1.重合性単量体組成物の調製工程1
本発明の重合トナーの製造方法は、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体組成物を調製する工程1、及び重合性単量体組成物を重合開始剤により重合して、着色重合体粒子(重合トナー)を生成させる工程2を含んでいる。工程2では、一般に、水系分散媒体中で、重合性単量体組成物を懸濁または乳化させて重合する方法が採用される。
前記工程1は、特定のメディア式分散機を用いて、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する混合液中で該着色剤を微細に分散させる分散工程を含んでいる。該分散工程は、重合性単量体中に着色剤を微細に分散させる工程である。
本発明では、出発原料として使用する着色剤の粒径が大きいか、粗大粒子の含有率が高い場合には、前記分散工程として、重合性単量体と体積平均粒径が20μm以上及び/または粒径51μm以上の粒子の体積%が20%以上の着色剤とを含有する混合液を、撹拌翼の回転により機械的剪断力を与えるタイプの分散機に供給して、該分散液中で該着色剤を微細に予備分散する工程A1を含んでいる。本発明では、該工程A1の後、予備分散した着色剤を含有する混合液を、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機に供給して、該混合液中で該着色剤をさらに微細に分散する工程A2を含んでいる。
本発明において、着色剤として、体積平均粒径が20μm未満かつ粒径51μm以上の粒子の体積%が20%未満の着色剤を用いる場合には、重合性単量体と着色剤とを含有する分散液をメディア式分散機により分散処理を行ない、その際、該分散液をメディア式分散機に循環させて分散処理を行なうとともに、該メディア式分散機内での滞留時間を特定の条件を充足するように変動させることにより、分散処理を効率的に行なう。この場合にも、粒径が大きいか、粗大粒子の含有率が高い着色剤を用いる場合には、前記の如き予備分散工程を配置することが好ましい。
本発明の分散工程は、重合性単量体と着色剤とを含む混合液をメディア式分散機に供給して、該着色剤を微細に分散させた重合性単量体分散液を調製する工程を含む。本発明の分散工程が予備分散工程を含む場合には、該混合液を、撹拌翼の回転により機械的剪断力を与えるタイプの分散機に供給して、該分散液中で該着色剤を微細に予備分散する。
原料の混合液には、必要に応じて、離型剤や帯電制御剤などの着色剤以外の添加剤成分を添加しておいてもよい。分散効率を上げるには、実質的に重合性単量体と着色剤とだけを含む混合液を用いて、分散工程により着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液を調製し、次いで、得られた重合性単量体分散液に着色剤以外の添加剤成分を分散または溶解させて、重合性単量体組成物を調製することが好ましい。着色剤以外の添加剤成分の一部は、水系媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成する際に、水系分散媒体に加えて、該液滴中に移行させてもよい。
したがって、本発明の重合性単量体組成物の調製工程1は、前記分散工程のみにより重合性単量体組成物を調製する場合と、分散工程と、該分散工程により得られた重合性単量体分散液に、必要に応じて着色剤以外の添加剤成分を添加する工程とにより重合性単量体組成物を調製する場合とを含んでいる。
本発明においては、予備分散のための分散機またはメディア式分散機内に最初に投入する重合性単量体と着色剤とを含有する原料混合物を「混合液」(スラリー)と呼び、メディア式分散機により着色剤が微細に分散された混合物を「重合性単量体分散液」または単に「分散液」と呼ぶ。
この重合性単量体分散液に、必要に応じて帯電制御剤や離型剤などの着色剤以外の添加剤成分を添加して、重合性単量体組成物を調製する。この重合性単量体組成物を、水系分散媒体に乳化または懸濁させ、重合開始剤の存在下に、重合を行ない、着色重合体粒子を含有する水分散液を調製する。この水分散液を、洗浄・脱水・乾燥処理し、必要に応じて分級を行ない、重合トナーを得る。重合トナーには、必要に応じて、外添剤及び/またはキャリアを添加して、現像剤(トナー)とする。
上記予備分散工程及び分散工程により、重合性単量体中で、着色剤が微細に分散される。本発明では、予備分散工程を経た着色剤を「予備分散着色剤」、分散工程を経た着色剤を「分散着色剤」と呼ぶことがある。
重合性単量体組成物は、重合性単量体と着色剤とを含有しているが、必要に応じて、帯電制御剤、離型剤、分子量調整剤、分散助剤などの各種添加剤を含有させることができる。重合性単量体組成物は、重合開始剤の存在下に重合させるので、重合開始前までに、重合性単量体組成物中に重合開始剤を含有させる。
(1)重合性単量体
本発明では、重合性単量体の主成分としてモノビニル単量体を使用する。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリル酸及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド等のアクリル酸の誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリルアミド等のメタクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;が挙げられる。
モノビニル単量体は、単独で用いても、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル単量体のうち、スチレン、スチレンの誘導体、アクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体、これらの2種以上の組み合わせが好適に用いられる。
モノビニル単量体は、それを重合して得られる重合体のガラス転移温度Tgが80℃以下になるように選択することが好ましい。モノビニル単量体を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することにより、生成する重合体のTgを所望の範囲に調整することができる。
モノビニル単量体とともに、架橋性単量体を用いると、ホットオフセット特性を改善することができる。架橋性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を持つ単量体のことをいう。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のポリアルコールの不飽和ポリカルボン酸ポリエステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。架橋性単量体の使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは0.01〜7重量部、より好ましくは0.05〜5重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部である。
モノビニル単量体と共にマクロモノマーを用いると、高温での保存性と低温での定着性とのバランスが良好になるので好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する巨大分子であり、数平均分子量が通常1,000〜30,000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が上記範囲内にあると、マクロモノマーの溶融性を損なうことなく、重合トナーの定着性及び保存性が維持できるので好ましい。
マクロモノマーの分子鎖末端にある重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などを挙げることができるが、共重合のしやすさの観点からは、メタクリロイル基が好ましい。マクロモノマーは、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を持つ重合体を与えるものが好ましい。
マクロモノマーの具体例としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体;ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー;を挙げることができる。これらの中でも、親水性のものが好ましく、特にメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独で、あるいはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体からなるマクロモノマーが好ましい。
マクロモノマーを使用する場合、その使用割合は、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。マクロモノマーの使用割合が上記範囲内にあると、重合トナーの保存性を維持して、定着性が向上するので好ましい。
(2)着色剤
着色剤としては、カーボンブラックやチタンホワイトなどのトナーの分野で用いられている各種顔料及び染料を使用することができる。黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシンベースの染顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;を挙げることができる。カーボンブラックを用いる場合、一次粒径が20〜40nmであるものを用いると良好な画質が得られ、トナーの環境への安全性も高まるので好ましい。
カラートナー用着色剤としては、前記の黒色着色剤の他に、一般に、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤を使用することができる。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、90、93、95、96、97、109、110、111、120、128、129、138、147、155、168、180、181、185、186がある。この他、イエロー着色剤として、ネフトールイエローS、ハンザイエローG、C.I.バットイエローが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物がある。具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、31、48、48:2、48:3、48:4、57、57:1、58、60、63、64、68、81、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、166、169、170、177、184、185、187、202、206、207、209、220、251、254が挙げられる。この他、マゼンタ着色剤として、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19が挙げられる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、6、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66が挙げられる。この他、シアン着色剤として、例えば、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルーが挙げられる。
