JP4541598B2 - 架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法 - Google Patents

架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋ポリコハク酸イミドの製造方法に関する。より具体的には、優れた(生)分解性及び吸水性を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の前駆体として有用な架橋ポリコハク酸イミドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培、植生シート、種子テープ、流体播種、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、光ファイバー等の電子機器のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪等の幅広い分野に使用されている。また、その薬品徐放性を利用して、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤等の用途も期待されている。さらに、その親水性を利用して、湿度調整材、電荷保持性を利用して帯電防止剤等への使用も期待されている。 しかし、従来、前記用途に使用されているのは、主にアクリル酸系の吸水性樹脂である。アクリル酸系の吸水性樹脂は、分解性をほとんど有しないため、使用後、廃棄された場合に、様々な環境問題の原因となる可能性が指摘されている。
【0003】
そこで、従来の非分解性樹脂の代替として、近年、生分解性樹脂が注目されており、吸水性樹脂においても生分解性を有する樹脂を使用することが提案されている。その一つとして、ポリアミノ酸を架橋して得られる樹脂が注目されている。ポリアミノ酸系樹脂は、生分解性を有するために地球環境にやさしく、また生体内に吸収されても酵素作用により消化吸収され、しかも生体内での抗原性を示さず、分解生成物も毒性がないことが明らかにされているので、人に対してもやさしい素材である。
【0004】
このような樹脂の例として、ポリ−γ−グルタミン酸にγ線を照射して高吸水能を有する樹脂を製造する方法が報告されている(国岡ら、高分子論文集、50巻10号、755頁(1993年))。しかし、工業的な観点からは、この技術に用いる60Co照射設備は、放射能の遮断を行うためには大がかりな設備が必要であり、その管理にも十分な配慮が必要であるため現実的ではない。
【0005】
また、酸性アミノ酸を架橋させてハイドロゲルを得る方法が報告されている[特公昭52−41309号(米国特許第3948863号)]。さらに架橋アミノ酸樹脂を吸水性ポリマーに用いる報告がされている[特表平6−506244号(国際特許公開WO92/17525)]。しかし、これらの樹脂は、吸水性や塩水吸水性が十分でなく、実用的ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、特開平7−224163号には、ポリコハク酸イミド溶液に架橋剤を用いて架橋ポリコハク酸イミドを製造し、さらにイミド環を加水分解することによる架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する方法が開示されている。この製造方法は、高い吸水性能と収率が得られる反面、架橋反応を撹拌槽にて行う場合には架橋反応の進行に伴い撹拌槽内で塊状のゲル化が生じ、攪拌不能となったり、反応器内壁への生成物固着等によって、生産性が著しく低くなるという問題がある。このような塊状のゲル化は、工業的に好ましい態様である連続的な製造の実施を妨げる。したがって、上記方法では、優れた生産性で架橋ポリコハク酸イミドや架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造することは困難である。また、装置スケールが増大する程、より大きな体積を有する塊状ゲルが生成してしまうので、装置設計も非常に困難である。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、優れた(生)分解性及び吸水性を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の前駆体として有用な架橋ポリコハク酸イミドを、高い生産性で製造できる連続式製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の2段階の架橋反応工程を含んで構成される連続式製造方法により、架橋ポリコハク酸イミドを高い生産性で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、工程1(第1架橋反応工程)として、ポリコハク酸イミドが溶媒に溶解した溶液又はポリコハク酸イミドが溶媒に分散した分散液架橋剤が溶媒に溶解した溶液、架橋剤が溶媒に分散した分散液又は架橋剤が溶融した溶融液とを連続的に混合し、滞留時間10分以下にて連続的に反応せしめ、部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に溶解した溶液又は部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に分散した分散液を連続的に製造する工程と、工程2(第2架橋反応工程)として、工程1(第1架橋反応工程)で製造した部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に溶解した溶液又は部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に分散した分散液と、有機溶剤とを連続的に混合して、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成し、滞留時間10時間以下にて連続的に反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程とを含むことを特徴とする架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0011】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂]
本発明により製造される架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、その構造上から、大きく分けると、主鎖基本骨格部分、側鎖部分、架橋部分からなる。以下、これらを(1)〜(3)に説明する。
【0012】
(1)架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位は、アスパラギン酸残基単独で構成されてもよいし、アスパラギン酸とアスパラギン酸以外のアミノ酸との共重合体であっても構わない。本発明では、結合の様式に関わらず、ポリマー中のアスパラギン酸からなる繰り返し単位部分を「アスパラギン酸残基」と呼ぶ。
【0013】
アスパラギン酸以外のアミノ酸の具体例としては、アスパラギン酸を除く19種類の必須アミノ酸、L−オルニチン、一連のα−アミノ酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、酸性アミノ酸のω−エステル、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸のN置換体、アスパラギン酸−L−フェニルアラニン2量体(アスパルテーム)等のアミノ酸及びアミノ酸誘導体、L−システイン酸等のアミノスルホン酸等を挙げることができる。α−アミノ酸は、光学活性体(L体、D体)であっても、ラセミ体であってもよい。
【0014】
また、共重合体である場合は、ブロック・コポリマー、ランダム・コポリマー、グラフト・コポリマーの何れでも構わない。
【0015】
アスパラギン酸残基から成る繰り返し単位は、特に限定されないが、分子を構成する繰り返し単位の総数を基準として、1mol%以上が好ましく、10mol%以上がより好ましい。
【0016】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格の繰り返し単位としては、高い吸水能を有するという点から、アスパラギン酸残基単独、又は、グルタミン酸若しくはリジンとの共重合体から構成されることが好ましく、工業的生産の点から、繰り返し単位がアスパラギン酸残基単独からなることが特に好ましい。
【0017】
ポリアスパラギン酸の主鎖基本骨格は、主鎖中のアミド結合が、α結合である場合と、β結合である場合がある。ポリアスパラギン酸及びその共重合体の場合は、アスパラギン酸もしくは共重合体単位のアミノ基等と、アスパラギン酸のα位のカルボキシル基と結合した場合がα結合であり、アスパラギン酸のβ位のカルボキシル基と結合した場合がβ結合である。このポリアスパラギン酸の場合のα結合とβ結合は、通常、混在して存在する。本発明では、その結合様式は特に限定されない。
【0018】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖基及び架橋基は基本的にポリアスパラギン酸のカルボキシル基が置換されたカルボン酸誘導体である。その詳細を以下に説明する。
【0019】
(2)架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の側鎖は、架橋ポリコハク酸イミドのイミド環を加水分解により開環した構造を有し、この加水分解により生成したカルボキシル基を含む。また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、他の置換基を有する側鎖を含んでいてもよい。他の置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルキル基、アリール基、アラルキル基等を一個以上含むペンダント基が挙げられる。また、ペンダント基は、特定の置換基を持たないアルキル基、アラルキル基、アリール基であってもよい。これらのペンダント基は、好ましくは、ポリアスパラギン酸残基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合等で結合したものである。
