JP4660964B2 - 絶縁分離型半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁分離トレンチを備えた絶縁分離型半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図4には、SOI(Silicon On Insulator)基板上に素子分離用の絶縁分離トレンチを形成して成る半導体装置の製造工程例が模式的な断面図(要部のみ示す:寸法比は正確ではない)により示されており、以下、各工程の内容について個別に説明する。
【0003】
(a)マスク形成工程
まず、図4(a)に示すように、単結晶シリコン基板1A上に、酸化シリコン膜より成る絶縁分離膜1Bを介して単結晶シリコン層1Cを形成したSOI基板1を用意し、その単結晶シリコン層1C上に、酸化シリコン膜2、窒化シリコン膜3、酸化シリコン膜4を順次成膜すると共に、その三層構造膜をフォトエッチング技術を利用してパターンニングすることによって所定位置に開口部5を形成する。ここで、酸化シリコン膜4は、単結晶シリコン層1Cを異方性エッチングしてトレンチを形成する際のエッチングマスクとして機能する。また、窒化シリコン膜3は、上記酸化シリコン膜4を除去する際のストッパの機能を果たすものであり、酸化シリコン膜2は、窒化シリコン膜3を成膜する際の応力を緩和する役目を果たすものである。
【0004】
(b)トレンチエッチング工程
上記のようなマスク形成工程の後には、単結晶シリコン層1Cに対し酸化シリコン膜4をマスクとした状態の異方性ドライエッチングを行うことにより、図4(b)に示すように、絶縁分離膜1Bまで達するトレンチ6を形成する。
【0005】
(c)側壁酸化工程
上記トレンチエッチング工程の実行後に、トレンチ6の側壁を熱酸化することにより側壁酸化膜7を形成する(図4(c)参照)。
【0006】
(d)トレンチ埋め戻し工程
酸化シリコン膜4上の全面にCVD法によりポリシリコンを堆積することにより、トレンチ6を埋め戻した状態のポリシリコン膜8を成膜する(図4(d)参照)。
【0007】
(e)第1エッチバック工程
酸化シリコン膜4をストッパとしたCMP(化学的機械研磨)処理を行うことにより、ポリシリコン膜8を酸化シリコン膜4の面までエッチバックする(図4(e)参照)。
【0008】
(f)マスク除去工程
トレンチエッチングマスクとして使用された酸化シリコン膜4を、窒化シリコン膜3をストッパとしたウエットエッチングにより除去する(図4(f)参照)。
【0009】
(g)第2エッチバック工程
トレンチ6の上部に突き出した状態のポリシリコン膜8を、窒化シリコン膜3をマスクとしたドライエッチングにより酸化シリコン膜2の面まで除去する(図4(g)参照)。
【0010】
(h)ポリシリコン膜酸化工程
熱酸化処理を施すことによりトレンチ6の上部に露出したポリシリコン膜8を酸化し、トレンチ6の上部を酸化シリコン膜2及び側壁酸化膜7と一体化された酸化シリコン膜で覆った状態とする(図4(h)参照)。
【0011】
(i)窒化シリコン膜除去工程
窒化シリコン膜3を、酸化シリコン膜2とエッチング選択性がある処理液によりウエットエッチングして除去する(図4(i)参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法では、トレンチ6の上部を平坦化するために必要な処理、つまりポリシリコン膜8をトレンチ6内の埋込部分を残して除去する処理を、第1エッチバック工程(図4(e))及び第2エッチバック工程(図4(g))に分けて行う構成となっているため、トレンチ上部の平坦化に要する工数が増えて生産性が悪化するという事情があり、また、第1エッチバック工程では、コスト高なCMP処理を行っているため、製造コストが高騰するという事情もあった。このような事情がありながらポリシリコン膜8を2回に分けてエッチバックする理由は次の通りである。
【0013】
