JP4660716B2 - 凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物及びその印刷物 - Google Patents

凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物及びその印刷物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性ワイピング液で過剰インキを除去でき、紫外線によるインキ表面乾燥性に優れ、インキ皮膜の柔軟性が高い凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物及びその印刷物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
凹版印刷物は独特の手触り感があり、また、細かくシャープな画線が特徴であり、特殊な印刷機を用いなければ、実現できないことから、偽造防止という観点から、凹版印刷方式は、銀行券をはじめとし、国債、株券、商品券等金券の印刷に多用されている。
【0003】
一方、紫外線照射によって乾燥するインキが、印刷速度の高速化、印刷物の耐候性等の理由から、多く利用されるようになっている。しかし、紫外線を吸収する顔料が分散されているインキの場合、硬化しうるインキ皮膜の厚さは数μmが限界であり、従って、インキ皮膜厚さの薄いオフセット印刷では紫外線照射によって乾燥するインキが原理的に可能で、広く一般化されているが、凹版印刷の分野では、紫外線硬化システムは利用できていない。本発明者らは、このような理由から、表面を紫外線照射で硬化することによって裏移りを防止し、インキ内部の未硬化部分を酸化重合で徐々に硬化する紫外線硬化及び酸化重合機能を併せ持つインキ、及びそれを使用した印刷物を出願し、特公平8-892に公告された。
【0004】
このインキは、紫外線が届かなかったインキ内部を、酸化重合成分から生成するラジカルによって未反応の紫外線硬化成分の重合を行い硬化させるものである。この反応は、顔料の種類に制約を受けないため、紫外線硬化性材料、酸化重合性材料、光重合開始剤、酸化重合触媒を適宜組み合わせることにより、種々のインキに対応可能であることは特公平8-892に記載したところである。
【0005】
凹版印刷では、版面上の余剰凹版インキをふき取る工程が存在し、このふき取り工程は、ペーパーワイピング方式とロールワイピング方式があるが、廃棄物の量や印刷スピードなどの理由から、大量印刷の場合、主にロールワイピング方式が用いられている。ロールワイピング方式はふき取ったインキを油性溶液又は界面活性剤を含む水性溶液に分散又は溶解することによって、連続的にワイピングを可能としている。油性溶液を用いる場合を油性ワイピング、水性溶液を利用する場合を水性ワイピングと称しているが、作業環境への負荷の少なさから水性ワイピング方式が主流となっている。
【0006】
紫外線硬化及び酸化重合機能を併せ持つ凹版インキにおいて、水性ワイピングと、より高速印刷に適用可能なインキ皮膜表面の硬化速度の早いインキが求められ、更に、インキ皮膜が厚いために、他の印刷方式に比べ、より折り曲げに強い柔軟性の高い皮膜が必要となってくる。しかしながら、インキ構成成分のビヒクルのうち、表面硬化性と皮膜の柔軟性に大きな影響を及ぼす紫外線硬化成分には、紫外線硬化型オフセットインキのビヒクル主成分に用いられる硬化性に優れるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等は、硬化皮膜が堅く、脆くなることと、アルカリ水溶液に溶解又は分散しないことから用いることはできない。
【0007】
アルカリ水溶液または水に溶解する紫外線硬化成分として、分子中にカルボキシル基を付けて、アルカリ水溶液に溶解するようにしたアクリル酸エステルがある。例えば、特公平7-21015、特公平7-21016、においては、無水マレイン酸とビニル化合物の共重合体に、水酸基含有アクリレートを反応させた化合物が開示されている。特開平6-298851においては、酸無水物基を有する化合物(具体的には不飽和酸無水物とこれと共重合可能なラジカル重合性モノマーを重合することによって得られるポリマー、共役二重結合に無水マレイン酸を付加した化合物、酸無水物基を2個以上有する化合物とポリヒドロキシ化合物を酸無水物基が過剰になるように反応させたもの)にヒドロキシエチルアクリレートを反応させ、生成するカルボキシル基を三級アミンで中和する水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂が開示されている。