JP4670343B2 - サイトケラチン20mRNAの検出および定量方法 - Google Patents
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RNAを逆転写してcDNAに変換した後、反応液を昇降温してDNAを増幅するいわゆるPCRを実施するRT−PCR法とは異なり、反応液の昇降温なしにRNAをRNAとして増幅し検出する方法である(例えば特許文献4に記載されたNASBA法、特許文献5に記載されたTMA法、特許文献6に記載された増幅・検出法等)。これらの方法では、例えば、その転写によって特定配列のRNA転写産物を生成する、RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成することを含む方法である。
(1)RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列に相補的なcDNAの合成、
(2)リボヌクレアーゼH活性を有する酵素によるRNA−DNA2本鎖のRNAの分解(1本鎖DNAの生成)、
(3)1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列または特定配列に相補的な配列とRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAの生成、および、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素による該2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物の生成(このRNA転写産物は、前記(1)の反応における鋳型となる)、
を行うことによるCK20mRNAに存在する特定配列の増幅方法である。
(1)RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列に相補的なcDNAの合成、
(2)リボヌクレアーゼH活性を有する酵素によるRNA−DNA2本鎖のRNAの分解(1本鎖DNAの生成)、
(3)1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列または特定配列に相補的な配列とRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAの生成、および、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素による該2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物の生成(このRNA転写産物は、前記(1)の反応における鋳型となる)を行う、試料中のCK20mRNAを増幅する方法において、
第1のプライマーが配列番号7で示される塩基配列の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドであり、
第2のプライマーが配列番号4で示される塩基配列中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドであり、
CK20mRNAの特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有する配列番号1の塩基配列中の少なくとも連続した10塩基以上からなるオリゴヌクレオチドの存在下で実施されることを特徴とする、CK20mRNAの増幅方法である。
本発明は、RNAをRNAとして増幅する方法を採用することにより、CK20mRNAを一定温度、一段階操作で、迅速に検出可能である。特にRNA転写産物に対して特異的に結合可能な、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを反応液に共存させておけば、特定配列またはそれに相補的な配列の増幅と同時にその増幅の様子を検出(モニタリング)することができる。モニタリングに用いるプローブは、特定配列またはそれに相補的な配列と特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドに、該オリゴヌクレオチドがRNA転写産物と相補結合すると、結合していない状態と比較して蛍光特性が変化するインターカレーター性蛍光色素を結合したものであり、本発明を実施するにおいて前記モニタリングは最も好適な形態である。なお、オリゴヌクレオチドへのインターカレーター性蛍光色素の標識方法は特に限定はないが、リン原子からリンカーを介して結合する方法が望ましい。結合方法としてはまず、オリゴヌクレオチドの鎖内または末端にアミノ基等の官能基を導入し、インターカレーター性蛍光色素にも必要であればオリゴヌクレオチドへ導入した官能基と反応または結合可能な官能基を導入し、双方の官能基同士を結合させることが例示できる。より詳細には、特願2000−154431号またはIshiguro,T(1996)Nucleic Acids Res.24(24)4992−4997に記載されている。
(1)CK20mRNA中に存在する特定配列を鋳型として、第1のプライマー(特定配列の3’末端領域に相補的な配列)が相補結合し、RNA依存性DNAポリメラーゼによる伸長反応からcDNAを生成することによりRNA−DNAからなる2本鎖を形成し、
(2)次いでリボヌクレアーゼH活性を有する酵素によりRNA−DNA2本鎖のRNAが分解されて1本鎖DNAを生成する。その後、
(3)該1本鎖DNAに対し第2のプライマー(特定配列の5’末端領域に相同的な配列で、その5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されている)が相補結合し、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素により特定配列と相同的な配列からなるRNAを転写可能なプロモーターを有する2本鎖DNAを生成する。そして、
(4)該2本鎖DNAがRNAポリメラーゼ活性を有する酵素存在下で特定配列と相同的な配列からなるRNA転写産物が生成されるが、このRNA転写産物は特定配列からなるRNAであるため(1)の反応における鋳型となり、結果として上記(1)から(4)の反応はRNAやDNAを生成する際の酵素基質が使い尽くされるか、または、上記の各種酵素が失活するまで連鎖的に生じることになる。
本願発明によるオリゴヌクレオチドプライマーの組合わせを用いて、CK20 RNAの様々な初期コピー数における検出を行った。
CK20 RNAとは、CK20の塩基配列(National Center Biotechnology Informationのaccession No.:NM_019010の1817塩基中の40番目〜1710番目の1671塩基の2本鎖DNAをクローニング後、鋳型としてインビトロ転写により合成、精製されたRNAである。
60.0mM Tris−塩酸緩衝液(pH8.6)
18.0mM 塩化マグネシウム
90.0mM 塩化カリウム
1.0mM DTT
各0.25mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各3.0mM ATP、CTP、UTP
2.25mM GTP
3.6mM ITP
各1.0μMの第1のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号7)と第2のオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号4)。なお、第2オリゴヌクレオチドプライマーの塩基配列の5’末端には配列番号16(T7ポリメラーゼのプロモーター配列)を付加して使用した。
