JP4653318B2 - βセクレターゼ酵素組成物および方法 - Google Patents

βセクレターゼ酵素組成物および方法 Download PDF

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Description

【0001】
発明の分野)
本発明は、β−アミロイドペプチド(Aβ)を産生するのに必要な2つの切断部位のうちの1つでβ−アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断する酵素であるβ−セクレターゼの種々の活性形態の発見に関する。本発明はまた、アルツハイマー病のようなアミロイド形成(amyloidgenic)疾患の処置における治療剤の候補と考えられるこの酵素のインヒビターに関する。本発明のさらなる局面としては、このような治療的インヒビターを発見するための、スクリーニング方法、アッセイ、およびキット、ならびに個体がこの酵素の変異形態を保有するかどうかを決定するための診断方法が挙げられる。
【0002】
(発明の背景)
アルツハイマー病は、脳において(特に、記憶および認識に関与する脳の領域において)存在する多数のアミロイド斑および神経原線維変化の存在によって特徴付けられる。β−アミロイドペプチド(Aβ)は、アミロイド斑の主要な成分である39〜43個のアミノ酸ペプチドであり、そしてアミロイド前駆体タンパク質(APP)として公知の大きなタンパク質の、そのタンパク質のN末端領域内の特異的部位における切断によって産生される。APPの正常なプロセシングは、β−AP領域のN末端に対して16〜17アミノ酸C末端の点でのこのタンパク質の切断に関与し、分泌外部ドメインα−sAPPを放出し、従ってβ−APの産生を妨げる。Met671とAsp672との間のAPPのβ−セクレターゼ酵素による切断およびその後の、APPのC末端におけるプロセシングは、Aβペプチドを産生し、これはアルツハイマーの病理の病因に非常に関係する(Seubertら、Pharmacological Treatment of Alzheimer’s disease、Wiley−Liss,Inc.,345−366頁、1997;Zhao,J.ら、J.Biol.Chem.271:31407−31411、1996)。
【0003】
β−セクレターゼ酵素のレベルおよび/または活性が、アルツハイマー患者において正常なレベルおよび/または活性より先天的に高いかどうかは明らかでない;しかし、その切断産物であるAβペプチドが、患者の脳に存在するアミロイド斑において異常に濃縮されていることは明らかである。従って、この疾患の病因を取り巻くこの質問および他の質問に答えるのを助けるために、APPの病的切断を担う酵素を単離して、精製して、そして特徴付けることが所望される。特に、また、β−セクレターゼの活性を阻害するための能力について候補薬物をスクリーニングするための方法において、単離された酵素、またはその活性なフラグメントを利用することもまた所望される。βセクレターゼ活性に対して阻害効果を示す薬物は、原繊維を含むAβペプチドの沈着によって特徴付けられるアルツハイマー病および他のアミロイド形成障害の処置における有用な治療剤であることが期待される。
【0004】
米国特許第5,744,346号(Chryslerら)は、サイズ(ゲル排除クロマトグラフィーによって測定される場合、260〜300キロダルトンにの範囲における見かけの分子量)および酵素活性(アミノ酸596と597との間で、β−アミロイド前駆体タンパク質の695アミノ酸アイソタイプを切断する能力)によって特徴付けられるβ−セクレターゼ酵素の最初の単離および部分的精製を記載する。本発明は、以前に記載された純度より少なくとも200倍純度の高い精製β−セクレターゼ酵素を提供することによって、β−セクレターゼ酵素の純度において有意な改善を提供する。このような精製タンパク質は、多数の適用(構造決定のための結晶化を含む)において有用性を有する。本発明はまた、天然に生じる形態と同じサイズおよび同じ酵素プロフィールを有する、β−セクレターゼ酵素の組換え形態を産生するための方法を提供する。ヒトβ−セクレターゼは、いわゆる「アスパルチル」(または「アスパラギン酸」)プロテアーゼであることが、本発明のさらなる発見である。
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、現在、見かけ上の均質になるまで精製されているβ−セクレターゼタンパク質に関し、および特に、代表的なβ−セクレターゼアッセイであるMBP−C125sw基質アッセイにおける、少なくとも約0.2×105、好ましくは少なくとも1.0×105nM/h/μgのタンパク質の比活性によって特徴付けられる精製タンパク質に関する。β−アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)の695アミノ酸アイソタイプを、そのアミノ酸596と597との間で切断することにおける特徴的な活性を有するこの酵素は、より早期に特徴付けられているような、可溶化されているが、富化されていない、ヒト293細胞由来の膜画分によって示される活性より、少なくとも10,000倍、好ましくは少なくとも20,000倍、およびより好ましくは200,000倍を越えて高い比活性がある。
【0006】
1つの実施形態において、精製された酵素は、長さにおいて450個のアミノ酸よりも短く、アミノ酸配列、配列番号70[63−452]を有するポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、精製タンパク質は、本明細書中で配列番号2[1−501]と言及されるプロ酵素と比較して、種々の「短縮形態」(例えば、以下のアミノ酸配列を有する形態:配列番号70[63−452]、配列番号69[63−501]、配列番号67[58−501]、配列番号68[58−452]、配列番号58[46−452]、配列番号74[22−452]、配列番号58[46−452])で存在する。さらに一般的に、特に本明細書中に記載される結晶化研究に関して、酵素の特に有用な形態は、配列番号2に関してN末端の46位および配列番号2に関してC末端の452位と470位との間により、ならびにより詳細には配列番号2に関してN末端の22位および配列番号2に関してC末端の452位と470位との間により特徴付けられることが見出された。これらの形態は、膜貫通「アンカー」ドメインにおいて切断されると考えられる。この酵素の他の特に有用な精製された形態としては、配列番号43[46−501]、配列番号66[22−501]、および配列番号2[1−501]が挙げられる。さらに一般的には、この酵素の有用な形態が、配列番号2に関して残基22、残基46、残基58および残基63からなる群から選択される残基に対応するN末端残基、ならびに配列番号2に関して452位と501位との間の残基から選択されるC末端または配列番号2に関して残基452位と残基470位との間のC末端を有することが理解される。配列番号65により例示される、マウスから単離された酵素の形態もまた、本明細書中で記載される。
【0007】
本発明は、さらに、精製β−セクレターゼタンパク質から形成される結晶性タンパク質組成物(例えば、上記の種々のタンパク質組成物)に関する。1つの実施形態に従って、精製タンパク質は、これらのタンパク質が同じ条件下でβ−セクレターゼインヒビター基質P10−P4’staD→Vへの結合について試験される場合、アミノ酸配列、配列番号70[46−419]を有するタンパク質によって示される能力と少なくとも等しい、上記基質に結合する能力によって特徴付けられる。別の実施形態に従って、結晶化(crystallization)組成物を形成する精製タンパク質は、これらのタンパク質が同じ条件下でβ−セクレターゼインヒビター基質である配列番号72(P10−P4’staD→V)への結合について試験される場合、アミノ酸配列、配列番号43[46−501]、を有するタンパク質によって示される親和性の少なくとも1/100である、上記基質についての結合親和性によって特徴付けられる。結晶性(crystalline)組成物を形成するタンパク質は、グリコシル化され得るか、または脱グリコシル化され得る。
【0008】
本発明はまた、β−セクレターゼ基質またはインヒビター分子(この例は、特に、ペプチド由来インヒビター(例えば、配列番号78、配列番号72、配列番号81、およびそれらの誘導体)によって例示され、本明細書中で提供される)を含む結晶性タンパク質組成物を含む。一般に、これに関連して有用なインヒビターは、わずか約50μM〜0.5mMのKiを有する。
【0009】
本発明の別の局面は、(i)長さにおいて、約450個のアミノ酸残基より短く、(ii)その保存的置換を含めて、配列番号75[63−423]に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、そして(iii)そのアミノ酸596と597との間のβアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の695個のアミノ酸アイソタイプ、MBP−C125wtおよびMBP−C125swからなる群から選択される基質を切断する能力によって立証されるように、β−セクレターゼ活性を示す、ポリペプチドを含む、単離されたタンパク質に関する。これらの基準に合うペプチドとしては、配列番号75[63−423]という配列を含むポリペプチド(例えば、配列番号58[46−452]、配列番号58[46−452]、配列番号58[46−452]、配列番号74[22−452])が挙げられるがこれらに限定されず、そしてまた、このような配列内に保存的置換を含み得る。
【0010】
さらなる実施形態に従って、本発明は、β−セクレターゼ基質またはインヒビター分子(例えば、MBP−C125wt、MBP−C125sw、APP、APPsw、およびそのβ−セクレターゼ切断可能フラグメント)と組み合わせた、単離されたタンパク質組成物(例えば、上記の単離されたタンパク質組成物)を含む。これに関連して有用なさらなるβ−セクレターゼ切断可能フラグメントが、この明細書に記載される。特に有用なインヒビターとしては、配列番号78、配列番号81および配列番号72に由来するペプチド、またはこれらを含むペプチドが挙げられる。一般的に、このようなインヒビターは、約1μMよりも少ないKIを有する。このようなインヒビターは、検出可能なレポーター分子を用いて標識され得る。このような標識分子は、リガンド結合アッセイにおいて特に有用である。
【0011】
さらなる局面に従って、本発明としては、異種細胞により発現されるタンパク質組成物(例えば、上記のタンパク質組成物)が挙げられる。さらなる実施形態に従って、このような細胞はまた、β−セクレターゼの基質またはインヒビターのタンパク質またはペプチドを同時発現し得る。発現される分子の一方または両方は、細胞に対して異種であり得る。
【0012】
関連した実施形態において、本発明は、その保存的置換基を含めて、配列番号75[63−423]と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むβ−セクレターゼタンパク質と特異的に結合するが、配列番号2[1−501]および配列番号43[46−501]からなる群から選択されるタンパク質配列との有意な免疫反応性を欠損する、抗体を含む。
【0013】
さらなる関連した実施形態において、本発明は、以下からなる群より選択されるタンパク質と少なくとも95%同一であるβ−セクレターゼタンパク質をコードする、ヌクレオチドの配列を含む単離された核酸を含む:配列番号66[22−501]、配列番号43[46−501]、配列番号57[1−419]、配列番号74[22−452]、配列番号58[46−452]、配列番号59[1−452]、配列番号60[1−420]、配列番号67[58−501]、配列番号68[58−452]、配列番号69[63−501]、配列番号70[63−452]、配列番号75[63−423]、および配列番号71[46−419]、またはこのようなヌクレオチドのいずれかの相補的配列。配列、配列番号2[1−501]を有するタンパク質をコードする核酸は、このヌクレオチドから特に除外される。
【0014】
さらに、本発明は、異種発現のために、選択された宿主細胞における核酸の発現のために効果的な調節配列を有する核酸に作動可能に連結された、このような単離された核酸を含む発現ベクターを含む。宿主細胞は、真核生物細胞、細菌細胞、昆虫細胞または酵母細胞であり得る。このような細胞は、例えば、組換えβ−セクレターゼ酵素を産生する方法において使用され得、ここでこの方法は、さらに、本明細書中に詳述されるように、上記細胞からの抽出物または培養培地を、親和性マトリックス(例えば、β−セクレターゼインヒビター分子または抗体から形成されるマトリックス)に供する工程を包含する。
【0015】
本発明はまた、Aβ産生を阻害する化合物をスクリーニングする方法に関し、β−セクレターゼポリペプチド(例えば、上記の全長または短縮形態)を、(i)試験化合物および(ii)β−セクレターゼ基質と接触させる工程、ならびにβ−セクレターゼポリペプチドが試験化合物の非存在下よりも、その存在下において、より小さいβ−セクレターゼ活性を示す場合、Aβ産生を阻害可能な試験化合物を選択する工程を包含する。このようなアッセイは、細胞(例えば、上記でいわれる同時発現細胞)によって産生される酵素および基質の一方または両方を用いた、細胞ベース(cell−base)であり得る。このようなスクリーニング方法を使用したキットはまた、本発明の一部を形成する。
【0016】
スクリーニング方法は、アルツハイマー病またはアルツハイマー病のような病理を有する哺乳動物被験体に試験化合物を投与する工程、およびこのような投与後、被験体が認識能力を維持または改善するか、あるいは被験体が低減された斑の量(burden)を示す場合、治療剤候補として化合物を選択する工程をさらに包含し得る。好ましくは、このような被験体は、本明細書中で例示されるように、ヒトβ−アミロイド前駆体タンパク質(β−APP)についての導入遺伝子を含んでいる(例えば、ヒトβ−APP(その変異改変体を含む)をコードする導入遺伝子を保有するマウス)。
【0017】
関連する実施形態において、本発明は、上記の方法に従って選択されるβ−セクレターゼインヒビター化合物を含む。このような化合物は、例えば、当該分野で公知のファージディスプレイ選択系(「ライブラリー」)から選択され得る。別の局面に従って、このようなライブラリーは、配列ペプチド配列番号97[P10−P4’D→V]に対して片寄り得る。他のインヒビターは、本明細書中で同定されるペプチドインヒビター(例えば、インヒビター配列番号78、配列番号72、配列番号78および配列番号81)を含むか、またはそれらから由来し得る。
【0018】
内因性β−セクレターゼ遺伝子(例えば、配列番号65に対して少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする遺伝子)の不活化または欠失により特徴付けられるノックアウトマウスもまた、本発明の一部を形成する。欠失または不活化は、例えば、Cre−lox発現系のマウスゲノムへの挿入により、誘導可能であり得る。
【0019】
さらなる関連した局面に従って、本発明は、アルツハイマー病、またはAβ沈着によって特徴付けられる他の脳血管性アミロイドーシスの処置において有効な薬物をスクリーニングする方法を含む。本発明のこの局面に従って、β−APPの過剰発現および/またはAβの沈着によって特徴付けられる哺乳動物被験体には、β−セクレターゼ活性を阻害するその能力について選択された試験化合物(請求項37に記載のβ−セクレターゼタンパク質)が与えられる。この化合物は、上記被験体におけるAβ沈着の量を低減させる場合、またはこの被験体における認識能力を維持するか、もしくは改善する場合、潜在的治療薬物化合物として選択される。一つの好ましい実施形態に従って、哺乳動物被験体は、ヒトβ−APPまたはその変異体をコードする導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスである。
【0020】
本発明はまた、アルツハイマー病または他の脳血管性アミロイドーシスに羅患しているかまたはこれらに対する偏り(predilection)を有する患者を処置する方法を含む。この局面に従って、APPのAβに対する酵素性加水分解が、患者に、本明細書中に記載される酵素の種々の形態のうちの1つ以上を阻害するのに有効な、薬学的有効用量の化合物を投与することによってブロックされる。別の特徴に従って、治療的化合物は、配列番号72、配列番号78、配列番号81および配列番号97からなる群から選択されるペプチドに由来する。このような誘導は、本発明のスクリーニング方法または他のこのような方法とともに、本明細書中に記載される種々のファージ選択系によって行われ得る。あるいは、またはさらに、誘導は、医化学分野において公知の合理的な化学的アプローチ(分子モデリングを含む)を介して達成され得る。このような化合物は、好ましくは、MBP−C125swアッセイにおいて約1〜50μMより少ないKiによって立証されるように、β−セクレターゼ酵素活性のかなり強力なインヒビターである。このような化合物はまた、本発明に従って、治療薬物組成物についての基礎を形成し、これはまた、薬学的に効果的な賦形剤を含み得る。
【0021】
さらなる別の関連する局面に従って、本発明は、患者におけるアルツハイマー病の存在またはアルツハイマー病に対する偏りを診断する方法を含む。この方法は、上記患者からの細胞サンプルにおける、β−セクレターゼをコードする核酸を含む遺伝子の発現レベルを検出する工程、および上記発現レベルが所定のコントロールの発現レベルより有意に大きい場合、アルツハイマー病を有するかまたはアルツハイマー病に対する偏りを有すると患者を診断する工程を包含する。検出可能な核酸、およびこのような検出に有用なプライマーが、本明細書中で詳細に記載される。このような核酸は、プレプロ酵素[1−501]をコードする核酸を除外し得る。本発明は、さらに、患者におけるアルツハイマー病の存在またはアルツハイマー病に対する偏りを診断する方法に関し、この方法は、上記患者由来の細胞サンプルにおけるβ−セクレターゼ酵素活性を測定する工程、および上記酵素活性レベルが所定のコントロールの活性レベルより有意に大きい場合、アルツハイマー病を有するかまたはアルツハイマー病に対する偏りを有すると患者を診断する工程を包含する。診断方法は、細胞全体アッセイにおいておよび/または上記患者の細胞サンプル由来の核酸に関して実行され得る。
【0022】
本発明はまた、β−セクレターゼタンパク質酵素分子を精製する方法を含む。この局面に従って、β−セクレターゼ酵素活性を含む不純なサンプルは、β−セクレターゼインヒビター(例えば、本明細書中に記載される種々のインヒビター分子)を含む親和性マトリックスを用いて精製される。
【0023】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、本発明の以下の詳細な説明が添付の図面と関連して読まれる場合、より十分に明らかとなる。
【0024】
(配列の簡単な説明)
この節では、本明細書中で参照される配列番号を簡単に確認する。この節および明細書中を通して括弧中に示される数の範囲は、従来のN→C末端の順序を用いて、配列番号2のアミノ酸配列を基準とする。
【0025】
配列番号1は、本明細書中で例示されるような、活性化フラグメントを含むヒトβ−セクレターゼをコードする核酸配列である。
【0026】
配列番号2は、配列番号1[1−501]の推定翻訳産物である。
【0027】
配列番号3〜21は、配列番号2の領域から設計された、実施例1(表4)に記載される縮重オリゴヌクレオチドプライマーである。
【0028】
配列番号22〜41は、表5に示される、本明細書中で記載されるPCRクローニング法に使用されるさらなるオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0029】
配列番号42は、配列番号43として示される活性酵素β−セクレターゼをコードするポリヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号43は、ヒトβ−セクレターゼの活性酵素部分の配列であり、このN末端は、天然供給源から単離されたタンパク質の優勢な形態のN末端に対応する[46−501]。
【0031】
配列番号44は、5’および3’非翻訳領域を含む、配列番号2をコードするポリヌクレオチドである。
【0032】
配列番号45は、特定のポリヌクレオチドと共に使用されるFLAG配列である。
【0033】
配列番号46は、β−セクレターゼの推定リーダー領域である[1−22]。
【0034】
配列番号47は、β−セクレターゼの推定プレプロ(pre−pro)領域である[23−45]。
【0035】
配列番号48は、クローンpCEK C1.27の配列である(図13A−E)。
【0036】
配列番号49は、ヒトβ−セクレターゼをコードする遺伝子のフラグメントのヌクレオチド配列である。
【0037】
配列番号50は、配列番号49の推定翻訳産物である。
【0038】
配列番号51は、ヒトβ−セクレターゼの、部分の推定内部アミノ酸配列である
