JP4669715B2 - 複合材料シートの製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複合材料シートの製造装置に係り、特に、基材上に有機溶剤を硬化してなる樹脂の薄膜層を備えた複合材料シートの製造装置に関する。
従来から、基材上に樹脂の薄膜層を備えた複合材料シートが種々の分野において利用されている。
例えば、基材として金属の薄膜の1種である銅箔とした複合材料シートはフレキシブルプリント基板として、基材をステンレス箔(SUS箔)としたものはHDD(ハードディスク)のバネ材として、また、基材を洋白としたものは絶縁シールドとして、さらにまた、基材をPET(ポリエステルフィルム)、PEN、PES、プチラール、ナイロン等としたものは、耐熱性フィルムあるいは電子用カバーレイフィルムとして使用されている。
このような多岐の利用分野にわたる複合材料シートの製造に際しては、長尺の基板を、ローラ等の搬送手段によって塗工位置まで搬送するとともに、塗工位置において、ダイコートやグラビアコート等の塗工方法を用いて前記基材上に有機溶剤を塗布し、その後、前記有機溶剤を乾燥して有機溶剤中の溶媒を除去することによって前記有機溶剤の硬化を行っていた。この結果、前記基材上に前記有機溶剤を硬化してなる樹脂の薄膜層が形成された複合材料シートが得られるようになっていた。
特開2001−179919号公報
しかしながら、従来は、複合材料シートの成形に際して、基材上に塗布した有機溶剤を乾燥して硬化することによって基材上に樹脂の薄膜層を形成する段階において、複合材料シートの幅方向の両端縁が樹脂の薄膜層側にめくれ上がってフィルム全体が丸みを帯びるカールと称される現象が生じてしまうことが問題となっていた。
特に、近年の携帯電話機、液晶テレビその他の電子機器においては小型化、複雑化が進み、これらの機器に用いられている基材を銅箔とした複合材料シートから成るフレキシブルプリント基板に対して、更なる薄膜化を図るとともに、優れた耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等が要求されているが、これを満たすものがなかった。
更に説明すると、銅箔に塗布される樹脂はポリイミド樹脂であるが、このポリイミド樹脂は、樹脂の前駆体であるアミック酸溶液を塗布原料とし、乾燥時にMMP溶媒を除去するようにしてキュア(硬化)しながら反応させてポリイミド樹脂とするため、反応による収縮が他の樹脂に比べて著しく大きく、カールがより発生し易いものとなっていた。
また、ポリイミド樹脂においては、MMP溶媒を有機溶剤中から揮散させにくい樹脂であることも、ポリイミド樹脂がカールを発生させ易いことの一因と考えられている。
また、このMMP溶媒が100%除去されないと、配線時の半田結線において、250℃以上に熱せられる場合、ポリイミド樹脂内のMMP溶媒が蒸発し、銅箔とポリイミドが剥離しピール強度が著しく低下し、最悪の場合は銅箔と剥離するという不都合があった。
そこで、従来においては、アミック酸溶液を銅箔にコーティングした後に、ステンレスメッシュシートにコーティング後の材料を巻き付けて巻き取った物を窒素雰囲気内の炉に入れて加熱するようにしていたが、500℃〜700℃で48時間入れないと、MMP溶媒が除去されず、製品にならないという不都合があった。また、ステンレスメッシュの跡が銅箔に凹凸として残るので、製品として問題が生じる場合があった。特に、多層時には跡に空気が入る可能性が有り、多層のフレキシブル基板には不向きであった。
本発明は、これらの点に鑑みなされたものであり、複合材料シートの薄膜化を図ることができ、カールの発生を有効に防止することができ、ひいては、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等に優れている高品質の複合材料シートを得ることができる複合材料シートの製造装置を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る複合材料シートの製造装置は、連続した基材上に有機溶剤を塗布した後、この基材上の有機溶剤を所定の雰囲気温度下で乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記有機溶剤を硬化してなる樹脂の薄膜層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シートの製造装