本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば、生体内に導入されて輸液、気体輸送、排液等を行うチューブや回路、内部に治療器具や観察器具を包摂して生体内に導入されるチューブ、生体表面を被覆して生体表面を保護または治療する被覆材、薬剤等を包摂して生体内に導入される担体、一部が生体内に導入されて、生体内からの排液を収容するバッグといった医療デバイスや、細胞培養シート、組織再生用足場材料といったバイオテクノロジー用デバイスや、保湿シート、保湿材といった農業/ガーデニング用デバイスや、濾過デバイスや、生物付着防止材料、タンパク質付着防止材料、脂質付着防止材料といった防汚デバイスや、顔用パック等の美容デバイス等である。本発明の低含水性軟質デバイスは、用途に応じて、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状、容器形状、粒状等、様々な形態に成型される。
本明細書において、「原材料」とは、本発明の低含水性軟質デバイスを構成するために供される各種モノマー等の原材料またはその混合物であり、溶媒、その他の添加剤などを含めた混合物を含めたものを指す。場合により、染料も含めて「原材料」ということもあるが、主に染料以外の原材料の混合物を指す。
本発明の低含水性軟質デバイスにおいて、低含水性とは含水率が10質量%以下であることを意味する。また、軟質とは引張弾性率が10MPa以下であることを意味する。
ここで、含水率は、例えば、フィルム形状の試験片の乾燥状態の質量と、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試験片の表面水分を拭き取った際の質量(湿潤状態での質量)とから、{(湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量)/湿潤状態での質量}により与えられる。
本明細書において、湿潤状態とは、試料を室温(23℃)の純水あるいはホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した状態を意味する。湿潤状態での物性値の測定は、試料を純水中あるいはホウ酸緩衝液中から取り出した後、可及的速やかに実施される。
また、本明細書において、乾燥状態とは、湿潤状態の試料を40℃で16時間真空乾燥した状態を意味する。該真空乾燥における真空度は2hPa以下とする。乾燥状態での物性値の測定は、上記真空乾燥の後、可及的速やかに実施される。
本明細書においてホウ酸緩衝液とは、特表2004−517163号公報の実施例1中に記載の「塩溶液」である。具体的には塩化ナトリウム8.48g、ホウ酸9.26g、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム十水和物)1.0g、およびエチレンジアミン四酢酸0.10gを純水に溶かして1000mLとした水溶液である。
本発明の低含水性軟質デバイスは低含水性であることから、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイスである場合、生体表面に貼付されている間に使用者が感じる乾燥感が小さく、装用感に優れるという特徴を有する。また本発明の低含水性軟質デバイスは低含水性であることから、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体に直接接触し得る医療デバイスや細胞培養シート等のバイオテクノロジー用デバイスである場合、細菌の繁殖リスクが小さいという利点を有する。含水率は5質量%以下がより好ましく2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が最も好ましい。含水率が高すぎると、乾燥感が大きくなったり、細菌の繁殖リスクが高まるおそれが懸念されるため、好ましくない。
本発明の低含水性軟質デバイスの引張弾性率は、0.01MPa以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、一方で5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましく、2MPaがさらに好ましく、1MPaがよりいっそう好ましく、0.6MPaが最も好ましい。引張弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。引張弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引張弾性率2MPa以下になると良好な装用感が得られ、1MPa以下になるとさらに良好な装用感が得られるので好ましい。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質デバイスの引張伸びは100%〜1000%が好ましく、200%〜700%がより好ましい。引張伸びが小さいと、低含水性軟質デバイスが破れやすくなるので好ましくない。引張伸びが大きすぎる場合には、低含水性軟質デバイスが変形しやすくなる傾向があり好ましくない。引張伸びは、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質デバイスは、ホウ酸緩衝液に対する動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)が100゜以下が好ましく、90゜以下がより好ましく、80゜以下がさらに好ましい。本発明の低含水性軟質デバイスが例えば軟質眼用レンズといった眼用医療デバイスである場合、装用者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、動的接触角はより低いことが好ましく、65゜以下が好ましく、60゜以下がより好ましく、55゜以下がさらに好ましく、50゜以下が一層好ましく、45゜以下が最も好ましい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
また、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイスである場合、装用者の皮膚等への貼り付きを防止するためには、低含水性軟質デバイスの表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。ここで、液膜保持時間とは、ホウ酸緩衝液に浸漬した低含水性軟質デバイスを液から引き上げ、空中に表面が垂直になるように保持した際に、低含水性軟質デバイス表面の液膜が切れずに保持される時間である。液膜保持時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がさらに好ましく、20秒以上が最も好ましい。
また、本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体内に挿入して用いられる医療デバイスである場合、低含水性軟質デバイスの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。本明細書の実施例に示した方法で測定される人指で触った感応評価で易滑性を示すことが好ましい。
低含水性軟質デバイスの防汚性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、および人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm2以下が好ましく、4μg/cm2以下がより好ましく、3μg/cm2以下が最も好ましい。
本発明の低含水性軟質デバイスが例えば生体表面に貼付して用いられる医療デバイス、又は軟質眼用レンズや眼内レンズといった眼用医療デバイスである場合、低含水性軟質デバイスは、高い酸素透過性を有することが好ましい。したがって、酸素透過係数[×10−11(cm2/sec)mLO2/(mL・hPa)]は50〜2000が好ましく、100〜1500がより好ましく、200〜1000がさらに好ましく、300〜700が最も好ましい。酸素透過性を大きくしすぎると機械物性などの他の物性に悪影響が出る場合があり好ましくない。酸素透過係数は、乾燥状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質デバイスは、所望の形状(例えば、チューブ形状、シート状、フィルム状、収納容器形状、粒状等)の成型体(以下、基材と呼ぶ)を含み、該基材の表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層が形成されていてもよい。
基材は、表面にコーティングされるポリマーとの間に共有結合を介さずに強固な密着性を得るため、また、好ましくは良好な酸素透過性を有するために、ケイ素原子を5質量%以上含むことが好ましい。ケイ素原子の含有量(質量%)は、乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として算出される。基材のケイ素原子含有率は5質量%〜36質量%が好ましく、7質量%〜30質量%がより好ましく、10質量%〜30質量%がさらに好ましく、12質量%〜26質量%が最も好ましい。ケイ素原子の含有率が大きすぎる場合は引張弾性率が大きくなる場合があり好ましくない。
基材におけるケイ素原子の含有量は以下の方法で測定することができる。十分乾燥した基材を白金るつぼに秤取し、硫酸を加えてホットプレートおよびバーナーで加熱灰化する。灰化物を炭酸ナトリウムで融解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加え水で定容する。この溶液について、ICP発光分光分析法によりケイ素原子を測定し、基材中の含有量を求める。
