JP4664641B2 - プロトン伝導膜及び燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池やアルカリ電気分解工業に好適に使用され得るプロトン伝導性ポリマーと、このプロトン伝導性ポリマーを含む電解質膜を備えた燃料電池に関するものである。
燃料電池は、水素と酸素を使用して電気化学反応で発電するため、クリーンな発電装置として注目されている。この燃料電池としては、水素ガスを燃料とする固体高分子電解質型燃料電池が従来から良く知られている。この固体高分子電解質型燃料電池に使用される固体高分子電解質膜が例えば特許文献1,2に開示されている。
特許文献1は、スルホアルキル基を側鎖に含む芳香族炭化水素系高分子化合物からなる固体高分子電解質膜を使用することにより、電解質膜の耐久性が向上され、固体高分子電解質型燃料電池の出力特性が改善されることを開示している。一方、特許文献2には、炭化フッ素系ビニルモノマーと炭化水素系ビニルモノマーとの共重合体で形成された主鎖とスルホン酸基を有する炭化水素系側鎖とから構成されている固体高分子電解質膜において、炭化水素系側鎖にαメチルスチレン基を含有させることにより、固体高分子電解質膜の酸化劣化を防止することが記載されている。
ところで、メタノールを改質せずに直接燃料電池のアノードに供給する直接メタノール型燃料電池(DMFC)の研究が進められている。この直接メタノール型燃料電池では改質器が不要であるために電池の大幅な軽量・コンパクト化が可能であり、携帯型燃料電池としても期待されている。
この直接メタノール型燃料電池のプロトン伝導膜としては、特許文献3に記載されているようなパーフルオロスルホン酸ポリマー膜が多用されている。しかしながら、このパーフルオロスルホン酸ポリマー膜は、メタノールクロスオーバ現象が大きく、そのうえプロトン伝導性においても改良の余地を残しているため、膜電極接合体(MEA)において十分な発電効率を得られていない。
特開2002−110174号公報 特開2003−36864号公報 特開2002−313366号公報
本発明は、メタノールの透過を抑制する効果が高く、かつプロトン伝導性に優れたプロトン伝導膜と、このプロトン伝導膜を含む燃料電池とを提供することを目的とする。
本発明に係る第1の態様によれば、下記化3で表される繰り返し単位を含むポリマーを含有することを特徴とするプロトン伝導膜が提供される。
Figure 0004664641
但し、R1は芳香族性官能基で、R2はイオン性芳香族官能基で、R3は芳香族性官能基であり、Vは1〜120のうちから選ばれる整数で、Wは1〜400のうちから選ばれる整数で、かつXは10〜4000のうちから選ばれる整数である。
本発明に係る第2の態様によれば、アノードと、
カソードと、
前記アノード及び前記カソードの間に配置され、下記化4で表される繰り返し単位を含むポリマーを含有するプロトン伝導膜と
を具備することを特徴とする燃料電池が提供される。
Figure 0004664641
但し、R1は芳香族性官能基で、R2はイオン性芳香族官能基で、R3は芳香族性官能基であり、Vは1〜120のうちから選ばれる整数で、Wは1〜400のうちから選ばれる整数で、かつXは10〜4000のうちから選ばれる整数である。
本発明によれば、メタノールの透過を抑制する効果が高く、かつプロトン伝導性に優れたプロトン伝導膜と、このプロトン伝導膜を含む燃料電池とを提供することができる。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記化5で表される繰り返し単位を含むプロトン伝導性ポリマーによると、メタノールの透過抑制とプロトン伝導性向上の双方を達成し得ることを見出し、本発明に至ったのである。
Figure 0004664641
但し、R1,R2及びR3は、それぞれ置換基であり、V,W及びXは正の整数である。