【0020】
加水分解により生成したカルボキシル基は、フリーの状態でも塩を形成していてもよい。塩を形成するイオンの具体例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等の金属イオン; アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチルブチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミンイオン等を挙げることができる。
【0021】
これらの中では、イオンの原子量又は分子量が大きくなると相対的に単量体単位あたりの分子量が大きくなり、単位質量当たりの吸水量が小さくなるので、イオンの分子量は小さい方が好ましい。また、人の肌等に触れる可能性がある場合は、毒性が無いか、又は、毒性が低い方が好ましい。これらの点から、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、トリエタノールアミンを用いることが好ましく、ナトリウム、カリウムを用いることが、特に好ましい。
【0022】
(3)架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の構造
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂中の架橋部分は、その分子構造について特に限定されない。その架橋部分は、ポリマー主鎖基本骨格との「結合部分」と、それらを橋架けする「連結部分」に分けて理解することができる。
【0023】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の「結合部分」は、特に限定されない。その具体例としては、例えば、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合から成る構造を挙げることができる。これらは単独でもよいし、複数の構造が混在していても構わない。
【0024】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の架橋部分の「連結部分」は、特に限定されない。連結部分は、無置換のものでも、置換基により置換したものでもよい。この置換基としては、炭素原子数1から18の分岐していてもよいアルキル基、炭素原子数3から8のシクロアルキル基、アラルキル基、置換していてもよいフェニル基、置換していてもよいナフチル基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルコキシ基、アラルキルオキシ基、フェニルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルチオ基、炭素原子数1から18の分岐していても良いアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いジアルキルアミノ基、各アルキル基が炭素原子数1から18の分岐していても良いトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基並びにホスホン酸基及びこれらの塩、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル等のアラルキル基、フェニル、トリル、キシリル、クロロフェニル、ビフェニル等のフェニル基、ナフチル、メチルナフチル等のナフチル基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプチルデシルオキシ、オクチルデシルオキシ等のアルコキシ基、フェノキシ、ベンジルオキシ、トリルオキシ等のアラルキルオキシ基、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプチルデシルチオ、オクチルデシルチオ等のアルキルチオ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ、トリルチオ等のアラルキルチオ基、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ヘプチルアミノ、オクチルアミノ、ノニルアミノ、デシルアミノ、ウンデシルアミノ、ドデシルアミノ、トリデシルアミノ、テトラデシルアミノ、ペンタデシルアミノ、ヘキサデシルアミノ、ヘプチルデシルアミノ、オクチルデシルアミノ等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、ジヘプチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジノニルアミノ、ジデシルアミノ、ジウンデシルアミノ、ジドデシルアミノ、ジトリデシルアミノ、ジテトラデシルアミノ、ジペンタデシルアミノ、ジヘキサデシルアミノ、ジヘプチルデシルアミノ、ジオクチルデシルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルプロピルアミノ等のジアルキルアミノ基、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、トリヘプチルアンモニウム、トリオクチルアンモニウム、トリノニルアンモニウム、トリデシルアンモニウム、トリウンデシルアンモニウム、トリドデシルアンモニウム、トリテトラデシルアンモニウム、トリペンタデシルアンモニウム、トリヘキサデシルアンモニウム、トリヘプチルデシルアンモニウム、トリオクチルデシルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジメチルベンジルアンモニウム、メチルジベンジルアンモニウム等のトリアルキルアンモニウム基、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、又は、スルホン酸基、又はホスホン酸基及びこれらの塩、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、トリデシルオキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、ペンタデシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル、ヘプタデシルオキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等のアルキルオキシカルボニル基、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ、ヘプチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ、ノニルカルボニルオキシ、デシルカルボニルオキシ、ウンデシルカルボニルオキシ、ドデシルカルボニルオキシ、トリデシルカルボニルオキシ、テトラデシルカルボニルオキシ、ペンタデシルカルボニルオキシ、ヘキサデシルカルボニルオキシ、ヘプタデシルカルボニルオキシ、オクタデシルカルボニルオキシ等のアルキルカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
【0026】
これらの中から分子量が大きいものを選択すると、架橋部分の分子量が大きくなり、相対的に繰り返し単位当たりの分子量が大きくなり、単位質量当たりの吸水量が小さくなるので、分子量が小さいものを選択する方が好ましい。また、一般的に製造工程が複雑でないものを選択することも好ましい。例えば、無置換のもの、又は、置換基(例えば、メチル、エチル、メトキシ、メチルオキシカルボニル及び/又はメチルカルボニルオキシ基;並びに/又は水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及び/又はホスホン酸基及び又はこれらの塩等)により置換されたものが好ましい。
【0027】
さらに、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を保水材の用途に使用する場合は、樹脂分子内に極性基が存在することが好ましいので、架橋部分は、無置換の状態で極性基を含むもの、又は、極性基を含む置換基(例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基及びホスホン酸基並びに/又はこれらの塩)により置換されたものが特に好ましい。
【0028】
[架橋ポリコハク酸イミド]
本発明により製造される架橋ポリコハク酸イミドは、好ましくは、先に述べた架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の基本骨格に対応した構造、及び/又は、その架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の基本骨格に対応した前駆体構造、を有する重合体である。
【0029】
[ポリコハク酸イミド]
本発明で使用する架橋反応前のポリコハク酸イミドは、線状構造であっても、分岐状構造を有するものであっても構わない。また同様に、好ましくは、先に述べた架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格に対応した構造、及び/又は、その架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の主鎖基本骨格に対応した前駆体構造、を有する重合体である。
【0030】
本発明で使用する架橋反応前のポリコハク酸イミドの製造方法は、特に限定されない。その具体例として、例えば、P.Neriら(Journal of Medicinal Chemistry、1973年16巻8号)等に記載の方法を挙げることができる。
【0031】
ポリコハク酸イミドの重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量の高い方が、吸水材、保水材としての能力が高くなる。重量平均分子量は、一般的に、3万以上、好ましくは5万以上、より好ましくは8万以上、特に好ましくは10万以上、最も好ましくは15万以上である。
【0032】
[架橋剤]