【0039】
配列番号52および53は、本発明に使用されるβ−セクレターゼアッセイにおける使用に適したペプチド基質である。
【0040】
配列番号54は、ヒトβ−セクレターゼによって認識されるペプチド配列切断部位である。
【0041】
配列番号55は、配列番号2のアミノ酸46〜69である。
【0042】
配列番号56は、β−セクレターゼの膜貫通ドメインに対してちょうどN末端側の内部ペプチドである。
【0043】
配列番号57は、β−セクレターゼ[1〜419]である。
【0044】
配列番号58は、β−セクレターゼ[46〜452]である。
【0045】
配列番号59は、β−セクレターゼ[1〜452]である。
【0046】
配列番号60は、β−セクレターゼ[1〜420]である。
【0047】
配列番号61は、EVM[ヒドロキシエチレン]AEFである。
【0048】
配列番号62は、(図5)に示されるβ−セクレターゼの膜貫通ドメインのアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号63は、APPwtのP26−P4’である。
【0050】
配列番号64は、APPwtのP26−P1’である。
【0051】
配列番号65は、マウスβ−セクレターゼである(図10、下の配列)。
【0052】
【化5】
配列番号76は、天然に存在するβ−セクレターゼのN末端をコードする核酸である。
【0053】
配列番号77は、天然に存在するβ−セクレターゼのN末端におけるペプチドフラグメントである。
【0054】
【化6】
配列番号79は、天然に存在するβセクレターゼのペプチドフラグメントである。
【0055】
配列番号80は、本明細書中で使用されるベクターpCFにおけるヌクレオチド挿入物である。
【0056】
【化7】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に示されない限り、本明細書中で使用されるすべての用語は、本発明の当業者に対するような意味と同じ意味を有する。実施者は、定義、技術用語、および分子生物学の分野で公知の標準的な方法(特に、その方法が、本明細書中で記載されるクローニングプロトコールに関する場合)に関して、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y.およびAusubel,F.M.ら(1998)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons、New York、NYに特に従う。本発明は、記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬が、同じ結果を起こすように改変され得る場合、これらに制限されないことが、理解される。
【0057】
用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして代表的なポリヌクレオチドへの水素結合が可能な塩基を支持する骨格を有する重合体分子をいい、ここで、重合体骨格は、重合体分子と代表的なポリヌクレオチド(例えば、一本鎖DNA)との間に配列特異的な様式でこのような水素結合が可能であるような様式の塩基を表す。そのような塩基は、代表的に、イノシン、アデノシン、グアノシン、シトシン、ウラシルおよびチミジンである。重合体分子としては、二本鎖RNAおよび一本鎖RNAならびに二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびにそれらの骨格改変体(例えば、メチルホスホネート結合)がである。
【0058】
用語「ベクター」は、新規の核酸を同化し得るヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドをいい、そしてこれらの新規の配列を適切な宿主中で増殖する。ベクターとしては、限定されないが、組換えプラスミドおよびウイルスが挙げられる。本発明の核酸を含むこのベクター(例えば、プラスミドまたは組換えウイルス)は、キャリア内にあり得る(例えば、タンパク質に複合体化されたプラスミド、脂質ベースの核酸の形質導入系と複合体化されたプラスミド、または他の非ウイルスキャリア系)。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合されたアミノ酸残基の一本鎖から構成される化合物をいう。用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」と同じ意味であり得るか、または2つ以上のポリペプチドの複合体を言及し得る。
【0060】
用語「改変された」は、本発明のポリペプチドに対して言及する場合、天然のプロセス(例えば、プロセシングまたは他の翻訳後修飾)か、または当該分野で周知の化学改変技術の何れかによって改変されたポリペプチドを意味する。存在し得る多数の公知の改変の中でもとりわけ、限定されないが、以下が挙げられる:アセチル化、アシル化、アミド化、ADP−リボシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、脂質または脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化(pegylation)、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、または任意の類似したプロセス。
【0061】
用語「β−セクレターゼ」は、本明細書中の第III節に定義される。
【0062】
用語β−セクレターゼと共に使用される用語「生物学的に活性」は、β−セクレターゼ酵素活性(例えば、β−アミロイド前駆体タンパク質(APP)を切断してβ−アミロイドペプチド(Aβ)を生成する能力)の所有をいう。
【0063】
用語「フラグメント」は、本発明のβ−セクレターゼに対して言及する場合、全長β−セクレターゼポリペプチドのアミノ酸配列の部分(全体ではない)と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。本発明の文脈において、全長β−セクレターゼは、一般的に、配列番号2、全長ヌクレオチドのORFとして同定されるが;本発明の発見に従って、天然に存在する活性形態は、おそらく、1つ以上のN末端短縮バージョン(例えば、アミノ酸46〜501、22〜501、58〜501または63〜501)であり;他の活性形態は、C末端短縮形態(およそアミノ酸450と452の間に終わる)である。全体を通して使用される番号付けシステムは、配列番号2の配列番号付けに基づく。
【0064】
「活性フラグメント」は、β−セクレターゼの少なくとも1つの機能または活性(限定されないが、上記に議論されるβ−セクレターゼ酵素活性および/または本明細書中にP10−P4’staD−>Vとして記載されるインヒビター基質に結合する能力を含む)を保持するβ−セクレターゼフラグメントである。意図されるフラグメントとしては、限定されないが、β−アミロイド前駆体タンパク質を切断してβ−アミロイドペプチドを生成する能力を保持するβ−セクレターゼフラグメントが挙げられる。そのようなフラグメントは、好ましくは、本明細書中で記載されるような、少なくとも350個、そしてより好ましくは少なくとも400個の、β−セクレターゼの連続したアミノ酸もしくはその保存的置換を含む。より好ましくは、このフラグメントは、配列番号2として示されるポリペプチドの一次構造によって同定かつ定義され、そしてまた本明細書中に「活性−D」部位として示される、構造的に近接する活性アスパラギン酸残基を含む。
【0065】
「保存的置換」は、1つのクラスにおけるアミノ酸の同じクラスのアミノ酸による置換をいい、ここで、クラスは、通常、物理化学的なアミノ酸側鎖特性および天然に見出される相同性タンパク質における高い置換の頻度によって(例えば、標準的なDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスによって決定されるように)、定義される。上記のように分類される6つの一般的なアミノ酸側鎖のクラスとしては、以下が挙げられる:クラスI(Cys);クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly);クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu);クラスIV(His、Arg、Lys);クラスV(Ile、Leu、Val、Met);およびクラスVI(Phe、Tyr、Trp)。例えば、Aspの別のクラスIII残基(例えば、Asn、GlnまたはGlu)での置換は、保存的置換であると考えられる。
【0066】
「最適な整列」は、最も高いパーセント同一性スコアを提供する整列として定義される。そのような整列は、種々の市販される配列分析プログラム(例えば、1のktup、デフォルトパラメーターおよびデフォルトPAMを用いるローカル整列プログラムLALIGN)を用いて実施され得る。好ましい整列は、10.0のオープンギャップペナルティ、0.1の伸長ギャップペナルティ、およびBLOSUM30類似性マトリックスを含むデフォルトパラメーターを用いて操作される、MacVector中のCLUSTAL−Wプログラムを用いた対の(pairwise)整列である。
【0067】
2つのアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に関する「パーセント配列同一性」は、配列が最適に整列された場合に2つの配列において同一の残基のパーセンテージをいう。従って、80%アミノ酸配列同一性は、2つ以上の最適に整列されたポリペプチド配列におけるアミノ酸の80%が、同一であることを意味する。第1の配列を第2の配列と最適に整列するために第1の配列にギャップが挿入される必要がある場合、パーセント同一性は、対応するアミノ酸残基と対形成される残基のみを用いて計算される(すなわち、この計算は、第1の配列の「ギャップ」内にある第2の配列中の残基を考慮しない)。
【0068】
上記のように第1のポリペプチド領域および第2のポリペプチド領域を含む配列が、配列整列プログラムを用いて整列される場合に、それらの領域が本質的に同一の広がりを持つ場合、第1のポリペプチド領域は第2のポリペプチド領域に「対応する」といわれる。対応するポリペプチド領域は代表的に、同一でないとしても、類似した多くの残基を含む。しかし、対応する領域が、互いに関して残基の挿入または欠失、ならびにそれらの配列におけるいくらかの差違を含み得ることが理解される。
【0069】
上記のように第1のポリヌクレオチド領域および第2のポリヌクレオチド領域を含む配列が、配列整列プログラムを用いて整列される場合に、それらの領域が本質的に同一の広がりを持つ場合、第1のポリヌクレオチド領域は第2のポリヌクレオチド領域に「対応する」といわれる。対応するポリヌクレオチド領域は代表的に、同一でないとしても、類似した多くの残基を含む。しかし、対応する領域が、互いに関して塩基の挿入または欠失、ならびにそれらの配列におけるいくらかの差違を含み得ることが理解される。
【0070】
用語「配列同一性」は、上記に定義されるように整列された2つ以上の整列された配列における、核酸またはアミノ酸配列同一性を意味する。
【0071】
2つのポリペプチドの間の「配列類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換を第2のポリペプチドの配列に対して比較することによって決定される。従って、80%タンパク質配列類似性は、2つ以上の整列されたタンパク質配列における80%のアミノ酸残基が、保存されたアミノ酸残基である(すなわち、保存的置換である)ことを意味する。
【0072】
「ハイブリダイゼーション」は、それによって、核酸の鎖が相補的な核酸鎖と塩基対形成を介して結合される、任意のプロセスを含む。従って、厳密にいえば、この用語は、標的配列の相補体が試験配列へ結合する、またはこの逆の能力をいう。
【0073】
「ハイブリダイゼーション条件」は、核酸結合複合体またはプローブの融解温度(Tm)に一部基づき、そして代表的には、ハイブリダイゼーションが測定される条件下の「ストリンジェンシー」の程度によって分類される。種々のストリンジェンシーの程度(すなわち、高い、中程度、低い)を定義する特定の条件は、ハイブリダイゼーションが所望されるポリヌクレオチドの性質(特に、そのGC含量のパーセント)に依存し、そして当該分野で公知の方法に従って、経験的に決定され得る。機能的には、最大のストリンジェンシー条件が、ハイブリダイゼーションプローブとの厳密な同一性または厳密に近い同一性を有する核酸配列を同定するために使用され得るが;高いストリンジェンシー条件が、プローブと約80%以上の配列同一性を有する核酸配列を同定するために使用される。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の生成に関与するDNAのセグメントを意味し;これは、コード領域の前および後の領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)配列または「リーダー」配列および3’UTR配列または「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在配列(イントロン)を含み得る。
【0075】
用語「単離された」は、材料が、その本来の環境(例えば、それが天然に存在する場合、天然の環境)から取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、その天然系に共に存在する材料のいくらかまたは全てから分離された、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されている。そのような単離されたポリヌクレオチドは、ベクターの部分であり得、そして/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物(例えば、そのポリペプチドを発現する組換え産生された細胞(異種細胞))の部分であり得、そしてなお、そのようなベクターまたは組成物は、それらの天然の環境の一部ではないという点で単離され得る。
【0076】
「β−セクレターゼをコードする配列を有する単離されたポリヌクレオチド」は、β−セクレターゼのコード配列を含むポリヌクレオチドであるか、またはその活性フラグメントであり、これらは、以下:(i)単独、(ii)融合タンパク質またはシグナルペプチドなどのさらなるコード配列との組み合わせ(ここで、β−セクレターゼのコード配列は、優勢なコード配列である)、(iii)適切な宿主におけるコード配列の発現に効果的であるイントロンまたはコントロールエレメント(例えば、プロモーターおよびターミネーターエレメントまたは5’および/もしくは3’非翻訳領域)のような非コード領域との組み合わせ、ならびに/または(iv)β−セクレターゼのコード配列が異種遺伝子であるベクターもしくは宿主環境中である。。
【0077】
用語「異種DNA」、「異種RNA」、「異種核酸」、「異種遺伝子」および「異種ポリヌクレオチド」は、その細胞に対して内因性でないか、またはそれらが存在するゲノムの部分でないヌクレオチドをいい、一般的にそのようなヌクレオチドは、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に添加される。そのようなヌクレオチドは、一般的に、少なくとも1つのコード配列を含むが、このコード配列が発現される必要ない。
【0078】
用語「異種細胞」とは、少なくとも1つの異種DNA分子を含む組換え産生された細胞をいう。
【0079】
用語「組換えタンパク質」とは、異種細胞における発現によって単離されるか、精製されるかまたは同定されるタンパク質であり、上記細胞は、宿主細胞においてそのタンパク質の発現を駆動するように操作された組換え発現ベクターで、一過的または安定的に、形質導入されるかまたはトランスフェクトされる。
【0080】
用語「発現」は、通常、異種核酸を用いた細胞のトランスフェクションの結果として、タンパク質が、細胞によって産生されることを意味する。
【0081】
「同時発現(co−expression)」とは、2つ以上の目的のタンパク質またはRNA種が、単一の細胞において発現されることによってプロセスされる。2つ以上のタンパク質の同時発現は、代表的に、それらのタンパク質のコード配列を有する1つ以上の組換え発現ベクターを用いた細胞のトランスフェクションによって達成される。本発明の文脈において、例えば、1つまたは両方のタンパク質が、その細胞に対して異種である場合、細胞は、その2つのタンパク質を「同時発現」するといわれ得る。
【0082】
用語「発現ベクター」は、異種DNAフラグメントを外来細胞に組み込み、そして発現する能力を有するベクターをいう。多くの原核生物発現ベクターおよび真核生物発現ベクターは、市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0083】
用語「精製された」または「実質的に精製された」とは、それらの天然環境から取り出され、単離されまたは分離され、そしてそれらが天然に関連する他の成分が少なくとも90%、そしてより好ましくは少なくとも95〜99%存在しない分子(ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)をいう。上記に関わらず、そのような記述は、同じかさもなくは相同なサンプル中の、スプライスタンパク質改変体または他のタンパク質改変体(グリコシル化改変体)の同じサンプルにおける存在を除外しない。
【0084】
タンパク質またはポリペプチドは、一般的に、それを含むサンプルが、銀染色ポリアクリルアミド電気泳動ゲル上で単一のタンパク質バンドを示す場合、「見かけ上均質に精製された」と考えられる。
【0085】
用語「結晶化されたタンパク質」とは、その結晶のみからなる純粋な結晶(しかし、おそらくそのタンパク質に密接に結合する他の成分を含む)で、溶液から共に沈澱されたタンパク質を意味する。
【0086】
「改変体」ポリヌクレオチド配列は、参照ポリペプチド配列から1つ以上のアミノ酸が変更された「改変体」アミノ酸配列をコードし得る。改変体ポリヌクレオチド配列は、「保存的」置換(ここで、この置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸に対して類似した構造的または化学的特性を有する)を含む改変体アミノ酸配列をコードし得る。さらに、または代わりに、改変体ポリヌクレオチド配列は、「非保存的」置換(ここで、この置換されたアミノ酸は、それが置換するアミノ酸に対して類似しない構造的または化学的特性を有する)を含む改変体アミノ酸配列をコードし得る。改変体ポリヌクレオチドはまた、アミノ酸の挿入もしくは欠失、またはその両方を含む、改変体アミノ酸配列をコードし得る。さらに、改変体ポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチド配列と同じポリペプチドをコードし得るが、遺伝子暗号の縮重に起因して、参照ポリヌクレオチド配列から1つ以上の塩基が変更されたポリヌクレオチド配列を有する。
【0087】
「対立遺伝子改変体」は、コードされるポリペプチドの機能を実質的に変更しない1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失または付加を有し得る、ポリヌクレオチド配列の代替形態である。
【0088】
「選択的スプライシング」は、複数のポリペプチドアイソフォームが単一の遺伝子から産生されるプロセスであり、そして、その遺伝子の全てではないがいくつかの転写物のプロセシングの間の非連続のエキソンを伴うスプライシングを含む。従って、特定のエキソンは、いくつかの選択的エキソン(alternative exon)のいずれか一つに連結され得、メッセンジャーRNAを形成する。選択的スプライシングされたmRNAは、いくつかの部分が共通し、一方で他の部分が異なるポリペプチド(「スプライス改変体」)を産生する。
【0089】
β−セクレターゼの「スプライス改変体」は、mRNA転写物の文脈において言及される場合、β−セクレターゼ遺伝子由来のコード領域(すなわち、エキソン)の選択的スプライシングによって産生されたmRNAである。
【0090】
β−セクレターゼの「スプライス改変体」は、タンパク質自体の文脈において言及される場合、選択的スプライシングされたβ−セクレターゼmRNA転写物によってコードされるβ−セクレターゼ転写産物である。
【0091】
「変異」アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、天然に存在するタンパク質の生物学的活性または機能から、有意に変更された生物学的活性または機能を有する改変体アミノ酸配列をコードする、改変体アミノ酸配列または改変体ポリヌクレオチド配列である。
【0092】
「置換」は、1つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸の、それぞれ異なるヌクレオチドまたはアミノ酸による交換から生じる。
【0093】