置において、有機溶剤を塗布された基材をその長手方向に搬入・搬出自在としたキュア炉を設け、このキュア炉内に基材の有機溶剤が塗布されていない面を巻回させて自由回転状態で回転して搬送するとともに基材の有機溶剤と反対側の表面の温度を、前記ガラス転移点よりも低い温度に保持するように形成されているロールと、このロールと基材との間に不活性ガス膜を形成させるとともに前記キュア炉内を低酸素濃度に維持する不活性ガス供給手段と、前記ロールに巻回されている基材に塗布されている有機溶剤を前記樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する加熱手段とを設けたことを特徴とする。
そして、このような装置によれば、基材がキュア炉の低酸素濃度の雰囲気内を通過する間に、基材は有機溶剤が塗布されていない面をロールの外周を間に不活性ガス薄膜を介在させて搬送されるとともに、樹脂のガラス転移点以上に加熱されて溶媒を十分に除去されるようにして硬化される。これによりカールの全くないない薄膜状の複合材料シートであって、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等に優れている高品質の複合材料シートをが得られる。また、基材自体を樹脂のガラス転移点より低い温度に保持して基材の優れた特性を維持した複合材料シートを得ることができる。
請求項2に係る複合材料シートの製造装置は、請求項1において、前記ロールは、外周面に細かな凹凸が形成されていることを特徴とする。
そして、このような装置によれば、ロールの外周面とこれに巻回されている基材の有機溶剤が塗布されていない面の間には不活性ガス膜がより確実に形成されこととなり、基材の有機溶剤が塗布されていない面に酸素が供給されることを確実に防止して、酸化を確実に防止することができる。
請求項3に係る複合材料シートの製造方法の特徴は、請求項1または請求項2において、基材は銅または他の金属の薄膜であり、樹脂はポリイミド樹脂であり、不活性ガスは窒素ガスであり、酸素濃度は100〜2500PPMであることを特徴とする。
そして、このような装置によれば、銅箔等の金属製の基材を用いる場合において、基材の温度が高すぎることによる基材の酸化を有効に防止することが可能となり、しかもポリイミド樹脂を含有されていた溶媒を完全に除去して硬化させることができる。
本発明の複合材料シートの製造装置によれば、複合材料シートの薄膜化を図ることができ、カールの発生を有効に防止することができ、ひいては、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等に優れている高品質の複合材料シートを得ることができる等の優れた効果を奏する。
具体的には、請求項1に係る複合材料シートの製造装置によれば、基材がキュア炉の低酸素濃度の雰囲気内を通過する間に、基材は有機溶剤が塗布されていない面をロールの外周を間に不活性ガス薄膜を介在させて搬送されるとともに、樹脂のガラス転移点以上に加熱されて溶媒を十分に除去されるようにして硬化される。これによりカールの全くないない薄膜状の複合材料シートであって、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等に優れている高品質の複合材料シートをが得られる。
請求項2に係る複合材料シートの製造装置によれば、請求項1に係る複合材料シートの製造装置の効果に加えて、さらに、基材自体を樹脂のガラス転移点より低い温度に保持して基材の優れた特性を維持した複合材料シートを得ることができる。
請求項3に係る複合材料シートの製造装置によれば、請求項1または請求項2に係る複合材料シートの製造装置の効果に加えて、銅箔等の金属製の基材を用いる場合において、基材の温度が高すぎることによる基材の酸化を有効に防止することが可能となり、しかもポリイミド樹脂を含有されていた溶媒を完全に除去して硬化させることができる。
次ぎに、図1および図2について、本発明の複合材料シートの製造装置の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の複合材料シートの製造装置を示している。
本実施形態の装置1においては、図に示すような銅箔からなる基材21にポリイミド樹脂22を積層した複合材料シート20を製造する場合を例として説明する。