本発明で使用する架橋剤は、ポリコハク酸イミドの少なくとも一部と反応し、架橋構造を生成させる多官能性化合物であれば、特に限定されない。具体的には、ポリコハク酸イミドの少なくとも一部のイミド環部分と反応する多官能性化合物を、架橋剤として使用できる。
【0033】
架橋剤の具体例としては、ポリアミン、ポリチオール等の多官能性化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、1−アミノ−2,2−ビス(アミノメチル)ブタン、テトラアミノメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン、ノルボルネンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン、塩基性アミノ酸もしくはそれらのエステル類、シスタミン等のモノアミノ化合物の分子1個又はそれ以上が1個又はそれ以上のジスルフィド結合により結合した化合物及びその誘導体等のポリアミン、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ペンタエリスリチオール等の脂肪族ポリチオール、シクロヘキサンジチオール等の脂環式ポリチオール、キシリレンジチオール、ベンゼンジチオール、トルエンジチオール等の芳香族ポリチオール、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)ポリチオール等のエステル類が挙げられる。また、リジン、シスチン、オルニチンに代表されるタンパク質構成アミノ酸又はそれらの塩又はエステル類が挙げられる。
【0034】
これらの中では、臭気が小さく、ポリコハク酸イミドのイミド環との反応性が高い、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リジン、オルニチン、シスタミンが好ましい。
【0035】
[液状のポリコハク酸イミド]
本発明の工程1(第1架橋反応工程)においては、ポリコハク酸イミド溶媒に溶解した溶液又はポリコハク酸イミドが溶媒に分散した分散液を用いる(これを「液状のポリコハク酸イミド」と称す)。この溶媒としては、ポリコハク酸イミドに対する良溶媒又は貧溶媒を用いることができる。
【0036】
良溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの中では、ポリコハク酸イミドの溶解性が高い、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。これら溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。
【0037】
貧溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルグリコソルブ、エチルグリコソルブ等のグリコソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、デカリン、ジフェニルエーテル、アニソール、クレゾール等が挙げられる。これらの中では、比較的沸点が低く、溶剤回収が容易である点から、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンが特に好ましい。これら溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。これら貧溶媒は、架橋反応の進行を調整する(例えば、反応の進行を遅くする等)目的にも用いることができる。
【0038】
ポリコハク酸イミドの少なくとも一部が溶媒に溶解した溶液を調製する場合には、一般には、良溶媒のみを用いることが好ましい。良溶媒と貧溶媒を併用する場合、その混合比は特に限定されないが、ポリコハク酸イミドの架橋反応の均一性が過度に損なわれないようにする。
【0039】
具体的な目安としては、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水性能や収率を、目的とする所定値に設定できる範囲内で、良溶媒に貧溶媒を混合する。貧溶媒を多くすれば貧溶媒の効果が発現し、ポリコハク酸イミドが分散状態となり、架橋反応後に生成物がゲル状となることは防止できるが、通常、架橋反応の進行が遅くなるので大型の反応装置が必要になる。一方、貧溶媒を少なくすれば、又は、貧溶媒を用いなければ、良溶媒の効果が発現し、ポリコハク酸イミドが十分に均一性を有する状態が得られる。また、一般に、貧溶媒を少なくすれば、又は、貧溶媒を用いなければ、溶媒回収に要するエネルギーを低減できる。
【0040】
液状のポリコハク酸イミドの形態は、均一溶液であることが好ましい。また、分散状態の場合には、均一溶液に可能な限り近い状態とすることが好ましい。分散状態となっている場合、ポリコハク酸イミドの粒子サイズ(平均粒子直径)は、可能な限り小さい方が、より均一な架橋反応が行えるので好ましい。ここで、乾燥状態におけるポリコハク酸イミドの粒子サイズを基準にすると、その粒子サイズは、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下、最も好ましくは10μm以下とする。ポリコハク酸イミドの粒子サイズが適度に小さければ、架橋反応の不均一性が軽減でき、収率低下や性能低下を防止できる。
【0041】
ポリコハク酸イミドの粒子サイズの調整は、乾式及び/又は湿式の粉砕装置を用いて、連続式あるいは回分式操作で行うことができる。分級が必要な場合には、乾式及び/又は湿式の分級装置を用いて、連続式あるいは回分式操作で行ってもよい。また、粉砕機構と分級機構を併せ持った装置を用いてもよい。なお、ポリコハク酸イミドの粒子サイズが過度に小さすぎて操作に困難が生じる場合は、自足造粒系及び/又は強制造粒系の造粒操作を行っても構わない。
【0042】
ポリコハク酸イミドの粒子サイズ(平均粒子直径)を把握する方法としては、例えば、標準ふるいを用いた測定方法がある。標準ふるいを、例えば、機械式振とう機とともに使用し、乾式又は湿式でふるい分けを行い、粒径分布を測定することができる。また他の方法としては、レーザー回折・散乱法による測定方法がある。この方法では、通常、ポリコハク酸イミドに対しての貧溶媒中で、ポリコハク酸イミドを分散させ、レーザー回折・散乱法により粒径分布を測定する。
【0043】
架橋反応が進行する時点のポリコハク酸イミドを含む反応物中における、ポリコハク酸イミドの濃度は、特に限定されないが、通常、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは15〜40質量%とする。これらの範囲内において、液状の架橋剤との混合性を考慮した濃度に調整しつつ、ポリコハク酸イミドを用いることが好ましい。
【0044】
[液状の架橋剤]
本発明の工程1(第1架橋反応工程)においては、先に述べた液状のポリコハク酸イミドとの良好な混合状態を得るために、(1)架橋剤溶媒に溶解た溶液、(2)架橋剤溶媒に分散た分散液、又は、(3)架橋剤融点以上にあり架橋剤が溶融した溶融液、用いられる(これを「液状の架橋剤」と称す)。架橋反応の均一性の点で、架橋剤が溶媒に溶解した均一溶液を用いることが特に好ましい。
【0045】
液状の架橋剤中における、架橋剤の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜90質量%、特に好ましくは10〜85質量%、最も好ましくは15〜80質量%である。これらの範囲内において、架橋剤の反応性や、液状のポリコハク酸イミドとの混合性を考慮した濃度に調整しつつ、架橋剤を用いることが好ましい。なお、ここで架橋剤の濃度が100質量%の場合とは、融点以上にある液体状態の架橋剤を、溶媒等で希釈することなくそのまま使用した場合である。
【0046】
液状の架橋剤を製造する装置は、特に限定されず、例えば、攪拌槽、混練装置、単軸又は二軸混練機等を使用することができる。
【0047】
(1)架橋剤の少なくとも一部を溶媒に溶解させた溶液
架橋剤の少なくとも一部を溶媒に溶解させた溶液は、架橋剤に対する良溶媒、又は、架橋剤に対する良溶媒と貧溶媒を用いて得ることができる。ここで使用する「良溶媒」なる語の概念は、架橋剤を実質的に完全に溶解できる溶媒を包含する。また、「貧溶媒」なる語の概念は、架橋剤を、実質的に完全には溶解できない溶媒を包含する。
【0048】
架橋剤を溶解させる為に使用する溶媒は、特に限定されないが、一般的には、ポリコハク酸イミドに用いる溶媒と同じでもよい。すなわち、先に述べたポリコハク酸イミドに対する良溶媒及び貧溶媒として例示した溶媒群から選択される一種以上の溶媒を用いても構わない。ただし、ポリコハク酸イミドに対する良溶媒及び貧溶媒と、架橋剤に対する良溶媒及び貧溶媒は、必ずしも一致するとは限らない。架橋剤を溶解させる為に使用する溶媒としては、一般に、良溶媒のみを用いることが好ましい。また、良溶媒と貧溶媒を併用する場合は、通常、良溶媒、貧溶媒とが均一相となるものが好ましい。その混合比は、特に限定されないが、ポリコハク酸イミドの架橋反応の均一性が過度に損なわれない混合比にする。
【0049】
(2)架橋剤を溶媒に分散させた分散液
架橋剤を溶媒に分散させた分散液は、均一溶液に可能な限り近い状態であることが好ましい。分散液として用いる溶媒は、架橋剤に対する良溶媒と貧溶媒の混合溶媒、又は、貧溶媒である。分散液中の架橋剤の粒子サイズに関しては、先に述べた分散液中のポリコハク酸イミドの粒子サイズと同様である。
【0050】
(3)架橋剤の融点以上にある溶融液
架橋剤が適当な融点を有する場合には、融点以上の温度にして得た溶融液を、液状の架橋剤として用いても構わない。
【0051】
[架橋剤の使用量]
架橋剤の使用量は、特に限定されない。架橋ポリアスパラギン酸系樹脂及び/又は架橋ポリコハク酸イミドの用途に応じた性能、性質が発現できる架橋度が得られるように、適宜、架橋剤の使用量を決定すればよい。ここで架橋度とは、架橋間の距離又は構成単量体単位の数、もしくはポリマー主鎖に対する架橋部分の割合の度合いを表す。
【0052】
架橋剤の量は、一般的には、ポリコハク酸イミドの単量体単位の総数に対して、好ましくは0.001〜80モル%、より好ましくは0.01〜30モル%、特に好ましくは0.1〜20モル%とする。一般的には、架橋剤の使用量が多すぎると、架橋度が高くなりすぎ、例えば、そのポリコハク酸イミドから製造した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の吸水能が低下する。逆に、架橋剤の使用量が少なすぎると、架橋度が低くなりすぎ、最終的に水溶性となり、例えば、そのポリコハク酸イミドから製造したポリアスパラギン酸系樹脂は吸水能を示さない。
