JP4651133B2 - 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(生)分解性及び高吸水能を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
[吸水性樹脂の技術的背景]
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培、植生シート、種子テープ、流体播種、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、光ファイバー等の電子機器のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪等の幅広い分野に使用されている。
【0003】
また、その薬品徐放性を利用して、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤等の用途にも期待されている。さらにその親水性を利用して湿度調整材、電荷保持性を利用して帯電防止剤等への使用も期待される。
【0004】
[吸水性樹脂に関する先行技術]
このような用途に使用されている吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸部分中和物(特開昭55−84304号、米国特許4625001号)、澱粉−アクリロニトリル共重合体の部分加水分解物(特開昭46−43995号)、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体(特開昭51−125468号)、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の加水分解物(特開昭52−14689号)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の共重合架橋物(欧州特許0068189号)、カチオン性モノマーの架橋重合体(米国特許4906717号)、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の加水分解物(米国特許4389513号)などが知られている。
【0005】
ところが、これらの吸水性樹脂は分解性を有しないため、使用後の廃棄が問題である。
【0006】
現状としては、これらの吸水性樹脂は、廃棄時には焼却処理する方法と埋め立てする方法が行われているが、焼却炉で処理する方法では、焼却時に発生する熱による炉材の損傷のほかに、地球の温暖化や酸性雨の原因となることが指摘されている。また、吸水性樹脂を用いた紙おむつ等の廃棄物は水分を多量に含むために燃えにくく、焼却炉の温度を下げるため、800℃以下にて生成し易いダイオキシン発生の原因となることが疑われている。
【0007】
一方、埋め立て処理する方法では、プラスチックは容積がかさばる、腐らないため地盤が安定しない等の問題があるうえ、埋め立てに適した場所がなくなってきたことが大きな問題となっている。
【0008】
すなわち、これらの樹脂は分解性に乏しく、水中や土壌中では半永久的に存在するので、廃棄物処理における環境保全を考えると非常に重大な問題である。例えば紙おむつ、生理用品等の衛生材料に代表される使い捨て用途の樹脂の場合、それをリサイクルすれば多大な費用がかかり、焼却するにも大量であるため地球環境への負荷が大きい。また農・園芸用保水材として架橋ポリアクリル酸樹脂を使用した場合、土壌中でCa2+等の多価イオンとコンプレックスを形成し、不溶性の層を形成すると報告されている(松本ら、高分子、42巻、8月号、1993年)。このような層はそのもの自体の毒性は低いと言われているが、自然界には全くないものであり、長期に渡るそれら樹脂の土中への蓄積による生態系への影響は不明であり、十分に調べる必要があり、その使用には慎重な態度が望まれる。同様に非イオン性の樹脂の場合、コンプレックスは形成しないが、非分解性のため土壌中へ蓄積する恐れがあり、その自然界への影響は疑わしい。
【0009】
さらにこれらの重合系の樹脂は、人間の肌等に対して毒性の強いモノマーを使用しており、重合後の製品からこれを除去するために多くの検討がなされているが、完全に除くことは困難である。特に工業的規模での製造ではより困難となることが予想される。
【0010】
[生分解性を有する吸水性樹脂の技術的背景]
一方、近年、「地球にやさしい素材」として生分解性ポリマーが注目されており、これを吸水性樹脂として使用することも提案されている。
【0011】
このような用途に使用されている生分解性を有する吸水性樹脂としては、例えばポリエチレンオキシド架橋体(特開平6−157795号等)、ポリビニルアルコール架橋体、カルボキシメチルセルロース架橋体(米国特許4650716号)、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体、ポリアミノ酸架橋体などが知られている。この中でポリエチレンオキシド架橋体、ポリビニルアルコール架橋体は吸水量が小さく、特に生理用品、紙おむつ、使い捨て雑巾、ペーパータオルなどの高い吸水能が要求される製品の素材として使用する場合、適切でない。
【0012】
また、これらの化合物は特殊な菌のみしか生分解することができないので、一般的な条件では生分解は遅かったり、もしくは全く分解しなかったりする。さらに分子量が大きくなると極端に分解性が低下する。
【0013】
また、カルボキシメチルセルロース架橋体、アルギン酸架橋体、デンプン架橋体等の糖類架橋体は、その分子内に強固な水素結合を多く含むために、分子間、ポリマー間の相互作用が強く、そのため分子鎖が広く開くことができず、吸水能は高くない。
【0014】
[ポリアミノ酸系吸水性樹脂の技術的背景]
一方、ポリアミノ酸を架橋して得られる樹脂は生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても酵素作用により消化吸収され、しかも生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされているので、人に対してもやさしい素材である。
【0015】
このような樹脂の記載例として、ポリ−γ−グルタミン酸にγ線を照射して高吸水能を有する樹脂を製造する方法が報告されている(国岡ら、高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年))。しかし、工業的な観点からは、この技術に用いる60Co照射設備は、放射能の遮断を行うためには大がかりな設備が必要であり、その管理にも十分な配慮が必要であるため現実的ではない。また出発物質であるポリグルタミン酸が高価であることも問題点である。
【0016】
また、酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法が報告されている[Akamatsuら、米国特許第3948863号(特公昭52−41309号対応)、岩月ら、特開平5−279416号]。さらに架橋アミノ酸樹脂を吸水性ポリマーに用いる報告がされている(Sikesら、特表平6−506244号;米国特許 第5247068及び同第5284936号、鈴木ら、特開平7−309943号、原田ら、特開平8−59820号)。
【0017】
しかしいずれの報告の場合も、これらの樹脂は吸水性や塩水吸水性が十分でなく、実用的ではなかった。
【0018】
[本発明者らの技術的思想の背景]
本発明者らは、特開平7−224163号に記載されているように、ポリコハク酸イミドを架橋剤と反応させ、残りのイミド環を加水分解することにより、塩水吸水能の高い架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する技術について開示した。
【0019】
また、本発明者らは、特開平9−169840号に記載されているように、ポリコハク酸イミドを架橋した後、水混和性有機溶剤と水との均一な混合溶媒中で残りのイミド環を加水分解し、これにより塩水吸水能の高い架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する技術について開示した。
【0020】
これら技術により得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、地球にやさしく、かつ高吸水能を有するので非常に有用である。しかし、工業的見地から見た場合、さらなる改良の余地を残していた。
【0021】
