以下、本発明のドラム式洗濯乾燥機に係る最良の実施の形態について、図面に基づき説明する。なお、下記に開示される実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、実施の形態で開示された内容ではなく、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれると解されるべきである。
まず、本発明の実施の形態に係るミスト生成装置を備えたドラム式洗濯乾燥機の構造・動作について、図1〜図4に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機の構造を説明するための側面断面図であり、図2は、ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路およびミスト生成装置の配置を説明するための筐体背面側から見た斜視図である。また、図3は、ドラム式洗濯乾燥機の循環送風経路およびミスト生成装置の配置と接続構造を説明するための筐体背面側から見た一部を切り欠いて示す断面図であり、図4は、ドラム式洗濯乾燥機のミスト生成装置と水槽との接続構造を説明するための側面断面図である。
まず、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1は、洗濯乾燥機筐体2内に図示しないサスペンション構造によって水槽3が宙吊り状態に配設され、水槽3内に有底円筒形に形成された回転ドラム4がその軸心方向を正面側から背面側に向けて下向きに傾斜させて配設されている。水槽3の正面側には回転ドラム4の開口端に通じる衣類出入口が形成され、洗濯乾燥機筐体2の正面側に形成された上向き傾斜面に設けられた開口部を開閉可能に閉じる扉5を開くことにより、衣類出入口を通じて回転ドラム4内に対して洗濯物を出し入れすることができる。扉5が上向き傾斜面に設けられているため、洗濯物を出し入れする作業を、腰を屈めることなく実施でき、一般には横向きにある開口部から洗濯物を出し入れするドラム式洗濯機の作業性の悪さが改善されている。また、ドラム式洗濯乾燥機1の動作を制御する制御部19が、洗濯乾燥機筐体2内の前面側下方(水槽3の下方位置)に配設されている。この制御部19は、操作パネル20により設定された設定内容に基づいて、下述するように、モータ5、蒸発器10、凝縮器11、送風ファン12や給水および排水のための各種開閉弁などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を逐次制御するものである。
回転ドラム4には、その周壁4aおよび底壁4bに水槽3内に通じる多数の透孔4cが形成されるととともに、その底壁4bには、水槽3に形成された導風口18に対向する円周方向に沿った複数位置に底面開口4dが形成されており、さらに、周壁4a内面の複数位置に攪拌突起4eが設けられている。この回転ドラム4は、水槽3の背面側に取り付けられたモータ6によって正転および逆転方向に回転駆動される。また、水槽3には、給水管路7および排水管路8が配管接続され、図示しない給水弁および排水弁の制御によって水槽3内への給水および水槽3内からの排水がなされる。
扉5を開いて開口部から回転ドラム4内に洗濯物および洗剤を投入して、ドラム式洗濯乾燥機1の運転を開始すると、水槽3内には給水管路7から所定量の注水がなされ、モータ6により回転ドラム4が回転駆動されて洗濯工程が開始される。回転ドラム4の回転により、回転ドラム4内に収容された洗濯物は回転ドラム4の内周壁に設けられた攪拌突起4eによって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた適当な高さ位置から落下する攪拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗濯がなされる。
所要の洗濯時間が経過した後、汚れた洗濯液は排水管路8から排出され、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗濯液を脱水し、その後、水槽3内に給水管路7から給水してすすぎ・脱水工程が実施される。このすすぎ・脱水工程においても、回転ドラム4内に収容された洗濯物は、回転ドラム4の回転により攪拌突起4eにより持ち上げられて落下する攪拌動作が繰り返され、すすぎ洗いが実施される。そして、すすぎ洗いを実施した後、再度、回転ドラム4を高速で回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた水を脱水して、すすぎ・脱水工程を終了する。
