運転者が操作するセレクトレバーの操作アシストを行う自動変速装置のセレクトアシスト機構に関する。
車両の自動変速装置において、モータ等の駆動力を用いて運転者が行うセレクトレバー(操作レバー、シフトレバー)の動作をアシストすることによって、セレクトレバーの操作負担を軽減するとともに、セレクトレバーを含むシフトデバイスのショートストローク化を図る自動変速装置のセレクトアシスト機構が提案されている(例えば引用文献1参照)。
一般的なセレクトアシスト機構は、セレクトレバーに加えられるトルク値(操作力)をトルクセンサが検出し、検出されたトルク値が所定値以上の場合にモータ等が起動してセレクトレバーの動作アシストを行う構造となっている。
特開2003−4135号公報
しかしながら、上述した構造からなるセレクトアシスト機構では、運転者がセレクトレバーの操作を終了してセレクトレバーから手を離した後も、セレクトレバーの慣性力をトルクセンサが検出し、セレクトレバーの動作アシストを継続して実行してしまうおそれがあるという問題があった。
また、上述した機構からなるセレクトアシスト機構では、一般的に動作アシストを行うセレクトレバーの動作方向を、セレクトレバーの動作変位を算出することによって求めている。このため、運転者が、セレクトレバーに力を加えても実際にセレクトレバーが移動して動作変位が算出されないと動作アシストを行う方向を特定することができないので、セレクトレバーの動作アシストが行われないという問題があった。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、セレクトレバーの慣性力をトルクセンサが検出し、運転者がセレクトレバーから手を離した後にセレクトレバーの動作アシストが連続して実行されてしまうことを防止する自動変速機のセレクトアシスト機構を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る自動変速装置のセレクトアシスト機構は、セレクトレバーの操作により生じた操作力を検出する入力操作力検出手段と、前記セレクトレバーに対して、当該セレクトレバーの動作アシストを行うためのアシスト力を付加するアシストアクチュエータと、前記入力操作力検出手段により検出された前記操作力の値が規定値以上の場合に前記アシストアクチュエータを制御し、前記セレクトレバーに対する動作アシストを開始するアシスト力制御手段とを備えており、前記アシスト力制御手段が、前記操作力が規定値以下又は前記セレクトレバーが所定の位置に達したことをもって前記動作アシストを停止させた後に、一時的に前記規定値を高い値に設定することを特徴とする。
本発明に係る自動変速装置のセレクトアシスト機構によれば、アシスト力制御手段が、操作力が規定値以下又はセレクトレバーが所定の位置に達したことをもって動作アシストを停止させた後に一時的に規定値を高い値に設定することにより、動作アシストが終了した後に、慣性に起因するトルクに起因して一時的にトルク値が大きくなった場合であっても、操作力の値が規定値以上となりにくくなるので、容易に動作アシストが連続して実行されてしまうことを防止することが可能となる。
以下、本発明に係るセレクトアシスト機構を備えた自動変速装置を、図面を用いて説明する。
図1に示すように、自動変速装置100は、セレクトユニット1と、コントロールケーブル8と、アシストアクチュエータ9と、コントロールケーブル18と、自動変速ユニット19と、アシストコントロールユニット(アシスト力制御手段)22とを備えている。
セレクトユニット1は、運転者により操作されるセレクトレバー2を有しており、例えば、運転席脇のセンタクラスタ3に設けられている。セレクトレバー2の上端には、セレクト操作時に運転者が把持するためのセレクトノブ4が付設されている。セレクトレバー2は、支点軸5を中心として回動操作される。
セレクトレバー2の下端部には、セレクトレバージョイント7を介してプッシュプル式のコントロールケーブル8が接続されている。コントロールケーブル8は、図2に示すように、入力レバージョイント11を介してアシストアクチュエータ9の入力レバー10と回動自在に接続されている。すなわち、セレクトレバー2の回転運動が直線運動に変換され、セレクトレバー2の操作により発生した操作力が入力レバー10に伝達される。
入力レバー10は、回動可能に設けられた出力軸12を介して出力レバー13と連結されている。出力軸12には、ウォームギア14が設けられており、このウォームギア14は、減速機構を備えた電動モータ15のモータ出力軸16と噛み合っている。
出力レバー13には、出力レバージョイント17を介してプッシュプル式のコントロールケーブル18が接続されている。コントロールケーブル18は、自動変速ユニット19の制御アーム20と接続されている。すなわち、コントロールケーブル18により出力レバー13の回転運動が直線運動に変換され、運転者の操作力と電動モータ15の駆動力との合成力が自動変速ユニット19の制御アーム20に伝達される。
出力軸12には、入力レバー10とウォームギア14との間に生じるゆがみ(捻れ)を検出するトルクセンサ(入力操作力検出手段)21が設けられている。このトルクセンサ21により検出された操作力信号は、図外の増幅アンプにより信号増幅され、アシストコントロールユニット22にワイヤハーネス23を介して伝達される。トルクセンサ21の検出信号により、セレクトレバー操作における操作力が推定可能となる。
ウォームギア14には、位置検出のための接触子24が固定されている。この接触子24がウォームギア14と一体に回動し、図示しない基板に印刷されたカーボン抵抗と電気的に接触することにより、セレクトレバー2のストローク角度に応じた電圧信号をアシストコントロールユニット22に出力する。この接触子24とカーボン抵抗とによってポテンショメータ(操作位置検出手段)25が構成されている。
ポテンショメータ25は、セレクトレバー2がPレンジ位置で停止しているときの角度を基点角度として、セレクトレバー2のストローク角度を随時検出する。
アシストコントロールユニット22は、検出されたセレクトレバー2のストローク角度と、運転者の操作力とに基づいて目標アシスト力を設定し、電動モータ15の出力デューティ比をPWM制御する。
図3は、アシストコントロールユニット22の構成を示したブロック図である。セレクトユニット1において、レンジ切り換え操作がなされたセレクトレバー2のストローク変化は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のポテンショメータ25へ入力される。ポテンショメータ25では、セレクトレバー2の操作量に応じたストローク角度が検出され、ストローク角度信号としてアシストコントロールユニット22へ出力される。
また、セレクトレバー2の操作力は、コントロールケーブル8を介してアシストアクチュエータ9のトルクセンサ21へ入力される。トルクセンサ21では、セレクトレバー2の操作力が検出され、操作力信号としてアシストコントロールユニット22へ出力される。
ポジション・操作開始・方向判別ブロック33では、ストローク角度信号に基づいて、現在のセレクトレバー2のストローク角度を判定する。また、ストローク角度信号とストローク角度信号の微分値及び操作力信号から、セレクトレバー2の操作開始、操作方向(必要に応じては操作速度及び操作加速度)を判別し、判別結果をFF補償テーブル43と目標テーブルブロック34とモータ駆動制御ブロック45へ出力する。
さらに、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33では、中間停止と判断すると中間停止信号を中間停止防止制御ブロック50に出力する。
目標テーブルブロック34では、ストローク角度信号と、ポジション・操作開始・方向判別ブロック33によって求められたセレクトレバー2の操作方向等から、セレクトレバー2のストローク角度に応じた目標操作反力が算出され、加算器35へ出力される。
ここで、セレクトレバー2のストローク角度によって、目標操作反力は異なるため、目標テーブルブロック34には、ストローク角度毎の目標操作反力がテーブル化して格納されている。
加算器35は、操作力信号と目標操作反力の偏差を算出し、算出結果をFB制御部36へ出力する。