特開平5-140251、特開平6-16751には、エポキシアクリレートに多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有アクリレートを中和し水溶性にした樹脂が開示されている。また、ノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸を反応させたのち、生成する水酸基に酸無水物を反応させ、カルボキシル基を生じさせた活性エネルギー線硬化型樹脂が知られている。これを発展させ、水酸基の一部をウレタン結合を介して高分子量化を図ったものが特開平6-93082に開示されている。ノボラック型エポキシとは異なるが、ポリウレタン樹脂に陰イオン性親水基を含有するように製造し、三級アミンで中和した水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂が特開平7-102037に開示されている。さらに、特開平6-93065、特開平6-157691、特開平6-157695には、四級アンモニウムハライドを有するポリオール化合物と水酸基含有アクリレートをポリイソシアネート化合物で結合させたウレタンアクリレートが開示されている。特開平10-195361には、カルボキシル基を有する数平均分子量1,000〜15,000のポリマーに、エポキシ環構造を有する(メタ)アクリレートを一部付加したアクリル酸エステルが開示されている。これらのアクリル酸エステルは、目的とする、粘度、機械的特性を調整するために、種々の材料を選択可能であるが、やはり、速硬化性の点からは不十分である。
【0008】
上記のアルカリ可溶または水溶性アクリル酸エステルはいずれも硬化性が高くなく、凹版印刷においては50m/min以上の印刷速度には適用できず、かなりのブロッキングが生じ、裏移りが生じる場合もある。
【0009】
非常に硬化性が高いアルカリ可溶アクリル酸エステルとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに近い硬化性が得られるペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基に酸無水物を付加させたアクリレートが考えられるが、分子量が小さい割に架橋密度が高くなることから、硬化皮膜は堅く脆くなるため、凹版インキ用ビヒクルに利用することは難しい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のことから、本発明は前述した問題点を解決することを目的としたもので、紫外線による優れた表面硬化性を有し、高速印刷に伴い生じる裏移り、ブロッキングを発生せずに、かつ、余剰インキをふき取る際に、作業環境の問題から油性ワイピング方式を使用せず、水あるいはアルカリ水溶液に溶解又は分散でき、かつ、硬化したインキ皮膜の柔軟性が高い紫外線硬化と酸化重合を併用した凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物及びその印刷物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、以上のような実状に鑑み鋭意検討した結果、一分子中に多数の水酸基を有するポリグリセリンとアクリル酸の縮合によって製造するアクリル酸エステル、及びポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させたエポキシアクリレートが水溶性で、紫外線硬化性が高く、他の水溶性アクリル酸エステルで希釈した組成物にした場合、ノボラックエポキシアクリレートの酸無水物変性物と同程度の硬化物柔軟性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
▲1▼本発明は、平均繰り返し単位数が4以上、20以下のポリグリセリンとアクリル酸を脱水縮合し得られるアクリル酸エステル、及びポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させ得られるエポキシアクリレートの少なくとも一つを含有する紫外線硬化性材料、酸化重合性材料、光重合開始剤及び酸化重合触媒を必須成分としてなる凹版インキ用樹脂組成物である。
【0013】
また、▲2▼本発明は、▲1▼記載の平均繰り返し単位数が4以上、20以下のポリグリセリンとアクリル酸を脱水縮合して得られるアクリル酸エステルは、1分子当たりのアクリル酸エステル基数が4以上、22以下のアクリル酸エステルであることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物である。
【0014】