すなわち、これらの方法では、架橋ポリコハク酸イミドの製造工程を十分に管理しないと、架橋が十分に進行せず、高い吸水能を有する吸水性樹脂が得られないことがあった。また、架橋反応を十分に進行させると、架橋反応時に樹脂が反応溶媒を含んで反応系全体が固化するので、攪拌中の処理が困難となったり、また、反応後の処理が困難を極めていたので、工業的生産に適した方法でなかった。したがって、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の前駆体である架橋ポリコハク酸イミドの製造方法においては、工程管理と工程の簡略化、改良の点で改善の余地があった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明の目的は、上記のような従来の問題点を解決し、生分解性を有し、かつ優れた吸水能を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を、簡易な工程により製造できる方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0024】
即ち本発明は、以下の[1]〜[12]に記載した事項により特定される。
[1] 架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを湿式粉砕する工程を含むことを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
[2] 湿式粉砕されたゲルが、加水分解を受けることを特徴とする[1]に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0025】
[3] 工程1として、架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを製造する工程、
工程2として、工程1で製造した架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを湿式粉砕する工程、
を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0026】
[4] 工程1として、架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを製造する工程、
工程2として、工程1で製造した架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを湿式粉砕する工程、
工程3として、工程2で湿式粉砕した架橋ポリコハク酸イミドのイミド環を加水分解する工程、
を含むことを特徴とする[3]に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0027】
[5] 「架橋ポリコハク酸イミド」が、ポリコハク酸イミドを、ポリアミンにより架橋したものであることを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0028】
[6] 「架橋ポリコハク酸イミド・ゲル」が、ポリコハク酸イミドの溶液又は懸濁液にポリアミンを加えて反応させたものであることを特徴とする[1]乃至[5]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0029】
[7] 「架橋ポリコハク酸イミド・ゲル」が、架橋ポリコハク酸イミドの良溶媒によりゲル化していることを特徴とする[1]乃至[6]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0030】
[8] 「湿式粉砕」が、回転翼により粉砕する機能を有する粉砕装置を使用することにより発現されたものである、及び/又は、回転翼により粉砕する機能を有する粉砕装置を使用することにより促進されたものであることを特徴とする[1]乃至[7]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0031】
[9] 「湿式粉砕」が、架橋ポリコハク酸イミド・ゲルの塊を、平均直径0.0001〜10mmのゲル粒子大きさの粒子とする操作であることを特徴とする[1]乃至[8]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0032】
[10] 「湿式粉砕」が、水を含有する液相中で行われるものであることを特徴とする[1]乃至[9]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0033】
[11] 「湿式粉砕」が、水と水混和性有機溶媒を含有する液相中で行われるものである[1]乃至[10]の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
【0034】
[12] [1]乃至[11]の何れかに記載した方法により製造された架橋ポリアスパラギン酸系樹脂。
【0035】
本発明に従い、従来は加水分解処理が非常に困難であった、架橋反応により有機溶媒を含んでゲル化した架橋ポリコハク酸イミドのゲルを湿式粉砕し、残りのイミド環を加水分解すれば、生分解性を有し、かつ優れた吸水能を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を、簡易な工程により製造できる。
【0036】
本発明に従い得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、廃棄後に生分解することで地球環境にやさしいので、紙オムツ用、農・園芸用等に使用される、吸水能に優れた高吸水性樹脂として非常に有用である。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0038】
[1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の構造
本発明において製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、その構造上から、大きく分けると、主鎖基本骨格部分、側鎖部分、架橋部分からなる。以下、これらを3つに分けて説明する。
【0039】
[1−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の構造
本発明において製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位は、アスパラギン酸残基単独で構成されてもよいし、アスパラギン酸とアスパラギン酸以外のアミノ酸との共重合体であっても構わない。なお本発明では、結合の様式に関わらず、ポリマー中のアスパラギン酸からなる繰り返し単位部分を「ポリアスパラギン酸残基」と呼ぶ。
【0040】
アスパラギン酸以外のアミノ酸の具体例としては、例えば、アスパラギン酸を除く19種類の必須アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0041】
共重合体である場合は、ブロック・コポリマーであっても、ランダム・コポリマーであっても構わない。また、グラフトであっても構わない。
【0042】
ポリアスパラギン酸残基から成る繰り返し単位の数は、特に限定されないが、分子を構成する繰り返し単位の総数に対して、1〜99.8%が好ましく、10〜99.8%がより好ましい。
【0043】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位としては、高い吸水能を有するという点から、ポリアスパラギン酸残基単独、又は、グルタミン酸若しくはリジンとの共重合体から構成されることが好ましく、工業的生産の点から、前記繰り返し単位がポリアスパラギン酸残基単独からなることが特に好ましい。
【0044】
ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。すなわち、ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単位のアミノ基等と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。このポリアスパラギン酸の場合のα結合とβ結合は、通常、混在して存在する。本発明では、その結合様式は特に限定されない。
【0045】
本発明において製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖基及び架橋基は、基本的にポリアスパラギン酸のカルボキシル基が置換されたカルボン酸誘導体である。その詳細を以下に説明する。
【0046】
[1−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖は、架橋ポリコハク酸イミドのイミド環を加水分解により開環した構造を有し、この加水分解により生成したカルボキシル基を含む。また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、他の置換基を有する側鎖を含んでいてもよい。他の置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基等を一個以上含むペンダント基が挙げられる。また、ペンダント基は、特定の置換基を持たないアルキル基、アラルキル基、アリール基であってもよい。これらのペンダント基は、ポリアスパラギン酸残基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合等で繋がっている。