基材に用いるモノマーとしては、1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分Aの重合体、または、上記成分Aおよび重合性官能基を有する化合物であって、成分Aとは異なる化合物との共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
成分Aの数平均分子量は6000以上であることが好ましい。成分Aのポリシロキサン化合物の数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れた低含水性軟質デバイスが得られることから、8000以上が好ましい。成分Aの数平均分子量は8000〜100000の範囲にあることが好ましく、9000〜70000の範囲にあることがより好ましく、10000〜50000の範囲にあることが一層好ましい。成分Aの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に6000未満では耐折り曲げ性が低くなる。成分Aの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
本発明の低含水性軟質デバイスが、例えば生体内に挿入される光学製品の表面(例えば内視鏡先端に設けられたカメラ)に用いられる医療デバイスである場合、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに低含水性軟質デバイスは、投影機で観察した場合、濁りがほとんど、または、全く観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。
成分Aの分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1.5以下が最も好ましい。成分Aの分散度が小さい場合、他の成分との相溶性が向上し、得られる低含水性軟質デバイスの透明性が向上する、得られる低含水性軟質デバイスに含まれる抽出可能な成分が減る、低含水性軟質デバイスの基材の成型に伴う収縮率が小さくなる、などの利点が生じる。
基材の成型に伴う収縮率は、例えば基材がフィルム形状であり、該基材を板間重合で成型する場合、次式により算出した対応する4辺の成型比の平均値によって評価される。
1辺の成型比=(成型後の1辺の長さ)/(型の空隙部の1辺の長さ)
ここで、「型の空隙部」とは、フィルムを成型するのに用いられる、該フィルムの形状に対応する形状の空隙部であり、通常は2枚の板とガスケットで構成される空隙部である。
また、例えば基材が球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状)であり、該基材をモールド重合で成型する場合、成型に伴う収縮率は、成型比=[直径]/[モールドの空隙部の直径]で評価することができる。ここで直径とは球冠の縁部が構成する円の直径である。
成型比は、1に近いほど高品位の低含水性軟質デバイスを安定に製造することが容易となる。成型比は0.85〜2.0の範囲が好ましく、0.9〜1.5の範囲がより好ましく、0.91〜1.3の範囲が最も好ましい。
また、本発明の低含水性軟質デバイスの乾燥による収縮率(以下、収縮率)は、例えば基材がフィルム形状の場合、ホウ酸緩衝液による湿潤状態(保管前)の試験片の4辺の長さと、この試験片を所定環境下に所定時間保管した後の試験片の4辺の長さとを測定し、次式により算出した対応する各辺の収縮率の平均値によって評価される。
1辺の収縮率(%)={(保管前の1辺の長さ)−(保管後の1辺の長さ)}/(保管前の1辺の長さ)×100
さらに、例えば基材が球冠形状(球面の一部を平面で切り取った形状)である場合、収縮率は、収縮率(%)=[保管後の直径]/[保管前の直径]で評価することができる。ここで直径とは球冠の縁部が構成する円の直径である。
収縮率は、成型体の形状変化が少ないことから20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがよりいっそう好ましく、1未満であることが最も好ましい。
本発明において、成分Aの数平均分子量は、クロロホルムを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量および分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。
なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。
成分Aは、複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物である。成分Aの重合性官能基の数は、1分子あたり2個以上であればよいが、より柔軟(低弾性率)な低含水性軟質デバイスが得られやすいという観点からは、1分子あたり2個が好ましい。特に分子鎖の両末端に重合性官能基を有する構造が好ましい。
成分Aの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイルという語はメタクリロイルおよびアクリロイルの両方を表すものであり、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートなどの語も同様である。
成分Aとしては、下記式(式A1)の構造を有するものが好ましい。
(式A1)中、X1およびX2はそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R1〜R8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L1およびL2は、それぞれ独立に2価の基を表す。aおよびbは、それぞれ独立に0〜1500の整数を表す。ただしaとbは同時に0ではない。
X1およびX2としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
R1〜R8の好適な具体例は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
L1およびL2としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも(式A1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(式LE1)〜(式LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(式LE1)、(式LE3)、(式LE9)および(式LE11)で表される基がより好ましく、下記式(式LE1)および(式LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(式LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(式LE1)〜(式LE12)は、左側が重合性官能基X1またはX2に結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
(式A1)中、aおよびbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。aおよびbはそれぞれ独立に0〜1500の範囲が好ましい。aとbの合計値(a+b)は、80以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。
R1〜R8が全てメチル基の場合、b=0であり、aは、80〜1500が好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。この場合、aの値は、成分Aのポリシロキサン化合物の分子量によって決まる。
本発明の成分Aは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
成分Aと共重合させる他の化合物・モノマーとしては、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分Bが好ましい。成分Bはフルオロアルキル基に起因する臨界表面張力の低下により、撥水撥油性の性質を持ち、これにより、低含水性軟質デバイス表面が生体の体液中のタンパク質や脂質などの成分によって汚染されることを抑える効果がある。また、成分Bは、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質デバイスを与える効果がある。成分Bのフルオロアルキル基の好適な具体例は、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。より好ましくは、炭素数2〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、オクタフルオロペンチル基、およびドデカフルオロオクチル基であり、最も好ましくはトリフルオロエチル基である。
成分Bの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質デバイスが得られる効果が大きいことから、成分Bとして最も好ましいのは(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、およびトリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。最も好ましくはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。
本発明のB成分は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
