JP4656835B2 - 透明導電性フィルムの製造方法。 - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波シールドフィルム、タッチパネル等の用途に用いることができる透明導電性フィルムの製造方法に関するものである。
近年、情報化社会が急速に発達するに伴って、情報関連機器に関する技術が急速に進歩し普及してきた。この中で、ディスプレイ装置は、テレビジョン用、パーソナルコンピューター用、駅や空港などの案内表示用、その他各種情報提供用に用いられている。特に、近年プラズマディスプレイが注目されている。
このような情報化社会の中にあって、これらのディスプレイ装置から放射される電磁波の影響が心配されている。例えば、周辺の電子機器への影響や人体への影響が考えられている。特に、人体の健康に及ぼす影響は無視することができないものになっており、人体に照射される電磁界の強度の低減が求められ、このような要求に対して様々の透明導電性フィルム(電磁波シールドフィルム)が開発されている。例えば、特開平9−53030号、同平11−126024号、特開2000−294980号、同2000−357414号、同2000−329934号、同2001−38843号、同2001−47549号、同2001−51610号、同2001−57110号、同2001−60416号公報等に開示されている。
これらの透明導電性フィルムの製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって透明樹脂フィルム上に金属薄膜を形成させる方法が一般的に用いられている。近年、透明導電性フィルムの需要が拡大する中にあって、低コストで生産性が高い製造方法が求められている。
また、透明導電性フィルムに求められる性能として導電性と光透過率があるが、導電性を高くするにはある程度の厚みの金属薄膜が必要であり、それによって透過率が低下するという問題がある。従って、導電性が高くかつ光透過率が高い導電性フィルムが求められている。
本発明が対象とする銀薄膜の形成方法は、特公昭42−23745号公報にその基本的な技術が記載されている(特許文献1)。さらに近年の透明導電性フィルムに要求される導電性と透過率を同時に満足させること、及び反射フィルムに要求される高い金属光沢を満足させるために、特開2003−77350号には、改良された銀薄膜形成フィルムの製造方法に関する技術が記載されている(特許文献2)。しかしながら透明電磁波シールドフィルムのような高い導電性が求められる応用に対しては、上記特許公報に記載された方法では不十分であった。
特公昭42−23745号公報(第1頁〜第3頁) 特開2003−77350号公報(第4頁〜第5頁)
従って、本発明の目的は、透明導電性フィルムの製造方法において、導電性が高い透明導電性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
(1)透明支持体上に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する感光材料を露光し、物理現像処理により前記物理現像核層上に像様に金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核層及び金属銀よりも上に存在する層を除去する透明導電性フィルムの製造方法であって、前記物理現像を、臭化物を含む物理現像処理液で行うことを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
(2)前記物理現像を、臭化物濃度が1×10-4モル/L以上1×10-2モル/L以下の物理現像処理液で行うことを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルムの製造方法。
本発明の製造方法で作成した透明導電性フィルムは、透明性が高く、金属銀の導電性が高いために、メッキなしでも高い表面電導性が要求される応用が可能になった。また、さらに高い導電性が必要な応用に対しても金属銀の導電性が高く、メッキが容易かつ均一に施すことができるために、透明導電性フィルムを低コストで生産性高く製造することが可能となった。
本発明における感光材料(以下、透明導電性フィルムの前駆体)は、透明支持体上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤を支持体に近い方からこの順で有する。さらには、非感光性層を支持体から最も遠い最外層に含有していても良い。非感光性層は、親水性ポリマーを主たるバインダーとする層である。ここでいう親水性ポリマーとは、後述するアルカリ処理液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層までアルカリ処理液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール、等を用いることができる。特に好ましい親水性バインダーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20質量%〜100質量%の範囲が好ましく、特に30質量%〜80質量%が好ましい。
この非感光性層には、必要に応じて写真業界では公知の界面活性剤、ポリマーラテックス、マット剤、滑り剤、などを含有してもよい。また後述するように、セーフライト耐性向上のために染料を含有させることは好ましい。さらに、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
本発明における物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属流化物等が挙げられる。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法によってプラスチック樹脂フィルム上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
物理現像核層には、親水性バインダーを含有してもよい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。好ましい親水性バインダーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。
本発明においては、物理現像核層と透明支持体の間にタンパク質からなるベース層(タンパク質含有ベース層;以降、単にベース層と云う)を有することは好ましい。透明支持体とベース層の間には、更に塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を有することは好ましい。ベース層に用いられるタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。ベース層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり10〜300mgが好ましい。