本実施形態の装置1においては、複合材料シート20をキュアするためのキュア炉2を有している。このキュア炉2の上面には複合材料シート20をその長手方向に搬入・搬出自在とする入口3と出口4とが開設されている。キュア炉2内の中央部には複合材料シート20の基材21の有機溶剤22が塗布されていない面を巻回させて搬送する直径が200〜1000mmのロール5が回転自在に横架されている。このロール5は自由回転と駆動回転とを切換え自在に形成されている。基材21に不必要な張力を付与させない場合にはロール5を自由回転させるとよい。また、ロール5内には、基材21をポリイミド樹脂22のガラス転移点(約350℃)より低い温度に保持させるための低温ヒータ(図示せず)が内蔵されている。また、複合材料シート20のポリイミド樹脂22をガラス転移点以上に加熱するための加熱手段として、樹脂22と対面する3箇所の位置にそれぞれ加熱ヒータ6を配設している。更に、ロール5と複合材料シート20の基材21との間に不活性ガス膜を形成させるために不活性ガスの1種の窒素ガスをロール5の上部外周面に向けて噴出させる膜形成用窒素ガスノズル7が配設されている。この不活性ガス膜を確実に形成させるために、ロール5の外周面を荒れさせて細かな凹凸からなるマット処理を施すとよい。また、キュア炉2内を低酸素濃度(例えば、100〜2500PPM)とさせるための不活性ガスの1種の窒素ガスを必要量供給する2個の窒素ガスノズル8が配設されている。これらの膜形成用窒素ガスノズル7と窒素ガスノズル8とによりロール5と基材21との間に不活性ガス膜を形成させるとともにキュア炉2内を低酸素濃度に維持する不活性ガス供給手段が形成される。キュア炉2内を低酸素濃度に維持するためには、入口3と出口4とにそれぞれ窒素ガスカーテンを形成するカーテン用窒素ガスノズル9を配設するとよい。
なお、キュア炉2の上流側には、キュアする前段階の複合材料シート20を供給するシート供給手段が配設され、キュア炉2の下流側には、キュアされた複合材料シート20を徐冷して巻き取るシート巻取り手段が配設されている。
シート供給手段としては、図示しないが、例えば次のように形成するとよい。まず、複合材料シート20の原反ロールから巻き取り手段に至る基材21の搬送経路を形成し、この一連の搬送経路中に、基材21の搬送を保持する複数のローラを配設し、原反ロールの下流には、原反ロールに巻回された長尺な基材21を繰り出す繰り出し装置を設ける。この繰り出し装置の下流には、繰り出し装置から繰り出された基材21の表面に有機溶媒を塗布する塗工装置を配設する。上流側の塗工装置においては、ダイコート、リバースコーター、ナイフコーターを配設し、下流側の塗工装置においては、グラビアロールの直径が50mm以下のマイクログラビアコーターを配設するとよい。本実施形態のように有機溶剤をポリイミド樹脂とする場合には、ポリイミド樹脂が吸水性が強く空気を巻き込むと粘度の変化を起こしたり、白濁化を起こすために、コーティング後のポリイミド特性が失われる可能性が高いので、空気がふれないスロットダイを用いるとよい。また、これらの塗工装置の下流側には、基材21上の有機溶媒を乾燥するための赤外線ヒータを備えた複数(例えば3個)の乾燥炉を連設し、その後に一旦有機溶剤を冷却して常温に戻し、その後キュア炉2に導入する温度、例えば250℃まで徐加熱するとよい。
キュア炉2の下流側の巻き取り装置としては、出口4から搬出された高温の複合材料シート20を常温まで徐冷させ、その後に巻取りロールに巻き取るように形成するとよい。
次ぎに、本実施形態の作用を説明する。
キュア炉2の上流側のシート供給手段によって約250℃程度に徐加熱されている基材21の銅箔とポリイミド樹脂22がカーテン用窒素ガスノズル9によって形成されている約250℃程度の窒素ガスカーテンおよび入口3を順に経てキュア炉2内に搬入される。基材21の銅箔は、ポリイミド樹脂との結合性を高くするために、若干表面が荒らされているとよい。
このキュア炉2内は窒素ガスノズル8によって供給される約250℃程度の窒素ガスにより100〜2500PPMの低酸素濃度に維持されている。基材21は硬化前のポリイミド樹脂22が塗布されている面と反対側の面を自由回転状態のロール5に巻回させる際に、膜形成用窒素ガスノズル7から噴出された約250℃程度の窒素ガスをロール5の外周面に沿って、具体的には当該外周面に形成されているマット部分によって窒素ガスを巻き込むように保温で、ロール5の外周面との間に窒素ガスの薄膜が形成される。そして、この状態において、基材21はポリイミド樹脂22のガラス転移点より低い温度に保持されているロール5に巻き付くことにより、当該ガラス転移点以下の温度に保持される。これにより基材21である銅箔は酸化作用や、異常に加熱されることがなくなる。