共重合体中における成分Bの好ましい含有量は、成分A100質量部に対して、10〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは20〜200質量部である。成分Bの使用量が少なすぎる場合は、得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり、耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
また、基材に用いる共重合体としては、成分Aおよび成分Bに加えて、成分Aおよび成分Bとは異なる成分(以下成分C)をさらに共重合させたものを用いてもよい。
成分Cとしては、共重合体のガラス移転点を室温あるいは0℃以下に下げるものがよい。これらは凝集エネルギ−を低下させるので、共重合体にゴム弾性と柔らかさを与える効果がある。
成分Cの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
成分Cとして、柔軟性や耐折り曲げ性などの機械的特性の改善のために好適な例は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびn−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートである。これらの中でアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはさらに好ましい。アルキル基の炭素数が大きすぎると得られる低含水性軟質デバイスの透明性が低下する場合があり好ましくない。
さらに、機械的性質、表面濡れ性、低含水性軟質デバイスの寸法安定性などを向上させるためには、所望に応じ、以下に述べるモノマーを共重合させることができる。
機械的性質を向上させるためのモノマーとしては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
表面濡れ性を向上させるためのモノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミドなどのアミド基を含有するモノマーが好ましい。
低含水性軟質デバイスの寸法安定性を向上させるためのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アクリルメタクリレートおよびこれらのメタクリレート類に対応するアクリレート類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
成分Cは、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
成分Cの好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.001〜400質量部、より好ましくは0.01〜300質量部、さらに好ましくは0.01〜200質量部、最も好ましくは0.01〜30質量部である。成分Cの使用量が少なすぎる場合は成分Cに期待する効果が得られにくくなる。成分Cの使用量が多すぎる場合は得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向がある。
さらにまた、基材に用いる共重合体として、成分Aに加えて、成分Mをさらに共重合させたものを用いてもよい。成分Mは、「1分子あたり1個の重合性官能基、およびシロキサニル基を有する単官能モノマー」である。
本明細書において、シロキサニル基とはSi−O−Si結合を有する基を意味する。
成分Mのシロキサニル基は直鎖状であることが好ましい。シロキサニル基が直鎖状であれば、得られる低含水性軟質デバイスの形状回復性が向上する。ここで直鎖状とは、重合性基を有する基と結合したケイ素原子を起点とする、一本の線状に連なるSi−(O−Si)n−1−O−Si結合で示される構造を指す(ただし、nは2以上の整数を表す)。得られる低含水性軟質デバイスが十分な形状回復性を得るためにはnは3以上の整数が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。ここで、「シロキサニル基が直鎖状である」とはシロキサニル基が上記の直鎖状構造を有し、かつ直鎖状構造の条件を満たさないSi−O−Si結合を有さないことを意味する。
基材は、数平均分子量が300〜120000である成分Mを含む共重合体を主成分とすることが好ましい態様の一つである。ここで、主成分とは乾燥状態の基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
成分Mの数平均分子量は、300〜120000であることが好ましい。成分Mの数平均分子量がこの範囲にあることで、柔軟(低弾性率)で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた基材が得られる。成分Mの数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れ、かつ形状回復性に優れた基材が得られることから、500以上がより好ましい。成分Mの数平均分子量は、1000〜25000の範囲にあることがより好ましく、5000〜15000の範囲にあることが一層好ましい。成分Mの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性や形状回復性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に500未満では耐折り曲げ性、および形状回復性が低くなることがある。成分Mの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
成分Mの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
成分Mとしては、下記式(式ML1)の構造を有するものが好ましい。
式中、X3は重合性官能基を表す。R11〜R19はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、および炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L3は2価の基を表す。cおよびdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。
X3としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、およびシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
また、成分Mの重合性官能基は、良好な機械物性の低含水性軟質デバイスが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と共重合可能であることがより好ましく、成分Mと成分Aが均一に共重合されることで良好な表面特性を有する低含水性軟質デバイスが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と同一であることがさらに好ましい。
R11〜R19の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、およびノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質デバイスに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素およびメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
L3としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも(式ML1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(式LE1)〜(式LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(式LE1)、(式LE3)、(式LE9)および(式LE11)で表される基がより好ましく、下記式(式LE1)および(式LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(式LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(式LE1)〜(式LE12)は、左側が重合性官能基X3に結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
(式ML1)中、cとdの合計値(c+d)は、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。
R11〜R18が全てメチル基の場合、d=0であり、cは、3〜700が好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。この場合、cの値は、成分Mの分子量によって決まる。
本発明の低含水性軟質デバイスの基材において、成分Mは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の低含水性軟質デバイスの基材が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、適度に柔らかい低弾性率の基材を実現することができる。これに対し、成分Mの含有量が少なすぎると架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が多すぎると軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