【0047】
加水分解により生成したカルボキシル基は、フリーの状態でも塩を形成していてもよい。塩を形成するイオンの具体例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のイオン;アルカリ金属イオン、アンモニウム;テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンイオン等のアミンイオン等を挙げることができる。
【0048】
これらの中では、イオンの原子量又は分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、その分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、皮膚等に対する刺激性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0049】
[1−3] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂中の架橋部分は、その分子構造について特に限定されない。架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分は、ポリマー主鎖基本骨格との「結合部分」と、それらを橋架けする「連結部分」に分けて理解することができる。以下、それらについて説明する。
【0050】
[1−3−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の結合部分
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の結合部分は、特に限定されない。その具体例としては、例えば、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合から成る構造を挙げることができる。これらは単独でもよいし、複数の構造が混在していても構わない。
【0051】
[1−3−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の連結部分
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の連結部分は特に限定されない。連結部分の具体例を、以下に挙げる。
【0052】
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−(CH2)5−、−(CH2)6−、−(CH2)7−、−(CH2)8−、−(CH2)9−、−(CH2)10−、−(CH2)11−、−(CH2)12−、−(CH2)13−、−(CH2)14−、−(CH2)15−、−(CH2)16−、−(CH2)17−、−(CH2)18−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−、−(CH2CH2O)3CH2CH2−、−(CH2CH2O)4CH2CH2−、−(CH2CH2O)5CH2CH2−、−(CH2CH2O)6CH2CH2−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)2CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)3CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)4CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)5CH2CH2CH2−、−(CH2CH2CH2O)6CH2CH2CH2−、
【0053】
【化1】
【0054】
【化2】
これらの連結部分は、無置換のものでも、置換基により置換したものでもよい。この置換基としては、炭素原子数1から18の分岐していてもよいアルキル基、炭素原子数3から8のシクロアルキル基、アラルキル基、置換していてもよいフェニル基、置換していてもよいナフチル基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルコキシ基、アラルキルオキシ基、フェニルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いジアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基並びにホスホン酸基及びこれらの塩、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0055】
例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル等のアラルキル基、フェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ビフェニル等のフェニル基、ナフチル、メチルナフチル等のナフチル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプチルデシルオキシ、オクチルデシルオキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、ベンジルオキシ、トリルオキシ等のアラルキルオキシ基、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプチルデシルチオ、オクチルデシルチオ等のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ、トリルチオ等のアラルキルチオ基、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ、ドデシルアミノ、トリデシルアミノ、テトラデシルアミノ、ペンタデシルアミノ、ヘキサデシルアミノ、ヘプチルデシルアミノ、オクチルデシルアミノ等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ、ジウンデシルアミノ、ジドデシルアミノ、ジトリデシルアミノ、ジテトラデシルアミノ、ジペンタデシルアミノ、ジヘキサデシルアミノ、ジヘプチルデシルアミノ、ジオクチルデシルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルプロピルアミノ等のジアルキルアミノ基、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、トリヘプチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、トリノニルアンモニウム、トリデシルアンモニウム、トリウンデシルアンモニウム、トリドデシルアンモニウム、トリテトラデシルアンモニウム、トリペンタデシルアンモニウム、トリヘキサデシルアンモニウム、トリヘプチルデシルアンモニウム、トリオクチルデシルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルベンジルアンモニウム、メチルジベンジルアンモニウム等のトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、又は、スルホン酸基、又はホスホン酸基及びこれらの塩、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、トリデシルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ペンタデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル、ヘプタデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等のアルキルオキシカルボニル基、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ノニルカルボニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ウンデシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、トリデシルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、ペンタデシルカルボニルオキシ、ヘキサデシルカルボニルオキシ、ヘプタデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等のアルキルカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0056】