本明細書中で使用される場合、用語「調節」とは、本発明のポリペプチドの活性における変化をいう。調節は、その分子の生物学的活性における増加もしくは減少に、結合特性または任意の他の生物学的、機能的、もしくは免疫学的特性に関し得る。
【0094】
用語「アンタゴニスト」または「インヒビター」は、本明細書中で交換可能に使用され、そして本発明のポリペプチドに結合される場合、生物学的活性をブロック、減少、または持続期間を短くすることによって酵素活性を調節する分子をいう。本明細書中で使用される場合、アゴニストはまた、「β−セクレターゼインヒビター」または「β−セクレターゼブロッカー」としていわれる。アンタゴニストは、それ自身、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、低分子(通常1000kD未満)、またはそれらの誘導体、または酵素に結合しかつ酵素活性を調節する任意の他のリガンドであり得る。
【0095】
(β−セクレターゼ組成物)
本発明は、単離された活性ヒトβ−セクレターゼ酵素を提供し、これはさらに、
アスパルチル(アスパラギン酸の)プロテアーゼまたはプロテイナーゼとして(必要に応じて精製された形態で)特徴付けられる。以下の節でより十分に定義されるように、β−セクレターゼは、タンパク質分解性の活性を示し、この活性は、β−アミロイド前駆体タンパク質(APP)からのβ−アミロイドペプチドの産生に関与する(例えば、米国特許第5,744,346号に記載され、これは、本明細書中に参考として援用される)。あるいは、またはさらに、β−セクレターゼは、本明細書中にP10−P4’staD→V(配列番号72)として記載されるインヒビター基質へ中程度に高い親和性で結合するその能力によって特徴付けられる。本発明の重要な特徴に従って、β−セクレターゼのヒト形態が単離され、そしてその天然に存在する形態が特徴付けられ、精製されかつ配列決定された。
【0096】
本発明の別の局面に従って、この酵素をコードするヌクレオチド配列が同定された。さらに、この酵素は、短縮形態などの変更された形態(これは、天然に存在する酵素かまたは全長組換え酵素に類似のプロテアーゼ活性を有する)での発現のためにさらに改変された。本明細書中に提供された情報を用いて、実施者は、入手可能な供給源から種々の活性形態のタンパク質をコードするDNAを単離し得、そして簡便な発現系で組換え的にこのタンパク質を発現し得る。あるいはそしてさらに、実施者は、天然または組換え供給源からこの酵素精製し得、そして、その構造および機能をさらに特徴付けるために精製形態でそれを使用し得る。本発明のさらなる特徴に従って、本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質は、種々のスクリーニングアッセイ形式(その酵素を阻害する薬物についての細胞ベースのスクリーニングを含む)において特に有用である。そのようなアッセイの使用の例、ならびにこの組成物のさらなる有用性は、以下の第IV節に提供される。
【0097】
β−セクレターゼは、その活性、および例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群および他の中枢神経系(CNS)障害に見られるように、CNSにおいてアミロイド斑の主な成分である原線維ペプチド成分の生成への関与に起因して特に興味深い。従って、本発明の有用な特色は、例えば、このような障害のための治療薬についての候補である阻害物質についてスクリーニングするために使用され得る酵素の単離された形態を含む。
【0098】
(A.)ヒトβ−セクレターゼをコードするヒトβ−セクレターゼポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドの単離物は、実施例1〜3に詳しく述べられ、そして以下に記載されるようにPCRクローニングおよびハイブリダイゼーション技術により得られた。図1Aは、ポリヌクレオチド(配列番号1)の配列を示し、これは、ヒトβ−セクレターゼ(配列番号2)[1−501]の形態をコードする。ヒトβ−セクレターゼをコードするポリヌクレオチドは、多くのヒト組織のいずれか、好ましくは、ニューロン起源の組織(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas,VA;ATCC CCL 127)から入手可能である市販のヒト神経芽細胞種細胞株(IMR−32)のような神経細胞株およびOriGene Technologies,Inc.(Rockville,MD)から入手可能なヒト胎児脳cDNAライブラリーのようなヒト胎児脳を含むがそれらに限定されない)から簡便に単離される。
【0099】
手短には、ヒトβ−セクレターゼコード領域は、配列番号1として提供されるコード配列由来のハイブリダイゼーションプローブを使用して、当該分野で周知の方法により単離された。このようなプローブは、当該分野で周知の方法により設計されそして作製され得る。縮重したプローブを含む代表的なプローブは、実施例1に記載される。あるいは、cDNAライブラリーは、例えば、本明細書中の実施例2に記載されるプライマーおよび条件を使用して、PCRによりスクリーニングされる。このような方法は、以下のパートBに、より詳細に議論される。
【0100】
cDNAライブラリーをまた、当該分野で周知の方法(White,B.A.編、PCR Cloning Protocols;Humana Press、Totowa、NJ、1997;図9に概略的に示される)に従い、3’−RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)プロトコールを使用してスクリーニングした。ここで、配列番号1の5’部分由来のプライマーは、上記に記載されるように胎児脳cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより見出される部分cDNA基質クローンに添加される。より長い配列を決定する際に使用される代表的な3’RACE反応は、実施例3に詳細に述べられ、そして以下のパートBでより具体的に述べられる。
【0101】
ヒトβ−セクレターゼならびに本明細書中に記載される神経アスパルチルプロテアーゼファミリーのさらなるメンバーは、配列番号2として示されるポリペプチド配列の任意の部分に基づき設計されるランダム縮重プライマーの使用により同定され得る。例えば、本発明を支持して行われ、そして本明細書中の実施例1に詳細に述べられる実験において、各8倍縮重した8個の縮重プライマーのプールは、配列番号2から選択される独特な22アミノ酸ペプチド領域に基づいて設計される。このような技術は、他の種由来のさらに類似の配列を同定するために使用され得、そして/またはこのプロテアーゼファミリーの他のメンバーを表す。
【0102】
(ポリヌクレオチドの調製)
本明細書中に記載されるポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドプローブを使用してcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られ得、これは、上記に開示したように、ヒトβ−セクレターゼをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズし得、そして/またはPCR増幅し得る。種々の組織から調製されるcDNAライブラリーは、市販され、そしてcDNAクローンをスクリーニングしそして単離するための手順は、当業者に周知である。ゲノムライブラリーは、同様にスクリーニングされ得、調節領域およびイントロンを含むゲノム配列を得る。このような技術は、例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y.およびAusubel,FMら(1998)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,New York,N.Y.に記載される。
【0103】
このポリヌクレオチドは、上流または下流の配列(例えば、プロモーター、調節エレメント、ならびに5’非翻訳領域および3’非翻訳領域(UTR))を得るために伸長され得る。利用可能な転写配列の伸長は、当業者に公知の多くの方法(例えば、PCRまたはプライマー伸長(Sambrookら、前出))によるか、または例えば、MARATHON RACE キット(カタログ番号K1802−1;Clontech,Palo Aito,CA)を使用するRACE方法により行われ得る。
【0104】
あるいは、既知の遺伝子座に隣接するフランキング配列を検索するためにユニバーサルプライマーを使用する「制限部位」PCRの技術(Gobindaら(1993)PCR Methods Applic.2:318−322)は、更なるコード領域を生成するために使用され得る。第1に、ゲノムDNAは、リンカー配列に対するプライマーおよび既知の領域に特異的なプライマーの存在下で増幅される。増幅された配列は、同じリンカープライマー、および第1のプライマーに対して内在性の別の特異的プライマーを用いて、PCRの第2回に供される。PCRの各回の生成物は、適切なRNAポリメラーゼで転写され、そして逆転写酵素を使用して配列決定される。
【0105】
逆転(inverse)PCRは、既知の領域に基づく不一致の(divergent)プライマーを使用して配列を増幅または伸長するために使用され得る(Triglia Tら(1988)Nucleic Acids Res 16:8186)。このプライマーは、OLIGO(R)4.06Primer Analysis Software(1992;National Biosciences Inc,Plymouth,Minn.)または別の適切なプログラムを使用して、22〜30ヌクレオチド長であるように、50%以上のGC含量を有するように、そして約68〜72℃の温度で標的配列をアニールするように、設計され得る。この方法は、いくつかの制限酵素を使用し、遺伝子の既知領域の適切なフラグメントを生成する。次いで、このフラグメントは、分子内連結により環状にされ、そしてPCR鋳型として使用される。
【0106】
捕獲PCR(Lagerstrom Mら(1991)PCR Methods Applic 1:111〜119)は、ヒトおよび酵母の人工染色体DNA中の既知の配列に隣接するDNAフラグメントのPCR増殖のための方法である。捕獲PCRはまた、PCRの前に、DNA分子のフランキング部分へ操作された二本鎖配列を配置するために複数の制限酵素消化および連結を必要とする。
【0107】
フランキング配列を検索するために使用され得る別の方法は、Parker,JDら(1991;Nucleic Acids Res 19:3055〜3060)の方法である。さらに、PCR、ネスティングされたプライマーおよびPromoterFinder(TM)ライブラリーを使用し、ゲノムDNAを「検索する(walk in)」ことができる(Clontech,Palo Alto,CA)。このプロセスは、ライブラリーをスクリーニングする必要性を回避し、そしてイントロン/エキソン接合部を見出すのに有用である。全長cDNAについてのスクリーニングのために好ましいライブラリーは、サイズ選択されて、より大きいcDNAを含んだライブラリーである。また、遺伝子の5’および上流領域を含むさらなる配列を含むという点で、ランダムプライムされたライブラリーも好ましい。オリゴd(T)ライブラリーが全長cDNAを生じない場合、無作為にプライムされたライブラリーは、特に有用であり得る。ゲノムライブラリーは、5’非翻訳調節領域中への伸長に有用である。
【0108】
本発明のポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドはまた、公知の合成方法に従って、固相合成法により調製され得る。代表的に、約100塩基までのフラグメントが個々に合成され、次いで、数百塩基までの連続する配列に繋がれる。
【0109】
(B.β−セクレターゼの単離)
全長ヒトβ−セクレターゼ翻訳産物に対するアミノ酸配列は、図2Aにおける配列番号2として示される。本発明の開示に従って、この配列は、以下に記載される方法と共に、前節に記載されるヌクレオチド配列情報から推測された、酵素の「プレプロ」形態を表す。以下のパート4に記載されるように、天然の供給源から精製された酵素の生物学的に活性な形態から決定される配列とこの配列との比較は、活性かつ優勢な酵素の形態が、オープンリーディングフレーム推定配列の始めの45個のアミノ酸が除去された図2B(配列番号43)に示される配列により表されるようであることを示す。このことは、この酵素が、タンパク質分解活性により翻訳後修飾され得ることを示唆し、この活性は実際、自己触媒的であり得る。本明細書中の図5に示される概略図により例示されるように、さらなる分析は、この酵素が、そのC末端の近くに疎水的な推定膜貫通領域を含むことを示す。以下に示されるように、本発明のさらなる開示は、この酵素が、この膜貫通領域の前で切断され得、そしてなおβ−セクレターゼ活性を保持し得ることである。
【0110】
(1.天然の供給源および組換え供給源からのβ−セクレターゼの精製)
本発明の重要な特色に従って、今回、β−セクレターゼは、天然の供給源および組換え供給源から精製された。米国特許第5,744,346号(参考として本明細書中に援用される)は、ゲル排除クロマトグラフィーによる、260,000〜300,000(ダルトン)の見かけの分子量を有する単一ピーク中のβ−セクレターゼの単離を記載する。ネイティブな酵素が、アフィニティーカラムクロマトグラフィーにより、見かけ上均一に精製され得ることは、本発明の開示である。本明細書中で明らかにされた方法は、脳組織からの調製の際に、ならびに293T細胞および組換え細胞からの調製の際に、使用され;従って、これらの方法は、一般に、種々の組織供給源にわたり適用可能であると考えられる。専門家は、特定の調製工程、特に始めの工程が、特定の組織供給源に適用するために改変を必要とし得ることを理解し、そして当該分野で公知の方法に従ってこのような手順を適応させる。ヒト脳ならびに細胞からβ−セクレターゼを精製するための方法が、実施例5に詳細に述べられる。手短には、細胞膜または脳組織は、ホモジナイズされ、分画されそして種々のタイプのカラムクロマトグラフィーマトリックス(コムギ胚芽アグルチニン−アガロース(WGA)、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除を含む)に供される。画分の活性が、実施例4に詳細に述べられるMBP−C125切断アッセイのような、β−セクレターゼ活性についての任意の適切なアッセイを使用して測定され得る。β−セクレターゼ活性を含む画分は、約260〜300キロダルトンのサイズに対応するピーク溶出体積でこのカラムから溶出する。
【0111】
約1,500倍の精製を生じる、前述の精製スキームは、米国特許第5,744,346号(参考として本明細書中に援用される)に詳細に記載される精製スキームと類似する。本発明に従って、さらなる精製は、そのアフィニティーマトリックスとして、「P10−P4’staD−>V」(NH2−KTEEISEVN[sta]VAEF−CO2H;配列番号72)と呼ばれるβ−セクレターゼの特異的インヒビターを利用するアフィニティーカラムに、陽イオン交換フロースルー物質をアプライすることにより達成され得る。このインヒビター、およびインヒビターを組み込むSepharoseアフィニティーカラムを作製するための方法は、実施例7に記載される。カラム洗浄後、β−セクレターゼおよび限定された量の混入タンパク質をpH9.5ホウ酸緩衝液で溶出した。次いで、この溶出物をMini−Qカラムを使用して、陰イオン交換HPLCにより分画した。活性ピークを含む画分をプールし、最終β−セクレターゼ調製物を得た。この精製スキームを使用する例示的な実施の結果を表1に要約する。図6Aは、還元条件下で電気泳動した銀染色SDS PAGEゲルの写真を示し、そこでは、β−セクレターゼは、70キロダルトンのバンドとし電気泳動される。非還元条件下で実施した同じ画分(図6B)は、ジスルフィド架橋オリゴマーの証拠を提供する。陰イオン交換プール画分18〜21(図6Bを参照のこと)をジチオトレイトール(DTT)で処理し、そしてMini Qカラム上で再びクロマトグラフし、次いで、非還元条件下でSDS−PAGEに供した場合、約70キロダルトンで電気泳動する単一のバンドが観察された。驚くべきことに、この調製物の純度は、米国特許第5,744,346号に記載される、以前に精製された物質より少なくとも約200倍高い。比較のために、そこに記載される最も純粋な画分は、基質であるMBP−C26swの分子量(45キロダルトン)を考慮すると、約253nM/h/μgタンパク質の比活性を示した。従って、本発明の方法は、以前の調製物より少なくとも約1000倍高い純度の調製物(アフィニティー溶出物)、および約6000倍高い程度の純度の調製物を提供する。以前の調製物は、ヒト293細胞からの可溶化されたが富化されてない膜画分中に存在する酵素よりも少なくとも約5〜100倍高い純度を示した。
【0112】
【表1】
実施例5はまた、β−セクレターゼコード配列でトランスフェクトされた異種細胞由来の組換え物質を精製するために使用される精製スキームを記載する。これらの精製からの結果は、図7および図8に図示される。本発明を支持して実施されたさらなる実験は、ゲル排除クロマトフラフィーにより測定した場合、その組換え物質が260,000〜300,000ダルトンの範囲の見かけ上の分子量を有することを示した。図4は、米国特許第5,744,346号(参考として本明細書中に援用される)に記載される方法に従って、Superdex200(26/60)カラムのようなゲル排除カラムクロマトグラフィーカラム上で実施されたこの調製物の活性プロフィールを示す。
【0113】
(1.β−セクレターゼタンパク質の配列決定)
精製されたβ−セクレターゼから決定されるN−末端ペプチド配列をコードするcDNA配列を決定するための方法および結果を要約する概略図を、図9に示す。天然の供給源から単離された、精製されたβ−セクレターゼのN末端配列決定により、上記のように21残基のペプチド配列(配列番号77)を得た。このペプチド配列、およびその逆翻訳された、完全に縮重したヌクレオチド配列(配列番号76)は、図4の上端部分に示される。このペプチドをコードするcDNAフラグメントの、RT−PCR増幅に使用される2つの部分的に変性したプライマーのセットはまた、図4に要約される。DNAヌクレオチドプライマー(#3427〜3434)からなるプライマーセット1は、表3(実施例3)に示される。表3にまた記載されるように、鋳型としてヒトニューロンの初代培養物から逆転写されたcDNAとこのセットからのプライマーとの組み合わせを使用するマトリックスRT−PCRにより、プライマー(#3428〜3433)を用いて推定54bpのcDNA産物を得た。
【0114】
本発明を支持して、行われたさらなる実験では、プライマーセット1および2からのオリゴヌクレオチドもまた、マウス脳mRNAから推定されるサイズのcDNAフラグメントを増幅するために使用され得ることが見出された。DNA配列は、このようなプライマーがまた、標準のRACE−PCR技術により、ヒトβ−セクレターゼのマウスホモログおよび他の種のホモログならびに/または本明細書中に記載されるアスパルチルプロテアーゼファミリーのさらなるメンバーをクローニングするために使用されることを実証した。マウスホモログの配列は、図10(下方の配列;「pBS/MuImPain H#3 cons」)(配列番号65)に示される。マウスポリペプチド配列は、ヒトポリペプチド配列に対して約95%同一である。
【0115】
(2.さらなる配列、クローニングおよびmRNA分析のための5’および3’RACE−PCR)
増幅されたフラグメント由来の明確な内部ヌクレオチド配列は、3’RACEについて上の(コード)鎖および5’RACEについて下の(非コード)鎖を一致させる内部プライマーの設計を容易にする情報を提供した(Frohman,M.A.,M.K.DushおよびG.R.Martin(1988).「Rapid production of full−length cDNAs from rare rtanscripts:amplification using a single gene specific oligo−nucleotide primer.」Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85(23):8998−9002)。この実験に使用されたDNAプライマー(#3459および#3460)は、図9に概略的に例示され、そしてこれらのプライマーの正確な配列は、実施例3の表4に示される。
【0116】
プライマー(#3459および#3476)(表5)を、ベクターpLPCXloxのIMP−32cDNAライブラリー由来の下流の配列の初期3’RACE増幅に使用した。このライブラリーを、1プールあたり5,000クローンの100プールにあらかじめ分割し、そしてプラスミドDNAを、各プールから単離した。上記のパート2に記載されるプライマーを有する100プールの調査は、このライブラリー由来のβ−セクレターゼクローンを含む個々のプールを同定した。このようなクローンは、RACE−PCR分析に使用され得る。
【0117】