すなわち、上記構造式におけるR1が芳香族性官能基で、R2がイオン性芳香族官能基で、かつR3が芳香族性官能基であるプロトン伝導性ポリマーは、パーフルオロアルキルスルホン酸に比較してメタノールとの親和性が低いため、メタノールの透過を抑制することができる。また、このプロトン伝導性ポリマーは、パーフルオロアルキルスルホン酸に比較してプロトン伝導性を向上することができる。さらに、このポリマーは、非フッ素系であるにも拘わらず、酸化分解と熱分解を生じ難く、化学的安定性にも優れている。
従って、このプロトン伝導性ポリマーを含む電解質膜を備えた燃料電池によると、パーフルオロアルキルスルホン酸型膜を備えた燃料電池に比較して膜電極接合体(MEA)の反応効率を高めることが可能である。
以下、プロトン伝導性ポリマーについて詳しく説明する。
<化合物単位(I)>
化合物単位(I)は、プロトン交換性を有するため、プロトン伝導に主に寄与する。化合物単位(I)のプロトン交換性を高めるために、官能基R1はベンゼン誘導型官能基であることが望ましい。この際、官能基R2がアントラキノン誘導型官能基であることによって、プロトン交換性をさらに高くすることができる。
ベンゼン誘導型官能基R1のうち好ましいものは、アミノ基を有するもので、特に好ましいものはアミノベンジル基を基本骨格とするものである。アミノベンジル基には置換基が導入されていても、いなくても良い。なお、置換基の炭素数は1〜10の範囲が好ましい。
アントラキノン誘導型官能基R2のうち好ましいものは、NH2基のようなアミノ基とSO3H基のようなスルホン酸基とを含有するものである。
<化合物単位(II)>
化合物単位(II)は、メタノールの透過抑制と化学安定性の向上に主に寄与する。
R3は芳香族性官能基の中でもベンゼン誘導型官能基であることが好ましい。これにより、メタノールの透過を阻止する効果と、耐酸化性もしくは耐熱性を向上することができる。ベンゼン誘導型官能基R3のフェニル基には置換基が導入されていても、いなくても良い。なお、置換基の炭素数は1〜8の範囲が好ましい。
上記プロトン伝導性ポリマーの中でも、R1がベンゼン誘導型官能基で、R2がアントラキノン誘導型官能基で、R3がベンゼン誘導型官能基であるプロトン伝導性ポリマーが好ましい。このようなプロトン伝導性ポリマーは、メタノールとの親和性が低く、かつイオン交換基密度が高いため、メタノール透過抑制とプロトン伝導性の向上の双方を満足することができる。さらに、このポリマーは、非フッ素系であるにも拘わらず、化学的安定性にも優れている。
前述した化5で表される繰り返し単位を含むプロトン伝導性ポリマーにおいて、Vを1〜120のうちから選ばれる整数とし、Wを1〜400のうちから選ばれる整数とし、かつXを10〜4000のうちから選ばれる整数とすることが望ましい。これにより、メタノール透過率が小さく、プロトン伝導性、化学的安定性及び機械的強度に優れたプロトン伝導膜を実現することができる。Vのさらに好ましい範囲は20〜80である。また、Wのさらに好ましい範囲は40〜300である。一方、Xのさらに好ましい範囲は80〜3000である。
プロトン伝導性ポリマーの好適な用途として、燃料電池用電解質膜、燃料電池用電極、アルカリ電気分解工業が挙げられる。燃料電池の一例としては、直接メタノール型燃料電池が挙げられる。直接メタノール型燃料電池は、アノード触媒層を含むアノードと、カソード触媒層を含むカソードと、アノード及びカソードの間に配置される固体電解質膜とを備えるものである。アノードに供給される液体燃料には、メタノールを含むものが使用される。一方、カソードに供給される酸化剤には、空気などが使用される。この直接メタノール型燃料電池の模式図を図1に示す。
直接メタノール型燃料電池は、アノード触媒層1と、カソード触媒層2と、アノード触媒層1とカソード触媒層2の間に配置される固体電解質膜3と、固体電解質膜3の反対側のアノード触媒層1表面に配置されたアノード拡散層4と、固体電解質膜3の反対側のカソード触媒層2表面に配置されたカソード拡散層5とを備える。これら5層積層物は、一般に膜電極接合体(MEA)6と呼ばれる。