これらの着色剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。着色剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜70重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。
(3)帯電制御剤
重合トナーの帯電性を向上させるために、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を重合性単量体組成物中に含有させることが好ましい。帯電制御剤としては、例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン、帯電制御樹脂が挙げられる。
本発明では、帯電制御樹脂を用いることが好ましい。負帯電制御樹脂として、重合体の側鎖に、i)カルボキシル基またはその塩、ii)フェノール基またはその塩、iii)チオフェノール基またはその塩、及びiv)スルホン酸基またはその塩から選ばれる置換基を有する樹脂が挙げられる。
帯電制御樹脂の重量平均分子量は、通常2,000〜30,000、好ましくは4,000〜25,000、さらに好ましくは6,000〜20,000である。
帯電制御剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部の割合で用いられる。
(4)離型剤
オフセット防止または熱ロール定着時における離型性の向上などの目的で、トナーの技術分野で用いられている各種離型剤を重合性単量体組成物中に含有させることができる。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレンなどの低分子量ポリオレフィンワックス類;分子末端酸化低分子量ポリプロピレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量末端変性ポリプロピレン、これらと低分子量ポリエチレンのブロックポリマー、分子末端酸化低分子量ポリエチレン、分子末端をエポキシ基に置換した低分子量ポリエチレン、これらと低分子量ポリプロピレンのブロックポリマーなどの末端変性ポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバなどの植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその変性ワックス;モンタン、セレシン、オゾケライト等の鉱物系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトララウレートなどのペンタエリスリトールエステル;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサラウレートなどのジペンタエリスリトールエステル;などが挙げられる。これらの離型剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの離型剤の中でも、示差走査熱量計を用いて昇温時のDSC曲線から測定される吸熱ピーク温度が、通常30〜150℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃の範囲にあるペンタエリスリトールエステル;同吸熱ピーク温度が50〜80℃の範囲にあるジペンタエリスリトールエステル;などの多価エステル化合物が、定着性と剥離性とのバランス面で特に好ましい。
離型剤の使用割合は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
(5)重合開始剤
重合性単量体の重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1′,3,3′−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類;を挙げることができる。これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を使用することもできる。
これらの開始剤のなかでも、重合性単量体に可溶な油溶性の重合開始剤を選択することが好ましい。必要に応じて、油溶性の開始剤と水溶性の重合開始剤とを併用することもできる。
重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の割合で用いられる。
重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、早期重合を抑制するために、重合性単量体組成物の液滴形成工程の途中もしくは終了後または重合反応途中の懸濁液に直接添加することが好ましい。
(6)分子量調整剤
重合に際して、分子量調整剤を使用することが好ましい。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;を挙げることができる。分子量調整剤は、通常、重合開始前の重合性単量体組成物に含有させるが、重合途中に添加することもできる。
分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
重合性単量体組成物の調製工程1において、分散工程で重合性単量体と着色剤とからなる分散液を調製した場合には、分散工程後、必要に応じて、該分散液に着色剤以外の添加剤成分を含有させることができる。この場合、着色剤以外の添加剤成分を分散液に投入して溶解または分散させることができる。添加剤成分の一部は、重合性単量体組成物を水系分散媒体中に投入して液滴を形成する工程で水系媒体中に投入して、該液滴中に吸収させることにより重合性単量体組成物中に含有させることができる。
2.予備分散工程
以下、重合性単量体組成物の調製工程1中の予備分散工程について説明する。本発明において、粒径が大きいか、粗大粒子の含有率が高い着色剤を用いる場合、予備分散工程を配置して、重合性単量体中に該着色剤を微細に予備分散してから、予備分散した重合性単量体混合液をメディア式分散機に供給して、さらに微細に分散させる。予備分散工程を配置することにより、メディア式分散機を用いた分散工程において、メディア分離スクリーンを閉塞させることなく、着色剤の微細かつ均一な分散を効率的に行なうことができる。
本発明の重合トナーの製造方法は、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体組成物を調製する工程1を含んでいる。本件第一発明は、該工程1として、重合性単量体及び着色剤を含有する混合液中で、該着色剤を微細に分散させる工程Aを含み、さらに、該工程Aは、下記工程A1及びA2を含んでいる。本件第二発明でも、粒径が大きいか、粗大粒子の含有率が高い着色剤を用いる場合には、予備分散工程により、着色剤を微細に予備分散することが好ましい。
工程A1は、重合性単量体と体積平均粒径が20μm以上及び/または粒径51μm以上の粒子の体積%が20%以上の着色剤とを含有する混合液を、撹拌翼の回転により機械的剪断力を与えるタイプの分散機に供給して、該分散液中で該着色剤を微細に予備分散する工程である。
工程A2は、前記工程A1で予備分散した着色剤を含有する混合液を、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機に供給して、該混合液中で該着色剤をさらに微細に分散する工程である。
出発原料として用いる着色剤の体積平均粒径Dvは、通常20μm以上、多くの場合20〜150μm、さらには30〜100μmである。また、出発原料として用いる着色剤の粒径51μm以上の粒子の体積%D51は、通常20%以上、多くの場合20〜95%、さらには30〜85%である。このような粒径が大きいか、粗大粒子の含有率が高い着色剤を、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機を用いて分散させると、メディア分離スクリーンが目詰まりを起こしやすくなり、着色剤を微細に分散させることが困難になる。
そこで、本発明では、前記工程A1において、重合性単量体と着色剤とを含有する混合液を、撹拌翼の回転により機械的剪断力を与えるタイプの分散機に供給して、該分散液中で該着色剤を微細に予備分散する。予備分散工程A1では、着色剤の体積平均粒径が20μm未満かつ粒径51μm以上の粒子の体積%が20%未満となるように、該混合液中で該着色剤を予備分散する。予備分散工程A1において、着色剤の体積平均粒径Dvが好ましくは19μm以下、さらに好ましくは18μm以下、特に好ましくは15μm以下になるまで予備分散させることが望ましい。予備分散した着色剤の体積平均粒径Dvの下限値は、好ましくは1μm、より好ましくは2μm、特に好ましくは3μm、多くの場合5μmである。
予備分散工程A1において、着色剤の体積平均粒径Dvが充分に小さくなるまで予備分散しないと、メディア分離スクリーンの目詰まりが生じやすくなる。予備分散した着色剤の体積平均粒径Dvが充分に小さくない場合には、メディア式分散機による分散効率が低下する傾向を示す。他方、予備分散工程A1において、着色剤の体積平均粒径Dvが過度に小さくなるまで分散させると、全体の分散処理時間が長くなり、分散効率が低下する。予備分散した着色剤の体積平均粒径Dvは、好ましくは1〜19μm、より好ましくは3〜18μm、さらに好ましくは5〜15μmであり、多くの場合、7〜13μmとすることが特に好ましい。
予備分散工程A1において、着色剤の粒径51μm以上の粒子の体積%D51が好ましくは19%以下、さらに好ましくは18%以下、特に好ましくは15%以下になるまで予備分散させることが望ましい。予備分散した着色剤のD51の下限値は、好ましくは1%、より好ましくは2%、より好ましくは3%、多くの場合5%である。着色剤のD51が充分に低くなるまで予備分散しないと、メディア分離スクリーンの目詰まりが生じやすくなる。予備分散した着色剤のD51が充分に低くない場合には、メディア式分散機による分散効率が低下する傾向を示す。他方、予備分散工程A1において、着色剤のD51が過度に低くなるまで分散させると、全体の分散処理時間が長くなり、分散効率が低下する。予備分散した着色剤のD51は、好ましくは1〜19%、より好ましくは3〜18%、さらに好ましくは5〜15%であり、多くの場合、7〜13%とすることが特に好ましい。
予備分散した着色剤の体積平均粒径Dvが20μm未満、さらには15μm以下であっても、D51が20%以上であれば、メディア式分散機を用いても、効率的に着色剤を微細に分散させることが困難になる。したがって、予備分散工程A1では、着色剤のDv及びD51の両方を小さくすることが必要である。
予備分散工程A1及びメディア式分散機を用いた分散工程A2において、着色剤の分散状態を安定化するために、顔料分散剤を用いることが好ましい。顔料分散剤としては、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤が好ましい。顔料分散剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.05〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部の割合で使用される。均一な分散を効率良く行なうためには、顔料分散剤は、予備分散工程A1の前または分散工程A2の前に添加することが好ましく、予備分散工程A1の前に添加することがより好ましい。