これらの中から分子量が大きいものを選択すると、架橋部分の分子量が大きくなり、相対的に繰り返し単位当たりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、分子量が小さいものを選択する方が好ましい。また、一般的に製造法が簡単なものを選択することも好ましい。例えば、無置換のもの、又は、置換基(例えば、メチル、エチル、メトキシ、メチルオキシカルボニル及び/又はメチルカルボニルオキシ基;並びに/又は水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基及び又はこれらの塩等)により置換されたものが好ましい。
【0057】
さらに、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を保水材の用途に使用する場合は、樹脂分子内に極性基が存在することが好ましいので、架橋部分は、無置換の状態で極性基を含むもの、又は、極性基を含む置換基(例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基並びに/又はこれらの塩)により置換されたものが特に好ましい。
【0058】
ここで、架橋部分の量は特に限定されないが、架橋部分を有する繰り返し単位の数は、重合体全体の繰り返し単位の総数を基準として、0.1〜20%が好ましく、0.5〜10%がより好ましい。
【0059】
[2] ポリコハク酸イミドの製造方法
本発明に使用する架橋前のポリコハク酸イミドは、その製造方法について特に限定されない。その具体例として、例えば、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Amer.Chem.Soc.)80巻・3361頁〜(1958年)等に記載の方法を挙げることができる。
【0060】
使用するポリコハク酸イミドの分子量は、特に限定されないが、分子量が高い方が保水材としての能力が高くなる。一般的に、3万以上、好ましくは5万以上、より好ましくは9万以上である。
【0061】
また、ポリコハク酸イミドは、線状構造であっても、分岐状構造を有するものであってもよい。
【0062】
[3] ポリコハク酸イミドを架橋する方法
ポリコハク酸イミドを架橋し、架橋ポリコハク酸イミドを製造する方法は、ポリコハク酸イミドを溶解できる有機溶媒である良溶媒中にて、ポリコハク酸イミドと架橋剤とを反応させる。使用される溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。この中で、ポリコハク酸イミドの溶解性が高いN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0063】
また、架橋反応を遅くする目的で、ポリコハク酸イミドを溶解しない、もしくはわずかしか溶解しない貧溶媒を加えても構わない。この貧溶媒としては、特に限定されず、化学反応一般に使用される溶媒であって、ポリコハク酸イミドの溶解性が低い溶媒はいずれであっても使用できる。貧溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルグリコソルブ、エチルグリコソルブ等のグリコソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、デカリン、ジフェニルエーテル、アニソール、クレゾール等がある。これらの中では、架橋剤又はアミノ酸のカルボン酸の塩が溶解できる、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0064】
反応生成物は架橋反応が進行するにつれてゲル化していく。このとき、反応系全体がゲル化する前に処理しても、完全にゲル化させて処理しても構わない。ゲル化の程度は、ポリマー濃度、架橋剤量、架橋度、貧溶媒の存在率等の反応条件によって異なる。ポリマー濃度が高い場合、架橋剤量が多い場合、架橋度が高い場合、貧溶媒の存在比が低い場合等の条件では、得られるゲルは硬いものとなり、逆の場合、ゲルは柔らかくなる。この場合、生成するゲルは、加水分解して得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用用途に応じて選択される。例えば、高ゲル強度の樹脂を得るためには、架橋度を高めればいい。
【0065】
ここで柔らかいゲルの場合は、特開平7−224163号に記載のように、ゲルを貧溶媒又は水に分散させてほぐすことができる。しかし、硬いゲルの場合は、この方法では短時間で、十分にほぐすことができず、処理は困難となる。この場合、本発明の特徴である架橋ポリコハク酸イミドのゲルを湿式粉砕する方法が非常に有効である。
【0066】
すなわち、架橋反応後の反応生成物である架橋ポリコハク酸イミドは、有機溶媒を含んで膨潤したゲルとなり、このゲルを、湿式粉砕して用いる方法は本発明の特徴である。この場合、架橋反応後のゲルを取り出して、湿式粉砕装置に装入してもよいし、あるいは、架橋反応自体を湿式粉砕装置の中で行い、装置中でゲル化させてもよい。
【0067】
本発明の架橋ポリコハク酸イミドのゲルの湿式粉砕は、ゲルが硬いときのみならず、ゲルが柔らかいときにも有効であり、短時間にて処理が可能となる。
【0068】
[4] 湿式粉砕
本発明では、ポリコハク酸イミドを架橋させて得た架橋ポリコハク酸イミドのゲルに対して湿式粉砕を適用することを特徴とする。ここで、「湿式粉砕」なる語の概念は、被処理物(ゲル等)をそのまま粉砕する態様、被処理物を水及び/又は有機溶媒中で粉砕する態様を包含する。
【0069】
また、粉砕の操作は、移送等を考慮すると、水及び/又は有機溶媒中で粉砕する方法や、被処理物をそのまま粉砕し、その後移送用の溶媒(水及び/又は有機溶媒)を加え流動性を付与する方法が好ましい。
【0070】
[4−1] 湿式粉砕で使用する溶媒
湿式粉砕で使用する溶媒は、特に限定されず、一般的にこの用途に使用される溶媒は、いずれであっても使用できる。その具体例としては、例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルグリコソルブ、エチルグリコソルブ等のグリコソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、デカリン、ジフェニルエーテル、アニソール、クレゾール等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0071】
ここで使用する溶媒が架橋ポリコハク酸イミドとの親和性がある場合は、粉砕物はゲル状を維持し、親和性が低い場合、ゲルから固体状へと変わる。この場合、架橋ポリコハク酸イミドに含まれる、他の側鎖基等の影響も受ける。
【0072】
[4−2] 湿式粉砕で使用する粉砕装置
使用する粉砕装置としては、実質的に、固体、ゲル状物、液体中の固体、又は液体中のゲル状物を粉砕できるものであればよく、特に制限されない。その具体例としては、刃付撹拌翼又は通常の撹拌翼が高速回転する形式のものが好ましい。また、粉砕効率を上げるために、バッフルを具備した粉砕装置も好ましく、さらに、粉砕とともに移送機能を併せ有する粉砕装置も好ましい。撹拌翼の形状は特に限定されず、スクリュウ状でも、大きな負荷がかかりにくいリボン状、針金状でも構わない。
【0073】
例えば、パイプラインホモミキサー、ホモミックスラインミル、ゴラトールポンプ、ディスインテグレーター、ミキサー、スパイクミル、ホモジナイザー、ミートチョッパー、製麺機、コーヒーミル、ジューサーミキサー、ボルテックスミキサー、タンブラーミキサー等が挙げられる。
【0074】
ここで、刃付撹拌翼又は通常の撹拌翼の回転数(rpm、回転数毎分)は、実質的に粉砕が達成されれば、特に制限されない。一般的には、摩擦熱により系の温度が加熱しない範囲において、高速の方が好ましい。具体的には、10〜100000rpmが好ましく、100〜10000rpmがより好ましく、1000〜5000rpmが特に好ましい。
【0075】
湿式粉砕は、一段階で行っても、何回かに分けて段階的に行ってもよい。湿式粉砕により達成される架橋ポリコハク酸イミドのゲルの粒度(平均粒子直径)、あるいは架橋反応の際の分散状態のポリコハク酸イミドの粒度(平均粒子直径)は、特に限定されない。一般的には、0.00001〜20mmが好ましく、0.001〜10mmがより好ましく、0.05〜2mmが特に好ましい。通常、細断物の粒度が大きすぎると、その反応速度が遅くなる。
【0076】
湿式粉砕により得られる架橋ポリコハク酸イミドの粒度は、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用用途によっても変わってくる。
【0077】