このドラム式洗濯乾燥機1には、回転ドラム4内に収容した洗濯物を乾燥する機能が設けられ、水槽3内の空気を排気して除湿し、加熱した乾燥空気を再び水槽3内に送風する循環送風経路9が設けられている。この循環送風経路9の途中には、洗濯乾燥機筐体2内の下位の位置に、蒸発器10などの除湿手段、凝縮器11などの加熱手段および送風ファン12などの送風手段が設けられている。循環送風経路9は、水槽3から送風ファン12に至る間の循環空気導入管路13と、送風ファン12から水槽3に至る間の乾燥空気送風管路14とで構成されており、循環空気導入管路13の上流端に循環送風経路9に空気を導入する空気導入部9aが設けられるとともに、乾燥空気送風管路14の下流端における水槽3底面に形成された導風口18に近接した上方の位置にミスト生成装置30が接続されている。そして、ミスト生成装置30においてミスト25を発生させるための超音波振動子32の発振を行う発振回路部37が、ミスト生成装置30に近接した上方位置にある洗濯乾燥機筐体2内の固定部(循環送風経路9に空気を導入する空気導入部9a)に配設されている。
乾燥空気送風管路14は、洗濯乾燥機筐体2内の後方(水槽3の背面側)の空間において、上流側から順に、下部管路15、可撓ダクト16および上部管路17をもって構成されており、上部管路17の下流端の下方に連通口17aが開口され、この連通口17aは水槽3の背面に設けられた導風口18に接続されている。上部管路17は、その下方部分においては筐体2の中央寄りに傾斜して立ち上げられ、途中で略90°屈曲されて、その上方部分においては水槽3の導風口18に向けて下方に傾斜している。可撓ダクト16は、可撓性を有する管材を用いて構成され、回転ドラム4の回転あるいは始動・停止に伴う下部管路15の振動が送風ファン12側に伝達されるのを防止している。蒸発器10で除湿され、凝縮器11で加熱された乾燥空気は、乾燥空気送風管路14を経由して、この導風口18から水槽3、およびその内部に位置する回転ドラム4に送り込まれる。
送風ファン12を高速で回転駆動することにより、循環送風経路9に空気の流れが発生して、洗濯物を収容した回転ドラム4内の湿気た空気は、周壁4aに設けられた透孔4cを通じて水槽3から送風ファン12側への循環空気導入管路13に排気され、送風ファン12の上流に位置する蒸発器10により水分を結露させて除湿されるとともに、凝縮器11との熱交換により加熱されることにより、高温の乾燥空気とされる。
この加熱された乾燥空気は、送風ファン12から水槽3への乾燥空気送風管路14に送り出されて、水槽3に設けられた導風口18を介して水槽3内に送り込まれる。水槽3内に送り込まれた高温の乾燥空気は、回転ドラム4の底壁4bに設けられた底面開口4dおよび透孔4cを通じて回転ドラム4内に導入され、衣類などの洗濯物の間を流通し、乾燥させながら、湿った空気となって周壁4aに設けられた透孔4cから水槽3へと抜け、再度、循環空気導入管路13へと導入される。このような循環送風経路9(循環空気導入管路13、乾燥空気送風管路14)での空気の循環により乾燥工程が実施される。
ここで、本実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機1には、後述するミスト生成装置30および、回転ドラム4を回転させながら乾いた衣類のシワをのばして低減させることを目的とした「シワのばしコース」が設けられている。この「シワのばしコース」においては、蒸発器10および凝縮器11を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程におけるよりも低速で回転させるとともに、ミスト生成装置30を起動させることにより、ミスト生成装置30で微細な液滴からなるミスト25を発生させ、このミスト25を乾燥空気送風管路14を流通する乾燥空気流に落とし込んで、詳しくは後述するが、ミスト25中に微細なウェットミストおよびドライミストが多く存在する状態で水槽3に送り込み、回転ドラム4内に導入する。