アノード触媒層1に含まれるアノード触媒としては、例えば、Pt−Ru合金のような白金合金が挙げられる。一方、カソード触媒層2に含まれるカソード触媒としては、例えば、Ptが挙げられる。アノード拡散層4は、アノード触媒層1に液体燃料を均一に拡散させるためのもので、例えばカーボンペーパから形成される。また、カソード拡散層5は、カソード触媒層2に酸化剤を均一に拡散させるためのもので、例えばカーボンペーパから形成される。固体電解質膜3には、本発明のプロトン伝導性ポリマーを含む電解質膜が使用される。
例えばメタノール水溶液からなる液体燃料は、アノード拡散層4を通してアノード触媒層1に供給される。また、空気のような酸化剤は、カソード拡散層5を通してカソード触媒層2に供給される。アノード触媒層1においては、下記(1)式に示す反応が生じる。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e- (1)
生成したプロトンは固体電解質膜3を介してカソード触媒層2に供給される。また、電子は外部回路を通ってカソード触媒層2に供給される。これにより、カソード触媒層2において下記(2)式に示す反応、つまり発電反応が生じる。
6H++3/2O2+6e-→3H2O (2)
なお、上記発電反応に伴って生成した二酸化炭素と水は、外部に排出される。また、アノード触媒層1で消費しきれなかった余剰のメタノールを回収して再び燃料として使用することが可能である。
このような構成の燃料電池によれば、メタノールクロスオーバの発生を抑制することができ、電解質膜のプロトン伝導性を向上することができ、同時に発電反応を繰り返すことによる電解質膜の劣化を抑制することができるため、MEAの発電効率を高めることができる。
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
<プロトン化操作>
0.05N塩酸30mLにユニブルーAナトリウム塩を3g溶解させ、メスピペットで採取し、アセトン60mLに滴下した。生成した沈殿を100mL遠沈管2本に分け入れた。2000rpmで10分間遠心分離操作を行った後、上澄み液を捨て、それぞれの遠沈管に水30mLを入れた後、再び2000rpmで10分間遠心分離操作を行うという一連の操作を3回繰り返すことによって、塩酸成分を洗浄除去した。その後、風乾、真空乾燥を経てプロトン化されたユニブルーA粉末(分子量484)を得た。
<重合反応>
100mL二口フラスコにジムロート冷却管、オイルバス、マグネチックスターラ、攪拌子及び窒素風船を装着した。プロトン化されたユニブルーA粉末1.8g(3.72×10-3mol)とN,N−ジメチルホルムアミド20mLを反応容器内に入れた。そこに分子量が104のスチレン1.93g(1.86×10-2mol)を入れた。一口にセプタムをかぶせ、窒素風船を使用して反応容器内部を窒素ガスで置換した。攪拌速度200rpmで攪拌子を回転させ、オイルバス温度を80℃に設定した。ペルオキソニ硫酸アンモニウム0.01gをバイアルビン中でN,N−ジメチルホルムアミド3mLに溶解させ、それをシリンジで採取し、反応容器のセプタムから注入し、4時間攪拌した。反応終了後、反応容器温度が40℃以下に冷えたことを確認し、反応容器内の内容物をアセトン100mL中に入れ、沈殿物を生成させた。
生成した沈殿物を100mL遠沈管2本に分け入れ、3000rpmで10分間遠心分離操作を行った。上澄み液を捨てさらにアセトン50mLを入れ遠心分離を行う操作を3回繰り返した。アセトン50mLを用いて遠心分離を行った後、風乾、真空乾燥を経て重合物を得た。
<スルホン化反応>