約1.8KbのPCRフラグメントを、反応生成物のアガロースゲル分画により観察した。PCR産物をゲルから精製し、そしてプライマー#3459(表5)を使用するDNA配列分析に供した。得られたクローン配列(23Aと命名した)を決定した。本発明を支持して行われた他の実験において、6つの、1つの23Aのリーディングフレームからの始めの7個の推定アミノ酸は、天然の供給源から単離された、精製されたタンパク質から決定された、N末端配列の最後の7個のアミノ酸(配列番号77)と正確に一致した。この知見は、配列の内部の確認を提供し、そして下流の適切なリーディングフレームを規定した。さらに、このDNA配列は、さらに下流に配列を伸長するための更なるプライマーの設計を容易にし、上流方向に存在する反対の鎖を配列決定することにより配列を実証し、そしてcDNAクローンを単離することをさらに容易にした。
【0118】
ヒトβ−セクレターゼのDNA配列は、5’および3’非翻訳領域を含む配列番号1に一致する、配列番号42として図示される。この配列をOriGeneTMから購入した市販のヒト胎児脳cDNAライブラリー、3’RACE産物23A、およびさらなるクローンから単離した部分cDNAクローン(9C7e.35)から決定し−全部で12個の独立したcDNAクローンを複合配列を決定するために使用した。この複合配列を、クローンまたはPCRフラグメントの両鎖からのDNAの重複ストレッチを配列決定することにより構築した。推定全長翻訳産物は、図1B中の配列番号2として示される。
【0119】
(4.β−セクレターゼおよび関連転写物の組織分布)
オリゴヌクレオチドプライマー#3460(配列番号39、表5)を、β−セクレターゼをコードする転写物のサイズを決定するため、そしてIMR−32細胞中におけるその発現を実験するために、ノーザンブロット上で、末端標識化プローブとして使用した。さらなるプライマーを、Marathon Race調製済みcDNA調製物(Clontech,Palo Alto,CA)を使用して、マウスcDNAを単離するため、そしてマウス組織を特徴付けるために使用した。表2は、種々のヒト組織およびマウス組織を、PCRまたはノーザンブロットにより、β−セクレターゼコード転写物の存在について試験した実験の結果を要約する。
【0120】
例えば、オリゴヌクレオチドプローブ3460(配列番号39)は、IMR−32細胞中の2Kbの転写物とハイブリダイズし、このことは、β−セクレターゼ酵素をコードするmRNAがこの組織において2Kbのサイズであることを示す。ヒトT細胞株であるJurkatから単離された総RNAのノーザンブロット分析、および3460オリゴヌクレオチドプローブ3460を有するヒト骨髄単球株Thp1はまた、これらの細胞における2kbの転写物の存在を明らかにした。
【0121】
このオリゴヌクレオチドプローブ#3460はまた、成人組織および胎児組織の両方に由来する、今までに実験された全てのヒト器官由来のRNAを含むノーザンブロット中の約2kbの転写物にハイブリダイズする。調査された器官としては、心臓、脳、肝臓、膵臓、胎盤、肺、筋肉、子宮、膀胱、腎臓、脾臓、皮膚、および小腸が挙げられる。さらに、特定の組織(例えば、膵臓、肝臓、脳、筋肉、子宮、膀胱、腎臓、脾臓および肺)は、オリゴヌクレオチドプローブ#3460とハイブリダイズする、約4.5kb、5kbおよび6.5kbのより大きな転写物の発現を示す。
【0122】
本発明を支持して行われたさらなる実験において、ノーザンブロットの結果を、ヌクレオチド#115〜1014を含む、配列番号1由来のリボプローブを使用することにより、オリゴヌクレオチドプローブ#3460で得た。このクローンは、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションのための、β−セクレターゼの触媒ドメインコード部分を含む860bpのリボプローブを提供する。このプローブは、試験されているサンプル中に発現されるに正確に適合するmRNAに高い特異性でハイブリダイズした。IMR−32から単離されたmRNAのノーザンブロットおよびこのリボプローブを有する1°HNCプローブは、オリゴヌクレオチド#3460で以前に検出された2kbの転写物、ならびに新たな約5kbのより大きな分子量の転写物の存在を明らかにした。この860ntのリボプローブと成人および胎児のヒト組織由来のRNAとのハイブリダイゼーションはまた、オリゴヌクレオチドプローブ#3460を用いて得られた結果を確認した。このβ−セクレターゼをコードするmRNAは、主に約5kbの転写物として、試験された全ての組織で発現される。成人において、この発現は、脳、胎盤および肺では最も低く、子宮および膀胱では中程度であり、そして心臓、肝臓、膵臓、筋肉、腎臓、脾臓および肺では、最も高く現れた。胎児組織においては、このメッセージは、試験された全ての組織で均一に発現される。
【0123】
【表2】
(5.β−セクレターゼの活性形態)
(a.N末端)
ヒトβ−セクレターゼの全長オープンリーディングフレーム(ORF)は、上記に記載され、そして、その配列は、配列番号2として図2Aに示される。しかし、上記で述べられるように、本発明のさらなる開示は、活性かつ天然に存在する分子の主な形態が、約45個のアミノ酸によりN末端で切断されることを示す。すなわち、天然の供給源から精製されたタンパク質は、当該分野で公知の方法(Argo Bioanalytica,Morris Plains,NJ,)に従って、配列決定されたN末端であった。N末端は、以下の配列を生じた:EDEEPEEPGRRGSFVEMVDNLRG...(配列番号55)。これは、ORF由来推定配列のアミノ酸46〜69に一致する。この知見および以下に記載される他の知見に基づき、配列番号2に関しては、活性で天然に存在しヒト脳に顕著な酵素の形態のN末端は、アミノ酸46である。精製されたタンパク質のさらなる加工は、内部ペプチドの配列(IFAVSACHVHDEFR(配列番号56))を提供し、これは、ORFにより規定される推定膜貫通ドメインのアミノ末端である。これらのペプチドを、本願の他の箇所に記載される、単離されたクローンについてのリーディングフレーム情報を確認しそしてそれを提供するために使用した。
【0124】
本発明を支持して実施されたさらなる研究で、さらなる細胞型から実施単離されたβ−セクレターゼのN末端配列決定は、タンパク質が単離される組織に依存して、N末端が図2Aに示されるORF配列に関してアミノ酸数46、22、58、または63であり得、試験された組織において、N末端アミノ酸46を有する形態が優勢であることを示した。すなわち、本発明を支持して実施された実験において、全長β−セクレターゼ構築物(すなわち、配列番号2をコードする)は、実施例6に記載されるFugene技術を使用して、293T細胞およびCOS A2細胞にトランスフェクトされた。β−セクレターゼは、実施例5に記載されるように、細胞ペレットから粗粒状画分を調製し、続いて、0.2%Triton X−100を含む緩衝液で抽出することによって細胞から単離された。Triton抽出物は、pH5.0緩衝液で希釈して、そしてSPセファロースカラムに通された(本質的には、実施例5Aに記載される方法に従う)。この工程は、多数の混入タンパク質を除去した。pHを4.5に調節した後、β−セクレターゼは、実施例5および7に記載されるように、P10−P4’staD→Vセファロースでさらに精製され、そして濃縮された。画分は、当該分野で公知の標準的な方法に従って、N末端配列について分析された。結果は、以下の表3に要約される。
【0125】
293T細胞由来のタンパク質の一次N末端配列は、脳から得られたタンパク質と同一であった。さらに、シグナル配列の直後(Thr−22)およびアスパルチルプロテアーゼ相同性ドメインの開始(Met−63)で始まるわずかな量のタンパク質もまた、観察された。Cos A2細胞において見出されるさらなる主要な形態は、Gly−58切断から得られた。
【0126】
【表3】
(b.C末端)
本発明を支持してさらに実施された実験は、配列番号2に示される全長アミノ酸配列のC末端がまた、短縮され得るが、一方、この分子のβ−セクレターゼ活性をなお保持していることを示した。より詳細には、以下のパートDでより詳細に記載されるように、推定膜貫通領域の直前(すなわち、配列番号2に関してアミノ酸452のC末端、またはC末端の約10個のアミノ酸)で終結しているこの酵素のC末端短縮化形態は、適切な切断部位でAPPを切断する能力および/または配列番号72を結合する能力によって証明されるようにβ−セクレターゼ活性を示す。
【0127】
従って、配列番号2によって提供される参照アミノ酸位置を使用して、β−セクレターゼの1つの形態は、46位から501位まで伸長する(β−セクレターゼ46〜501;配列番号43)。別の形態は、46位から452位を含む任意の位置まで、および46位から452位を越える任意の位置まで伸長し(β−セクレターゼ4〜452+)、好ましい形態は、β−セクレターゼ46〜452(配列番号58)である。より一般的には、別の好ましい形態は、1位から452位を含む任意の位置まで、および1位から452位を越えるが、501位を含まない任意の位置まで伸長する。β−セクレターゼタンパク質の他の活性形態は、酵素活性をなお保持しつつ、アミノ酸22、58、または63で始まり、そして420位のシステインを含む任意の位置まで、および420位のシステインを越える任意の位置、そしてより好ましくは、452位を含む位置まで、および452位を越える位置まで伸長し得る(すなわち、β−セクレターゼ22〜452+;β−セクレターゼ58〜452+;β−セクレターゼ63〜452+)。以下のパートDに記載されるように、452位もしくは452位より前のC末端位置でか、またはその後のさらにいくつかのアミノ酸で短縮されるこれらの形態は、結晶化研究において特に有用である。なぜなら、これらは、タンパク質の結晶化を妨害し得る膜貫通領域の全てかまたは十分な部分を欠失しているからである。1位〜452位まで伸長するこの組換えタンパク質は、本明細書中に記載される手順を使用して、アフィニティー精製された。
【0128】
(C.β−セクレターゼの結晶化)
さらなる局面に従って、本発明はまた、結合基質(例えば、ペプチド、改変されたペプチド、または低分子インヒビター)の非存在下または存在下で、結晶化形態における精製されたβ−セクレターゼを含む。この節は、このような組成物の方法および利用を記載する。
【0129】
(1.タンパク質の結晶化)
上記のように精製されたβ−セクレターゼは、出発材料として使用され、酵素の結晶構造および結晶配位を決定し得る。このような構造決定は、基質結合部位のコンフォメーションおよび大きさを規定することにおいて特に有用である。この情報は、酵素の基質インヒビターの設計およびモデリングに使用され得る。本明細書中で議論されるように、このようなインヒビターは、Aβペプチドアミロイド沈着物によって特徴付けられる、アルツハイマー病および他のアミロイド疾患の処置のための治療剤の候補分子である。
【0130】
β−セクレターゼの結晶学的構造は、最初に精製されたタンパク質を結晶化することによって、決定される。タンパク質(特に、プロテアーゼ)を結晶化するための方法は、現在、当該分野で周知である。実施者は、結晶学の一般的な原理についてPrinciples of Protein X−ray Crystallography(J.Drenth,Springer Verlag,NY,1999)を参照する。さらに、タンパク質の結晶を作製するためのキットは、一般的に業者(例えば、Hampton Research(Laguna Niguel,CA))から入手可能である。さらなる指導は、プロテアーゼインヒビター(特に、HIV−1プロテアーゼおよびHIV−2プロテアーゼ(アスパラギン酸プロテアーゼ)に関する)の結晶学の分野において書かれた、多くの研究論文から得られ得る。
【0131】
本明細書おいて記載されるβ−セクレターゼの種々の形態のいずれかが、結晶化研究について使用され得るが、配列番号2に示される全長配列の最初の45個のアミノ酸が欠失した形態が特に好ましい。なぜなら、これは、ヒト脳において天然に存在する優勢形態のようであるからである。翻訳後修飾(おそらく、自触反応)のいくつかの形態は、かなり迅速な速度(order)で最初の45個のアミノ酸を除去するように作用すると考えられている。なぜなら、現在まで、実質的に天然に存在する酵素は、インタクトな最初の45個のアミノ酸のすべてとともに単離されていないからである。さらに、結晶化の前に分子から推定膜貫通領域を除去することが望ましいと考えられる。なぜなら、この領域は、触媒には必要なく、そして潜在的に分子の結晶化をより困難にし得るからである。
【0132】
従って、結晶化のための良好な候補は、β−セクレターゼ46〜452(配列番号58)である。なぜなら、これは、(a)優勢に天然に存在するN末端を提供し、そして(b)「粘着(sticky)」膜貫通領域を欠失しているが、(c)β−セクレターゼ活性は保持している、酵素の形態であるからである。あるいは、膜貫通ドメインの方向に一部(約10〜15アミノ酸)伸長する、伸長物を有する酵素の形態もまた使用され得る。概して、リガンド結合部位のX線結晶学的配位を決定することに関して、(i)β−セクレターゼ活性を示すか、および/または(ii)公知のインヒビター(例えば、インヒビターリガンドP10−P4’staD−>V(β−セクレターゼ[46〜501](配列番号43)のP10−P4’staD−>Vに対する少なくとも1/100結合親和性である、結合アフィニティー))に結合するかのいずれかの酵素の任意の形態が、使用され得る。従って、この酵素の多数のさらなる短縮型形態は、これらの研究において使用され得る。任意の特定の形態の適合性は、これを上記のP10−P4’staD−>Vアフィニティーマトリックスと接触させることによって評価され得る。マトリックスに結合する、この酵素の短縮型形態は、このようなさらなる分析について適切である。従って、上記の46〜452に加えて、本発明を支持する実験は、残基419で終結している短縮型(おそらく、46〜419)がまた、アフィニティーマトリックスに結合し、従って、β−セクレターゼのX線結晶学的分析のための代替候補タンパク質組成物であることを示した。より一般的には、膜貫通ドメインの前で終結する、この酵素の任意の形態(特に、残基約419と452との間で終結している酵素)は、この点について適切である。
【0133】
N末端において、上記のように、一般的に最初の45個のアミノ酸は、細胞プロセシングの間に除去される。他の適切である天然に存在する形態または天然に発現する形態は、上記の表3に列挙される。これらとしては、例えば、残基22で開始されるタンパク質、残基58で開始されるタンパク質および残基63で開始されるタンパク質が挙げられる。しかし、残基1から始まる完全な酵素の分析はまた、この酵素についての情報を提供し得る。中間体形態(例えば、1〜440)を含む、他の形態(例えば、1〜420(配列番号60)から1〜452(配列番号59))は、この点について有用であり得る。概して、活性な酵素の任意のサブドメインの構造を得ることもまた有用である。
【0134】
活性形態を含む、このタンパク質を精製するための方法が、上記される。さらに、このタンパク質は、その天然に存在する(および哺乳動物発現組換え)形態では、明らかにグリコシル化されるので、均一な組成物を得るために、哺乳動物タンパク質をグリコシル化しない、細菌供給源由来のタンパク質を発現させ、そしてこのタンパク質を精製するか、または均一なグリコシル化パターンを提供する供給源(例えば、昆虫細胞)においてこれを発現することが所望され得る。これを達成するための適切なベクターおよびコドン最適化手順は、当該分野で公知である。
【0135】
発現および精製の後、このタンパク質は、約1〜20mg/mlの濃度に調節される。他の結晶化タンパク質について研究された方法に従って、最初のタンパク質溶液に存在する緩衝液濃度および塩濃度は、可能なレベルまで減少される。これは、当該分野で公知の微量透析技術を使用してサンプルを開始緩衝液に対して透析することによって達成され得る。緩衝液条件および結晶化条件は、タンパク質によって異なり、そしておそらく活性β−セクレターゼ分子のフラグメントによって異なるが、例えば、最適な結晶化条件を決定するためのマトリックス方法(Drentz,J.、前出;Ducruix,A.ら編、Crystallization of Nucleic Acids and Proteins:A Practical Approach,Oxford University Press,New York,1992)を使用して経験的に決定され得る。
【0136】
透析の後、条件は、タンパク質の結晶化について最適化される。概して、最適化のための方法は、タンパク質溶液の1μl液滴の「グリッド」を作製し、1μlのウェル溶液(様々なpHおよびイオン強度の緩衝液)と混合する工程を包含し得る。これらの液滴は、代表的に「ハンギングドロップ」構成において、個々に密封されたウェル(例えば、市販の容器(Hampton Research,Laguna Niguel,CA)に置かれた。沈殿化/結晶化は、代表的に2日と2週間との間で起る。ウェルは、沈殿化または結晶化の徴候について観察され、そして条件を最適化して、結晶を形成する。最適化された結晶は、大きさまたは形態学によって判断されず、むしろ結晶の回折の質によって判断される。この結晶の回折の質は、3Åよりも高い分解能を提供するべきである。代表的な沈殿剤としては、硫酸アンモニウム(NH4SO4)、ポリエチレングリコール(PEG)およびメチルペンタンジオール(MPD)が挙げられる。使用される多くの化学物質は、可能な限り最も高い等級(例えば、ACS)であるべきであり、そしてまた、使用の前に当該分野で公知の標準的な方法によって再精製され得る。
【0137】
結晶化条件を決定するための経験的なグリッドを形成する例示的な緩衝液および沈殿剤は、市販されている。例えば、「Crystal Screen」キット(Hampton Research)は、高分子の公知の結晶化条件に偏らせ、そしてこれらの条件から選択される、試行条件の疎行列(sparse matrix)法を提供する。これは、高分子の非常に少量のサンプル(50〜100μl)を使用して、広範なpH、塩、および沈殿剤を素早く試験するための「グリッド」を提供する。このような研究において、1μlの緩衝液/沈殿剤溶液が、等量の透析されたタンパク質溶液に添加され、そしてこの混合物は、少なくとも2日〜2週間、放置され、ここで結晶化が注意深くモニターされる。化学物質は、一般的な業者から得られ得る;しかし、化学物質は、結晶化研究のために適切な純度等級を使用することが望ましい(例えば、Hampton Research(Laguna Niguel,CA)によって提供される)。一般的な緩衝液としては、(最適なpHの範囲を提供するために)シトレート、TEA、CHES、アセテート、ADAなどが挙げられ、代表的には、約100mMの濃度である。代表的な沈殿剤としては、(NH42SO4、MgSO4、NaCl、MPD、エタノール、種々のサイズのポリエチレングリコール、イソプロパノール、KCl;など(Ducruix)が挙げられる。
【0138】
種々の添加剤が、結晶の特徴を向上させることを補助するために使用され得る。添加剤としては、以下のパート2に議論されるような基質アナログ、リガンド、またはインヒビター、および以下を含むが、これらに限定されない特定の添加剤が挙げられる:
5% ジェファミン(Jeffamine)
5% ポリプロピレングリコール P400
5% ポリエチレングリコール 400
5% エチレングリコール
5% 2−メチル−2,4−ペンタンジオール
5% グリセロール
5% ジオキサン
5% ジメチルスルホキシド
5% n−オクタノール
100mM (NH42SO4
100mM CsCl
100mM CoSO4
100mM MnCl2
100mM KCl
100mM ZnSO4
100mM LiCl2
100mM MgCl2
100mM グルコース
100mM 1,6−ヘキサンジオール
100mM デキストランサルフェート
100mM 6−アミノカプロン酸
100mM 1,6−ヘキサンジアミン
100mM 1,8−ジアミノオクタン
100mM スペルミジン
100mM スペルミン
0.17mM n−ドデシル−β−D−マルトシド NP 40
20mM n−オクチル−β−D−グルコピラノシド。
【0139】
本発明の1つの発見に従って、全長β−セクレターゼ酵素は、少なくとも1つの膜貫通ドメインを含み、そして、この酵素の精製は、界面活性剤(Triton X−100)の使用によって補助される。膜タンパク質は、インタクトで結晶化され得るが、特別な条件を必要とし得る(例えば、非イオン性界面活性剤の添加(例えば、C8G(8−アルキル−β−グルコシド)またはn−アルキル−マルトシド(CnM)))。このような界面活性剤の選択は、いくらか経験的であるが、特定の界面活性剤が、一般に使用される。多数の膜タンパク質は、高塩濃度の混合物への添加によって、首尾よく塩析された。PEGはまた、首尾よく使用され、多くの膜タンパク質を沈殿させた(Ducruixら、前出)。あるいは、上記のように、このタンパク質のC末端短縮化形態は、インヒビターを結合するが、膜貫通ドメイン(例えば、β−セクレターゼ46〜452)は、欠失しており、結晶化される。