本発明において物理現像核層には、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド類、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロートリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN、N、N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々タンパク質の架橋剤(硬膜剤)の一種もしくは二種以上を含有することは好ましい。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、ベース層及び物理現像核層に含まれる合計のタンパク質に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
物理現像核層やベース層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、当業界では周知の方法が用いられる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
本発明で用いられるハロゲン化銀乳剤は、必要に応じて粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、ロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
また本発明において、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
本発明の透明導電性フィルム前駆体には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
本発明の透明導電性フィルム前駆体を用い、透明導電性フィルムを作製するための1つの方法として、例えば網目状パタンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パタンに露光されるが、露光方法として、網目状パタンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、450nm以下の発振波長の持つレーザー光、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることによって、後述する明室下(明るいイエロー蛍光灯下)でも取り扱いが可能となる。
本発明において、ハロゲン化銀乳剤層は450nm以上の波長の光に対して実質的に感光性を有しないようにするのが好ましい。このハロゲン化銀乳剤層を用いることによって、450nm以下の短波長の光を実質的に除去したイエロー蛍光灯下での取り扱いが可能となる。
本発明において、450nm以上の光に実質的に感光性を有しないとは、セーフライトとして約450nmより短波長の光を実質的に除去したイエロー蛍光灯(例えばNEC社製の純黄色蛍光灯FL−40SYF/M)を使用し、180ルックスの光が当たるようにして、その条件で5分間照射しても、照射前後で銀錯塩拡散転写現像での析出銀量に差(10%以内)が生じないことを意味する。
450nm以上の光に実質的に感度を有しないハロゲン化銀乳剤層を得る手段としては、例えば、ハロゲン化銀の粒子サイズの調整、ハロゲン化銀組成の調整、ロジウム塩の添加、メルカプト化合物等のカブリ防止剤の添加、有機減感剤の添加、450nm〜600nmの波長光を主として吸収する非増感性染料もしくは顔料の添加、またはこれらを適宜組み合わせることによって実現できる。
上記した有機減感剤は、ポーラログラフ半波電位、即ち、ポーラログラフィーで決定されるその酸化還元電位によって特徴づけられる。本発明に有効な有機減感剤としては、ポーラログラフ陽極電位とポーラログラフ陰極電位の和が正であるものである。これらの酸化還元電位の測定については、例えば、米国特許第3,501,307号明細書に記載されている。この様な有機減感剤の具体例は、数多くの特許明細書、文献に記載されており、それらはいずれも本発明に使用することができる。例えば、特公昭36−17595、同昭40−26751、同昭43−13167、同昭45−8833、同昭47−8746、同昭47−10197、同昭50−37530、特開昭48−24734、同昭49−84639、同昭56−142525、米国特許第2,271,229号、同第2,541,472号、同第3,035,917号、同第3,062,651号、同第3,124,458号、同第3,326,687号、同第3,671,254号等に記載の化合物が使用できる。
上記有機減感剤の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり0.01mg〜5gで、好ましくは、0.01mg〜1gである。
上記非増感性染料又は顔料は、例えば米国特許第2274782号、同第2527583号、同第2533472号、同第2464785号、同第261112号、同第2598660号、同第3005711号、同第2494032号、同第2956879号、同第3282699号、同第3615608号、同第3840375号、英国特許第1253933号、同第1338799号、西独公開特許第2026252号、同第2127327号、同第2321470号、同第2347590号、特開昭48−17322号、同昭48−85130号、同昭49−114420号、同昭50−23221号、同昭50−28827号、同昭50−115815号、同昭51−10927号、同昭51−77327号、同昭52−29727号、同昭52−65426号、同昭52−108115号、同昭52−111717号、同昭52−128125号、同昭55−29804号、同昭55−33103号、同昭55−33104号、同昭55−46752号、同昭55−88047号、同昭55−155350号、同昭55−161232号、同昭55−161234号、同昭55−120660号、同昭63−64039号、特公昭46−12242号等に記載されている。これらの中で、450nm〜600nmの波長の光を吸収しうる物であればその種類に関係なく用いることができる。例えばオキソノール系、アゾ系、キサンテン系、シアニン系、トリフェニルメタン系、スチリル系、メロシアニン系、アントラキノン系、インドフェノール系等が挙げられる。