二口100mL丸底フラスコにリービッヒ冷却管、攪拌子、マグネチックスターラ及び氷浴を装着した。フラスコ内部に先に得られた重合物を入れ、ピリジン20mLを入れた。次いで、100rpmで15分間攪拌させた。発煙硫酸2mLをメスピペットを用いて内部に入れた。マグネチックスターラを用いて200rpmで2時間攪拌した。内容物をスポイトで取り、水100mL中に滴下した。生成した沈殿を100mL遠沈管2本に入れ3000rpmで20分間遠心分離を行った。その後上澄みを捨てさらに50mL×2本分の水で同様に遠心分離操作を行うことを3回繰り返した。最後にアセトン50mLで遠心分離し、風乾を行った。
<キャスト膜調製>
得られた樹脂をN,N,ジメチルホルムアミド30mLに溶解させ、ガラス板状にバーコータを用いて引き伸ばし、風乾後、真空乾燥を4時間施し、プロトン伝導膜であるキャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムをピンセットで剥離し、0.02mol/lの塩酸に浸して保存した。
実施例1のプロトン伝導膜に含まれる繰り返しユニットである重合性モノマーの構造式を下記化6に示す。
Figure 0004664641
(比較例)
プロトン伝導膜としてパーフルオロアルキルスルホン酸型膜(DuPont社製の商品名;Nafion117膜)を用意した。
<メタノールクロスオーバ測定>
内径4cm、長さ5cmの円筒管の端を閉じることにより、開口部に幅2cmの淵を有し本体に内径6mmの穴を有するガラス管2本を準備した。2本のガラス管の間に比較例のプロトン伝導膜を挟み込み、片側の槽をA槽とし、もう一方の槽をB槽とした。A槽に3%メタノール水溶液を充填し、内径6mmの穴にシリコンゴムを詰め込んだ。B槽の穴にもシリコンゴムを詰め込み、その上から針付のゴム風船を突き刺しておいた。A,B槽を合わせたときをスタート0秒とする。20分ごとにB槽のゴム栓にマイクロシリンジを突き刺して内部のガスを20マイクロリットル採取し、ガスクロマトグラフに掛け、メタノールの濃度(ppm)を定量した。横軸に時間(分)を、縦軸にメタノール濃度(ppm)をプロットし、100分後のメタノール濃度を時間で除した値をメタノール拡散速度D0(ppm/分)とした。
同様な測定を実施例1のプロトン伝導膜を用いて測定し、そのときの拡散速度をD1とする。(D0/D1)からメタノールクロスオーバ抑制比を算出し、その結果を下記表1に示す。
<プロトン伝導性の測定>
以下の手順に従って電気伝導度測定用セルを作製した。
(A)まず、白金電極を作製するためのセルを製造した。中央部に貫通した液だめ(縦0.5cm×横1.0cm×深さ1.0cm)を有するテフロン(登録商標)板(縦3.5cm×横4.5cm×高さ1.0cm)2枚を用意した。電極である白金箔(厚み0.30mm)を0.5cm×2.0cmにカットし、両面テープでテフロン(登録商標)板液だめの0.5cm辺と白金箔の0.5cmの辺が正確に一致するように貼り付けた。電極に液だめ側の端から0.7cmの位置に保護テープを貼り、電極面積が0.35cm2となるように調整した。
(B)次いで、白金黒のめっきを行った。白金電極の表面積を大きくするために、次の手順により白金電極表面に白金黒をめっきした。すなわち、1/40Nの塩酸30mLに、酢酸鉛(Pb(CH3COO)2・3H2O):0.008gと、塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O):1gとを溶解させたものをめっき液とした。このめっき液中に上記(A)工程で作製した白金電極付テフロン(登録商標)板を1個ずつ浸し、浴電圧:3.0V、電流:14mA、電流密度:40mA/cm2となるように、直流電圧電流発生装置(アドバンテスト製R1644)をセットした。そして、2電極を交互に少しずつめっきするために、約1分ごとに装置側のプラス(+)とマイナス(−)の設定スイッチを入れ換えることにより電極のプラス(+)とマイナス(−)を交換する操作を50分間続けた。その後、2電極を蒸留水で洗浄し、10%希硫酸中において白金黒極板をマイナス極(−)に、また、別の新しい白金極板をプラス極(+)にして10分間3Vの電圧をかけることによりめっき液や吸着した塩素を除去した。最後に蒸留水で電極をよく洗浄し、蒸留水中に保存した。