また、本発明の低含水性軟質デバイスの基材において、成分Mと成分Aとの質量比は、成分A100質量部に対して成分Mが5〜200質量部、より好ましくは7〜150質量部、最も好ましくは10〜100質量部、であることが好ましい。成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し5質量部を下まわると、架橋密度が高くなり、基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し200質量部を超えると、軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
本発明の低含水性軟質デバイスおよびこれに用いる組成物は、金属塩でない酸性基を有する染料として成分Dを含有する。ここで、本発明では酸性基という語を広義に用いており、塩となったものを含めた意としており、また、金属塩でない酸性基には非金属塩の酸性基が含まれるが、塩でない酸性基を有する染料であることがより好ましく、他の原子やイオンにより置換等されていないスルホン酸基やカルボキシル基等の酸性基そのものであることがさらに好ましい。金属塩である酸性基を有する染料を含有すると、デバイスが低含水性を保つために親水性成分の使用量を最小限に低減させることが影響して、原材料への染料の溶解性が著しく低下することから好ましくない。
染料中の金属塩でない酸性基の比率は、酸性基全体に対して10%以上が好ましい。原材料への染料の溶解性の高さから、酸性基全体に対して30%以上が好ましく60%以上が最も好ましい。
本発明において、染料とは、特定の液体に溶解させて着色に用いる有色の物質を指し、通常電子供与基を有し、着色効果がある。親水性基として酸性基を有することから、いわゆる酸性染料である。一般に、酸性染料は酸性基がナトリウム塩等の金属塩となっている。
酸性基としては、その酸性基を含んだ染料が原材料に対して適度な溶解性を示す酸性基であればいずれの酸性基でも良く、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホウ酸基が挙げられるが、原材料への溶解性の高さからカルボキシル基が好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。
本発明においては、かかる酸性基が金属塩の状態では親水性成分の少ない原材料に溶解し難いことから、これを金属塩ではない酸性基にしたところ、かかる原材料に溶解して容易に混合し得ることを見出したものである。本発明においては、かかる原材料と染料との混合物を共重合させて基材を得る方法が好ましく用いられることから、染料は重合性官能基、すなわち二重結合を含む官能基を含む構造であることが好ましい。染料が重合性官能基を有し、原材料と共重合することにより、染料の基材からの溶出を防ぐことができ、視認性や安全性を保持できるという利点がある。
酸性基を有する染料の具体例として、モノアゾ系染料(ベンゼン型のYellow9、OrangeIV等、ピラゾロン系のPolar Yellow G等)、ジスアゾ系染料(第一次ジスアゾ染料系のAcid Brown,Fast Brown G等、第二次ジスアゾ染料系のBiebrich Scarlet B,Nerol 2B等)、アントラキノン系染料(Alizarin Saohirol B,Anthraquinone Violet,Carbolan Gren G等)、トリフェニルメタン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、キサンテン系染料、アジン系染料、キノリン系染料等があるが、これらに限定されない。これらの中でも、堅牢度が良く、退色しにくく、しかも高着色濃度で染料の析出が少ない染色低含水性軟質デバイスを得るという点から、アントラキノン系染料が好ましい。
金属塩でない酸性基を有する染料である成分Dとしては、下記式(式1)の構造を有するものが好ましい。
式1中の全てのアミノ基は塩になっていてもよい。
式中、W1は重合性官能基を含む基、W2は金属塩でない酸性基を表す。
式中、W1に含まれる重合性官能基は他の原料モノマーと共重合可能であればいずれの重合性官能基でも良く、メタクリロイロキシ基、アクリロイロキシ基、スチリル基、ビニル基などが挙げられるが、共重合性の高さからビニル基、メタクリロイロキシ基およびアクリロイロキシ基が好ましく、ビニル基が最も好ましい。また、式中W1は酸性基を含んでいてもよい。
式中、W2はW2を含んだ染料が他の原材料に対して適度な溶解性を示す酸性基であればいずれの酸性基でも良く、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホウ酸基が挙げられるが、当該原材料への溶解性の高さからカルボキシル基が好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。
具体例としては、下記式(式2〜式7)を挙げることができる。
ここで、式2〜式7中におけるそれぞれのアミノ基は塩になっていてもよい。
また、式1中W2について、金属塩を有する酸性基を金属塩でない酸性基に換える方法として、金属塩を有する酸性基を持つ染料を酸溶液で分液洗浄処理して金属塩を含まない酸性基に換える方法、イオン交換樹脂を用いて金属塩でない酸性基に換える方法などがあるが、操作の簡便性の点から酸溶液で分液洗浄処理する方法が好ましい。
酸溶液としては、特に限定はなく、例として塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。酸溶液のpHは0〜5が好ましく、より好ましくは1〜3である。
本発明において使用される原料モノマーとして好適なものは、上記成分A、成分B、成分C、成分Mを挙げることができる。
本発明の低含水性軟質デバイスは、紫外線吸収剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬および栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤等の成分をさらに含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態または共重合形態で含有され得る。
紫外線吸収剤を含む場合、低含水性軟質デバイスを皮膚用被覆材として用いたとき、装用者の皮膚を有害紫外線から保護することができる。
上記成分を共重合した場合、すなわち重合性基を有する紫外線吸収剤などを他の原材料と共重合して使用した場合は、該成分が基材に固定化され、溶出の可能性が小さくなるので好ましい。
基材は、成分A、成分B、成分Dに加え、上記の通り必要に応じ成分M、成分Cからなるものが好ましい。成分Cとして紫外線吸収剤の効果を有するものを選んでもよく、これに加えて紫外線吸収剤以外の2種類以上の成分C(以下、成分Ck)を用いることが好ましい。その場合、成分Ckとしては、炭素数1〜10のアクリル酸エステル、アクリル酸塩などのアクリル酸化合物から少なくとも1種類、上記表面濡れ性を向上させるためのモノマーから少なくとも1種類が選ばれることが好ましい。成分Ckを2種類以上使用することにより、染料である成分Dおよび紫外線吸収剤との親和性が増し、透明な基材を得ることが容易になる。
紫外線吸収剤の好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。染料である成分Dの好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.00001〜5質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.5質量部である。紫外線吸収剤や染料の含有量が少なすぎる場合は、紫外線吸収効果や染色効果が得られにくくなる。逆に、多すぎる場合はこれらの成分を基材中に溶解せしめることが難しくなる。成分Ckの好ましい使用量は、それぞれ、成分A100質量部に対して、0.1〜100質量部、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。成分Ckの使用量が少なすぎる場合は、紫外線吸収剤や染料との親和性が不足して透明な基材を得るのが難しくなる場合がある。成分Ckの使用量が多すぎる場合も得られる低含水性軟質デバイスに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向があり好ましくない。
また、本発明の低含水性軟質デバイスの基材は、架橋度が2.0〜18.3の範囲であることが好ましい。架橋度は、下記式(式Q1)で表される。
(式Q1)において、Qnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計ミリモル量、Wnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計質量(kg)を表す。また、モノマーの分子量が分布を有する場合は、数平均分子量を用いてミリモル量を計算することとする。
本発明の基材の架橋度が、2.0より小さくなると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなることがあり、18.3より大きくなると硬すぎて装用感又は使用感が悪くなる傾向があるので好ましくない。架橋度のより好ましい範囲は3.5〜16.0であり、さらに好ましい範囲は8.0〜15.0であり、最も好ましい範囲は9.0〜14.0である。
低含水性軟質デバイスの基材、例えば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状(レンズ形状)、収納容器形状、または粒状等の成型体を製造する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、いったん、丸棒や板状の重合体を得て、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト重合法などを使用することができる。低含水性軟質デバイスを切削加工で得る場合には、低温での冷凍切削が好適である。