0.16μMの切断用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号1;CK20 RNAを第2のプライマーが結合し得る位置で切断するためのオリゴヌクレオチド。3’末端はアミノ化)
6ユニット リボヌクレアーゼ インヒビター(タカラバイオ製)
13.0% DMSO
容量調製用蒸留水
6.0nMのインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブ(実施例1で調製したもの)。
2.0% ソルビトール
6.4ユニット AMV逆転写酵素 (タカラバイオ製)
142ユニット T7 RNAポリメラーゼ (GIBCO製)
3.6μg 牛血清アルブミン
容量調製用蒸留水。
各サンプルに酵素を順次添加していき、全てのサンプルに酵素を添加した後、測定開始した。酵素添加時の時刻を0分として、サンプルの蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグランドの蛍光強度値)の経時変化を図1に示した。なお、バックグラウンドの蛍光強度値は各サンプルの測定開始時から90、120、150秒後の蛍光強度値の平均値とした。RNAサンプル濃度は106コピー/30μlから30コピー/30μlである。図1より、CK20 RNAの初期濃度に依存した蛍光プロファイルが得られ、未知試料中に存在するCK20遺伝子のmRNA量を検出、定量することが可能であることが示唆された。また、RNA転写産物生成量に依存した蛍光強度比の増加開始時間は、102コピー/30μlで約11分だった。
なお検出時間は、酵素添加時から蛍光強度比が1.2に達した時間を意味する。
第1のプライマー、第2のプライマーおよび切断用プライマーにおいて表1の各組合せの比較を行なった。オリゴヌクレオチドプライマーを除く試薬組成および検出方法は実施例2と同様にし、CK20 RNAの104コピーの検出時間を表1に示した。表1の全ての組合せにおいて、短時間でCK20 RNAの検出を達成し、20分以内での検出も十分可能であることが示された。特に組合せの1番において最も迅速なCK20mRNAの検出が可能であることが示唆された。
本願発明によるオリゴヌクレオチドプライマーの組合せを用いて、実際の培養細胞株SW1116が発現するCK20mRNAを測定した。
ヒト結腸腺癌培養細胞株SW1116(CK20mRNA発現細胞)とヒト慢性骨髄性白血病培養細胞株K562(CK20mRNA非発現細胞)をそれぞれE−RDF培地(極東製薬社製)に10%ウシ胎児血清を加えた培地で培養した。SW1116はトリプシン処理とピペットによる吸引、吐出によって、細胞を培養ディッシュから剥離し回収した。K562はピペットによる吸引、吐出によって、細胞を培養ディッシュから剥離し回収した。それぞれの細胞について、遠心分離(300g、5分)により培地を取り除き、リン酸緩衝化生理食塩水で洗浄した後、再度、遠心分離を行い、細胞ペレットを得た。
上記、SW1116とK562の細胞ペレットを2mLのリン酸緩衝化生理食塩水に溶解した後、血球計算盤を用いて細胞数を求めた。得られた細胞数より、以下の5種類のサンプルを作製した。(1)105個のK562のみ、(2)10個のSW1116に105個のK562を加えたもの、(3)102個のSW1116に105個のK562を加えたもの、(4)103個のSW1116に105個のK562を加えたもの、(5)104個のSW1116に105個のK562を加えたもの。
これらのサンプルを遠心分離し、上清を廃棄後、細胞ペレットにQuickGene−800(富士フィルム製)付属のLysis buffer(1%βメルカプトエタノール含有)350μLを加えた。以降の操作は、QuickGene−800の操作方法に従い、上記サンプル(1)〜(5)のRNA抽出物を得た。抽出物の容量は100μLだった。
試薬組成は実施例2と同様の条件で実施した。サンプルは(1)〜(5)をそれぞれ5μL使用した。CK20 RNAは、102コピー/5μL、104コピー/5μL、106コピー/5μLを測定した。測定は酵素添加時から30分間実施した。
抽出操作の誤差を補正するために、ハウスキーピング遺伝子であるポルフォビリノーゲン・デアミナーゼ(porphobilinogen deaminase、以降PBGDと略す)遺伝子のmRNAを同様のサンプルについて実施例2と同様の方法で測定した。オリゴヌクレオチドプライマーとインターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを除く試薬組成は実施例2と同様である。
Claims (4)
- 試料中のサイトケラチン20(cytokeratin 20、以降CK20と略す)mRNA内の特定配列の一部と相補的な配列を有する第1のプライマーおよび特定配列の一部と相同的な配列を有する第2のプライマー(ここで第2のプライマーはその5’末端側にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されたプライマーである)を用いて、
(1)RNAを鋳型とするRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列に相補的なcDNAの合成、
(2)リボヌクレアーゼH活性を有する酵素によるRNA−DNA2本鎖のRNAの分解(1本鎖DNAの生成)、
(3)1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定配列または特定配列に相補的な配列とRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAの生成、および、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素による該2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物の生成(このRNA転写産物は、前記(1)の反応における鋳型となる)、
を行う、試料中のCK20mRNAを増幅する方法において、第1のプライマーが配列番号7で示されるオリゴヌクレオチドであり、第2のプライマーが配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドであり、CK20mRNAの特定配列の5’末端に重複して隣接する領域に対して相補的な配列を有する配列番号1で示されるオリゴヌクレオチドの存在下で実施されることを特徴とする、CK20mRNAの増幅方法。 - 請求項1のCK20mRNAの増幅方法において、インターカレーター性蛍光色素で標識された、配列番号11で示されるオリゴヌクレオチドを作用させ、該オリゴヌクレオチドとRNA転写産物との相補結合によって、複合体を形成していない場合と比較して蛍光特性が変化することを利用して、反応液の蛍光強度を測定することによる、CK20mRNAの検出および定量方法。
- 配列番号1、配列番号7及び配列番号4で示されるオリゴヌクレオチドを含有するCK20mRNAの増幅用キット。
- 配列番号1、配列番号7、配列番号4および配列番号11で示されるオリゴヌクレオチドを含有するCK20mRNAの増幅用キット。
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