JP4670226B2 - スチレン系樹脂粒子の製造方法、及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

スチレン系樹脂粒子の製造方法、及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は懸濁重合により生成する重合体粒子の粒度分布を狭くすることを特徴とするスチレン系樹脂粒子の製造方法、及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に懸濁重合は水系媒体中で、分散剤と攪拌によりモノマーの油滴を生成、安定化させ重合を行う手法である。この時、分散剤の種類、量、及び攪拌数の調整により、使用目的に応じて平均粒径が約0.1mm〜約2mmの広範囲の異なった樹脂粒子を得ている。しかしながら、粒径には分布が生じるために、特定の目的粒径範囲以外のものも同時に生成してしまう。特に発泡性スチレン系樹脂粒子の製造においては、この目的粒径範囲外の粒子は利用価値が低く、工業的には結果として生産効率を下げることになるので、粒度分布の狭いものを得ることは非常に重要である。
【0003】
かかる問題に対しては例えば、特許文献1では重合中の水素イオン濃度を調整することで、また特許文献2では陰イオン性界面活性剤を使用せず、亜硫酸塩、過硫酸塩を併用することで、それぞれ粒度分布の狭いスチレン系樹脂粒子を得る方法が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3では難水溶性リン酸塩と、水溶性亜硫酸塩、又は水溶性過硫酸塩の存在下で攪拌翼の先端速度を所定の範囲内にすることによって、また特許文献4、特許文献5では重合の比較的初期の段階において攪拌の所要動力を落とすことによって、それぞれ粒度分布の狭いスチレン系樹脂粒子を得る方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−231611号公報(2頁−3頁)
【0006】
【特許文献2】
特許第3192916号明細書(1頁−3頁)
【0007】
【特許文献3】
特開平9−132607号公報(2頁)
【0008】
【特許文献4】
特許第2136342号明細書(1頁−4頁)
【0009】
【特許文献5】
特許第2636400号明細書(1頁−4頁)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、該発明における方法では、水素イオン濃度を調整することで廃水処理が必要となり工業的に好ましくないことや、攪拌数を比較的初期に大きく変更するために重合中の分裂頻度が低下し、液滴内部即ち樹脂中に水が取り込まれる確率が高くなる場合がある。このような樹脂を用いて成形加工した場合、内部に取り込まれた水により品質が悪化するだけでなく、スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡体とした場合、発泡粒子内部に発泡粒子を形成するセルとは異なる大きな空間ができ、成形品としての外観を悪化させるばかりでなく、強度を低下させる原因となるという欠点があり、やはり好ましくなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題に鑑み検討した結果、成形品とした場合の品質低下がなく、粒度分布の狭い発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができる本発明を成すに至った。すなわち、本発明は、スチレン系単量体の懸濁重合において、重合転化率が50%を越え、70%以下の間に、攪拌所要動力を重合開始時の攪拌所要動力の80%〜55%になるように攪拌数を低下させて重合を継続することを特徴とするスチレン系樹脂粒子の製造方法(請求項1)、スチレン系単量体の懸濁重合において、重合転化率が50%を越え、70%以下の間に、攪拌所要動力を重合開始時の攪拌所要動力の80%〜55%になるように攪拌数を低下させて重合を継続し、さらに重合途中、あるいは重合後に発泡剤を加えることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法(請求項2)に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態をより詳細に説明する。
【0013】
本発明における懸濁重合は、水系媒体中で、分散剤と攪拌によりモノマーの油滴を生成、安定化させ重合を行う一般的な懸濁重合をいい、特に限定的なものを意味するものではない。
【0014】
本発明に用いるスチレン系単量体としては、スチレン、及びα―メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系誘導体であり、さらにスチレンと共重合が可能な成分、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体を1種又は2種以上、添加し共重合しても良い。また、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体を併用することもできる。
【0015】
分散剤としては一般的に懸濁重合に用いられている分散剤、例えば、燐酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、ピロリン酸マグネシウムなどの難水溶性無機塩が上げられる。これら、難水溶性無機塩を用いる場合には、α-オレフィンスルフォン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダなどのアニオン性界面活性剤を併用すると、分散安定性が増すので効果的である。 また、従来技術では難水溶性無機塩は初期仕込み段階で存在させると共に粒径調整のため、重合途中にも1回以上追加することがあるが、本発明においては、初期仕込み段階に加えて、攪拌所要動力を変更した時点の重合転化率よりも重合転化率が5〜20%上昇した時点で添加する事が好ましい。 その際の添加量はスチレン系単量体100重量部に対して0.05〜0.3重量部が好ましい。