一例として、成分Aを含む原料組成物をモールド重合法により重合してシート状またはフィルム状の低含水性軟質デバイスを製造する方法について、次に説明する。まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に原料組成物を充填する。モールド部材の材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。光重合を行う場合は光学的に透明な素材が好ましいので、樹脂またはガラスが好ましく使用される。モールド部材の形状や原料組成物の性状によっては、低含水性軟質デバイスに一定の厚みを与え、かつ、空隙に充填した原料組成物の液モレを防止するために、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドについて、続いて紫外線、可視光線またはこれらの組み合わせなどの活性光線を照射するか、もしくはオーブンや液槽中などで加熱することにより、充填した原料組成物を重合する。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、または加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様は、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、低含水性軟質デバイスの光学的な均一性および品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
重合に際しては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤または光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、およびこれらの金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独で、または混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で5質量%までとすることが好ましい。
重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、テトラヒドロリナロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびポリエチレングリコール等のアルコール系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルおよびポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチルおよび安息香酸メチル等のエステル系溶剤;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタンおよびノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;シクロへキサンおよびエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;並びに石油系溶剤が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の低含水性軟質デバイスは、基材表面の少なくとも一部に、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層(以下、コーティング層と呼ぶ)が形成されていてもよい。コーティング層を有することで、低含水性軟質デバイス表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与え、または不快な使用感を抑制することができる。
本発明の低含水性軟質デバイスのコーティング層は、基材との間に共有結合を有する必要はない。簡便な工程での製造が可能となることから、コーティング層は基材との間に共有結合を有さないことが好ましい。コーティング層は、基材との間に共有結合を有さなくても、実用的な耐久性を有する。
コーティング層は、下記に詳細に説明する酸性ポリマー溶液(「溶液」は、水溶液を意味する)、および塩基性ポリマー溶液(「溶液」は、水溶液を意味する)で基材表面を処理することにより形成することができる。ここで、水溶液とは水を主たる成分とする溶液である。
本発明の酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液は、通常、1種(1種とは、1の合成反応により製造されたポリマーまたはポリマー群を意味する。1種(同一)のポリマーであっても、濃度が異なる溶液は1種とはみなさない。また、構成するモノマー種が同一であっても、配合比を変えて合成したポリマーの溶液は1種ではない)のポリマーを含有する溶液を意味する。
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー、および1種以上の塩基性ポリマーからなることが好ましい。2種以上の酸性ポリマーまたは2種以上の塩基性ポリマーを用いると、低含水性軟質デバイス表面に易滑性や防汚性などの性質を発現させやすいためにより好ましい。特に2種以上の酸性ポリマーと1種以上の塩基性ポリマーを使用した場合にその傾向が強まるのでさらに好ましい。
コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理を1回以上、および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を1回以上行うことにより形成されることが好ましい。
また、コーティング層は、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理を、好ましくはそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回行うことにより基材の表面に形成される。酸性ポリマー溶液による処理の回数と塩基性ポリマー溶液による処理の回数は異なっていてもよい。
本発明の低含水性軟質デバイスにおいては、1種以上の酸性ポリマー溶液による処理および1種以上の塩基性ポリマー溶液による処理が合計2回または3回という極めて少ない回数で優れた濡れ性や易滑性を付与しうる。これは製造工程の短縮化という観点から、工業的に非常に重要な意味を持つ。その意味で、本発明の低含水性軟質デバイスにおいて、酸性ポリマー溶液による処理の回数および塩基性ポリマー溶液による処理の回数の合計は2回または3回が好ましい。
本発明の低含水性軟質デバイスにかかるコーティング層は、2種の酸性ポリマー溶液による処理を各1回および塩基性ポリマー溶液による処理を1回行うことが好適である。
塩基性ポリマーとしては、塩基性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。塩基性を有する基としてはアミノ基およびその塩が好適である。たとえば、このような塩基性ポリマーの好適な例は、ポリ(アリルアミン)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(N,N−ジアルキルアミノエチルメタクリレート)などのアミノ基含有(メタ)アクリレート重合体、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)などのアミノ基含有(メタ)アクリルアミド重合体およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記塩基性ポリマーを構成する塩基性モノマーどうしの共重合体、あるいは塩基性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
塩基性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する塩基性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する塩基性モノマーとして好適なものを例示すれば、アリルアミン、ビニルアミン(前駆体としてN−ビニルカルボン酸アミド)、ビニルベンジルトリメチルアミン、アミノ基含有スチレン、アミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩である。これらの中でも重合性の高さからアミノ基含有(メタ)アクリレート、アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、およびこれらの塩がより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびこれらの塩が最も好ましい。
塩基性ポリマーは、第四級アンモニウム構造を有するポリマーであってもよい。第四級アンモニウム構造を有するポリマー化合物は、低含水性軟質デバイスのコーティングに使用されると、低含水性軟質デバイスに抗微生物性を付与することができる。
酸性ポリマーとしては、酸性を有する複数の基をポリマー鎖に沿って有するホモポリマーまたは共重合ポリマーを好適に用いることができる。酸性を有する基としては、カルボキシル基、スルホン酸基およびこれらの塩が好適であり、カルボキシル基およびその塩が最も好適である。たとえば、このような酸性ポリマーの好適な例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリ(ビニル安息香酸)、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびこれらの塩などである。以上はホモポリマーの例であるが、これらの共重合体(すなわち上記酸性ポリマーを構成する酸性モノマーどうしの共重合体、あるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体)も好適に用いることができる。
