。なお、この開口堰31dからオーバーフローした水21は、接続口31e、上部管路17および温風供給口18を介して水槽3に送給され、排水管路8を経由して機外に排出される。
超音波振動子32は、超音波振動を発生させる圧電素子の振動面32aを水貯め容器31の底壁31aに密着させて配置されており、圧電素子を作動させることにより、超音波発信方向32b(振動面32aに垂直な方向)に超音波振動が伝達されて水貯め容器31内の水21に液柱22が形成される。なお、図6に示すように、超音波振動子32は、振動面32aが接続口31eの反対側に向くように傾斜して取り付けられているので、液柱22は、接続口31eの反対側の側壁31b内面方向に向いて形成される。この液柱22の形成に伴い、矢印で示すように水貯め容器31内の水21には液柱22に沿って上昇し、側壁31b内面に沿って下降および上昇する、水21および空気の対流が発生する。それとともに、この液柱22を通して伝達された超音波振動が水21の表面を微細に振動させ、これにより液柱22の先端付近の表面張力を弱めて、液柱22の微細な振動に応じた微細な液滴であるミスト20(霧)を発生させ、このミスト20は、前記した水21の対流運動に押し出されるようにして超音波発信方向32bに向けて放出される、水21および空気の対流に従って側壁31b内面に沿って下降および上昇し、その後、貯留された水21の表面および側壁31b内面に沿って接続口31eを介して温風供給口18上方の上部管路17に放出される。そして、上部管路17に放出されたミスト20は、すぐ下方の温風供給口18から水槽3に送り込まれ、さらに、回転ドラム4の底面開口4dと底壁透孔4fを介して回転ドラム4内に導入される。
さらに、本実施の形態においては、ミスト20を回転ドラム4内に導入するために、図3、図6に示すように、霧化ユニット30およびミスト導入路109を、循環送風経路9における送風側で前記温風供給口18に連通口17aで連通し加熱空気導入路をなす上部管路17に、この上部管路17の延長部分として一体に併設して、互いを上部管路17の2つ割り部材の一方または双方に一体形成した仕切り壁36によって仕切ってある。具体的には、前記仕切り壁36は上方から見て略L型断面形状をなし、上部管路17に流れる送風を、連通口17aに流れる送風と接続口31eに流れる分流風に分流し、接続口31eに向かう分流風は水貯め容器31内部に発生しているミストをミスト導入路109に押し出すようにし、1つの循環送風経路9を利用して、加熱空気とミストとを水槽3から回転ドラム内に導入できるようにしている。なお、仕切り壁36を別部品として上部管路内部にネジ止め、あるいは超音波溶着などにより固定する構造にしても同様の効果が得られる。
このように、循環送風経路9における水槽3への温風供給口18に接続する連通口17aに加熱空を導入する加熱空気導入路である上部管路17に対し、ミスト供給部である霧化ユニット30からのミスト20を前記連通口17aに導入するミスト導入路109を仕切り壁36により仕切って併設したので、上部管路17およびミスト導入路109共に図に示すような、互いが関係し合わない簡単でかさ低い通路構造として、しかも、ミスト導入路109側が独立風路をなすように仕切られているため、分流後の分流風が直接ミスト導入路109に流れ込むことにより発生する乱流を防ぎ、スムーズに分流が起こるため、分流により直接連通口17aに流れる送風とミスト導入路109を介して連通口17aに流れる分流風の総風量は、元々の送風ファン12が発生させる風量に比較して殆ど無視できる程度の損失しか発生しないため、循環送風経路9での送風ファン12による排気、除湿、加熱、送風を伴う回転ドラム4内の衣類等に対する乾燥機能を損うことはないし、ミスト導入路109においても循環送風経路9における送風側の上部管路17の影響はなく、霧化ユニット30からのミスト20を送風ファン12からの最適な送風を伴い単純な通路構造を経て途中での凝集なくスムーズに連通口17aへと導入し、温風供給口18、水槽3を経て回転ドラム4内の衣類等を効率よく湿らせまたは濡らすことができる。
