本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
===センサレスモータの駆動装置の第1構成例===
図1、図2、図3、図4、図5を参照しつつ、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置について説明する。図1は、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置を説明するための回路ブロック図である。図2は、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置を説明するための波形図である。図3は、図1のセンサレスロジック回路が有する正回転のロジックを説明するための図である。図4は、センサレスモータの慣性回転中に発生する逆起電圧を示す波形図である。図5は、図1の第1、第2のコンパレータの出力論理図である。なお、本実施形態において、駆動装置は、センサレスモータとして例えば3相の直流ブラシレスモータを駆動することとする。
U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6はモータコイルであり、スター結線されるとともに電気角120度の位相差を有してステータに巻回されたものである。
Nチャンネル型MOSFET8は、電源VPからU相コイル2へコイル電流を供給するためのソーストランジスタであり、Nチャンネル型MOSFET10は、U相コイル2から接地VSSへコイル電流を供給するためのシンクトランジスタである。これらのMOSFET8、10のドレインソース路は電源VPと接地VSSの間に直列接続され、これらのMOSFET8、10のドレインソース接続部はU相コイル2の一端と接続されている。また、Nチャンネル型MOSFET12は、電源VPからV相コイル4へコイル電流を供給するためのソーストランジスタであり、Nチャンネル型MOSFET14は、V相コイル4から接地VSSへコイル電流を供給するためのシンクトランジスタである。これらのMOSFET12、14のドレインソース路は電源VPと接地VSSの間に直列接続され、これらのMOSFET12、14のドレインソース接続部はV相コイル4の一端と接続されている。更に、Nチャンネル型MOSFET16は、電源VPからW相コイル6へコイル電流を供給するためのソーストランジスタであり、Nチャンネル型MOSFET18は、W相コイル6から接地VSSへコイル電流を供給するためのシンクトランジスタである。これらのMOSFET16、18のドレインソース路は電源VPと接地VSSの間に直列接続され、これらのMOSFET16、18のドレインソース接続部はW相コイル6の一端と接続されている。そして、MOSFET8、10、12、14、16、18が適宜のタイミングでオンオフすると、モータは、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6にコイル電流が供給されて予め定められた方向へ回転(例えば正回転)することとなる。これにより、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の一端には電気角120度の位相差を有するコイル電圧VU、VV、VWが発生することとなる。なお、ソーストランジスタおよびシンクトランジスタとして、MOSFETのみならず、バイポーラトランジスタを使用することも可能である。
コンパレータ22Uは、+端子にコイル電圧VUが印加されるとともに−端子に中性点電圧VCOMが印加され、コイル電圧VUと中性点電圧VCOMを比較することによって、電気角180度のタイミングで変化する矩形の比較信号CPUを出力するものである。この比較信号CPUにはキックバックパルスKBに基づくパルスが重畳している。また、コンパレータ22Vは、+端子にコイル電圧VVが印加されるとともに−端子に中性点電圧VCOMが印加され、コイル電圧VVと中性点電圧VCOMを比較することによって、電気角180度のタイミングで変化する矩形の比較信号CPVを出力するものである。この比較信号CPVにはキックバックパルスKBに基づくパルスが重畳している。更に、コンパレータ22Wは、+端子にコイル電圧VWが印加されるとともに−端子に中性点電圧VCOMが印加され、コイル電圧VWと中性点電圧VCOMを比較することによって、電気角180度のタイミングで変化する矩形の比較信号CPWを出力するものである。この比較信号CPWにはキックバックパルスKBに基づくパルスが重畳している。尚、比較信号CPU、CPV、CPWはそれぞれ電気角120度の位相差を有する。
マスク回路26は、コンパレータ22Uの出力である比較信号CPUからキックバックパルスKBと対応するノイズを除去(マスク)し、マスク信号UMASKを生成して出力する。また、マスク回路26は、コンパレータ22Vの出力である比較信号CPVからキックバックパルスKBと対応するノイズを除去し、マスク信号VMASKを生成して出力する。更に、マスク回路26は、コンパレータ22Wの出力である比較信号CPWからキックバックパルスKBと対応するノイズを除去し、マスク信号WMASKを生成して出力する。ここで、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKは、電気角120度の位相差を有する。尚、マスク回路26は、後述する逓倍回路30から供給される矩形信号RE1を用いた論理処理を行うことによってキックバックパルスKBに対応するノイズを除去する。
合成回路28は、マスク回路26から出力されるマスク信号UMASK、VMASK、WMASKを合成し、電気角60度のタイミングで変化する矩形の合成信号FGを出力する。
逓倍回路30は、合成回路28から出力される合成信号FGを逓倍することによって、合成信号FGより高い周波数を有する矩形信号RE1を発生するものである。これにより、合成信号FGの位相は矩形信号RE1の位相と一致しており、合成信号FGの1/2周期は矩形信号RE1のn周期と一致することとなる。なお、逓倍回路30には、例えばアナログ信号処理を実行するPLL(Phase Locked Loop)、デジタル信号処理を実行するDLL(Delay Locked Loop)を適用可能である。本実施形態では、逓倍回路30は後者のDLLを適用することとする。特に、DLLを適用する逓倍回路30の場合、例えば合成信号FGの1周期(電気角120度)後において、合成信号FGの1/2周期の位相と矩形信号RE1の位相は一致した状態となる。
センサレスロジック回路32は、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6を適宜のタイミングで通電するための信号を出力するものである。つまり、センサレスロジック回路32は、センサレスモータ自体が起動前のロータとステータの間の相対位置を特定できないことを考慮し、ロータが停止している場合、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKの予め定められた初期レベル(例えば、UMASK=“L”、VMASK=“L”、WMASK=“H”とする)から動作する。また、センサレスロジック回路32は、通電信号ULOGIC1(=UMASK−VMASK)、VLOGIC1(=VMASK−WMASK)、WLOGIC1(=WMASK−UMASK)を作成する。そして、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6が通電することにより、センサレスロジック回路32は、通電信号ULOGIC1、VLOGIC1、WLOGIC1より遅延する通電信号ULOGIC2、VLOGIC2、WLOGIC2を出力する。
起動カウンタ38は、停止状態のセンサレスモータが起動しないとき、合成信号FGの電気角60度の変化のタイミングを基準として、逓倍回路30から出力される矩形信号RE1をカウントするものである。そして、センサレスロジック回路32は、起動カウンタ38が予め定められた値をカウントしたとき、図3に示す通り、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKのレベルを次の電気角60度のレベルに切り替える。これにより、センサレスモータは再度起動がかかることとなる。なお、センサレスモータが停止しているとき、逓倍回路30からの矩形信号RE1の周波数は一定周波数に保持されている。