【0140】
結晶化条件が決定される後、多量のタンパク質の結晶化が、当該分野で公知の方法(例えば、拡散蒸着または平衡透析)によって達成され得る。拡散蒸着において、1滴のタンパク質溶液は、沈殿剤または別の脱水剤を含む溶液のより大きなリザーバに対して平衡化される。密封後、この溶液は、平衡化し、タンパク質の過飽和濃度を達成し、これによって、液滴における結晶化を誘導する。
【0141】
平衡透析は、低イオン強度でのタンパク質の結晶化のために使用され得る。これらの条件下で、「加塩(salting in)」として公知である現象が生じる。これによって、タンパク質分子は、他のタンパク質分子との相互作用を通して、静電電荷の平衡を達成する。この方法は、タンパク質の溶解度がより低いイオン強度で低い場合、特に効果的である。透析膜がキャピラリーチューブ(より下の部分で湾曲され得る)の下端に装着される微量拡散セル含む種々の装置および方法が使用される。最終的な結晶化条件は、外溶液の組成を緩やかに変化させることによって達成される。これらの方法のバリエーションは、濃度勾配平衡透析の設定を利用する。微量拡散セルは、Hampton Research(Laguna Niguel,CA)のような業者から入手可能である。
【0142】
一旦、結晶化が達成されると、結晶は純度(例えば、SDS−PAGE)および生物学的活性について特徴付けられる。より大きい結晶(>0.2mm)は、X線回折の分解能を上昇させるために好ましい。X線結晶回折は、好ましくは1.0〜1.5Åのオーダーである。選択された結晶は、強い、単色光のX線源(例えば、シンクロトロンまたは回転陰極発生器)を使用する、X線回折に供され、そして得られるX線回折パターンは、当該分野で公知の方法を使用して分析された。
【0143】
1つの適用において、β−セクレターゼアミノ酸配列および/またはX線回折データは、コンピュータで読み取りが可能な媒体で記録される。コンピュータで読み取りが可能な媒体は、コンピュータによって読み取り、そして直接アクセスされ得る、任意の媒体を意味する。これらのデータを使用して、この酵素、そのサブドメイン、またはそのリガンドをモデリングし得る。この適用に対して有用であるコンピュータアルゴリズムは、公的におよび商業的に利用可能である。
【0144】
(2.タンパク質およびインヒビターの結晶化)
上記のように、インヒビターのような結合リガンドの存在下でタンパク質を共結晶化させることは、有利である。概して、タンパク質の結晶化を最適化するプロセスは、1mMよりも濃い濃度のインヒビターリガンドを沈殿段階の間に添加することによる。これらの結晶はまた、リガンドの非存在下で形成された結晶と比較され、その結果、リガンド結合部位の測定が、なされ得る。あるいは、1〜2μlの0.1〜25mMのインヒビター化合物が、「ソーキング(soaking)」として公知のプロセスにおいてインヒビターの非存在下で成長中の結晶を含む、液滴に添加される。結合部位の配位に基づいて、さらなるインヒビター最適化が、達成される。このような方法は、HIVプロテアーゼに対する新しくより強力なインヒビターの発見において、有利に使用された(例えば、Viswanadhan,V.N.ら、J.Med.Chem.39:705−712、1996;Muegge,I.ら、J.Med.Chem.42:791−804,1999を参照のこと)。
【0145】
これらの共結晶化実験およびソーキング実験において使用される、1つのインヒビターリガンドは、上記のスタチンペプチドインヒビターである、P10−P4’staD−>V(配列番号72)である。この分子を作製するための方法は、本明細書中に記載される。このインヒビターは、β−セクレターゼと混合され、そしてこの混合物は、上記の同様の最適化試験に供され、酵素単独で達成されたこれらの条件に焦点をあわせた。配位が決定され、そして比較が、当該分野で周知の方法に従って、遊離した酵素とリガンドと結合した酵素との間でなされた。さらなる比較が、このような配位に対する酵素の阻害濃度を比較することによってなされ得る(例えば、Viswanadhanら、前出によって記載される)。このような比較の分析は、この方法を使用して、さらなるインヒビターを設計するための指針を提供する。
【0146】
(D.β−セクレターゼの生物学的活性)
(1.天然に存在するβ−セクレターゼ)
本発明を支持して実施された研究において、β−セクレターゼの単離され、精製された形態は、1つ以上のネイティブ基質または合成基質を使用して、酵素活性のために試験された。例えば、上記で議論されるように、β−セクレターゼが、実施例5Aに記載の方法を使用してヒト脳から調製され、そして均一に精製された場合、1本のバンドが、還元(+β−メルカプトエタノール)条件下でのSDS−ポリアクリルアミドゲルにおいて陰イオン交換クロマトグラフィー(最終段階)からのサンプル画分の電気泳動後の銀染色によって観察された。上記表1に要約するように、この画分は、約1.5×109nM/h/mgタンパク質の比活性を生じた。この活性は、MBP−C125SWの加水分解によって測定された。
【0147】
(2.単離された組換えβ−セクレターゼ)
この酵素の種々の組換え形態が産生され、そしてトランスフェクトされた細胞から精製された。これらの細胞は、この酵素を過剰産生するように作成されたので、この酵素の天然に存在する形態に関して記載された精製計画(例えば、実施例5A)は、陽性の結果とともに省略され得ることが見出された。例えば、実施例6に詳述するように、「FUGENE」6 Transfection Reagent(Roche Molecular Biochemicals Research、Indianapolis、IN)を使用して、293T細胞は、pCEKクローン27(図12および図13A〜E)でトランスフェクトされ、そしてCos A2細胞は、pCFβA2でトランスフェクトされた。ベクターpCFは、HindIII部位とEcoRI部位との間に配列番号80(図11A)を挿入することによって親ベクターpCDNA3(Invitrogenから市販されている)から構築された。この配列は、アデノウイルス主要後期プロモーター3部(triplet)リーダー配列、ならびにアデノウイルス主要後期領域の第1エキソンおよびイントロンから作製されるハイブリッドスプライスおよび合成的に生成されたIgG可変領域スプライスアクセプターを包含する。
【0148】
pCDNA3は、制限エンドヌクレアーゼHindIIIおよびEcoRIで切断され、次いで、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントで末端を埋めることによって平滑化された。この切断し、そして平滑化したベクターをゲル精製し、そしてpED.GIから単離されたフラグメントと連結した。このpEDフラグメントは、PvuIIおよびSmaIでの消化、続いて得られる419塩基対フラグメントのゲル精製によって調製された。このフラグメントは、さらに方向に関してスクリーニングされ、そして配列決定によって確認された。
【0149】
pCEK発現ベクターを作製するために、pCF由来の発現カセットは、EBV発現ベクターpCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA)に移入された。pCEP4は、BglIIおよびXbaIで切断され、埋められ、そして大きな9.15kbフラグメント含有pBR(ハイグロマイシン配列およびEBV配列)は、発現カセット(CMV,TPL/MLP/IGgスプライス、Sp6,SVポリA、M13隣接領域)含有pCFのNruIからXmnIまでの1.9kbフラグメントに連結された。pCFβA2(クローンA2)は、ベクターpCF中に全長β−セクレターゼを含む。pCFベクターは、COS細胞および293T細胞で複製する。各々の場合において、細胞をペレット化して、そして粗粒子画分が、ペレットから調製された。この画分は、0.2% Triton X−100を含む緩衝液で抽出された。Triton抽出物は、pH5.0緩衝液で希釈され、そしてSP Sepharoseカラムに通された。pHを4.5に調節した後、β−セクレターゼ活性を含む画分は、脳の酵素について記載されるように、P10−P4’(statine)D−>V Sepharoseでいくぶんさらに精製され、濃縮された。画分の銀染色は、ゲル上で共精製バンドを示した。これらのバンドに対応する画分は、N末端アミノ酸決定に供された。これらの実験からの結果は、この画分内のβ−セクレターゼ種のいくらかの不均一性を示した。これらの種は、この酵素の種々の形態を示す;例えば、(配列番号2に関して)アミノ酸46がN末端である場合、293T細胞由来の酵素は、一次N末端が、脳において発見されたものと同一である。シグナル配列直後(残基23で)、およびアスパルチルプロテアーゼ相同ドメインMet−63の開始で始まるわずかな量のタンパク質もまた、観察された。タンパク質のさらなる主要な形態が、Cos A2細胞において見出され、これは、Gly−58での切断から得られた。これらの結果は、上記表3に要約される。
【0150】
(2.単離された、天然に存在するβ−セクレターゼの組換えβ−セクレターゼとの比較)
上記のように、ヒト脳由来の天然に存在するβ−セクレターゼおよびこの酵素の組換え形態は、APPを切断する活性を示す(特に、MBP−C125アッセイにおける活性によって証明されるように)。さらに、この酵素の天然に存在する形態からの重要なペプチド配列は、このクローニングされる酵素に由来する推定配列の部分と一致する。同一に作用する2つの酵素のさらなる確認は、さらなる実験から得られ得る。この実験において、同様のアッセイ条件下で各々の酵素について測定されたIC50値の比較によって評価されるように、種々のインヒビターは、各々の酵素に対して非常に類似する親和性を有することが見出された。これらのインヒビターは、以下に記載される本発明のさらなる局面に従い発見された。重要なことに、このインヒビターは、同様のアッセイにおいて比較された場合、脳由来の酵素調製物および組換え酵素調製物において、ほとんど同一のIC50値および効力の序列を生じる。
【0151】
さらなる研究において、比較は、C末端フラッグ配列を有する全長組換え酵素「FLp501」(配列番号2、+配列番号45)と452位で短縮化された組換え酵素「452Stop」(配列番号58または配列番号59)との間でなされた。両方の酵素は、上記のようにβ−セクレターゼの基質(例えば、MBP−C125)を切断する活性を示した。この酵素のC末端短縮化形態は、MBP−C125sw基質およびP26−P4’基質を切断する活性を示し、試験された種々のインヒビター薬物の同様の効力の序列であった。さらに、絶対的なIC50は、同じインヒビターで試験された2つの酵素に匹敵した。全IC50は、10μM未満であった。
【0152】
(1.細胞性βセクレターゼ)
本発明を支持して行われた、さらなる実験は、本明細書中に記載される単離されたβセクレターゼポリヌクレオチド配列が、細胞内で活性なβセクレターゼまたはβセクレターゼフラグメントをコードすることを明らかにした。この節は、本発明を支持して行われた実験を記載する。細胞を、βセクレターゼのみをコードするDNAを用いてトランスフェクトしたか、または実施例8に記載されるようにセクレターゼをコードするDNAおよび野生型APPをコードするDNAを用いて、同時トランスフェクトした。
【0153】
(a.βセクレターゼを用いるトランスフェクション)
本発明を支持して行われた実験において、全長ポリペプチド(配列番号2)を発現する遺伝子を含むクローンを、COS細胞にトランスフェクトした(FugeneおよびEffecteneの方法)。全細胞溶解物を、調製し、そして種々の量の溶解物を、当該分野で公知の標準的な方法または本明細書中の実施例4に記載される方法に従ってβセクレターゼ活性について試験した。図14Bは、これらの実験の結果を示す。示されるように、可溶物を、にせの細胞からでもコントロール細胞からでもなく、トランスフェクトした細胞より調製し、MPB−C125swアッセイにおいてかなりの酵素活性を示し、このことはこれらの細胞によるβセクレターゼの「過剰発現」を示した。
【0154】
(b.βセクレターゼおよびAPPを用いた細胞の同時トランスフェクション)
さらなる実験において、293T細胞を、全長βセクレターゼ分子(1〜501;配列番号2)を含むpCEKクローン27(図12および13)またはpoCKベクターと、実施例8に記載されるように野生型または、スウェーデン型APP構築物pohCK751のいずれかを含むプラスミドを用いて同時トランスフェクトした。β特異的切断を、正確な位置の切断が生じたことを確認するためにELISAおよびウェスタン分析によって分析した。
【0155】
簡単には、293T細胞を、当量の、βAPPswまたはβAPPwtをコードするプラスミドおよびβセクレターゼまたはコントロールβガラクトシダーゼ(β−gal)cDNAをコードするプラスミドを用いて、標準的な方法に従って同時トランスフェクトされた。βAPPおよびβセクレターゼcDNAを、293細胞内で複製しないベクター、pohCKまたはpCEKを介して送達した(pCEK−クローン27、図12および13;βAPP751発現pohCK751、図21)。馴化培地および細胞溶解物をトランスフェクションの48時間後に収集した。ウェスタン分析を馴化培地および細胞溶解物について行った。Aβペプチドの検出のためのELISAを、馴化培地について行い、種々のAPP切断産物を分析した。
【0156】
(ウェスタンブロットの結果)
βセクレターゼが、1位で始まり、可溶性APP(sAPPβ)を放出するAβペプチドを産生するために、APPwtにおいてMet−Asp、およびAPPswにおいてLeu−Aspで特異的に切断することが知られている。免疫学的試薬(特に、それぞれ抗体92および92sw(または192sw))が開発され、本明細書中に参考として援用される米国特許第5,721,130号に記載されるように、APPwtおよびAPPsw基質における、この位置での切断を特異的に検出する。ウェスタンブロットアッセイを、細胞溶解物が分離されたゲル上で行った。これらのアッセイが、APPwtおよびAPPsw、それぞれに由来するAPPのN末端フラグメントのC末端に特異的な1次抗体試薬としてAb 92またはAb92Sを使用して、当該分野で周知の方法を使用して行った。さらに、ELISAフォーマットアッセイを、C末端フラグメントのN末端アミノ酸に特異的な抗体を使用して行った。
【0157】
モノクローナル抗体13G8(APPのC末端−−APPの675〜695位のエピトープに特異的)を、トランスフェクトされた細胞がAPPを発現するか否かを決定するためのウェスタンブロットフォーマットにおいて使用した。図15Aは、内因性レベルを超える大過剰でAPPの発現レベルを有する再現可能なトランスフェクションが得られたことを示す(3連のウェルが、図15Aにおいて、1、2、3として示される)。APPの3形態(成熟、未成熟、および内因性)が、APPwtまたはAPPswでトランスフェクトした細胞において見られ得る。βセクレターゼを、APPで同時トランスフェクトした場合、より小さいC末端フラグメントが、同時トランスフェクトした細胞から3連のウェルのレーンに現れた(ウェスタンブロット図15A、レーンの1番右のセット)。平行した実験において、細胞をβセクレターゼおよびAPPsw基質で同時トランスフェクトした場合、事実上すべての成熟APPが切断された(図15Bの「1、2、3」で標識されたレーンの1番右のセット)。これは、成熟APP(上部のバンド)のβセクレターゼによる広範な切断を示唆し、βセクレターゼ部位での切断について溶解物において予測サイズのC末端フラグメントを生じる。Swedish基質での同時トランスフェクションはまた、2つの異なるサイズのCTFフラグメント増加を生じた(星によって示される)。以下に記載される、さらなるウェスタンおよびELISAの結果と関連して、これらの結果は、βセクレターゼ部位での第1の切断の後にAPPsw基質上で生じる第2の切断と矛盾しない。
【0158】
細胞由来の馴化培地を、β−s−APPswに特異的である192sw抗体との反応性について分析した。この抗体を使用する分析は、βセクレターゼ切断可溶性APPにおける劇的な増加を示す。これは、「APPsw βsec」サンプルに存在する暗いバンドと「APPsw βゲル」サンプルに存在するバンドを比較することによって図16Bに図解されるゲルにおいて観察される。β−s−APPwtに特異的な抗体はまた、図16Aに図解されるように、βセクレターゼ切断物質における増加を示す。
【0159】
これらの実験において使用される抗体は、βセクレターゼ切断部位に特異的であるので、先の結果は、p501 βセクレターゼが、この部位でAPPを切断すること、およびこの組換えクローンの過剰発現が、細胞全体における正確なβセクレターゼ部位でのβセクレターゼのプロセシングの劇的な増強につながることを示す。このプロセシングは、野生型APP基質に働き、そしてSwedeish APP基質に対して実質的に増強される。293T細胞における約20%の分泌APPがβ−sAPPであるAPPswについての増加が以下に観察されたので、ほとんどすべてのsAPPが、β−sAPPでありそうである。この観察は、αAPPおよび総sAPPを測定、独立した、ウェスタンアッセイによってさらに確認した。
【0160】
モノクローナル抗体1736は、曝露されたαセクレターゼ切断βAPPに特異的である(Selkoeら)。ウェスタンブロットを、1次抗体として、この抗体を使用して行った場合、わずかな、しかし再現可能なα切断APPwtの減少が観察され(図17A)、そしてα切断APPsw物質における劇的な減少がまた観察された(「APPsw βsec」で標識されたレーンにおける図17Bの反応性がほぼないことに注意のこと)。これらの結果は、過剰発現された組換えp501 βセクレターゼ切断が非常に効率的または広範にAPPswを切断するので、αセクレターゼが切断できるままである基質がほとんどないか、またはないことを示唆する。これはさらに、APPsw βsecサンプルにおけるすべてのsAPP(図16に図解される)が、β−sAPPであることを示す。
【0161】
(Aβ ELISAの結果)
組換え細胞由来の馴化培地を収集し、必要に応じて希釈し、そして、検出試薬であるビオチン標識されたmAb 3D6(Aβ(x〜40)(すなわち、AβペプチドのすべてのN末端短縮形態)を測定する)と共に、モノクローナル抗体2G3(Aβ(1〜40)のC末端を特異的に認識する)でコーティングされたマイクロタイタープレート上でELISAによってAβペプチド産生について試験した。APPwtでのβセクレターゼの過剰発現は、Aβ(x〜40)産生における約8倍の増加を生じ、1〜40は、合計の低い割合を示した。また、Aβ1〜40の産生における実質的な増加が存在した(図18)。APPswと共に、Aβ(x〜40)における約2倍の増加が存在した。任意の特定の根底にある理論に固執することなく、β−sec/APPwt細胞と比較して、Aβ(x〜40)β−sec/APPsw細胞のより劇的でない増加は、APPswの基質のプロセシングがAPPwt基質のプロセシングよりもはるかにより効果的であるという事実に、いくぶん起因することが考えられる。すなわち、有意な量のAPPswが内因性βセクレターゼによってプロセシングされることであり、そしてβセクレターゼのトランスフェクションの際のさらなる増加が、従って制限される。これらのデータは、組換えβセクレターゼの発現が、Aβの産生を増加すること、およびβセクレターゼが細胞におけるAβの産生の律速であることを示す。これは、βセクレターゼの酵素活性が、細胞におけるAβの産生の律速であることを意味し、従って、よい治療標的を提供する。
【0162】
(IV.有用性)
(A.発現ベクターおよびβセクレターゼを発現する細胞)
本発明は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを標準発現ベクターに挿入し、以下に議論される標準的な方法に従って適切な宿主細胞をトランスフェクトすることによって、上記のアスパチルプロテアーゼファミリーのメンバーのさらなるクローニングおよび発現を含む。このような発現ベクター、および例えば、本明細書中に記載されるヒトβセクレターゼ酵素を発現する細胞は、例えば、以下のB部に議論されるスクリーニングアッセイのための成分(精製酵素またはトランスフェクトされた細胞)を産生する際に有用性を有する。このような精製酵素はまた、上のIII節に記載されるような酵素の結晶化のための開始物質を提供する際に、有用性を有する。特に、酵素の短縮形態(例えば、1〜452(配列番号59)および46〜452(配列番号58))、および本明細書中に記載される酵素の脱グリコシル化形態は、この点において有用性を有すると考えられ、膜貫通領域(例えば1〜460または46〜458)にいくらか短縮された他の形態も同様である。
【0163】