例えば、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を他の樹脂に添加して使用したり、増粘剤等に使用する場合、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度は小さいほうが好ましく、湿式粉砕して得られる架橋ポリコハク酸イミドの粒度も小さくする方が好ましい。架橋ポリコハク酸イミドの粒度が小さいほうが、加水分解後の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の一次粒子は小さくなる。一般的には、0.00001〜1mmが好ましく、0.0001〜0.1mmがより好ましい。
【0078】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を紙おむつ用や農園芸用に用いる場合は、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度は比較的大きいほうが好ましく、湿式粉砕にて得られる架橋ポリコハク酸イミドの粒子も大きいほうが好ましい。例えば、0.01〜20mmが好ましく、0.1〜2mmが好ましい。
【0079】
すなわち、加水分解の条件が吸水ゲルの形を変えるほど激しい条件でなければ、湿式粉砕して得られる架橋ポリコハク酸イミドの粒度によって、得られる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度が調整できる。
【0080】
このような湿式粉砕を、非分散状態のポリコハク酸イミドを架橋させて得た架橋ポリコハク酸イミドのゲルを湿式粉砕後、粉砕物は、次に、イミド環の加水分解反応に供される。この加水分解反応工程は、通常、水を必須成分として用いる。したがって、水及び/又は水混和性有機溶媒中で湿式粉砕を行った場合は、ゲル粉砕物を分離することなく、そのままの状態で、次の加水分解工程を行ってもよい。
【0081】
また、予め粉砕される被処理物に、加水分解反応のための塩(有機塩及び/又は無機塩)を溶解や混合により共存させておき、粉砕後、粉砕物をそのまま、次の加水分解工程に処すこともできる。さらに粉砕と同時に、加水分解反応のためのアルカリ水溶液を添加し、粉砕と加水分解反応を同時に行うこともできる。
【0082】
また、この粉砕により固体を含む有機溶媒のスラリーを得て、この固体を有機溶媒から分離する場合は、有機溶媒回収等を考慮して分離することもできる。好ましい分離法としては、瀘過、デカンテーション、遠心分離等の一般的な化学的分離法が挙げられる。得られた固体は、乾燥してから次の加水分解工程を行ってもよく、ウェット・ケーキのまま次の加水分解工程を行ってもよい。すなわち、有機溶媒を加水分解工程前に除去してもよく、これを除去することなくそのまま加水分解工程を行ってもよい。
【0083】
[5]架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の加水分解
架橋ポリコハク酸イミドの残りのイミド環の加水分解は特願平9−68185号に記載の方法にて容易に実施できる。すなわち、水と水混和性有機溶媒混合液中、無機もしくは有機塩の水溶液中、或いは40乃至100℃の温水中にて加水分解を行う方法であり、これらの複数を組み合わせて使用しても構わない。
【0084】
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の加水分解において、水中ではゲル化が著しくなり、攪拌が困難となったり、有機溶媒中では沈殿物が凝集して攪拌困難となったり、また加水分解が遅くなったり十分に進行しなくなり、生成した樹脂の吸水量が低下するので、これらの方法を用いる。
【0085】
水混和性有機溶媒を使用する場合、使用する有機溶剤は、特に限定されないが、一般にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等がある。この中で、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂として乾燥する際に、特に乾燥が容易であり、かつ乾燥後に組成物内に溶剤が残留しにくい点でメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが好ましい。
【0086】
使用する水の使用量は容積効率を高めるために、生成する吸水性樹脂の1〜10重量倍が好ましく、特に1〜5重量倍が好ましい。
【0087】
使用する水の割合は、混合溶媒に対して5〜100重量%が好ましく、20〜80重量%が特に好ましい。
【0088】
無機もしくは有機塩を使用する場合、その無機もしくは有機塩は、特に限定されず、一般的な塩は広く使用できる。例えば、中性塩、塩基性塩、酸性塩が使用できる。ここで多価金属塩の場合、イミド環の加水分解で生成したカルボキシル基とイオン的に架橋し架橋度が高くなるので、その濃度を高くできない。
【0089】
使用する塩の添加の方法としては、水に加えて溶解させても、水中で中和により生成させても構わない。また、架橋反応によって生じた塩をそのまま用いることもできる。
【0090】
使用する塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、二亜硫酸、アミド硫酸、チオ硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、次リン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、過炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、塩素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、次亜ヨウ素酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、アルミン酸、テルル酸、イソシアン酸、チオシアン酸、マンガン酸、過マンガン酸、過ヨウ素酸、クロム酸、ニクロム酸、メタ亜アンチモン酸、メタバナジン酸、モリブデン酸等の無機鉱酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸、シュウ酸、有機フェノール等の金属塩もしくは有機塩基塩、酸化物等が挙げられる。この中で皮膚等に対する刺激性が低く、酸化還元性が無く、低コストであり、水への溶解性が高い塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、炭酸、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、ケイ酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、シュウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸の金属塩もしくは有機塩基塩が好ましく、特に塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ホウ酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸の金属塩もしくは有機塩基塩が好ましい。
【0091】
金属塩の金属はリチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲリウム、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、錫、テルリウム、セシウム、バリウム、セリウム、金、水銀、タリウム、鉛等が挙げられる。この中で皮膚等に対する刺激性が低く、低コストであり、水への溶解性が高いリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0092】
有機塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等が挙げられる。この中で水への溶解性、臭気、安全性、コストを考慮すると、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、のアミン塩等が特に好ましい。
【0093】