センサレスモータが慣性回転している場合、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の一端には、図4に示す正弦波状の逆起電圧(発電波形)が発生する。この逆起電圧は中性点電圧VCOMに重畳するものであるが、センサレスモータの慣性回転時では、MOSFET8、10、12、14、16、18が全てオフして、コイル電圧VU、VV、VWが発生するところはハイインピーダンスとなるため、このときの中性点電圧VCOMは定まらなくなる。そこで、後述するコンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50Wの比較動作範囲を最大とするため、中性点電圧VCOMに代わり電源VPの中間電圧VP/2(直流電圧)に、逆起電圧を重畳させることとする。これにより、逆起電圧の振幅は、最大電圧VPのダイナミックレンジを有することとなる。基準電圧VA(第1基準電圧)は、中間電圧VP/2より大であり、基準電圧VB(第2基準電圧)は、中間電圧VP/2より小である。これらの基準電圧VA、VBは、逆起電圧の振幅が基準電圧VA、VBの電位差未満である場合、ロータを停止と判別し、一方、逆起電圧の振幅が基準電圧VA、VBの電位差以上である場合、ロータを回転と判別する際の基準となる閾値である。
回転検出回路40(制御回路)は、センサレスモータを起動する際のロータの停止および回転を検出するものである。回転検出回路40は、外部装置(例えばマイクロコンピュータ、DSP)から起動・停止指示信号SSが供給される。つまり、回転検出回路40は、起動・停止指示信号SSが一方の論理値(例えば“L”)であるとき、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6への通電を停止するスタンバイモードとなる。一方、回転検出回路40は、起動・停止指示信号SSが他方の論理値(例えば“H”)であるとき、回転検出モードとなり、ロータの回転検出を行う。
切替回路44は、回転検出回路40からの切替信号SWBに基づいて、後述する切替回路46またはマスク回路26の入力と選択的に接続され、コンパレータ22U、22V、22Wからの比較信号CPU、CPV、CPWを出力するものである。切替回路44は、センサレスモータを起動するとき、切替回路46の側(実線)と接続される。一方、切替回路44は、回転検出後におけるセンサレスモータを起動するとき、マスク回路26の側(破線)と接続される。同様に、切替回路46は、回転検出回路40からの切替信号SWCに基づいて、切替回路44またはマスク回路26の出力と選択的に接続されるものである。切替回路46は、センサレスモータを起動するとき、切替回路44の側(実線)と接続され、コンパレータ22U、22V、22Wからの比較信号CPU、CPV、CPWを合成回路28に出力する。一方、切替回路46は、回転検出後のセンサレスモータを起動するとき、マスク回路26の側(破線)と接続され、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKを合成回路28に出力する。
コンパレータ48U、48V、48W(第1コンパレータ)は、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧と基準電圧VAを比較するものである。同様に、コンパレータ50U、50V、50W(第2コンパレータ)は、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧と基準電圧VBを比較するものである。
図4に示すU相コイル2の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、U相コイル2の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48U、50Uの比較結果は、ともに“LH”“LH”となる。また、V相コイル4の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48V、50Vの比較結果は、それぞれ“LL”または“HH”、“HH”または“LL”となる。更に、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48W、50Wの比較結果は、それぞれ“HH”または“LL”、“LL”または“HH”となる。
V相コイル4の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、V相コイル4の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48V、50Vの比較結果は、ともに“LH”“LH”となる。また、U相コイル2の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48U、50Uの比較結果は、それぞれ“LL”または“HH”、“HH”または“LL”となる。更に、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48W、50Wの比較結果は、それぞれ“HH”または“LL”、“LL”または“HH”となる。
W相コイル6の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48W、50Wの比較結果は、ともに“LH”“LH”となる。また、U相コイル2の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48U、50Uの比較結果は、それぞれ“LL”または“HH”、“HH”または“LL”となる。更に、V相コイル4の逆起電圧との比較を行うコンパレータ48V、50Vの比較結果は、それぞれ“HH”または“LL”、“LL”または“HH”となる。
つまり、コンパレータ48U、50U、コンパレータ48V、50V、コンパレータ48W、50Wの少なくとも1相分の2つの比較結果がそれぞれ“LL”または“HH”である場合、ロータは慣性回転していることとなる。
回転検出回路40は、クロックCLKを出力する。メモリ52は、クロックCLKが供給されることによって、コンパレータ48U、50Uから出力される比較結果である2ビットデータDATA、コンパレータ48V、50Vから出力される比較結果である2ビットデータDATA、コンパレータ48W、50Wから出力される比較結果である2ビットデータDATAを、クロックCLKに同期する適宜の1回のタイミング(例えば図4のT1)のみで記憶するとともに回転検出回路40に供給するものである。尚、メモリ52は、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)、または、揮発性メモリ(例えばSRAM)を適用することが可能である。これにより、回転検出回路40は、合計6ビットのデータDATAの論理値に応じて、ロータが停止している状態からの起動動作、または、ロータが慣性回転している状態からの駆動動作を選択的に実行することとなる。
出力OFF回路54は、回転検出回路40から出力される通電停止信号によって、MOSFET8、10、12、14、16、18に対する通電信号ULOGIC2、VLOGIC2、WLOGIC2の供給を停止するものである。
なお、上記の回転検出回路40、切替回路44、46、コンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50W、メモリ52は、ロータ回転判別回路を構成する。
===基準電圧VA、VBの設定===
図8を参照しつつ、図1に設定される基準電圧VA、VBについて説明する。図8は、各相コイルの逆起電圧と基準電圧VA、VBとの関係を示す波形図である。特に、図8(a)はセンサレスモータが停止している状態を示す波形図、図8(b)はセンサレスモータが起動された状態を示す波形図、図8(c)はセンサレスモータが起動時から更に回転した状態を示す波形図である。
図1では、センサレスモータの停止中または慣性回転中を判別する手段として、6個のコンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50Wを備えたものである。よって、クロックCLKに同期する所定の1回のタイミングで、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6に対応する逆起電圧を2値化してメモリ52に記憶させることが可能となる。