FB制御部36は、乗算器37と、加算器38と、乗算器39と、積分器40とから構成されている。乗算器37は、操作力信号と目標操作反力の偏差に比例ゲインを乗じた値を加算器38へ出力する(比例出力)。乗算器39は、操作力信号と目標操作反力の偏差に積分ゲインを乗じた値を積分器40へ出力する。積分器40では、乗算器39の出力を積分演算して加算器38へ出力する(積分出力)。加算器38では、比例出力と積分出力の和であるフィードバックアシスト力を加算器41に出力する。
FF制御部42は、FF補償テーブル43と乗算器44とから構成されている。FF補償テーブル43は、ストローク角度信号、操作速度及び操作加速度に対応して予め設定された値を、乗算器44へ出力する。乗算器44では、FFアシスト力にFFゲインを乗じた値、すなわちフィードフォワードアシスト力を加算器41へ出力する。
加算器41では、FB制御部36とFF制御部42の出力和(フィードバックアシスト力+フィードフォワードアシスト力)、すなわち目標アシスト力をモータ駆動制御ブロック45へ出力する。
モータ駆動制御ブロック45は、目標アシスト力に基づいて、電動モータ15(減速機構)を駆動する。
中間停止防止制御ブロック50では、セレクトレバー2が中間停止した際に、セレクトレバー2を正規のレンジ位置に移動させるために電動モータ15に流す電流値と方向を、入力信号から算出されるシステムの状態から算出して出力する。
次に、自動変速ユニット19のディテントの構造について説明する。自動変速ユニット19の制御アーム20には、図4に示すように、回転シャフト26が設けられ、この回転シャフト26にディテントプレート27が支持されている。ディテントプレート27の上端には、カム山27aの間に5つのレンジ(P・R・N・D・L)に対応した谷部27bが形成されている。そして、この谷部27bにバネ板28の先端に形成されたディテントピン29を係合させ、選択されたレンジ位置を保持することにより、車両の振動等に起因する意図しないレンジセレクトを防止している。
すなわち、セレクトレバー2の操作力により回転シャフト26が回動し、この回動に応じてディテントプレート27がディテントピン29に対して相対移動する。このとき、ディテントピン29がカム山27aを乗り越えて隣のレンジに対応した谷部27bと係合し、係合状態がバネ板28の弾性力により保持される。この弾性力が、セレクトレバー2を操作する際の主要な負荷力となる。
なお、ディテントプレート27には、パーキングポール30の一端が回動自在に連結されている。このパーキングポール30は、セレクトレバー2をPレンジに移動させたとき、カム状プレート31を介してパーキングギア32の回転を阻止し、図外の駆動輪をロックするものである。これにより、勾配路上にPレンジで車両を駐車したとき、勾配に応じて駆動輪をロックするように車重負荷が加わり、パーキングポール30を咬む力として作用する。
次に、アシストコントロールユニット22で実行されるセレクトレバー2のアシスト制御処理を、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
アシストコントロールユニット22は、ステップS1において、トルクセンサ21の操作力信号を受信することにより操作力の読み込みを行う。次に、アシストコントロールユニット22は、ステップS2において、ポテンショメータ25のストローク角度信号を受信することによりストローク角度の読み込みを行う。その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS3において、セレクトレバー2のストローク角度と前回の制御周期において読み込んだストローク角度の増減差分から、セレクトレバー2の操作方向を演算する。
次に、アシストコントロールユニット22は、ステップS4において、セレクトレバー2のストローク角度と前回の制御周期において読み込んだストローク角度の変化率から、セレクトレバー2の操作速度を演算するとともに、操作速度の微分値からセレクトレバー2の操作加速度を演算し、処理をステップS5に移行する。
ステップS5において、アシストコントロールユニット22は、FF補償テーブル読み込み処理を実施して、FF補償テーブルより、予め設定された複数のテーブルの中から、ストローク角度、操作速度及び操作加速度に応じて最適なものを選択する。
さらにステップS6において、アシストコントロールユニット22は、目標テーブル読み込み処理を実施し、その後ステップS7において、読み込んだFF補償テーブルからFFアシスト力を設定(Fff設定)し、処理をステップS8へ移行する。
ステップS8では、アシストコントロールユニット22は、読み込んだ目標テーブルからFBアシスト力を設定(Ffb設定)し、ステップS9において、設定したFFアシスト力とFBアシスト力との和から目標アシスト力の設定を行う。
その後、ステップS10において、アシストコントロールユニット22は、電動モータ15の出力デューティ比を目標アシスト力にあわせて制御する。そして、アシストコントロールユニット22は、セレクトレバー2が正規のレンジ位置の問で中間停止しているかどうかを判断し、中間停止している場合には、セレクトレバー2を正規のレンジ位置に復帰させるために、電動モータの駆動電流、駆動方向を算出する中間停止防止処理を実施して制御を終了する。
このように、アシストコントロールユニット22は、セレクトレバー2のレンジ位置を判断してセレクトレバー2の動作をアシストすることによって、運転者によるセレクトレバー2の操作負担を軽減することが可能となる。
図6は、P→Rポジション方向にセレクトレバー2を操作する際に、トルクセンサ21で検出されるトルク値を示した図である。セレクトレバー2をP→R方向に操作する場合、トルク値が規定値(ConstThresh)を越えると、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストが開始される。アシストアクチュエータ9によるアシスト力と運転者による操作力とによって、トルク値が緩やかに増大し(図6の矢印α)、ディテントピン29がディテントプレート27のカム山27aを乗り越える位置まで移動される。ディテントピン29がカム山27aを乗り越えた後には、ディテントピン29が次のカム山27aの溝に落ち込んで引き込まれるので慣性力が発生してトルク値が急激に減少し(図6の矢印β)、操作力が規定値以下となることによって、アシストアクチュエータ9による動作アシストが終了する。なお、セレクトアクチュエータによる動作アシストは、セレクトレバー2が所定の位置(図6においてはR−ポジション)に到達することによっても停止する。
しかしながら、ディテントピン29が次のカム山27aの溝に落ちると、慣性力により生じたトルクを得たディテントピン29が次のカム山の端面に当たることから、一時的にトルク値が大きくなった後(このトルクを「慣性に起因するトルク」とする。)にトルク値が収束する。この慣性に起因するトルクの値は、図6の点線に示すように、規定値(ConstThresh)以上になってしまうので、従来のままでは、アシストアクチュエータ9がセレクトレバー2の動作アシストを実行してしまうおそれがある。
そのため、アシストコントロールユニット22は、操作力が規定値以下又はセレクトレバー2が所定の位置に達して動作アシストが停止された後に、図6の一点鎖線で示すように、慣性に起因するトルクが発生する場合に、一時的にアシストアクチュエータ9によりセレクトレバー2の動作アシストが開始されるトルク値を規定値よりも大きくし(このトルク値を閾値(Thresh)とする。)、その後、徐々に閾値(Thresh)を下げることによって不要な動作アシストを防止する。
具体的に、アシストコントロールユニット22は、図7のステップS100に示すように、トルクセンサ21により検出されたトルク値を変数Trqとして記憶する。次に、アシストコントロールユニット22は、ステップS101において、図8に示す演算回路を用いて規定値(ConstThresh)を変動させた閾値(Thresh)を求める。具体的には、変数Delay、Temp、定数a、bを用いて、
Temp=ConstThresh−Delay ・・・式1
Thresh=Temp×b−Delay ・・・式2
Delay=Delay+Temp×a ・・・式3
の式に各値を代入することで閾値(Thresh)が求められる。なお、変数Delayは初期値が予め設定されており、図8に示すq−1は1サンプル時間の遅れを表している。