予備分散工程では、重合性単量体、着色剤、及び必要に応じて他の添加剤を含有する重合性単量体混合液を予備分散し、予備分散重合性単量体混合液を調製する。
予備分散工程A1では、以下に例示される予備分散機が用いられるが、図1に、この工程A1のシステムの一例を示す。予備分散システムは、重合性単量体混合液を投入するホールディングタンク101、分散機(以下、「予備分散機」という)109、ホールディングタンク101から予備分散機109の間で重合性単量体混合液を循環させる循環ライン107、予備分散機109の吐出側とホールディングタンク101の間の循環ライン112に設置されるバルブ111が備えられたシステムである。
ホールディングタンク101には、攪拌モーター103によって駆動されて回転する撹拌翼102が配置されている。ホールディングタンク101の外壁には、ジャケット104が取り付けられており、温度制御媒体入り口105から該ジャケット内に温度制御媒体が導入され、温度制御媒体出口106から排出することにより、ホールディングタンク101内の液体の温度を制御できるようにしている。
該ホールディングタンク101内に、重合性単量体と着色剤とを含有する混合液113を投入する。該混合液は、ポンプ108により、循環ライン107を通して、予備分散機109に送液される。予備分散機は、モーター110により撹拌翼が駆動される。予備分散機による予備分散された混合液は、バルブ111を配置した循環ライン112を通して、元のホールディングタンク101内に循環される。
本発明において、予備分散工程A1で、重合性単量体混合液中の着色剤に機械的剪断力を与え、予備分散を行なう。予備分散機としては、高剪断力の撹拌装置を使用するのが好ましい。一般的には、重合性単量体混合液を処理部内に取り込み、該処理部内に設置された撹拌翼を高速で回転させて分散する装置であれば特に限定されない。撹拌翼(ローター)の形状や構造は、混合液に高剪断力を付与することができるものであれば特に制限されない。
このような分散機としては、例えば、
(a)エバラマイルダー(荏原製作所社製、製品名)、キャビトロン(ユーロテック製、製品名)、DRS2000(IKA製)等に代表される攪拌装置、すなわち、同心上に配置された櫛歯形状の回転子(ローター)及び固定子を備えた攪拌装置であって、該回転子を高速で回転させ、その回転子内側から固定子外側に攪拌する混合液を流通させて、回転子と固定子との間隙で混合液を撹拌させる装置;
(b)クレアミックスCLM−0.8S(エム・テクニック社製、製品名)に代表される攪拌装置、すなわち、高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンに生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション及びポテンシャルコアの作用によって攪拌する装置;
(c)TKホモミキサー(特殊機化工業社製、製品名)に代表されるタービン型撹拌機;
(d)TKフィルミックス(特殊機化工業社製、登録商標)に代表される攪拌装置、すなわち、処理する混合液を遠心力によって分散槽側壁に押し付けて、液膜を形成し、該液膜に超高速で回転する撹拌具(ローター)の先端が触れることによって攪拌する装置;
等が挙げられる。
予備分散機での滞留時間は、次式により算出することができる。
滞留時間(分)=予備分散機の空間容積(L)/単位時間当りの処理液量(L/分)
平均滞留時間は、予備分散機の空隙体積を、単位時間当りの処理液量の平均値で割った値である。処理液量は、混合液の供給量(kg/分)を、該混合液の密度で割ることにより算出される。本発明の実施例では、混合液の密度を0.9(kg/L)とする。
滞留時間を上記範囲とすることにより、着色剤の予備分散を充分かつ効率良く行なうことができる。
重合性単量体と着色剤とを含有する混合液の予備分散は、例えば、図1に示す予備分散システムを利用して、少なくとも2回の循環回数で予備分散機を循環させることにより行うことが好ましい。循環回数は、下記式により算出することができる。
循環回数θ(回)=処理時間(分)/1循環に要する時間t(分/回)
1循環に要する時間tは、下記式により求める。
t=W/V
t:1循環に要する時間(分/回)
W:ホールディングタンクへの投入量(kg)
V:処理流量(kg/分)
予備分散工程での循環回数は、使用する予備分散機の大きさや、着色剤の種類、混合液の容量などに応じて適宜選択することができるが、循環回数は、好ましくは2〜20回程度である。
前記予備分散機の撹拌翼(ローター)の先端部における周速は、通常15〜60m/s、好ましくは17〜55m/s、より好ましくは20〜50m/sである。撹拌翼の周速が上記範囲を超えると、キャビテーションが発生して着色剤に剪断力がかかりにくくなり充分な分散が得られないことがある。撹拌翼の周速が上記範囲未満では、剪断力が充分に得られないことがある。
予備分散機によって予備分散を行なう場合、剪断発熱によって混合液の温度(液温)が上昇するのを防止するために、予備分散前の液温から予備分散後の液温への上昇幅を強制冷却によって、好ましくは30℃以下、より好ましくは15℃以下に抑えながら予備分散を行なうことが望ましい。さらに、ホールディングタンク101のみならず、循環ライン107,112にもジャケットを設けて冷却を行なってもよい。
本発明において、予備分散を行なう際は、高速攪拌によるキャビテーションを防止するため、予備分散機の内圧を高めて運転することが好ましい。前述したように、キャビテーションが起こると、着色剤への剪断力が低下するため、分散効率が悪くなる。予備分散機の内圧を高める手段として、例えば、図1に示すシステムのように、予備分散機109の吐出側の循環ライン112にあるバルブ111を調整することにより、予備分散機109の内圧を調整することができる。予備分散機の内圧は、好ましくは0.01〜15MPa、より好ましくは0.05〜10MPa、特に好ましくは0.1〜5MPaの範囲となるように調整する。
3.分散工程
<第一発明>
以下、重合性単量体組成物の調製工程1におけるメディア式分散機を用いた分散工程について説明する。本件第一発明では、分散工程A2において、予備分散工程A1で得られた予備分散着色剤と重合性単量体とを含有する予備分散重合性単量体混合液を、メディア分離スクリーンを有するメディア式分散機に供給して、着色剤をさらに微細に分散する。
本発明の分散工程A2では、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機を使用するが、図2に、該メディア式分散機を用いた分散システムの一例を示す。図2の分散システムは、メディア式分散機201とホールディングタンク205とを、ライン212及び214からなる下方フローと、ライン215からなる上方フローとにより接続した構成を有している。ホールディングタンク205としては、予備分散工程A1で用いたホールディングタンク101を用いてもよいが、他のホールディングタンクを用いてもよい。
ホールディングタンク205内には、撹拌モーター206によって駆動されて回転する撹拌翼207が配置されている。ホールディングタンク205の外周部には、ジャケット208が取り付けられており、温度制御媒体入口209から温度制御媒体を導入し、温度制御媒体出口210から排出することにより、ホールディングタンク205内の液体を所望の温度に制御することができるようにしている。
ホールディングタンク205内に、重合性単量体と着色剤とを含有する混合液を投入して撹拌する。該混合液としては、予備分散工程A1で予備分散した着色剤を含有する分散液を使用する。ホールディングタンク205内の混合液は、循環ポンプ213を稼動させることにより、バルブ211、ライン212、循環ポンプ213、及びライン214を経てメディア式分散機201の液体供給口203からケーシング(「容器」または「ステーター」ともいう)202内に導入される。
混合液は、メディア式分散機201内で強力な剪断力を受けて、その中で着色剤が微細に粉砕されて分散される。着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液は、液体排出口204からライン215を経てホールディングタンク205内に導かれる。一旦メディア式分散機内を通過した重合性単量体分散液は、着色剤の更なる均一かつ微細な分散を達成するために、再度同じメディア式分散機201内を所望の回数で循環させることができる。
重合性単量体は、高温に加熱されると部分的な重合を開始しやすい。他方、混合液または分散液の粘度が高すぎると、分散システム内での流動性が低下する。そのため、ホールディングタンク205内の液温が、例えば、30℃以下、好ましくは10〜30℃の範囲内となるように、ジャケット208内に冷水や温水などの温度制御媒体を通して温度調整を行うことが望ましい。
同様に、メディア式分散機内で強力な剪断力を受けると、混合液または分散液の液温が上昇し、重合性単量体の部分的な重合が起こりやすくなるので、メディア式分散機のジャケットに冷却水などの冷却媒体を通して、液温を10〜30℃程度の範囲内に制御することが望ましい。
図3に、本発明で使用する特定のメディア式分散機の断面図を示す。該メディア式分散機301は、液体供給口303と液体排出口304とを有するケーシング302内に、駆動軸319と、該駆動軸319上に配置され該駆動軸319の回転によって同時に回転可能なローター316及びメディア分離スクリーン318が設置された構造を有している。
ケーシング302内面とローター316外面との間に形成された内部空間がメディア粒子317を収容した分散室である。ローター316の一方の端部には、複数のメディア粒子排出スリット323が形成された円筒状部324が設けられており、この円筒状部324の内側にメディア分離スクリーン318が配置されている。液体供給口303からケーシング302内に導入された液体は、メディア分離スクリーン318を通過して、液体排出路325を経て液体排出口304から外部に排出されるように構成されている。液体排出路325は、例えば、駆動軸319とローター316との間に設けられている。ローター316に液体排出路325を形成してもよい。
このメディア式分散機に備え付けたモーター(図示せず)によって駆動軸319を回転させると、駆動軸319上に配置したローター316及びメディア分離スクリーン318が同時に回転する。重合性単量体と着色剤とを含む混合液をライン314から液体供給口303を通してケーシング302内に連続的に供給すると、ローター316の回転により生じる遠心力とメディア粒子317の働きにより、混合液に強力な剪断力が加わり、それによって、着色剤が重合性単量体中に微細に分散する。
着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液は、メディア分離スクリーン318を通過し、液体排出路325を経て、液体排出口304から外部に排出される。この重合性単量体分散液をライン315からホールディングタンク205内に戻し、再度同じメディア式分離機内に循環させると、着色剤をより均一かつ微細に分散させた分散液を得ることができる。