このようにして、回転ドラム4内の隅々にまでミスト25を充満させ、衣類表面を効果的に湿らせて、乾燥状態にある衣類のシワを低減させるシワ低減効果を持たせた工程が実行される。さらに、その後、ミスト生成装置30を停止させ、回転ドラム4および送風ファン12の回転速度を通常の乾燥工程と同じ速度にまで上昇させるとともに、蒸発器10および凝縮器11を動作させて、通常の乾燥運転を実施して、衣類を乾燥させながらその衣類のシワをのばすことができる。なお、上記の「シワのばしコース」においては、必ずしも回転ドラム4を回転させなくてもよい。
また、上記の「シワのばしコース」においては、上記のようにミスト25でシワを低減することが可能であるとともに、さらに以下の原理により脱臭効果も期待できるものである。通常、臭いは、臭い成分が分子として衣類表面に付着している。例えば、タバコ、焼肉の臭いなどがそうであるが、この臭い分子にミスト25がぶつかることで、臭い分子を水の分子自身に溶かし込む作用により、衣類から脱離させる。そして、このようなミスト処理後に、乾燥運転を行い、臭い成分が溶解している水を高温低湿な空気により蒸発させることで、臭い分子が衣類に再付着することを防止し、脱臭することが可能となる。
次に、本発明に係るミスト生成装置30の構成および「シワのばしコース」について、図5、図6および前掲の図面に基づき詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機のミスト生成装置の構造を説明するための側面断面図であり、図6は、その背面断面図である。
ミスト生成装置30は、この導風口18に近接した上方の位置に配設され、ミスト発生源としての水26を貯留する水溜め容器31と、水溜め容器31に貯留された水26に対して超音波振動を加える超音波振動子32と、水溜め容器31に水26を注入する注水装置33と、水溜め容器31内の水温を測定する水温センサ35と、を備えて構成されている。そして、ミスト生成装置30の水溜め容器31が、水槽3の背面において導風口18に隣接した上方位置に配置され、導風口18の上方に位置する接続口31eを介して直接乾燥空気送風管路14(循環送風経路9)の上部管路17に接続されている。
水溜め容器31は、水槽3の背面外側に隣接して固定され、水溜め容器31の水槽3に対向する前方側の側壁31bが水槽3の背面に沿って鉛直方向に対して傾斜して形成され、後方側の側壁31bが洗濯乾燥機筐体2の背面パネルに沿って鉛直方向に形成され、水溜め容器31の底壁31a側が幅広に形成されている。
この水溜め容器31には、ミスト発生源としての水26が貯留されており、その上部にこの水26を注水装置33から注入する注水口31cが設けられ、上部管路17に対向する側の側壁31bに開口堰31dが設けられ、これにより、導風口18の上方部分で上部管路17に接続する接続口31eが設けられている。注水口31cから水溜め容器31内に注入された水26をこの開口堰31dから接続口31eを介して導風口18上方の上部管路17にオーバーフローさせることにより、簡単な構成で水溜め容器31内の水26を一定の水位に保つように構成している。なお、この開口堰31dからオーバーフローした水26は、接続口31e、上部管路17および導風口18を介して水槽3に送給され、排水管路8を経由して機外に排出される。
超音波振動子32は、超音波振動を発生させる圧電素子の振動面32aを水溜め容器31の底壁31aに密着させて配置されており、圧電素子を作動させることにより、超音波発信方向32b(振動面32aに垂直な方向)に超音波振動が伝達されて水溜め容器31内の水26に液柱27が形成される。なお、図6に示すように、超音波振動子32は、振動面32aが接続口31eの反対側に向くように傾斜して取り付けられているので、液柱27は、接続口31eの反対側の側壁31b内面方向に向いて形成される。この液柱27の形成に伴い、矢印で示すように水溜め容器31内の水26には液柱27に沿って上昇し、側壁31b内面に沿って下降および上昇する、水26および空気の対流が発生する。