また、▲3▼本発明は、▲1▼記載のポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレートは、1分子当たりのアクリル酸エステル基数が4以上、22以下であることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物である。
【0015】
また、▲4▼本発明は、▲1▼記載において、酸化重合性材料が、乾性油又は半乾性油、あるいは乾性油又は半乾性油から変性された材料であることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物である。
【0016】
また、▲5▼本発明は、▲1▼記載において、紫外線硬化性材料と酸化重合性材料の構成比が95:5〜75:25(重量%:重量%)の範囲にあることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物である。
【0017】
また、▲6▼本発明は、▲1▼記載の凹版インキ用樹脂組成物に各種顔料を練合したインキ組成物である。
【0018】
また、▲7▼本発明は、▲6▼記載のインキ組成物に、ハイドロキノン及びメチルハイドロキノンの少なくとも一つを配合することを特徴とするインキ組成物である。
【0019】
また、▲8▼本発明は、▲6▼又は▲7▼記載のインキ組成物で凹版印刷されたことを特徴とする印刷物である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のインキは、表面を紫外線で硬化させ、裏移りを防止し、紫外線が透過しなかったインキ皮膜内部は、乾性油変性又は半乾性油変性のアルキド樹脂あるいは乾性油、半乾性油自身の酸化重合によって生成するラジカルによってアクリル酸エステルの硬化を起こし、インキ全体を硬化させるインキであり、その構成材料のうち、紫外線硬化成分に、ポリグリセリンとアクリル酸を縮合反応させたポリグリセリンのアクリル酸エステル、又はポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させたエポキシアクリレートを必須成分とすることを特徴とするインキである。
【0021】
ポリグリセリンとアクリル酸を縮合させたポリグリセリンのアクリル酸エステルは、通常のアクリル酸エステルの合成と同様に、ポリグリセリンとアクリル酸を酸触媒で80〜110℃に加熱することにより合成される。ポリグリセリンは、グリセリンが縮合した、一分子中に水酸基を6個以上有する化合物であり、水酸基を6〜12個有するポリグリセリンは市販されている。本発明で用いるポリグリセリンのアクリル酸エステルのポリグリセリンの繰り返し単位数は4以上、20以下で、好ましくは6以上、20以下である。ポリグリセリンの繰り返し単位数が3以下では水溶性が高くなく、ポリグリセリンの繰り返し単位数が20を超えると粘度が高くなりすぎ、粘度調整に必要な希釈アクリル酸エステルが増加し、硬化性が悪化するために好ましくない。また、繰り返し単位数が4以上、20以下のポリグリセリンとアクリル酸を縮合させた場合、十分な硬化性が得られるエステル化率60%〜100%まで反応させると、ポリグリセリン1分子当たり4〜22個の範囲のアクリロイル基を有するポリグリセリンのアクリル酸エステルが得られる。
【0022】
ポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させたエポキシアクリレートはポリグリセリンのエポキシ化物とアクリル酸を触媒存在下に無溶媒で付加反応を行わせることによって合成させる。ポリグリセリンのグリシジルエーテルとしては、市場からはナガセ化成工業(株)のデナコールEX-512、EX-521が入手可能である。また、ポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させたエポキシアクリレートも市場から入手可能なものもある。骨格となるポリグリセリンはポリグリセリンのアクリル酸エステルと同様に、平均繰り返し単位数が4以上、20以下のものが好ましく、粘度と硬化性から、4以上、10以下のものが特に好ましい。また、1分子当たりのアクリロイル官能基数は、4〜22の範囲が好ましく、4〜12の範囲が特に好ましい。
【0023】
紫外線硬化成分は、更に粘度や硬化皮膜の物性を調整するために、ポリグリセリンのアクリル酸エステル、又はポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させたエポキシアクリレート以外の、種々の水溶性あるいはアルカリ可溶性重合性単量体、オリゴマー類を加えることができる。他の水溶性あるいはアルカリ可溶性重合性単量体としては、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、カルボキシル基含有アクリレート等が挙げられる。オリゴマー類としては、上記したカルボキシル基含有ウレタンアクリレート、カルボキシル基含有エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0024】