【0053】
架橋剤としてリジン等のアミノ酸を用いる場合には、使用する架橋剤中のカルボン酸のうち少なくとも一部が中和され、塩(例えばリジン金属塩)となっていることが好ましい。塩となっている架橋剤の量は特に限定されないが、全架橋剤量を基準として、中和された架橋剤の量は、好ましくは0.1〜100%、より好ましくは10〜99%、特に好ましくは30〜95%、最も好ましくは40〜90%である。適度な中和率とすることで、良好な収率で部分架橋ポリコハク酸イミド及び/又は架橋ポリコハク酸イミドを得ることができる。
【0054】
[触媒]
架橋反応においては必要に応じ触媒を使用してもよい。ポリコハク酸イミドの架橋反応の触媒としては、一般的には、塩基触媒が用いられる。
【0055】
塩基触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等の金属塩、アンモニア等の無機系塩基試剤;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等のアミン等の有機系塩基試剤が挙げられる。
【0056】
[架橋反応工程]
本発明では、工程1(第1架橋反応工程)と、工程2(第2架橋反応工程)の2段階の架橋反応工程により、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する。
【0057】
本発明では、通常、架橋剤の複数の反応性官能基が、ポリコハク酸イミドと段階的に反応し、段階的に架橋度が増大する。このような過程において、ポリコハク酸イミドの架橋度を適切に調整することにより、架橋ポリコハク酸イミドを高い生産性で連続して製造できる。
【0058】
以下に、工程1及び工程2について、詳細を説明する。
【0059】
(1)工程1(第1架橋反応工程)
工程1(第1架橋反応工程)においては、液状のポリコハク酸イミドと液状の架橋剤とを、触媒の存在下又は非存在下に、連続的に混合し、滞留時間10分以下にて連続的に反応せしめ、液状の部分架橋架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する。
【0060】
工程1で得られる液状の部分架橋ポリコハク酸イミドは、工程2(又は工程2−1)において固体状の架橋ポリコハク酸イミドを連続的に生成できる程度の適度な架橋度を有する。また、この液状の部分架橋ポリコハク酸イミドは、好ましくは均一性の良好な反応物である。そして、この液状の部分架橋ポリコハク酸イミドと、例えば、液状のポリコハク酸イミド及び/又は液状の架橋剤を調製する為に使用した溶媒(以下「架橋溶媒」と称す)とが混在し、部分架橋ポリコハク酸イミドがその架橋溶媒に溶解した溶液の状態、あるいは、部分架橋ポリコハク酸イミドが架橋溶媒に分散した分散液が得られる(これを「液状の部分架橋ポリコハク酸イミド」と称す)
【0061】
工程1の滞留時間は10分以下であり、好ましくは0.1秒〜30分、より好ましくは1秒〜10分、特に好ましくは10秒〜10分、最も好ましくは1分〜5分である。短すぎない滞留時間にすれば、反応が十分進行し、収率が向上する。一方、滞留時間が長すぎると、工程2(又は工程2−1)において、固体状の架橋ポリコハク酸イミドを連続的に生成することが困難になる。
【0062】
工程1における処理温度は、5〜300℃が好ましく、10〜100℃がより好ましい。これら各温度範囲の上限値は、十分な混合状態が得られる前に架橋反応が進行し、架橋度の不均一性が生じて収率が低下するという問題を防止し、かつポリコハク酸イミド及び/又は架橋剤の変性を抑制する点等において意義が有る。下限値は、液状のポリコハク酸イミドや液状の架橋剤の粘性を適度に抑え、混合時間を短縮する点等において意義が有る。
【0063】
工程1における処理圧力は特に限定されず、加圧系、常圧系、真空系の何れでも構わない。通常は、50MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、1MPa以下が特に好ましい。これら各圧力範囲の上限値は、高耐圧を必要とせず、装置設計が容易になり、装置が安価になる点等において意義が有る。
【0064】
工程1に使用する反応装置は、特に限定されない。例えば、管型反応装置などが好適である。また、反応装置は、静止型混合器[例えば、Kenics mixer、Sulzer SMX、Sulzer SMV等(何れも商標名)]を含んでも構わない。また、1つ又は複数の回転攪拌軸を有する混合装置[例えば、横形二軸式攪拌装置、横形混練式攪拌装置、二軸式押出機等]を用いても構わない。また、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)、『5 流動』(283〜342頁)に記載されている装置を用いることもできる。
【0065】
(2)工程2(第2架橋反応工程)
工程2(第2架橋反応工程)においては、工程1(第1架橋反応工程)で製造した液状の部分架橋ポリコハク酸イミドと、有機溶剤とを連続的に混合して、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成し、滞留時間10時間以下にて連続的に反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する。
【0066】
また、工程2(第2架橋反応工程)を、工程2−1(造粒工程)と工程2−2(架橋反応工程)とに分けて実施しても構わない。この工程2−1(造粒工程)は、工程1(第1架橋反応工程)で製造した液状の部分架橋ポリコハク酸イミドと、有機溶剤とを連続的に混合して、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程である。また、工程2−2(架橋反応工程)は、工程2−1(造粒工程)で製造した固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを連続的に反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程である。この場合、工程2−1と工程2−2の総滞留時間は10時間以下にする。
【0067】
工程2(又は工程2−1)においては、液状の部分架橋ポリコハク酸イミドと有機溶剤とを連続的に混合することによって、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成する。例えば、先に述べたように、架橋溶媒(液状のポリコハク酸イミド及び/又は液状の架橋剤を調製する際に使用した溶媒)を含有した液状の部分架橋ポリコハク酸イミドを用いた場合は、その液状の部分架橋ポリコハク酸イミドに対し貧溶媒でありかつ架橋溶媒に対しては良溶媒である有機溶剤を混合することによって、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドが生成する。
【0068】
工程2(又は工程2−1)において、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成する為に用いる有機溶剤としては、炭素原子数1〜20のアルコール、炭素原子数3〜20のケトン及び炭素原子数3〜20のエーテルからなる群より選択された一種以上の有機溶剤を含んでなるものが好ましい。さらに具体的には、先に述べたポリコハク酸イミドに対する貧溶媒群のうち何れか1つ以上の溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、イソプロピルエーテル等)を選択することが好ましい。これら溶媒は単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。特に、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトンが好ましい。
【0069】
工程2(又は工程2−1)で使用する有機溶剤の量は、ポリコハク酸イミド1質量部当り、好ましくは0.5〜100質量部、より好ましくは1〜50質量部、特に好ましくは2〜30質量部、最も好ましくは3〜10質量部である。上記各範囲の上限値は、溶媒回収負荷を小さくし、経済的に有利にする点等において意義が有る。下限値は、ゲル化等の発生を防止し、固体状の架橋ポリコハク酸イミドを良好に得る点等において意義が有る。
【0070】
固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成する過程では、通常、液状の部分架橋ポリコハク酸イミドに含有される架橋溶媒の少なくとも一部が、有機溶剤中に分配される。液状の架橋ポリコハク酸イミドを有機溶剤と連続的に混合する際には、攪拌等を行い剪断力を与えても構わない。
【0071】
固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドは、液状の部分架橋ポリコハク酸イミドと同等、またはそれ以上の架橋度を有する。また、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドは、好ましくは、均一性の良好なスラリー状態を形成できる粒子状反応物である。
【0072】
工程2においては、上述のようにして得た固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを、好ましくは加熱することにより反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する。ここで製造される架橋ポリコハク酸イミドは、固体状の架橋ポリコハク酸イミドと同等以上の架橋度を有する。また、架橋ポリコハク酸イミドは、好ましくは、均一性の良好なスラリー状態を形成できる粒子状生成物である。また例えば、液状の部分架橋ポリコハク酸イミドに貧溶媒を混合して固体化を行うと同時に架橋反応を開始させてもよい。
【0073】