それとともに、この液柱27を通して伝達された超音波振動が水26の表面を微細に振動させ、これにより液柱27の先端付近の表面張力を弱めて、液柱27の微細な振動に応じた微細な液滴であるミスト25(霧)を発生させ、このミスト25は、前記した水26の対流運動に押し出されるようにして超音波発信方向32bに向けて放出される、水26および空気の対流に従って側壁31b内面に沿って下降および上昇し、その後、貯留された水26の表面および側壁31b内面に沿って接続口31eを介して導風口18上方の上部管路17に放出される。そして、上部管路17に放出されたミスト25は、すぐ下方の導風口18から水槽3に送り込まれ、さらに、回転ドラム4の底面開口4dを回転ドラム4内に導入される。
さらに、本実施の形態においては、ミスト25を回転ドラム4内に導入する際に、送風ファン12を500rpm程度の回転速度で回転させている。このときの循環送風経路9内での空気流の送風量は0.07m3 /minとなり、通常の乾燥工程における定格運転時(送風ファン12を回転速度5800rpmで回転させ、乾燥空気送風管路14に2.2m3 /minの風量の乾燥空気が送り込まれる)に対して、回転ファンの回転速度で1/10程度、送風量で1/30程度に相当している。このような弱い風量で乾燥空気送風管路14に空気を流通させることにより、ミスト25を導風口18から回転ドラム4内に押し込む風圧が作用して、適正に回転ドラム4内に導入することができるとともに、さらに、ウェットミストとともに、浮遊性の高いドライミストも同時に導風口18から回転ドラム4内に導入することができ、衣類の温度が常温近くにあり、ミスト25の温度が高い場合、衣類表面に水分が凝縮して、より一層効率的に衣類を湿らせることができる。
このような効果を得るための循環送風経路9内での空気流の送風量としては、0.05m3 /min〜1.00m3 /minが適当であり、この送風量が0.05m3 /min未満であると、ウェットミストが回転ドラム4内に導入される際に、回転ドラム4内にある衣類が障害となって、回転ドラム4内に十分入り込めず、その一部が水槽3と回転ドラム4との間に流れ落ちることもあり、さらに、ドライミストの回転ドラム4内に導入される量が減って上記の効果が十分に得られないことになる。また、循環送風経路9内での空気流の送風量が1.00m3 /minを超えると、ウェットミストが乾燥空気送風管路14(上部管路17)の管壁に衝突してウェットミストの存在比率を減少させ、かつドライミストも衣類に付着することなく、回転ドラム4内を通過してしまうことになる。
さらに、本実施の形態においては、図3および図6に示すように、水溜め容器31の乾燥空気送風管路14に繋がる接続口31eの上方部近辺に整流フィン36(整流手段)を設けている。整流フィン36は、接続口31eから乾燥空気送風管路14側に入った位置で乾燥空気送風管路14を水平に横断する板状の部材により構成されている。上述したように、「シワのばしコース」において送風ファン12を回転駆動したとき、乾燥空気送風管路14内に空気の流れが発生するが、整流ファン36を設けない場合、空気送風管路14内を流通してきた空気が接続口31eからミスト生成装置30(水溜め容器31)内部に入りにくいが、整流フィン36を設けることにより、破線矢印で示すように、空気の一部が整流フィン36の上方部分を通過することによって分岐され、接続口31eの上方部からミスト生成装置30内に導入され、その後、ミスト生成装置30内を循環して、接続口31eから再び乾燥空気送風管路14に戻る空気の流れが形成されることになる。このような状態の中で、ミスト生成装置30で発生したミスト25は、上述した空気の流れに乗って乾燥空気送風管路14に流れ込み、さらに、自重および空気の流れにより、導風口18に向けて落とし込まれ、水槽3、さらには回転ドラム4内に導入されることになる。
なお、液柱27は、上述したように接続口の反対側の側壁内面に向かって傾斜して形成されるので、液柱27によって水26が直接接続口を介して上部管路内にこぼれてしまうのを防止することができため、水溜め容器31内の水26の余分な減少を防止することができる。