センサレスモータが停止している場合、逆起電圧が発生していないため、U相、V相、W相の各相のコイル電圧はVP/2のままとなる。また、センサレスロジック回路32が起動カウンタ38で制御される転流タイミングで起動されて回転する場合、つまり、図1におけるセンサレスモータの駆動装置で制御可能な最低回転数で当該センサレスモータが回転する場合、この回転数に応じた振幅の逆起電圧が中性点電圧VCOMに重畳した状態で発生する。更に、センサレスモータの回転数が上昇すると、中性点電圧VCOMに重畳する逆起電圧の振幅はより大きくなる。
基準電圧VA、VBはVP/2を中心にそれぞれ高い側、低い側の電圧として設定される。この基準電圧VA、VBの差電圧が、図8(b)に示す起動時の逆起電圧の振幅よりも大きい場合(一点鎖線参照)、回転検出回路40は、センサレスモータが起動されて回転しているにも関わらず、停止しているものと誤判別することとなる。一方、基準電圧VA、VBの差電圧が、図8(b)に示す起動時の逆起電圧の振幅よりも小さく、特にVP/2に近い場合(二点鎖線参照)、回転検出回路40は、センサレスモータが起動された場合を「回転」として検出できることとなる。しかし、この場合、回転検出回路40は、センサレスモータが停止している場合のノイズを逆起電圧として検出し、センサレスモータが停止しているにも関わらず、回転しているものと誤判別することとなる。
そこで、基準電圧VA、VBを設定する場合、上述した誤判別を防止すべく、センサレスモータが起動されたときの回転を検出でき、且つ、センサレスモータが停止しているときに発生する諸ノイズを逆起電圧として検出しない、設定が必要となる。図1では、1回のタイミングでコンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50Wが比較動作を行うことによって、センサレスモータの停止または慣性回転を検出することを可能とするものである。そのためには、クロックCLKに同期する如何なるタイミングであっても、起動時の逆起電圧を検出できる必要がある。換言すれば、クロックCLKに同期する如何なるタイミングであっても、何れか1相分の逆起電圧の最大値が基準電圧VAよりも大きいか、または、何れか1相分の逆起電圧の最小値が基準電圧VBよりも小さければよい。
これを実現するため、図8に示すように、破線の基準電圧VA、VBを設定すればよい。この破線の基準電圧VA、VBは、電気角60度ごとに、U相、V相、W相の各相の逆起電圧の何れか1つが基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となる値に設定される(センサレスモータの起動時に発生する各相の逆起電圧は、電気角60度ごとに、電気角60度にわたり、基準電圧VAより高くなることと、基準電圧VBより低くなることとを繰り返す)。これにより、図8(b)の斜線に示すように、U相、V相、W相の各相の逆起電圧は、電気角60度ごとに、V相コイル4の逆起電圧が基準電圧VBより小、U相コイル2の逆起電圧が基準電圧VAより大、W相コイル6の逆起電圧が基準電圧VBより小、V相コイル4の逆起電圧が基準電圧VAより大、U相コイル2の逆起電圧が基準電圧VBより小、W相コイル6の逆起電圧が基準電圧VAより大、という6状態を順次繰り返すこととなる。即ち、破線の基準電圧VA、VBを設定することによって、コンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50Wに印加すべき逆起電圧をどのタイミングでサンプリングしても、基準電圧VAより大なる逆起電圧または基準電圧VBより小なる逆起電圧が必ず存在し、起動時の逆起電圧を確実に検出することが可能となる。つまり、回転検出回路40は、起動時の逆起電圧を基に「回転」と確実に判別することとなる。また、破線の基準電圧VA、VBの差電圧は、起動時の逆起電圧を検出可能な最大差電圧であるため、回転検出回路40は、センサレスモータが停止しているときの諸ノイズが逆起電圧であることとして、モータの停止を「回転」と誤判別することも防止できる。
このような破線の基準電圧VAを、コンパレータ48U、48V、48Wの−端子に印加するとともに、破線の基準電圧VBを、コンパレータ50U、50V、50Wの−端子に印加すれば、センサレスモータの停止と慣性回転とを確実に判別することができる。
===センサレスモータの駆動装置の第1構成例の起動動作===
図1、図6、図7を参照しつつ、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の起動動作について説明する。図6は、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の起動動作を説明するためのフローチャートであり、特に断らない限り、回転検出回路40が起動動作を実行する主体である。図7は、矩形信号RE1、RE2の関係を示す波形図である。
先ず、回転検出回路40は、起動・停止指示信号SSの論理値が“L”または“H”の何れであるのかを判別する(S100)。回転検出回路40は、起動・停止指示信号SSの論理値が“L”であるものと判別した場合(S100:NO)、スタンバイモードを実行する。つまり、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6は通電せず、ロータは慣性回転している状態または停止している状態となる(S102)。その後、回転検出回路40は、ステップS100の判別を再度実行する。一方、回転検出回路40は、起動・停止指示信号SSの論理値が“H”であるものと判別した場合(S100:YES)、モータの停止または慣性回転を判別するため、通電停止信号を出力OFF回路54に供給する。これにより、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6への通電は停止する(S104)。
タイミングT1において、メモリ52には、コンパレータ48U、50U、48V、50V、48W、50Wの比較結果である合計6ビットとなる2ビットデータDATAが記憶され、この2ビットデータDATAは回転検出回路40に供給される(S106)。
回転検出回路40は、タイミングT1で得られた全ての2ビットデータDATAが“LH”であるか否かを判別する(S108)。回転検出回路40は、タイミングT1で得られた全ての2ビットデータDATAが“LH”であるものと判別した場合、即ち、ロータが停止しているものと判別した場合(S108:YES)、切替回路44、46を破線側に切り替えるための切替信号SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路44はマスク回路26の入力側と接続され、切替回路46はマスク回路26の出力側と接続される(S110)。その後、回転検出回路40は、通電停止信号を解除する。これにより、センサレスロジック回路32は予め定められた初期レベルのマスク信号UMASK、VMASK、WMASKから動作し、センサレスモータは起動がかかることとなる(S112)。
一方、回転検出回路40は、タイミングT1で得られた何れかの2ビットデータDATAが“LLまたはHH”であるものと判別した場合、即ち、ロータが慣性回転しているものと判別した場合(S108:NO)、切替回路44、46を実線側に切り替えるための切替信号SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路44の出力側は切替回路46の入力側と接続され、コンパレータ22U、22V、22Wの比較信号CPU、CPV、CPWは、マスク回路26を介さずに合成回路28に供給される。尚、ロータが慣性回転している場合、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6に発生する逆起電圧は発電波形であるため、キックバックパルスKB等に基づくノイズを除去するマスク回路26は不要である(S114)。