図2に示す分散システムでは、循環ポンプ213を稼動させて混合液または分散液をメディア式分散機内に連続的に供給するため、循環ポンプ213の吐出圧により、着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液は、メディア分離スクリーン318を通過して、連続的に液体排出口304から外部(例えば、ホールディングタンク内)に排出される。メディア分離スクリーン318は、格子状または網目状のスクリーンを備えている。使用するメディア粒子317は、メディア分離スクリーン318の網目または格子間隔よりも大きいため、該メディア分離スクリーンを通過することがない。
メディア分離スクリーンは、駆動軸319上に配置され、駆動軸319の回転により回転するため、その全体的な形状は、一般に円筒状である。すなわち、円筒の外周がスクリーンによって形成されており、円筒の一方の端部は閉塞され、他方の端部は、液体排出路325に連通する開口が形成されている。ローター316は、図3及び図4に示すように、一方の端部には、複数のスリット323を形成した円筒状部324が設けられており、該円筒状部の内側にメディア分離スクリーンが配置されている。
スリット323の大きさは、メディア粒子がその中を通過できる程度に調整してある。分散処理中、着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液は、メディア粒子317と共にメディア分離スクリーン318の表面に到達するが、メディア粒子317は、回転するメディア分離スクリーンの遠心力を受けて、ローター316の円筒状部324に形成したスリット323を通って分散室内に戻り、重合性単量体分散液のみが液体排出口304から外部に排出される。
したがって、このメディア式分散機では、メディア分離スクリーン318表面へのメディア粒子317の滞留等の偏在を防ぐことができる。すなわち、このメディア式分散機は、メディア分離部でのメディア分離性に優れており、分散処理中にメディア分離部が目詰まりを起こして内部圧が上昇するのが防止される。分散処理中にメディア式分散機の内部圧が上昇すると、運転を中止したり、運転条件を緩和したりする必要があるが、このメディア式分散機では、メディア分離性に優れているため、効率的な運転が可能であり、分散効率が低下することがない。
本発明で使用するメディア式分散機は、ローターやケーシングの混合液または分散液と接する部分が、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)が20以上の材質からなるものであることが好ましい。ロックウェルCスケール硬さ(HRC)を20以上にすることにより、ローター及びケーシングと内部空間内に充填されているメディア粒子317との摺動摩擦により生じる磨耗を防ぎ、ひいては磨耗により生じる汚染物質の重合性単量体分散液中へのコンタミネーションを防ぐことができる。
メディア式分散機のローターの先端部における周速は、好ましくは2m/sec以上、より好ましくは4m/sec以上、特に好ましくは8m/sec以上である。周速を大きくすることにより、着色剤の分散を短時間で効率よく行うことができる。
ローターは、例えば、ジルコンやジルコニアなどの高硬度のセラミックス、スチールなどの高硬度金属、超高分子量ポリエチレンやナイロンなどの高分子材料から形成することができる。
メディア粒子は、例えば、ジルコンやジルコニアなどの高硬度のセラミックス、スチールなどの高硬度金属から形成することができる。メディア粒子は、一般に球状の粒子である。着色剤の重合性単量体への分散性の観点から、メディア粒子の粒径(直径)を2mm以下とすることが好ましく、1mm以下とすることがより好ましい。着色剤の微細な分散性の観点から、メディア粒子の粒径は、0.03〜0.5mmが好ましく、0.03〜0.3mmがより好ましく、0.03〜0.2mmとすることが特に好ましい。メディア粒子の粒径の下限は、0.05mm程度がより好ましい。
前記メディア式分散機に内蔵させるメディア粒子の見かけの充填率は、ケーシングの内部空間を基準にして、好ましくは60〜95容積%、より好ましくは70〜90容積%である。メディア粒子の充填率を高めることにより、着色剤の粉砕・分散効率が良好となり、分散室内での混合液または分散液のショートパスを防止することができる。
トナー用添加剤成分の中でも、顔料などの着色剤は、最も微細に粉砕し分散させることが困難な成分であり、離型剤や帯電制御剤などのその他の添加剤成分は、重合性単量体中への分散または溶解が比較的容易である。そのため、重合性単量体と着色剤とからなる混合液を、予備分散した後、メディア式分散機を用いて分散処理を行い、その他の添加剤成分を分散工程終了後に含有させることが分散処理の効率上の観点から好ましい。
すなわち、着色剤以外の添加剤成分を添加することなく、実質的に重合性単量体と着色剤とからなる混合液を用いて分散処理を行うと、比較的小容量の予備分散機やホールディングタンク、小型のメディア式分散機を用いて、短時間で効率的に着色剤の微分散処理を行うことができる。
分散工程では、重合性単量体中に着色剤を可能な限り微細に粉砕し分散させることが好ましい。着色剤の分散度(分散の度合い)は、着色剤粒子の粒径や分散液の塗膜の光沢度を指標として評価することができる。
分散工程では、100μm平方視野で分散液に含まれる長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、多くの場合ゼロ個となるまで、着色剤を微細に分散させることが望ましい。
より具体的には、分散工程において、濃度3重量%の着色剤が微細に分散した重合性単量体分散液を用いて形成した塗膜を、光学顕微鏡により倍率400倍で観察したとき、該塗膜の100μm平方視野中に含まれる長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、さらに好ましくは3個以下、特に好ましくはゼロ個となるように、メディア式分散機による着色剤の分散度を制御する。重合性単量体分散液中の着色剤濃度を3重量%に調整するには、例えば、該分散液試料を重合性単量体で希釈したり、あるいは重合性単量体を揮散除去したりする方法を採用することができる。
メディア式分散機を用いて分散を行う場合、通常、ホールディングタンク205内の混合液をメディア式分散機201内に供給して分散処理を行うが、着色剤の充分な分散度を達成するには、一旦分散処理を行った分散液を再度メディア式分散機に供給し、2回以上循環させて分散処理を行なうことが好ましい。循環回数(θ)は、以下の式により計算される。
循環回数θ=処理時間(分)/1循環に要する時間(分/回)
1循環に要する時間(t)は、下記式により求める。
t=W/V
t:1循環に要する時間(分/回)
W:ホールディングタンクへの投入量(kg)
V:循環ポンプ給液量(kg/分)
分散工程での循環回数は、使用するメディア式分散機の大きさや、着色剤の種類、被処理液の容量などに応じて、適宜選択することができる。循環回数は、好ましくは2〜30回、より好ましくは3〜20回、特に好ましくは4〜15回程度である。
本発明において、メディア式分散機における処理速度(処理レート)は、循環ポンプ給液量(kg/分)を意味する。この循環ポンプ給液量(kg/分)は、具体的には、ホールディングタンク205からメディア式分散機201への混合液の供給速度(kg/分)である。
本発明において、メディア式分散機における混合液の滞留時間は、下記式により算出することができる。
滞留時間(分)=メディア式分散機の空間容積(L)/単位時間当りの処理液量(L/分)
平均滞留時間は、メディア式分散機の空隙体積を、単位時間当りの処理液量の平均値で割った値である。処理液量は、混合液の供給量(kg/分)を、該混合液の密度で割ることにより算出される。本発明の実施例では、混合液の密度を0.9(kg/L)とする。本件第一発明では、メディア式分散機内での混合液の滞留時間を、好ましくは0.4〜1.5分間とすることができる。
<第二発明>
本件第二発明では、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体組成物を調製する工程1において、重合性単量体及び着色剤を含有する混合液中で、該着色剤を微細に分散させる分散工程を含んでいる。さらに、該分散工程では、重合性単量体と着色剤とを含有する混合液を、メディア式分散機と循環ラインで連結したホールディングタンク内に投入し、該ホールディングタンクから該混合液を該メディア式分散機に連続的に供給して、該混合液を、該メディア式分散機内を循環させることにより、該混合液中で該着色剤を微細に分散させる。
その際、該メディア式分散機による分散工程の開始から全分散工程における循環回数の半分までの該メディア式分散機内での平均滞留時間τ1と、全分散工程における循環回数の半分から全分散工程終了までの該メディア式分散機内での平均滞留時間τ2とが、τ1/τ2>1.05の関係を満足するように、該メディア式分散機への該混合液の供給量を制御する。
メディア式分散機に供給する混合液は、体積平均粒径Dvが20μm未満かつ粒径51μm以上の粒子の体積%D51が20%未満の着色剤を含有する混合液である。該混合液中の着色剤の体積平均粒径Dvは、より好ましくは19μm以下、さらに好ましくは18μm以下である。該混合液中の着色剤のD51は、より好ましくは19%以下、さらに好ましくは18%以下である。出発原料の着色剤の粒径が大きすぎたり、粗大粒子の含有率が高すぎたりする場合には、前述の予備分散工程により、着色剤を予備分散することが好ましい。
メディア式分散機としては、メディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機が好ましい。メディア式分散機として、液体供給口と液体排出口とを有する円筒状ケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸上に配置され該駆動軸の回転によって同時に回転可能なローター及びメディア分離スクリーンとが設置された構造のメディア式分散機を用いることがより好ましい。分散工程では、前記図2に示される分散システムを利用することができる。
該メディア式分散機内での該混合液の平均滞留時間τ1及びτ2が、いずれも0.1〜2.5分間の範囲から選ばれ、かつ、前記τ1/τ2>1.05の関係を満足することが好ましい。滞留時間は、前述の式により算出することができる。
上記図2に示される循環方式以外のシステムとして、メディア式分散機により分散を行なった混合液を、元のホールディングタンクへ戻さず、別のタンクへ導入する、パス方式によるシステムを用いることもできる。
該分散工程においては、分散工程前半、すなわち、分散工程開始から全分散工程における循環回数の半分までの平均の滞留時間を平均滞留時間τ1とし、分散工程後半、すなわち、全分散工程における循環回数の半分から全分散工程終了までの平均の滞留時間を平均滞留時間τ2としたとき、前記のτ1とτ2の比τ1/τ2が、τ1/τ2>1.05となるように、分散を行なう。
分散工程全体での所要時間を表すのは、全分散工程における合計滞留時間である「全滞留時間」である。全滞留時間は、循環回数当りの滞留時間の積算により計算される。