具体的な塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ベリリウム、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化バナジウム、塩化クロム、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、塩化イットリウム、塩化ジルコニウム、塩化モリブデン、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化銀、塩化カドミウム、塩化錫、塩化テルリウム、塩化セシウム、塩化バリウム、塩化セリウム、塩化鉛、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩等の塩化物塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ブロミド、テトラエチルアンモニウム・ブロミド、テトラブチルアンモニウム・ブロミド、トリエタノールアミン・臭化水素酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ヨード、テトラエチルアンモニウム・ヨード、テトラブチルアンモニウム・ヨード、トリエタノールアミン・ヨウ化水素酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硝酸塩、テトラエチルアンモニウム・硝酸塩、テトラブチルアンモニウム・硝酸塩、トリエタノールアミン・硝酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・炭酸塩、テトラエチルアンモニウム・炭酸塩、テトラブチルアンモニウム・炭酸塩、トリエタノールアミン・炭酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸リチウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラエチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム・安息香酸塩、トリエタノールアミン・安息香酸塩、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・シュウ酸塩、テトラエチルアンモニウム・シュウ酸塩、テトラブチルアンモニウム・シュウ酸塩、トリエタノールアミン、・シュウ酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・酢酸塩、テトラエチルアンモニウム・酢酸塩、テトラブチルアンモニウム・酢酸塩、トリエタノールアミン・酢酸塩、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸リチウム、プロピオン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・プロピオン酸塩、テトラエチルアンモニウム・プロピオン酸塩、テトラブチルアンモニウム・プロピオン酸塩、トリエタノールアミン、・プロピオン酸塩等が挙げられる。
【0094】
これらの中で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ブロミド、テトラエチルアンモニウム・ブロミド、テトラブチルアンモニウム・ブロミド、トリエタノールアミン・臭化水素酸塩、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ヨード、テトラエチルアンモニウム・ヨード、テトラブチルアンモニウム・ヨード、トリエタノールアミン・ヨウ化水素酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硝酸塩、テトラエチルアンモニウム・硝酸塩、テトラブチルアンモニウム・硝酸塩、トリエタノールアミン・硝酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・炭酸塩、テトラエチルアンモニウム・炭酸塩、テトラブチルアンモニウム・炭酸塩、トリエタノールアミン・炭酸塩、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラエチルアンモニウム・安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム・安息香酸塩、トリエタノールアミン・安息香酸塩、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・酢酸塩、テトラエチルアンモニウム・酢酸塩、テトラブチルアンモニウム・酢酸塩、トリエタノールアミン・酢酸塩、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が好ましく、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・クロリド、テトラエチルアンモニウム・クロリド、テトラブチルアンモニウム・クロリド、トリエタノールアミン塩酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・硫酸塩、テトラエチルアンモニウム・硫酸塩、テトラブチルアンモニウム・硫酸塩、トリエタノールアミン・硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・ベンゼンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸カリウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラエチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウム・p−トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン・p−トルエンスルホン酸塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸アンモニウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等が好ましくい。
【0095】
使用する塩の濃度は、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。濃度が低すぎる場合は効果が小さく、濃度が高すぎると塩が製品中に混入する場合がある。
【0096】
残りのイミド環の開環に使用できる試剤は、特に限定されないが、一般的には、アルカリ水が用いられる。使用するアルカリ水は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。この中で、コスト的に安価な水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0097】
残りのイミド環のアルカリ開環の反応液のpHはアルカリ水の濃度によって変わるが、pHが高すぎると主鎖のアミド結合を切断し、生成する樹脂の吸水能を低下させ、逆にpHが低すぎると、反応が遅くなり、実用的でない。一般的には7.5〜13が好ましく、9〜12がより好ましい。
【0098】
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の開環反応は、水中、5〜100℃にて行われる。特に10〜60℃が好ましい。
【0099】
[6] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環をアルカリ加水分解反応させた結果生成する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理については、特に限定されない。例えば、中和、塩交換、乾燥、精製、造粒、表面架橋処理等の処理を、必要に応じて行えばよい。以下、特に中和、塩交換、乾燥の処理について説明する。
【0100】
[6−1] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理は、必要に応じて行えばよい。ただし、加水分解反応後の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を含む反応液は、通常はアルカリ性である。したがって、酸等を添加して、中和することが好ましい。この中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内に存在するカルボキシル基を塩にすることができる。この中和度は特に限定されないが、一般的には架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内の全アスパラギン酸残基の総数を基準として、塩を形成するカルボキシル基の割合は、0〜50%が好ましく、0〜30%がより好ましい。
【0101】
中和処理の方法は特に限定されないが、加水分解反応後に、酸を添加してpHを調整する方法が一般的である。この酸の具体例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸、ベンゼンホスホン酸等のホスホン酸等が挙げられる。
【0102】
[6−2] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の塩交換処理
中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内に存在するカルボキシル基を塩とした場合、必要に応じて、その塩を他の種類の塩に交換することもできる。