他の構成成分は、特公平8-892に記載したとおりであるが、再度記すと、酸化重合性材料は、酸化によってラジカルが生成することが必要であるため、乾性油変性又は半乾性油変性のアルキド樹脂、あるいは、乾性油又は半乾性油そのもの、更にはそれらから誘導された種々の構造の材料が使用可能で、不飽和脂肪酸が分子中に存在することが必要条件である。
【0025】
本発明の紫外線硬化性材料と酸化重合性材料の構成比は95:5〜75:25(重量%:重量%)の範囲で用いる。これより紫外線硬化性材料が少なくなると、印刷後のインキ皮膜表面の紫外線硬化性が低下し裏移りやブロッキングを引き起こす。これより酸化重合成分が少なくなると、酸化重合が不十分で、インキの硬化不良が生じる場合がある。
【0026】
本発明の光重合開始剤は、市販の各種光重合開始剤が利用できる。これらは単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて使用することが可能である。その使用量は、重合開始剤の種類によって異なる。また、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の光重合開始助剤を添加することもできる。
【0027】
本発明の酸化重合触媒は、コバルト、マンガン、鉛、鉄等の金属化合物、ホウ酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、一酸化鉛等である。
【0028】
本発明の凹版インキ用樹脂組成物は、紫外線硬化性材料と酸化重合性材料の混合材料100重量部当たり、酸化重合性材料5〜25重量部、光重合開始剤2〜10重量部、酸化重合触媒0.5〜3重量部の配合範囲が好ましい。
【0029】
上記凹版インキ用樹脂組成物に有機顔料、無機顔料及びワックス等の添加剤を加えて練合することにより本発明のインキ組成物を得る。練合方法は特に限定されるものではない。
【0030】
上記インキの保存安定性を向上させるために、重合禁止(抑制)剤を添加することが通常必要である。本発明の重合禁止(抑制)剤としては、公知の重合禁止(抑制)剤、例えば、p-メトキシフェノール、ハイドロキノン等が使用できるが、ハイドロキノン、メチルヒドロキノンが特に好ましい。重合禁止(抑制)剤の種類によってその添加量は異なる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。本実施例は、下記の合成例により紫外線硬化性材料を作製し、ゲル分率、皮膜の柔軟性の評価を行った。ゲル分率、皮膜の柔軟性の評価結果については図1に示す。更に、作製した紫外線硬化性材料毎に図2の配合割合で凹版インキを作製し、ブロッキングの評価を行った。
ブロッキングの評価結果については図3に示す。
【0032】
(合成例1)
空気導入管、温度計及び撹拌機を備えたガラス製セパラブルフラスコに、ポリグリセリン#750(阪本薬品工業製)150g、アクリル酸(大阪有機化学工業製)225ml、メチルヒドロキノン0.38g、p−トルエンスルホン酸5g、ベンゼン200mlを仕込んだ。次に、この混合溶液に空気を吹き込みながら撹拌し、80℃に加熱した。脱水反応によって生成する水は、ベンゼンと共に流出してくるので、水分受け器で受けてオーバーフローしたベンゼンは反応系内に戻すようにした。16時間反応後、減圧にして、ベンゼンとアクリル酸を反応系外に留去した。冷却後、酸価を測定し、中和に必要な水酸化ナトリウムを水300mlに溶解したアルカリ水溶液を徐々に滴下した。有機層を分取後、有機層の酸価が3mgKOH/g以下になるまで水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに硫酸ナトリウム水溶液で2回洗浄した。得られた水を多量に含むアクリル酸エステルから減圧下で水を除去し、230gのアクリル酸エステルが得られた。このようにして得たポリグリセリンのアクリル酸エステルのエステル化率は、原料と生成物の水酸基価の測定から、85%であった。この材料53gとポリエチレングリコール400ジアクリレート47gを混合し、水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂を得た。得られた水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、実施例1の紫外線硬化性材料を作製した。
【0033】
(合成例2)
