JP4669123B2 - 架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性を有し、かつ吸水性樹脂樹として有用な架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
[吸水性樹脂の技術的背景]
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ等の衛生用品、その他、各種分野に使用されている。
【0003】
[吸水性樹脂に関する先行技術]
このような用途に使用されている吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物(特開昭55−84304号、米国特許4,625,001号)、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物(特開昭46−43995号)、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体(特開昭51−125468号)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物(特開昭52−14689号)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物(欧州特許0068189号)、カチオン性モノマーの架橋重合体(米国特許4,906,717号)、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物(米国特許4,389,513号)等が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの吸水性樹脂は、実質的に生分解性を有しないため、使用後の廃棄が問題である。現状では、これらの吸水性樹脂は、廃棄時には、焼却処理する方法と埋め立てする方法が行われているが、焼却炉で処理する方法では、焼却時に発生する熱による炉材の損傷のほかに、地球の温暖化や酸性雨の原因となることが指摘されている。また、埋め立て処理する方法では、プラスチックは、容積が嵩張り腐らないため、埋め立て後の地盤が安定しない等の問題がある上、埋め立てに適した用地の確保が困難となってきたことが大きな問題となっている。すなわち、これらの樹脂は生分解性に乏しく、水中や土壌中では、実質的に半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると、非常に厄介で重大な問題である。
【0005】
例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料用途に代表される使い捨て用途で使用する樹脂の場合は、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。また、農・園芸用保水材として架橋ポリアクリル酸樹脂を使用した場合、土壌中でCa2+等の多価イオンとコンプレックスを形成し、不溶性の層を形成することが報告されている(松本ら、高分子、42巻、8月号、1993年)。
【0006】
このような層は、そのもの自体の毒性は低いとはいわれているが、自然界には本来的に全く存在してこなかったものであり、それら樹脂の土中への蓄積による生態系への長期間に亘る影響は不明であり、今後、安全性を慎重にかつ充分に確認した後に使用することが望まれる。
【0007】
非イオン性の樹脂の場合には、コンプレックスは形成しないが、非分解性であるので、土壌中へ蓄積する虞があり、同様に、樹脂の土中への蓄積による生態系への長期間に亘る影響は不明であり、今後、安全性を慎重にかつ充分に確認した後に使用することが望まれる。
【0008】
さらに、これらの重合系の樹脂は、単量体原料として、哺乳類動物の肌や粘膜に対して毒性の高いものを使用しており、重合後の製品からこれらを除去するために、多くの検討がなされてきた。通常、重合後の製品から、未反応重合体を除去することは、困難であり、特に、工業的規模の製造においては、より困難となることが予想される。
【0009】
[生分解性を有する吸水性樹脂の技術的背景]
近年、「地球にやさしい素材」として生分解性ポリマーが注目されており、これを吸水性樹脂として使用することも提案されている。
【0010】
このような用途に使用されている生分解性を有する吸水性樹脂としては、例えば、ポリエチレンオキシド架橋体(特開平6−157795号等)、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体(米国特許4,650,716号)、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体、ポリアミノ酸架橋体等が知られている。これらの中でポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体は、吸水量が小さく、通常、生理用品、紙おむつ、使い捨て雑巾、ペーパータオル等の高い吸水能が要求される製品の素材として使用する場合には適切でない。
【0011】
また、これらの化合物は、特殊な菌によらなければ生分解することができないので、一般的な条件では、生分解は極端に遅かったり、又は、全く分解しなかったりする。これら化合物は、分子量が大きくなると、さらに極端に分解性が低下する。また、カルボキシメチルセルロース架橋体、アルギン酸架橋体、デンプン架橋体等の糖類架橋体は、その分子内に強固な水素結合を多く含むために、分子内、分子間の相互作用が強く、そのため分子鎖が広く開くことができず、その結果、吸水能は高くない。
【0012】
[ポリアミノ酸系吸水性樹脂の技術的背景]
ポリアミノ酸を架橋して得られる樹脂は、生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされてきているので、哺乳類動物に対してもやさしい素材である。
【0013】
このような樹脂の製造方法の具体例としては、ポリ−γ−グルタミン酸にγ線を照射して高吸水能を有する樹脂を製造する方法が挙げられる(国岡ら、高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年))。しかしながら、工業的な観点からは、この技術に用いる60Co照射設備は、放射能の遮断を行うためには大がかりな設備が必要であり、その管理にも充分な配慮が必要であるため現実的ではない。また、出発物質であるポリグルタミン酸が高価であることも問題点である。
【0014】
このような樹脂の製造方法の他の具体例としては、酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法が挙げられる[Akamatsuら、米国特許第3,948,863号(特公昭52−41309号)、岩月ら、特開平5−279416号]。さらに他の具体例としては、架橋アミノ酸樹脂を吸水性ポリマーに用いる方法が挙げられる(Sikesら、特表平6−506244号;米国特許第5,247,068号及び同第5,284,936号、鈴木ら、特開平7−309943号、原田ら、特開平8−59820号)。しかしながら、これらのポリマーは、吸水性ポリマーとして十分な性能を有するものではない。
【0015】
一方、これらの架橋ポリアミノ酸を、ポリアスパラギン酸やアスパラギン酸を、架橋剤と、熱により反応させて製造する方法が、特表平6−506244号及び特表平8−504219号に開示されている。また、酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸を混合し、加熱して架橋することにより吸水性ポリマーを得る方法が、特開平8−59820号に開示されている。しかしながら、これらの方法は、固体状態で架橋反応を行なうことを特徴とするので、架橋反応が均一となりにくいため吸水能等の物性が充分でなかったり、また、架橋反応の反応温度が高温を必要とするため、分解が著しく、色相が黄変したり褐色化したりするという問題がある。
【0016】
一方、特開平7−224163号には、ポリコハク酸イミドをジアミンにより架橋し、残りのイミド環をアルカリで加水分解して塩水吸水能の高い吸水性樹脂を得る方法が開示されている。同様に、無水ポリ酸性アミノ酸のポリアミンによる部分架橋物をアルカリ金属化合物で加水分解する方法が、特開平7−309943号に開示されている。
【0017】
これらの方法は、ポリコハク酸イミドを均一に、効率よく架橋し、かつ架橋度の制御が容易であるため、高い収率で高い吸水能を有する吸水性ポリマーを得ることができ、工業的に適した製造方法である点で極めて有意義である。しかしながら、ポリコハク酸イミドをジアミンで架橋するには、ポリコハク酸イミドを非プロトン性極性溶媒に溶解するため、有機溶媒を取り扱う設備や有機溶媒の回収が必要であり、さらなる改良が望まれている。
【0018】
また、本発明者らは、特開平11−060729号等に、ポリアミノ酸とポリエポキシ化合物、ポリオール、ポリチオール、ポリイソシアナート、ポリアジリジン、多価金属等の架橋剤を反応させる架橋ポリアミノ酸の製造方法について開示した。この方法は、ポリコハク酸イミドを溶解させるための非プロトン性極性溶媒を必要とせず、かつ均一な架橋を行なうことができるという特徴がある。
【0019】
また、特開平10−298282号には、2〜40質量%の濃度の水溶性ポリアミノ酸水溶液中で、ポリグリシジル化合物又はエピハロヒドリン変性アミノ化合物で架橋するポリアミノ酸系吸水性樹脂の製造方法が開示されている。しかしながら、この製造方法では、反応サイトの数が少なく、かつ、高濃度の反応ができないため架橋反応速度が遅く、反応に長時間を要するため副反応のポリマー主鎖の切断、架橋剤のエポキシ基の開裂が起こり、収率が低く、得られたポリマーの性能(吸水能)が非常に低い。また副反応以外にも、この公報にも記載されているように、ポリマーの極性が高いため、ポリマー濃度が高くなるとポリマー同士の絡まりが多く存在したり、ポリマー鎖の収縮が起こるため、架橋反応がうまく進行しない。
【0020】
すなわち、この製造方法では、架橋反応が効率的に進まないため、反応に要する時間が長く、ポリアスパラギン酸が加水分解を受け、主鎖が切断したりして、水可溶分が多量に発生したり、収率が低いという、多くの問題点を含んでいる。さらに、吸水能が低いために、紙おむつ等の衛生用品等には使用が困難である。特に、衛生材料等の使用用途において薄型のシートが強く要望されているが、薄型のシートを作製するためにはパルプの量をできるだけ減らすことが不可欠である。そのためには吸水性ポリマーが排泄された体液等を早く吸収する能力(高吸収速度)が強く要望されている。