酸性ポリマーが共重合体である場合、該共重合体を構成する酸性モノマーとしては、重合性の高さという点でアリル基、ビニル基、および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが最も好ましい。該共重合体を構成する酸性モノマーとして好適なものを例示すれば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩である。これらの中で、(メタ)アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、およびこれらの塩がより好ましく、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸、およびその塩である。
塩基性ポリマーおよび酸性ポリマーのうちの少なくとも1種が、アミド基および水酸基から選ばれた基を有するポリマーであることが好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーがアミド基を有する場合、濡れ性のみならず易滑性のある表面を形成できるために好ましい。塩基性ポリマーおよび/または酸性ポリマーが水酸基を有する場合、濡れ性のみならず体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できるために好ましい。
上記酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーのうちの2種以上が、水酸基およびアミド基から選ばれた基を有するポリマーであることがより好ましい。すなわち、低含水性軟質デバイスが、水酸基を有する酸性ポリマー、水酸基を有する塩基性ポリマー、アミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた2種以上を含むことが好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、または体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果がより顕著に発現できるために好ましい。
また、コーティング層が、水酸基を有する酸性ポリマーおよび水酸基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種、ならびにアミド基を有する酸性ポリマーおよびアミド基を有する塩基性ポリマーから選ばれた少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。この場合、易滑性のある表面が形成される効果、および体液等に対する防汚性に優れた表面を形成できる効果の両方が発現できるために好ましい。
アミド基を有する塩基性ポリマーの例としては、アミノ基を有するポリアミド類、部分加水分解キトサン、塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
アミド基を有する酸性ポリマーの例としては、カルボキシル基を有するポリアミド類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
水酸基を有する塩基性ポリマーの例としては、キチンなどのアミノ多糖類、塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
水酸基を有する酸性ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースなどの酸性基を有する多糖類、酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体などを挙げることができる。
アミド基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーおよびN−ビニルカルボン酸アミド(環状のものを含む)が好ましい。かかるモノマーの好適な例としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、およびアクリルアミドを挙げることができる。これら中でも易滑性の点で好ましいのは、N−ビニルピロリドンおよびN,N−ジメチルアクリルアミドであり、N,N−ジメチルアクリルアミドが最も好ましい。
水酸基を有するモノマーの好適な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール(前駆体としてカルボン酸ビニルエステル)を挙げることができる。水酸基を有するモノマーとしては、重合の容易さの点で(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルモノマーはより好ましい。これらの中で、涙液に対する防汚性の点で好ましいのは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロール(メタ)アクリレートであり、中でもヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
塩基性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N−ビニルピロリドン共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N−ビニルピロリドン共重合体、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/N−ビニルピロリドン共重合体、(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N−ビニルピロリドン共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/N,N−ジメチルアクリルアミド共重合体である。
塩基性モノマーと水酸基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
酸性モノマーとアミド基を有するモノマーの共重合体として好ましい具体例は、(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸/グリセロール(メタ)アクリレート共重合体である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸/ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体である。
上記塩基性モノマーあるいは酸性モノマーと他のモノマーの共重合体を用いる場合、その共重合比率は[塩基性モノマーあるいは酸性モノマーの質量]/[他のモノマーの質量]が、1/99〜99/1が好ましく、2/98〜90/10がより好ましく、10/90〜80/20がさらに好ましい。共重合比率がこの範囲にある場合に、易滑性や涙液に対する防汚性などの機能を発現しやすくなる。
コーティング層の種々の特性、たとえば厚さを変えるために、酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量を変えることができる。具体的には、分子量を増すと、一般にコーティング層の厚さは増す。しかし、分子量が大きすぎる場合、粘度増大により取り扱い難さが増す可能性がある。そのため、本発明で使用される酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーは、2000〜150000の分子量を有することが好ましい。より好ましくは、分子量5000〜100000であり、さらに好ましくは、75000〜100000である。酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(水系溶媒)で測定されるポリエチレングリコール換算の質量平均分子量である。
コーティング層の塗布は、たとえばWO99/35520、WO01/57118または米国特許公報第2001−0045676号に記載されているような多数の方法で達成することができる。
本発明の低含水性軟質デバイスは、所望の形状(たとえば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状(レンズ状)、収納容器形状、粒状等)の成型体(基材)の表面に、1種以上の酸性ポリマー溶液と1種以上の塩基性ポリマー溶液をそれぞれ1〜5回、より好ましくはそれぞれ1〜3回、さらに好ましくはそれぞれ1〜2回塗布してコーティング層が形成されていてもよい。酸性ポリマー溶液の塗布工程と塩基性ポリマー溶液の塗布工程の回数は異なっていてもよい。
濡れ性、易滑性、および製造工程短縮の観点から、コーティング層の塗布は、下記の構成1〜4から選ばれた構成で施されることが好ましい。下記の表記は、成型体表面に左から順に各塗布工程が施されることを表している。
構成1:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
構成2:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成3:塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布
構成4:酸性ポリマー溶液の塗布/塩基性ポリマー溶液の塗布/酸性ポリマー溶液の塗布