同時に、基材21の外側に塗布されているポリイミド樹脂22は加熱ヒータ6によりポリイミド樹脂22のガラス転移点以上の温度、即ち350℃以上の温度に加熱され、含有されている溶媒であるMMPを100%除去される。更に、キュア炉2内の若干の酸素が硬化されているポリイミド樹脂22を厚さ方向に浸透して銅箔まで到達して銅箔が若干酸化されてポリイミド樹脂22との結合性をより一層強固なものとなる。
このようにしてポリイミド樹脂22が硬化されて最終製品とされた複合材料シート20は、キュア炉2から出口4およびカーテン用窒素ガスノズル9によって形成されている約250℃程度の窒素ガスカーテンを順に経て外部に搬出される。その後、複合材料シート20は常温まで徐冷されて巻取り装置に巻き取られる。
このように本実施形態の複合材料シートの製造装置1によれば、基材21である銅箔がキュア炉2の低酸素濃度の雰囲気内を通過する間に、基材21は有機溶剤であるポリイミド樹脂22が塗布されていない面をロール5の外周を両者間に窒素ガスからなる不活性ガス薄膜を介在させて搬送されるとともに、ポリイミド樹脂22のガラス転移点以上に加熱されて溶媒であるMMPを十分に除去されるようにして硬化される。これによりカールの全くないない薄膜状の複合材料シート20を得ることができる。例えば、銅箔21の厚さを9〜25μmとし、ポリイミド樹脂22の厚さを12〜25μmとすることができる。しかも、この複合材料シート20は、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、形状維持性、剥離強度等に優れている高品質のものとなる。
更に、基材21自体を樹脂22のガラス転移点より低い温度に保持して基材21の優れた特性を維持した複合材料シート20を得ることができる。
更に、銅箔等の金属製の基材21を用いる場合であっても、基材21の温度が高すぎることによる基材21の酸化を有効に防止することが可能となり、しかもポリイミド樹脂22を含有されていた溶媒MMPを完全に除去して硬化させることができる。
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
例えば、複合材料シートとして銅箔以外の基材やポリイミド樹脂以外の樹脂を用いることができる。
本発明の複合材料シートの製造装置の1実施形態を示す概略断面図 本発明に係る複合材料シートの側面図
符号の説明
1 複合材料シートの製造装置
2 キュア炉
3 ロール
6 加熱ヒータ
7、8 窒素ガスノズル
20 複合材料シート
21 基材(銅箔)
22 有機溶剤(ポリイミド樹脂)

Claims (3)

  1. 連続した基材上に有機溶剤を塗布した後、この基材上の有機溶剤を所定の雰囲気温度下で乾燥して硬化することによって、前記基材上に前記有機溶剤を硬化してなる樹脂の薄膜層を備えた複合材料シートを製造する複合材料シートの製造装置において、
    有機溶剤を塗布された基材をその長手方向に搬入・搬出自在としたキュア炉を設け、
    このキュア炉内に基材の有機溶剤が塗布されていない面を巻回させて自由回転状態で回転して搬送するとともに基材の有機溶剤と反対側の表面の温度を、前記ガラス転移点よりも低い温度に保持するように形成されているロールと、このロールと基材との間に不活性ガス膜を形成させるとともに前記キュア炉内を低酸素濃度に維持する不活性ガス供給手段と、前記ロールに巻回されている基材に塗布されている有機溶剤を前記樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱する加熱手段とを設けた
    ことを特徴とする複合材料シートの製造装置。
  2. 前記ロールは、外周面に細かな凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合材料シートの製造装置。
  3. 基材は銅または他の金属の薄膜であり、樹脂はポリイミド樹脂であり、不活性ガスは窒素ガスであり、酸素濃度は100〜2500PPMであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合材料シートの製造装置。
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