【0021】
また、特開平10−330478号では、ポリアミノ酸の水性溶液と、ジグリシジル化合物又はジアジリジン化合物を接触させ、凍結乾燥等により水を除き、熱処理する架橋ポリアミノ酸の製造方法が開示されている。しかしながら、用いる架橋剤は水に溶解しないため、凍結乾燥により水を除去するときに均一な混合を維持するのは難しく、また固体状態の架橋反応では均一な架橋が実施できず、架橋度のムラを生じ、局部的に架橋度が高くなったり、逆に架橋度が十分でなく水溶性である部分が生じるといった問題を生じたりする。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した各従来技術の課題を解決すべくなされたものである。すなわち、本発明の目的は、生産性が高く、生分解性を有し、高吸収速度の架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)に関して、従来のものよりも非常に速い吸水速度を示す架橋ポリアスパラギン酸(塩)を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち本発明は、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる、下記測定法による比表面積が0.2〜10m 2 /gであり、ティーバッグ法により測定した1分間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜150倍、1時間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜200倍である架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子である。
(比表面積の測定法)
100℃、1×10 3 Paにて1時間加熱真空脱気処理を行なった試料を液体窒素中に入れ、窒素を蒸着させ、その蒸気圧を測定し、−196℃にてN 2 の吸着等温線の平衡圧/飽和蒸気圧を求め、BETプロットにより比表面積を求める。
【0025】
更に本発明は、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる、前記測定法による比表面積が0.2〜10m 2 /gであり、ティーバッグ法により測定した1分間での蒸留水に対する吸水量がポリマー自重の100〜1500倍、1時間での蒸留水に対する吸水量がポリマーの200〜2000倍である架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子である。
【0027】
更に本発明は、上記本発明の多孔質粒子を製造するための方法であって、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、凍結乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法である。
【0028】
更に本発明は、上記本発明の多孔質粒子を製造するための方法であって、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法である。
【0029】
更に本発明は、上記本発明の多孔質粒子を製造するための方法であって、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルに、水混和性有機溶媒を混合し、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法である。
【0030】
なお、本発明において「酸(塩)」とは、「酸及び/又はその塩」を意味する。また「カルボキシル基」とは、塩を形成した状態の場合も含む意味とする。
【0031】
【発明の実施の形態】
[1]架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子の吸水能
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子(以下の記載においては、この架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子を、適宜、「架橋ポリアスパラギン酸(塩)」と略称する。)は高吸水速度を有することに特徴を有する樹脂である。すなわち、以下の二つの性能のうちの一方又は両方を満たす樹脂である。
(1)ティーバッグ法により測定した1分間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜150倍であり、且つ1時間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜200倍である。
(2)ティーバッグ法により測定した1分間での蒸留水に対する吸水量がポリマー自重の100〜1500倍であり、且つ1時間での蒸留水に対する吸水量がポリマーの200〜2000倍である。
【0032】
上述の吸水速度以外の他の吸水能については、特に限定されない。ただし、吸水量や保水力にも優れているものが好ましい。特に、紙おむつ等の衛生用品等に使用する場合は、高い吸水能が要求される。
【0033】
ティーバッグ法により測定した1時間での生理食塩水に対する吸水量はポリマーの30〜200倍であるが、30〜150倍であることがより好ましく、40〜100倍であることが特に好ましい。また、ティーバッグ法により測定した1時間での蒸留水に対する吸水量はポリマーの200〜2000倍であるが、300〜1000倍であることがさらに好ましく、400〜1000倍であることが特に好ましい。これら吸水量の具体的な測定条件は、後述の実施例の欄で説明する。
【0034】
また、樹脂中に水可溶分が含まれると、吸水量の低下や、べたつき等を生じるので、水可溶分は含まれない方が好ましい。すなわち、水可溶分はポリマーの質量に対して0〜15質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%が特に好ましい。具体的な水可溶成分は、ポリマー1部に対して200部の蒸留水にて膨潤させ、20時間後に濾別した濾液を蒸発乾固させたときの質量%にて表わすことができる。
【0035】
[2]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の構造
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の構造は、ポリマー基本骨格、側鎖部分、架橋部分からなる。以下、これらを3つに分けて説明する。
【0036】
[架橋ポリアスパラギン酸(塩)のポリマー基本骨格]
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)のポリマー基本骨格は、アスパラギン酸(塩)を主な繰り返し単位として構成された主鎖である。この基本骨格においては、本発明の機能を妨げない範囲にて、他のアミノ酸を繰り返し単位として含んでいても構わない。
【0037】
アスパラギン酸以外のアミノ酸成分の具体例としては、例えば、20種類のタンパク質構成アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0038】
また、この基本骨格においては、本発明の機能を妨げない範囲にて、アミノ酸以外の単量体成分を繰り返し単位として含んでいても構わない。この単量体成分の具体例としては、アミノカルボン酸、アミノスルホン酸、アミノホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、メルカプトカルボン酸、メルカプトスルホン酸、メルカプトホスホン酸等が挙げられる。また、多価アミン、多価アルコール、多価チオール、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸、多価ヒドラジン化合物、多価カルバモイル化合物、多価スルホンアミド化合物、多価ホスホンアミド化合物、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価イソチオシアナート化合物、多価アジリジン化合物、多価カーバメイト化合物、多価カルバミン酸化合物、多価オキサゾリン化合物、多価反応性不飽和結合化合物、多価金属等が挙げられる。
【0039】
ポリマー基本骨格が共重合体で構成される場合、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフト・コポリマーであっても構わない。
【0040】
加水分解を施して得たアスパラギン酸(塩)のポリマー基本骨格は、主鎖中のアミド結合がα結合である場合と、β結合である場合がある。本発明では、特に限定されず、どちらの構造でも利用できる。すなわち、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。これらα結合とβ結合の結合様式は、特に限定されない。
【0041】
[架橋ポリアスパラギン酸(塩)の側鎖部分の構造]
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の側鎖部分の構造は特に限定されないが、基本的にはポリアスパラギン酸のカルボキシル基が置換されたカルボン酸誘導体としての側鎖構造をとり得る。その側鎖構造としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸の塩、エステル、チオエステル、アミド等が挙げられる。カルボキシル基の対イオンとしては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等がある。
【0042】
エステル、チオエステル、アミド等の場合、縮合されたアルコール、チオール、アミン成分は置換基を有していても構わない。これらは、ペンダント基と称される。例えば、リジン等のアミノ酸残基、カルボキシル基を有するペンダント基、スルホン酸基を有するペンダント基、水酸基を有するペンダント基等がある。ここで、カルボキシル基、スルホン酸基を有する場合は、その酸が塩となっていても構わない。
【0043】
[架橋ポリアスパラギン酸(塩)の架橋部分の構造]
架橋ポリアスパラギン酸(塩)とは、その構造として、主鎖または側鎖構造の一部が架橋されているものを言う。この架橋は共有結合であるが、イオン結合、水素結合を併用しても構わない。
【0044】