ところで、霧化ユニット30により発生するミスト20は、その粒径により浮遊性や表面張力(濡れ性)などの特性が異なる。すなわち、粒径10μm未満の超微細ミストは、ドライミストとも呼ばれ、極めて微細であるため、表面張力が高く、浮遊性が高いが、物に付着したときの濡れ性が低いといった特徴を有している。粒径10〜50μmの微細ミストは、ウェットミストとも呼ばれ、上記のドライミストと比較して粒子径が相対的に大きいため、表面張力が弱く、物に付着したときの濡れ性が高いといった特徴を有している。粒径50μmを越える比較的粗大なミストは、水滴に近い性質で、浮遊性が殆どないため霧化ユニットから外部に出ることはなく、再び水貯め容器31内の貯め水21部分に落下する性質を持っている。
そして、霧化ユニット30で発生したミスト20は、温風供給口18まで移動する間に水貯め容器31の側壁31bや上部管路17の管壁に衝突したり、あるいは、互いに凝集したりして、次第に粗大ミストが脱落分離され、微細なウェットミストがその存在比率を増していく。そして、ウェットミストを主体とする状態で回転ドラム4内に導入される。
ここで、ウェットミストを主体とする状態のミスト20とは、ウェットミストが体積存在率で全体の50%を超える状態であり、レーザ回折散乱法による測定装置で測定されミスト20の粒度分布において、平均粒径(メディアン径D50)が10〜50μmの範囲にある状態を意味する。
ミスト20が温風供給口18まで移動する間の経路が長かったり、その経路途中に屈曲部が存在したりすると、微細なウェットミストまでが凝集して脱落分離され、ミスト20中のウェットミストの存在比率が減少し、ドライミストを主体としたミスト20になるため、望ましくない。上記した構成によると、霧化ユニット30で発生したミスト20が、温風供給口18の上方に位置する霧化ユニット30(水貯め容器31)と乾燥空気送風管路14(上部管路17)と仕切り壁36でなすミスト導入路109から、乾燥空気送風管路14に送り込まれ、自重で落下し、温風供給口18から、ウェットミストを主体とする状態で水槽3に落とし込まれ、さらに回転ドラム4内に導入される。しかも、送風ファン12を低速で動作させ補助的に使うことで、微風状態の分流風を接続口31eから導入し、ミスト導入路109に導くことで、水貯め容器31内に留まっているミストも効果的に押し出すことができ、浮遊した状態で、途中他に衝突したり接触して凝集されることなくミスト20が乾燥空気流中に導き入れられることになる。
そこで、濡れ性に優れた粒径10〜50μmの微細なミストを途中での凝集を抑えて回転ドラム4に導入するために、ミスト導入路109は図3、図6に示すように、上部管路17の上方から前上部管路17まで下方へ延びて設けた単純で短い通路とし、なおかつ、上部管路17と水貯め容器31の接続部分を前方の前記ミスト導入路109と後方の接続口31eの2つに分離するように、略L型断面を持つ仕切り壁36で構成され、ミスト導入路109は独立した風路をなすことで、上部管路17を流れる送風の影響を受けずに、送風の一部を分流して独立した分流風としてミスト導入路109にミストを流せるようにして、下方の連通口17aに至らせ、温風供給口18から水槽3、回転ドラム4内に導入されるようにしている。
これにより、濡れ性に優れた粒径10〜50μmのウェットミストを主体とするミスト20を、霧化ユニット30から連通口17aまで移動経路が短く、しかも、連通口17aの上方から、送風ファン12からの微風に浮遊して連通口17aから水槽3内に導入されて自重で落下するという、移動経路の途中での、上部管路17に流れる送風の影響による衝突や接触による凝集を抑制する状態で、回転ドラム4内に導入して充満させ、優れた濡れ性を生かして衣類等の表面を効果的に湿らせあるいは濡らすことができ、その後の乾燥等との組み合わせによる、衣類等の消臭やシワのばしに好適となる。
さらに詳述すると、ミスト導入路109は、循環送風経路9の送風側上部管路17の最下流部にあって、その上流側に位置する循環送風経路9の連通口17aに接続した加熱空気導入路である上部管路17に隣接している。これにより、送風側最下流部が加熱空気導入路をなして連通口17aに連通するだけの単純な循環送風経路9において、その下流側に仕切り壁36を有して延長し連通口17aに接続させたミスト導入路109を設けてミスト供給部である霧化ユニット30、および水貯め容器31の上方に突出した頂部における注水ホース34を接続した注水口31cを収容するだけでよくなり、通路構造が図示のように単純化する。