その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS102において、TrqとThreshとを比較する。アシストコントロールユニット22は、Trq>Threshでない場合にはステップS100に処理を戻し、Trq>Threshの場合には、ステップS103においてアシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストを開始する。このステップS100〜ステップS102までの処理は、図9に示すように、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストが行われる前の「A:停止状態」の処理を示したものであり、ステップS101〜ステップS102のループ処理によりステップS101の処理を繰り返し実行することによって、電動モータ15が停止している間に閾値を時間的に低減させる。
Trq>Threshの場合、アシストコントロールユニット22は、ステップS104に示すように、セレクトレバー2の位置が所定場所、具体的には、ディテントピン29が次のカム山27aの溝に落ちてセレクトレバー2が確実にP→Rポジションに移動されるまで、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストを継続実行させる。ステップS103〜ステップS104の処理は、図9に示す「B:アシスト状態」処理であり、その具体的な処理内容は、図5に示したステップS1〜S11を実行するものである。
セレクトレバー2の位置がRポジションに移動された場合、アシストコントロールユニット22は、ステップS105においてアシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストを終了させるとともに、ステップS106においてDelayの値を0に設定する。この後、アシストコントロールユニット22は、ステップS100からの処理を再度繰り返す。このとき、Delayの値が0であるため、ステップS101において
式1により Temp=ConstThresh となり、
式2より Thresh=Temp×b
=ConstThresh×b となるので、
図10に示すように、セレクトレバー2の位置がRポジションに移動された直後に閾値(Thresh)の値が急激に上昇して規定値(ConstThresh)のb倍の値となり、慣性に起因するトルクの値が、アシストアクチュエータ9によりセレクトレバー2の動作アシストが開始される閾値(Thresh)を越えることを防止することが可能となる。
一方、Delayの値は、式3Delay=Temp×aより明らかなように、ステップS100〜ステップS102の処理を繰り返すことにより、Tempのa倍毎に規定値(ConstThresh)に近づき、最終的にはDelay=ConstThreshとなってTemp=0になり、Threshの値がConstThreshの値に等しくなる。つまり、閾値(Thresh)がアシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストが開始される規定値(ConstThresh)に収束する。ステップS105、ステップS106の処理は、図9に示す「C:停止準備状態」処理を示したものである。
このように、慣性に起因するトルクが発生する場合に、アシストコントロールユニット22が、一時的に閾値(Thresh)を大きくすることによって、不要な動作アシストを防止することが可能となる。また、その後、徐々に閾値(Thresh)を下げることによって、自動変速装置のギアを次のポジションに移動させたい場合には、多少大きな初期操作力をセレクトレバー2の操作により加えることによって容易に動作アシスト動作を実行させることが可能となる。
また、図11に示すように、トルクセンサ21で検出されるトルク値を、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシスト停止後にローパスフィルタを用いて低減させて、慣性に起因するトルクが規定値(ConstThresh)以上になってしまうことを防止する方法も有効である。
具体的に、アシストコントロールユニット22は、図12のステップS200に示すように、初期値として変数aに1を代入し、変数Delayに0を代入する。その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS201において、トルクセンサ21により検出されたトルク値を変数Trqとして記憶する。また、アシストコントロールユニット22は、ステップS202において、変数aの値が1以上であるか否かの判断を行い、aが1より小さい場合には、ステップS203において変数aにaの2乗の値を代入し、aが1以上の場合には、ステップS204において変数aに1の値を代入する。その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS205において、トルクセンサ22により検出されるトルク値に対して次式に示すローパスフィルタを適用した演算を実行する。
具体的には、変数Delay、aと、フィルタ処理された後のトルク値が代入される変数Trq2とを用いて、
Trq2=Delay・・・式4
Delay=Delay+(Trq−Delay)×a・・・式5
により検出されたトルク値にフィルタ処理を施す。
式5より、変数aを変化させることにより、変数Delayの増大に必要とされる時間が変化するので、結果としてローパスフィルタにおける時定数が変化することとなる。
アシストコントロールユニット22は、ステップS206において、フィルタ処理がなされたTrq2が規定値(ConstThresh)よりも大きな値となるまで、ステップS201〜ステップS206までの処理を繰り返す。
なお、ステップS202において、変数aが1より小さい場合には、変数aが小さければ小さいほど、変数Delayの増大に多くの時間がかかり、ローパスフィルタにおける時定数が大きくなる。一方、変数aが1より大きい場合には変数aの値を1とすることによって、式5より、
Delay=Delay−Delay+Trq=Trq
となり、結果として式4より、
Trq2=Delay
となり、TrqとTrq2とが同一の値Delayとなるので、トルクセンサ21により検出されたトルク値をフィルタ処理することなく規定値(ConstThresh)と比較することになる。
Trq2が規定値(ConstThresh)よりも大きな値の場合には、ステップS207に示すように、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストが開始され、ステップS208に示すようにセレクトレバー2の位置が所定位置よりも移動するまで、具体的には、ディテントピン29が次のカム山27aの溝に落ち込むまで、アシストアクチュエータ9によるセレクトレバー2の動作アシストが継続される。
セレクトレバー2が所定位置よりも移動して、操作力が規定値以下又はセレクトレバー2が所定の位置に達すると、アシストコントロールユニット22は、ステップS209に示すようにセレクトレバー2の動作アシストを停止し、ステップS210において変数aに対して十分に小さな定数a_constを代入して再度ステップS201からの処理を繰り返し実行する。ステップS210において、変数aに対して十分に小さな値を代入することによって、ステップS201〜ステップS206の処理によりTrq2>ConstThreshとなるのに多くの時間がかかるので、ローパスフィルタとしての役割を発揮させることができ、動作アシスト停止直後のセレクトレバー2の慣性力に起因する連続したセレクトレバー2の動作アシスト処理を防止することが可能となる。また、所定時間経過すれば、a=1となり、ローパスフィルタが機能しなくなるので、一時的に大きくなったトルク値が収束した後にはフィルタ処理が実行されなくなり、慣性が働く間だけ有効的にフィルタ処理を行うことが可能となるとともに、自動変速装置のギアを次のポジションに移動させたい場合には、多少大きな初期操作力をセレクトレバー2の操作により加えることによってフィルタ処理されたトルク値が規定値を越えることになるので、容易に動作アシストを実行させることが可能となる。