特に、本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られるものであり、その架橋部分の少なくとも一部は、カルボキシル基がエポキシ基に付加した構造をとる。その架橋部分の分子構造について特に限定されないが、その架橋部分は、ポリマー基本骨格または側鎖構造との「結合部分」と、それらを橋架けする「連結部分」に分けて理解することができる。
【0045】
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の架橋部分は、基本的にはポリマー主鎖としてのポリアスパラギン酸のカルボキシル基から誘導された構造をとる。したがって、「結合部分」は、ポリマー主鎖のカルボニル基がOにより結合したエステル結合であるのが一般的である。さらに、Oの代わりに、N又はSにより結合したアミド又はチオエステル結合を含んでいても構わない。また、架橋基は、ポリマー主鎖のアミド結合に対して、α位に置換されていても、β位に置換されていても構わない。
【0046】
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の架橋基中のエステル結合等により挟まれた部分である「連結基」としては、特に限定されないが、アルキレン、アラルキレン、フェニレン、ナフチレン基等が挙げられる。以下に、その具体例を列挙する。
【0047】
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−(CH2)5−、−(CH2)6−、−(CH2)7−、−(CH2)7−、−(CH2)8−、−(CH2)9−、−(CH2)10−、−(CH2)11−、−(CH2)12−、−(CH2)13−、−(CH2)14−、−(CH2)15−、−(CH2)16−、−(CH2)17−、−(CH2)18−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−(CH2CH2O)3CH2CH2−、−(CH2CH2O)4CH2CH2−、−(CH2CH2O)5CH2CH2−、−(CH2CH2O)6CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)2CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)3CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)4CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)5CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)6CH2CH2CH2−、
【0048】
【化1】
【0049】
【化2】
これらの連結基は、先に述べたペンダント基中の炭化水素基の場合と同様に、さらに、置換基を含んでいても構わない。
【0050】
これらの連結部分は、無置換のものでも、置換基により置換したものでもよい。この置換基としては、炭素原子数1から18の分岐していてもよいアルキル基、炭素原子数3から8のシクロアルキル基、アラルキル基、置換していてもよいフェニル基、置換していてもよいナフチル基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルコキシ基、アラルキルオキシ基、フェニルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルアミノ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いジアルキルアミノ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン基、ホスホン基及びこれらの塩、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
ここで、架橋部分の量(以下「架橋度」と称す)は特に限定されないが、この架橋度により、重合体の性質が大きく異なることになる。すなわち、架橋度がある所までは重合体は水溶性であり、それを超えると水に対して不溶性となり、水を吸収して膨潤したゲルとなる。これを不等式で表わすと、「水溶性重合体の架橋度 < 水不溶性重合体の架橋度」である。ただし、この架橋度については、重合体主鎖を構成する繰り返し単位の数、すなわち重合度によって異なってくる。そして、本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、実質的に水不溶性の重合体である。
【0052】
重合度は分子量にて表わすことができるので、これを分子量にて表現すると、一般的に重合体主鎖の分子量が大きい場合は、架橋度が小さくても水に対し不溶性になる。一方、重合体主鎖の分子量が小さい場合は、架橋度が大きくならないと水に対し不溶性とならない。そして、本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、実質的に水不溶性の重合体であり且つ前述した吸水速度を示せばよく、架橋度については特に限定されない。ただし、重合体全体の繰り返し単位の総数を基準として、架橋基を有する繰り返し単位の数は、0.1〜50%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。
【0053】
[3]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子構造
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の特徴である高吸水速度を発現する為に、本発明の多孔質粒子は、(1)多孔質構造を有する粒子、及び(2)比表面積が0.2〜10m2/gである粒子、の粒子構造の両方を満たすものにすることが、非常に有効である。
【0054】
その粒子の大きさは特に限定されないが、粒子径を特定することでより高い吸水速度を発現することができる。例えば、紙オムツに用いる場合は、速い吸収速度とゲル・ブロッキングが起こらないことが望まれるので、その平均粒子径は80〜1000μmが好ましく、100〜800μmがより好ましく、100〜500μmが特に好ましい。
【0055】
[4]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の製造方法
本発明においては、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物により架橋することにより、架橋ポリアスパラギン酸(塩)を製造する。
【0056】
この架橋反応は、水中で行うことが好ましい。水中にて架橋反応を行うと、より均一な架橋が実施でき、水可溶成分をほとんど含まず、高い吸水能を有するポリマーを得ることができる。
【0057】
架橋反応に用いるポリアスパラギン酸(塩)は、特に限定されず、各種の製造方法にて得たものを用いることができる。例えば、ポリコハク酸イミドを加水分解したもの、発酵法あるいは酵素法により製造したもの、アスパラギン酸−4−エステルのN−カルボキシ−α−アミノ酸無水物(NCA)を重合し、エステル基を除去したもの等が挙げられる。これらの中で、ポリコハク酸イミドを加水分解したものが、工業的には好ましい。
【0058】
ポリアスパラギン酸(塩)の重量平均分子量(Mw)は、所望する特性を有する生成物が実質的に得られればよく、特に制限されないが、一般的には2万〜100万、好ましくは5万〜50万、より好ましくは7万〜25万である。
【0059】
ポリアスパラギン酸(塩)の架橋反応における濃度は、特に限定されないが、効率的に架橋反応を行う為には、高濃度において反応を行う方が好ましい。例えば、ポリアスパラギン酸(塩)の濃度が5〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。ここで、ポリアスパラギン酸(塩)の濃度とは、架橋反応に用いる全試剤の合計質量(水や溶剤を含む)に対する、ポリアスパラギン酸(塩)の質量をいう。
【0060】
これら範囲の上限値は、ポリアスパラギン酸(塩)が溶解せず、攪拌が困難なばかりか、均一な架橋反応ができず、結果として水可溶成分が多くなり、収率、吸水能ともに低下する等の問題を防ぐ等の点で意義がある。一方、下限値は、反応速度が遅いため、ポリマー主鎖の切断等の副反応が起こり、結果として水可溶成分が多くなり、収率、吸水能ともに低下する等の問題を防ぐ点で意義が有る。
【0061】
ポリアスパラギン酸(塩)の溶解度は、その分子量、対イオン、中和度に関係する。一般に、高分子量のポリマーは溶解度が小さく、低分子量のポリマーは溶解度が大きい。また、対イオンは一価のイオンであり、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の比較的小さいイオンは溶解度が大きい。また、中和度は、フリーのカルボン酸より、塩を形成した方が溶解度が大きくなる。本発明では、溶解度より低い濃度で架橋反応を行うことが好ましい。
【0062】
架橋反応において、反応温度、pH、架橋剤(本発明では多価エポキシ化合物)の量等は重要である。これらの組み合わせによって、好ましい反応条件は異なる。
【0063】
例えば、本発明においては架橋反応を酸性側にて行うが、ポリアスパラギン酸(塩)と架橋剤のエポキシ基との反応は高温かつ低いpHの条件で速くなる。しかし、高温かつ低いpHの条件では、ポリアスパラギン酸(塩)の主鎖の加水分解と、架橋剤のエポキシ基の加水分解反応も速くなってしまう。すなわち、高温かつ低いpHの条件では、架橋反応と副反応(ポリアスパラギン酸(塩)主鎖のの加水分解反応、架橋剤のエポキシ基の開裂反応)が同じように促進されるのである。
【0064】
したがって、本発明における架橋反応は、副反応が起こり難い温和な条件にて行うか、あるいは架橋反応を短時間にて進行可能な条件を採用しかつ副反応を抑えるか、何れかの手法をとることが好ましい。後者の場合、一般的に架橋剤を多く使用することが、架橋反応に有効である。
【0065】
先に述べた通り、架橋反応は水中にて行うことが好ましいが、この場合、水溶液のpHによって、架橋反応に関与するカルボキシル基の量が決まる。水溶液のpHは3〜7が好ましく、4〜6がより好ましく、4.5〜5.5が特に好ましい。
【0066】