上述したように、本発明において、τ1/τ2>1.05であり、好ましくは、τ1/τ2>1.07であり、より好ましくは、τ1/τ2>1.10、特に好ましくはτ1/τ2>1.20である。この範囲で分散工程の分散を行なうと、着色剤が重合性単量体中に、効率良く、均一かつ極めて微細に分散される。
好ましくは、分散工程開始から全分散工程における循環回数の1/4までの平均滞留時間をaとし、全分散工程における循環回数の1/4から全分散工程終了までの平均滞留時間をbとしたとき、前記のaとbとの比a/bが、好ましくはa/b>1.1、より好ましくはa/b>1.2となるように分散処理を行なう。この範囲で分散を行なうと、着色剤が重合性単量体中に、効率良く、均一かつ極めて微細に分散され、より安定的かつ効率の良い分散を行なうことができる。
分散工程における平均滞留時間は、使用するメディア式分散機の大きさや、着色剤の種類、分散処理を行なう単量体混合液量等に応じて、適宜選択することができるが、好ましくは0.1〜2.5分間、より好ましくは0.1〜2.0分間、さらに好ましくは0.1〜1.7分間、特に好ましくは0.1〜1.5分間である。
分散工程での循環回数は、使用するメディア式分散機の大きさや、着色剤の種類、分散の処理を行なう単量体混合液量等に応じて、適宜選択することができるが、循環回数は、好ましくは1〜30回、より好ましくは2〜30回、さらに好ましくは2〜20回、特に好ましくは3〜15回程度である。
循環回数θは、下記式により計算される。循環回数1回とは、混合液の投入量だけメディア式分散機に供給されたことを表す。前記パス方式の場合も、下記式に基づき、循環回数を算出する。
循環回数θ(回)=処理時間(分)/1循環に要する時間t(分/回)
1循環に要する時間tは、式t=W/Vにより算出することができる。
W:重合性単量体混合液の投入量(L)
V:単位時間当りの分散処理液量(L/分)
メディア式分散機のローター先端部における周速は、好ましくは2m/s以上、より好ましくは4m/s以上、特に好ましくは8m/s以上である。周速を大きくすることにより、着色剤の分散を短時間で効率よく行なうことができる。
本件第二発明で使用するメディア式分散機は、ローターが回転可能にステーター内に配置され、ステーターとローターとで形成される空間にメディアが充填され、回転するローターによってメディアが動くようになっている構造を有する分散機である。メディア型分散機には、ステーターの形状や置き方によって、横置型円筒式、縦置型円筒式、逆三角形状式等のタイプがある。前記メディア型分散機の具体的な市販されているものとしては、製品名で示すと、アトライタ(三井三池社製)、マイティミル(井上製作所社製)、ダイヤモンドファインミル(三菱重工社製)、ダイノミル(シンマルエンタープライゼス社製)、ピコミル(浅田鉄工社製)、スターミル(アシザワ・ファインテック社製)、アペックスミル(コトブキ技研社製)等を挙げることができる。
上記タイプのうち、横置型円筒式の分散機は粘度変化を抑えて良好な分散ができるので好ましい。より好ましくは、メディアの分離性が良いため、メディア分離スクリーンを有するメディア式分散機が用いられ、さらに好ましくは、円筒状ケーシング内に、駆動軸と、該駆動軸上に配置され該駆動軸の回転によって同時に回転可能なローター及びメディア分離スクリーンとが設置されており、該ローターの一方の端部には複数のメディア粒子排出スリットが形成された円筒状部が設けられ、該ローターの円筒状部の内側に該メディア分離スクリーンが配置され、液体供給口からケーシング内に導入された液体がメディア分離スクリーンを通過して液体排出口から排出されるように構成されており、かつ、ケーシング内面とローター外面との間に形成された内部空間内にメディア粒子を収容した、特有のメディア分離スクリーンを有するメディア式分散機(図3)が用いられる。このようなメディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機としては、前記したものを用いることができる。
4.着色重合体粒子の生成工程2
本発明の重合トナーの製造方法は、工程1で調製した重合性単量体組成物を重合開始剤により重合して、着色重合体粒子を生成させる工程2を含んでいる。工程2では、重合性単量体組成物を水系分散媒体中で重合する懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法などの重合法が採用されるが、これらの中でも懸濁重合法及び乳化重合法が好ましく、懸濁重合法がより好ましい。
懸濁重合法は、少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系分散媒体中で重合する工程を含んでいる。水系分散媒体としては、一般に、分散安定剤を含有する水系分散媒体が用いられる。懸濁重合法では、先ず、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に重合性単量体組成物を懸濁して微細な液滴を形成し、次いで、懸濁重合を行って着色重合体粒子を生成させる。必要に応じて、該着色重合体粒子の存在下にシェル用重合性単量体を更に重合させる工程を付加して、コア−シェル型の着色重合体粒子を生成させてもよい。
したがって、本発明の製造方法は、工程2において、少なくとも着色剤と重合性単量体とを含有する重合性単量体組成物を水系分散媒体中で重合して着色重合体粒子を生成させ、所望により、該着色重合体粒子の存在下にシェル用重合性単量体を更に重合してコア−シェル型の着色重合体粒子を生成させて、着色重合体粒子またはコア−シェル型の着色重合体粒子を含有する水分散液を製造する工程を含んでいる。
乳化重合法では、先ず、乳化剤を含有する水系分散媒体中で、重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体組成物を乳化重合し、次いで、得られた着色樹脂微粒子を凝集させてトナー粒径にまで肥大化させる方法を採用することができる。
水系分散媒体としては、一般に、イオン交換水などの水を用いるが、所望により、水にアルコールなどの親水性溶媒を加えたものを用いてもよい。懸濁重合法では、一般に、水系分散媒体中に分散安定剤を含有させて、水系分散媒体中に分散した重合性単量体組成物の液滴の安定性を増大させる。
懸濁重合法では、難水溶性の金属水酸化物コロイドの如き分散安定剤を使用するが、界面活性剤を併用することもできる。乳化重合法では、重合性単量体または重合性単量体組成物の分散安定化のために、水系分散媒体中に各種乳化剤を添加する。
これらの重合法の中でも、所望の粒径を有する球形の着色重合体粒子が得られやすく、また、コア−シェル型の着色重合体粒子を形成しやすい点で、懸濁重合法が好ましい。そこで、以下、懸濁重合法を中心に説明する。
本発明に用いる分散安定剤は、難水溶性金属化合物のコロイドが好適である。難水溶性金属化合物としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、などの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;燐酸カルシウムなどの燐酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の金属水酸化物;を挙げることができる。これらの中でも、難水溶性金属水酸化物のコロイドは、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上するので好適である。
難水溶性金属化合物のコロイドは、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性金属水酸化物のコロイドが好ましく、水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性金属水酸化物のコロイドが特に好ましい。難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。
分散安定剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が小さすぎると、充分な重合安定性を得ることが困難であり、重合凝集物が生成しやすくなる。この割合が大きすぎると、水溶液粘度が大きくなって重合安定性が低くなる。
本発明においては、必要に応じて、水溶性高分子を分散安定剤として用いることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチンを挙げることができる。
上記の分散安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明においては、界面活性剤を使用する必要はないが、重合トナーの帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲で、懸濁重合を安定に行うために使用することができる。
重合トナーは、重合性単量体の重合により生成した重合体が結着樹脂となり、その中に着色剤や離型剤などの添加剤成分が分散した着色重合体粒子である。必要に応じて、この着色重合体粒子をコアとし、その上に重合体層からなるシェルを形成して、コア−シェル型の着色重合体粒子とすることができる。
懸濁重合法を例に取ると、重合トナーは、例えば、以下の工程により得ることができる。重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に分散し、撹拌して、重合性単量体組成物の均一な液滴を形成する。重合性単量体組成物の液滴形成においては、先ず、体積平均粒径が50〜1000μm程度の一次液滴を形成する。重合開始剤は、早期重合を避けるため、水系媒体中での液滴の大きさが均一になってから水系分散媒体に添加することが好ましい。
水系分散媒体中に重合性単量体組成物の一次液滴が分散した懸濁液に重合開始剤を添加混合し、さらに、高速回転剪断型撹拌機を用いて、液滴の粒径が目的とする着色重合体粒子に近い小粒径になるまで撹拌する。このようにして、一般に、体積平均粒径が1〜12μm程度の微小粒径の二次液滴を形成する。
重合性単量体組成物の二次液滴を含有する懸濁液を重合反応器に仕込み、通常5〜120℃、好ましくは35〜95℃、より好ましくは50〜95℃の温度で懸濁重合を行う。重合温度が低すぎると、触媒活性が高い重合開始剤を用いなければならないので、重合反応の管理が困難になる。重合温度が高すぎると、低温で溶融する添加剤を含む場合、これが重合トナー表面にブリードし、重合トナーの保存性が悪くなることがある。
重合性単量体組成物の微小な液滴の体積平均粒径及び粒径分布は、重合トナーの体積平均粒径及び粒径分布に影響する。液滴の粒径が大きすぎると、生成する着色重合体粒子の粒径が大きくなりすぎて、画像の解像度が低下するようになる。液滴の粒径分布が広いと、定着温度のばらつきが生じ、カブリ、トナーフィルミングの発生などの不具合が生じるようになる。したがって、重合性単量体組成物の二次液滴は、生成する着色重合体粒子とほぼ同じ体積平均粒径と粒径分布となるように形成することが望ましい。
重合性単量体組成物の液滴の体積平均粒径は、通常1〜15μm、好ましくは2〜12μm、より好ましくは3〜9μmである。高精細な画像を得るため、特に小粒径の重合トナーとする場合には、液滴の体積平均粒径を好ましくは2〜9μm、より好ましくは3〜8μm、さらには3〜7μm程度にすることが望ましい。重合性単量体組成物の液滴の粒径分布(体積平均粒径/数平均粒径)は、通常1〜3、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1〜2である。特に微細な液滴を形成する場合には、高速回転する回転子と、それを取り囲み、かつ小孔または櫛歯を有する固定子との間隙に、単量体組成物を含有する水系分散媒体を流通させる方法が好適である。