注水装置33は、水溜め容器31においてミスト25発生により消費された水26を補給するためのものであり、注水装置33の下方に設けられた給水口33aと水溜め容器31の注水口31cとの間は注水ホース34によって接続され、その間の適所に開閉弁(図示せず)を備えている。注水装置33は、ミスト生成装置30を起動させた最初の段階で、開閉弁を開いて、水溜め容器31内に水が溜まるのに十分な所定時間だけ、注水装置33の給水口33aから注水ホース34を介して水26を送給するとともに、過剰な水26を側壁31bの開口堰31dからオーバーフローさせて、水溜め容器31内の水26を一定の水位に保つ。この起動初期における注水動作は、休止中に蒸発等により減った水溜め容器31内の水26を補充し、常に一定水位の状態下でミスト生成装置30を運転するためのものである。
水温センサ35は、サーミスタ等を用いて構成され、水溜め容器31内の水温を測定するものである。水温センサ35により測定された水温が所定温度(超音波振動子32の使用上限温度あるいはそれより少し低い温度に設定)を超えた場合には、注水装置33から水26を補給して、水温を下げ、常に水溜め容器31内の水温が上記の所定温度を超えないようにする。
ミスト生成装置30により発生するミスト25は、その粒径により浮遊性や表面張力(濡れ性)などの特性が異なる。すなわち、粒径10μm未満の超微細ミストは、ドライミストとも呼ばれ、極めて微細であるため、表面張力が高く、浮遊性が高いが、物に付着したときの濡れ性が低いといった特徴を有している。粒径10〜50μmの微細ミストは、ウェットミストとも呼ばれ、上記のドライミストと比較して粒子径が相対的に大きいため、表面張力が弱く、物に付着したときの濡れ性が高いといった特徴を有している。粒径50μmを越える比較的粗大なミストは、水滴に近い性質を持っている。
そして、ミスト生成装置30で発生したミスト25は、導風口18まで移動する間に水溜め容器31の側壁31bや上部管路17の管壁に衝突したり、あるいは、互いに凝集したりして、次第に粗大ミストが脱落分離され、微細なウェットミストがその存在比率を増していく。そして、ウェットミストを主体とする状態で回転ドラム4内に導入される。ここで、ウェットミストを主体とする状態のミスト25とは、ウェットミストが体積存在率で全体の50%を超える状態であり、レーザ回折散乱法による測定装置で測定されミスト25の粒度分布において、平均粒径(メディアン径D50 )が10〜50μmの範囲にある状態を意味する。
ミスト25が導風口18まで移動する間の経路が長かったり、その経路途中に屈曲部が存在したりすると、微細なウェットミストまでが凝集して脱落分離され、ミスト25中のウェットミストの存在比率が減少し、ドライミストを主体としたミスト25になるため、望ましくない。上記した構成によると、ミスト生成装置30で発生したミスト25が、導風口18の上方に位置するミスト生成装置30(水溜め容器31)と乾燥空気送風管路14(上部管路17)との接続口31eから、乾燥空気送風管路14に送り込まれ、自重で落下し、導風口18から、ウェットミストを主体とする状態で水槽3に落とし込まれ、さらに回転ドラム4内に導入される。しかも、送風ファン12が洗濯乾燥機筐体2内の下位の位置に配置され、この送風ファン12から乾燥空気送風管路14に乾燥空気が送り込まれるので、ミスト25が導入されるミスト生成装置30の接続口31eでは、送風ファン12からの風圧(動圧)の影響を受けることなく、ミスト25が乾燥空気流中に導き入れられることになる。
このように、ミスト生成装置30から導風口18まで移動経路が短く、しかも、自重で落下するように構成されているため、移動経路の途中でのウェットミストの凝集を抑制し、濡れ性に優れた粒径10〜50μmのウェットミストを主体とする状態でミスト25を回転ドラム4内に導入して充満させることができ、衣類表面を効果的に湿らせることができるとともに、このような状態の衣類を乾燥することにより、衣類に入ったシワを効果的に低減することができる。