架橋反応は、ポリアスパラギン酸(塩)中のカルボキシル基と架橋剤の濃度に大きく依存する。ポリアスパラギン酸(塩)の濃度が低過ぎる場合、上述の好ましいpH範囲(pH3〜7)であっても反応に関与するカルボキシル基の数が少なく、架橋反応時間も長くなり、加水分解反応も進行するので架橋反応に不利である。ポリアスパラギン酸(塩)の濃度が高い場合は、上述の好ましいpH範囲(pH3〜7)において、反応に関与するカルボキシル基の数が少なくても、濃度が高いので架橋反応時間が短くなり、加水分解反応も進行しないので架橋反応に有利である。
【0067】
また、架橋反応を行なう際の水溶液のpHが低過ぎると、ポリアスパラギン酸(塩)の主鎖が切断し、架橋剤量が多く必要になり不経済であり、得られる吸水性樹脂の吸水量も低くなる傾向にある。逆に、pHが高過ぎると、ポリアスパラギン酸(塩)のカルボキシル基と架橋剤のエポキシ基の反応性が低くなり、架橋反応が実質的に進行しなくなる傾向にある。
【0068】
ポリアスパラギン酸(塩)のカルボキシル基は、通常は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩として中和されていることが好ましい。例えば、ポリアスパラギン酸等のカルボキシル基の中和度を変えることにより、反応液のpHを変えることができる。また、架橋反応後に、酸あるいはアルカリを加え、架橋重合体の使用目的に適したpHに調整することができる。例えば、紙おむつ等の衛生用品では、pHが6〜8であることが好ましい。
【0069】
架橋反応を行なう際の温度は、10〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましく、40〜60℃が特に好ましい。これら反応温度の範囲の上限値は、主鎖が切断され、架橋剤が多量に必要であったり、得られる吸水性樹脂の性能が低いという問題を防ぐ等の点で意義が有る。また、下限値は、ポリアスパラギン酸(塩)と架橋剤の反応が遅くなり、工業的に不経済になるという問題を防ぐ等の点で意義が有る。そして、上記好適な範囲内において、比較的高い反応温度では、架橋剤量が多い場合、架橋反応時間が短くなり、ポリマー鎖の切断等の副反応を抑えることができるので好ましい。一方、上記好適な範囲内において、比較的低い温度では、副反応の進行が遅いので架橋剤が少なくても架橋反応が進行し、架橋剤量を多くすることで架橋反応時間を短くすることができる。どちらかを選択するかについては、反応装置等を考慮した架橋反応時間の設定等によって、適宜選択すればよい。
【0070】
本発明に用いる多価エポキシ化合物(主として多価グリシジル化合物)は、架橋剤として作用する。多価グリシジル化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、オキシエチレンの繰り返し単位が2〜10であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0071】
その具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル等の(C2−C6)アルカンポリオール及びポリ(アルキレングリコール)のポリグリシジルエーテル;ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、エリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,2,3,4−ジエポキシブタン、1,2,4,5−ジエポキシペンタン、1,2,5,6−ジエポキシヘキサン、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,4−及び1,3−ジビニルベンゼンエポキシド等の(C4−C8)ジエポキシアルカン及びジエポキシアルアルカン;4,4'−イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びヒドロキノンジグリシジルエーテル等の(C6−C15)ポリフェノールポリグリシジルエーテル;等が挙げられる。
【0072】
架橋剤の使用量は、ポリアスパラギン酸(塩)の官能基を100モルとした場合、好ましくは0.1〜30モル%、より好ましくは1〜15モル%、特に好ましくは3〜10モル%である。上記各範囲の上限値は、経済性と、架橋度が高くなりすぎて吸水量が低くなったり、未反応の架橋剤が残存したりすること等を防止する点で意義が有る。一方、下限値は、十分に架橋することができず、架橋反応時間が長くなったり、吸水量が低くなったり、水可溶成分が多くなったり、収率が低下したりすること等を防止する点で意義が有る。
【0073】
架橋反応時間は、反応温度、反応濃度、架橋剤の使用量により異なる。これら反応条件によって調整可能であるが、通常は、1分〜20時間である。さらに反応装置にもよるが、5分〜10時間が好ましく、5分〜5時間がより好ましく、5分〜1時間が特に好ましい。
【0074】
[架橋反応後の後処理]
架橋反応後の後処理については、特に限定されない。例えば、中和、塩交換、乾燥、精製、造粒、表面架橋処理等の処理を、必要に応じて行えばよい。以下、特に中和、塩交換の処理について説明する。また造粒については、先に述べた通り、本発明においては特定の粒子構造を有することが好ましいので、特に別途の欄を設けて説明する。
【0075】
架橋反応後の中和処理は、必要に応じて行えばよい。この中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸(塩)の分子内に存在するカルボキシル基を塩又はフリーのカルボン酸にすることができる。すなわち、酸を用いることで架橋ポリアスパラギン酸(塩)中のカルボン酸塩をフリーのカルボン酸に変えることができ、逆に、アルカリを用いることでポリマー中のフリーのカルボン酸をカルボン酸塩に変えることができる。
【0076】
この中和度は特に限定されないが、一般的には架橋ポリアスパラギン酸(塩)の分子内の全カルボキシル基の総数を基準として、塩を形成するカルボキシル基の割合は、0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましい。
【0077】
酸の具体例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ベンゼンホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。
【0078】
アルカリの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等の有機カルボン酸アルカリ金属塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン等が挙げられる。
【0079】
中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸(塩)の分子内に存在するカルボキシル基を塩とした場合、必要に応じて、その塩を他の種類の塩に交換することもできる。
【0080】
この塩交換に使用される試剤の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げることができる。より具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等を例示することができる。
【0081】
これらの中では、その分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位質量当たりの吸水量が小さくなるので、その分子量が小さいものの方が好ましい。
【0082】
[5]架橋ポリアスパラギン酸(塩)粒子の製造方法
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、「[3]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子構造」の欄で挙げた粒子形状を有することが好ましい。そのような粒子構造にする為には、「[4]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の製造方法」の欄で説明した方法により架橋ポリアスパラギン酸(塩)を製造した後、特に多価エポキシ化合物を用いて架橋反応させた後に、以下に述べる造粒法を実施することにより実現できる。
【0083】
[5−1]表面にひだ構造を有する粒子の製造方法
表面にひだ構造を有する粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物にて架橋して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、水混和性有機溶媒中に浸して(再沈させて)、得られた沈殿物を乾燥することにより製造することができる。すなわちこの方法は、水を吸収させた架橋ポリアスパラギン酸の含水ゲルを、水混和性有機溶媒中に浸し、ゲル中の水を水混和性有機溶媒にて抽出する方法である。
【0084】
粒子のひだ構造の大きさは大きく、数は多く、深さは深い方が、粒子の表面積が広くなるので好ましい。そのような好ましいひだ構造を得るには、含水ゲルの大きさ、ゲルの含水量、ポリマーの含有量、使用する有機溶媒の種類と量が重要である。
【0085】
含水ゲルとしては、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを用いる。例えば、「[3]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子構造」の欄で説明した架橋反応の後の含水ゲルをそのまま用いてもよいし、その架橋反応後に中和、塩交換等の後処理をした含水ゲルを用いてもよいし、さらにゲルを乾燥してから水を吸収させてゲル化したものを用いてもよい。特に、架橋反応後の含水ゲル、あるいは中和、塩交換等の後処理をした含水ゲルを用いると、効率よく粒子が製造できるので好ましい。
【0086】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの大きさ(平均粒径)は、特に限定されないが、1μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmがより好ましく、50μm〜3mmが特に好ましい。これら好適範囲の下限値は、ひだ構造を充分に形成する等の点で意義が有る。また上限値は、有機溶媒による水抽出がうまくいかなかったり水抽出に長時間を要する等の問題を抑制する点で意義が有る。