即ち、図5には、ポリシリコン膜8を酸化シリコン膜2の面まで1回の処理でエッチバックするようにした製造工程例が模式的な断面図により示されている。この場合、図5(a)のトレンチ埋め戻し工程で形成されたポリシリコン膜8は、図5(b)に示すエッチバック工程において、例えばドライエッチングにより酸化シリコン膜2の面までエッチバックされることになる。ところが、このような製造方法を採用した場合には、その後に、図5(c)に示すマスク除去工程、つまり、トレンチエッチングマスクとして使用された酸化シリコン膜4を、窒化シリコン膜3をストッパとしたウエットエッチングにより除去する工程が行われると、そのエッチング液が酸化シリコン膜2及び側壁酸化膜7を浸蝕するため、同図(c)に示すように側壁酸化膜7に窪み9が発生することになる。
【0014】
上記のような窪み9は、その後に行われるポリシリコン膜酸化工程(図5(d)参照)での熱酸化に応じてある程度修復されるものの、その後に窒化シリコン膜除去工程(図5(e)参照)が行われた場合に、トレンチ6の上部の酸化シリコン膜2には大きな凹凸が生ずることになる。このようにトレンチ6の上部の平坦性が損なわれるため、後工程で行われるフォトリソグラフィ工程でのフォトレジストの塗れ性の悪化や解像度不良が引き起こされ、これに伴い後工程でのエッチング残りによるパーティクルの発生や配線膜の断線及びショートといった不良を招く可能性が大きくなるものであり、総じて最終的に得られる半導体装置の品質が悪化するという問題点が出てくる。
【0015】
このような問題点の対策として、図6に模式的な断面図によって示すような工程順とすることが考えられる。この場合、前記図4(a)、(b)と同様のマスク形成工程(図6(a))、トレンチエッチング工程(図6(b))を行った後に、トレンチ6の側壁を熱酸化する前の段階で、図6(c)に示すマスク除去工程、つまり、酸化シリコン膜4を、窒化シリコン膜3をストッパとしたウエットエッチングにより除去する工程を行う。そして、この後に、図6(d)に示すような側壁酸化工程においてトレンチ6の側壁を熱酸化することにより側壁酸化膜7を形成する。このような工程順とした場合には、トレンチエッチングマスクとなる酸化シリコン膜4を除去する際に、前記図5(c)に示したような窪み9の発生を防止できる。
【0016】
しかしながら、この製造方法によれば、以下に述べるような問題点が発生する。つまり、外部からのサージや過電圧が浸入する可能性がある半導体装置においては、側壁酸化膜7の膜厚をある程度大きい値(例えば100nm〜600nm)に設定する必要があり、このような側壁酸化膜7を形成するための側壁酸化工程(図6(d))での熱酸化処理時間が相対的に長くなることが避けられない。ところが、図6に示した製造方法では、マスク除去工程(図6(c))において、酸化シリコン膜2にサイドエッチ(アンダカット)が発生して窒化シリコン膜3の端部がひさし状に突き出た状態になるため、その後に行われる側壁酸化工程での熱酸化時間が上述のように相対的に長くなった場合に、単結晶シリコン層1Cの熱酸化に伴い成長(体積膨張)する酸化シリコンによって窒化シリコン膜3の端部が持ち上げられて捲れ上がるようになる。このため、その後に行われるトレンチ埋め戻し工程(図6(e)参照)において、ひさし状に捲れ上がった状態の窒化シリコン膜3の下側にポリシリコン膜8が入り込むことになる。
【0017】
このような状態から、ポリシリコン膜8をドライエッチングするエッチバック工程が行われた場合には、図6(f)に示すように、ひさし状の窒化シリコン膜3がマスクとなって、その下にポリシリコンのエッチング残り8aが発生する。このようなエッチング残り8aは、その後に窒化シリコン膜除去工程(図6(g)参照)が行われた状態でも残置されたままとなり、さらにポリシリコン膜酸化工程(図6(h)参照)で熱酸化されて酸化膜の突起となるため、結果的に、トレンチ6上部の平坦性を大幅に悪化させるという問題点が出てくる。
【0018】
要するに、従来の製造方法では、絶縁分離トレンチの上部を平坦化するのに必要な工程の簡略化(つまり、製造コストの低減)と、絶縁分離トレンチ上部の平坦性の確保(つまり、半導体装置の品質向上)とを両立させることが困難であり、この点が未解決の課題となっていた。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁分離トレンチの上部を平坦化するために行われるエッチバック工程の簡略化を実現できる同時に、その絶縁分離トレンチ上部の平坦性を十分に確保可能となる絶縁分離型半導体装置の製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した半導体装置の製造方法によれば、絶縁分離トレンチに必要な側壁酸化膜を形成するに当たって、従来のように、半導体層(単結晶シリコン層)にトレンチを形成した後に当該半導体層を直接的に酸化するという手法ではなく、トレンチの形成時にエッチングマスクとして使用された酸化半導体材料より成るマスク膜を除去した後に、当該トレンチ内にポリシリコン膜より成る側壁膜を形成し、この側壁膜を熱酸化して側壁酸化膜を形成することになる。そして、このように側壁酸化膜を形成した後に、トレンチの埋め戻し工程で堆積されたポリシリコン膜のエッチバック工程を1回のエッチングで済ませる手順となっている。