合成回路28は、合成信号FGと同一周波数を有する矩形信号RE2を逓倍回路30および回転検出回路40に供給する。尚、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりの変化は、コイル電圧VU、VV、VWのゼロクロスと一致するものである。逓倍回路30は、矩形信号RE2を当該矩形信号RE2の整数倍の周波数の矩形信号RE1に逓倍するものである。即ち、矩形信号RE2の立ち上がりと立ち下がりとの間の1/2周期には、n周期(nパルス)の矩形信号RE1が発生することになる。本実施形態では、矩形信号RE2の1/2周期が「b」である場合、このb期間にnパルスの矩形信号RE1が発生したときに、ロータの実際の慣性回転状態とセンサレスロジック回路32の通電ロジックとが一致したものと判断する(図7(A)参照)。逓倍回路30は、実際には、直前の1/2周期が次の1/2周期の逓倍動作に反映される。具体的には、図7(B)に示すように、期間TAにおける矩形信号RE2の1/2周期が「a」(本実施形態では、説明の便宜上「b/2」として説明する)である場合、次の期間TBでは、期間「a」内にnパルスを発生させるべく逓倍回路30が動作するため、期間TB内に2nパルスが発生してしまうことになる。DLLを使用する逓倍回路30では、通常、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化が連続して2回発生すれば、定常な逓倍動作を実行して、矩形信号RE2の1/2周期にnパルスの矩形信号RE1を発生可能となる。ところが、実際には、ロータの慣性回転を検出した後の矩形信号RE2の1回目の立ち上がりまたは立ち下がり変化は正確なタイミングのゼロクロスではない可能性があるため、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化が連続して3回発生したとき、定常な逓倍動作を実行して、矩形信号RE2の1/2周期にnパルスの矩形信号RE1が発生したこととすることが適切である。この理由により、ロータの慣性回転検出後、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化を連続3回カウントすることにより、ロータの実際の慣性回転状態とセンサレスロジック回路32の通電ロジックとが一致したものと判断することとなる。
そこで、回転検出回路40は、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりが連続3回発生したか否かを判別する(S116)。回転検出回路40は、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりを連続3回カウントした場合(S116:YES)、ロータの慣性回転状態とセンサレスロジック回路32の通電ロジックが一致するため、切替回路44、46を破線側に切り替えるための切替信号SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路44はマスク回路26の入力側と接続され、切替回路46はマスク回路26の出力側と接続される(S118)。その後、回転検出回路40は、通電停止信号を解除する。これにより、センサレスロジック回路32は、ロータの慣性回転状態とセンサレスロジック回路32の通電ロジックが一致したときのマスク信号UMASK、VMASK、WMASKから動作し、センサレスモータは効果的に通電制御されることとなる(S120)。
===センサレスモータの駆動装置の第2構成例===
図9乃至図11を参照しつつ、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の第2構成例について説明する。図9は、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の第2構成例を説明するための回路ブロック図である。図10は、センサレスモータの慣性回転中に発生する逆起電圧を示す波形図である。図11は、図9の第1、第2のコンパレータの出力論理図である。なお、本実施形態において、駆動装置は、センサレスモータとして例えば3相の直流ブラシレスモータを駆動することとする。また、図9における全体の波形図は図2と同様であり、センサレスロジック回路の正回転のロジックは図3と同様であるため、図2および図3を適宜利用して説明することとする。また、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6、MOSFET8、10、12、14、16、18については、図1と同一の構成であるため、図9においては同一番号を付してその説明を省略する。
切替回路320は、コイル電圧VU、VV、VWが供給されるU端子、V端子、W端子を有する。切替回路320は、U端子、V端子、W端子を電気角60度のタイミングで切り替えることにより、コイル電圧VU、VV、VWの何れかを選択的に出力する。切替回路320は、センサレスモータが正回転する場合、U端子、W端子、V端子の順序で繰り返し切り替えられる。
コンパレータ322は、切替回路320から切り替え出力されるコイル電圧VU、VV、VWの何れか1つ(+端子)と中性点電圧VCOM(−端子)とを比較することによって、電気角60度のタイミングで変化する矩形の比較信号CPを出力するものである。この比較信号CPにはキックバックパルスKBに基づくパルスが重畳している。尚、切替回路320を設けることにより、1個のコンパレータ322を設けるだけで済むため、素子数を削減できる。
分配回路324は、U端子、V端子、W端子を有する。分配回路324は、切替回路320のU端子、V端子、W端子を切り替えるタイミングと同一タイミングで、U端子、V端子、W端子を切り替えて比較信号CPを分配して出力するものである。尚、分配回路324は、センサレスモータが正回転する場合、U端子、W端子、V端子の順序で繰り返し切り替えられる。
分配回路324のU端子からは、電気角60度の断片的な信号が出力されるのみであり、U相コイル2を通電するための残り電気角120度の信号が欠落している。また、分配回路324のV端子からは、電気角60度の断片的な信号が出力されるのみであり、V相コイル4を通電するための残り電気角120度の信号が欠落している。更に、分配回路324のW端子からは、電気角60度の断片的な信号が出力されるのみであり、W相コイル6を通電するための残り電気角120度の信号が欠落している。尚、分配回路324のU端子、V端子、W端子から出力される信号は、キックバックパルスKBと対応するノイズが重畳されたままである。
マスク回路326は、分配回路324のU端子から出力される電気角60度の信号からキックバックパルスKBと対応するノイズを除去し、この電気角60度の信号を用いてU相コイル2を通電するための連続するマスク信号UMASKを生成して出力する。また、マスク回路326は、分配回路324のV端子から出力される電気角60度の信号からキックバックパルスKBと対応するノイズを除去し、この電気角60度の信号を用いてV相コイル4を通電するための連続するマスク信号VMASKを生成して出力する。更に、マスク回路326は、分配回路324のW端子から出力される電気角60度の信号からキックバックパルスKBと対応するノイズを除去し、この電気角60度の信号を用いてW相コイル6を通電するための連続するマスク信号WMASKを生成して出力する。尚、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKは、電気角120度の位相差を有する。ここで、マスク回路326は、後述する逓倍回路330から供給される矩形信号RE1を用いた論理処理を行うことによってキックバックパルスKBに対応するノイズを除去することとなる。
合成回路328は、マスク回路326から出力されるマスク信号UMASK、VMASK、WMASKを構成し、電気角60度のタイミングで変化する矩形の合成信号FGを出力する。
逓倍回路330は、合成回路328から出力される合成信号FG(RE2)を逓倍することによって、合成信号FGより高い周波数を有する矩形信号RE1を発生するものである。これにより、合成信号FGの位相は矩形信号RE1の位相と一致しており、合成信号FGの1/2周期は矩形信号RE1のn周期と一致することとなる。なお、逓倍回路330には、例えばアナログ信号処理を実行するPLL(Phase Locked Loop)、デジタル信号処理を実行するDLL(Delay Locked Loop)を適用可能である。本実施形態では、逓倍回路330は後者のDLLを適用することとする。特に、DLLを適用する逓倍回路330の場合、例えば合成信号FGの1周期(電気角120度)後において、合成信号FGの1/2周期の位相と矩形信号RE1の位相は一致した状態となる。