また、ミスト導入路109の開口面積(断面積)は、上部管路17の連通口17aへの開口面積よりも小さくしてある。これにより、両開口面積の大きさの関係を、上部管路17およびミスト導入路109で必要な最大風量の比率に見合ったものとして無理なく安定した送風ができるようにしながら、ミスト導入路109側の開口を必要最小限に小さくできることにより、上部管路17側からの最大風量時の逆流を抑えられる。
また、ミスト導入路109の開口面積(断面積)は、水貯め容器31と上部管路17との接続部分である接続口31eの開口面積よりも小さく、上部管路17の連通口17aへの開口面積よりも小さくしてある。これにより、3つの開口面積の大きさの関係から、上部管路17および接続口31eおよびミスト導入路109の順に送風が流れにくくなり、安定した微風をミスト供給部30に供給でき、かつ、上部管路17側からの最大風量時の逆流を抑えられる。
なお、送風ファン12は、0.15m3/min程度の風量に設定して駆動することにより、霧化ユニット30からのミスト20を浮遊させて他に衝突したり接触して凝集するのを防止して連通口17aから温風供給口18へと導入されることを保証できる。この際、図示しない排水弁を開いて、回転ドラム4内の圧力を抜くことで、より一層、ミストを回転ドラム4内に導入しやすくすることもできる。
このように、循環送風経路9の一部をなす送風ファン12を駆動してミスト20を供給すると、ミスト導入路109に流れ込むミスト20の挙動を乱すことなく、回転ドラム4内の圧力の抜けを同時に促進し、回転ドラム4内へのミスト20のスムーズな導入をミスト供給初期から達成することができる。それには、送風ファン12は、0.07〜0.15m3/min程度の風量に設定して駆動するのが好適で、通常の乾燥工程における定格運転時(送風ファン12を定常速回転5800rpmで回転させ、乾燥空気送風管路14に2.2m3/minの風量の乾燥空気が送り込まれる)に対して、送風ファン12の回転速度で1/10程度、送風量で1/3程度に相当し、例えば、500rpm程度の回転速度となる。
注水装置33は、水貯め容器31においてミスト20の発生により消費された水21を補給するためのものであり、注水装置33の下方に設けられた給水口33aと水貯め容器31の注水口31cとの間は注水ホース34によって接続され、その間の適所に開閉弁(図示せず)を備えている。注水装置33は、霧化ユニット30を起動させた最初の段階で、開閉弁を開いて、水貯め容器31内に水が溜まるのに十分な所定時間だけ、注水装置33の給水口33aから注水ホース34を介して水21を送給するとともに、過剰な水21を側壁31bの開口堰31dからオーバーフローさせて、水貯め容器31内の水21を一定の水位に保つ。この起動初期における注水動作は、休止中に蒸発等により減った水貯め容器31内の水21を補充し、あるいは、水が減っていない場合にも新しい水に完全に入れ替えるだけ補充し、常に一定水位の状態下で霧化ユニット30を運転するためのものである。
水温センサ25は、サーミスタ等を用いて構成され、水貯め容器31内の水温を測定するものである。水温センサ25により測定された水温が所定温度(超音波振動子32の使用上限温度あるいはそれより少し低い温度に設定)を超えた場合には、注水装置33から水21を補給して、水温を下げ、常に水貯め容器31内の水温が上記の所定温度を超えないようにする。なお、水21の補給を時間制御で行う場合には、水温センサ25を装着しなくてもよい。この場合、ミストが最も発生する条件における水21の消費量と、水21の水温上昇を考慮して、水21がなくなることで空焚きになる条件、および水21の水温が上昇することで超音波振動子32の破損する条件になる以前に、水21の補給を行うように補給タイミングを決定する。