【0021】
従って、絶縁分離トレンチの上部を平坦化するために行われる上記エッチバック工程を、従来手法のように2回に分けて行う必要がなくなるから、その平坦化に要する工数を減らすことができると共に、従来のようなCMP処理を廃止可能となって、そのエッチバック工程を簡略化できるようになり、結果的に製造コストの低減を図り得るようになる。また、側壁酸化膜を形成する前の段階で、トレンチエッチングマスクとして使用されたマスク膜のウエットエッチングによる除去を行う手順となっているから、その側壁酸化膜が、従来手法のように、マスク膜の除去のためのエッチング液により浸蝕される恐れが全くなくなる。この結果、絶縁分離トレンチの上部の平坦性を十分に確保可能となるから、最終的に得られる絶縁分離型半導体装置の品質向上も図り得るようになる。
【0022】
請求項2記載の製造方法によれば、ポリシリコンより成る側壁膜を堆積により形成するための側壁膜形成工程に先立って、トレンチの側壁に対し熱酸化処理を施すことにより比較的薄い膜厚の酸化シリコンより成る下地酸化膜を形成する手法となっているから、上記側壁膜形成工程におけるポリシリコンのデポレートが安定化するようになり、結果的に側壁酸化膜の品質向上を期待できるようになる。
【0023】
請求項3記載の製造方法によれば、ストッパ膜及びトレンチを覆った状態のポリシリコン膜を形成した後に、そのストッパ膜上のポリシリコン膜をドライエッチングによりエッチバックして除去し、これに伴いトレンチ内に残ったポリシリコン膜により側壁膜を形成し、この側壁膜を熱酸化して側壁酸化膜を形成するようになっている。従って、ストッパ膜上のポリシリコン膜を、熱酸化により膜厚が増大する前の段階で除去できて、その除去のためのエッチバック処理を容易に行い得るようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1実施例について図1を参照しながら説明する。
図1には、素子の絶縁分離のために、絶縁分離トレンチ及びその上部のLOCOS構造のフィールド酸化膜を備えた半導体装置の製造するための各工程が模式的な断面図(要部のみ示す:寸法比は正確ではない)によりに示されており、以下、各工程の内容について個別に説明する。
【0029】
(a)マスク形成工程
まず、図1(a)に示すように、単結晶シリコン基板11A(本発明でいう支持基板に相当)上に酸化シリコン膜より成る絶縁分離膜11B(絶縁機能部分に相当)を介して単結晶シリコン層11C(半導体層に相当)を形成したSOI基板11を用意し、その単結晶シリコン層11C上に、酸化シリコン膜12(絶縁膜に相当)、窒化シリコン膜13(ストッパ膜に相当)、酸化シリコン膜14 (マスク膜に相当)を順次成膜すると共に、その三層構造膜をフォトエッチング技術を利用してパターンニングすることによって所定位置に開口部15を形成し、以て層構造のトレンチエッチングマスクを形成する。
【0030】
ここで、単結晶シリコン層11Cを異方性エッチングしてトレンチを形成する際のエッチングマスクとして機能する酸化シリコン膜14は、特に、深さ寸法が大きいトレンチを形成する場合に、そのトレンチエッチング時のマスク性を確保できる膜厚に設定される。また、窒化シリコン膜13は、上記酸化シリコン膜14を除去する際のストッパの機能を果たすものであるが、後述のように、酸化シリコン膜14の除去後において所定形状にパターニングされることにより、選択酸化法(LOCOS法)により厚い酸化シリコン膜より成るフィールド酸化膜を形成する際の熱酸化マスクとしても利用される。さらに、酸化シリコン膜12は、窒化シリコン膜13を成膜する際の応力を緩和することにより、単結晶シリコン層11Cの表面での結晶欠陥の発生を抑止する役目を果たすものである。
【0031】