以上、図面を用いて本発明に係るセレクトアシスト機構を備えた自動変速装置100を説明したが、本発明に係るセレクトアシスト機構は上述した構成のものに限定されるものではない。例えば本実施例では、図6、図11において、セレクトレバー2のポジションがP→Rポジションに変更される場合を例に挙げて説明を行ったが、閾値を変更する方法及びトルク値にフィルタ処理を施す方法のどちらの方法を用いる場合であってもセレクトレバー2の位置はP、Rポジションに限られず、全てのポジション間の移動において適用させることが可能である。
以下、実施例2に係るセレクトアシスト機構を説明する。実施例2におけるセレクトアシスト機構を用いた自動変速装置は、実施例1において説明した自動変速装置に比べてアシストコントロールユニットのアシスト制御が異なる点で相異する。アシストコントロールユニット以外の構成要素は実施例1と同一であるため、同一符号を用いて説明を行い、実施例2における説明を省略する。
図13は、実施例2に係るアシストコントロールユニット22aを示したブロック図である。アシストコントロールユニット22aは、実施例1で説明したアシストコントロールユニット22と異なり、PL方向起動操作力演算部60と、LP方向起動操作力演算部61と、PL方向起動操作力演算部60とトルクセンサ21により検出されるトルク値との比較を行うPL方向起動判定部62と、同様にトルク値との比較を行うLP方向起動判定部63とを備えている。
PL方向起動操作力演算部60は、Pポジション方向からLポジション方向(P−L方向)へ向かう操作力がセレクトレバー2に加えられた場合に、アシストコントロールユニット22aがP−L方向に操作アシストを開始するか否かの判断基準とする第1閾値(第1既定値)を演算・設定する。一方で、LP方向起動操作力演算部61は、Lポジション方向からPポジション方向(L−P方向)へ向かう操作力がセレクトレバー2に加えられた場合に、アシストコントロールユニット22aがL−P方向に操作アシストを開始するか否かの判断基準とする第2閾値(第2規定値)を演算・設定する。
実施例2に係るセレクトアシスト機構では、PL方向起動操作力演算部60により設定された第1閾値(第1既定値)をトルクセンサ21により検出されたトルク値が越えた場合、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバー2がP−L方向に移動されつつあると判断してP−L方向への動作アシストを開始し、同様に、L―P方向起動操作力演算部61により設定された第2閾値(第2規定値)をトルク値が越えた場合、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバー2がL−P方向に操作されつつあると判断してL−P方向への動作アシストを開始する。
なお、本実施例では、セレクトレバー2に操作力が加えられておらず、さらに動作アシストがなされていない状態におけるトルク値を基準(±0)とし、P−L方向に操作力が加えられた場合にトルクセンサ21で検出されるトルク値を正の値のトルク値とし、L−P方向に操作力が加えられた場合にトルクセンサ21で検出されるトルク値を負の値のトルク値として説明を行う。
図14は、アシストコントロールユニット22aがセレクトレバー2に対する動作アシストを行う処理を示したフローチャートであり、図15は、図14示す処理におけるアシストコントロールユニット22aの状態遷移図である。以下、図14及び図15を用いてアシストコントロールユニット22aの動作アシスト処理を説明する。
アシストコントロールユニット22aは、まず、動作アシストを開始する閾値をPL方向起動操作力演算部60とLP方向起動操作力演算部61とを用いて設定する。具体的に、PL方向起動操作力演算部60において、P−L方向にセレクトレバー2が操作された場合にP−L方向に対する動作アシストを開始するための第1閾値(正の値)を設定し(ステップS.301)、その後、LP方向起動操作力演算部61において、L−P方向にセレクトレバーが操作された場合にL−P方向に対する動作アシストを開始するための第2閾値(負の値)の設定を行う(ステップS.302)。この第1閾値及び第2閾値は、ポテンショメータ25のストローク角度信号等に基づいて検出されるセレクトレバー2のセレクトの位置等に応じて設定値を変えることも可能である。
次に、アシストコントロールユニット22aは、ポテンショメータ21より受信する操作力信号に基づいてトルク値の読み込みを行う(ステップS.303)。その後、アシストコントロールユニット22aは、PL方向起動判定部62を用いて、読み取られたトルク値が、第1閾値以上の値であるか否かの判断を行う(ステップS.304)。トルク値が第1閾値以上でない場合(ステップS.304でNOの場合)、アシストコントロールユニット22aは、LP方向起動判定部63を用いてトルク値が第2閾値以下であるか否かの判断を行う(ステップS.305)。トルク値が第2閾値以下でない場合(ステップS.305でNOの場合)には、トルク値の読み取り処理を繰り返し行う(ステップS.303)。
図15に示す状態遷移図の停止状態65とは、動作アシストがなされていない状態を示している。停止状態65において、STOP実効処理の「1.起動判定」処理は、トルク値と第1閾値及び第2閾値との比較を行う処理(ステップS.304、ステップS.305)が該当しており、上述したように、トルク値が第1閾値以下且つ第2閾値以上である場合に、停止状態65を維持する。
トルク値が第1閾値以上の場合(ステップS.304でYESの場合)、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバー2がP−L方向に移動されたと判断し、P−L方向への動作アシストを開始する(ステップS.306)。P−L方向への動作アシストが開始されると、図15の停止状態65からPLアシスト状態66へと、アシストコントロールユニット22aの状態遷移が移動する。
図16は、セレクトレバー2に対してP−L方向に操作力が加わって、トルクセンサ21で検出されたトルク値が正方向に増加する様子を示した図である。セレクトレバー2に操作力が加えられてトルク値が上昇し、第1閾値を越えると、アシストコントロールユニット22aが動作アシストを開始する。
その後、アシストコントロールユニット22aは、ポテンショメータ25より受信するストローク角度度信号に基づいて、セレクトレバー2の移動位置を判断し、セレクトレバー2がP−L方向に隣接するポジションの所定位置に移動されると動作アシストのアシストストップ条件を満たしたと判断して(ステップS.307)、動作アシストを停止する(ステップS.308)。図15に示す状態遷移図においては、ステップS.307の処理によりアシストストップ条件が満たされると判断した場合には、PL停止準備状態67に遷移状態が移動する。
アシストコントロールユニット22aは、動作アシストを停止(ステップS.308)した後に、再度、PL方向起動操作力演算部60において第1閾値(正の値)の設定を行い(ステップS.309)、LP方向起動操作力演算部61において第2閾値(負の値)の設定を行い(ステップS.310)、移動されたポジション位置においてトルク値の読み取り処理(ステップS.303)を繰り返し行う。
ステップS.309及びステップS.310において、第1閾値及び第2閾値の設定を行うのは、移動されたポジション位置等に応じて閾値の設定値を変えることが望ましい場合があり、また後述する実施例3のように、閾値の値を一時的に高い値又は低い値に変化させる場合があるためである。
図15に示す状態遷移図のPL停止準備状態67において、「1.アシスト停止」処理はステップS.308の処理が該当し、「2.PL方向起動判定閾値設定」処理はステップS.309の処理が該当し、「3.LP方向起動判定閾値設定」処理はステップS.310の処理が該当する。この3処理(ステップS308〜S.310)が終了した後に、遷移状態が停止状態65に移行する。
トルク値が第2閾値以下であった場合(ステップS.305でYESの場合)、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバー2がL−P方向に移動されたと判断し、L−P方向への動作アシストを開始する(ステップS.311)。以後、アシストコントロールユニット22aは、ステップS.307〜S.310で説明した処理と同様に、動作アシストのストップ条件判断を行い(ステップS.312)、ストップ条件を満たす場合には動作アシストを停止し(ステップS.313)、第2閾値の設定(ステップS.314)、第1閾値の設置(ステップS.315)を行い、トルク値の読み込み処理(ステップS.303)を繰り返し実行する。遷移状態図においても、LPアシスト状態68(ステップS.311)に移行し、その後にLP停止準備状態69(ステップS.313〜S.315)を経て、停止状態65(ステップS.303)へと移行する。