さらに、「シワのばしコース」においては、必ずしも回転ドラム4を回転させなくても衣類のシワ低減効果が得られるが、本実施の形態では上述したように、回転ドラム4を回転させている。回転ドラム4内にある衣類は常温の乾燥した状態にあるのに対して、超音波振動子32の発振により水溜め容器31内の水温が上昇するため、発生するミスト25は高温になる。したがって、ドライミストも高温の状態で回転ドラム4内に導入することができるため、ウェットミストだけでなく、ドライミストも、ミストの温度よりも低い温度にある衣類の表面および回転ドラム4の周壁4a等に容易に凝縮して結露するが、このとき回転ドラム4を回転駆動させることにより、衣類がかき混ぜられ、ドライミストを含むミスト25が衣類に邪魔されずに回転ドラム4内に導入することができ、衣類全体をさらに効率的に湿らせることができる。
本実施の形態においては、ミスト25を接続口31eから乾燥空気送風管路14に送り込み、自重により落下させ、空気流に乗せて、導風口18から水槽3、さらには回転ドラム4内に導入するとともに、ミスト導入時(ミスト生成装置起動時)においては、回転ドラム4を衣類がかき混ぜられる45rpm程度の回転速度で静かに回転させている。このように、回転ドラム4を静かに回転させることにより、そのままでは回転ドラム4内の底部付近に滞留しやすいウェットミストを回転ドラム4内の隅々にまで充満させることができ、回転ドラム4内の衣類を濡れ性の高いウェットミストにより効果的に湿らせることができる。そして、このような状態の衣類を乾燥することにより、衣類に入ったシワを効果的に低減することができる。
このようなウェットミストを回転ドラム4内の隅々にまで充満させるため、回転ドラム4を静かに回転させるときの回転速度は15〜80rpmが適当であり、この回転速度が15rpm未満であると、導風口から導入されたミスト25の一部が回転ドラム4の底部付近に滞留することになり、回転速度が80rpmを超えると、ミスト25の一部が遠心力で回転ドラム4の側壁の方に押しやられ、側壁等に衝突してウェットミストの存在比率を減少させることになる。
次に、超音波振動子32の発振を行う発振回路部37およびその配設位置について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機のミスト生成装置の発振回路部を配置する空気導入部周辺の構造を説明するための斜視図であり、図8は、その平面図である。また、図9は、本発明の実施の形態に係るドラム式洗濯乾燥機のミスト生成装置の発振回路部の回路構成を説明するための回路図である。
ミスト生成装置30においてミスト25を発生させるための超音波振動子32の発振を行う発振回路部37は、例えば、図9に示すような3素子型のLC発振回路で構成することができ、図中のコイルLのインダクタンス成分に対応した発振周波数により超音波振動子32を発振させる。超音波振動子32を効率良く発振させるためには、超音波振動子32に負荷される発振周波数が設定周波数に対して変動しないことが重要であり、実際の使用状態において、図中におけるインダクタンス成分に影響を与える因子として、超音波振動子32のインピーダンス以外に、発振回路部37と超音波振動子32とを接続する配線38のインピーダンスがあり、特に、配線38の長さが長い場合には、配線38のインピーダンス増加により電圧降下が大きくなるため、超音波振動子32を発振させる際の効率を低下させることになる。したがって、ミスト生成装置30を効率良く作動させるためには、ミスト生成装置30(超音波振動子32)と発振回路部37との距離を可能な限り短くし、インダクタンス成分の変動を小さくすることが重要になる。
本実施の形態においては、図7、図8に示すように、ミスト生成装置30を水槽3に形成された導風口18の上方で水槽3の背面側上方位置に配設するとともに、発振回路部37をこのミスト生成装置30に近接した上方位置にある洗濯乾燥機筐体2内の固定部(具体的には、循環送風経路9の空気導入部9a)に配設している。このため、ミスト生成装置30と発振回路部37とが近接して配置され、これらの間を電気的に接続する配線38が短くなり、インピーダンスの増加を最小限に抑えることができる。これによって、超音波振動子32に負荷される電圧の降下が小さくなり、超音波振動子32に負荷されるインダクタンス成分が低下し、発振周波数が超音波振動子32の設定周波数からずれて変動するのを抑制することができる。また、発振回路部37を洗濯乾燥機筐体2内の固定部に配設しているので、回転ドラム4や送風ファン12の回転に伴う振動の影響を受けることなく、超音波振動子32に安定した発振周波数を負荷することができ、ミスト生成装置30のミスト生成効率を向上させることができる。