尚、上記SOI基板11の絶縁分離膜11Bは酸化シリコンより成るものであって、酸化シリコン膜14を後述のようにウエットエッチングにより除去する際にトレンチ底部に露出した部分が同様にエッチングされるため、その絶縁分離膜11Bは、絶縁分離構造の保証耐圧に必要な膜厚が残存するような膜厚を備えた状態とされる(図1では寸法比を正しく表示していないので注意)。
【0032】
(b)トレンチエッチング工程
上記のようなマスク形成工程の実行後には、単結晶シリコン層11Cに対し酸化シリコン膜14をマスクとした状態の異方性ドライエッチングを行うことにより、図1(b)に示すように、絶縁分離膜11Bまで達するトレンチ16を形成する。
【0033】
(c)マスク除去工程
トレンチエッチングマスクとして使用された酸化シリコン膜14を、窒化シリコン膜13をストッパとしたウエットエッチングにより除去する(図1(c)参照)。このウエットエッチング時には、酸化シリコン膜12にサイドエッチ(アンダカット)が発生し、窒化シリコン膜13の端部がひさし状に突き出た状態となる。
【0034】
(d)下地酸化膜形成工程
上記マスク除去工程の実行後には、トレンチ16の側壁(単結晶シリコン層11Cが露出した部分)に対し熱酸化処理を施すことにより、比較的薄い膜厚の酸化シリコンより成る下地酸化膜17を形成する(図1(d)参照)。この下地酸化膜17は、後述するポリシリコン膜18を堆積により成膜する際に、ポリシリコンのデポレートを安定化させるための下地として機能するものであり、従って、その機能の発揮に必要となる程度の膜厚があれば良い。具体的には、下地酸化膜17の膜厚は例えば40nm程度あれば十分であり、これ以下の膜厚となるように制御される。
【0035】
(e)ポリシリコン膜堆積工程
窒化シリコン膜13上の全面にCVD法によりポリシリコンを堆積することにより、その窒化シリコン膜13及びトレンチ16内の酸化シリコン膜17を覆った状態のポリシリコン膜18を形成する。このポリシリコン膜18は、後述する工程で熱酸化されてトレンチ16の側壁酸化膜となるものであり、その膜厚は、熱酸化に伴う膨張量を考慮して設定される。具体的には、例えば、トレンチ16の絶縁耐圧を確保するのに必要な酸化シリコン膜厚(例えば100nm〜600nm)の約1/2程度の値に設定される。
【0036】
(f)ポリシリコン膜整形工程
上記ポリシリコン膜堆積工程とで本発明でいう側壁膜形成工程を構成する工程であり、窒化シリコン膜13上のポリシリコン膜18を、当該窒化シリコン膜13をストッパとしたドライエッチングによりエッチバックして除去する。これにより、トレンチ16内に残ったポリシリコン膜により側壁膜18aが形成される(図1(f)参照)。
【0037】
(g)熱酸化工程
熱酸化処理を施すことによって、ポリシリコンより成る側壁膜18aを完全に熱酸化し、トレンチ16内の下地酸化膜17と一体化された状態の酸化シリコン膜より成る側壁酸化膜19を形成する(図1(g)参照)。つまり、この側壁酸化膜19によって、単結晶シリコン層11Cとの間が完全に絶縁分離され、以て図1(j)に示す絶縁分離トレンチ20の原形が形成される。
【0038】
(h)トレンチ埋め戻し工程
CVD法によって、窒化シリコン膜13上の全面にトレンチ16の開口幅の約1/2以上の膜厚となるようにポリシリコンを堆積することにより、トレンチ16を埋め戻した状態のポリシリコン膜21を成膜する(図1(h)参照)。
【0039】
(i)エッチバック工程
窒化シリコン膜13をストッパとしたドライエッチングを行うことにより、ポリシリコン膜21を酸化シリコン膜12の面までエッチバックする(図1(i)参照)。
【0040】
(j)平坦化工程
上記各工程においてストッパとして使用された窒化シリコン膜13を、選択酸化法(LOCOS法)によりフィールド酸化膜を形成するためのフォトマスクを用いてドライエッチングすることにより所定形状にパターニングし、パターニング後の窒化シリコン膜13を熱酸化マスクとしたLOCOS処理を行い、絶縁分離トレンチ20の上部に対応した位置に厚い酸化シリコン膜より成るフィールド酸化膜22を形成する。つまり、フィールド酸化膜22の形成と同時に、トレンチ16上部のポリシリコン膜21を熱酸化して平坦化処理を行うものであり、これと同時に、トレンチ16内に埋め込まれた状態の埋込ポリシリコン21aが形成される。尚、フィールド酸化膜は、必要に応じて他の位置にも形成される。