工程2における処理温度は、特に限定されない。低すぎない温度であれば、短時間で架橋ポリコハク酸イミドを得ることができ、かつ製造装置の小型化も可能となる。また、高すぎない温度であれば、部分架橋ポリコハク酸イミドの変性を防止できる。特に、固体化(細粒化等)と共に架橋反応を行なう場合、その処理温度は、10〜300℃が好ましく、10〜100℃がより好ましく、20〜100℃が特に好ましい。また、固体化と架橋反応を別々に行う場合、固体化の際の処理温度は、10〜300℃が好ましく、15〜100℃がより好ましく、20〜80℃が特に好ましく、また架橋反応の際の処理温度は、10〜300℃が好ましく、30〜150℃がより好ましく、40〜100℃が特に好ましい。
【0074】
工程2における処理圧力は、特に限定されず、加圧系、常圧系、真空系の何れでもよく、使用する有機溶剤の物性等に応じて選択すればよい。通常、その圧力は、10MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましく、0.5MPa以下が特に好ましい。これら各圧力範囲の上限値は、高耐圧を必要とせず、装置設計が容易になり、装置が安価になる点等において意義が有る。
【0075】
工程2の滞留時間は10時間以下であり、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは10分〜8時間、特に好ましくは30分〜5時間、最も好ましくは1時間〜3時間である。短すぎない滞留時間にすれば、反応が十分進行し、収率が向上する。一方、滞留時間が長すぎると、大型の反応装置が必要となり装置設計が困難になる。
【0076】
工程2(又は工程2−1)で使用する装置は特に限定されず、例えば、撹拌槽を用いることができる。また『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の『12 抽出・液液反応』(637〜688頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)に記載されている装置及び方法を用いることもできる。
【0077】
[反応装置の材質]
工程1及び工程2において用いる反応装置としては、液状のポリコハク酸イミド、液状の架橋剤、液状の部分架橋ポリコハク酸イミド、固体状の架橋ポリコハク酸イミド、架橋ポリコハク酸イミドのうち1つ以上が付着しにくい材質のものを使用することが好ましい。特に、架橋ポリマー(部分架橋ポリコハク酸イミド及び架橋ポリコハク酸イミド)は、通常、粘性及び付着性を有するため、架橋ポリマーが付着しにくい材質を使用することが重要である。付着しやすい材質を用いると、反応装置における圧力損失が過大となったり、閉塞を生じる場合がある。また、使用する溶媒、架橋剤等による腐食、劣化等が生じにくい材質を使用することが好ましい。
【0078】
このような条件を満足する好ましい材質としては、例えば、金属類、樹脂類、ゴム類等が挙げられる。特に、架橋ポリマーの付着性が高い場合は、例えば、四フッ化樹脂、四−六フッ化樹脂、PFA樹脂、三フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等のフッ素系樹脂、ポリシロキサン、シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、天然ゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム等が好ましい。これらのうち、耐溶剤性、架橋ポリマーに対する低付着性の点で、四フッ化樹脂、四−六フッ化樹脂、PFA樹脂、三フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等のフッ素樹脂、ポリシロキサン、シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂が特に好ましい。
【0079】
反応装置は、前記材質(金属類、樹脂類、ゴム類等)から選択される1種の材質で構成してもよいし、2種以上の材質で構成してもよい。また、必要に応じ、金属(ステンレス鋼等)を主たる材質に用いて、液状の未架橋ポリマー、液状の架橋剤又は架橋ポリマーと接する部分の少なくとも一部に、前記樹脂類及び/又はゴム類をライニングあるいはコーティングして使用しても構わない。
【0080】
[架橋ポリコハク酸イミドを単離する工程]
本発明では、架橋反応後、反応に用いた溶媒(架橋溶媒)を分離することで架橋ポリコハク酸イミドを単離することが好ましい。単離操作は、連続式及び/又は回分式に操作により実施できる。また、架橋反応後、架橋溶媒や塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等)を分離することで架橋ポリコハク酸イミドを単離し、溶媒含有量の低減された架橋ポリコハク酸イミドを製造できる。ただし、塩類については、必ずしも溶媒とともに分離されるとは限らない。
【0081】
架橋ポリコハク酸イミド中の架橋溶媒の濃度が、通常は50質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下となるように架橋溶媒の分離を行って、架橋ポリコハク酸イミドを単離することが好ましい。上記各範囲の上限値は、溶媒を含有する架橋ポリコハク酸イミドが付着性を有する故に、特殊な設備(例えば、移送、貯蔵等に関する設備)が必要となるという問題を解消する点等において意義が有る。
【0082】
本発明における架橋ポリコハク酸イミドの単離工程は、好ましくは、抽出工程、固液分離工程及び乾燥工程から選択される少なくとも1つの工程からなる。これらのうち、複数の工程を実施する場合、その順序は限定されない。また、各工程は、複数回、繰り返しても構わない。さらに、各工程は、連続式及び/又は回分式で実施することができる。以下に、各工程を説明する。
【0083】
(1)抽出工程
抽出操作は、架橋ポリコハク酸イミドに対して貧溶媒でありかつ架橋溶媒に対しては良溶媒である溶媒を用いて実施することが好ましい。例えば、溶媒としてDMFを使用して製造した架橋ポリコハク酸イミドの場合は、先に述べたポリコハク酸イミドに対する貧溶媒群のうちいずれか1つ以上の溶媒(例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、等)を選択することが特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、2種以上を混合して用いても構わない。また、溶媒中に、塩類(例えば、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等)が含有されていても構わない。
【0084】
抽出操作で用いる装置としては、例えば、撹拌槽、固定床型抽出器、移動床型抽出器、ロトセル抽出機等が挙げられる。また、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の『12 抽出・液液反応』(637〜688頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)に記載されている装置及び方法を用いることもできる。
【0085】
抽出操作は、1段あるいは多段抽出で実施される。多段抽出では抽出溶媒を向流式あるいは並流式で使用するが、抽出溶媒の使用量が抑えられる点で、特に向流式が好ましい。多段抽出操作においては、架橋溶媒を含有する抽出溶媒を少なくとも一部の段階において使用しても構わない。
【0086】
抽出溶媒の使用量は、抽出操作後の架橋溶媒や前記塩類の残濃度を決定する。抽出溶媒の使用量は、通常、架橋ポリコハク酸イミド質量を基準として、好ましくは0.1〜100質量部、より好ましくは0.3〜60質量部、特に好ましくは0.5〜40質量部、最も好ましくは1〜20質量部である。抽出溶媒を過剰に用いると、抽出液中の架橋溶媒の残濃度が低くなるので、抽出後、架橋溶媒と抽出溶媒を分離する際の効率が悪くなる。一方、抽出溶媒が少な過ぎると、抽出液中の架橋溶媒濃度が増加するので、架橋ポリコハク酸イミドに残存する架橋溶媒の濃度が増大する。抽出溶媒の使用量をより少なくし、効率良く抽出操作を行うには、多段向流型の抽出操作が好ましい。
【0087】
また、多段抽出を行う場合には、各段の間で、架橋ポリコハク酸イミドと、抽出液とを可能な限り分離した後、次の段の操作を行うことが好ましい。具体的には、架橋ポリコハク酸イミド100質量部当たりに含有される抽出液が、一般的には100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下、最も好ましくは5質量部以下となるまで分離を行う。
【0088】
抽出液と架橋ポリコハク酸イミドとの分離は、具体的には、濾過機、遠心分離機、沈降分離装置、浮上分離装置あるいはそれらを組み合わせた工程により実施できる。なお、架橋ポリコハク酸イミドと抽出液を分離した後、さらに、同じ種類あるいは異なる種類の抽出溶媒を用いて、架橋ポリコハク酸イミドに含まれる抽出液の置換洗浄を行ってもよい。置換洗浄操作1回当たりに用いる抽出溶媒量は、架橋ポリコハク酸イミド1質量部当たり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0089】
抽出操作の温度は、5〜300℃が好ましい。この温度が5℃未満であると、架橋ポリコハク酸イミドの架橋溶媒残濃度が高くなる。一方、300℃を超えると、架橋ポリコハク酸イミドの一部が変性し、分子量が低下し、場合によっては着色し、ポリマーの品質低下を招く。この温度は、10〜200℃が好ましく、15〜150℃がより好ましく、20〜100℃が特に好ましい。
【0090】
抽出操作の圧力は、使用する抽出溶媒の物性で決定される。抽出操作を行う温度が、抽出溶媒の臨界温度より低い場合は、少なくとも一部に液相が存在する圧力とする。例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で抽出を行う場合は、そのガスにより、抽出温度での抽出溶媒の飽和蒸気圧以上に加圧するとよい。抽出操作を行う温度が、抽出溶媒の臨界温度より高い場合は、架橋溶媒の少なくとも一部が抽出溶媒に溶解する圧力とする。
【0091】
多段抽出を行う場合には、各段における温度及び/又は圧力を、前記の範囲内で異なる値に設定してもよい。
【0092】