また、本実施の形態において、発振回路部37をミスト生成装置30に近接した上方位置にある空気導入部9aに近接して配設するとともに、ドラム式洗濯乾燥機1の動作を制御する制御部19を、発振回路部37と分離して洗濯乾燥機筐体2内の前面側下方(水槽3の下方位置)に配設している。制御部19は、操作パネル20により設定された設定内容に基づいて、モータ5、蒸発器10、凝縮器11、送風ファン12や給水および排水のための各種開閉弁などの動作を制御するものであるが、さらに、上記の発振回路部37に対する発振動作の制御や、ミスト生成装置30に備えられた水温センサ35により水溜め容器31内の水温を一定に保つための制御や、下述の変形例で示す、水位センサ39により水溜め容器31内の水位を一定に保つための制御もまた、この制御部19で実施される。
ドラム式洗濯乾燥機1の動作を制御する制御部19を、発振回路部37と分離して洗濯乾燥機筐体2内の適所(本実施の形態では水槽3の下方位置)に配設することにより、モータ5など、洗濯乾燥機1の構成要素を制御する制御部19から発生するノイズの影響が発振回路部37に及ぶのを防止して、ミスト生成装置30を安定して制御することができる。
また、循環送風経路9の空気導入部9aに近接して発振回路部37を配設することにより、制御回路の冷却効果も期待され、振動や熱による信頼性の低下も心配する必要がない。すなわち、ミスト生成装置30を作動させてミスト25を発生させて「シワのばし工程」を実行する時点では、空気導入部9aから循環送風経路9には空気が導入されないが、その直前の乾燥工程で空気が導入されており、空気導入部9aは、洗濯乾燥機筐体2内部において比較的温度の低い部分である。また、空気導入部9aは洗濯乾燥機筐体2に固定されており、回転ドラム4や循環送風経路9(送風ファン12)からの振動も伝達されない部分である。したがって、空気導入部9aに近接した位置に発振回路部37を配設することにより、制御回路の冷却効果も期待され、循環送風経路9からの熱の影響を受けることなく、回転ドラム4や循環送風経路9からの振動による信頼性の低下も心配する必要がない。また、空気導入部9aは、循環送風経路9と共通の風路中に配設されているため、ミスト発生装置30と発振回路部37との間の距離も短く設定することができるため、インピーダンスの増加を伴うこともない。
さらに、ミスト生成装置30と発振回路部37とを接続する配線38には、同軸ケーブルが使用され、外部からシールドされている。これにより、制御部19から発生するノイズの影響によるインダクタンス変動を抑制することができ、ミスト生成装置30において、ミスト25発生のための発振周波数が変動せず、安定した十分な量のミスト25を生成することができる。配線38のシールドは、上記の実施形態では同軸ケーブルを使用する例を示したが、電線外殻をシールドすることによっても実現することができる。
(上記実施の形態における変形例)
上記の実施の形態では、水溜め容器31の側壁31bに開口堰31d設けられ、ミスト生成装置30を起動させる最初の段階で、注水装置33から水溜め容器31に水26を注入して、開口堰31dからオーバーフローさせる動作を自動的に行うように構成していたが、図10に示すように、この開口堰31dに加えて、圧力検知式等の水位センサ39を水溜め容器31の底壁31aもしくはその周辺部に設けても良い。そして、この水位センサ39により測定された水位が、水溜め容器31の底壁31aから所定水位(例えば、10mm)未満となったときに、注水装置33から水溜め容器31に水26を注入するように構成すれば良い。これにより、ミスト生成装置30を起動させる最初の段階で注水装置33から水溜め容器31に自動的に注水する動作を行うことなく、過度に水位が低下している場合にだけ注水動作を実行することにより、水溜め容器31内の水位を所定水位以上に保って、超音波振動子32が劣化しやすくなるのを防止することができる。
なお、上記の実施の形態では、ミスト生成装置30内のミスト発生源として水26を用いた例を説明したが、用途に応じて、Agイオン電解液、洗剤液、消臭液、除菌液等を用いてもよく、それぞれの液剤(ミスト発生源)に対応した効果を得ることができる。