【0087】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの含水量は、特に限定されないが、ゲル全体の質量に対して20〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。これら好適範囲の下限値は、抽出による収縮が小さく有効なひだ構造を形成できない等の問題を防止する点で意義が有る。また上限値は、容積効率が悪かったり、抽出に用いる有機溶媒の量が多く必要となり非経済的になる等の問題を抑制する点で意義が有る。
【0088】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルのポリマー含有量は、特に限定されないが、ゲル全体の質量に対して1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。これら好適範囲の上限値及び下限値の意義は、上述の含水量の好適範囲の下限値及び上限値の意義と対応する。なお、ゲルの収縮率(ここでは膨潤したゲルの体積に対する収縮後のポリマーの体積の割合を意味する)が大きければ、大きなひだを形成し易いのでポリマーの吸水速度は速くなるが、収縮率を大きくするために水等のゲルを膨潤させる媒質を増やすと、容積効率や使用する溶媒量が増えるので工業的には好ましくない。
【0089】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの組成は、特に限定されないが、基本的には、架橋ポリアスパラギン酸(塩)と、水等のゲル化を起こす媒質からなる。また、架橋ポリアスパラギン酸(塩)と水以外に、他の物質を含んでいてもよい。他の物質としては、反応系から来る物質と、反応後に意図的に加える物質がある。
【0090】
反応系から来る物質としては、中和等によって生じた無機塩、アスパラギン酸及びアスパラギン酸由来の塩、ポリアスパラギン酸及びポリアスパラギン酸由来の塩、有機溶媒等が挙げられる。
【0091】
反応後に意図的に加える物質としては、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒は反応混合物の粘度を下げたり、ゲルの収縮率を上げる目的で用いたりする。ここで用いる有機溶媒は、次に再沈で用いる有機溶媒として説明する水混和性有機溶媒が好ましい。有機溶媒と水の使用量及び比は、架橋ポリマーが沈殿しない範囲であれば特に限定されるものではない。使用する水の割合は、一般的に5〜100質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましい。
【0092】
再沈に用いる有機溶媒は、水混和性有機溶媒であれば特に限定されない。一般には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N'−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等がある。特に乾燥が容易であり、かつ乾燥後に溶剤が残留しない点で、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが好ましい。
【0093】
有機溶媒とゲルの混合方法は、特に限定されない。例えば、ゲルを有機溶媒中に装入する方法でもよいし、ゲルあるいはスラリーに有機溶媒を加えていく方法でも構わない。ただし、ゲルを有機溶媒に装入する方法では、ゲルを少量ずつ装入しないとゲルが塊の状態で沈殿となり、攪拌等が困難となる場合がある。また、ゲルあるいはスラリーに有機溶媒を加えていく方法でも、同様なことが起こる場合がある。
【0094】
この有機溶媒とゲルの混合によるゲルの収縮の回数は、特に限定されず、何回行なっても構わない。2回目以降は、沈殿した固体、あるいはゲル、スラリーに水あるいは水と水混和性有機溶媒を加え、再ゲル化あるいはスラリー化して処理を繰り返すとよい。この処理を繰り返すことによって、内在される無機塩等を除去することができる。
【0095】
このように有機溶媒によって収縮、沈降させたポリマーに対して、乾燥等の後処理を行ない、製品化することができる。乾燥等の後処理については、後に説明する。
【0096】
[5−2]多孔質構造を有する粒子の製造方法
多孔質構造を有する粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、次に列挙する方法を挙げることができる。
(1)ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを凍結乾燥する方法。
(2)ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法。
(3)ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルに、水混和性有機溶媒を混合し、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法
以下、これら各方法について、それぞれ説明する。
【0097】
[5−2−1]含水ゲルを凍結乾燥する方法
含水ゲルを凍結乾燥する方法は、一般的には、含水ゲルを凍結させ、その凍結物から減圧下にて水を留去する方法である。この凍結した水を留去した後の空洞により、多孔質構造が形成される。
【0098】
含水ゲルとしては、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを用いる。例えば、「[3]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子構造」の欄で説明した架橋反応の後の含水ゲルをそのまま用いてもよいし、その架橋反応後に中和、塩交換等の後処理をした含水ゲルを用いてもよいし、さらにゲルを乾燥してから水を吸収させてゲル化したものを用いてもよい。特に、架橋反応後の含水ゲル、あるいは中和、塩交換等の後処理をした含水ゲルを用いると、不純物が無く、しかも効率よく粒子が製造できるので好ましい。
【0099】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの含水量は、特に限定されない。ただし、含水量が高い方が多孔質の表面積が大きくなるので好ましいが、反対に含水量が高過ぎる場合は容積効率が悪くなったり、凍結あるいは乾燥に用いるエネルギーが多量に必要になり非経済的である。このような点から、ゲル全体の質量に対する含水量は、20〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。
【0100】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルのポリマー含有量は、特に限定されないが、ゲル全体の質量に対して1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。これら好適範囲の下限値は、容積効率、凍結に用いるエネルギーに関する経済性などの点で意義が有る。また上限値は、多孔質構造の表面積を大きくする等の点で意義が有る。
【0101】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの組成は、特に限定されないが、基本的には、架橋ポリアスパラギン酸(塩)と、水等のゲル化を起こす媒質からなる。また、架橋ポリアスパラギン酸(塩)と水以外に、他の物質を含んでいる場合もある。しかし、他の物質は、乾燥により除去できる溶媒でない場合は、できるだけ凍結乾燥を行う前に除去しておく方が好ましい。基本的には、不揮発性の物質は凍結乾燥では除去できず、製品品質を劣化させる場合が多いからである。ただし、本工程後に他の物質の除去を行うことができるならばこの限りではない。また、乾燥により除去できる溶媒でも、基本的には水以外の有機溶媒は、減圧度が高い場合は低い温度にてトラップする必要があるので経済的ではなく、あるいは回収が難しいので好ましくない。
【0102】
多孔質構造粒子の製造に用る含水ゲルの大きさは、特に限定されない。しかし、ゲルからの水分の除去のし易さ、後工程における粉砕等を考慮すると、含水ゲルの大きさ(平均粒径)は、1μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmがより好ましく、50μm〜3mmが特に好ましい。また、これら好適範囲の上限値は、乾燥の効率や乾燥時間などの点でも意義が有る。
【0103】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを凍結させる際の温度は、特に限定されず、水が凍結する任意の温度を選択できる。
【0104】
また、架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを凍結乾燥させる温度も、特に限定されない。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、十分に乾燥できる圧力を適宜選択すればよい。ただし、凍結乾燥の圧力は低くても構わないが、低過ぎると工業的にはエネルギー効率が悪くなる。そのような点を考慮すると、凍結乾燥の圧力は、5×10〜9×104Paが好ましく、1×102〜1×104Paがより好ましく、5×102〜9×103Paが特に好ましい。
【0105】
また、凍結乾燥だけでは水が十分に乾燥しない場合は、常圧乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の通常の乾燥法を併用することもできる。
【0106】
[5−2−2]含水ゲルを5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法
含水ゲルを5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法では、減圧下で気化するゲル中の液体(主に水)が留去した後の空洞により、多孔質構造が形成される。
【0107】
含水ゲルの種類、組成、含水量、ポリマー含有量、大きさ等については「[5−2−1]含水ゲルを凍結乾燥する方法」の欄での説明と同様である。
【0108】
含水ゲルを減圧乾燥する場合は、圧力と温度が重要である。減圧乾燥の温度と圧力により、生成する孔の大きさや数が決まり、これが比表面積に影響する。高温、低圧(高い減圧度)にて減圧乾燥を行うと、含水ゲルが急激に発泡して溶媒の除去は速くなるが、孔が大きくなるので比表面積は大きくならない。逆に低過ぎる温度、高過ぎる圧力の場合は、生成した孔がつぶれたり、溶媒の除去が遅くなり過ぎるので好ましくない。また、圧力が低過ぎる場合は、工業的にエネルギー効率が悪くなる。
【0109】