抽出操作に要する時間は、一般的には0.5秒〜12時間、好ましくは1秒〜5時間、より好ましくは3秒〜3時間、特に好ましくは5秒〜2時間、最も好ましくは10秒〜60分である。ここで、抽出時間とは、抽出を行う温度下で、ポリマーと抽出溶媒及び/又は抽出液が接触している時間とする。抽出に長時間を要すると、大型の装置が必要になり、装置設計が困難である。一方、抽出時間が短すぎると、架橋溶媒や塩類の分離が十分に実施できない虞がある。
【0093】
(2−2)固液分離工程
固液分離操作としては、先に述べた多段抽出の各段の間で行う分離操作と同様な方法が挙げられる。すなわち、具体的には、濾過機、遠心分離機、沈降分離装置、浮上分離装置あるいはそれらを組み合わせた工程により分離工程を実施できる。
【0094】
(2−3)乾燥工程
乾燥工程では、架橋ポリコハク酸イミドに含有される架橋溶媒及び/又は抽出溶媒を乾燥することにより、実質的に溶媒を含有しない架橋ポリコハク酸イミドを製造できる。乾燥操作は、真空系、常圧系、加圧系のうち少なくとも1つ以上の圧力条件下において実施できる。
【0095】
具体的には、例えば、熱風移送型乾燥器、材料攪拌型乾燥器(流動層乾燥機等)、材料搬送及び静置型乾燥器、円筒乾燥器、赤外線乾燥器、マイクロ波乾燥器及び過熱蒸気乾燥器からなる群より選択される少なくとも一つの装置を用いて、連続式又は回分式の乾燥操作を行うことができる。また、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の『14 調湿・水冷却・乾燥』(735〜788頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)に記載されている装置及び方法を用いることもできる。
【0096】
乾燥操作は、架橋ポリコハク酸イミドの着色や変性を防止するため、通常、系内の酸素濃度が低減された条件下、又は、酸素濃度が実質的に0%である条件下で実施することが好ましく、前記の不活性ガス中で実施することが好ましい。
【0097】
乾燥操作を行う際の、架橋ポリコハク酸イミドの温度は、5〜300℃が好ましい。温度が5℃未満であると、通常、架橋ポリコハク酸イミドの乾燥に長時間を要する。また、300℃を超えると、通常、架橋溶媒及び/又は抽出溶媒を含有していることによって、架橋ポリコハク酸イミドの一部が変性し、分子量が低下し、場合によっては着色し、ポリマーの品質低下を招くことがある。この温度は、20〜200℃がより好ましく、40〜150℃が特に好ましく、50〜120℃が最も好ましい。
【0098】
乾燥操作は、真空系、常圧系、加圧系の何れでも構わない。特に、乾燥操作の圧力は、0.000001〜5MPaが好ましく、0.00001〜1MPaがより好ましい。圧力が低すぎると、通常、高真空に対応した装置の設計が困難である。逆に、圧力が高すぎると、通常、架橋溶媒が十分に分離されない場合がある。
【0099】
乾燥操作に要する時間は、一般的には1秒〜20時間、好ましくは30秒〜5時間、より好ましくは1分〜3時間、特に好ましくは5分〜2時間である。乾燥に長時間を要すると、通常、大型の装置が必要になり、装置設計が困難である。一方、乾燥時間が短すぎると、通常、本工程による架橋溶媒の分離が十分に実施できない虞がある。
【0100】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法]
以上説明した本発明の方法により製造した架橋ポリコハク酸イミドを用いて、(生)分解性及び吸水性を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造することができる。すなわち、例えば、工程Aとして、以上説明した本発明の方法により架橋ポリコハク酸イミドを製造する連続式工程と、工程Bとして、工程Aで製造した架橋ポリコハク酸イミドの分子中のイミド環の少なくとも一部を加水分解反応することにより、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する連続式及び/又は回分式工程とを含む方法により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造できる。
【0101】
また例えば、工程Aとして、以上説明した本発明の方法により架橋ポリコハク酸イミドを製造する連続式工程と、工程Bとして、工程Aで製造した架橋ポリコハク酸イミドを単離する連続式及び/又は回分式工程と、工程Cとして、工程Bで単離した架橋ポリコハク酸イミドの分子中のイミド環の少なくとも一部を加水分解反応することにより、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する連続式及び/又は回分式工程とを含む方法により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造できる。
【0102】
なお、これら架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法のうち、架橋ポリコハク酸イミドを単離する連続式及び/又は回分式工程としては、先に説明した架橋ポリコハク酸イミドの単離工程を実施すればよい。
【0103】
[架橋ポリコハク酸イミドのイミド環の加水分解]
架橋ポリコハク酸イミドの分子中のイミド環の少なくとも一部を加水分解反応すると、そのイミド環は開環してアスパラギン酸構造をとり、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂が得られる。ここで架橋ポリコハク酸イミドは、先に述べた通り、溶媒が完全に分離された状態(溶媒濃度0質量%)でも、所望量の溶媒を含有した状態でも構わない。
【0104】
加水分解操作は、例えば、溶媒中で架橋ポリコハク酸イミドを懸濁させ、塩基性下で行う。pHは、例えばアルカリ水溶液の濃度によって調節し、好ましくはpH7.5〜13、より好ましくはpH8〜12、さらに好ましくはpH9〜11とする。pHが高すぎると、通常、アミド結合の加水分解が生じ、生成する樹脂の吸水性能、収率が低下する。逆に、pHが低すぎると、通常、加水分解反応が遅くなり、実用的でない。
【0105】
加水分解操作に使用するアルカリ水溶液は、特に限定されない。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の金属酢酸塩、シュウ酸ナトリウム等の金属塩、アンモニア水等が挙げられる。この中で、安価な、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0106】
加水分解操作を行う温度は、好ましくは5〜100℃、特に好ましくは10〜60℃である。温度が高すぎると、通常、アミド結合の加水分解が生じ、生成する樹脂の吸水性能、収率が低下する。逆に、温度が低すぎると、通常、加水分解反応が遅くなり、実用的ではない。
【0107】
加水分解操作は、少なくとも一部に液相が存在する圧力であれば、常圧系でも、減圧系でも構わない。安定した加水分解操作が実施できればよい。圧力は、通常30MPa以下とすることが好ましく、5MPa以下とすることがより好ましい。 加水分解操作を行う時間は、反応条件によって変わるが、一般に、好ましくは1分〜30時間、より好ましくは5分〜15時間、特に好ましくは10分〜10時間、最も好ましくは30分〜5時間である。反応時間が短すぎると、通常、イミド環の加水分解が十分でないために、吸水性能の低下が生じる。逆に、反応時間が長すぎると、通常、アミド結合部分の加水分解も進行し、生成する樹脂の吸水性能、収率が低下する。
【0108】
加水分解操作における溶媒は、通常、水単独、又は、水と貧溶媒及び/又は塩類との混合溶媒である。溶媒の使用量は、容積効率を高めるために、生成する吸水性樹脂の0.5〜50質量倍が好ましく、特に1〜10質量倍が好ましい。
【0109】
使用する貧溶媒は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。この中で、吸水性樹脂として乾燥する際に特に乾燥が容易であり、かつ乾燥後に組成物内に溶剤が残留しにくい点で、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンが好ましい。
【0110】
使用する塩類は、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、有機スルホン酸、有機カルボン酸等の金属塩もしくは有機塩基塩、酸化物等が挙げられる。金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム等が挙げられる。なお、塩類は、加水分解操作の過程で、系内の酸性成分が中和されて生成したものであっても構わない。
【0111】
溶媒中の塩類を考慮せずに、水、貧溶媒の2成分のみで評価した場合の水濃度は、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは20〜80質量%、特に好ましくは40〜60質量%とする。水濃度が高すぎると、通常、系内がゲル状となって攪拌が困難になる場合がある。
【0112】
水と塩類、又は、水、貧溶媒及び塩類からなる溶媒中における塩類濃度は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。通常、塩類の濃度が低すぎる場合は効果が小さく、濃度が高すぎる場合は、塩類が製品中に残存する場合がある。
【0113】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理]
架橋ポリコハク酸イミドのイミド環をアルカリ加水分解反応させて生成した架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の後処理については、特に限定されない。例えば、中和処理、塩交換処理、乾燥、精製、造粒、粉砕、分級、表面架橋処理等を、必要に応じて行えばよい。以下、特に中和処理及び乾燥について説明する。
【0114】