【0041】
要するに、本実施例による半導体装置の製造方法は、以下に述べるような特徴を有するものである。
即ち、本実施例では、絶縁分離トレンチ20に必要な比較的大きい膜厚の側壁酸化膜19を形成するに当たって、従来のように、単結晶シリコン層11Aにトレンチ16を形成した後に当該単結晶シリコン層11Aを直接的に酸化するという手法ではなく、トレンチ16の形成時にエッチングマスクとして使用された酸化シリコン膜14をウエットエッチングにより除去した後に、当該トレンチ16内にポリシリコン膜より成る側壁膜18aを形成し、この側壁膜18aを熱酸化して側壁酸化膜19を形成するという手法を採用している。そして、本実施例では、このように側壁酸化膜19を形成した後に、絶縁分離トレンチ20内に埋込ポリシリコン21aのために堆積したポリシリコン膜21のエッチバック工程を1回のドライエッチングで済ませる手順となっている。
【0042】
従って、絶縁分離トレンチ20の上部を平坦化するために行われる上記エッチバック工程を、図4に示した従来手法のように2回に分けて行う必要がなくなるから、その平坦化に要する工数を減らすことができると共に、従来のようなCMP処理を廃止可能となって、そのエッチバック工程を簡略化できるようになり、結果的に製造コストの低減を図り得るようになる。また、側壁酸化膜19を形成する前の段階で、トレンチエッチングマスクとして使用された酸化シリコン膜14のウエットエッチングを行う手順となっているから、その側壁酸化膜19が、図5に示した従来手法のように、上記酸化シリコン膜14のためのエッチング液により浸蝕される恐れが全くなくなる。この結果、絶縁分離トレンチ20の上部の平坦性を十分に確保可能となるから、最終的に得られる絶縁分離型半導体装置の品質向上も図り得るようになる。
【0043】
本実施例では、酸化シリコン膜14をウエットエッチングにより除去するマスク除去工程(図1(c))において、酸化シリコン膜12にサイドエッチが発生し、窒化シリコン膜13の端部がひさし状に突き出た状態となるが、このひさし状の部分の存在が従来手法のようにトレンチ上部の平坦性の悪化原因になることはない。つまり、本実施例では、ポリシリコン膜18を堆積するときのデポレートを安定化させるための下地として、単結晶シリコン層11Aを熱酸化した下地酸化膜17を形成するようにしており、これにより、最終的に得られる側壁酸化膜19の品質向上を図るようにしているが、この下地酸化膜17は、下地としての機能を果たし得る比較的小さな膜厚のもので良いから、その熱酸化に要する時間は短くて済む。このため、マスク除去工程の実行に応じて窒化シリコン膜13の端部がひさし状に突き出た状態となったとしても、当該窒化シリコン膜13の端部が、下地酸化膜形成工程(図1(d))での熱酸化に伴う下地酸化膜17の膨張により持ち上げられて捲れ上がる恐れがなくなる。そして、上記のように窒化シリコン膜13の端部の捲れ上がりがない状態から、その端部部分を覆うようにポリシリコン膜18を形成するポリシリコン膜堆積工程(図1(e))、このポリシリコン膜18をドライエッチングによりエッチバックすることにより、トレンチ16内に残ったポリシリコンより成る側壁膜18aを形成する側壁膜形成工程(図1(f))、その側壁膜18aを完全に熱酸化して酸化シリコン膜より成る側壁酸化膜19を形成する熱酸化工程(図1(g))を順次行う構成となっているため、絶縁分離トレンチ20に必要な絶縁耐圧を確保するための側壁酸化膜19を形成するに当たって、従来の製造方法のように、窒化シリコン膜13の端部の下側に入り込んだポリシリコンによるエッチング残りが発生する虞がなくなり(従来の製造方法では、図6(f)に示すようにポリシリコンのエッチング残り8aが発生する)、トレンチ16上部の平坦性を悪化させる事態を未然に防止できる。
【0044】
ところで、単結晶シリコン層11Cにトレンチ16を形成する際には、その単結晶シリコン層11Cの表面に結晶が欠陥したダメージ層を生ずることが避けられないが、このような状態から熱酸化処理を行うとそのダメージ層を核とした新たな結晶欠陥(OSF:Oxidation induced Stacking Fault)を誘発することが知られている。このため、従来の製造方法のように、トレンチ形成後に単結晶シリコンを直接熱酸化して側壁酸化膜を形成する手法では、上記ダメージ層を核とした結晶欠陥が発生するという問題点があった。これに対して、本実施例では、トレンチ16内に形成したポリシリコン膜より成る側壁膜18aを熱酸化して側壁酸化膜19を形成する手法を採用しているから、単結晶シリコン層11Cでの結晶欠陥の発生を抑制できるというメリットが得られる。