このように、アシストコントロールユニット22aは、トルクセンサ21により検出されたトルク値に応じて第1閾値(正の値)以上のトルク値を得た場合には、P−L方向に操作力が加えられたと判断して、P−L方向への動作アシストを開始し、第2閾値(負の値)以下のトルク値を得た場合には、L−P方向に操作力が加えられたと判断して、L−P方向への動作アシストを開始するので、運転者によるセレクトレバー2の操作方向をトルク値より判断することができ、運転者が操作を行う方向に確実且つ安定して動作アシストを行うことが可能となる。
次に、実施例3に係るセレクトアシスト機構について説明する。実施例2に係るセレクトアシスト機構では、セレクトレバー2の操作方向に応じて第1閾値と第2閾値との2つの閾値を設定し、検出されたトルク値が第1閾値又は第2閾値のどちらの閾値を越えたかによってセレクトレバー2の操作方向を判断することを特徴としている。一方で、トルクセンサ21により検出されるトルク値は、実施例1で説明したように、セレクトレバー2の移動に伴ってディテントピン29が次のシフト位置のカム山27aの溝に落ち込んで引き込まれることによって慣性力が発生して急速に減少し(図6のβ)、その後に慣性力により生じたトルクを得たディテントピン29が次のカム山の端面に当たって一時的にトルク値が大きくなってしまう(図6の慣性に起因するトルク)。このため、実施例1では、動作アシストが行われた移動方向の閾値を一時的に大きくすることによって、慣性に起因するトルクによる動作アシストの発生を防止しているが、実施例2のように2つの閾値を設けている場合には、慣性により急速に減少するトルク値により、動作アシストが発生するおそれがある。
このようなセレクトレバー2の移動方向とは反対の方向に対する動作アシストの発生を防止することが可能なセレクトアシスト機構を実施例3において説明する。なお、実施例3に係るセレクトアシスト機構は、実施例2において説明したセレクトアシスト機構と同一の構成であるため、ここでの説明は省略し、同一符号を用いて説明を行う。
図17は、実施例3に係るセレクトアシスト機構を用いた自動変速装置のアシストコントロールユニット22aが、セレクトレバー2に対して動作アシストを行う処理を示したフローチャートである。図18は、図17に示す処理におけるシステムコントロールユニット22の状態遷移図である。さらに、図19(a)は、セレクトレバー2に対してP−L方向に操作力が加わって、トルクセンサ21で検出されたトルク値が増加する様子を示したトルク値の時経変化を示した図であり、図19(b)は、セレクトレバー2に対してL−P方向に操作力が加わって、トルクセンサ21で検出されたトルク値が減少する様子を示したトルク値の時経変化を示した図である。以下、図17〜図19を用いてアシストコントロールユニット22aの動作アシスト処理を説明する。
アシストコントロールユニット22aは、P−L方向に対する動作アシストを開始するための第1閾値(正の値)を設定し(ステップS.301)、その後、L−P方向に対する動作アシストを開始するための第2閾値(負の値)の設定を行う(ステップS.302)。
次に、アシストコントロールユニット22aは、設定された第1閾値と第2閾値との閾値演算処理(ステップS.401)を行う。この閾値演算処理とは、後述する動作アシスト停止後の第1閾値及び第2閾値の設定(ステップS.402〜S.405)において一時的に高い値に設定した第1閾値、一時的に低い値に設定した第2閾値を、一定時間をかけて基準となる閾値へ戻す処理を行うものであって、実施例1において説明した式1〜式3を用いて閾値を経時的に徐々に戻す処理を行う。
その後、アシストコントロールユニット22aは、ポテンショメータ21より受信する操作力信号に基づいてトルク値の読み取りを行う(ステップS.303)。
その後、アシストコントロールユニット22aは、PL方向起動判定部62を用いて、読み取られたトルク値が第1閾値以上の値であるか否かの判断を行う(ステップS.304)。トルク値が第1閾値以上でない場合(ステップS.304でNOの場合)には、LP方向起動判定部63を用いてトルク値が第2閾値以下であるか否かの判断を行う(ステップS.305)。トルク値が第2閾値以下でない場合(ステップS.305でNOの場合)には、閾値演算処理(ステップS.401)に処理を移行する。
図18に示す状態遷移図の停止状態において、STOP実行処理の「1.起動判定」処理とは、トルク値と第1閾値及び第2閾値と比較処理(ステップS.304、ステップS.305)を示しており、「2.起動判断閾値演算」は、閾値演算処理(ステップS.401)を示している。
トルク値が第1閾値以上の場合(ステップS.304でYESの場合)、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバーがP−L方向に移動されたと判断し、P−L方向への動作アシストを開始する(ステップS.306)。P−L方向への動作アシストが開始されると、図18の状態遷移図に示す停止状態65からPLアシスト状態66へと、アシストコントロールユニット22aの状態遷移が移動する。
セレクトレバー2に対してP−L方向に操作力が加わって、トルクセンサ21で検出されたトルク値が正方向に増加すると、図19(a)に示すようにトルク値が上昇し、トルク値が第1閾値を越えると、アシストコントロールユニット22aが動作アシストを開始する。
その後、アシストコントロールユニット22aは、ポテンショメータ25より受信するストローク角度度信号に基づいて、セレクトレバー2の移動位置を判断し、セレクトレバー2がP−L方向に隣接するポジションの所定位置に移動されると動作アシストのアシストストップ条件を満たしたと判断して(ステップS.307)、動作アシストを停止する(ステップS.308)。図18に示す状態遷移図において、ステップS.307の処理によりアシストストップ条件が満たされると判断した場合には、PL停止準備状態67に遷移状態が移動する。
アシストコントロールユニット22aは、動作アシストを停止(ステップS.308)した後に、再度、PL方向起動操作力演算部60を用いて第1閾値(正の値)の設定を行い(ステップS.402)、さらにLP方向起動操作力演算部61を用いて第2閾値(負の値)の設定を行う(ステップS.403)。このステップS.402における第1閾値の設定処理により、閾値が図19(a)に示すように一時的に高い値に変更されるので、実施例1において説明したように、慣性に起因するトルクによってトルク値が一時的に高い値を示す場合であっても動作アシストが開始されてしまうことを防止することが可能となる。
さらにステップS.403における第2閾値の設定処理において、アシストコントロールユニット22aは、LP方向起動操作力演算部61を用いて、動作アシストの基準となる第2閾値をK倍(Kは定数、例えば2倍)低い値に設定する。ここで、セレクトレバーがP−L方向に移動され、ディテントピン29が次のシフト位置のカム山27aの溝に落ち込んで引き込まれることによって慣性力が発生してトルク値が急速に減少した場合(図6、図20、図21に示されるβ)、この減少の割合は、その後に慣性力により生じたトルクを得たディテントピン29が次のカム山の端面に当たって一時的にトルク値が大きくなる割合(図6の慣性に起因するトルク、図20、図21に示されるΓ)よりも大きい。このため、第1閾値の増加割合と同じ割合で第2閾値を減少させた場合には、図20に示すように、動作アシスト停止後に減少したトルク値が第2閾値以下(トルク値<第2閾値)となってしまうおそれがあり、トルク値が第2閾値以下となるとセレクトレバー2の操作方向(P−L方向)の逆方向(L−P方向)に動作アシストが開始されてしまってセレクトレバー2をP−L方向への移動する際に、運転者がレバーの引っかかり感を感じるおそれがある。そこで、ステップS.403において、アシストコントロールユニット22aは、第2閾値をK倍だけ低い値に設定することによって、図21に示すように、減少するトルク値が第2閾値以下とならないようにする。