重合性単量体としては、前述のモノビニル単量体の中から1種以上を選択する。この際、トナーの定着温度を下げるには、ガラス転移温度Tgが通常80℃以下、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃程度の重合体を形成し得る重合性単量体または重合性単量体の組み合わせを選択することが好ましい。本発明において、結着樹脂を構成する重合体のTgは、使用する重合性単量体の種類と使用割合に応じて算出される計算値、すなわち「計算Tg」である。
懸濁重合により、重合性単量体の重合体中に着色剤などの添加剤成分が分散した着色重合体粒子が生成する。本発明では、この着色重合体粒子を重合トナーとして使用する。重合トナーの保存性(すなわち、「耐ブロッキング性」)、低温定着性、定着時の溶融性などを改善する目的で、懸濁重合によって得られた着色重合体粒子の上に、さらに重合体層を形成して、コア−シェル型の着色重合体粒子とすることができる。
コア−シェル型構造の形成方法としては、例えば、前記の着色重合体粒子をコア粒子とし、該コア粒子の存在下にシェル用重合性単量体を更に重合して、コア粒子の表面に重合体層(シェル)を形成する方法が採用することができる。
シェル用重合性単量体として、コア粒子を構成する重合体成分のTgよりも高いTgの重合体を形成するものを使用すると、重合トナーの保存性を改善することができる。他方、コア粒子を構成する重合体成分のTgを低く設定することにより、重合トナーの定着温度を下げたり、溶融特性を改善したりすることができる。したがって、重合工程でコア−シェル構造の着色重合体粒子を形成することにより、印字の高速化、フルカラー化、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)透過性に対応できる重合トナーが得られる。
コア及びシェルを形成するための重合性単量体としては、前述のモノビニル系単量体の中から好ましいものを適宜選択することができる。コア用重合性単量体とシェル用重合性単量体との重量比は、通常40/60〜99.9/0.1、好ましくは60/40〜99.7/0.3、より好ましくは80/20〜99.5/0.5である。シェル用重合性単量体の割合が過小であると、重合トナーの保存性の改善効果が小さく、過大であると、定着温度の低減効果が小さくなる。
シェル用重合性単量体により形成される重合体のTgは、通常50℃超過120℃以下、好ましくは60℃超過110℃以下、より好ましくは80℃超過105℃以下である。コア用重合性単量体から形成される重合体とシェル用重合性単量体から形成される重合体との間のTgの差は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上である。多くの場合、定着温度と保存性のバランスの観点から、コア用重合性単量体として、Tgが通常60℃以下、好ましくは、40〜60℃の重合体を形成しうるものを選択するのが好ましい。他方、シェル用重合性単量体としては、スチレンやメチルメタクリレートなどのTgが80℃を越える重合体を形成する単量体を、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
シェル用重合性単量体は、コア粒子の平均粒径よりも小さな液滴として重合反応系に添加することが好ましい。シェル用重合性単量体の液滴の粒径が大きすぎると、コア粒子の周囲に重合体層が均一に形成され難くなる。シェル用重合性単量体を小さな液滴とするには、シェル用重合性単量体と水系分散媒体との混合物を、例えば、超音波乳化機などを用いて、微分散処理を行い、得られた分散液を重合反応系に添加すればよい。
シェル用重合性単量体が、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の比較的水溶性の単量体(例えば、メチルメタクリレート)である場合には、コア粒子の表面に比較的速やかに移行し易いので、微分散処理を行う必要はないが、均一なシェルを形成する上で、微分散処理を行うことが好ましい。シェル用重合性単量体が、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体(例えば、スチレン)の場合には、微分散処理を行うか、あるいは20℃の水に対する溶解度が5重量%以上の有機溶媒(例えば、アルコール類)を反応系に加えることにより、コア粒子の表面に移行しやすくすることが好ましい。
シェル用重合性単量体には、所望により、帯電制御剤を加えることができる。帯電制御剤としては、前述したコア粒子製造に使用するのと同様のものが好ましい。帯電制御剤を使用する場合には、シェル用重合性単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
コア−シェル型の着色重合体粒子を製造するには、コア粒子を含有する懸濁液中に、シェル用重合性単量体またはその水系分散液を一括して、あるいは連続的もしくは断続的に添加する。シェル用重合性単量体を添加する際に、水溶性のラジカル開始剤を添加することがシェルを効率良く形成する上で好ましい。シェル用重合性単量体の添加時に水溶性重合開始剤を添加すると、シェル用重合性単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性重合開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体層が形成され易くなると考えられる。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス−[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]等のアゾ系開始剤を挙げることができる。水溶性重合開始剤の使用割合は、シェル用重合性単量体100重量部当り、通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。
シェルの平均厚みは、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm、より好ましくは0.005〜0.2μmである。シェル厚みが大きすぎると、重合トナーの定着性が低下し、小さすぎると、重合トナーの保存性が低下する。
重合トナーのコア粒子径及びシェルの厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作意に選択した粒子の大きさ及びシェル厚みを直接測ることにより得ることができる。電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径と、シェルを形成する重合性単量体の使用量から算定することができる。
5.洗浄・回収工程
着色重合体粒子の生成工程の後、水系分散媒体から着色重合体粒子を回収するが、回収前に未反応の重合性単量体などの揮発性有機化合物を除去する工程を配置してもよい。具体的には、例えば、着色重合体粒子を含有する水分散液をストリッピング処理して、揮発性有機化合物を除去する方法を採用することができる。
着色重合体粒子の生成工程の後、または前記の如き揮発性有機化合物の除去工程の後、洗浄工程を配置する。すなわち、着色重合体粒子の回収は、常法に従って、脱水、洗浄、濾過、乾燥処理により行われ、乾燥した着色重合体粒子が回収される。脱水に先立って、一般に、使用した分散安定剤を可溶化して除去するために、分散安定剤の種類に応じて、例えば、酸洗浄やアルカリ洗浄などの処理が行われる。
例えば、分散安定剤として水酸化マグネシウムコロイドなどの難水溶性金属水酸化物のコロイドを用いた場合には、水分散液に硫酸の如き酸を加えて分散安定剤を水に可溶化させる(これを「酸洗浄」という)。酸洗浄により、水分散液のpHを好ましくは5以下に調整する。
酸洗浄またはアルカリ洗浄後、水分散液を濾過して脱水する。脱水後、洗浄水を用いて着色重合体粒子の洗浄を行うが、洗浄水の供給と脱水とを繰り返し行うか、連続的に行うことが洗浄効率を高める上で好ましい。そのため、洗浄脱水機を用いて水による洗浄を行うことが好ましい。脱水洗浄機としては、例えば、連続式ベルトフィルターやサイホンピーラー型セントリフュージが挙げられる。
洗浄工程後、湿潤状態にある着色重合体粒子を乾燥させる。乾燥方法としては、流動乾燥、真空乾燥などが挙げられるが、低温での乾燥が可能な真空乾燥が好ましく、特に撹拌翼を備えた真空乾燥機による乾燥が好ましい。
6.重合トナー及び現像剤
本発明の製造方法により着色重合体粒子として得られる重合トナー(コア−シェル型の着色重合体粒子を含む)の体積平均粒径Dvは、通常2〜15μm、好ましくは3〜15μm、より好ましくは4〜12μmである。解像度を高めて高精細な画像を得る場合には、重合トナーの体積平均粒径を好ましくは2〜9μm、より好ましくは3〜8μmにまで小さくすることが特に望ましい。重合トナーの体積平均粒径が小さすぎると、重合トナーの流動性が低下し、転写性が悪化したり、カスレが発生したり、印字濃度が低下する場合があり、他方、大きすぎると、画像の解像度が低下する場合がある。
本発明の重合トナーを構成する着色重合体粒子は、その体積平均粒径Dvと個数平均粒径Dpとの比Dv/Dp(粒径分布)が、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0〜1.4、さらに好ましくは1.0〜1.3、特に好ましくは1.0〜1.25である。Dv/Dpが大きすぎると、カスレが発生したり、転写性、印字濃度、及び解像度の低下が起こったりする場合がある。着色重合体粒子の体積平均粒径及び個数平均粒径は、マルチサイザー(ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
本発明の重合トナーを構成する着色重合体粒子の球形度Sc/Srは、好ましくは1.0〜1.3、より好ましくは1.0〜1.2である。球形度が大きすぎると、転写性が低下したり、トナーの流動性が低下し、カスレ易くなったりする場合がある。着色重合体粒子の球形度Sc/Srは、以下のように求められる。着色重合体粒子を電子顕微鏡で撮影し、得られた写真を画像処理解析装置ルーゼックスIID(ニレコ社製)により、フレーム面積に対する粒子の面積率を最大2%、トータル処理数を100個の条件で測定する。得られた100個の着色重合体粒子の球形度Sc/Srを平均することにより求められる。
球形度=Sc/Sr
Sc:着色重合体粒子の絶対最大長を直径とした円の面積
Sr:着直重合体粒子の実質投影面積
本発明の製造方法により得られた重合トナーは、各種現像剤のトナー成分として使用することができるが、非磁性一成分現像剤として使用することが好ましい。
本発明の重合トナーを非磁性一成分現像剤とする場合には、必要に応じて、外添剤を混合することができる。外添剤としては、流動化剤や研磨剤などとして作用する無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられる。