そのような点も考慮して、減圧乾燥の温度は、10〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましく、20〜100℃が特に好ましい。また、減圧乾燥の圧力は5×10〜9×104Paであるが、1×102〜1×104Paが好ましく、5×102〜9×103Paがより好ましい。
【0110】
さらに減圧乾燥工程としては、低温、高圧力にて微細な孔を形成した後、より高温、より低圧力にする多段階法をとることができる。また、減圧乾燥だけでは十分に乾燥しない場合は、常圧乾燥、通風乾燥等の通常の乾燥法を併用することもできる。
【0111】
[5−2−3]含水ゲルに水混和性有機溶媒を混合し、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法
含水ゲルに水混和性有機溶媒を混合し、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法では、水混和性有機溶媒を混合したゲルあるいはその混合によって生成したスラリーの中の液体(主に有機溶媒)を、減圧下で気化し、その液体(主に有機溶媒)が留去した後の空洞により、多孔質構造を形成する。
【0112】
この方法と、先に述べた含水ゲルをそのまま5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥する方法(5−2−2)との違いは、後者の方法がゲル中の水を留去するのに対して、前者の方法はゲル又はスラリー中から比較的留去し易い有機溶媒を留去する点にある。すなわち、後者の方法は有機溶媒等の回収が不要などの点で優れ、前者の方法は孔形成が容易などの点で優れている。
【0113】
含水ゲルとしては、ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを用いる。例えば、「[3]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子構造」の欄で説明した架橋反応の後の含水ゲルに、あるいは、その架橋反応後に中和、塩交換等の後処理をした含水ゲルに、水混和性有機溶媒を混合してゲル化又はスラリー化してもよいし、さらにゲルを乾燥したものに水を吸収させて含水ゲル化し、同時に水混和性有機溶媒を混合してゲル化又はスラリー化してもよい。
【0114】
水混和性有機溶媒を混合する前の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルの含水量は特に限定されない。含水量が高い方が多孔質の表面積が大きくなるので好ましいが、反対に含水量が高過ぎる場合は容積効率が悪くなったり、減圧乾燥に用いるエネルギーが多量に必要になり非経済的である。
【0115】
水混和性有機溶媒を混合して得られるゲル又はスラリーは、水と有機溶媒を含むことになる。ここで、ゲルとスラリーの違いは、架橋ポリアスパラギン酸(塩)の吸水能と、水と有機溶媒の混合比及び量によって決まる。架橋ポリアスパラギン酸(塩)の吸水能が高い場合、スラリーよりはゲル状を示す範囲が広く、水と有機溶媒の混合比については水の混合比が高いほどスラリーよりはゲル状を示す範囲が広い。また、水と有機溶媒の量が少ないほどスラリーよりはゲル状を示す範囲が広い。しかし、これらは一つの要因により決まるのではなく、前記3つの要因に加え、他の含有物質の種類なども含めて決まる。
【0116】
ゲル又はスラリーの含水量は、特に限定されないが、ゲル又はスラリー全体の質量に対して10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%が特に好ましい。
【0117】
ゲル又はスラリー中に含まれる水混和性有機溶媒は、架橋ポリアスパラギン酸(塩)との親和性が高く、十分に膨潤させることができるものが好ましい。加えて、減圧乾燥により容易に留去し多孔質の孔を効率よく形成できるものが好ましい。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等が挙げられる。これらの中では、特に乾燥が容易な点から、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンが好ましい。さらに、メタノール、エタノール、アセトンがより好ましい。その含溶媒量は特に限定されないが、ゲル又はスラリー全体の質量に対して10〜50質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましく、さらに30〜50質量%が好ましい。また、含有量のみならず、水と有機溶媒との比が重要である。有機溶媒/水の比は好ましくは0.05〜5、0.1〜2がより好ましく、0.2〜1が特に好ましい。
【0118】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)のゲル又はスラリーのポリマー含有量は、特に限定されないが、ゲル又はスラリー全体の質量に対して、1〜80質量%が好ましく、5〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。これら範囲の下限値は、容積効率や減圧乾燥に用いるエネルギーの経済性などの点で意義が有る。また上限値は、多孔質構造の表面積などの点で意義が有る。
【0119】
ゲル又はスラリーは、架橋ポリアスパラギン酸(塩)と水と水混和性有機溶媒以外に、他の物質を含んでいる場合もある。しかし、他の物質は、乾燥により除去できる溶媒でない場合は、上述の各方法(5−2−1)(5−2−2)の場合と同様に、できるだけ減圧乾燥を行う前に除去しておく方が好ましい。
【0120】
水混和性有機溶媒混合後のゲルの大きさは特に限定されない。しかし、ゲルからの水分の除去のし易さを考慮すると、ゲルはあまり大きくない方が好ましい。例えば、ゲルの大きさ(平均粒径)は、1μm〜10mmが好ましく、10μm〜5mmがより好ましく、50μm〜3mmが特に好ましい。これら好適範囲の上限値は、乾燥の効率や乾燥時間などの点で意義が有る。
【0121】
ゲル又はスラリーを減圧乾燥する場合は、圧力と温度が重要であり、これは先に述べた方法(5−2−2)と同様の理由である。
【0122】
減圧乾燥の温度は、10〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましく、20〜100℃が特に好ましい。また、減圧乾燥の圧力は5×10〜9×104Paであるが、1×102〜1×104Paが好ましく、5×102〜9×103Paがより好ましい。
【0123】
さらに減圧乾燥工程としては、低温、高圧力にて微細な孔を形成した後、より高温、より低圧力にする多段階法をとることができる。また、減圧乾燥だけでは水が十分に乾燥しない場合は、常圧乾燥、通風乾燥等の通常の乾燥法を併用することもできる。
【0137】
[5−4]架橋ポリアスパラギン酸(塩)粒子の比表面積
本発明の架橋ポリアスパラギン酸(塩)の粒子は、比表面積が0.2〜10m2/gである。このような比表面積を有することにより、架橋ポリアスパラギン酸(塩)の吸水能が向上することになる。また、多孔質構造など、前述した各種の粒子構造によって、このような比表面積を良好に実現することができる。この比表面積の具体的な測定条件は、後述の実施例の欄で説明する。
【0138】
[5−5]架橋ポリアスパラギン酸(塩)粒子の後処理
以上の各種造粒法により得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)粒子は、必要により、さらに乾燥、精製、粉砕、整粒、さらなる造粒、表面架橋処理等の処理を行うことができる。例えば、架橋ポリアスパラギン酸(塩)粒子の乾燥処理法は、特に制限されない。具体的には、熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等の従来より知られる各種の手法をとることができる。
【0139】
[6]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の使用の形態
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の使用の形態は、特に限定されるものではなく、単独でも、他の素材と組み合わせて使用してもよい。しかし、基本的にはバルク状態にて、その速い吸水速度を生かせる方法が好ましい。
【0140】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の成形品としては、特に限定されるものではなく、固形物、シート、フィルム、繊維、不織布、発泡体等として使用できる。また、その成形方法も特に限定されるものではない。
【0141】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)を他の素材との組み合わせた複合体として用いる場合、その複合体の構造は特に限定されないが、例えば、パルプ層、不織布等にはさみ、サンドイッチ構造にする方法、樹脂シート、フィルムを支持体として多層構造とする方法、樹脂シートにキャストし、二層構造とする方法等により複合体を得ることができる。例えば、架橋重合体をシート状に成形加工すれば、吸水性シート(吸水性フィルムも包含する)が得られる。
【0142】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、必要により、1種以上の他の吸水性樹脂と混合して用いてもよい。また必要により、食塩、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物、キレート剤等の有機化合物を添加しても構わない。さらに酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、消臭剤、顔料等を混合しても構わない。
【0143】
架橋ポリアスパラギン酸(塩)は、ゲル状としても、固形物としても使用できる。例えば、農園芸用保水材、切り花延命剤、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤等に使用する場合はゲルとして用い、紙おむつ用吸収体等は固形状として用いる。
【0144】
[7]架橋ポリアスパラギン酸(塩)の用途
架橋ポリアスパラギン酸(塩)の用途は特に限定されず、従来の吸水性樹脂が使用できる用途のいずれにも使用できる。
【0145】
例えば、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、電子機器、光ファイバー等のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤、湿度調整材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0146】