センサレスロジック回路332は、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6を適宜のタイミングで通電するための信号を出力するものである。つまり、センサレスロジック回路332は、センサレスモータ自体が起動前のロータとステータの間の相対位置を特定できないことを考慮し、ロータが停止している場合、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKの予め定められた初期レベル(例えば、UMASK=“L”、VMASK=“L”、WMASK=“H”とする)から動作する。また、センサレスロジック回路332は、通電信号ULOGIC1(=UMASK−VMASK)、VLOGIC1(=VMASK−WMASK)、WLOGIC1(=WMASK−UMASK)を作成する。更に、センサレスロジック回路332は、通電信号ULOGIC1が“M”レベルとなる期間、切替回路320のU端子と分配回路324のU端子を選択するための信号を出力する。同様に、センサレスロジック回路332は、通電信号VLOGIC1が“M”レベルとなる期間、切替回路320のV端子と分配回路324のV端子を選択するための信号を出力する。同様に、センサレスロジック回路332は、通電信号WLOGIC1が“M”レベルとなる期間、切替回路320のW端子と分配回路324のW端子を選択するための信号を出力する。そして、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6が通電することにより、センサレスロジック回路332は、通電信号ULOGIC1、VLOGIC1、WLOGIC1より遅延する通電信号ULOGIC2、VLOGIC2、WLOGIC2を出力する。
起動カウンタ338は、停止状態のセンサレスモータが起動しないとき、合成信号FGの電気角60度の変化のタイミングを基準として、逓倍回路330から出力される矩形信号RE1をカウントするものである。そして、センサレスロジック回路332は、起動カウンタ338が予め定められた値をカウントしたとき、図3に示す通り、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKのレベルを次の電気角60度のレベルに切り替える。これにより、センサレスモータは再度起動がかかることとなる。なお、センサレスモータが停止しているとき、逓倍回路330からの矩形信号RE1の周波数は一定周波数に保持されている。
センサレスモータが慣性回転している場合、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の一端には、図10に示す正弦波状の逆起電圧(発電波形)が発生する。この逆起電圧は中性点電圧VCOMに重畳するものであるが、センサレスモータの慣性回転時では、MOSFET8、10、12、14、16、18が全てオフして、コイル電圧VU、VV、VWが発生するところはハイインピーダンスとなるため、このときの中性点電圧VCOMは定まらなくなる。そこで、後述するコンパレータ48、50の比較動作範囲を最大とするため、−端子には中性点電圧VCOMに代わり電源VPの中間電圧VP/2(直流電圧)に、逆起電圧を重畳させることとなる。これにより、逆起電圧の振幅は、最大電圧VPのダイナミックレンジを有することとなる。基準電圧VA(第1基準電圧)は、中間電圧VP/2より大であり、基準電圧VB(第2基準電圧)は、中間電圧VP/2より小である。これらの基準電圧VA、VBは、逆起電圧の振幅が基準電圧VA、VBの電位差未満である場合、ロータを停止と判別し、一方、逆起電圧の振幅が基準電圧VA、VBの電位差以上である場合、ロータを回転と判別する際の基準となる閾値である。
回転検出回路340は、センサレスモータを起動する際のロータの停止および回転を検出するものである。回転検出回路340は、外部装置(例えばマイクロコンピュータ、DSP)から起動・停止指示信号SSが供給される。つまり、回転検出回路340は、起動・停止指示信号SSが一方の論理値(例えば“L”)であるとき、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6への通電を停止するスタンバイモードとなる。一方、回転検出回路340は、起動・停止指示信号SSが他方の論理値(例えば“H”)であるとき、回転検出モードとなり、ロータの回転検出を行う。
切替回路342は、回転検出回路340からの切替信号SWAに基づいて、センサレスロジック回路332の出力または回転検出回路340の出力と選択的に接続され、切替回路320のU端子、V端子、W端子を適宜のタイミングで切り替えるための信号を出力するものである。切替回路342は、センサレスモータを起動する際の回転状態を検出する場合、回転検出回路340の出力側(実線)と接続される。回転検出回路340は、例えば、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の3相分の逆起電圧と中間電圧VP/2の隣接する適宜の交差期間T0において、U端子、V端子、W端子をタイミングT1、T2、T3で切り替えるための信号を出力する(図10参照)。尚、逆起電圧の周波数がセンサレスモータの回転速度に比例することから、上記のタイミングT1、T2、T3は、センサレスモータが最高速回転したときの交差期間T0内で発生可能なタイミングを有することとする。一方、切替回路342は、起動後などのロータの回転位置を検出できる状態では、センサレスロジック回路332の出力側(破線)と接続される。このとき、センサレスロジック回路332は、切替回路320のU端子、V端子、W端子を電気角60度のタイミングで切り替えるための信号を出力する。
切替回路344は、回転検出回路340からの切替信号SWBに基づいて、後述する切替回路346またはマスク回路326の入力と選択的に接続され、分配回路324のU端子、V端子、W端子から選択的に分配出力される3相分の分配信号を切替出力するものである。切替回路344は、センサレスモータを起動する際の回転状態を検出する場合、切替回路346の側(実線)と接続される。一方、切替回路344は、起動後などのロータの回転位置を検出できる状態では、マスク回路326の側(破線)と接続される。同様に、切替回路346は、回転検出回路340からの切替信号SWCに基づいて、切替回路344またはマスク回路326の出力と選択的に接続されるものである。切替回路346は、センサレスモータを起動する際の回転状態を検出する場合、切替回路344の側(実線)と接続され、分配回路324からの3相分の分配信号を合成回路328に出力する。一方、切替回路346は、起動後などのロータの回転位置を検出できる状態では、マスク回路326の側(破線)と接続され、マスク信号UMASK、VMASK、WMASKを合成回路328に出力する。
コンパレータ348(第1コンパレータ)は、切替回路320から選択出力されるU相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧と基準電圧VAを比較するものである。同様に、コンパレータ350(第2コンパレータ)は、切替回路320から選択出力されるU相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧と基準電圧VBを比較するものである。図10に示すU相コイル2の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ348、350の比較結果は、“LH”、“LLまたはHH”、“HHまたはLL”となる。また、V相コイル4の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ348、350の比較結果は、 “LLまたはHH”、“LH”、“HHまたはLL”となる。更に、W相コイル6の逆起電圧が中間電圧VP/2と交差したとき、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の逆起電圧との比較を行うコンパレータ348、350の比較結果は、 “LLまたはHH”、“HHまたはLL”、“LH”となる。つまり、コンパレータ348、350の比較結果が“LL”または“HH”である場合、ロータは慣性回転していることと判断できる(図11参照)。