有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル共重合体で形成されたコア−シェル型粒子などが挙げられる。
これらの中でも、外添剤として、無機酸化物粒子が好ましく、二酸化ケイ素が特に好ましい。無機微粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理された二酸化ケイ素粒子が特に好適である。
外添剤は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。外添剤を2種以上組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる無機粒子同士または無機粒子と有機樹脂粒子とを組み合わせる方法が好適である。外添剤の使用割合は、特に限定されないが、重合トナー100重量部に対して、通常0.1〜6重量部である。外添剤を重合トナーに付着させるには、通常、重合トナーと外添剤とをヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて攪拌する。
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。本実施例において行った試験方法は、以下のとおりである。
(1)着色剤の粒径測定
重合性単量体と着色剤とを含有する重合性単量体混合液及び予備分散重合性単量体混合液を、帯電制御剤(スチレン/アクリル樹脂、藤倉化成株式会社製、商品名「FCA−207P」)のスチレン溶液(帯電制御剤の濃度1%)で20倍に希釈し、粒径測定用試料を作製した。得られた試料を用いて、SALD粒度分布計(島津製作所製)にて、着色剤の体積平均粒径Dv及び粒径51μm以上の粒子の体積%D51を測定した。
(2)着色剤の分散性
着色剤が分散した重合性単量体分散液の一部を試料として採取し、同じ組成の重合性単量体で希釈して着色剤の濃度が3重量%の分散液とし、該分散液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、間隔が30μmのドクターブレードにより塗布、乾燥して、塗膜を形成した。この塗膜を倍率400倍の光学顕微鏡で観察し、100μm平方視野中での長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数を数えた。
(3)印字濃度
市販の非磁性一成分現像方式のプリンターにトナーを入れ、温度23℃及び湿度50%の環境下で、複写紙上に50mm×50mmの正方形のベタ印字を行なった。その際、現像バイアス電圧を変化させて、複写紙上のトナーの量である、現像量M/Aを変化させた。現像量M/Aは、未定着画像をプリンターより取り出し、複写紙上に現像されたトナーをエアーにて吹き飛ばし、下記式より計算した。
M/A(mg/cm2)=(W1−W2)/25cm2
W1=トナー吹き飛ばし前の複写紙の重量(mg)、
W2=トナー吹き飛ばし後の複写紙の重量(mg)。
M/A=0.45mg/cm2の5mm×5mm正方形のベタ印字定着画像の印字濃度を、反射型濃度計(マクベス社製、機種名「RD918」)を用いて測定した。
実施例1
図1に示すタンク101内に、スチレン80重量部、アクリル酸ブチル20重量部、C.I.ピグメントレッド31と150とを混合したマゼンタ着色剤(富士色素社製、商品名「フジファーストカーミン528−1」)5部、及びアルミニウム系カップリング剤(アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート;味の素ファインテクノ社製、商品名「AL−M」)0.25部を投入し、攪拌して、重合性単量体混合液を調製した。
この重合性単量体混合液中のマゼンタ着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=70.7μm及びD51=68.4%であった。
この重合性単量体混合液を、予備分散機としてインライン型乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)を用いて、ローター(撹拌翼)先端部の周速23.6m/s、循環回数θ4回の条件で予備分散を行ない、予備分散重合性単量体混合液を得た。予備分散処理中、混合液の温度が25℃になるように調整した。
この予備分散重合性単量体混合液中における着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=12.8μm及びD51=13.0%であった。
予備分散により得られた予備分散重合性単量体混合液の分散工程は、図3に示すメディア分離スクリーンを備えたメディア式分散機を使用し、図2に示す分散システムを用いて、以下のようにして実施した。
ケーシングの空間容積: 5.47リットル
メディア粒子: 直径0.1mmのジルコニアビーズ
メディア充填量: 4.65リットル(ケーシング空間容積の85%)
メディア分離スクリーンのスリット間隙: 53μm
駆動軸の回転数: 865rpm(ローター先端周速12m/sec)
ホールディングタンク205内に、予備分散工程で得られた予備分散重合性単量体混合液を投入した。この際、ジャケット208の温度制御媒体入口209から温度制御用媒体(温水または冷水)を導入し、温度制御媒体出口210から排出することにより、ホールディングタンク205内の液温を25℃に調整した。
この予備分散重合性単量体混合液を、循環ポンプ213を用いて、ホールディングタンク205から9.2kg/分の供給速度でメディア式分散機201内に連続的に供給した。
この予備分散重合性単量体混合液を連続的に供給すると、ローター316の回転により生じる遠心力と激しく運動するメディア粒子317により、混合液に強い剪断力が働いてマゼンタ着色剤が微細化された。マゼンタ着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液は、メディア分離スクリーン318によりメディア粒子317と分離され、液体排出路325を経て液体排出口304から外部に排出される。液体排出口304から排出した予備分散重合性単量体混合液は、ライン215を経てホールディングタンク205内に戻される。ホールディングタンク205内に戻されたマゼンタ着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液、ライン212及び214を経て、再びメディア式分散機201内に連続的に供給される。このように、混合液を、メディア式分散機内を循環させながら分散処理を行なった。
分散処理中、メディア分離スクリーン318の表面付近に移動したメディア粒子317は、回転するローター316とメディア分離スクリーン318の遠心効果により、該ローター316の一方の端部に設けられた円筒状部324のメディア粒子排出スリット323から分散室に戻され、メディア分離スクリーン318表面に滞留することがない。したがって、分散処理中、ケーシング302内の圧力は0.05Mpaで安定していた。運転中、液体排出口304から排出されるマゼンタ着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液の温度が25℃となるように、冷却水を冷却媒体入口320からジャケット322内に供給し、冷却媒体出口321から排出して温度制御を行なった。
循環回数θが10回となる60分間、分散処理を行ない、運転を停止した。分散液の処理速度は、9.2kg/分であった。メディア式分散機内での分散液の滞留時間τ(分)は、5.47(L)/9.2(kg/分)×0.9(kg/L)=0.54分であった。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数がゼロ個であった。
次に、マゼンタ着色剤が微細に分散している重合性単量体分散液100.25部に、帯電制御剤(スチレン/アクリル樹脂、藤倉化成株式会社製、商品名「FCA−207P」)1部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業株式会社製、商品名「AA6」)0.25部、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート10部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.75部、及び架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.25部を添加し、攪拌溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)6.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)5部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)を含有する水系分散媒体を調製した。
上記により得られた水系分散媒体に、上記重合性単量体組成物を投入し、撹拌後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)5部をさらに投入し、インライン型乳化分散機(株式会社荏原製作所製、商品名「マイルダー」)を用いて、15,000rpmの回転数で10分間、高剪断攪拌して、重合性単量体組成物の液滴を形成した。
重合性単量体組成物の液滴が分散した水性分散液を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃で重合反応を開始させた。重合転化率がほぼ100%に達した後、重合温度はそのままにして、シェル用重合性単量体のメチルメタアクリレート1部と、イオン交換水10部に溶解した2,2′−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド](和光純薬工業株式会社製、商品名「VA086」)0.1部を添加し、90℃で3時間反応を継続した後、反応を停止し、コア−シェル型の着色重合体粒子を含有する水性分散液を得た。該水性分散液のpHは、9.5であった。
上記により得た着色重合体粒子を含有する水分散液を攪拌しながら、硫酸により水性分散液のpHを6以下として、25℃、10分間攪拌を継続して酸洗浄を行なった。その後、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えてリスラリー化して、10分間攪拌をして、水洗浄を行なった。濾過、脱水、水洗浄を数回繰り返し行なってから着色重合体粒子を濾過分離して、湿潤した着色重合体粒子を得た。湿潤した着色重合体粒子を真空乾燥機の容器内に入れ、圧力30torr、温度50℃で真空乾燥した。
乾燥後の着色重合体粒子の粒径分布は、体積平均粒径Dv=6.46μm、数平均粒径Dp=5.39μm、粒径16μm以上の粒子の体積%=0.91%、粒径20μm以上の粒子の体積%=1.3%、粒径5μm以下の粒子の個数%=39.8%であった。