【0045】
さらに、本実施例では、酸化シリコン膜14を除去する際やポリシリコン膜18及び21のエッチバック時にストッパ機能を果たす窒化シリコン膜13を、フィールド酸化膜を選択酸化する際の熱酸化マスクとしても利用する構成となっているから、製造工程の簡略化に寄与できるようになる。
【0046】
(参考例1)
図2には、参考例1による半導体装置の製造方法が模式的な断面図により示されており、以下これについて前記第1実施例と異なる部分のみ説明する。
即ち、この参考例1では、図2(a)〜(e)にそれぞれ示すマスク形成工程、トレンチエッチング工程、マスク除去工程、下地酸化膜形成工程、ポリシリコン膜堆積工程が、第1実施例の図1(a)〜(e)に示した各工程と同様に行われ、この後に以下(f)〜(j)に示す各工程が行われる。尚、この実施例では、上記ポリシリコン膜堆積工程(図2(e))が本発明でいう側壁膜形成工程を構成するものであり、ポリシリコン膜18のうちトレンチ16内に位置する部分が側壁膜として機能する。
【0047】
(f)熱酸化工程
ポリシリコン膜堆積工程(図2(e))で形成したポリシリコン膜18を完全に熱酸化して、窒化シリコン膜13及びトレンチ16内の下地酸化膜17と一体化された状態の酸化シリコン膜23を形成する(図2(f)参照)。そして、後述するように、この酸化シリコン膜23を利用して図2(i)、(j)に示す側壁酸化膜23aが形成されるものであり、当該側壁酸化膜23aによって、単結晶シリコン層11Cとの間が完全に絶縁分離され、以て図2(j)に示す絶縁分離トレンチ24の原形が形成される。
【0048】
(g)トレンチ埋め戻し工程
CVD法によって、酸化シリコン膜23上の全面にポリシリコンを堆積することにより、トレンチ16を埋め戻した状態のポリシリコン膜25を成膜する(図2(g)参照)。
【0049】
(h)エッチバック工程
酸化シリコン膜23をストッパとしたドライエッチングを行うことにより、ポリシリコン膜25をエッチバックする(図2(h)参照)。
【0050】
(i)酸化膜除去工程
酸化シリコン膜23を、窒化シリコン膜13をストッパとした異方性ドライエッチングにより除去して、トレンチ16内に残った酸化シリコン膜23により側壁酸化膜23aを形成する(図2(i)参照)。
【0051】
(j)平坦化工程
窒化シリコン膜13を、選択酸化法(LOCOS法)によりフィールド酸化膜を形成するためのフォトマスクを用いてドライエッチングすることによりパターニングし、そのパターニング後の窒化シリコン膜13を熱酸化マスクとしたLOCOS処理を行い、絶縁分離トレンチ24の上部に位置した厚い酸化シリコン膜より成るフィールド酸化膜26を形成するものであり、これと同時にトレンチ16上部の平坦化が行われると共に、トレンチ16内に埋め込まれた状態の埋込ポリシリコン25aが形成される(図2(j)参照)。
【0052】
要するに、この参考例1の手順は、酸化シリコン膜14をウエットエッチングにより除去した後に当該トレンチ16内にポリシリコン膜18を形成する工程までは前記第1実施例と全く同様であって、当該ポリシリコン膜18をそのまま熱酸化して酸化シリコン膜23を形成すると共に、この酸化シリコン膜23をドライエッチングすることにより側壁酸化膜23aを形成するいう手法を採用している点などに相違があるが、基本的には第1実施例と同様の手法で絶縁分離トレンチ24を形成しており、従って、前述したような第1実施例による効果を同様に得ることができるものである。特に、この参考例1においては、エッチバック工程(図2(h))におけるストッパが、第1実施例のような窒化シリコン膜13ではなく、その上の酸化シリコン膜23であるため、そのエッチバック工程の実行に伴い窒化シリコン膜13が膜減りすることがなくなる。この結果、その窒化シリコン膜13を、その後に行われる平坦化工程(図2(j))におけるLOCOS処理時の熱酸化マスクに兼用する場合に、当該熱酸化マスクを利用したフィールド酸化膜26の形成に悪影響が出る恐れがなくなるというメリットがある。