さらに、「シワのばしコース」においては、必ずしも回転ドラム4を回転させなくても衣類のシワ低減効果が得られるが、本実施の形態では上述したように、回転ドラム4を回転させている。回転ドラム4内にある衣類は常温の乾燥した状態にあるのに対して、超音波振動子32の発振により水貯め容器31内の水温が上昇するため、発生するミスト20は衣類表面温度と比較して高い温度になる。したがって、ドライミストも高い温度の状態で回転ドラム4内に導入することができるため、ウェットミストだけでなく、ドライミストも、ミストの温度よりも低い温度にある衣類の表面および回転ドラム4の周壁4a等に容易に凝集して微細な水滴として結露するが、このとき回転ドラム4を回転駆動させることにより、衣類がかき混ぜられ、ドライミストを含むミスト20が衣類に邪魔されずに回転ドラム4内に導入することができ、衣類全体をさらに効率的に湿らせることができる。
本実施の形態においては、ミスト20を接続口31eから乾燥空気送風管路14に送り込み、自重により落下させ、空気流に乗せて、温風供給口18から水槽3、さらには回転ドラム4内に導入するとともに、ミスト導入時(霧化ユニット起動時)においては、回転ドラム4を衣類がかき混ぜられる45rpm程度の回転速度で静かに回転させている。このように、回転ドラム4を静かに回転させることにより、そのままでは回転ドラム4内の底部付近に滞留しやすいウェットミストを、底面開口4dおよび底壁透孔4fの回転により発生する旋回流と、送風ファンの送風の効果によって、回転ドラム4内の隅々にまで充満させることができ、回転ドラム4内の衣類を濡れ性の高いウェットミストにより効果的に湿らせることができる。そして、このような状態の衣類を乾燥することにより、衣類に入ったシワを効果的に低減することができる。
本発明者の詳細な検討によれば、洗濯物を湿らせる際に、乾燥率90〜96%(理想的には95%)で均一に湿らせるとともに、乾燥する際に、乾燥率99%以上に乾燥させることが重要であることが分かってきた。なお、ここでいう乾燥率とは、洗濯する前の状態での洗濯物の重量を湿らせた後の洗濯物の重量で除した値に100を掛けて%表示したものである。
以上のようなウェットミストを回転ドラム4内の隅々にまで充満させるため、回転ドラム4を静かに回転させるときの回転速度は15〜80rpmが適当であり、この回転速度が15rpm未満であると、温風供給口から導入されたミスト20の一部が回転ドラム4の底部付近に滞留することになり、回転速度が80rpmを超えると、ミスト20の一部が遠心力で回転ドラム4の側壁の方に押しやられ、側壁等に衝突してウェットミストの存在比率を減少させることになる。
本実施の形態で用いている超音波振動子32の時間あたりのミスト発生量は、水貯め容器31内の水21の水温、及び超音波振動子32を駆動する発振回路部37への入力電圧等の変化により増減する。
例えば、1.6MHzで発振する超音波振動子32を用いた場合、他の条件を固定し、水温のみを5℃から30℃に変化させると、ミスト発生量は約1.5倍になる。また、発振回路に入力する電圧のみを95Vから107Vに変化させると、ここでもミスト発生量は約1.5倍になる。
通常、前述した水温変化、電圧変化は家庭で普通に起こる変化であるため、仮にミスト発生量が最小条件の場合でも、シワのばしに最適な衣類の乾燥率を90%から96%になるような調整をすると、ミスト発生量最大条件ではミスト発生量が過剰になり衣類が乾燥率70%近くまで、なおかつ不均一に濡れてしまうため、ミスト用いる意味がなくなってしまう。
逆にミスト発生量最大条件で衣類の乾燥率を90%から96%になるようにミスト発生量を調整すると、最小条件では、衣類は殆ど湿らず乾燥率99%近辺に留まるため、シワのばしの効果が得られない。
したがって、衣類を効果的に処理しようとすると、水温一定、入力電圧一定に保つことが望ましいが、水温計測手段、水温調整手段及び、入力電力測定手段、入力電圧調整手段が必要になる。
本実施の形態では、複雑な水温調整手段、及び入力電圧調整手段を用いずに、ミスト処理結果を乾燥率90%から96%以内に安定化させている。