(1)架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の中和処理は、必要に応じて行えばよい。中和処理は、加水分解反応後の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を含む反応液が、所望のpH(例えばpH7)となるように、酸や塩基等を添加して実施される。この中和処理により、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内に存在するカルボキシル基が塩となっている割合(中和度)を調整することができる。この中和度は、特に限定されないが、一般的には架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の分子内の、全アスパラギン酸残基の総数を基準として、塩を形成するカルボキシル基の割合は、通常、0〜95mol%が好ましく、30〜80mol%がより好ましい。
【0115】
中和処理の方法は特に限定されないが、加水分解反応後に、酸、及び/又は、塩基を添加してpHを調整する方法が一般的である。使用する酸の具体例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンホスホン酸等が挙げられる。また、使用する塩基の具体例としては、前記のアルカリ水溶液が挙げられる。
【0116】
(2)架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の乾燥
吸水性樹脂の乾燥方法は特に制限されない。乾燥は、常圧下又は減圧下において、回分式又は連続式操作で行う。具体的には、材料静置型乾燥器、材料移送型乾燥器、材料撹拌型乾燥器、熱風移送型乾燥器、円筒乾燥器、赤外線乾燥器、高周波乾燥器からなる群より選択される、少なくとも一つの装置を用いて乾燥操作を行う。また、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の『14 調湿・水冷却・乾燥』(735〜788頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)に記載されている装置及び方法を用いることもできる。乾燥操作における架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の温度は、一般的に、20〜200℃が好ましく、50〜120℃がより好ましい。温度が高すぎると、通常、架橋度の低下が生じ、吸水性能が低下する。逆に、温度が低すぎると、乾燥に時間がかかり、大型の装置が必要になる。
【0117】
乾燥操作後の吸水性樹脂中に含有される溶媒(水を含む)量は、用途によって適宜調整される。具体的には、吸水性樹脂100質量部当たり、通常は50質量部以下、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、特に好ましくは7質量部以下、最も好ましくは5質量部以下とする。
【0118】
また、乾燥後の吸水性樹脂に対して、場合により、さらに造粒処理、表面架橋処理等を施してもよい。
【0119】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状]
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の形状は、不定形破砕状、球状、粒状、顆粒状、造粒状、リン片状、塊状、パール状、微粉末状、繊維状、棒状、フィルム状、シート状等、用途によって好ましい形状を選択して使用できる。また、繊維状基材や多孔質状や発泡体あるいは造粒物であってもよい。
【0120】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の粒子サイズ(平均粒子直径)は、特に限定されないが、用途によって調整することも好ましい。
【0121】
例えば、紙オムツ用の場合は、高い吸水速度とゲル・ブロッキングが起こらないことが望まれるので、通常、平均粒子径50〜1000μmが好ましく、100〜600μmがより好ましい。また、止水材等、他の樹脂への練り混み等に用いる場合は、通常、1〜10μmが好ましく、農園芸用の保水材等に用いる場合には、土中への混合性を考慮すると、通常、100μm〜5mmが好ましい。
【0122】
これら形状を得る為の操作は特に限定されない。例えば、粉砕、分級及び造粒からなる群より選択される少なくとも1つ以上の操作が好ましく実施される。また、これら操作は、連続式、及び/又は、回分式で実施することができる。
【0123】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態]
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の使用の形態は、特に限定されず、単独でも、他の素材と組み合わせて使用してもよい。例えば、他の樹脂と組合せて用いる場合、熱可塑性樹脂に混練りして射出成形等にて成形する方法、構成樹脂のモノマーと酸性ポリアミノ酸系樹脂及び必要により開始剤を混合後、光もしくは熱等で重合する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を溶剤に分散させ、キャストし、溶剤を除去する方法、プレポリマーと架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法、樹脂と架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を混合後、架橋する方法等がある。
【0124】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の成型品は、特に限定されず、例えば、固形物、シート、フィルム、繊維、不織布、発泡体、ゴム等として使用できる。その成型方法も、特に限定されない。
【0125】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、単独でも、他の素材との組み合わせによる複合体でも構わない。複合体の構造は特に限定されないが、例えば、パルプ層、不織布等にはさみ、サンドイッチ構造にする方法、樹脂シート、フィルムを支持体として多層構造とする方法、樹脂シートにキャストし、二層構造とする方法等がある。例えば、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂をシート状に成形加工すれば、吸水性シート(吸水性フィルムも包含する)が得られる。
【0126】
また、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、必要により、1種以上の他の吸水性樹脂と混合して用いても良い。また、必要により、食塩、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、超微粒子状シリカ、酸化チタン粉末等の無機化合物、キレート剤等の有機化合物を添加しても構わない。さらに酸化剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、肥料、香料、消臭剤、顔料等を混合しても構わない。
【0127】
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂は、ゲル状でも固形物としても使用できる。例えば、農園芸用保水材、切り花延命剤、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤等に使用する場合はゲルとして用い、紙おむつ用吸収体等は固形物として用いる。
【0128】
[架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途]
架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の用途は特に限定されず、従来の吸水性樹脂が使用できる用途のいずれにも使用できる。
【0129】
例えば、生理用品、紙おむつ、母乳パット、使い捨て雑巾等の衛生用品、創傷保護用ドレッシング材、医療用アンダーパット、パップ剤等の医療用品、ペット用シート、携帯用トイレ、ゲル芳香剤、ゲル消臭剤、吸汗性繊維、使い捨てカイロ等の生活用品、シャンプー、セット用ジェル剤、保湿剤等のトイレタリー用品、農・園芸用の保水材、切り花の延命剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート等の農・園芸用品、食品用トレー用鮮度保持材、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、保冷材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、土木・建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、コンクリート混和剤、ガスケット・パッキング等の土木建築資材、電子機器、光ファイバー等のシール材、通信ケーブル用止水材、インクジェット用記録紙等の電気機器関連資材、汚泥の凝固剤、ガソリン、油類の脱水、水分除去剤等の水処理剤、捺染用のり、水膨潤性玩具、人工雪、徐放性肥料、徐放性農薬、徐放性薬剤、湿度調整材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0130】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
[吸水量の評価]
吸水量は、以下のティーバッグ法にて測定した。ティーバッグ法による吸水量の測定は、生理食塩水、及び蒸留水を対象として行った。まず、乾燥した吸水性樹脂(粒子径100〜500μmを有する乾式分級品)0.02gを、不織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、過剰の対応する溶媒中(生理食塩水、又は蒸留水)に該樹脂を40分間浸し、その後ティーバッグを引き上げて10秒間水切りを行い、さらに24枚重ねのティッシュペーパー上で10秒間水切りを行い、この膨潤した樹脂を含むティーバッグの質量を測定した。その質量から、同様な操作をティーバッグのみで行った場合のブランク質量と、乾燥時の吸水性樹脂の質量を、減じた値を、吸水性樹脂の質量で除した値、即ち、吸水性樹脂の単位質量当たり吸水質量(g/g−ポリマー)を評価した。なお、生理食塩水には、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0132】
[実施例1]