これらの中で、特に高吸水速度が要求される、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、ペット用シート、携帯用トイレ、吸汗性繊維、保冷材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤等の用途が好ましい。特に、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、医療用アンダーパット、ペット用シート、携帯用トイレ、汚泥の凝固剤等の用途がより好ましい。
【0147】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。以下において「部」とは「質量部」を意味する。
【0148】
(1)重量平均分子量の測定
ポリアスパラギン酸(塩)の重量平均分子量(Mw)は、ポリエチレンオキサイドを標準とし、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
装置 :Shodex GPC SYSTEM−11
検出器:Shodex RI SE−61
カラム:Shodex OHpak SB−804
溶媒 :0.1M−KCl水溶液
濃度 :0.1%
注入量:100μl
流速 :1.0ml/min。
【0149】
(2)吸水速度及び飽和吸水量の測定
吸水速度及び飽和吸水量の測定は、蒸留水、生理食塩水を対象としてティーバッグ法を用いて行った。すなわち、蒸留水の場合は乾燥吸水性樹脂約0.05部、生理食塩水の場合は乾燥吸水性樹脂約0.1部を、不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、20℃において過剰量の蒸留水又は生理食塩水中に浸漬して、該樹脂を1分間又は1時間膨潤させた後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行い、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量を測定した。また、同様な操作をティーバッグのみで行った場合をブランクとして、膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量からブランクの質量と吸水性樹脂の質量を減じた値を、吸水性樹脂の質量で除して、この値を吸水量(g/樹脂1g)とした。そして、この操作において、過剰量の蒸留水又は生理食塩水中に浸漬して樹脂を膨潤させる時間を、1分間とした場合の吸水量を樹脂の「吸水速度」として表わし、1時間とした場合の吸水量を樹脂の「飽和吸水量」として表わした。なお、生理食塩水は、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液である。
【0150】
(3)比表面積の測定
ポリマー粒子の比表面積は、QUANTACHROME社製AUTOASORB−3にて測定した。具体的には、100℃、1×103Paにて1時間加熱真空脱気処理を行なった試料を液体窒素中に入れ、窒素を蒸着させ、その蒸気圧を測定した。すなわち、−196℃にてN2の吸着等温線の平衡圧/飽和蒸気圧を求め、BETプロットにより比表面積を求めた。
【0151】
(4)表面構造の観察
ポリマー粒子の表面構造は、走査電子顕微鏡(SEM)(日本電子社製JSM5410−LV)にて観察した。すなわち、試料をエポキシ樹脂で試料台に固定し、そのまま加速電圧15kV、W.D.20mm、真空度20Paあるいは40Paにて観察した。
【0152】
(5)水可溶分の測定
ポリマー1部に対して200部の蒸留水により膨潤させたゲルを、攪拌可能な場合は攪拌し、攪拌できない場合は静止したまま20時間おき、20時間後に濾紙上で濾別し、さらに200部の水で洗浄し、その濾液を蒸発乾固させてから質量を測定した。水可溶分は、この質量をもとのポリマーに対する割合(質量%)で示した。
【0153】
[化合物製造例1]
L−アスパラギン酸150部と85%リン酸75部を混合し、ロータリーエバポレーターを用いて2.67×103Pa、200℃で4時間反応させた。反応混合物をジメチルホルムアミド(DMF)1000部に溶解し、水5000部に排出した。得られた沈殿を濾別し、洗液が中性になるまで水洗し、60℃で乾燥することにより、Mw9.6万のポリコハク酸イミド108部を得た。
【0154】
このポリコハク酸イミド100部を、水230部に分散させ、20質量%水酸化ナトリウム水溶液206部を、pHを12以下に保ちつつ滴下することにより、ポリアスパラギン酸水溶液を得た。このポリアスパラギン酸水溶液を、2N塩酸を用いてpH8.7に調整し、メタノール4000部に排出し、沈殿物を濾過し、60℃において乾燥することにより、Mw6.5万のポリアスパラギン酸ナトリウム152部を得た。
【0155】
このポリアスパラギン酸ナトリウム50部を、蒸留水50部に溶解し、この水溶液に18質量%の塩酸水溶液5.8部を加えて、pHを5に調整した。さらにエチレングリコールジグリシジルエーテル3.82部(ポリアスパラギン酸のカルボキシル基100モルに対して5モル)を加えてよく混合した。この水溶液を、ポリプロピレン容器に流し込み、60℃で2時間反応を行なったところ、反応液はゲル化した。すなわち、架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルが得られた。
【0156】
[化合物製造例2]
L−アスパラギン酸の反応温度及び時間を220℃、10時間に変更したこと以外は、化合物製造例1と同様にして、Mw14.6万のポリコハク酸イミド108部を得た。次いで、このポリコハク酸イミドを用いたこと以外は、化合物製造例1と同様にして、Mw10.5万のポリアスパラギン酸ナトリウム154部を得た。さらに、このポリアスパラギン酸ナトリウム50部を用い、エチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を2.29部(ポリアスパラギン酸のカルボキシル基100モルに対して3モル)に変更したこと以外は、化合物製造例1と同様にして、架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルを得た。
【0157】
[参考例1]
本参考例は、ひだ状構造を有する粒子の例である。
【0158】
化合物製造例1で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルと、メタノール200部とをミキサー中に入れ、5000rpmにて細断し、これをメタノール200部に排出した。次いで、デカンテーションにて液を除き、得られた沈殿物にさらに蒸留水20部とメタノール20部を加えてスラリー化し、このスラリーをメタノール200部中に徐々に排出した。得られた沈殿物を吸引ろ過して集め、60℃において乾燥することにより、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)51部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0159】
この粒子の比表面積は0.295m2/gであった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、図1(×1000)及び図2(×2000)に示すようにひだ状構造を有していた。また、その飽和吸水量は、蒸留水に対して502倍、生理食塩水に対して51倍と高く、吸水速度は、蒸留水に対して197倍、生理食塩水に対して30倍と速かった。また、水可溶成分は0.3質量%と少なかった。
【0160】
[実施例2]
本実施例は、多孔質構造を有する粒子の例である。
【0161】
化合物製造例1で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルと、メタノール200部とをミキサー中に入れ、5000rpmにて細断し、これをメタノール200部に排出した。次いで、デカンテーションにて液を除き、得られた沈殿物にさらに蒸留水300部を加え、5時間膨潤させた。得られたゲルを減圧乾燥器中に入れ、20℃、1.33×103Paの減圧下にて5時間発泡させた。さらに60℃まで昇温し、60℃にて10時間乾燥すると、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)50部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0162】
この粒子の比表面積は1.08m2/gであった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、図3(×100)及び図4(×1000)に示すように多孔質構造を有していた。また、その飽和吸水量は、蒸留水に対して487倍、生理食塩水に対して49倍と高く、吸水速度は、蒸留水に対して180倍、生理食塩水に対して28倍と速かった。また、水可溶成分は0.4質量%と少なかった。
【0163】
[実施例3]
本実施例は、多孔質構造を有する粒子の例である。
【0164】
化合物製造例1で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルと、メタノール200部とをミキサー中に入れ、5000rpmにて細断し、これをメタノール200部に排出した。次いで、デカンテーションにて液を除き、得られた沈殿物にさらに水80部とメタノール40部を加えて5時間ゲル化した。得られたゲルを減圧乾燥器中に入れ、20℃、1.33×103Paの減圧下にて5時間発泡させた。さらに60℃まで昇温しながら発泡を続け、引き続き60℃にて10時間乾燥すると、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)50部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0165】
この粒子の比表面積は1.37m2/gであった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、多孔質構造を有していた。また、その飽和吸水量は、蒸留水に対して522倍、生理食塩水に対して51倍と高く、吸水速度は、蒸留水に対して189倍、生理食塩水に対して30倍と速かった。また、水可溶成分は0.4質量%と少なかった。
【0166】
[実施例4]
本実施例は、多孔質構造を有する粒子の例である。