これらの構成の中でも、構成1と構成4が、得られる低含水性軟質デバイスが特に優れた濡れ性を示すためにより好ましい。
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液を塗布するにあたって、基材の表面は、未処理であっても、処理済みであってもよい。ここで基材の表面が処理済みであるとは、基材の表面を公知の手法によって表面処理または表面改質することをいう。表面処理または表面改質の好適な例としては、プラズマ処理、化学的改質、化学的官能化、およびプラズマコーティングなどである。
本発明の低含水性軟質デバイスのコーティング層の塗布法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程3をこの順に含むものである。
<工程1>
1分子あたり複数の重合性官能基を有するポリシロキサン化合物であって数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である成分A、および、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分B、金属塩でない酸性基を有する染料を含む混合物を重合し、所望の形状(たとえば、チューブ形状、シート状、フィルム状、球冠形状、収納容器形状、粒状)の成型体を得る工程。
<工程2>
成型体を塩基性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該塩基性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
<工程3>
成型体を酸性ポリマー溶液に接触させた後、余剰の該酸性ポリマー溶液を洗浄除去する工程。
上記のように、成型体を酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液に順次接触させることにより、該成型体上に酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のポリマーを十分に洗浄除去することが好ましい。
該成型体を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に接触させる方法としては、浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。
溶液の接触を浸漬法で行う場合、浸漬時間は、多くの因子に応じて変化させることができる。酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液への成型体の浸漬は、好ましくは、1〜30分間、より好ましくは2〜20分間、そして最も好ましくは1〜5分間の間行う。
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液の濃度は、酸性ポリマーないし塩基性ポリマーの性質、所望のコーティング層の厚さ、およびその他の多数の因子に応じて変化させることができる。好ましい酸性ポリマーまたは塩基性ポリマーの濃度は、0.001〜10質量%、より好ましくは0.005〜5質量%、そして最も好ましくは0.01〜3質量%である。
酸性ポリマー溶液および塩基性ポリマー溶液のpHは、好ましくは2〜5、より好ましくは2.5〜4.5に維持することが好ましい。
余剰の酸性ポリマーおよび塩基性ポリマーの洗浄除去は、一般に清浄な水または有機溶媒を用いて、コーティング後の成型体をすすぐことによって行われる。すすぎは該成型体を水または有機溶媒に浸漬したり、水流や有機溶媒流にさらすことで行うことが好ましい。すすぎは、1つの工程で完了させてもよいが、すすぎの工程を複数回行うほうが、効率的であることが認められた。2〜5の工程ですすぎを行うのが好ましい。すすぎ溶液へのそれぞれの浸漬には、1〜3分間を費やすのが好ましい。
すすぎ溶液としては純水も好ましいが、コーティング層の密着を高めるために、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、そしてさらにより好ましくは2.5〜4.5のpHに緩衝された水溶液も好適に用いられる。
過剰のすすぎ溶液の乾燥または除去を行う工程を含んでも良い。成型体を大気雰囲気下に単に放置することによって、成型体はある程度乾燥させることができるが、緩やかな空気流を表面に送ることによって、乾燥を亢進することが好ましい。空気流の流速は、乾燥する材料の強度、および材料の機械的固定(fixturing)の関数として調節することができる。成型体を完全に乾燥してしまう必要はない。ここでは、成型体の乾燥よりはむしろ、成型体表面に密着した溶液の液滴を除去することが重要である。したがって、成型体表面上の水または溶液の膜が除去される程度にまで乾燥するだけでよく、その方が工程時間の短縮につながるために好ましい。
酸性ポリマーと塩基性ポリマーとは交互に塗布することが好ましい。交互に塗布することで、一方だけでは得られない優れた濡れ性や易滑性、さらには優れた装用感または使用感を有する低含水性軟質デバイスを得ることができる。
コーティング層は、非対称とすることができる。ここで「非対称」とは、低含水性軟質デバイスの第一の面と反対側の第二の面とで異なるコーティング層を有することをいう。ここで「異なるコーティング層」とは、第一の面に形成されたコーティング層と第二の面に形成されたコーティング層とが、異なる表面特性または機能性を有することをいう。
コーティング層の厚さは、塩化ナトリウムなどの一つまたはそれ以上の塩を酸性ポリマー溶液または塩基性ポリマー溶液に加えることによって、調節することができる。好ましい塩濃度は、0.1〜2.0質量%である。塩の濃度が上昇するにつれて、高分子電解質は、より球状の立体構造をとる。しかし濃度が高くなりすぎると、高分子電解質は、成型体表面に、沈着するとしても良好には沈着しない。より好ましい塩濃度は、0.7〜1.3質量%である。
本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえばチューブ形状に成型された軟質部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、生体内に挿入されて使用される輸液用チューブ、気体輸送用チューブ、排液用チューブ、血液回路、種々の部材を被覆する被覆用チューブ、カテーテル、ステント、シース、チューブコネクター、アクセスポート、または、内視鏡用被覆材等の医療デバイスを挙げることができる。
また、本発明の医療デバイスは、たとえば球冠形状をなす部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、軟質眼用レンズ(ソフトコンタクトレンズ)、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズといった眼用医療デバイスを挙げることができる。
また、本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば収納容器形状に成型された軟質部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、生体内に導入される薬剤担体、生体内に挿入されて使用されるカフ、または、生体内に挿入される上記排液用チューブと連結した排液バッグといった医療デバイスを挙げることができる。
また、本発明の低含水性軟質デバイスは、たとえば粒状をなす部材を備える。具体的には、本発明の低含水性軟質デバイスとして、土の表面や土の代わりに配置される粒状保湿材といった農業/ガーデニング用デバイスを挙げることができる。
この他にも、本発明の低含水性軟質デバイスは、上記例示した低含水性軟質デバイスに限定されず、様々な形状に成型して用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
分析方法および評価方法
(1)含水率
コンタクトレンズ形状の試験片を使用した。試験片をホウ酸緩衝液に浸漬し室温で24時間以上おいた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ”(登録商標))で拭き取って質量(Ww)を測定した。その後、試験片を真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し質量(Wd)を測定した。次式にて含水率を求めた。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
(2)水濡れ性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が鉛直方向になるように保持した際の表面の様子を目視観察し、下記の基準で判定した。ここで、直径とは、コンタクトレンズの縁部が構成する円の直径である。
A:表面の液膜が20秒以上保持する。
B:表面の液膜が10秒以上20秒未満で切れる。
C:表面の液膜が5秒以上10秒未満で切れる。
D:表面の液膜が1秒以上5秒未満で切れる。
E:表面の液膜が瞬時に切れる(1秒未満)。
(3)易滑性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、人指で5回擦った時の感応評価で行った。
A:非常に優れた易滑性がある。
B:AとCの中間程度の易滑性がある。
C:中程度の易滑性がある。
D:易滑性がほとんど無い(CとEの中間程度)。
E:易滑性が無い。
(4)着色濃度
コンタクトレンズ形状の試験片の着色濃度を目視観察し、下記の基準で判定した。
A:青色の着色がある。(“アキュビューオアシス”(登録商標)と同程度ないしそれよりも濃い着色)
B:AとCの中間程度の着色がある。
C:中程度の着色がある。(“アキュビューオアシス”よりも薄い着色)
D:着色がほとんど無い。
E:着色が無い。