空気導入管、温度計及び撹拌機を備えたガラス製セパラブルフラスコに、ポリグリセリンPGL06(ダイセル化学工業製)150g、アクリル酸(大阪有機化学工業製)266ml、メチルヒドロキノン0.43g、p−トルエンスルホン酸5g、ベンゼン200mlを仕込んだ。以下は、実施例1と同様に行い、270gのアクリル酸エステルが得られた。このようにして得たポリグリセリンのアクリル酸エステルのエステル化率は、原料と生成物の水酸基価の測定から、79%であった。この材料48gとポリエチレングリコール400ジアクリレート52gを混合し、水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂を得た。得られた水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、実施例2の紫外線硬化性材料を作製した。
【0034】
(実施例3の水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂)
新中村化学工業株製のNKオリゴEA-5323 34gとポリエチレングリコール400ジアクリレート66 gを混合し、水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂を得た。得られた水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、実施例3の紫外線硬化性材料を作製した。
【0035】
(合成例3)
フェノールノボラックエポキシ樹脂EPPN-201(日本化薬製、エポキシ当量187)187gにアクリル酸74g、ポリエチレングリコール400ジアクリレート600g、メチルハイドロキノン0.1gを加え、ジメチルベンジルアミン0.6gを加え、110℃で13時間反応させ、酸価が3.0以下になったことを確認後、30℃まで冷却し、テトラヒドロ無水フタル酸150gを加え、更に110℃で3時間反応させ、混合物を得た。得られた混合物100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、比較例1の紫外線硬化性材料を作製した。
【0036】
(合成例4)
スチレン無水マレイン酸コポリマーSMA1000(elf atochem製)101gをメチルエチルケトン100mlに加え、80℃に加熱し溶解後、ヒドロキシエチルアクリレート65g、ピリジン0.5g、p-メトキシフェノール0.4gを加え、90℃で4時間撹拌した。冷却後水に投入し、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾取し、乾燥させた。得られたポリマー28gをポリエチレングリコール400ジアクリレート72gに溶解させ、混合物を得た。得られた混合物100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、比較例2の紫外線硬化性材料を作製した。
【0037】
(合成例5)
イソブチレン無水マレイン酸コポリマーイソバン600(クラレ製)100gをジメチルホルムアミド200mlに加え、100℃に加熱し溶解後、ヒドロキシエチルアクリレート84g、ピリジン0.7g、p-メトキシフェノール0.5gを加え、90℃で4時間撹拌した。冷却後水に投入し、ポリマーを析出させた。ポリマーを濾取し、乾燥させた。得られたポリマー24gをポリエチレングリコール400ジアクリレート76gに溶解させ、混合物を得た。得られた混合物100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、比較例3の紫外線硬化性材料を作製した。
【0038】
(合成例6)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成製M-305)295gに無水コハク酸100gを加え、メチルヒドロキノン0.2g、ジメチルベンジルアミン1gを加え、120℃で3時間撹拌した。これにポリエチレングリコール400ジアクリレートを6.1g加え、混合物を得た。得られた水溶性活性エネルギー線硬化型樹脂100重量部に対してイルガキュア907(チバスペシャリティケミカル製)3重量部を混合し、比較例4の紫外線硬化性材料を作製した。
【0039】
(実施例1〜3、比較例1〜4)
実施例1〜3、比較例1〜4の紫外線硬化性材料を下記の(1)、(2)の方法によりゲル分率、皮膜の柔軟性の評価を行った。これらの評価結果については図1に示す。
【0040】
(1)ゲル分率
ガラス板上に約100μmの厚さで塗布し、種々の紫外線照射量で紫外線を照射し、硬化皮膜を作製した。この硬化皮膜のメチルエチルケトンに溶解しない部分の割合(ゲル分率)を求めた。