【0167】
化合物製造例2で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルと、メタノール200部とをミキサー中に入れ、5000rpmにて細断し、これをメタノール200部に排出した。次いで、デカンテーションにて液を除き、得られた沈殿物にさらに蒸留水800部を吸収させて5時間ゲル化させた。得られたゲルを液体窒素にて凍結し、1.33×103Paにて乾燥すると、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)50部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0168】
この粒子の比表面積は2.57m2/gであった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、多孔質構造を有していた。また、その飽和吸水量は、蒸留水に対して457倍、生理食塩水に対して53倍と高く、吸水速度は、蒸留水に対して280倍、生理食塩水に対して42倍と速かった。また、水可溶成分は0.4質量%と少なかった。
【0175】
[比較例1]
本比較例は、表面に凹凸の少ない粒子の例である。
【0176】
化合物製造例1で得たポリコハク酸イミド30部を、DMF120部に溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド1.5部を加え、0〜5℃において1時間反応させた後、室温(25℃)において24時間反応させた。反応後、500部の水に排出し、さらに200部の水により3回洗浄し、60℃において乾燥し、Mw20.4万のポリコハク酸イミドを得た。このポリコハク酸イミドを、化合物製造例1と同様にして加水分解して、Mw18.0万のポリアスパラギン酸ナトリウム40部を得た。次いで、このポリアスパラギン酸ナトリウム30部を蒸留水150部に溶解し、イオン交換樹脂を通すことで酸型に変換した。
【0177】
このポリアスパラギン酸30部を蒸留水80部に溶解し、炭酸ナトリウム10.4部を用いて中和した。この水溶液に、エチレングリコールジグリシジルエーテル1.72部を加え、40℃において8時間反応させたところ、反応液はゲル化した。得られたゲルを参考例1と同様に処理したところ、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)32部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0178】
この粒子の比表面積は0.088m2/gと小さかった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、表面に凹凸が少ない構造を有していた。また、その飽和吸水量は、蒸留水に対して125倍、生理食塩水に対して27倍と低く、吸水速度は、蒸留水に対して65倍、生理食塩水に対して18倍と遅かった。また、水可溶成分は20重量%と多かった。
【0179】
[比較例2]
本比較例は、表面に凹凸の少ない粒子の例である。
【0180】
化合物製造例1で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルを、ミキサー中で細断し、60℃において乾燥することにより、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)59部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0181】
この粒子の比表面積は0.087m2/gと小さかった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、比較例1と同様に表面に凹凸が少ない構造を有していた。その飽和吸水量は、蒸留水に対して401倍、生理食塩水に対して46倍と高く、水可溶成分は0.8重量%と少なかったが、その吸水速度は、蒸留水に対して95倍、生理食塩水に対して20倍と低かった。
【0182】
[比較例3]
本比較例は、表面に凹凸の少ない粒子の例である。
【0183】
化合物製造例2で得た架橋ポリアスパラギン酸ナトリウムの含水ゲルを、ミキサー中で細断し、60℃において乾燥することにより、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)60部が得られた。さらに、このポリマーを粉砕し、100〜500μmとなるようにメッシュ・パスして、架橋ポリアスパラギン酸(ナトリウム)の粒子を得た。
【0184】
この粒子の比表面積は0.086m2/gと小さかった。また、その粒子構造をSEMにて観察したところ、比較例1と同様に表面に凹凸が少ない構造を有していた。その飽和吸水量は、蒸留水に対して1022倍、生理食塩水に対して71倍と高く、水可溶成分は0.8重量%と少なかったが、その吸水速度は、蒸留水に対して78倍、生理食塩水に対して18倍と低かった。
【0185】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、生産性が高く、生分解性を有し、高吸収速度の架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子及びその製造方法を提供できる。より具体的には、本発明により、例えば以下の効果(1)〜(4)が得られる。
(1)本発明の多孔質粒子は、非常に速い吸水速度を示すので、例えば衛生材料、その他、急速に水系液体を吸収する必要性がある各種用途において、非常に有用である。
(2)本発明の多孔質粒子の製造方法によれば、非常に速い吸水速度を示す多孔質粒子を、工業的に容易な方法にて製造できるので、産業上広い用途への応用が可能となる。
(3)本発明の多孔質粒子は、高い生分解性を有するので、コンポスト中や土中にて分解することができ、さらに環境中に放出された場合も微生物により容易に分解され、環境中への蓄積が防げられる。
(4)本発明の多孔質粒子は、高い吸水量を示すので、多量に水系液体を吸収する必要がある各種用途に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1で得た粒子の走査電子顕微鏡写真(×1000)である。
【図2】 参考例1で得た粒子の走査電子顕微鏡写真(×2000)である。
【図3】 実施例2で得た粒子の走査電子顕微鏡写真(×100)である。
【図4】 実施例2で得た粒子の走査電子顕微鏡写真(×1000)である。
Claims (12)
- ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる、下記測定法による比表面積が0.2〜10m 2 /gであり、ティーバッグ法により測定した1分間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜150倍、1時間での生理食塩水に対する吸水量がポリマー自重の30〜200倍である架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子。
(比表面積の測定法)
100℃、1×10 3 Paにて1時間加熱真空脱気処理を行なった試料を液体窒素中に入れ、窒素を蒸着させ、その蒸気圧を測定し、−196℃にてN 2 の吸着等温線の平衡圧/飽和蒸気圧を求め、BETプロットにより比表面積を求める。 - ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得られる、下記測定法による比表面積が0.2〜10m 2 /gであり、ティーバッグ法により測定した1分間での蒸留水に対する吸水量がポリマー自重の100〜1500倍、1時間での蒸留水に対する吸水量がポリマーの200〜2000倍である架橋ポリアスパラギン酸(塩)から得られる多孔質粒子。
(比表面積の測定法)
100℃、1×10 3 Paにて1時間加熱真空脱気処理を行なった試料を液体窒素中に入れ、窒素を蒸着させ、その蒸気圧を測定し、−196℃にてN 2 の吸着等温線の平衡圧/飽和蒸気圧を求め、BETプロットにより比表面積を求める。 - ポリアスパラギン酸(塩)が、ポリコハク酸イミドを加水分解して得られたものである請求項1又は2記載の多孔質粒子。
- ポリアスパラギン酸(塩)が、アルカリ金属又はアンモミウムとの塩である請求項1〜3の何れか一項記載の多孔質粒子。
- 多価エポキシ化合物が、多価グリシジル化合物である請求項1〜4の何れか一項記載の多孔質粒子。
- 多価グリシジル化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、オキシエチレンの繰り返し単位が2〜10であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル及びソルビトールポリグリシジルエーテルから成る群より選択された少なくとも1種である請求項5記載の多孔質粒子。
- ポリマー1質量部に対して200質量部の蒸留水にて膨潤させ、20時間後に濾別した濾液を蒸発乾固させたときの質量%である水可溶分が、0〜15質量%である請求項1〜6の何れか一項記載の多孔質粒子。
- 請求項1又は2記載の多孔質粒子を製造するための方法であって、
ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、凍結乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法。 - 請求項1又は2記載の多孔質粒子を製造するための方法であって、
ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルを、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法。 - 請求項1又は2記載の多孔質粒子を製造するための方法であって、
ポリアスパラギン酸(塩)を多価エポキシ化合物と反応して得た架橋ポリアスパラギン酸(塩)の含水ゲルに、水混和性有機溶媒を混合し、5×10〜9×104Paの減圧下において乾燥することを特徴とする多孔質粒子の製造方法。 - 水混和性有機溶媒が、炭素数1〜6のアルコール又はケトンである請求項10記載の多孔質粒子の製造方法。
- 水混和性有機溶媒が、メタノールである請求項11記載の多孔質粒子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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