上記により得られた着色重合体粒子100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子2部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して非磁性一成分現像剤(トナー)を調製した。結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、予備分散工程での循環回数θを4回から3回に変更して、予備分散処理を行なった。メディア式分散機を用いた分散工程では、予備分散した混合液を、ホールディングタンク205から2kg/分の供給速度でメディア式分散機201内に連続的に供給した。上記以外は、実施例1と同じ処理を行なった。予備分散重合性単量体混合液中の着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=14.2μm及びD51=25.3%であった。分散工程において、処理速度の大幅な低下が見られた。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が100個以上であった。
比較例2
実施例1において、着色剤をマゼンタ着色剤からイエロー着色剤のC.I.ピグメントイエロー74に、着色剤の添加量を5部から7部にそれぞれ変更し、さらに、予備分散工程を行なわずに、メディア式分散機を用いた分散工程を行なった。この重合性単量体混合液中での着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=59.7μm及びD51=66.7%であった。分散工程中にメディア分離スクリーンに、着色剤の凝集物とメディア粒子とが詰まり、該スクリーンを閉塞したため、分散処理が不可能となり、以後の操作を中止した。
比較例3
比較例2において、イエロー着色剤を分級機(アルピネ社製、商品名「MULIPLET 100MZR」)により分級して、粗大粒子の含有率を低くした着色剤を使用した以外は、比較例2と同じ処理を行なった。この重合性単量体混合物中の着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=23.0μm及びD51=14.9%であった。分散工程において、処理速度の大幅な低下が見られた。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が100個以上であった。
実施例1及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
実施例2
スチレン80部及びアクリル酸ブチル20部に、イエロー顔料として、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、商品名「Fast Yellow 7415」)6部と、C.I.ピグメントイエロー74(山陽色素株式会社製、商品名「Fast Yellow 7416」)1部を混合して重合性単量体混合液を調製した。
この重合性単量体混合液を、予備分散機として、インライン型乳化分散機(荏原製作所社製、商品名「マイルダー」を用いて、ローター先端部の周速23m/sで、循環回数6回の条件で予備分散を行ない、予備分散重合性単量体混合液を得た。この予備分散重合性単量体混合液における着色剤のDv及びD51を測定したところ、Dv=16.4μm及びD51=17.6%であった。予備分散処理中、混合液の温度が25℃になるように調整した。
予備分散により得られた予備分散重合性単量体混合液の分散工程は、図3に示すメディア式分散機を配置した図2に示す分散システムを用いて、以下のように行なった。
ケーシングの空間容積: 5.47L
メディア粒子: 直径0.3mmのジルコニアビーズ
メディア充填量: 4.65L(ケーシング空間容積の85%)
メディア分離スクリーンのスリット間隙: 150μm
駆動軸の回転数: 710rpm(ローター先端周速10m/sec)
ホールディングタンク205内に、予備分散工程で得られた予備分散重合性単量体混合液を投入した。この際、ジャケット208の温度制御媒体入口209から温度制御用媒体(温水または冷水)を導入し、温度制御媒体出口210から排出することにより、ホールディングタンク205内の液温を30℃に調整した。
この予備分散重合性単量体混合液を、循環ポンプ213を用いて、ホールディングタンク205から滞留時間0.98分となる供給速度でメディア式分散機201内に連続的に供給した。この予備分散重合性単量体混合液を連続的に供給すると、ローター316の回転により生じる遠心力と激しく運動するメディア粒子317により、分散液に強い剪断力が働いてイエロー着色剤が微細化された。イエロー着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液は、メディア分離スクリーン318によりメディア粒子317と分離され、液体排出路325を経て液体排出口304から外部に排出される。液体排出口304から排出した予備分散重合性単量体混合液は、ライン315を経てホールディングタンク205内に戻される。ホールディングタンク205内に戻されたイエロー着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液は、ライン212及び214を経て、再びメディア式分散機201内に連続的に供給される。このように、メディア式分散機内を循環させながら分散処理を行なった。
分散処理中、メディア分離スクリーン318の表面付近に移動したメディア粒子317は、回転するローター316とメディア分離スクリーン318の遠心効果により、該ローター316の一方の端部に設けられた円筒状部324のメディア粒子排出スリット323から分散室に戻され、メディア分離スクリーン318表面に滞留することがない。したがって、分散処理中、ケーシング302内の圧力は0.1Mpaで安定していた。運転中、液体排出口304から排出されるイエロー着色剤が微細に分散した予備分散重合性単量体混合液の温度が25℃となるように、冷却水を冷却媒体入口320からジャケット322内に供給し、冷却媒体出口321から排出して温度制御を行なった。
分散工程開始から循環回数が1回まで、前述の滞留時間0.98分の供給速度でメディア式分散機に予備分散重合性単量体混合液を供給した。循環回数が2以降は、滞留時間0.62分で処理を行ない、循環回数が4回となるまで分散処理を継続し、その後、運転を停止した。全滞留時間は、2.84分であった。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数がゼロ個であった。
次に、イエロー着色剤が微細に分散している重合性単量体分散液107部に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成株式会社製、商品名「FCA−161P」)1.5部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業株式会社製、商品名「AA6」)0.5部、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート6部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.0部、及び架橋性単量体としてジビニルベンゼン0.9部を添加し、攪拌溶解して分散重合性単量体組成物を調製した。
他方、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)6.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(アルカリ金属水酸化物)5部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)水系分散媒体を調製した。
上記により得られた水系分散媒体に、上記分散重合性単量体組成物を投入し、撹拌後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名「パーブチルO」)5部をさらに投入し、インライン型乳化分散機(太平洋機工株式会社、商品名「キャビトロン」)を用いて、高剪断攪拌して、分散重合性単量体組成物の液滴を形成した。
分散重合性単量体組成物の液滴が分散した水性分散液を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃で重合反応を開始させた。重合転化率がほぼ100%に達した後、シェル用重合性単量体のメチルメタアクリレート1部と、イオン交換水10部に溶解した2,2′−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド〕(和光純薬工業株式会社製、商品名「VA086」)0.1部を添加し、90℃で3時間反応を継続した後、反応を停止し、コア−シェル型の着色重合体粒子を含有する水性分散液を得た。該水性分散液のpHは、9.5であった。
上記により得た着色重合体粒子を含有する水性分散液を攪拌しながら、硫酸により水性分散液のpHを5.5とし、25℃、10分間攪拌を継続して酸洗浄を行なった。その後、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えてリスラリー化して、10分間攪拌して水洗浄を行なった。濾過、脱水、水洗浄を数回繰り返し行なってから着色重合体粒子を濾過分離して、湿潤した着色重合体粒子を得た。湿潤した着色重合体粒子を真空乾燥機の容器内に入れ、圧力30torr、温度45℃で真空乾燥した。
乾燥後の着色重合体粒子の粒径分布は、体積平均粒径Dv=6.87μm、数平均粒径Dp=5.86μm、粒径16μm以上の粒子の体積%=1.01%、粒径20μm以上の粒子の体積%=0.60%、粒径5μm以下の粒子の個数%=26.62%、粒径3μm以下の粒子の個数%=4.44%であった。
上記により得られた着色重合体粒子100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子2部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して非磁性一成分現像剤(トナー)を調製した。全滞留時間は、2.84分であった。
実施例3
実施例2において、メディア式分散機に用いるメディア粒子を、直径0.3mmのジルコニアビーズから直径0.1mmのジルコニアビーズに変え、予備分散重合性単量体混合物を、循環回数1回までは滞留時間を0.77分、その後、循環回数が4回までは滞留時間0.67分で供給した以外は、実施例2と同様にして非磁性一成分現像剤(トナー)を調製した。全滞留時間は、2.78分であった。
分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数がゼロ個であった。
比較例4
実施例2において、滞留時間を0.98分から0.62分に変更して、分散を開始した。循環回数が1回に達する前の時点で、分散機内に、予備分散重合性単量体混合液が詰まり、分散処理が不可能になったので、以降の操作を中止した。全滞留時間は、0.62分であった。
比較例5
実施例2において、滞留時間を0.98分のまま、循環回数3回まで継続し、分散を行った。全滞留時間は、2.94分であり、実施例2とほぼ同じであった。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が100個以上であった。
比較例6
実施例2において、滞留時間を1.64分に変更し、その条件で循環回数4回まで継続し、分散を行った。全滞留時間は、6.56分であった。
上記分散工程で得られた分散液中の着色剤の分散性を測定したところ、長径0.5μm超過の着色剤粒子の個数が100個以上であった。
上記実施例2〜3及び比較例4〜6の結果を表2に示す。