【0053】
(参考例2)
図3には、参考例2による半導体装置の製造方法が模式的な断面図により示されており、以下これについて前記第1実施例と異なる部分のみ説明する。
即ち、この参考例2では、図3(a)〜(c)にそれぞれ示すマスク形成工程、トレンチエッチング工程、マスク除去工程が、第1実施例の図1(a)〜(c)に示した各工程と同様に行われ、この後に以下(d)〜(h)に示す各工程が行われる。
【0054】
(d)酸化膜堆積工程
例えば、反応源としてTEOSを供給するCVD法(減圧雰囲気で行われるプラズマTEOS−CVD或いは常圧雰囲気で行われるTEOS−O3 −CVDなど)によって、窒化シリコン膜13及びトレンチ16を覆った状態の酸化シリコン膜27を堆積する(図3(d)参照)。このとき、酸化シリコン膜27は、トレンチ16の側壁に堆積される膜厚が当該トレンチ16に必要な絶縁耐圧を確保できる状態となるように堆積される。そして、後述するように、この酸化シリコン膜27を利用して図3(g)、(h)に示す側壁酸化膜27aが形成されるものであり、当該側壁酸化膜27aによって、単結晶シリコン層11Cとの間が完全に絶縁分離され、以て図3(h)に示す絶縁分離トレンチ28の原形が形成される。
【0055】
(e)トレンチ埋め戻し工程
CVD法によって、酸化シリコン膜27上の全面にポリシリコンを堆積することにより、トレンチ16を埋め戻した状態のポリシリコン膜29を成膜する(図3(e)参照)。
【0056】
(f)エッチバック工程
酸化シリコン膜27をストッパとした異方性ドライエッチングを行うことにより、ポリシリコン膜29をエッチバックする(図3(f)参照)。
【0057】
(g)酸化膜除去工程
酸化シリコン膜27を、窒化シリコン膜13をストッパとしたドライエッチングにより除去して、トレンチ16内に残った酸化シリコン膜27により側壁酸化膜27aを形成する(図3(g)参照)。
【0058】
(h)平坦化工程
窒化シリコン膜13を、選択酸化法(LOCOS法)によりフィールド酸化膜を形成するためのフォトマスクを用いてドライエッチングすることによりパターニングし、そのパターニング後の窒化シリコン膜13を熱酸化マスクとしたLOCOS処理を行い、絶縁分離トレンチ28及びその上部に位置した厚い酸化シリコン膜より成るフィールド酸化膜30を形成するものであり、これと同時にトレンチ16上部の平坦化が行われると共に、トレンチ16内に埋め込まれた状態の埋込ポリシリコン29aが形成される(図3(h)参照)。
【0059】
要するに、このような参考例2の手順は、酸化シリコン膜14をウエットエッチングにより除去した後に、当該トレンチ16内にステップカバレージが良好なTEOS−CVD法により酸化シリコン膜27を堆積すると共に、この酸化シリコン膜27をドライエッチングすることにより側壁酸化膜27aを形成するという手法を採用している点に特徴を有し、その後に絶縁分離トレンチ28内に埋込ポリシリコン29aのために堆積したポリシリコン膜29のエッチバック工程を1回のドライエッチングで済ませる手順となっている点などは第1実施例と同様である。従って、前述したような第1実施例による効果を同様に得ることができるものである。また、この参考例2においても、前記参考例1と同様に、エッチバック工程(図3(f))におけるストッパが、窒化シリコン膜13ではなく、その上の酸化シリコン膜27であるため、そのエッチバック工程の実行に伴い窒化シリコン膜13が膜減りすることがなくなり、窒化シリコン膜13を熱酸化マスクとして利用したフィールド酸化膜26の形成に悪影響が出る恐れがなくなるというメリットがある。
【0060】
(その他の実施の形態)
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
第1実施例及び参考例1において、ポリシリコン膜18を堆積する際の下地となる下地酸化膜17は必要に応じて設ければ良く、従って、下地酸化膜形成工程(図1(d)、図2(d)参照)は省略可能である。要するに、上記下地酸化膜17を形成する工程は、本願発明の構成要件となるものではない。
参考例2では、酸化膜堆積工程(図3(d)参照)において、TEOSを利用したCVD法により酸化シリコン膜27を堆積する手法を採用しているが、他の方法でも十分なステップカバレージが得られる場合には、このようなTEOSを用いる手法を採用する必要はない。