上記した非増感性染料又は顔料は、450nm〜600nmの波長光を主として吸収することができる染料又は顔料である。好ましくは、層中でその様な波長域に極大吸収を有するものである。ただし、450nm、特に600nmの数値は、厳密な物でなく450nm〜600nmの範囲の波長光に対して十分な吸収を有していれば使用することができる。上記した染料または顔料は、ハロゲン化銀乳剤層、より好ましくは支持体から見てハロゲン化銀乳剤層より遠い側に位置する非感光性層に含有することができる。添加量は、1平方メートル当たり、約5mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として、0.3以上である。
上記した非増感性染料又は顔料と同様で、かつハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有するものを、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としては、好ましくは上記したベース層あるいは物理現像核層、あるいは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層の間に必要に応じて設けられる中間層、または支持体を挟んで設けられる裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として、0.5以上である。
この透明導電性フィルム前駆体を用いて透明導電性フィルムを作製する場合は、網目状パターンのような任意の形状パターンの透過原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、可溶性銀錯塩形成剤と還元剤の存在下でアルカリ液中で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して形状パターンの銀薄膜を得ることができる。露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、ハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層は水洗除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
物理現像後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
次に、物理現像のために必要な本発明の処理液について説明する。本発明の処理液は可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
本発明に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、USP5,200,294に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、T.H.ジェームス編のザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス4版の474〜475項(1977年)に記載されている化合物が挙げられる。
これらのハロゲン化銀溶剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で物理現像を行い、像様に析出させた金属銀は密度が高いため、得られた透明導電性フィルムの表面抵抗は低い値が得られるからである。
アルカノールアミンとしては、例えば2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N,N−エチル−2、2’−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
本発明の処理液においては、これらの可溶性銀錯塩形成剤を単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
次に、本発明の処理液に用いられる還元剤について説明する。還元剤は写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。本発明の処理液はこれらの還元剤を単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、処理液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は処理液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
本発明の処理液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の処理液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
本発明において物理現像を行うための処理液の適用は、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層が設けられたプラスチック樹脂フィルム(銀薄膜形成フィルム前駆体)を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えばハロゲン化銀乳剤層上に処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
本発明の透明導電性フィルムの製造方法においては、物理現像を臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物の存在下でを行うことを特徴とする。本発明者は、処理液中に臭化物を添加すると、物理現像により得られた金属銀の導電性が著しく良化することを見出した。好ましい臭化物濃度は1×10-4モル/L以上1×10-2モル/L以下である。
このため本発明の処理液には、あらかじめ、適量の臭化物を含有させる。処理液に臭化物を含有させるには、処理液製造時に臭化物を加えておく方法や、処理液製造時には添加せずに、使用するときに臭化物を加える方法がある。処理液の適用方式が浸漬方式の場合は、透明導電性フィルムの前駆体が臭化物を含むか否かで処理液への臭化物の適応方法が異なる。透明導電性フィルムの前駆体が臭化物を含まない場合は、処理面積の増加により物理現像処理液中の臭化物濃度が変化することはないので、臭化物濃度を上記濃度範囲で任意に設定することができる。このため、物理現像により得られた金属銀の導電性が最も良くなる濃度を選べば良い。また、母液及び補充液の臭化物の濃度を共通に設定することができるために、処理液製造時に臭化物を加えることができる。