ポリコハク酸イミド(重量平均分子量11万)10gを、ジメチルホルムアミド(DMF)40gに溶解し、ポリマー濃度20質量%の均一溶液A(ポリマー溶液)を得た。また、22.4質量%に調製した水酸化ナトリウム水溶液58.0gに、リジン・1塩酸塩40.0gを加え、均一溶液B(架橋剤溶液)を調製した。また、架橋反応装置として、ポンプAに接続された流路Aと、ポンプBに接続された流路Bが合流する構造からなる混合部、及び、フッ素樹脂(PTFE)製の管型反応器(内径4.3mm)で装置を構成した。
【0133】
ポンプAを用いて、溶液A(ポリマー溶液)を流量5.0g/分で供給した。一方、ポンプBを用いて、溶液B(架橋剤溶液)を流量0.70g/分で供給した。この流量における30℃に加熱された管型反応部での滞留時間は2.5分であり、架橋反応部出口からは、連続的に液状の架橋物(液状の部分架橋ポリコハク酸イミド)が流出した。
【0134】
この液状の部分架橋ポリコハク酸イミドを、架橋反応器出口流路に接続した攪拌槽(50℃、メタノール)中に連続的に導入した。50℃のメタノール中に導入した部分架橋ポリコハク酸イミドは、細粒状の固体となった。この細粒状の部分架橋ポリコハク酸イミドを、攪拌槽内での滞留時間2時間で、均一なスラリーとして攪拌槽から連続的に流出させた。このスラリーを30分間サンプリングし、ろ過を行なって架橋ポリコハク酸イミドを一旦回収した。次いで、さらにメタノールを用いて、50℃下でDMFを分離するための抽出操作を行い、再度ろ過を行ない、架橋ポリコハク酸イミドを回収した。真空乾燥後、粉状の架橋ポリコハク酸イミド37.3gを得た。
【0135】
次に、攪拌装置を備えた加水分解反応器に、蒸留水20.0g、メタノール30.0g、及び、その粉状の架橋ポリコハク酸イミドのうち10.0gを仕込み、室温下で攪拌した。10質量%水酸化ナトリウム水溶液を、加水分解反応器中に連続的に滴下し、pHを11〜12の範囲に維持しながら、1時間、加水分解反応を行ったところ、ゲル状の生成物を得た。次いで、塩酸を用いて中和処理し、pH7に調整した。この反応マスを、メタノールを用いてゲル状からスラリー状に変化させ、ろ過を行ってポリマーを回収し、真空乾燥して、粉状の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂11.8gを得た。この架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の蒸留水に対する吸水量は600[g/g−ポリマー]、生理食塩水に対する吸水量は、65[g/g−ポリマー]であった。
【0136】
[比較例1]
ポリコハク酸イミド(重量平均分子量11万)10gを、DMF40gに溶解し、ポリマー濃度20質量%の均一溶液A(ポリマー溶液)を得た。また、蒸留水3.4g、25%水酸化ナトリウム水溶液2.8g、リジン・1塩酸塩2.2gを混合し、均一溶液B(架橋剤溶液)を調製した。
【0137】
溶液A(ポリマー溶液)をガラス製反応容器に入れ、500rpmで攪拌した。10分後、溶液B(架橋剤溶液)を30秒かけて反応容器内に滴下し、溶液Aと混合した。反応容器内の反応液は経時的に粘性が増大し、溶液Bを滴下し始めてから約2分後、攪拌翼に生成したゲルが巻きつき、それ以上の操作はできなかった。攪拌翼及び反応容器内には、ゲルが固着し、取り除くのが極めて困難であった。
【0138】
[実施例と比較例の比較・考察]
比較例1では、ポリマー溶液に架橋剤溶液を滴下してそのまま架橋反応させたので、架橋反応の際に塊状のゲル化を生じ、生産性が極めて低かった。一方、実施例1では、2段階の工程に分けて架橋反応させたので、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に高い生産性で製造でき、さらにその架橋ポリコハク酸イミドから、高い吸水性を発現する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂も製造できた。
【0139】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、優れた(生)分解性及び吸水性を有する架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の前駆体として有用な架橋ポリコハク酸イミドを、高い生産性で製造できる連続式製造方法を提供できる。

Claims (14)

  1. 工程1(第1架橋反応工程)として、ポリコハク酸イミドが溶媒に溶解した溶液又はポリコハク酸イミドが溶媒に分散した分散液、架橋剤が溶媒に溶解した溶液、架橋剤が溶媒に分散した分散液又は架橋剤が溶融した溶融液とを連続的に混合し、滞留時間10分以下にて連続的に反応せしめ、部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に溶解した溶液又は部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に分散した分散液を連続的に製造する工程と、
    工程2(第2架橋反応工程)として、工程1(第1架橋反応工程)で製造した部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に溶解した溶液又は部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に分散した分散液と、有機溶剤とを連続的に混合して、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを生成し、滞留時間10時間以下にて連続的に反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程と
    を含むことを特徴とする架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  2. 工程2(第2架橋反応工程)が、
    工程2−1(造粒工程)として、工程1(第1架橋反応工程)で製造した部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に溶解した溶液又は部分架橋ポリコハク酸イミドがその溶媒に分散した分散液と、有機溶剤とを連続的に混合して、固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程と、
    工程2−2(架橋反応工程)として、工程2−1(造粒工程)で製造した固体状の部分架橋ポリコハク酸イミドを連続的に反応せしめ、架橋ポリコハク酸イミドを連続的に製造する工程、
    を含み、かつ、
    工程2−1(造粒工程)と工程2−2(架橋反応工程)の総滞留時間が10時間以下である請求項1記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  3. 架橋剤が、ポリアミンである請求項1又は2記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  4. ポリアミンが、リジンである請求項3記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  5. 有機溶剤が、炭素原子数1〜20のアルコール、炭素原子数3〜20のケトン及び炭素原子数3〜20のエーテルからなる群より選択された一種以上の有機溶剤を含んでなる請求項1〜4の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  6. 有機溶剤が、メタノール、イソプロピルアルコール及びアセトンからなる群より選択された少なくとも一種以上の有機溶剤を含んでなる請求項5記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  7. 工程1(第1架橋反応工程)での処理温度が10〜100℃である請求項1〜6の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  8. 工程2(第2架橋反応工程)での処理温度が10〜100℃である請求項1〜7の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  9. 工程1(第1架橋反応工程)の滞留時間が、5分以下である請求項1〜8の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  10. 工程2(第2架橋反応工程)の滞留時間が、5時間以下である請求項1〜9の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  11. 工程2−1(造粒工程)と工程2−2(架橋反応工程)の総滞留時間が、5時間以下である請求項2〜10の何れか一項記載の架橋ポリコハク酸イミドの連続式製造方法。
  12. 工程Aとして、請求項1〜11の何れか一項記載の方法により架橋ポリコハク酸イミドを製造する連続式工程と、
    工程Bとして、工程Aで製造した架橋ポリコハク酸イミドの分子中のイミド環の少なくとも一部を加水分解反応することにより、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する連続式及び/又は回分式工程と
    を含むことを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
  13. 工程Aとして、請求項1〜11の何れか一項記載の方法により架橋ポリコハク酸イミドを製造する連続式工程と、
    工程Bとして、工程Aで製造した架橋ポリコハク酸イミドを単離する連続式及び/又は回分式工程と、
    工程Cとして、工程Bで単離した架橋ポリコハク酸イミドの分子中のイミド環の少なくとも一部を加水分解反応することにより、架橋ポリアスパラギン酸系樹脂を製造する連続式及び/又は回分式工程と
    を含むことを特徴とする架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
  14. 加水分解反応を、pH7.5〜pH13.0の条件下で行なう請求項12又は13記載の架橋ポリアスパラギン酸系樹脂の製造方法。
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