また、着色濃度の経時変化観察を下記のように実施した。コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬させ、60℃で90日間保管した。
60℃で保管前後のコンタクトレンズ形状の試験片の着色濃度の評価および吸光度測定を行った。吸光度測定は下記のように実施した。
光路長1cmの石英セルにホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)を入れ、コンタクトレンズ形状の試験片を浸漬させた。島津製作所製 分光光度計UV−160を使用し、染料の吸収波長600nmにおける吸光度を60℃保管前後で測定した。
(5)色調
コンタクトレンズ形状の試験片の色調を目視観察し、下記の基準で判定した。
a:清澄な青 (“アキュビューオアシス”と同程度)
b:くすんだ青
色調は、視認性向上の点または商品の外観価値向上の点で清澄であることが好ましい。
また、色調の経時変化観察を下記のように実施した。コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬させ、60℃で90日間保管した。60℃で保管前後のコンタクトレンズ形状の試験片の色調の程度を上記の基準で判定した。
<合成例>
実施例においてコーティングに供した共重合体の合成例を示すが、本合成例において共重合体の分子量は以下に示す条件で測定した。
(GPC測定条件)
装置:島津製作所製 Prominence GPCシステム
ポンプ:LC−20AD
オートサンプラ:SIL−20AHT
カラムオーブン:CTO−20A
検出器:RID−10A
カラム:東ソー社製GMPWXL(内径7.8mm×30cm、粒子径13μm)
溶媒:水/メタノール=1/1(0.1N硝酸リチウム添加)
流速:0.5mL/分
測定時間:30分
サンプル濃度:0.1質量%
注入量:100μL
標準サンプル:Agilent社製ポリエチレンオキシド標準サンプル(0.1kD〜1258kD)。
(合成例1)
以下、純水とは逆浸透膜で濾過して精製した水を表す。
<p(DMAA/AA):N,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸(モル比2/1)>
500mL三口フラスコにN,N−ジメチルアクリルアミド(59.50g、0.600mol)、アクリル酸(21.62g、0.300mol)、純水(325.20g)、重合開始剤VA−061(和光純薬、0.1408g、0.562mmol)、2−メルカプトエタノール(43.8μL、0.63mmol)を加え、三方コック、還流冷却管、温度計、メカニカルスターラを装着した。モノマー濃度は20質量%であった。三口フラスコ内部を真空ポンプで脱気して、アルゴン置換を3回繰り返した後、50℃で0.5時間撹拌し、その後70℃に昇温して、6.5時間撹拌した。重合終了後、重合反応液をエバポレータで400gまで濃縮し、2−プロパノール/n−ヘキサン=500mL/500mL中に注ぎ入れて静置後、上澄み液をデカンテーションで除いた。得られた固形分を2−プロパノール/n−ヘキサン=250mL/250mLで3回洗浄した。固形分を真空乾燥機で60℃、一晩乾燥させた。液体窒素を入れ、スパチュラで破砕した後、真空乾燥機で60℃、3時間乾燥させた。このようにして得られた共重合体の分子量はMn:55kD、Mw:192kD(Mw/Mn=3.5)であった。
(合成例2)
染料の作製
50mLスクリュー瓶に20g純水を入れた。下記式(式8)の構造を有するUniBlue A(品番298409、シグマアルドリッチ)を0.5g加え、37℃のインキュベータ中で溶解させた。溶解後、1N塩酸を4g添加し、pH試験紙でpH約1〜2を確認した。酢酸エチルを24g添加し、軽く攪拌した。100mLナスフラスコに移し、静置した。UniBlue Aが酢酸エチル側に移るので下層の水層を捨てた。酢酸エチル層を100mLナスフラスコに移し、20℃のエバポレーターで蒸発させた。その後、真空乾燥器で40℃、16時間乾燥させ、酸型UniBlue A〔推定構造式(M1)〕を得た。
(合成例3)
コーティング溶液の調製
<PAA溶液>
ポリアクリル酸(169−18591、和光純薬工業、分子量25万)を純水に溶解して1.2質量%水溶液とした。
<PEI溶液>
ポリエチレンイミン(P3143、シグマアルドリッチ、分子量75万)を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
<p(DMAA/AA)溶液>
発明者らがラボで合成した合成例1のN,N−ジメチルアクリルアミド/アクリル酸を純水に溶解して1質量%水溶液とした。
(実施例1)
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC株式会社、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとしてジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)、成分Cとして重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)、成分Dとして合成例2の酸型UniblueA(0.04質量部)、および重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)およびt−アミルアルコール(TAA)(10質量部)を混合し撹拌した。メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。
このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.01mW/cm2、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。それによって得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、2時間以上浸漬した。得られたレンズの縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.08mmであった。
得られた成型体を合成例3のPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、合成例3のPEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングした成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示した。
(実施例2)
成分Bであるトリフルオロエチルアクリレートを43質量部、成分Cである2−エチルヘキシルアクリレートを5質量部とする以外は、実施例1と同様の成形体を作製した。得られた成形体について、実施例1と同様の操作を実施した。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
成分Bであるトリフルオロエチルアクリレートを48質量部、成分Cである2−エチルヘキシルアクリレートを0質量部とする以外は、実施例1と同様の成形体を作製した。得られた成形体について、実施例1と同様の操作を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
成分Cである合成例2の酸型UniBlueAを用いず、UniBlueAを用いる以外は、実施例1と同様の成形体を作製した。得られた成形体について、実施例1と同様の操作を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
成分Cであるジメチルアミノエチルアクリレートをジメチルアミノエチルメタクリレート、成分Dである合成例2の酸型UniBlueAを0質量部とする以外は、実施例1と同様の成形体を作製した。得られた成型体を合成例3のPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、合成例3のPEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、コーティングした成型体を下記式(式8)のUniBlue Aスルホン酸タイプ(sumifix brilliant blue R150% gran、住友化学製)の1質量%水溶液に50℃で16時間浸漬させた。
浸漬後、成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
ジメチルアミノエチルメタクリレートをジエチルアミノエチルアクリレートとする以外は、比較例2と同様の成形体を作製した。得られた成形体について、比較例2と同様の操作を実施した。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
成分Dである合成例2の酸型UniBlueAを0質量部とする以外は、実施例1と同様の成形体を作製した。得られた成型体をUniBlue Aスルホン酸タイプ(sumifix brilliant blue R150% gran、住友化学製)の1質量%水溶液に50℃で16時間浸漬させた。浸漬後、成型体を合成例3のPAA溶液に室温で30分間浸漬した後、ビーカー中の純水で軽く濯ぎ洗いした。成型体を新しい純水が入ったビーカーに移し、超音波洗浄器にかけた(30秒間)。さらに、新しい純水が入ったビーカー中で軽く濯ぎ洗いした。次いで、合成例3のPEI溶液、p(DMAA/AA)溶液の順に同様の操作を繰り返した。コーティング操作を終えた後、成型体を密閉バイアル瓶中のホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で入れ、121℃で30分間、オートクレーブ滅菌を行った。評価結果を表1に示す。