ミスト発生量が一番少ない低水温、低入力電圧の条件において、ミスト処理結果が乾燥率90%から96%になるように、発振回路の出力と超音波振動子32の霧化能力を決定する。
この霧化能力においてミスト発生量がもっとも多くなる高水温、高入力電圧の条件でミストを発生させると、前述したように、衣類に対して過剰なミストを供給することになる。
この過剰なミストを回転ドラム底壁4bの底壁透孔4fにトラップさせ、余剰ミストを集める。この際、底壁透孔4fとミストの接触効率の関係から、ミストの量に応じて、自然とトラップされるミスト量が決まり、ミストの量が少ない場合には接触効率が低いために殆どトラップされず、ミストの量が過剰な場合は接触効率が高くなるため多くのミストがトラップされることになる。
さらに、余剰ミストを集めてできた水分が回転ドラム4内に進入したり、回転により持ち上がった衣類に接触して、衣類に過剰で不均一な濡れが発生することを防ぐため、トラップし集めた水を重力、あるいは遠心力を利用して回転ドラム底壁4b裏面に設置した放射状リブ4gに沿わせて流し、さらに、前期放射状リブ4gと交差し、放射状リブ4gよりも寸法が高く水槽3側に突き出すように回転ドラム底壁4b裏面に設置した円周方向リブ4hを利用して、円周方向リブ4hのエッジから水槽3側に落とすことで、集めた水分を排出する。水槽3側に落とされた水分は、図示しない排水弁の制御によって水槽3内からの排水がなされる。
このように、水温の変化、入力電圧の変化の影響を受けて、超音波振動子32のミスト発生量が変化しても、回転ドラム4内に供給するミスト量を一定に保つことで、衣類のミスト処理結果を乾燥率90%から96%以内に安定化させ効果的に湿らせることができる。そして、このような状態の衣類を乾燥することにより、衣類に入ったシワを効果的に低減し、消臭することができる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、回転ドラム底壁4b裏面に放射状リブ4gと、放射状リブ4gよりも寸法が高く水槽3側に突き出すように円周方向リブ4hを構成していたが、本実施の形態2では、図9、図10(a)(b)に示すように、円周方向リブを放射状リブと交わる部分近傍のみ放射状リブより寸法が高く、それ以外の部分を放射状リブより低い寸法にしている。他の構成は、実施の形態1と同じである。
これにより、温風供給口18の前方に対向した前記回転ドラム底壁4bに衣類が張付いて、温風供給口18から水槽3、底面開口4d、回転ドラム底壁4bの順に流れる風の流れを塞いだ場合であっても、円周方向リブ4hの寸法が低い部分により回転ドラム底壁4b裏面の風の流れを自由にすることで、底壁4bの衣類で塞がれた部分を迂回して、回転ドラム内に風の流れが確保され、循環送風経路9内の空気流の送風がスムーズに行える効果があり、より一層短時間で衣類を湿らせることができ、同様に短時間で乾燥も行えるため、短い時間で衣類のシワを低減することができる。
(実施の形態3)
上記の実施の形態1では、回転ドラム底壁4b裏面に放射状リブ4gと、円周方向リブ4hを構成していたが、本実施の形態3では、図11、図12に示すように、底壁4bの一部を別部品にして、別部品化した底壁4iの裏面に放射状リブ4gと周方向リブ4hを構成している。別部品化した底壁4iの回転ドラム底壁4bへの固定は、別部品底壁4iから生やしたフック4jや、固定ネジ用ボス4kを用いてネジ止めすることによって行う。
なお、別部品底壁4iを回転ドラム底壁に組み付け、その合わせ目に隙間が生じる場合は、別部品底壁4iの裏面最外周付近にシールパッキン4lを設けて組み付ける構成にすれば良い。
これにより、別部品底壁4i裏面に形成した放射状リブ4gと円周方向リブ4hによる複雑な形状を、量産に適した一体成型品として構成可能になる。
また、回転ドラム底壁4bに別部品化した底壁4iを後で組み付ける工程にできるため、回転ドラム4の自体の組立て加工を簡便にすることができる。
なお、上記の実施の形態1〜3では、霧化ユニット30内のミスト発生源として水21を用いた例を説明したが、用途に応じて、Agイオン電解液、洗剤液、消臭液、除菌液等を用いてもよく、それぞれの液剤(ミスト発生源)に対応した効果を得ることができる。