(C)次いで、交流法(コール・コールプロット)による電気伝導度の測定を行った。比較例のプロトン伝導膜を、前述したA,B工程で作製したセルの液だめと白金黒電極を覆う大きさ、すなわち15mm×12mmの大きさにカットした後、2枚のテフロン(登録商標)板の間に挟んだ。次いで、プロトン伝導膜の両側の液だめに0.03N塩酸を約0.3mL入れて塩酸が伝導膜の両側から伝導膜全体を覆うようにした。セルをスタンドに固定し、白金黒電極をソーラトロン−インピーダンス/ゲイン−フェイスアナライザーSI1260に接続し、交流電流を高周波側から低周波側へ電流の周波数を小さくしながら比較例のプロトン伝導膜に流した。この時の抵抗値を実数軸および虚数軸に対してプロットした(コール・コールプロット)。一般的にグラフはこの場合、高周波側で半円を描いた後、低周波側では右上がりの直線の形となる。この半円の直径がサンプルの抵抗を表わしている。本測定においては、この半円の半径を見積り、その値から再生ナフィオン(Nafion)膜−H型の電気伝導度を計算した。
この測定によって膜抵抗を得た。膜中で電流が流れる距離はセルの構造上0.5cmである。従って、膜の電気伝導度は次の式(1)により求められる。
X=D/(S×R) (1)
但し、Xはプロトン伝導度(W-1・cm-1)である。Dは電極間距離(cm)で、この場合、0.5(cm)である。Sは膜断面積(cm2)で、この場合、膜幅1.0(cm)と膜厚(cm)との積から算出される。Rは膜抵抗値(W)である。
上記(1)式より求めた比較例のプロトン伝導膜のプロトン伝導度をS0とした。実施例1のプロトン伝導膜について同様な測定を行ったときのプロトン伝導度をS1とした。(S1/S0)からプロトン伝導度相対比を算出し、その結果を下記表1に示す。
<耐熱分解性の測定>
比較例1のプロトン伝導膜を10mg採取し、TG-DTA装置を用いて空気中の酸化分解温度を測定した。昇温速度は10℃/minで行った。そのときの酸化分解温度をT0(℃)とした。実施例1のプロトン伝導膜についても同様に測定を行い、そのときの酸化分解温度をT1とした。(T1/T0)から耐熱分解性相対比を算出し、その結果を下記表1に示す。
<耐酸化分解性の測定>
100mlビーカをオイルバス中に固定し、過酸化水素水3%とFeSO4が40ppmから成る酸化性水溶液をビーカ内に入れた。オイルの温度を60℃に合わせた。比較例のプロトン伝導膜を3.0gカットし、重量を測定し、W0とした。膜のカットサンプルを先の酸化性溶液中に入れ、10時間静置した。その後サンプルを引き上げ、水洗、風乾、真空乾燥を施した後の重量をW1とし、重量減量WF=W0−W1を定義した。実施例1の高分子電解質膜について同様にして測定した重量減少量をWCと定義した。(WF/WC)から耐酸化分解性比を算出し、その結果を下記表1に示す。耐酸化分解性比(WF/WC)が1より大きく、実施例1のプロトン伝導膜における耐酸化分解性が比較例のフッ素系膜よりも大きいことがわかった。
(実施例2〜5)
実施例1の重合性モノマーに替わって下記化7に示したR1,R2及びR3を有する化学構造の重合性モノマーを有するプロトン伝導膜をそれぞれ調製し、実施例1と同様に膜物性の評価をそれぞれ行った。その結果を下記表1に示す。
なお、表2に、実施例1〜5の繰り返しユニットの重合数V,W,Xを示す。
Figure 0004664641
Figure 0004664641
Figure 0004664641
表1から明らかなように、実施例1〜5の非フッ素系プロトン伝導膜は、比較例のフッ素系プロトン伝導膜に比較してメタノールクロスオーバ抑制効果、プロトン伝導性、耐酸化分解性及び耐熱分解性に優れていることが理解できる。