透明導電性フィルムの前駆体のハロゲン化銀乳剤層などに臭化物を含む場合は、処理面積の増加に伴い処理液中に溶出する臭化物濃度が増える傾向がある。このため、母液及び補充液の臭化物の濃度を共通に設定するよりも、母液には上記範囲の適当な濃度の臭化物を含有させ、補充液には臭化物を含有させないことが好ましい。すなわち、処理面積の増加に伴う臭化物濃度の上昇を抑え、処理液中の臭化物濃度が上記範囲を維持するように補充液量を調整することが好ましい。このため、処理液製造時には添加せずに、使用時に臭化物を加える方法が、処理液のランニング性の観点から望ましい。、
処理液の適用方式が塗布方式の場合は、透明導電性フィルムの前駆体が臭化物を含む、含まないに関わらず、処理液製造時に臭化物を加えることも、処理液製造時には添加せずに、使用するときに臭化物を加えることもできる。
本発明において、導電性及び金属光沢を向上させるための好ましい態様は、処理液を適用するときの処理液の温度を20℃以下にすることである。下限の温度は2℃程度である。処理液の適用時間は、20秒〜3分程度が適当である。この態様は、特に浸漬法式の場合に好適である。
本発明においては、透明電磁波シールドフィルムのような高い導電性と透過率が求められる製品に適用するために、前述のようにして得られた銀薄膜細線パタン上に銅やニッケルなどの金属による鍍金(メッキ)を施すことができる。金属メッキした細線パターンの厚みは所望とする特性により任意に変えることができるが、0.5〜15μm、好ましくは2〜12μmの範囲である。このメッキ処理を施すことにより、30MHz〜1,000MHzのような広い周波数帯に亘って30dB以上のシールド効果を発揮することができる。
本発明においては、細線パターンの物理現像銀のメッキは、無電解メッキ法、電解メッキ法あるいは両者を組み合わせたメッキ法のいずれでも可能であるが、本発明の製造方法で得られた導電性の良い透明導電性フィルムは、電解メッキが容易に行うことができる。本発明において、金属メッキ法は公知の方法で行うことが出来る。
本発明に用いられる透明支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムが挙げられる。
透明導電性フィルム前駆体の例を以下に示す。透明支持体として、厚み100μmの塩化ビニリデンを含有する下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。物理現像核層を塗布する前に、このフィルムにゼラチンが50mg/m2のベース層を塗布し乾燥した。次に、下記のようにして作製した硫化パラジウムからなる物理現像核層を塗布し、乾燥した。
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
<物理現像核層塗液の調製>
前記硫化パラジウムゾル 50ml
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 20ml
界面活性剤(S−1) 1g
水を加えて全量を2000mlとする。
この物理現像核層塗液を硫化パラジウムが固形分で0.4mg/m2になるように、ベース層の上に塗布し、乾燥した。
Figure 0004656835
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1m2あたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
界面活性剤(S−2) 5mg
Figure 0004656835
続いて、下記組成のハロゲン化銀乳剤層および、非感光性層を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀100モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1g
ハロゲン化銀乳剤 3g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 30mg
<非感光性層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
界面活性剤(S−2) 0.1mg
このようにして得た透明導電性フィルム前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔200μmの網目パタンの透過原稿を密着させて露光し、続いて、下記の処理液(物理現像液)を用いて現像処理した。下記の処理液中の臭化カリウムを結果1の表のように変化させた。各処理液中に20℃で120秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層および非感光性層を温水水洗除去して、網目パタンの銀薄膜を形成させた。
<処理液>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸ナトリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 20g
臭化カリウム x
全量を水で1000ml
pH=12.5に調整する。
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された透明導電性フィルムの表面抵抗率は、(株)ダイアインスツルメンツ製、ロレスタ−GP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。得られた結果を結果1の表にまとめた。
(結果1)
───────────────────────────────
試料 処理液中 表面抵抗率 備 考
No. 臭化カリウム (Ω/□)
x(モル/L)
───────────────────────────────
1 0 500 比較例
2 8.4×10-5 280 本発明
3 4.0×10-4 50 本発明
4 8.4×10-4 30 本発明
5 3.4×10-3 20 本発明
6 8.6×10-3 40 本発明
7 2.0×10-2 150 本発明
───────────────────────────────
上記結果から明らかなように、処理液中に臭化カリウムを添加されていない試料No.1に比べて、処理液中に臭化カリウムを添加した試料No.2〜7は、表面抵抗率が低くなっており、本発明の効果が理解できる。

Claims (1)

  1. 透明支持体上に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順に有する感光材料を露光し、物理現像処理により前記物理現像核層上に像様に金属銀を析出させ、次いで前記物理現像核層及び金属銀よりも上に存在する層を除去する透明導電性フィルムの製造方法であって、前記物理現像を、臭化物を含む物理現像処理液で行うことを特徴とする透明導電性フィルムの製造方法。
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