本発明に従って、ヒトβセクレターゼ、スプライシング変異体、タンパク質のフラグメント、融合タンパク質、またはその機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列を、集合的に「βセクレターゼ」といい、適切な宿主細胞におけるβセクレターゼの発現を指向する組換えDNA分子において使用され得る。遺伝コードの固有の縮重に起因して、等価なアミノ酸か、または機能的に同じアミノ酸配列を実質的にコードする他の核酸配列が、βセクレターゼをクローン化し、そして発現するために使用され得る。このような改変は、当業者に容易に確かめられる。
【0164】
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子産物のクローニング、プロセシングおよび/または発現を変更する改変を含むが、これらに限定されない、種々の理由のためにβセクレターゼコード配列を改変するために操作され得る。例えば、改変は、新しい制限部位を挿入するため、グリコシル化パターンを変更するため、コドン優先度を変化するため、スプライシング改変体を産生するためなどのために、当該分野で周知の技術(例えば、部位特異的変異誘発)を使用して導入され得る。例えば、非天然に生じるコドンを有するβセクレターゼをコードするヌクレオチド配列を産生することは有利であり得る。特定の原核生物宿主または真核生物宿主に好ましいコドン(Murray,Eら(1989)Nuc Acids Res 17:477〜508)は、例えば、βセクレターゼポリペプチドの発現の速度を増加させるためか、または通常に生じる配列から産生される転写物よりも、所望の特性(例えば、より長い半減期)を有する組換えRNA転写物を産生するため選択され得る。これは、非哺乳動物細胞(例えば、細菌、酵母、または昆虫細胞)において組換え酵素を産生する際に特に有用であり得る。本発明はまた、上に広く記載されるような1つ以上の配列を含む組換え構築物を含む。構築物は、前向きか逆向きで、本発明の配列が挿入されたベクター(例えば、プラスミドまたはウイルスベクター)を含む。この実施形態の好ましい局面において、構築物はさらに、例えば、この配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む制御配列を含む。多数の適切なベクターおよびプロモーターは、当業者に公知であり、そして市販されている。原核生物宿主および真核生物宿主を用いた使用のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターはまた、Sambrookら(前出)に記載される。
【0165】
本発明はまた、本発明のベクターを用いて遺伝的に操作される宿主細胞、および組換え技術による本発明のタンパク質およびポリペプチドの産生に関する。宿主細胞は、本発明のベクターを用いて遺伝的に操作され(すなわち、形質導入、形質転換、またはトランスフェクトされ)、そのベクターは、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。ベクターは、例えば、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主細胞は、プロモーターを活性化するため、形質転換体を選択するため、あるいはβセクレターゼ遺伝子を増幅するために適切に変更された従来の栄養培地において培養され得る。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択された宿主細胞に以前使用した条件と同様であり、そして当業者には明らかである。種々の型の細胞のトランスフェクションのために例示的な方法は、本明細書中で、実施例6に提供される。
【0166】
上記のように、本発明の好ましい実施形態に従って、宿主細胞は、細胞環境おける活性を測定するために酵素基質(例えば、APP(例えば、野生型またはSwedish変異体形態))で同時にトランスフェクトされ得る。このような宿主は、特に、細胞膜を横断し得る治療薬剤についてスクリーニングするために、本発明のスクリーニングアッセイにおいて特に有用である。
【0167】
本発明のポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現に適切な任意の種々の発現ベクターに含まれ得る。このようなベクターは、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、および合成DNA配列(例えば、SV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター;ウイルスDNA(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、禽痘ウイルス、および仮性狂犬病)を含む。しかし、任意の他のベクターが、それが宿主において複製可能であり、かつ生存可能である限り使用され得る。適切なDNA配列は、種々の手順によってベクターに挿入され得る。一般的に、DNA配列は、当該分野で公知の手順によって、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。このような手順および関連したサブクローニング手順は、当業者の範囲内にあるとみなされる。
【0168】
発現ベクターにおけるDNA配列は、適切な転写制御配列(プロモーター)に作動可能に連結され、mRNA合成を指向する。このようなプロモーターの例としては、原核生物細胞または真核生物細胞、またはそれらのウイルスにおける、CMVプロモーター、LTRプロモーターまたはSV40プロモーター、E.coli lacプロモーターまたはtrpプロモーター、ファージλ PL プロモーター、および遺伝子の発現を制御することが公知の他のプロモーターが挙げられる。発現ベクターはまた、翻訳の開始のためのリボソーム結合部位、および転写ターミネーターを含む。このベクターはまた、発現を増幅するための適切な配列を含む。加えて、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞(例えば、真核生物細胞培養に対するジヒドロ葉酸レダクターゼ耐性またはネオマイシンン耐性、あるいは例えば、E.coliにおけるテトラサイクリン耐性またはアンピシリン耐性)の選択のための表現型形質を提供するために、好ましくは1以上の選択マーカー遺伝子を含む。
【0169】
上記の適切なDNA配列を含むベクター、ならびに適切なプロモーター、または制御配列は、宿主がタンパク質を発現することを可能にするために適切な宿主を形質転換するために使用され得る。適切な発現宿主の例としては:細菌細胞(例えば、E.coli、Streptomyces、およびSalmonella typhimurium);真菌細胞(例えば、酵母);昆虫細胞(例えば、DrosophilaおよびSpodoptera Sf9);哺乳動物細胞(例えば、CHO、COS、BHK、HEK 293またはBowes黒色腫);アデノウイルス;植物細胞などが挙げられる。すべての細胞またはすべての細胞株が、十分に機能的なβセクレターゼを産生可能であるわけではないことが理解される;例えば、おそらくヒトβセクレターゼは、天然の形態において高度にグリコシル化され、そしてこのようなグリコシル化は、活性に必要であり得る。この場合において、真核生物宿主細胞が、好まれ得る。適切な宿主の選択は、本明細書中の教示から当業者の範囲内にあると考えられる。本発明は、使用される宿主細胞によって限定されない。
【0170】
細菌系において、多数の発現ベクターが、βセクレターゼの意図された使用に依存して選択され得る。例えば、多量のβセクレターゼまたはそのフラグメントが抗体の誘導のために必要とされる場合、ベクター(融合タンパク質(容易に精製される)の高レベルの発現を指向する)が望ましい。このようなベクターとしては、多機能性E.coliクローニングベクターおよび発現ベクター(例えば、Bluescript(R)(Stratagene、La Jolla、CA))(ハイブリッドタンパク質が産生されるように、そのベクターにおいて、βセクレターゼコード配列がベクターにインフレームでアミノ末端Metおよび引き続く7残基のβガラクトシダーゼに対する配列と結合され得る);pINベクター(Van HeekeおよびSchuster(1989)J Biol Chem 264:5503〜5509);pETベクター(Novagen、Madison WI);などが挙げられるが、これらに限定はされない。。
【0171】
酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター(例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGH)を含む多数のベクターが使用され得る。総説については、Ausubelら(前出)およびGrantら(1987;Methods in Enzymology 153:516〜544)を参照のこと。
【0172】
植物発現ベクターが使用される場合、βセクレターゼをコードする配列の発現が、任意の多数のプロモーターによって駆動され得る。例えば、ウイルスプロモーター(例えば、CaMVの35Sプロモーターおよび19Sプロモーター(Brissonら(1984)Nature 310:511〜514))が、単独でか、またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わされて使用され得る(Takamatsuら(1987)EMBO J 6:307〜311)。あるいは、例えばRUBISCOの小サブユニット(Coruzziら(1984)EMBO J 3:1671〜1680;Broglieら(1984)Science 224:834〜843);または熱ショックプロモーター(Winter JおよびSinibaldi RM(1991)Results.Probl.Cell Differ.17:85〜105)のような植物プロモーターが使用され得る。これらの構築物は、直接のDNA形質転換または病原体媒介トランスフェクションによって植物細胞に導入され得る。このような技術の総説については、Hobbs SまたはMurry LE(1992)McGraw Hill Yearbook of Science and Technology,McGraw Hill,New York,N.Y.,191〜196頁;またはWeissbachおよびWeissbach(1988)Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,New York,N.Y.,421〜463頁を参照のこと。
【0173】
βセクレターゼはまた、昆虫系において発現される。1つのこのような系において、Autographa californica核多核体病ウイルス(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda Sf9細胞またはTrichoplusiaの幼生に外因性遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。βセクレターゼコード配列は、ウイルスの必須でない領域(例えば、ポリヘドリン(polyhedrin)遺伝子)にクローン化され、そしてポリヘドリンプロモーターの制御下に配置される。Kv−SLコード配列の連続的な挿入は、ポリヘドリン遺伝子を不活性にし、そしてコートタンパク質を欠く組換えウイルスを産生する。次いで組換えウイルスは、βセクレターゼが発現されるS.frugiperda細胞またはTrichoplusiaの幼生の感染に使用され得る(Smithら(1983)J Virol 46:584;Engelhard EKら(1994)Proc Nat Acad Sci 91:3224〜3227)。
【0174】
哺乳動物宿主細胞において、多数のウイルスに基づく発現系が使用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、βセクレターゼコード配列は、後期プロモーターおよび3部分のリーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に連結され得る。ウイルスゲノムの必須でないE1〜E3領域における挿入は、感染された宿主細胞において酵素を発現し得る生存可能なウイルスを生じる(LoganおよびShenk(1984)Proc Natl Acad Sci 81:3655〜3659)。さらに、転写エンハンサー(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー)が、哺乳動物宿主細胞における発現を増加するために使用され得る。
【0175】
特定の開始シグナルがまた、βセクレターゼコード配列の効率的な翻訳のために必要とされ得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。βセクレターゼコード配列が、その開始コドンおよび上流配列が適切なベクターに挿入される場合、さらなる翻訳制御シグナルが必要とされ得ない。しかし、コード配列のみか、またはその部分が挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性の転写制御シグナルが提供されなければならない。さらに、開始コドンは、挿入物全体の転写を確実にするために正確なリーディングフレーム内になければならない。外因性転写エレメントおよび開始コドンは、天然および合成の両方の種々の起源であり得る。発現効率は、使用される細胞系に適切なエンハンサーの包含により増強される(Scharf Dら(1994)Results Probl Cell Differ 20:125〜62;Bittnerら(1987)Methods in Enzymol 153:516〜544)。
【0176】
さらなる実施形態において、本発明は、上記の構築物を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は、高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞)、または下等真核生物細胞(例えば、酵母細胞)であり得るか、または宿主細胞は原核生物細胞(例えば、細菌細胞)であり得る。この構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによってか(Davis,L.,Dibner,M.,およびBattey,I.(1986)Basic Methods in Molecular Biology)、またはより新しい方法(「FUGENE」(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)を用いる脂質トランスフェクションまたは「EFFECTENE」(Quiagen,Valencia,CA)、または他のDNAキャリア分子を含む)によってもたらされ得る。無細胞翻訳系がまた、本発明のDNA構築物に由来するRNAを使用して、ポリペプチドを産生するために使用され得る。
【0177】
宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節するその能力、または所望の様式で発現されたタンパク質をプロセシングするその能力について選択され得る。タンパク質のこのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化が挙げられるが、これらに限定はされない。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングはまた、正確な挿入、フォールディングおよび/または機能のために重要であり得る。例えば、βセクレターゼの場合、配列番号2のN末端は短縮しているようであり、その結果、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸22、46または57〜58で始まる。異なる宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、BHK、MDCK、293、WI38など)は、このような翻訳後活性のための特異的な細胞性機構および特徴的機構を有し、そして正確な修飾および誘導される外来タンパク質のプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0178】
組換えタンパク質の長期の高収量の産生のために、安定な発現が好ましい。例えば、βセクレターゼを安定に発現する細胞株が、ウイルス起源の複製エレメントおよび内因性の発現エレメントならびに選択マーカー遺伝子を含む発現ベクターを使用して形質転換され得る。ベクターの導入に続いて、細胞は、選択培地に切り替える前に1〜2日富化培地において増殖し得る。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与えるためであり、そしてその存在は、導入された配列を首尾よく発現する細胞の増殖および回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性集団は、細胞型に適切な組織培養技術を使用して増殖され得る。例えば、本発明を支持して行われた実験において、酵素の「452停止」形態の過剰発現が達成された。
【0179】
βセクレターゼをコードするヌクレオチド配列で形質転換し宿主細胞は、細胞培養からコードされたタンパク質の発現および回収に適切な条件下で培養され得る。組換え細胞によって産生されたタンパク質またはそのフラグメントは、配列および/または使用されたベクターに依存して分泌され得るか、膜に結合し得るか、または細胞内に含まれる。当業者に理解されるように、βセクレターゼをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核生物または真核生物細胞膜を通じてβセクレターゼポリペプチドの分泌を指向するシグナル配列とともに設計され得る。
【0180】
βセクレターゼはまた、タンパク質の精製を容易にするために付加された1以上のさらなるポリペプチドドメインを有する組換えタンパク質として発現され得る。このような精製を容易にするドメインとしては、金属キレートペプチド(例えば、固定化された金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュール、固定化された免疫グロブリン上で精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸展/アフィニティー精製システム(Immunex Corp、Seattle、Wash.)において使用されるドメイン)が挙げられるが、これらに限定はされない。精製ドメインとβセクレターゼとの間のプロテアーゼが切断可能なポリペプチドリンカー配列の包含は、精製を容易にするために有用である。1つのこのような発現ベクターは、エンテロキナーゼ切断部位によって分離されるポリヒスチジン領域に融合されたβセクレターゼを含む融合タンパク質(例えば、可能性βセクレターゼフラグメント)の発現を提供する。このヒスチジン残基は、IMIAC(Porathら(1992)Protein Expression and Purification 3:263〜281に記載されるような固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー)上での精製を容易にするが、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質からβセクレターゼを単離する手段を提供する。pGEXベクター(Promega、Madison、Wis)はまた、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来性ポリペプチドを発現するために使用され得る。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性であり、そして、リガンド−アガロースビーズへの吸着(GST融合の場合において、例えば、グルタチオン−アガロース)、続いて遊離リガンドの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製され得る。
【0181】
適切な細胞密度への適切な宿主系統の形質転換および宿主系統の増殖に続いて、選択されたプロモーターは、適切な手段によって誘導され(例えば、温度のシフトまたは化学的導入)、そして細胞はさらなる期間、培養される。細胞は典型的に、遠心分離によって収集され、物理的手段または化学的手段によって破壊され、そいて得られた粗抽出物は、さらなる精製のために保持される。タンパク質の発現において使用された微生物細胞が、任意の従来方法(凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解薬剤の使用、あるいは他の方法を含む)によって破壊され得、それらの方法は当業者には周知である。
【0182】
βセクレターゼは、当該分野で周知の任意の多数の方法を使用して組換え細胞培養より回収され得、そして精製され得るか、または好ましくは、本明細書中に記載される精製スキームによって精製され得る。必要な場合、成熟タンパク質の配置を完全にする際にタンパク質の再フォールディング工程が使用され得る。天然に存在するβセクレターゼならびに精製された形態のβセクレターゼを精製するための方法の詳細は、実施例において提供される。
【0183】
(B.β−セクレターゼインヒビターを選択する方法)