【0103】
この塩交換に使用される試剤の具体例としては、例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を挙げることができる。より具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン塩等を例示することができる。
【0104】
これらの中では、その分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位重量当たりの吸水量が小さくなるので、その分子量が小さいものの方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、毒性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、さらに、ナトリウム、カリウムを用いることが、コストの面で特に好ましい。
【0105】
[6−3] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の乾燥処理
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の乾燥処理の方法は特に制限されない。例えば熱風乾燥、特定蒸気での乾燥、マイクロ波乾燥、減圧乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶剤中での共沸脱水による乾燥等の公知の手法を挙げることができる。乾燥温度は、一般的には、20〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。
【0106】
この乾燥処理を施した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂に対して、さらに精製処理、造粒処理、表面架橋処理等を施しでもよい。
【0107】
[7] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状、粒子径
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状は、不定形破砕状、球状、粒状、顆粒状、造粒状、リン片状、塊状、パール状、微粉末状、繊維状、棒状、フィルム状、シート状等種々のものが使用でき、用途によって好ましい形状を使用できる。また、繊維状基材や多孔質状や発泡体あるいは造粒物であってもよい。
【0108】
[8] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状の具体例としては、不定形破砕状、球状、粒状、顆粒状、造粒状、リン片状、塊状、パール状、微粉末状、繊維状、棒状、フィルム状、シート状等種々のものを挙げることができ、用途に応じて好ましい形状を選択できる。また、繊維状基材、多孔質体、発泡体、造粒物等であってもよい。
【0109】
[9] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒度(平均粒子直径)は特に限定されず、用途に応じて好ましい粒度を選択できる。例えば、紙オムツに用いる場合は、速い吸収速度とゲル・ブロッキングが起こらないことが望まれるので、その平均粒子径は100〜1000μmが好ましく、150〜600μmがより好ましい。また例えば、止水材等の樹脂への練り混みに用いる場合は、その平均粒子径は1〜10μmが好ましく、農園芸用の保水材に用いる場合は、土との分散性を考慮して、100μm〜5mmが好ましい。
【0110】
[10] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態は、特に限定されるものではなく、単独でも、他の素材と組み合わせて使用してもよい。
【0111】
例えば、他の樹脂と組合せて用いる場合、熱可塑性樹脂に混練りして射出成形等にて成形する方法、構成樹脂のモノマーと酸性ポリアミノ酸系樹脂及び必要により開始剤を混合後、光もしくは熱等で重合する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を溶剤に分散させ、キャストし、溶剤を除去する方法、プレポリマーと架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法等がある。
【0112】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の成型品としては、特に限定されるものではなく、固形物、シート、フィルム、繊維、不織布、発泡体、ゴム等として使用できる。また、その成型方法も特に限定されるものではない。
【0113】
一方、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、単独でも、他の素材との組み合わせによる複合体でも構わない。複合体の構造は特に限定されないが、例えば、パルプ層、不織布等にはさみ、サンドイッチ構造にする方法、樹脂シート、フィルムを支持体として多層構造とする方法、樹脂シートにキャストし、二層構造とする方法等がある。例えば、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂をシート状に成形加工すれば、吸水性シート(吸水性フィルムも包含する)が得られる。
【0114】
また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、必要により、1種以上の他の吸水性樹脂と混合して用いても良い。また、必要により、食塩、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物、キレート剤等の有機化合物を添加しても構わない。さらに酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、消臭剤、顔料等を混合しても構わない。
【0115】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、ゲル状でも固形物としても使用できる。例えば、農園芸用保水材、切り花延命剤、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤等に使用する場合はゲルとして用い、紙おむつ用吸収体等は固形状として用いる。
【0116】
[11] 架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途は特に限定されないが、従来の吸水性樹脂が使用できる用途のいずれにも使用できる。
【0117】
例えば、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、電子機器、光ファイバー等のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤、湿度調整材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0118】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において「部」とは「重量部」を意味する。実施例中の吸水量は、以下のティーバッグ法にて測定した。
【0119】
(1)ティーバッグ法
吸水量の測定は蒸留水、生理食塩水を対象として行った。すなわち、蒸留水の場合は吸水性樹脂約0.05部、生理食塩水の場合は吸水性樹脂約0.1部を不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、過剰の対応する溶液中に浸して該樹脂を1時間膨潤させた後、ティーバッグを引き上げて1分間水切りを行い、膨潤した樹脂を含むティーバッグの重量を測定した。同様な操作をティーバッグのみで行った場合をブランクとして、その重量からブランクの重量と吸水性樹脂の重量を減じた値を、吸水性樹脂の重量で除した値を吸水量(g/樹脂1g)とし た。なお、生理食塩水は0.9重量%塩化ナトリウム水溶液である。
【0120】
[実施例1]
リジンメチルエステル・2塩酸塩7.2部とリジン・1塩酸塩22.6部を、蒸留水40部に溶解し、苛性ソーダ7.8部を少しずつ加えて中和し、リジン水溶液を調製した。一方、窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド100部を、DMF400部に溶解し、この溶液にリジン水溶液を加え、室温で1時間攪拌後、撹拌を止め、20時間反応させ、架橋ポリコハク酸イミドのゲルを得た。この架橋ポリコハク酸イミドのゲルを、刃付攪拌翼を具備したミキサーに移送し、蒸留水400部とメタノール400部を加え、8000rpmにて5分間ゲルを粉砕した。
【0121】