図18に示す状態遷移図のPL停止準備状態67における、PL、STOP状態移行処理の「1.アシスト停止」処理はステップS.308の処理が該当し、「2.PL方向起動判定閾値設定」処理はステップS.402の処理が該当し、「3.LP方向起動判定閾値設定×K倍」処理はステップS.403の処理が該当する。この3処理(ステップS308、S.402、S.403)が終了した後に、遷移状態が停止状態65に移行し、アシストコントロールユニット22aは、閾値演算処理(ステップS.401)を再度実行する。
このように、P−L方向に対する動作アシストが停止した後に、図19(a)に示すように、第1閾値を高い値に設定し、且つ第2閾値を低い値に設定することによって、慣性に起因するトルクの増加及び慣性力による急速なトルクの減少によって動作アシストが再度行われることを防止することができる。特に、第2閾値をK倍低い値に設定することによって、セレクトレバー操作時にL−P方向への動作アシストが実行されてしまい、レバー操作に引っかかり感をあたえることを防止することができる。
また、トルク値が第2閾値以下であった場合(ステップS.305でYESの場合)、アシストコントロールユニット22aは、セレクトレバー2がL−P方向に移動されたと判断し、L−P方向への動作アシストを開始する(ステップS.311)。以後、アシストコントロールユニット22aは、ステップS.307〜S.310で説明した処理と同様に、動作アシストのストップ条件判断を行い(ステップS.312)、ストップ条件を満たす場合には動作アシストを停止し(ステップS.313)、第2閾値の設定(ステップS.404)、第1閾値の設置(ステップS.405)を行い、閾値演算処理(ステップS.401)を再度実行する。なお、ステップS405においても、L−P方向にセレクトレバー2が移動するときに、慣性力による急速なトルクの増加によるP−L方向への動作アシストを防止するために、第1閾値の値をK倍高い値に設定する。
図18に示す遷移状態図においても、停止状態65からLPアシスト状態68(ステップS.311)に移行し、その後にLP停止準備状態69(ステップS.313、S404、S.405)を経て、停止状態65(ステップS.401)へと移行する。
L−P方向に対する動作アシストが停止した後に、図19(b)に示すように、第2閾値を低い値に設定し、且つ第1閾値を高い値に設定することによって、慣性に起因するトルクの減少及び慣性力による急速なトルクの増加によって動作アシストが再度行われることを防止することができる。特に、第1閾値をK倍高い値に設定することによって、セレクトレバー2操作時にP−L方向への動作アシストが実行されてしまい、レバー操作に引っかかり感をあたえてしまうことを防止することができる。
このように、動作アシスト停止後に第1閾値を高い値に設定し、第2閾値を低い値に設定することによって無用に動作アシストが生ずることを防止することがきるので、セレクトレバー2の動作アシストにおいて運転者に違和感をあたえることがなく、連続的にセレクトレバー2を操作する場合であっても、ポジション位置を通過時に引っかかり感をあたえることがない。
また、動作アシスト停止後に第1閾値を高い値に設定し、第2閾値を低い値に設定するので、例えば、セレクトレバーのゲート等への接触や、セレクトレバー動作時のメカ反動等によりトルク変動が生じた場合であっても、容易にトルク値が第1閾値及び第2閾値を越えることがなく、意図しない動作アシストが生じることを防止することができる。
さらに、セレクトレバー2操作後に次のポジション位置にセレクトレバー2を動作せる場合、第1閾値の値の減少及び第2閾値の増加が経時的に徐々に行われて閾値が連続的に変化するため、動作アシスト処理に不自然さを生ずることがない。
以上、実施例3に係るセレクトアシスト機構の説明を行ったが、本実施例に係るアシストセレクト機構は上述したものに限定されるものではない。例えば、本実施例では、高い値に設定した第1閾値の値を徐々に減少させ、低い値に設定した第2閾値の値を徐々に増加させる構成としたが、必ずしも徐々に閾値を変化させる必要はない。例えば、一定時間経過するまで、具体的には、慣性に起因するトルク値の増減等が生じて第1閾値及び第2閾値を越えるおそれがある期間が経過するまで第1閾値を高くし、第2閾値を低くしておいて、その期間が経過後に、閾値をもとの値に戻すようにしてもよい。
次に、実施例4に係るセレクトアシスト機構について説明する。
一般的なセレクトアシスト機構は、セレクトレバーに加えられるトルク値(操作力)をトルクセンサが検出し、検出されたトルク値が所定値以上の場合にモータ等が起動してセレクトレバーの動作アシストを行う構造となっている。また、一般的な動作アシストは、実施例1〜実施例3で示したようにセレクトレバーの操作位置をポテンショメータ等で検出し、セレクトレバーが隣接するポジション位置の所定位置(停止位置)に移動されることによって停止される。
しかしながら、セレクトレバーがPポジション位置に位置する場合には、隣接するポジション位置はRポジションだけであり、セレクトレバーがLポジション位置に位置する場合には、隣接するポジション位置はDポジションだけしか存在しない。このため、Pポジションから壁側方向(Rポジション位置の反対方向)に操作力が加えられたり、Lポジションから壁側方向(Dポジション位置の反対方向)に操作力が加えられたりした場合には、“セレクトレバーが停止位置に移動されたときに動作アシストを停止させる”という制御条件を用いることができないという問題があった。
ここで、一般的な車両では、意図しない車両の発進等を防止するために、運転者がセレクトレバーに設けられた操作ボタンを操作しないとPポジション位置に位置するセレクトレバーを他のポジション位置(具体的には、隣接するRポジション位置)に移動することができない。このため、Pポジション位置において操作レバーを操作せずにセレクトレバーに操作力が加えられた場合には、Pポジション内で動作アシストが行われて振動等が発生するという問題があった。しかしながら、Pポジション位置における振動に対しては、特願2004−200086号において開示される発明のようにモータの駆動力を制限してモータの動作アシスト方向の逆転を防止することによって振動を防止する技術が考えられている。
一方で、Dポジション位置からLポジション位置に向けて(D−L方向に向けて)勢いよくセレクトレバーを操作したり、Lポジションに位置するセレクトレバーを壁側に押しつけたりすると、セレクトレバーがLポジションの壁に当たって壁の反対方向(Dポジション方向)へのトルクが発生し、結果としてLポジション位置からDポジション位置(L−D方向)への動作アシストが生じセレクトレバーがDポジション方向に移動してしまうおそれがあるという問題があった。
実施例4に係る発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、Lポジション位置から壁方向に向けてセレクトレバーに操作力が加えられた場合であっても、Dポジション方向に対する動作アシストが発生してセレクトレバーがDポジション方向に移動してしまうことを防止することが可能なセレクトアシスト機構を提供することを課題とするものである。
なお、実施例4に係るセレクトアシスト機構は、実施例1において説明した構成と同一構成であるため、ここでの説明は省略し、同一部分については同一符号を用いて説明を行う。
図22は、実施例4に係るセレクトアシスト機構を用いた自動変速装置のアシストコントロールユニット22が行う動作アシスト処理を示したフローチャートである。
アシストコントロールユニット22は、まず、ステップS.500において、変数StateにStopを設定し、変数ConstThreshに起動閾値を設定する。ここで変数Stateとは、図23に示す状態遷移図における遷移状態を示した変数であり、動作アシストを行っていない場合(停止状態70)にはStopを設定し、P−L方向への動作アシストを行っている場合(PLアシスト状態71)にはPL_Assistを設定し、L−P方向への動作アシストを行っている場合(LPアシスト状態72)にはLP_Assistを設定する。起動閾値とは、実施例1で説明したように、動作アシストが開始される基準となる閾値であり、例えば0.3N・m等が相当する値である。