本発明はまた、合成薬物、抗体、ペプチド、または他の分子のような、本明細書中に記載されるβ−セクレターゼの活性に対して阻害効果を有する分子(一般に、その酵素のインヒビター、アンタゴニストまたはブロッカーと呼ばれる)を同定するための方法を含む。このようなアッセイは、本明細書に記載するようにβ−セクレターゼ活性を示す、配列番号2、配列番号43を含むβ−セクレターゼ、あるいは本発明を参照してさらに詳細には、配列番号75[63〜423](その保存置換を含む)と少なくとも90%が同一であるアミノ酸配列を含む約450アミノ酸残基長の単離されたタンパク質のような、ヒトβ−セクレターゼを提供する工程を包含する。β−セクレターゼ酵素は、試験化合物と接触されて、この化合物が、以下に議論されるように、この酵素の活性に調節効果を有するか否かが決定され、そして試験化合物からβ−セクレターゼ活性を調節し得るものを選択する。特に、阻害性化合物(アンタゴニスト)は、アミロイド沈着に関連する疾患状態、特にアルツハイマー病の処置において有用である。当業者は、このようなアッセイが好都合にキットに変換され得ることを理解する。
【0184】
特に有用なスクリーニングアッセイは、β−セクレターゼおよびAPPの両方を発現する細胞を使用する。このような細胞は、上記第III節に記載のように、細胞と、このタンパク質をコードするポリヌクレオチドとを同時トランスフェクションすることにより組換え的に作製され得るか、またはこのタンパク質の1つを第二のタンパク質と共に天然に含む細胞をトランスフェクトすることにより、作製され得る。特定の実施形態においては、このような細胞は、マルチウェル培養ディッシュ内で増殖され、そして種々の濃度の試験化合物に、所定の時間(これは、実験的に決定され得る)曝露される。全細胞溶解液、培養された培地または細胞膜が、β−セクレターゼ活性に関してアッセイされる。コントロール(以下に議論するような)と比較して活性を有意に阻害する試験化合物が、治療的候補物とみなされる。
【0185】
単離されたβ−セクレターゼ、そのリガンド結合フラグメント、触媒性フラグメントまたは免疫原性フラグメント、あるいはそのオリゴペプチドは、任意の種々の薬物スクリーニング技術において、治療的化合物をスクリーニングするために、使用され得る。このような試験において使用されるタンパク質は、膜に結合するか、溶液内で遊離するか、固体支持体に固定されるか、細胞表面に運ばれるか、または細胞内に局在し得る。β−セクレターゼと試験される薬剤との間の結合複合体の形成は、測定され得る。β−セクレターゼとその基質(例えば、APPまたはAPPフラグメント)との間の結合を阻害する化合物は、このようなアッセイにおいて検出され得る。好ましくは、酵素活性はモニターされ、そして候補化合物は、このような活性を阻害する能力に基づいて選択される。より具体的には、測定されたβ−セクレターゼ活性が試験化合物の非存在下で測定されたβ−セクレターゼ活性より有意に低い場合には、この試験化合物は、β−セクレターゼのインヒビターであると考えられる。これに関連して、用語「有意に低い」とは、試験化合物の非存在下で測定された酵素活性と比較した場合に、そのアッセイ方法の信用限界内で顕著に低い酵素活性を、その試験化合物の存在下でその酵素が示すことを意味する。このような測定は、Kmおよび/またはVmaxの変化、単一アッセイ終点分析、または当該分野において標準的である他の任意の方法によって、評価され得る。β−セクレターゼをアッセイするための例示的な方法を、本明細書中実施例4に提供する。
【0186】
例えば、本発明を支持して実施される研究において、化合物は、MBP−C125アッセイにおける、β−セクレターゼ活性を阻害するそれらの能力に基づいて、選択された。約50μM未満の濃度で酵素活性を阻害する化合物を、さらなるスクリーニングのために選択した。
【0187】
インヒビター活性について最も可能な候補物である化合物の群は、本発明のさらなる局面を構成する。本発明を指示して実施される研究に基づいて、本明細書中においてP10−P4’staD−>V(配列番号72)と記載されるペプチド化合物は、その酵素の妥当に有力なインヒビターであることが実証された。この配列、およびこの配列の一部のペプチド模倣物に基づくさらなる研究は、多数の低分子インヒビターを明らかにした。
【0188】
ペプチドまたは他の化合物のランダムなライブラリーはまた、β−セクレターゼインヒビターとしての適合に関して、スクリーニングされ得る。コンビナトリアルライブラリーは、工程ごとの様式で合成され得る多くの型の化合物のために、生成され得る。このような化合物としては、ポリペプチド、β−ターン模倣物、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN−置換グリシンおよびオリゴカルバメートが挙げられる。化合物の大きなコンビナトリアルライブラリーは、Affymax、WO95/12608、Affymax、WO93/06121、Columbia University、WO94/08051、Pharmacopeia、WO 95/35503およびScripps、WO 95/30642(これらの各々は、全ての目的のために、本明細書中に参考として援用される)に記載のコード化合成ライブラリー(encoded synthetic lybrariees)(ESL)方法により、構築され得る。
【0189】
治療剤または治療剤リードに関するスクリーニングにおいて使用するための試験化合物の、好ましい供給源は、ファージディスプレイライブラリーである。例えば、Devlin、WO91/18980;Key,B.K.ら編、Phage Display of Peptides and Proteins、A Laboratory Manual、Academic Press、San Diego、CA、1996を参照のこと。ファージディスプレイは、ファージ遺伝学を使用して、所望の特徴を有するペプチドまたはタンパク質を、108〜109の異なる配列を含むライブラリーから選択し、そして増幅することが可能となる、強力な技術である。ライブラリーは、所望の位置におけるアミノ酸配列の選択された改変体について設計され得、このライブラリーを所望の特徴の方へとバイアスさせる。ライブラリーは、ペプチドが、バクテリオファージの表面にディスプレイされるタンパク質に融合されて発現されるように、設計される。所望の特徴のペプチドをディスプレイするファージが選択され、そして発現のために再増殖され得る。ポリペプチドは増殖により増幅されるので、選択されたファージ由来のDNAは、容易に配列決定され得、選択されたペプチドの迅速な分析を容易にする。
【0190】
ペプチドインヒビターをコードするファージは、β−セクレターゼタンパク質に特異的に結合するファージを選択することによって、選択され得る。ライブラリーは、生成されて、このファージの表面で発現される遺伝子IIのようなタンパク質に融合する。これらのライブラリーは、ファージタンパク質に融合するかあるいはまた骨格としてさらなるタンパク質に融合し得る、種々の長さの、線状であるかまたは2つのCysアミノ酸を含むことにより収縮したペプチドから構成され得る。ランダムなアミノ酸から構成されるライブラリー、またはβ−セクレターゼ切断部位もしくは好ましくは配列番号72に例示されるD→V置換部位を囲むβAPP基質の配列にバイアスされるライブラリーから、開始し得る。また、本明細書中に記載のペプチドインヒビターおよび基質に向けてバイアスされるか、またはさらなる試験インヒビター化合物を提供する最初のライブラリー由来の結合ファージの選択から得られるペプチド配列に向けてバイアスされる、ライブラリーを設計し得る。
【0191】
β−セクレターゼは固定され、そしてファージは、選択されたβ−セクレターゼに特異的に結合する。β−セクレターゼの公知の活性部位インヒビター(例えば、本明細書中に記載されるインヒビター)の存在下では結合しないファージの要件のような制限は、ファージ選択活性部位特異的化合物をさらに指向するよう働く。このことは、差別的選択フォーマットにより、複雑にされ得る。脳または好ましくは組換え細胞に由来する、非常に精製されたβ−セクレターゼは、96ウェルプラスチックディッシュに、標準的な技術(参照ファージブック)を使用して、固定され得る。プラスチックペトリ皿に固定された別のタンパク質(例えば、ストレプトアビジンまたは適切な抗体)に結合し得るペプチド(例えば、ストレプトアビジン(strepaviden)結合モチーフ、His、FLAGまたはmycタグ)に融合するよう設計された組換えβ−セクレターゼもまた、使用され得る。ファージは、結合したβ−セクレターゼと共にインキュベートされ、そして結合していないファージが洗浄により除去される。ファージを溶離し、そしてこの選択を、β−セクレターゼに結合するファージの集団が回収されるまで繰り返す。結合および溶離は、標準的な技術を使用して実施される。
【0192】
あるいは、β−セクレターゼは、ペトリ皿上で増殖するCosまたは他の哺乳動物細胞においてβ−セクレターゼを発現させることによって、「結合」され得る。この場合には、β−セクレターゼ発現細胞に結合するファージが選択され、そしてβ−セクレターゼを発現しないコントロール細胞に結合するファージは除外される。
【0193】
また、ファージディスプレイ技術を使用して、β−セクレターゼの好ましい基質を選択し得、そしてファージディスプレイにより得られる好ましい基質ペプチドの同定された特徴を、インヒビターに組み込み得る。
【0194】
β−セクレターゼの場合には、APPの切断部位の周囲のアミノ酸配列およびAPPswの切断部位のアミノ酸配列に関する知識は、β−セクレターゼの好ましい基質を同定するために、ファージディスプレイスクリーニングライブラリーを設定する目的で、情報を提供した。上述のように、特に良好なペプチドインヒビターであるP10−P4staD−>Vの配列に関する知識は、本明細書中に記載されるように、この配列に向けて「バイアスされた」ライブラリーを設定するための情報を提供する。
【0195】
例えば、108の異なる配列を含むペプチド基質ライブラリーは、ファージの表面で発現されるタンパク質(例えば、遺伝子IIIタンパク質)、ならびにストレプトアビジン、または他のタンパク質(例えば、HisタグおよびHisに対する抗体)に結合するために使用され得る配列に融合される。このファージはプロテアーゼで消化され、そして消化されないファージは、適切な固定結合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン)に結合させることによって、除去される。この選択は、基質ペプチド配列をコードするファージの集団が回収されるまで繰り返される。このファージのDNAが配列決定され、基質の配列を得る。次いで、これらの基質を、ペプチド模倣物、特に、阻害特性を有するペプチド模倣物のさらなる開発のために使用する。
【0196】
コンビナトリアルライブラリーおよび他の化合物は、最初に、それがβ−セクレターゼに結合する能力、または好ましくは、β−セクレターゼ活性を阻害する能力を、本明細書中に記載であるかさもなければ当該分野において公知である任意のアッセイにおいて決定することによって、適性に関してスクリーニングされる。このようなスクリーニングにより同定される化合物は、次いで、このようなアッセイにおける効力に関してさらに分析される。次いで、インヒビター化合物は、予防的効力および治療的効力に関して、アミロイド原(amyloidogenic)疾患に罹患しやすくしたトランスジェニック動物(例えば、ヒトAPP含有導入遺伝子を保有する種々のげっ歯類(例えば、Gamesら、Nature 373:523〜527、1995およびWadsworthら(米国特許第5,811,633号、米国特許第5,604,131号、米国特許第5,720,936号)により記載される、APPの717の変異を保有するマウス、ならびにMcConlogueら(米国特許第5,612,486号)およびHsiaoら(米国特許第5,877,399号);Staufenbielら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,13287〜13292(1997);Sturchler−Pierratら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,13287〜13292(1997);Borcheltら、Neuron 19,939〜945(1997)により記載されるような、APPのSwedish変異を保有するマウス(これらの全てを、本明細書中に参考として援用する)))において試験され得る。
【0197】
このような動物モデルにおいて有効かつ安全であることが見出された化合物または薬剤は、標準的な毒物学的アッセイにおいてさらに試験される。適切な毒物学的プロフィールおよび薬物動態学的プロフィールを示す化合物は、アルツハイマー病および関連する疾患の処置のために、ヒトの臨床試験に移される。同じスクリーニングアプローチが、上記のペプチド模倣物のような他の可能な薬剤において、使用され得る。
【0198】
一般に、上記アッセイに基づく、治療的化合物の選択において、試験化合物が受容可能な毒性プロフィールを、例えば、種々のインビトロの細胞および動物モデルにおいて有するか否かを決定することは、有用である。また、試験されそして同定された化合物を、既存の化合物データベースに対して検索し、その化合物またはそのアナログが薬学的目的のために以前に使用されていたか否かを決定すること、ならびにそうであるならば、最適な投与経路および用量範囲を決定することが、有用であり得る。あるいは、投与経路および投薬量範囲は、標準的な動物モデル(例えば、トランスジェニックPDAPP動物モデル(例えば、Games,D.ら、Nature 373:523〜527,1995;Johnson−Wood,K.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1550〜1555、1997))に適用される、当該分野において周知の方法(例えば、Benet,L.Z.ら、Pharmacokinetics in Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、Ninth Edition、Hardman,J.G.ら編、McGrawHill、New York、1966を参照のこと)を使用して、実験的に決定され得る。化合物の活性および/または特異性を最適化するために、より大きな特異性および/または活性を有するアナログを検索するための非常に近いアナログのライブラリーを構築することが、望ましくあり得る。非常に近い化合物のライブラリーおよび/または標的化された化合物のライブラリーを合成するための方法は、コンビナトリアルライブラリーの分野において周知である。
【0199】
(C.インヒビターおよび治療剤)
上記B部は、β−セクレターゼ阻害活性を有する化合物に関するスクリーニングの方法を記載する。要約すると、β−セクレターゼ酵素の強力かつ選択的なインヒビターに関するスクリーニングの特定の方法のためのガイダンスが提供される。重要なことには、開業医は、薬物設計が基づき得る、P10−P4’staD−>Vのような、特定のペプチド基質/インヒビター配列、ならびにさらなるリード化合物を提供する、バイアスされたファージディスプレイライブラリーのような、さらなる供給源に注意を向けられる。
【0200】
開業医はまた、酵素の結合部位のさらなる精製(例えば、本明細書中で提供される方法により精製された酵素を結晶化させることによる)のための、十分なガイダンスを与えられる。HIVプロテアーゼインヒビターの開発の領域において享受された成功が、この領域において存在せず、このような努力が、本明細書中に記載の試験化合物のさらなる最適化をもたらすことが考慮される。最適化された化合物を有する場合には、化合物の薬物団(pharmacophore)を規定すること、および既存の薬物団データベース(例えば、Triposにより提供される)をさらに検索して、最初に発見した化合物と異なる2−D構造式であるが共通の薬物団構造および活性を共有する、他の化合物を同定することが、可能である。試験化合物は、本明細書中に記載のインヒビターアッセイのいずれかにおいて、種々の開発段階においてアッセイされる。従って、本発明は、本明細書中に記載の方法のいずれか(特に、インヒビターアッセイおよび結晶化/最適化プロトコル)によって発見される、β−セクレターゼ阻害薬剤を含む。このような阻害薬剤は、アルツハイマー病、およびAβペプチド沈着により特徴付けられる他のアミロイドーシスの処置のための、治療的候補物である。上記B部で議論した、治療指標(毒物学)、バイオアベイラビリティおよび投薬量に関する考慮はまた、これらの治療的候補物に関して考慮する際に重要である。
【0201】
(D.方法および診断)
本発明はまた、増加したβ−セクレターゼ活性を提供する変異体を有する個体を診断する方法を提供する。例えば、根本にある遺伝障害が依然として認識されるべきである、家族性アルツハイマー病の形態が存在する。この遺伝子的疾病素質を有する家族の構成員は、β−セクレターゼおよび/またはそのプロモーター領域をコードするヌクレオチド配列における変化を、モニターされ得る。なぜなら、本明細書中の教示の観点から、この酵素を過剰発現するか、またはこの酵素の触媒的により効率的な形態を有する個体は、比較的より多くのAβペプチドを産生する傾向があることが明らかであるからである。この仮定の支持は、本明細書中に報告される、β−セクレターゼ酵素の量が細胞内でのAβの産生の速度を制限することを観察することにより、提供される。
【0202】
より具体的には、疾患を発達させる好みを有することが疑われる人物、またはすでに疾患を有する人物、ならびに一般的集団の構成員は、彼らの細胞のサンプル(これは、例えば、血球または線維芽細胞であり得る)を得ること、およびこのサンプルを、β−セクレターゼ遺伝子における遺伝子変異の存在に関して、例えば本明細書中に記載の配列番号1との比較において、試験することによって、スクリーニングされ得る。代替的にまたはさらに、このような個体由来の細胞は、β−セクレターゼ活性に関して試験され得る。この実施形態に従って、特定の酵素調製物が、本明細書中に記載のMBP−C125のようなβ−セクレターゼ基質に対する増加した親和性および/またはVmaxに関して、一般的な集団において測定される値の正常な範囲との比較がなされて、試験され得る。β−セクレターゼ活性が正常値と比較して増加した個体は、アルツハイマー病、またはAβペプチドの沈着を含む他のアミロイド原疾患を発症していることが疑われる。
【0203】
(E.治療的動物モデル)
本発明のさらなる有用性は、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイにおいても有用である、特定のトランスジェニック動物および/またはノックアウト動物を作り出すことにある。具体的な使用においては、例えばマウス酵素のさらなるコピーを追加すること、またはヒト酵素を追加することによって、βセクレターゼ酵素を過剰発現する、トランスジェニック動物である。このような動物は、当該分野において周知の方法(例えば、Cordell、米国特許第5,387,742号;Wadsworthら、米国特許第5,811,633号、米国特許第5,604,131号、米国特許第5,720,936号;McConlogueら、米国特許第5,612,486号;Hsiaoら、米国特許第5,877,399号;および「Manipulating the Mouse Embryo,A Laboratory Manual」、B.Hogan、F.CostantiniおよびE.Lacy、Cold Spring Harbor Press、1986))に従って、βセクレターゼに関して本明細書中に記載される構築物の1つ以上を、上記参考文献(これらの全てを、本明細書中に参考として援用する)に記載されるAPP構築物の代わりに用いて、作製され得る。
【0204】
βセクレターゼを過剰発現するトランスジェニックマウスは、内因性βセクレターゼを発現するマウスより高いレベルのAβおよびsβAPPを、APP基質から作製する。このことは、APPプロセッシングの分析およびこのプロセッシングの候補治療薬剤による阻害を容易にする。βセクレターゼに関してトランスジェニックなマウスにおける、Aβペプチドの増加された産生は、APPトランスジェニックマウスにおいて見られるAD様病理の加速を可能にする。この結果は、βセクレターゼを発現するマウスをAD様病理を提示するマウス(例えば、PDAPPまたはHsiaoマウス)に交配することによるか、またはβセクレターゼおよびAPP導入遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを作り出すことにより、達成され得る。
【0205】
このようなトランスジェニック動物を使用して、βセクレターゼインヒビターに関してスクリーニングし、このトランスジェニック動物は、このようなインヒビターが脳に入る能力およびインビボでの阻害効果の能力を試験する利点を有する。
【0206】