回転検出回路340は、タイミングT1、T2、T3に同期するクロックCLKを出力する。メモリ352は、クロックCLKが供給されることによって、コンパレータ348、350の比較結果である2ビットデータDATAを記憶するとともに回転検出回路340に供給するものである。尚、メモリ352としては、タイミングT1、T2、T3の2ビットデータDATAを別アドレスに記憶する構成、または、タイミングT1、T2、T3の2ビットデータDATAを同一アドレスに上書き記憶する構成を適用することが可能である。更に、メモリ352には、不揮発性メモリ(例えばEEPROM)、または、揮発性メモリ(例えばSRAM)を適用することが可能である。これにより、回転検出回路340は、2ビットデータDATAの論理値に応じて、ロータが停止している状態からの起動動作、または、ロータが慣性回転している状態から起動をかけた場合の通電動作を選択的に実行することとなる。
出力OFF回路354は、回転検出回路340から出力される通電停止信号によって、MOSFET8、10、12、14、16、18に対する通電信号ULOGIC2、VLOGIC2、WLOGIC2の供給を停止するものである。
なお、上記の回転検出回路340、切替回路342、344、346、コンパレータ348、350、メモリ352は、ロータ回転判別回路を構成する。
===基準電圧VA、VBの設定===
図13および図14を参照しつつ、図9に設定される基準電圧VA、VBについて説明する。図13は、各相コイルの逆起電圧と基準電圧VA、VBとの関係を示す波形図である。図14は、各相コイルの逆起電圧と基準電圧VA、VBとの関係を示す他の波形図である。特に、図13(a)はセンサレスモータが停止している状態を示す波形図、図13(b)はセンサレスモータが起動された状態を示す波形図、図13(c)はセンサレスモータが起動時から更に回転した状態を示す波形図である。
図9では、センサレスモータの停止中または慣性回転中を判別する手段として、2個のコンパレータ348、350を備えたものである。2個のコンパレータ348、350では、1回の比較動作で1相分の逆起電圧の情報しか得ることができない。そのため、コンパレータ348は基準電圧VAとU相、V相、W相の逆起電圧とを合計3回のタイミングで比較する必要がある。同様に、コンパレータ350は基準電圧VBとU相、V相、W相の逆起電圧とを合計3回のタイミングで比較する必要がある。そして、3回のタイミングで比較出力されるコンパレータ348、350の2値化データがメモリ352に記憶されることとなる。
センサレスモータが停止している場合、逆起電圧が発生していないため、U相、V相、W相の各相のコイル電圧はVP/2のままとなる。また、センサレスロジック回路332が起動カウンタ338で制御される転流タイミングで起動されて回転する場合、つまり、図9におけるセンサレスモータの駆動装置で制御可能な最低回転数で当該センサレスモータが回転する場合、この回転数に応じた振幅の逆起電圧が中性点電圧VCOMに重畳した状態で発生する。更に、センサレスモータの回転数が上昇すると、中性点電圧VCOMに重畳する逆起電圧の振幅はより大きくなる。
基準電圧VA、VBはVP/2を中心にそれぞれ高い側、低い側の電圧として設定される。この基準電圧VA、VBの差電圧が、図13(b)に示す起動時の逆起電圧の振幅よりも大きい場合(一点鎖線参照)、回転検出回路340は、センサレスモータが起動されて回転しているにも関わらず、停止しているものと誤判別することとなる。一方、基準電圧VA、VBの差電圧が、図8(b)に示す起動時の逆起電圧の振幅よりも小さく、特にVP/2に近い場合(二点鎖線参照)、回転検出回路40は、センサレスモータが起動された場合を「回転」として検出できることとなる。しかし、この場合、回転検出回路40は、センサレスモータが停止している場合のノイズを逆起電圧として検出し、センサレスモータが停止しているにも関わらず、回転しているものと誤判別する可能性が高くなる。
そこで、基準電圧VA、VBを設定する場合、上述した誤判別を防止すべく、センサレスモータが起動されたときの回転を検出でき、且つ、センサレスモータが停止しているときに発生する諸ノイズを逆起電圧として検出しない、設定が必要となる。図9では、コンパレータ348、350が3回の連続するタイミングで比較動作を行うことによって、センサレスモータの停止または慣性回転を検出することを可能とするものである。そのためには、コンパレータ348、350がクロックCLKに同期する如何なるタイミングから比較動作を開始する場合であっても、起動時の逆起電圧が発生していることを検出できる必要がある。換言すれば、コンパレータ348、350がクロックCLKに同期する如何なるタイミングから比較動作を開始する場合であっても、少なくとも1相分の逆起電圧の最大値が基準電圧VAよりも大きいか、または、何れか1相分の逆起電圧の最小値が基準電圧VBよりも小さければよい。
これを実現するため、図13に示すように、破線の基準電圧VA、VBを設定すればよい。つまり、破線の基準電圧VAは、U相、V相、W相の逆起電圧がVP/2より大きい場合において、U相、V相、W相の逆起電圧のそれぞれの交点となる電圧に設定される。一方、破線の基準電圧VBは、U相、V相、W相の逆起電圧がVP/2より小さい場合において、U相、V相、W相の逆起電圧のそれぞれが交差する点の電圧に設定される。これにより、U相、V相、W相の逆起電圧は、基準電圧VAより大きい範囲において、途切れることのない連続した波形となる。一方、U相、V相、W相の逆起電圧は、基準電圧VBより小さい範囲においても、途切れることのない連続した波形となる。従って、コンパレータ348、350がクロックCLKに同期する如何なるタイミングから比較動作を開始したとしても、少なくとも1相分の逆起電圧の最大値は必ず基準電圧VAより大きいか、基準電圧VBより小さいこととなり、起動時の逆起電圧が発生していることを確実に検出することが可能となる。つまり、回転検出回路340は、起動時の逆起電圧を基に「回転」と確実に判別することとなる。また、破線の基準電圧VA、VBの差電圧は、起動時の逆起電圧を検出可能な最大差電圧であるため、回転検出回路40は、センサレスモータが停止しているときの諸ノイズが逆起電圧であることとして、モータの停止を「回転」と誤判別することも防止できる。
このような破線の基準電圧VAをコンパレータ348の−端子に印加するとともに、破線の基準電圧VBをコンパレータ350の−端子に印加すれば、センサレスモータの停止と慣性回転とを確実に判別することができる。
特に、上記の破線の基準電圧VA、VBの設定は、例えば電気角90度の間に、コンパレータ348、350が3回の連続するタイミングで比較動作を行う場合に望ましい設定である。
図14を参照して、図13に設定される破線の基準電圧VA、VBについて詳しく説明する。U相、V相、W相の逆起電圧は、それぞれ電気角120度の位相差をもって発生するものである。これらの逆起電圧のうち、基準電圧VAより大となる部分と、基準電圧VBより小となる部分について斜線を記しておく。また、U相、V相、W相の逆起電圧波形の下方には、電気角60度ごとに破線で区切った区間を設けており、ここには各電気角60度において逆起電圧が基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となる相を記している。更に、電気角60度ごとの区間の下方には、電気角90度ごとに破線で区切った区間を設けており、ここには各電気角90度において逆起電圧が基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となる相を記している。各電気角90度の区間には、逆起電圧が基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となる相として、U相、V相、W相の全ての相が含まれている。これにより、コンパレータ348、350は、何れかの電気角90度の区間において3回の連続するタイミング(例えば電気角30度の位相差)で比較動作を行った場合、各電気角90度の区間には電気角90度に亘って常に基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となる逆起電圧を発生する相があるため、起動時の逆起電圧に基づいてセンサレスモータの「回転」を示す2値化データを出力することとなる。図10の期間T0に代わり、図14の電気角90度の間に3回のタイミングでコンパレータ348、350の比較動作を実行させてもよい。