次に、アシストコントロールユニット22は、ステップS.501において、変数Trqにトルクセンサ21が検出する操作力信号のトルク値を代入し、変数Posにポテンショメータ25が検知するストローク角度信号を代入する。その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS.502において、変数StateがStopであるか否かを判断する。ここでは、ステップS.500で変数StateにStopが設定されているので、アシストコントロールユニット22は、YESと判断して処理をステップS.503へ移行する。
ステップS.503では、図8に示す演算回路を用いて規定値(ConstThresh)を変動させた閾値(Thresh)を求める。具体的には、実施例1において説明した式1〜式3を用いて、変数Delay、Temp、定数a、bとして、
Temp=ConstThresh−Delay …式1
Thresh=Temp×b−Delay …式2
Delay=Delay+Temp×a …式3
の式に各値を代入することで閾値(Thresh)を求める。
なお、最初のステップS.503の処理ではDelayはゼロである。規定値(ConstThresh)は予め設定されている値である。なお、図8はこれらの演算を行う演算装置の構成をブロック線図で表したものであり、q-1は1サンプル時間の遅れを表している。
その後、アシストコントロールユニット22は、ステップS.504において、ステップS.501で変数Trqに代入したトルク値がステップS.503で演算した閾値(Thresh)より大きいか否かを判断し、大きい場合(YESの場合)には、処理をステップS.506へ移行し、小さい場合(NOの場合)にはステップS.505へ移行する。
ステップS.505では、ステップS.504と同様にステップS.501で変数Trqに代入したトルク値が閾値(−Thresh)より小さいか否かが判断され、小さい場合(YESの場合)にはステップS.507へ処理を移行し、大きい場合(NOの場合)にはステップS.501へ移行する。つまり、アシストコントロールユニット22は、閾値(−Thresh)<トルク値<閾値(Thresh)である間、具体的にはセレクトレバー2が十分に移動されるまでの間ステップS.501〜ステップS.505の処理動作を繰り返し実行する。
ステップS.501〜ステップS.505の処理が繰り返し実行されることにより、図6に示すように最初に大きな閾値(Thresh)を設定してその値を時定数的に下げて、規定値(ConstThresh)に収束させることが可能となる。これは、セレクトレバー2を移動(回動)させている際に、ディテントピン29がカム山27aを越えて谷部27bに落ちると、慣性力によりディテントピン29が次のカム山27aの端面に当たることから、図6に示すように一時的にトルクセンサ21に発生するトルク値が大きくなり、規定値(ConstThresh)を越えて再度動作アシストを実行してしまうおそれがあるので、これを防止するようにしたものである。
そして、セレクトレバー2をP−L方向に移動(回動)させることによって、トルク値が増加して閾値(Thresh)よりも多くなった場合には、ステップS.504においてYESと判断して処理をステップS.506へ移行する。また、セレクトレバー2がL−P方向に移動(回動)させることによってトルク値が低減して閾値(−Thresh)よりも小さくなる場合には、ステップS.505においてYESと判断して処理をステップS.507へ移行する。なお、ステップS.504、ステップS.505における判断処理時は、セレクトレバー2を回動させ始めた初期段階なので、トルクセンサ21に発生するトルク値が図6に示すように急激に大きくなってしまうことはない。
例えば、セレクトレバー2がP−L方向に移動された場合には、セレクトレバー2の移動(回動)とともにトルクセンサ21に発生するトルク値が大きくなっていく一方、時間の経過とともにステップS.503で求める閾値(Thresh)が下がってくるので、所定時間後(例えば数十ミリ秒後)にはステップS.504でYESと判断される。すなわち、ステップS.501で変数Trqに代入したトルク値が所定時間後に閾値(Thresh)を越える。
ステップS.506において、アシストコントロールユニット22は、変数StateにPL_Assistを設定し、ステップS.501で求めたストローク角度信号からセレクトレバー2のポジション位置すなわちポジションP,R,N,D,Lを求め、この求めたP,R,N,D,Lの値を変数Positionに代入するとともに、モータ駆動制御部(モータ駆動制御ブロック)45のデューティの下限値を5%に設定する。
同様に、セレクトレバー2がL−P方向に移動された場合には、セレクトレバー2の移動(回動)とともにトルクセンサ21に発生するトルク値が小さくなっていく一方、時間の経過とともにステップS.503で求める閾値(Thresh)が上がってくるので、所定時間後(例えば数十ミリ秒後)にはステップS.505でYESと判断される。すなわち、ステップS.501で変数Trqに代入したトルク値が所定時間後に閾値(Thresh)以下となる。
ステップS.507において、アシストコントロールユニット22は、変数StateにLP_Assistを設定し、ステップS.501で求めたストローク角度信号からセレクトレバー2のポジション位置すなわちポジションP,R,N,D,Lを求め、この求めたP,R,N,D,Lの値を変数Positionに代入するとともに、モータ駆動制御部(モータ駆動制御ブロック)45のデューティの下限値を5%に設定する。
ステップS.506又はステップS.507の処理の後、アシストコントロールユニット22は、ステップS.501に処理を戻し、最新の操作力信号(トルク値)とストローク角度信号を取得する。
本実施例は、Lポジション位置に位置するセレクトレバー2に対して壁方向に向かう操作力が加えられた場合に反対方向に動作アシストが発生することを回避するための発明であり、セレクトレバー2にはP−L方向の力が加えられるので、ステップS.504においてYESと判断されてステップS.506で変数StateにPL_Assistが設定され、変数PositionにLの値が代入されるとともに、モータ駆動制御部(モータ駆動制御ブロック)45のデューティの下限値が5%に設定される。
ステップS.502では、ステップS.506で変数StateがPL_Assistに設定されてStopではなくなっているため、アシストセレクトコントロールユニット22がNOと判断して、処理をステップS.508へ進める。
ステップS.508では、変数StateがLP_Assistであるか否かが判断される。ここでは、ステップS.506で変数StateがPL_Assistに設定されているので、アシストコントロールユニット22は、NOと判断して処理をステップS.509へ移行する。
ステップS.509において、アシストコントロールユニット22は、変数StateがPL_Assistであるか否かを判断する。ステップS.506において変数StateがPL_Assistに設定されているので、アシストコントロールユニット22は、YESと判断して処理をステップS.510へ移行する。
ステップS.510では、セレクトレバー2の位置を判断する。これは、ポジション毎に予め設定されている停止位置に対応した配列StopPLの値(電圧値)とステップS.501で取得した最新のストローク角度信号とを比較し、動作アシストを停止する所定のセレクトレバー位置(停止位置)を越えているかを判断する。すなわち、停止位置を越えていればYESと判断されてステップS.511へ処理を移行し、越えていなければNOと判断してステップS.512の処理へ移行する。
本実施例のように、Lポジション位置にあるセレクトレバー2を壁側に押し当てて壁側方向に操作力を加えた場合には、Lポジションよりも壁側にシフトレバー2を移動させることができないので、シフトレバーが停止位置を越えるという条件によって動作アシストを停止することができない。つまり、ステップS.510の処理においてYESと判断されて処理がS.511に移行することはない。このため、アシストコントロールユニット22は、処理をステップS.512に移行させる。
なお、シフトレバー2がLポジション位置以外のポジション位置に位置しており、このポジション位置よりP−L方向にセレクトレバー2を移動させた場合には、アシストコントロールユニット22が処理をステップS.511に移行して変数StateをStopに設定し、遷移状態を停止状態70に移行させてモータ駆動制御部45の動作を停止させ、変数Delayにゼロを設定して処理をステップS.501へ戻す。
