JP4672101B2 - 赤外フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、赤外域での光学薄膜である、赤外フィルター等に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の赤外域用光学薄膜では、例えば特開平8−334603号公報のように、反射したい帯域を網羅するよう表面または裏面または両面に
[(M/2)H(M/2)]n^
または
[(H/2)M(H/2)]n^
(但し、Hは高屈折率物質、Mは中間屈折率物質、n^はn回繰り返し積層したことを表す。)
の周期層を中心波長をずらして積層していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような赤外フィルターでは、透過率はほぼ設計通りとなるが、反射率は反射帯域の長波長側または短波長側で反射の落ち込み(リップル)が発生し、必要とする波長全体で一様な反射率が得られなかった。
【0004】
ここで、反射帯域の長波長側または短波長側で反射の落ち込み(リップル)を減少させ、必要とする波長全体で一様な反射率が得られように、膜材料について考察する。
【0005】
阻止帯の幅Δλは、光学薄膜1/4λで積層した場合、以下の式で求めることができる。
【0006】
Δλ/λ=(4/π)SIN-1[(nH−nL)/(nH+nL)]
また、2〜15ミクロン域で使用できる膜材料は、その材料の持つ光の吸収のため限られたものとなる。さらに、耐久性まで考慮すると表1のような物質しか使用できない。
【0007】
【表1】
【0008】
上記式によると、阻止帯の幅Δλを広く取れる組み合わせはGeとYF3である。しかしながら、この組み合わせは膜の耐久性の点で問題となる。
【0009】
この発明は、反射帯域の長波長側または短波長側で反射の落ち込み(リップル)を減少させ、必要とする波長域全体で一様な反射率が得られる赤外フィルターを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の請求項1は、
赤外域光学用基板の表面及び裏面に形成された赤外フィルターであって、
前記赤外域光学用基板がGe基板であり、
膜構成として前記Ge基板から順に積層された
[(0.5M)H(0.5M)]n^という一つの周期層、ZnS層、Ge層、ZnS層、YF 3 層を有することを特徴とする。(但し、HはGe、MはZnSの光学膜厚λ/4層(λは基準波長)を表す。n^はn回繰り返し積層したことを表す。)
【0011】
この発明の請求項2は、
赤外域光学用基板の表面及び裏面に形成された赤外フィルターであって、
前記赤外域光学用基板がZnSe基板またはZnS基板であり、
膜構成として前記ZnSe基板または前記ZnS基板から順に積層された
[(0.5H)M(0.5H)]n^という一つの周期層、ZnS層、YF 3 層、ZnS層を有することを特徴とする。(但し、HはGe、MはZnSの光学膜厚λ/4層(λは基準波長)を表す。n^はn回繰り返し積層したことを表す。)
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る赤外フィルターについて、具体的な実施例に基づき、詳細に説明する。
【0015】
(実施例1)
Ge基板の一面(表面でも裏面でもよい。)に表2の通り積層する。この実施例1においては、設計中心波長はλ0=4.0μmである。
【0016】
【表2】
【0017】
この反射率特性及透過率特性を図1に示す。図1から分かるように、3.0μmから5.0μmまでの短波長側の反射率を向上させることができる。
【0018】
(実施例2)
Ge基板の一面R1(例えば表面)に表3の通り積層する。この場合、設計中心波長はλ0=3.6μmである。
【0019】
また、Ge基板の他面R2(例えば裏面)に表3の通り積層する。この場合、設計中心波長はλ0=4.68μmである。
【0020】
【表3】
【0021】
この反射率特性及透過率特性を図2に示す。図2から分かるように、3.0μmから5.0μmまでの短波長側の反射率を向上させることができる。
【0022】
(比較例1)
Ge基板の一面(表面でも裏面でもよい。)に表4の通り積層する。設計中心波長はλ0=4.0μmである。
【0023】
【表4】
【0024】
この比較例1の赤外フィルターの透過率特性・反射率特性透を図6に示す。
【0025】
図6から分かるように、高反射帯域は3.4μmから4.7μmと所望の帯域より狭くなっている。また、図7には、図6で示した反射率特性を3.0μmから5.0μmまでの短波長域を拡大して示している。
【0026】
(比較例2)
Ge基板の一面(表面でも裏面でもよい。)に表5の通り積層する。設計中心波長はλ0=4.0μmである。
【0027】
【表5】
【0028】