【0016】
重合開始剤としては、一般にスチレン系単量体のラジカル重合に用いられている重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、1,1、-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンのような有機化酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。また、これら2種以上を併用することも可能である。
【0017】
発泡剤を使用する場合には、C3からC5の炭化水素であるプロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素類、およびジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素類などの揮発性発泡剤が使用できる。また、これらの発泡剤を併用することもできる。使用量としてはスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、3〜12重量部、好ましくは5〜9重量部である。
【0018】
攪拌翼の形状は懸濁重合で通常用いられるものが使用でき、例えばファウドラー型、フラットパドル型、ピッチドパドル型など特に限定されるものではない。
【0019】
一般的に攪拌所要動力(P)は式(i)により示される。本発明においても攪拌所要動力(P)は式(i)のものをいう。
P=Npρn35/gc ・・・・・・・・・・・・ 式(i)
P:攪拌所要動力 (kg・m/sec) 、Np:動力数
ρ:液密度 (kg/m3) 、n:回転数 (1/sec)
d:攪拌翼径 (m) 、gc:重力換算係数 (kg・m/kg・sec2)
【0020】
ここでNpは攪拌翼の形状により決まる固有の値であり、式(ii)により算出される。
Np=2πTngc/ρn35 ・・・・・・・・・ 式(ii)
T:トルク(kg・m)
【0021】
初期の攪拌数をn1、その時の攪拌所要動力をP1とし、変更後の攪拌数をn2、その時の攪拌所要動力をP2とすると、攪拌数変更後の攪拌所要動力の保持率(W)は次式(iii)で示される。
W=P2/P1=(Npρn2 35/gc)/(Npρn1 35/gc
=n2 3/n1 3 ・・・・・・・・・・・ 式(iii)
【0022】
本発明における攪拌所要動力を変更する時の重合転化率は50%を越え、70%以下が好ましく、特に50を越え、60%以下が好ましい。50%以下、あるいは70%を越えた転化率で所要動力を変更しても、粒度分布が改善されず、目的を達することができない。
【0023】
攪拌数変更後の攪拌所要動力の保持率は80%〜55%が好ましく、特に70%〜55%が好ましい。80%を越えると粒度分布が改善されず、55%未満では得られたスチレン系樹脂粒子に水が多く取り込まれ、粒子内に泡のようなものが入った中空粒子ができ、品質を悪化させる。特に、このような中空粒子を含んだスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡させた場合、発泡粒子内部に発泡粒子を形成するセルとは異なる大きな空間ができてしまい、成形した際に外観を悪化させるばかりでなく、程度によっては強度を低下させてしまう可能性があるので好ましくない。
【0024】
既述のごとく適切な範囲で攪拌所要動力を変更させると、品質に影響することなく、粒度分布が狭いスチレン系樹脂粒子が得られる。このようにして得られたスチレン系樹脂粒子は目的外の粒径品が少なくなるので、工業生産上有利となる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、重合転化率、粒度分布の指標であるUTは以下の式により算出した。
【0026】
1)重合中の重合転化率は式(iv)で算出した。
重合転化率 = 乾燥後の樹脂の重量/乾燥前の樹脂の重量×100・・・・・・・・・・・・式(iv)
乾燥はサンプリングした樹脂に重合禁止剤を微量添加した上で、150℃のオーブン内で30分間保持し、未反応の単量体を除いた。これをデシケーター内で室温まで放冷し、その時の重量を乾燥後重量とした。
【0027】
2)UTは式(v)で算出した。
UT =(d90/d40)+(d60/d10)・・・式(v)
d90、d40、d60、d10はそれぞれ累積粒度分布の90%、40%、60%、10%時の粒径である。UTは値が低いほどシャープであることを示しており、0.01でも有意差となる。
【0028】
3)中空粒子の有無の判定は中空のある樹脂粒子は樹脂粒子内部に泡のようなものが目視で確認できるので、粒径が1.2mm以下の粒子に対し、このような泡を巻き込んだ樹脂粒子の割合が1%以上含んだものを中空有と評価した。
【0029】
4)表面性は得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を約60倍に予備発泡、成形し、得られた成形体を任意にスライスし、15センチメートル四方のスライス面内にセルとは異なる大きな空間が3個以上見られた場合に×、3個未満の場合に○とした。
【0030】
(実施例1)
アンカー型攪拌機付の1500L槽型反応機内に、水75部、第3リン酸カルシウム0.12重量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム0.006重量部、NaCl0.26重量部、過酸化ベンゾイル0.17重量部、1,1-ジ‐t‐ブチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン0.18重量部を仕込み、攪拌機の攪拌数を52(rpm)に設定し、スチレン100重量部を仕込み、重合を開始した。重合転化率53%において攪拌所要動力の変更率を61%にするために攪拌数を44(rpm)に設定した。また、重合転化率67%において第3リン酸カルシウム0.10重量部を追加した後、重合を完結させた。得られた樹脂の平均粒径は1.01mm、UTは2.70であった。結果を表1に示す。