ステップS.512では、ステップS.501で得られたトルク値が0.2N・m以下であり、且つ、電動モータ15がデューティ5%で駆動されているか否かが判断される。この条件を満たしていない場合(NOの場合)、アシストコントロールユニット22は、処理をステップS.513に移行し、条件を満たしている場合(YESの場合)には、処理をステップS.514へ移行する。
アシストコントロールユニット22は、ステップS.513において、内部カウンタ(Count)のカウント値をゼロに設定し、ステップS.515において比例制御を実行して電動モータ15を駆動させて動作アシスト処理を実行し、処理をステップS.501へ戻す。
すなわち、セレクトレバー2に対してLポジションの壁側方向に操作力が加えられて、トルクセンサ21で検出されるトルク値が0.2N・m以上の場合、又は、動作アシストが行われて電動モータ15がデューティ5%となっていない場合には、ステップS.515の操作アシスト処理を実行した後に、ステップS.501、S.502、S.508、S.509、S.510、S.512、S.513、S.515の処理を繰り返して動作アシスト処理を実行する。
しかしながら、動作アシストによって電動モータ15が操作力の加えられる方向に向けて駆動されると、電動モータ15の駆動によりトルクセンサ21は捻れが生じない釣り合った状態に近づいていくため、トルクセンサ21により検出されるトルク値が序徐にゼロに近づいてくる。しかしながら、トルク値が小さくなって0.2N・m以下となっても、ステップS.512において、電動モータ15がデューティ5%で駆動されるまで動作アシストが継続して実行されてLポジションの壁側に向かう動作アシストが繰り返し継続して実行される。
トルク値が0.2N・m以下となって、さらに、電動モータ15がデューティ5%で駆動されると、処理がステップS.512からステップS.514に移行する。
アシストコントロールユニット22は、ステップS.514において、内部カウンタの値に「1」を代入させ、ステップS.516で内部カウンタのカウント値が「20」より大きくなったか否かを判断し、大きくなっていない場合(NOの場合)には処理を、ステップS.515に移行し、大きくなっている場合(YESの場合)には、ステップS.517に移行する。
すなわち、セレクトレバー2を壁側方向に押し当てて操作力を加えた場合には、ステップS.500、S.501、S.502、S.504、S.506の処理が行われ、この後、トルクセンサ_のトルク値が0.2N・m以下であり、且つ、電動モータがデューティ5%で駆動されるまで、ステップS.501、S.502、S.508、S.509、S.510、S.512、S.513、S.515の処理が繰り返し行われる。すなわち、トルクセンサ21のトルク値が0.2N・m以下で且つ電動モータ15がデューティ5%で駆動されるまで動作アシストが行われる。
セレクトレバー2がLポジションの壁に当たってセレクトレバーの回動が規制され、電動モータ15の駆動とともにトルクセンサ21が検出するトルク値が低下してトルク値が0.2N・m以下となり、さらに、電動モータ15がデューティ5%で駆動されると、アシストコントロールユニット22は、処理をステップS.514に移行し、ステップS.516において内部カウンタのカウント値が「20」を越えるまで、ステップS.501、S.502、S.508、S.509、S.512、S.514、S.516、S.515の処理を繰り返して動作アシスト処理を継続する。
ステップS.516において、内部カウンタのカウント値が20を越えると、アシストコントロールユニット22は処理をステップS.517に移行し、変数StateにStopを設定してモータ駆動制御部45の動作を停止させ、変数Delayにゼロを設定し、さらに内部カウンタのカウント値をゼロに設定してステップS.501の処理を繰り返し実行する。
モータ駆動制御部45の動作停止により電動モータ15の駆動が停止するが、トルクセンサ21のトルク値は0.2N・m以下となり且つ電動モータ15のデューティが5%になってから電動モータ15が停止されるまで一定の時間が経過されて、具体的には、内部カウンタのカウント値が「20」になるまで時間(ステップS.501、S.502、S.508、S.509、S.510、S.512、S.514、S.516、S.515の処理時間が例えば10m秒であるとすると合計200m秒)が経過されて、電動モータ15の駆動力が微少となっているので、“電動モータ15の停止と同時にトルクセンサ21に生じていた捻れの釣り合いが崩れて反対方向へ向かうトルクが発生し、L−P方向に動作アシストが行われる”という不都合を回避することが可能となる。
なお、もし、セレクトレバー2がL−P方向に移動された場合には、ステップS.500、S.501、S.503、S.504、S.505、S.507へと処理が進み、ステップS.507において、変数StateにLP_Assistが設定され、ステップS.501、S.502、S.503へと処理が進み、ステップS.503で変数StateがLP_Assistであることから処理がステップS.518に移行し、ステップS.518においてセレクトレバー2が停止位置に達するまで比例制御を実行してモータ駆動制御部45を駆動させて動作アシストを行い、停止位置に到達した場合には、処理をステップS.520に移行して変数StateをStopに設定して遷移状態をStopに移行し、モータ駆動制御部45の動作を停止させ、変数Delayにゼロを設定し、処理をステップS.501へ戻す。
以上説明したように、本実施例に係るセレクトアシスト機構を用いることによって、セレクトレバー2に対してLレンジの壁側方向に操作力が加えられた場合であっても、トルク値と電動モータの駆動力とがほぼセロ近傍になってから動作アシストを停止するので、側壁の反対側へ向かうトルク値上昇によってL−P方向に対する動作アシストが実行されてしまうことを防止することが可能となる。
自動変速装置の構成を示した概略図である。
アシストアクチュエータの細部構造を示した斜視図である。
アシストコントロールユニットを示したブロック図である。
自動変速ユニットのディテント構造を示した斜視図である。
アシストコントロールユニットにおけるセレクトレバーのアシスト処理を示したフローチャートである。
セレクトレバーがP→Rポジションに操作される際に、トルクセンサで検出されるトルク値の経時変化を示した図である。
慣性に起因するトルクが発生する場合に一時的に閾値を変化させる処理を示したフローチャートである。
慣性に起因するトルクが発生する場合に一時的に閾値を変化させる演算回路を示した図である
図7に示すフローチャートにおける状態の遷移を示した図である。
閾値の経時変化を示した図である。
セレクトレバーがP→Rポジションに操作される際に、トルクセンサで検出されるトルク値にフィルタ処理を施した値の経時変化を示した図である。
慣性に起因するトルクが発生する場合にトルクセンサで検出されるトルク値にフィルタ処理を施す処理を示したフローチャートである。
実施例2におけるアシストコントロールユニットを示したブロック図である。
実施例2におけるアシストコントロールユニットの動作アシスト処理を示したフローチャートである。
実施例2におけるアシストコントロールユニットの状態遷移図である。
実施例2におけるトルク値の経時変化を示したグラフである。
実施例3におけるアシストコントロールユニットの動作アシスト処理を示したフローチャートである。
実施例3におけるアシストコントロールユニットの状態遷移図である。
実施例3におけるトルク値の経時変化を示したグラフであって、(a)はトルク値が第1閾値を越えた場合を示しており、(b)はトルク値が第2閾値を越えた場合を示している。
実施例3において、第2閾値をK倍の値に設定していない状態におけるトルク値の経時変化を示したグラフである。
実施例3において、第2閾値をK倍の値に設定した状態におけるトルク値の経時変化を示したグラフである。
実施例4におけるアシストコントロールユニットの動作アシスト処理を示したフローチャートである。
実施例4におけるアシストコントロールユニットの状態遷移図である。
符号の説明
1 セレクトユニット
9 アシストアクチュエータ
19自動変速ユニット
21 トルクセンサ(入力操作力検出手段)
22.22a アシストコントロールユニット(アシスト力制御手段)
25 ポテンショメータ(操作位置検出手段)
100 自動変速装置