===センサレスモータの駆動装置の第2構成例の起動動作===
図9、図12を参照しつつ、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の起動動作について説明する。図12は、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置の第2構成例の起動動作を説明するためのフローチャートであり、特に断らない限り、回転検出回路340が起動動作を実行する主体である。尚、矩形信号RE1、RE2の関係は図7の波形図と同様であるため、説明上必要な場合には図7を用いて説明する。
先ず、回転検出回路340は、起動・停止指示信号SSの論理値が“L”または“H”の何れであるのかを判別する(S200)。回転検出回路340は、起動・停止指示信号SSの論理値が“L”であるものと判別した場合(S200:NO)、スタンバイモードを実行する。つまり、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6は通電せず、ロータは慣性回転している状態または停止している状態となる(S202)。その後、回転検出回路340は、ステップS200の判別を再度実行する。一方、回転検出回路340は、起動・停止指示信号SSの論理値が“H”であるものと判別した場合(S200:YES)、モータの停止または慣性回転を判別するため、通電停止信号を出力OFF回路54に供給する。これにより、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6への通電は停止する(S204)。
回転検出回路340は、切替回路342を回転検出回路340の出力と接続するための切替信号SWAを出力する。これにより、切替回路342は、回転検出回路340の出力側と接続される(S206)。更に、回転検出回路340は、適宜の交差期間T0において、切替回路320のU端子、V端子、W端子をタイミングT1、T2、T3で切り替えるための信号を出力する。これにより、切替回路320からは、タイミングT1でU相コイル2に発生する逆起電圧、タイミングT2でV相コイル4に発生する逆起電圧、タイミングT3でW相コイル6に発生する逆起電圧が選択的に出力される(S208)。
コンパレータ348、350は、タイミングT1でU相コイル2に発生する逆起電圧との比較結果をメモリ352に供給する。メモリ352は、クロックCLKに同期してコンパレータ348、350の比較結果である2ビットデータDATAを記憶し、このときメモリ352からは、この2ビットデータDATAが回転検出回路340に供給される。また、コンパレータ348、350は、タイミングT2でV相コイル4に発生する逆起電圧との比較結果をメモリ352に供給する。メモリ352は、クロックCLKに同期してコンパレータ348、350の比較結果である2ビットデータDATAを記憶し、このときメモリ352からは、この2ビットデータDATAが回転検出回路340に供給される。更に、コンパレータ348、350は、タイミングT3でW相コイル6に発生する逆起電圧との比較結果をメモリ352に供給する。メモリ352は、クロックCLKに同期してコンパレータ348、350の比較結果である2ビットデータDATAを記憶し、このときメモリ352からは、この2ビットデータDATAが回転検出回路340に供給される(S210)。
回転検出回路340は、タイミングT1、T2、T3の全ての2ビットデータDATAが“LH”であるか否かを判別する(S212)。回転検出回路340は、タイミングT1、T2、T3の全ての2ビットデータDATAが“LH”であるものと判別した場合、即ち、ロータが停止しているものと判別した場合(S212:YES)、切替回路342、344、346を破線側に切り替えるための切替信号SWA、SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路342はセンサレスロジック回路332の出力側と接続され、切替回路344はマスク回路326の入力側と接続され、切替回路346はマスク回路326の出力側と接続される(S214)。その後、回転検出回路340は、通電停止信号を解除する。これにより、センサレスロジック回路332は予め定められた初期レベルのマスク信号UMASK、VMASK、WMASKから動作し、センサレスモータは起動がかかることとなる(S216)。
一方、回転検出回路340は、タイミングT1、T2、T3の何れかの2ビットデータDATAが“LLまたはHH”であるものと判別した場合、即ち、ロータが慣性回転しているものと判別した場合(S212:NO)、切替回路344、346を実線側に切り替えるための切替信号SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路344の出力側は切替回路346の入力側と接続され、分配回路324からの3相分の比較信号CPは、マスク回路326を介在せずに合成回路328に供給される。尚、ロータが慣性回転している場合、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6に発生する逆起電圧は発電波形であるため、キックバックパルスKB等に基づくノイズを除去するマスク回路326は不要である(S218)。
回転検出回路340は、切替回路320、324のU端子、V端子、W端子を電気角60度のタイミングで切り替えるための信号を出力する。これにより、合成回路328は、合成信号FGと同一周波数を有する矩形信号RE2を逓倍回路330および回転検出回路340に供給する(S220)。尚、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりの変化は、コイル電圧VU、VV、VWのゼロクロスと一致するものである。逓倍回路330は、矩形信号RE2を当該矩形信号RE2の整数倍の周波数の矩形信号RE1に逓倍するものである。即ち、矩形信号RE2の立ち上がりと立ち下がりとの間の1/2周期には、n周期(nパルス)の矩形信号RE1が発生することになる。本実施形態では、矩形信号RE2の1/2周期が「b」である場合、このb期間にnパルスの矩形信号RE1が発生したときに、ロータの実際の慣性回転状態とセンサレスロジック回路332の通電ロジックとが一致したものと判断する(図7(A)参照)。逓倍回路330は、実際には、直前の1/2周期が次の1/2周期の逓倍動作に反映される。具体的には、図7(B)に示すように、期間TAにおける矩形信号RE2の1/2周期が「a」(本実施形態では、説明の便宜上「b/2」として説明する)である場合、次の期間TBでは、期間「a」内にnパルスを発生させるべく逓倍回路330が動作するため、期間TB内に2nパルスが発生してしまうことになる。DLLを使用する逓倍回路330では、通常、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化が連続して2回発生すれば、定常な逓倍動作を実行して、矩形信号RE2の1/2周期にnパルスの矩形信号RE1を発生可能となる。ところが、実際には、ロータの慣性回転を検出した後の矩形信号RE2の1回目の立ち上がりまたは立ち下がり変化は正確なタイミングのゼロクロスではない可能性があるため、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化が連続して3回発生したとき、定常な逓倍動作を実行して、矩形信号RE2の1/2周期にnパルスの矩形信号RE1が発生したこととすることが適切である。この理由により、ロータの慣性回転検出後、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がり変化を連続3回カウントすることにより、ロータの実際の慣性回転状態とセンサレスロジック回路332の通電ロジックとが一致したものと判断することとなる。