【0061】
単結晶シリコン基板11Aを支持基板としたSOI基板11を利用する例で説明したが、支持基板の材料としては、単結晶シリコン基板に限らず、他の半導体基板或いは絶縁性を有するセラミック基板やガラス基板などを用いることができ、特に、絶縁性を有する基板を用いる場合には絶縁分離膜(上記した各実施例の場合、酸化シリコン膜より成る絶縁分離膜11B)が不要になる(例えば、SOS(Silicon On Sapphire )基板を用いる場合が該当する)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例による製造工程の流れを示す模式的断面図
【図2】 参考例1を示す図1相当図
【図3】 参考例2を示す図1相当図
【図4】 第1の従来例を示す図1相当図
【図5】 第2の従来例を示す図1相当図
【図6】 第3の従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
11はSOI基板、11Aは単結晶シリコン基板(支持基板)、11Bは絶縁分離膜(絶縁機能部分)、11Cは単結晶シリコン層(半導体層)、12は酸化シリコン膜(絶縁膜)、13は窒化シリコン膜(ストッパ膜)、14は酸化シリコン膜(マスク膜)、15は開口部、16はトレンチ、17は下地酸化膜、18はポリシリコン膜、18aは側壁膜、19は側壁酸化膜、20は絶縁分離トレンチ、21はポリシリコン膜、21aは埋込ポリシリコン、22はフィールド酸化膜、23は酸化シリコン膜、23aは側壁酸化膜、24は絶縁分離トレンチ、25はポリシリコン膜、25aは埋込ポリシリコン、26はフィールド酸化膜、27は酸化シリコン膜、27aは側壁酸化膜、28は絶縁分離トレンチ、29はポリシリコン膜、29aは埋込ポリシリコン、30はフィールド酸化膜を示す。
Claims (3)
- 支持基板上に当該支持基板と電気的に絶縁した状態で形成された半導体層に対し、当該絶縁機能部分まで達する絶縁分離トレンチを形成して成る絶縁分離型半導体装置の製造方法において、
前記半導体層上に、絶縁膜、酸化半導体材料に対しエッチング選択性を有する材料より成るストッパ膜、酸化半導体材料より成るマスク膜を順次成膜すると共に、それらの膜に前記絶縁分離トレンチの形成位置に対応した開口部を形成することにより層構造のトレンチエッチングマスクを形成するマスク形成工程と、
前記半導体層に対し、前記トレンチエッチングマスクを使用した異方性ドライエッチングを行うことにより、前記開口部と対応した位置に前記絶縁機能部分に達するトレンチを形成するトレンチエッチング工程と、
前記マスク膜をウエットエッチングにより除去するマスク除去工程と、
前記トレンチの側壁にポリシリコンより成る側壁膜を堆積により形成する側壁膜形成工程と、
熱酸化処理により前記側壁膜を熱酸化することにより前記トレンチ内に側壁酸化膜を形成する熱酸化工程、
ポリシリコンを堆積することにより前記トレンチを埋め戻すトレンチ埋め戻し工程と、
前記トレンチ埋め戻し工程で堆積されたポリシリコン膜をエッチングするエッチバック工程と、
前記トレンチ上部のポリシリコン膜を熱酸化して平坦化する平坦化工程とを含み、
前記エッチバック工程の後に、酸化シリコン膜を除去する工程を含まないことを特徴とする絶縁分離型半導体装置の製造方法。 - 前記側壁膜形成工程に先立って、前記トレンチの側壁に対し熱酸化処理を施すことにより比較的薄い膜厚の酸化シリコンより成る下地酸化膜を形成する下地酸化膜形成工程を実行することを特徴とする請求項1記載の絶縁分離型半導体装置の製造方法。
- 前記側壁膜形成工程は、前記ストッパ膜及びトレンチを覆った状態のポリシリコン膜を形成するポリシリコン膜堆積工程と、前記ストッパ膜上のポリシリコン膜を当該ストッパ膜をストッパとしたドライエッチングによりエッチバックして除去することにより、前記トレンチ内に残ったポリシリコン膜により前記側壁膜を形成するポリシリコン膜整形工程とにより構成され、
前記エッチバック工程では、前記埋め戻し工程で堆積されたポリシリコン膜のエッチングを前記ストッパ膜をストッパとして行うことを特徴とする請求項1または2記載の絶縁分離型半導体装置の製造方法。
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