この比較例2の赤外フィルターの反射率特性及透過率特性を図8に示している。図8には、Ge蒸着物質の吸収係数を考慮していない場合の特性、図9には、Ge蒸着物質の吸収係数を考慮した場合の特性を示している。
【0029】
図8から分かるように、Ge蒸着物質の吸収係数を考慮していない場合には、3.0μmから5.0μmの短波長域でリップルは発生していない。しかし、図9から分かるように、Ge蒸着物質の吸収係数を考慮すると、3.0μmから5.0μmの短波長域でリップルが発生していることが分かる。図10には、図9で示した反射率特性を3.0μmから5.0μmまでの短波長域を拡大して示している。
【0030】
(実施例3)
ZnSe基板の一面(例えば表面)に表6の通り積層する。設計中心波長はλ0=4.2μmである。
【0031】
【表6】
【0032】
実施例3の赤外フィルターの反射率特性及透過率特性を図3に示す。図3から分かるように、3.0μmから5.0μmまでの短波長側の反射率を向上させることができる。
【0033】
(実施例4)
ZnSe基板の一面R1(例えば表面)に表7の通り積層する。設計中心波長はλ0=3.6μmである。
【0034】
また、ZnSe基板の他面R2(例えば裏面)に表7の通り積層する。設計中心波長はλ0=4.68μmである。
【0035】
【表7】
【0036】
実施例4の反射率特性及透過率特性を図4に示す。図4から分かるように、3.0μmから5.0μmまでの短波長側の反射率を向上させることができる。
【0037】
(実施例5)
ZnS基板の一面(例えば表面)に表8の通り積層する。この場合、設計中心波長はλ0=3.6μmである。
【0038】
【表8】
【0039】
実施例5の反射率特性及透過率特性を図5に示す。図5から分かるように、3.0μmから5.0μmまでの短波長側の反射率を向上させることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本願発明の赤外フィルターによれば、反射帯域の長波長側または短波長側で反射の落ち込み(リップル)を減少させ、必要とする波長全域で一様な反射率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1の赤外フィルターを有するGe基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図2】 この発明の実施例2の赤外フィルターを有するGe基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図3】 この発明の実施例3の赤外フィルターを有するZnSe基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図4】 この発明の実施例4の赤外フィルターを有するZnSe基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図5】 この発明の実施例5の赤外フィルターを有するZnS基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図6】 比較例1の赤外フィルターを有するGe基板の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図7】 図6で示した反射率特性を3.0μmから5.0μmまでの短波長域を拡大して示した図である。
【図8】 比較例2の赤外フィルターを有するGe基板の該Ge蒸着物質の吸収係数を考慮していない場合の赤外線反射率特性及透過率特性を示し、(a)は透過率特性、(b)は反射率特性を示す図である。
【図9】 比較例2の赤外フィルターを有するGe基板の該Ge蒸着物質の吸収係数を考慮した場合の赤外線反射率特性を示す図である。
【図10】 図9で示した反射率特性を3.0μmから5.0μmまでの短波長域を拡大して示した図である。
Claims (2)
- 赤外域光学用基板の表面及び裏面に形成された赤外フィルターであって、
前記赤外域光学用基板がGe基板であり、
膜構成として前記Ge基板から順に積層された
[(0.5M)H(0.5M)]n^という一つの周期層、ZnS層、Ge層、ZnS層、YF3層を有することを特徴とする赤外フィルター。(但し、HはGe、MはZnSの光学膜厚λ/4層(λは基準波長)を表す。n^はn回繰り返し積層したことを表す。) - 赤外域光学用基板の表面及び裏面に形成された赤外フィルターであって、
前記赤外域光学用基板がZnSe基板またはZnS基板であり、
膜構成として前記ZnSe基板または前記ZnS基板から順に積層された
[(0.5H)M(0.5H)]n^という一つの周期層、ZnS層、YF3層、ZnS層を有することを特徴とする赤外フィルター。(但し、HはGe、MはZnSの光学膜厚λ/4層(λは基準波長)を表す。n^はn回繰り返し積層したことを表す。)
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