【0041】
(2)皮膜の柔軟性
ガラス板上に100μmの厚さで塗布し、380mJ/cm2の紫外線照射量で紫外線を照射し、15mm×100mmの硬化皮膜を作製した。この皮膜を引張試験機テンシロンUTM-3-500(東洋ボールドウィン製)で引張試験(引張速度5mm/min、スパン5cm)を実施し、伸び率と引張強度を求めた。
【0042】
次に、実施例1〜3、比較例1〜4の紫外線硬化性材料毎に図2の配合組成により凹版インキを三本ロールミルで作製し、下記の(3)の方法によりブロッキング性の評価を行った。評価結果については図3に示す。
【0043】
(3)ブロッキング性
図2に示す配合組成に従って、凹版インキを作製し、画線深度100μmの凹版版面で 65mm×160mmの坪量86g/m2の用紙に凹版印刷を行い、印刷直後にコンベア速度:50m/min、紫外線ランプ:空冷式120W/cmメタルハライドランプ1灯の条件で紫外線を照射し、印刷面側に同じ大きさの用紙を重ね、ガラス板に挟んで、215kg/m2の加重をかけた。1日放置後、印刷された用紙から上に重ねた用紙を剥離するために要する力の大きさ(剥離強度)を測定した。
【0044】
比較例1〜3は実施例1〜3より速硬化性の点で不十分であり、比較例4は実施例1〜3より柔軟性の点で凹版インキ用材料としては実用に耐えない。
【0045】
【発明の効果】
本発明の凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物は、紫外線による優れたインキ表面硬化性を有するため、高速印刷における裏移り、ブロッキングを防止し、かつ、余剰インキをふき取る際に水あるいはアルカリ水溶液に溶解又は分散するため、水性ワイピングによって余剰インキは洗浄可能で、また、このインキ硬化皮膜は凹版インキとして折り曲げ強度に強い十分な柔軟性が得られ、印刷画線の耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】紫外線硬化材料におけるゲル分率及び皮膜の柔軟性の評価結果を示す図である。
【図2】凹版インキの配合割合を示す図である。
【図3】凹版インキのブロッキングの評価結果を示す図である。

Claims (8)

  1. 水性ワイピング液で洗浄可能な凹版インキ用樹脂組成物であって、平均繰り返し単位数が4以上、20以下のポリグリセリンとアクリル酸を脱水縮合し得られるアクリル酸エステル、及びポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレートの少なくとも一つを含有する紫外線硬化性材料、酸化重合性材料、光重合開始剤及び酸化重合触媒を必須成分としてなる凹版インキ用樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の平均繰り返し単位数が4以上、20以下のポリグリセリンとアクリル酸を脱水縮合して得られるアクリル酸エステルは、1分子当たりのアクリル酸エステル基数が4以上、22以下のアクリル酸エステルであることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物。
  3. 請求項1記載のポリグリセリンのグリシジルエーテルにアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレートは、1分子当たりのアクリル酸エステル基数が4以上、22以下であることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物。
  4. 請求項1記載において、酸化重合性材料が、乾性油又は半乾性油、あるいは乾性油又は半乾性油から変性された材料であることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物。
  5. 請求項1記載において、紫外線硬化性材料と酸化重合性材料の構成比が95:5〜75:25(重量%:重量%)の範囲にあることを特徴とする凹版インキ用樹脂組成物。
  6. 請求項1記載の凹版インキ用樹脂組成物に各種顔料を練合したインキ組成物。
  7. 請求項6記載のインキ組成物に、ハイドロキノン及びメチルハイドロキノンの少なくとも一つを配合することを特徴とするインキ組成物。
  8. 請求項6又は7記載のインキ組成物で凹版印刷されたことを特徴とする印刷物。
JP2000223192A 2000-07-25 2000-07-25 凹版インキ用樹脂組成物、それを用いたインキ組成物及びその印刷物 Expired - Lifetime JP4660716B2 (ja)

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