さらに、樹脂の膨潤度を3乃至100倍の範囲内に保ちつつ、この中に、27重量%苛性ソーダ水溶液129.7部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、その後7重量%塩酸水を加えてpH7となるように中和した。中和終了後、さらにメタノール300部を加え、沈殿物を60℃で乾燥し、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂145部を得た。
【0122】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で860倍、生理食塩水で70倍であった。
【0123】
[実施例2]
ポリコハク酸イミドの重量平均分子量を15.5万に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂146部を得た。この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で1050倍、生理食塩水で72倍であった。
【0124】
[実施例3]
実施例1と同様にしてリジン水溶液を調製した。一方、窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド100部を、DMF400部に溶解し、この溶液にリジン水溶液を加え、室温で、リボン状高速撹拌機を具備した反応器中で無撹拌下、20時間反応させ、架橋ポリコハク酸イミドのゲルを得た。この架橋ポリコハク酸イミドのゲルを、そのまま、リボン状高速撹拌機を具備した反応器中で、15000rpmで10分間を粉砕した。
【0125】
この中に、蒸留水400部とメタノール400部を加え、樹脂の膨潤度を3乃至100倍の範囲内に保ちつつ、27重量%苛性ソーダ水溶液129.7部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間攪拌し、7重量%塩酸水を加えてpH7となるように中和した。中和終了後、さらにメタノール300部を加え、沈殿物を60℃で乾燥し、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂145部を得た。
【0126】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で850倍、生理食塩水で69倍であった。
【0127】
[実施例4]
リジンメチルエステル・2塩酸塩の代わりに、ヘキサメチレンジアミン3.0部を使用して、架橋剤水溶液を調製して用いたこと以外は、実施例1と同様にして、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂136部を得た。この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で780倍、生理食塩水で68倍であった。
【0128】
[実施例5]
リジンメチルエステル・2塩酸塩の代わりに、m−キシリレンジアミン3.5部を使用して、架橋剤水溶液を調製して用いたこと以外は、実施例1と同様にして、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂132部を得た。この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で740倍、生理食塩水で66倍であった。
【0129】
[比較例1]
リジンメチルエステル・2塩酸塩7.2部とリジン・1塩酸塩22.6部を蒸留水40部に溶解し、苛性ソーダ7.8部を少しずつ加えて中和し、リジン水溶液を調製した。一方、窒素気流下、重量平均分子量9.6万のポリコハク酸イミド100部をDMF400部に溶解し、この溶液にリジン水溶液を加え、室温で撹拌した。しかし、撹拌の途中で反応液の増粘が著しくなり、攪拌不能となったので、攪拌を止めて30時間反応し、反応物のゲルを得た。
【0130】
この反応物のゲルをメタノール1000部に加え、室温で攪拌したが、沈殿した粒子の大きさが大きいため撹拌速度を上げることができず、架橋物全体がほぐれるのに1日以上かかり、操作が困難であった。このようにして得た沈殿物を吸引濾過にて集め、メタノール続いて水で洗浄し、架橋ポリコハク酸イミドのウェットケーキを得た。
【0131】
この架橋ポリコハク酸イミドのウェット・ケーキを、蒸留水15部とメタノール15部に懸濁し、24重量%の水酸化ナトリウム水溶液7.3部を、懸濁液のpHが11〜12の範囲内になるように滴下した。pHが下がらなくなった後、希塩酸を加え反応液のpHを7になるまで加えた。得られた混合物を100部のメタノールに排出し、乾燥、粉砕して、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂7.6部を得た。
【0132】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で380倍、生理食塩水で59倍であった。
【0133】
[比較例2]
リジンメチルエステル・2塩酸塩6部をDMF200部に懸濁し、トリエチルアミン6部で中和した。この懸濁液に、重量平均分子量13万のポリコハク酸イミド50部をDMF250部に溶解した溶液を装入し、1時間室温で撹拌後、トリエチルアミン12部を適下し、室温で40時間反応させた。反応液をエタノールに排出し、乾燥して、架橋ポリコハク酸イミド50部を得た。
【0134】
この架橋ポリコハク酸イミド26部を、蒸留水5000部に懸濁し、2NのNaOH水溶液を適下してpHを9〜11に調整しながら、残りのイミド環の加水分解を行った。得られた反応液をエタノールに排出し、濾過、乾燥して、吸水性ポリマーである架橋ポリアスパラギン酸系樹脂86部を得た。
【0135】
この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水量は、蒸留水で110倍、生理食塩水で30倍であった。
【0136】
[実施例1〜5と比較例1〜2の比較及び考察]
実施例1〜 5では、架橋ポリコハク酸イミドのゲルを湿式粉砕して用いたので、高い吸水量を発現する架橋ポリアスパラギン酸を、高い生産性で製造することができた。対照的に、比較例1では、生産性が著しく低下し、比較例2では、樹脂の吸水量が著しく低下してしまった。
【0137】
【発明の効果】
以上説明したように、紙オムツ用、農・園芸用等に使用される吸水体として、使用後、もしくは廃棄後に生分解性することで地球環境に優しい架橋ポリアスパラギン酸の製造において、架橋ポリコハク酸イミドのゲルを湿式粉砕を行うことにより、工業的生産に適した、高い吸水量を有する吸水性樹脂を製造できる。
Claims (6)
- ポリコハク酸イミドをポリアミンにより架橋したものである架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを湿式粉砕する工程を含む架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法であって、
工程1として、架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを製造する工程、
工程2として、工程1で製造した架橋ポリコハク酸イミド・ゲルを、回転翼により粉砕する機能を有する粉砕装置を使用することにより発現される湿式粉砕を行う工程、及び/又は、回転翼により粉砕する機能を有する粉砕装置を使用することにより促進される湿式粉砕を行う工程、
工程3として、工程2で湿式粉砕した架橋ポリコハク酸イミドのイミド環を加水分解する工程、
を含むことを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。 - 「架橋ポリコハク酸イミド・ゲル」が、ポリコハク酸イミドの溶液又は懸濁液にポリアミンを加えて反応させたものであることを特徴とする請求項1に記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 「架橋ポリコハク酸イミド・ゲル」が、架橋ポリコハク酸イミドの良溶媒によりゲル化していることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 「湿式粉砕」が、架橋ポリコハク酸イミド・ゲルの塊を、平均直径0.0001〜10mmのゲル粒子大きさの粒子とする操作であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 「湿式粉砕」が、水を含有する液相中で行われるものであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
- 「湿式粉砕」が、水と水混和性有機溶媒を含有する液相中で行われるものである請求項1乃至5の何れかに記載した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
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