そこで、回転検出回路340は、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりが連続3回発生したか否かを判別する(S222)。回転検出回路340は、矩形信号RE2の立ち上がりおよび立ち下がりを連続3回カウントした場合(S222:YES)、ロータの慣性回転状態とセンサレスロジック回路332の通電ロジックが一致するため、切替回路342、344、346を破線側に切り替えるための切替信号SWA、SWB、SWCを出力する。これにより、切替回路342はセンサレスロジック回路332の出力側と接続され、切替回路344はマスク回路326の入力側と接続され、切替回路346はマスク回路326の出力側と接続される(S224)。その後、回転検出回路340は、通電停止信号を解除する。これにより、センサレスロジック回路332は、ロータの慣性回転状態とセンサレスロジック回路332の通電ロジックが一致したときのマスク信号UMASK、VMASK、WMASKから動作し、センサレスモータは効果的に通電制御されることとなる(S226)。
以上説明したように、モータコイル(U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6)に発生する逆起電圧に基づいて、ステータに対するロータの相対位置を検出するロータ位置検出回路(コンパレータ22、22U、22V、22W)と、ロータ位置検出回路の検出結果に基づいて、モータコイルを選択的に通電する駆動回路(マスク回路26、326、センサレスロジック回路32、332)と、を有するセンサレスモータの駆動装置において、センサレスモータを起動する際、ロータが停止しているのか、それともロータが慣性で回転しているのかを判別するロータ回転判別回路(回転検出回路40、340の回転検出機能、切替回路44、344、46、346、コンパレータ348、48U、48V、48W、350、50U、50V、50W、メモリ52、352)と、ロータ回転判別回路がロータを停止している状態と判別した場合、駆動回路がモータコイルの予め定められた相を通電し、ロータ回転判別回路がロータを慣性で回転している状態と判別した場合、駆動回路がロータ位置検出回路の検出結果に基づくモータコイルの相を通電するための制御を行う制御回路(回転検出回路40、340の通電制御機能)と、を備えたことを特徴とする。このセンサレスモータの駆動装置によれば、ロータが慣性で回転している場合、ロータの実際の回転と駆動回路の通電ロジックが一致した後に、各相のコイルを適宜通電する。これにより、センサレスモータが起動の際に慣性で回転している場合であっても、センサレスモータを確実に駆動することが可能となる。
また、かかるセンサレスモータの駆動装置において、ロータ回転判別回路は、逆起電圧の振幅が予め定められた基準振幅(基準電圧VA、VBの差電圧)に対して大または小の何れであるのかを、所定のタイミングで比較する比較回路(コンパレータ348、48U、48V、48W、350、50U、50V、50W)と、逆起電圧の振幅が基準振幅より小であるときの比較回路の比較出力に基づいて、ロータを停止状態と判別し、逆起電圧の振幅が基準振幅より大であるときの比較回路の比較出力に基づいて、ロータを慣性で回転している状態と判別する判別回路(回転検出回路40、340の回転検出機能)と、を有する。
例えば、比較回路は、基準振幅の上限値となる基準電圧VAと、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧とを、複数の異なるタイミングで比較するコンパレータ348と、基準振幅の下限値となる基準電圧VBと、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧とを、前記複数の異なるタイミングで比較するコンパレータ350と、コンパレータ348、350の比較結果である2値化データを記憶するメモリ352と、を有し、判別回路は、メモリ352から読み出されるコンパレータ348、350の比較結果に従って、ロータが停止している状態か、ロータが慣性で回転している状態かを判別する。これにより、ロータが停止しているのか慣性で回転しているのかを判別する際に使用するコンパレータの数を少なくできる。センサレスモータの駆動装置を集積回路とする場合では、チップ面積を小さくすることが可能となる。更に、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧は、所定の直流電圧(VP/2、VCOM)を中心に振幅が変化するものであり、基準電圧VAは、直流電圧より高い電圧であって、センサレスモータの起動時に発生する各相の前記逆起電圧が交差した点の電圧であり、基準電圧VBは、前記直流電圧より低い電圧であって、センサレスモータの起動時に発生する各相の前記逆起電圧が交差した点の電圧である。これにより、コンパレータ348、350がどのタイミングから比較動作を開始したとしても、少なくとも何れか1相分の逆起電圧は基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となるため、起動時の逆起電圧を確実に検出して、判別回路はロータを「回転」と判別することが可能となる。尚、コンパレータ348、350は、所定の電気角90度の間で、モータコイルの相の数と等しい数のタイミングで、比較動作を行うことが可能である。
また、例えば、比較回路は、基準振幅の上限値となる基準電圧VAと、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧とを、それぞれ同一タイミングで比較する複数のコンパレータ(48U、48V、48W)と、基準振幅の下限値となる基準電圧VBと、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧とを、それぞれ前記同一タイミングで比較する複数のコンパレータ(50U、50V、50W)と、を有し、判別回路は、複数のコンパレータ(48U、48V、48W、50U、50V、50W)の比較結果に基づいて、ロータが停止している状態か、ロータが慣性で回転している状態かを判別する。これにより、ロータが停止しているのか慣性で回転しているのかを1回のタイミングで判別することが可能となる。更に、モータコイルの各相から一定の位相差をもって発生する逆起電圧は、所定の直流電圧(VP/2、VCOM)を中心に振幅が変化するものであり、基準電圧VAは、前記直流電圧より高い電圧であり、基準電圧VBは、前記直流電圧より低い電圧であり、センサレスモータの起動時に発生する各相の前記逆起電圧は、一定の電気角ごとに、当該一定の電気角にわたり、基準電圧VAより高くなること、基準電圧VBより低くなることを、繰り返すものである。これにより、複数のコンパレータ(48U、48V、48W、50U、50V、50W)は、どのタイミングで比較動作を行っても、逆起電圧が基準電圧VAより大または基準電圧VBより小となっており、起動時の逆起電圧を確実に検出して、判別回路はロータを「回転」と判別することが可能となる。
また、かかるセンサレスモータの駆動装置において、制御回路は、ロータ回転判別回路がロータを慣性で回転している状態と判別した場合、ロータ位置検出回路がロータの位置を検出するまでの期間、モータコイルの通電を停止させる。これにより、通電停止信号が供給される出力OFF回路(54、354)によって通電信号ULOGIC2、VLOGIC2、WLOGIC2を遮断するため、センサレスモータを起動する際、判別回路は、ロータの停止または慣性回転を確実に判別することが可能となる。
また、かかるセンサレスモータの駆動装置において、センサレスモータとして、3相のブラシレスモータを適用することが可能となる。
また、かかるセンサレスモータの駆動装置を、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6を外付要素として集積回路としてもよい。この集積回路は、センサレスモータを使用する小型の携帯機器(例えば光ディスク媒体を使用する機器)に適用することが可能となる。
===その他の実施形態===
以上、本発明にかかるセンサレスモータの駆動装置について説明したが、上記の説明は、本発明の理解を容易とするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
<<回転検出回路>>
回転検出回路40は、U相コイル2、V相コイル4、W相コイル6の何れかの2ビットデータDATAが“LLまたはHH”であるものと判別した場合、残りの2ビットデータの判別を省略してもよい。これにより、センサレスモータが慣性で回転している状態からの駆動開始効率を向上させることが可能となる。
<<メモリ>>
メモリ52は、2ビットデータDATAとノイズを明確に区別するために設けられるが、センサレスモータの駆動装置がノイズの影響を無視できる環境で動作する場合、省略することも可能である。