次いで、実施例1〜5及び比較例のプロトン伝導膜を用いて直接メタノール型燃料電池を作製し、電流電圧特性を評価した。
<単セルの組み立て>
炭素粉末からなる担体に白金-ルテニウムを担持させ、アノード触媒を調製した。アノード触媒を含むスラリーをカーボンペーパに塗布し、カーボンペーパ上にアノード触媒層を形成した(アノード触媒担持量:2mg/cm2)。
一方、炭素粉末からなる担体に白金を担持させ、カソード触媒を調製した。カーボンペーパにカソード触媒を含むスラリーを塗布してカソード触媒層を形成した(カソード触媒担持量:1mg/cm2)。
実施例1〜5及び比較例のプロトン伝導膜それぞれから、プロトン伝導膜の一方の面にアノード触媒層を配置し、かつ他方の面にカソード触媒層を配置し、これらを熱圧着させることにより電極面積5cm2の膜電極(MEA)を作製した。
得られた各膜電極をサーペンタイン流路を有する2枚のカーボン製セパレータで挟んだ後、さらにこれらを集電体2枚で挟み込んだ。これらをボルト締めし、評価用単セルとした。
<単セル評価>
先の単セルを直接メタノール型燃料電池評価装置に装着した。3%のメタノール水溶液を液体燃料として2.5mL/minの流速で単セルのアノード側へ送液した。カソード側空気流量20mL/minで空気を供給した。単セル温度75℃における電流-電圧曲線を観察し、その結果を図2に示す。
図2から明らかなように、実施例1〜5の化学構造を有するプロトン伝導膜を備えた燃料電池における電流-電圧特性が比較例に比べて高かった。これにより、本発明が直接メタノール型燃料電池の出力向上に効果を発揮していることがわかった。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明に係る燃料電池の一実施形態である直接メタノール型燃料電池を示す模式図。 実施例1〜5及び比較例の直接メタノール型燃料電池についての電流電圧特性を示す特性図。
符号の説明
1…アノード触媒層、2…カソード触媒層、3…固体電解質膜、4…アノード拡散層、5…カソード拡散層、6…膜電極接合体(MEA)。

Claims (7)

  1. 下記化1で表される繰り返し単位を含むポリマーを含有することを特徴とするプロトン伝導膜
    Figure 0004664641
    但し、R1は芳香族性官能基で、R2はイオン性芳香族官能基で、R3は芳香族性官能基であり、Vは1〜120のうちから選ばれる整数で、Wは1〜400のうちから選ばれる整数で、かつXは10〜4000のうちから選ばれる整数である。
  2. 前記R1はベンゼン誘導型官能基であることを特徴とする請求項1記載のプロトン伝導膜
  3. 前記R2はアントラキノン誘導型官能基であることを特徴とする請求項1または2いずれか1項記載のプロトン伝導膜
  4. 前記R3はベンゼン誘導型官能基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のプロトン伝導膜
  5. 前記R1はベンゼン誘導型官能基で、前記R2はアントラキノン誘導型官能基で、前記R3はベンゼン誘導型官能基であることを特徴とする請求項1記載のプロトン伝導膜
  6. 前記Vは20〜80のうちから選ばれる整数で、前記Wは40〜300のうちから選ばれる整数で、前記Xは80〜3000のうちから選ばれる整数であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のプロトン伝導膜
  7. アノードと、
    カソードと、
    前記アノード及び前記カソードの間に配置され、請求項1〜6のいずれか1項記載のプロトン伝導膜と
    を具備することを特徴とする燃料電池。
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