【0031】
(実施例2)
初期攪拌数が60(rpm)、攪拌所要動力変更時の重合転化率が55%、攪拌所要動力変更後の攪拌数が50(rpm)である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は1.03mm、UTは2.69であった。結果を表1に示す。
【0032】
(実施例3)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が54%、攪拌所要動力変更後の攪拌数が48(rpm)である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は1.02mm、UTは2.71であった。結果を表1に示す。
【0033】
(実施例4)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が68%である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は1.00mm、UTは2.71であった。結果を表1に示す。
【0034】
(実施例5)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が65%であり、変更後の攪拌数が55(rpm)である以外は実施例2と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は0.99mm、UTは2.71であった。結果を表1に示す。
【0035】
(実施例6)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が53%であり、変更後の攪拌数が42(rpm)である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は1.03mm、UTは2.69であった。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004670226
【0037】
(比較例1)
初期攪拌数を52(rpm)に設定し、攪拌所要動力を変更させることなく重合を行った。第3リン酸カルシウム添加時の転化率は66%であった。得られた樹脂の平均粒径は0.90mm、UTは2.75であった。結果を表2に示す。
【0038】
(比較例2)
初期攪拌数を60(rpm)に設定した以外は実施例3と同様に実験を行った。
得られた樹脂の平均粒径は0.99mm、UTは2.74であった。結果を表2に示す。
【0039】
(比較例3)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が46%である以外は実施例1と同様に重合を行った。 得られた樹脂の平均粒径は1.04mm、UTは2.73であった。
結果を表2に示す。
【0040】
(比較例4)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が54%、攪拌所要動力変更後の攪拌数が40(rpm)である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は1.03mm、UTは2.69であった。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例5)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が54%,攪拌所要動力変更後の攪拌数が44(rpm)である以外は実施例2と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は0.99mm、UTは2.68であった。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例6)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が75%である以外は実施例1と同様に重合を行った。得られた樹脂の平均粒径は0.93mm、UTは2.74であった。結果を表2に示す。
【0043】
(比較例7)
攪拌所要動力変更時の重合転化率が54%、攪拌所要動力変更後の攪拌数が49(rpm)である以外は実施例1と同様に行った。得られた樹脂の平均粒径は0.98mm、UTは2.74であった。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0004670226
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂中への水の取り込みが少なく、予備発泡粒子中の大きな空間の形成による欠陥の発生も防止でき、強度、外観等の品質を低下させることなく、粒度分布の狭いスチレン系樹脂粒子が得られ、1バッチあたりの収率を向上させることができ、工業生産上非常に有利な生産が可能となる。

Claims (2)

  1. スチレン系単量体の懸濁重合において、重合転化率が50%を越え、70%以下の間に、攪拌所要動力を重合開始時の攪拌所要動力の80%〜55%になるように攪拌数を低下させて重合を継続することを特徴とするスチレン系樹脂粒子の製造方法
  2. スチレン系単量体の懸濁重合において、重合転化率が50%を越え、70%以下の間に、攪拌所要動力を重合開始時の攪拌所要動力の80%〜55%になるように攪拌数を低下させて重合を継続し、さらに重合途中、あるいは重合後に発泡剤を加えることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法
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