本発明により考慮される別の動物モデルは、いわゆる「ノックアウトマウス」であり、ここで、内因性酵素は、永久的である(米国特許第5,464,764号、同第5,627,059号、および同第5,631,153号(これらはその全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように)かまたは誘導的に欠失される(米国特許第4,959,317号(これはその全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように)か、あるいは以下にさらに詳細に記載するように、不活性化されるかのいずれかである。このようなマウスは、βセクレターゼ活性のコントロールとして働き、そして/またはAPP変異マウスと交配されて、病理続発症の確証を提供し得る。このようなマウスはまた、他の薬物標的(例えば、Aβ沈着事象に特に指向される薬物)に関してスクリーニングを提供し得る。
【0207】
βセクレターゼノックアウトマウスは、インビボでのβセクレターゼインヒビターの可能な効果のモデルを提供する。インビボでのβセクレターゼ試験インヒビターの効果と、βセクレターゼノックアウトの表現型との比較は、薬物開発の指標の助けとなり得る。例えば、表現型は、βセクレターゼインヒビターの薬物試験の間に見られる表現型を含んでもよいし、含まなくてもよい。ノックアウトがドラッグ処置したマウスにおいて見られる表現型を示さない場合には、このドラッグは、βセクレターゼ標的に加えて別の標的と特異的には相互作用しないと判断し得る。ノックアウト由来の組織を使用して、薬物結合アッセイを設定または発現クローニングを実施し、これらの毒性効果を担う標的を見出し得る。このような情報を使用して、これらの所望でない標的と相互作用しないさらなる薬物を設計し得る。このノックアウトマウスは、βセクレターゼ阻害に固有の潜在的な毒性の分析を容易にする。潜在的な毒性の知識は、このような毒性を減少させるために、設計薬物の設計または薬物送達系の指標を補助する。誘導的ノックアウトマウスは、成体動物における毒性を、標準的なノックアウトにおいて見られる胚の効果と区別する際に、特に有用である。このノックアウトが胎児に致死の効果を与える場合には、誘導ノックアウトは有利である。
【0208】
ノックアウトマウスを開発するための方法および技術は、多数の商業的企業がそのようなマウスを契約に基づいて作製する点にまで成熟した(例えば、Lexicon Genetics、Woodland TX;Cell & Molecular Technologies、Lavallette、NJ;Crysalis、DNX Transgenic Sciences、Princeton、NJ)。方法論もまた、当該分野において利用可能である(Galli Taliadoros、L.A.ら、J.Immunol.Meth.181:1−15、1995を参照のこと)。簡単にいえば、目的の酵素のゲノムクローンが必要である。本発明のように、タンパク質の領域をコードするエキソンが規定された場合には、転写を制御する調節配列のさらなる知識なしに、その遺伝子の不活性化を達成することが可能である。特に、マウス株129ゲノムライブラリーを、ハイブリダイゼーションまたはPCRによって、本明細書中に提供される配列情報を使用して、当該分野において周知の方法に従って、スクリーニングし得る(Ausubel;Sambrook)。次いで、このように選択されたゲノムクローンを、制限酵素マッピングおよび部分的なエキソン配列決定に供し、マウスホモログを確認し、そしてノックアウトベクター構築物に関する情報を得る。次いで、適切な領域を、選択マーカーを有する「ノックアウト」ベクター(例えば、neorカセットを有するベクター)へとサブクローニングし、これは、細胞を、ゲンタマイシンのようなアミノ配糖体抗生物質に対して抵抗性にする。この構築物は、目的の遺伝子の、例えば配列置換ベクターの挿入による破壊のためにさらに操作され、ここで、選択マーカーが遺伝子のエキソンに挿入され、ここでそれは変異原として働き、遺伝子に対応する転写物を破壊する。次いで、ベクターは、胚幹(ES)細胞内へのトランスフェクトのために操作され、そして適切なコロニーが単離される。ポジティブなES細胞クローンは、単離された宿主胚盤胞にマイクロインジェクションされ、キメラ動物を作製し、これが次いで、飼育され、そして突然変異遺伝子の生殖細胞系伝達に関してスクリーニングされる。
【0209】
さらに好ましい実施形態に従えば、βセクレターゼノックアウトマウスは、変異が誘導的であるように生成され得る(例えば、ノックアウトマウスにβセクレターゼ遺伝子領域に隣接するlox領域を挿入することにより)。次いで、このようなマウスは、誘導的なプロモーター下の「Cre」遺伝子を保有するマウスと、交配され、「Cre」およびlox構築物の両方を有する少なくともいくらかの子を生じる。「Cre」の発現が誘導される場合には、これは、lox構築物により隣接される遺伝子を破壊するよう働く。このような「Cre−lox」マウスは、ノックアウト変異が致死であり得ることが疑われる場合に、特に有用である。さらにこれは、選択された組織(例えば、脳)において、遺伝子をノックアウトする機会を提供する。Cre−lox構築物を生成するための方法は、米国特許第4,959,317号(本明細書中に本明細書中に参考として援用される)により提供され、そしてとりわけ、Lexicon Genetics、Woodlands、TXによる構築的基礎に基づいて作製される。
【0210】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明を限定することをいかなる様式においても意図されない。
【0211】
(実施例1)
(ヒトβ−セクレターゼのコード配列の単離)
A.PCRクローニング
IMRヒト神経芽細胞腫由来のポリA+RNAを、Perkin−Elmerキットを使用して逆転写した。精製されたタンパク質から得られたアミノ酸配列のNおよびC末端部分をコードする8個の縮重プライマープール(それぞれ8倍縮重)を設計した(表4に示される;オリゴ3407〜3422)。PCR反応は、10ngのRNA由来のcDNA、1.5mM MgCl2、0.125μl AmpliTaq(登録商標)Gold、160μM 各dNTP(逆転写反応から加えて20μMプラス)、Perkin−Elmer TAQ緩衝液(AmpliTaq(登録商標)Gold kit、Perkin−Elmer、Foster City、CAから)から、25μl反応体積で構成された。オリゴヌクレオチドプライマー3407から3414のそれぞれを、合計64の反応についてオリゴ3415〜3422のそれぞれと組み合わせて使用した。反応を、以下の条件下でPerkin−Elmer 7700配列検出器で実行した:95℃で10分、4サイクルの45℃アニーリング15秒間、72℃エクステンション45秒間および95℃変性15秒間、続いてアニーリング温度が55℃に上げられた以外同じ条件下での35サイクル。(先の条件を本明細書中において「Reaction 1条件」と呼ぶ)。PCR産物を、4%アガロースゲルで視覚化し(ノーザンブロット)、そして予期されたサイズ(68bp)の顕著なバンドを、特にプライマー3515〜3518を用いてこの反応を観察した。68kbバンドを配列決定し、そして内部領域が予期されたアミノ酸配列をコードした。これは、このフラグメントの内部領域の22bpについての正確なDNAを与えた。
【0212】
このPCR産物を生成する際の別々の配列の種々のプライマープールの効率からさらなる配列を推論した。プライマープール3419〜3422は、非常に乏しいか全く生成物を与えなかったが、プール3415〜3418は、頑丈な(robust)シグナルを与えた。これらのプールの間の差は、プールの3’末端においてCTC(3415〜3418)対TTC(3419〜3422)である。CTCがより効率的にプライムされるので、本発明者らは、逆補体GAGが正しいコドンであると結論付け得る。Metコードが独特であるので、以下のコドンがATGであることが結論付けられた。従って、得られた正確なDNA配列は以下である:
【0213】
【化8】
この配列を使用して、cDNAまたはライブラリーのいずれかの3および5’RACE PCRについての正確なオリゴヌクレオチドを設計し得るか、あるいはライブラリーをスクリーニングするために使用される特異的ハイブリダイゼーションプローブを設計し得る。
【0214】
縮重PCR産物が非常に頑丈(robust)であることが分かったので、この反応はまた、この配列を含むクローンの存在についての診断として使用され得る。ライブラリーのプールを、このPCR産物を使用してこのプールのクローンの存在を示すためにスクリーニングし得る。このプールは、個々のクローンを同定するために取り出され得る。既知の複雑性および/またはサイズのプールのスクリーニングは、ライブラリーまたは供給源のこのクローンの豊富さについての情報を提供し得、そして全長クローンまたはメッセージのサイズを概算し得る。
【0215】
プローブの作製のために、オリゴヌクレオチド3458および3469または3458(配列番号19)および3468(配列番号20)(表4)を使用するPCR反応を、23RACE産物、クローン9C7E.35(30ng、クローン9C7E.35をオリジーン(origene)ライブラリーから単離した、実施例2を参照のこと)、または脳から生成されたcDNAを使用して、標準的なPCR条件(Perkin−Elmer、rtPCRおよびAmpliTaq(登録商標)Goldキット)を用いて、以下に従って実施し得る:25μl 反応体積 1.5mM MgCl2、0.125μlのAmpliTaq(登録商標)Gold(Perkin−Elmer)、AmpliTaq(登録商標)Goldを活性化するための初期の95℃10分間、36サイクルの65℃15秒 72℃45秒 95℃15秒間、続いて72℃で3分。生成物をQuiagen PCR精製キットで精製し、そして放射標識プローブを生成するためにランダムプライミングのための基質として使用した(Sambrookら、前出;Amersham RediPrime(登録商標)キット)。このプローブを使用して、図12および13(A−E)に示される全長クローン(close)pCEKクローン27を単離した。
【0216】
(全長クローンpCEKクローン27の誘導)
哺乳動物発現ベクターpCEK2ベクターのヒト1次ニューロン細胞ライブラリーを、サイズを選択したcDNA、および異なるサイズ挿入物から生成されるクローンのプールを使用して生成した。βセクレターゼスクリーニングのためのcDNAライブラリーを、1次ヒトニューロン細胞から単離されたポリ(A)+RNAを用いて作製した。クローニングベクターは、pCEK2(図12)であった。
【0217】
(pCEK2)
二本鎖cDNA挿入物を、いくつかの変更をともなうStratageneからのcDNA Synthesis Kitを使用して合成した。次いで、挿入物をそれらのサイズに従って分別した。合計5個の画分を、ダブルカット(NotIおよびXhoI)pCEKを用いて個々に連結し、そして続いて非常に大きなプラスミドを受け入れるために設計されるE.Coli菌株XL−10Goldに形質転換する。
【0218】
形質転換されたE.coliの画分をアンピシリンを含むTerrific Broth寒天プレートにプレートし、18時間増殖させた。各画分は、約200,000のコロニーを生成し、合計100万個のコロニーを与えた。次いで、コロニーをプレートからこすりとり、プラスミドを約70,000コロニー/プールのプールにおいてそれらから単離した。ライブラリーの各プールからの70,000のクローンを、診断的PCR反応(上に示される縮重プライマー3411および3417)を使用して、推定のβセクレターゼ遺伝子の存在についてスクリーニングした。
【0219】
1.5kbプールからのクローンを、クローン9C7E.35から生成された390b.p.PCR産物から生成された放射標識プローブを使用してスクリーニングした。プローブの生成のために、PCR産物を、プライマーとして3458および3468、ならびに基質としてクローン9C7E.35(30ng)を使用して生成した。
【0220】
PCR産物を、放射標識プローブを生成するためにランダムプライミングのための基質として使用した。1.5kbプールからの180,000のクローン(このプールにおいて70,000のオリジナルクローン)を、PCRプローブを用いてハイブリダイゼーションによってスクリーニングし、そして9個の陽性クローンを同定した。これらのクローンのうちの4個を単離し、制限マッピングにより、これらが4〜5kb(クローン27)および6〜7kb(クローン53)長の2個の独立したクローンをコードするようである。クローン27の配列決定によって、これが1.5kbのコード領域を含むことが確かめられた。図13(A−E)は、pCEKクローン27(クローン27)の配列を示す。
【0221】
【表4】
(実施例2)
(ヒト胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニング)
Origeneヒト胎児脳Rapid−ScreenTMcDNA Library Panelは、ヒト胎児脳ライブラリーから、ウェル当たり5000個のクローン(プラスミドDNA)からなる96ウェルフォーマットアレイとして提供される。サブプレートは、E.coliでそれぞれ50クローンの96ウェルからなる各ウェルについて入手可能である。これは、オリゴーdTプライムドライブラリーであり、サイズ選択され、そしてベクターpCMV−XL3に一方向的に挿入される。
【0222】
マスタープレートからの94ウェルをPCRを使用してスクリーニングした。上の実施例1に記載される反応1条件は、各ウェルからプラスミドDNAの30ngと共に、プライマー3407および3416のみを使用して続けられた。2つのプールが陽性70bpバンドを示した。同じプライマーおよび条件を使用してサブプレートの1つの各ウェルから1μlのE.coliをスクリーニングした。次いで、単一の陽性ウェルからのE.coliをLB/ampプレートにプレートし、そして単一のコロニーを同じPCR条件を使用してスクリーニングした。陽性クローン(約1Kbのサイズ)は、標識された9C7E.35であった。これは、元のペプチド配列ならびにメチオニンを含む5’配列を含んだ。3’配列は、終止コドンを含まなかった。これは、これが全長クローンではなかったことを示唆し、ノーザンブロットデータと一致する。
【0223】
(実施例3)
(PCRクローニング方法)
ヒトβセクレターゼをコードするポリヌクレオチドを明かにするために、本発明を支持して実施される実験において3’RACEを使用した。本明細書に記載される実験を繰り返すために適切な方法および条件ならびに/あるいは本明細書中に記載されるアスパルチルプロテアーゼの新規のファミリーのさらなるメンバーをコードするポリヌクレオチド配列を決定するための方法および条件は、例えば、White,B.A.編、PCR Cloning Protocols;Human Press、Totowa、NJ、1997または前出のAusubelに見出され得、これらは共に本明細書中において参考として援用される。
【0224】
(RT−PCR)
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)について、2つの部分的縮重プライマーセットを、このペプチドをコードするcDNAフラグメントのRT−PCR増幅のために使用した。プライマーセット1は、DNAの3427番〜3434番からなり、その配列は、以下の表5に示される。このセットからのプライマーとテンプレートとして1次ヒトニューロン培養物から逆転写されたcDNAとの組み合わせを使用するMatrix RT−PCRは、プライマー3428番および3433番を有する予期された54bpのcDNA産物を生じた。全てのRT−PCR反応は、反応ごとに10〜50ngインプットポリ−A+RNA等価物を使用し、95℃変性1分間、50℃アニーリング30秒間、および72℃伸長(extension)30秒間のステップサイクル条件を使用する35サイクルについて実施した。
【0225】
プライマー3428番および3433番の縮重をさらに破壊し、DNA3448番〜3455番(表5)を含むプライマーセット2を生じた。Matrix RT−PCRをプライマーセット2、およびIMR−32ヒト神経芽細胞腫細胞からのポリ−A+RNAから逆転写されたcDNA (American Type Culture Collection、Manassas、VA)ならびに増幅のためのテンプレートとしての一次ヒトニューロン培養を使用して繰り返した。セット2からのプライマー3450番および3454番は、予期サイズ(72bp)のcDNAフラグメントを最も効率的に増幅したが、プライマー3450および3453、ならびに3450および3455もまた、低い効率ではあるが同じ産物を増幅した。72bpPCR産物をIMR−32細胞からのcDNAおよびプライマー3450および3454を有する一次ヒトニューロン培養物の増幅によって得た。
【0226】
(5’および3’RACE−PCR)
5’Ends(RACE)PCRの3’Rapid Amplificationについての上部(コード)鎖、および5’RACE PCRについての低部(非コード)鎖をマッチングする内部プライマーを設計し、そして当該分野で公知な方法(例えば、Frohman,M.A.、M.K.DushおよびG.R.Martin(1988)「Rapid production of full−length cDNAs from rare transcripts:amplification using a single gene specific oligo−nucleotide primer」Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85(23):8998−9002))に従って作製した。この実験に使用されたDNAプライマー(3459番および3460番)を表4に示した。これらのプライマーは、市販のテンプレート(例えば、Marathon Ready cDNA(登録商標)、Clontech Labs)、またはFrohmanら(同書)によって記載される、目的のRNAから調製されるカスタムテイラード(custom tailored)cDNAテンプレートを使用する標準的なRACE−PCR方法で使用され得る。
【0227】
本発明の支持において実施される実験において、レトロウイルス発現ベクターpLPCXlox、pLNCXの誘導体においてクローン化されるIMR−32 cDNAライブラリーを開発するために、RACEのバリエーションを使用した。ベクター連結は、このライブラリーのcDNA挿入物に隣接する独特のアンカー配列を提供するので、これらは、RACE方法論における5’および3’アンカープライマーの目的に役立つ。本発明者らがライブラリー、プライマー3475番および3476番からβセクレターゼcDNAクローンを増幅するために使用した特定の5’および3’アンカープライマーの配列は、Clonteck Labs,Incによって提供されるベクターのDNA配列から誘導され、表3に示される。
【0228】
プライマー3459番および3476番を、ベクターpLPCXloxにおいて本発明者らのIMR−32 cDNAライブラリーからの下流配列の3’RACE増幅のために使用した。このライブラリーを、先にプール当たり5,000クローンの100のプールに細分割し、プラスミドDNAを各プールから単離した。上の実施例1に記載される方法に従って、βセクレターゼクローンの存在について診断薬として同定されたプライマーを有する100のプールの調査は、RACE−PCRについてのライブラリーからの個々のプールを提供した。プール23からの100ngテンプレートプラスミドを、プライマー3459および3476を用いたPCR増幅のために使用した。増幅を以下の条件下でampli−Taq Gold(登録商標)を使用して40サイクル実施した:95℃1分間の変性、65℃45秒間のアニーリング、および72℃2分間の伸長。反応生成物を当該分野で公知の方法(Ausubel;Sambrook)に従って、アガロースゲルクロマトグラフィーによって分画した。
【0229】
約1.8Kb PCRフラグメントを、反応産物のアガロースゲル分画によって明かにした。PCR産物をゲルから精製し、プライマー3459番を使用するDNA配列分析に供した。得られた配列(23Aと示される)およびDNA配列から推定された予期されるアミノ酸配列を図5に示す。23Aのリーディングフレームの1つからの第1の7個の推定のアミノ酸の6個は、精製されたタンパク質から決定されたN末端配列の最後の7個のアミノ酸と正確にマッチし、天然の供給源から、本発明の支持において実施されたさらなる実験において精製され、そして配列決定された。
【0230】
【表5】
(実施例4)
(βセクレターゼインヒビターアッセイ)
βセクレターゼ活性を測定するためのアッセイは、当該分野で周知である。以下に要約される特に有用なアッセイは、許可された米国特許第5,744,346号に詳細に記載され、これは本明細書中において参考として援用される。
【0231】
A.MBP−C125swの調製
1.細胞の調製
フラスコ当たり50mlのLBamp100を含む2個の250ml細胞培養フラスコに、E.coli pMAL−C125SW cl.2(MBP−C125sw融合タンパクを発現するE.coli)の、フラスコ当たり1個のコロニーで播種した。細胞を37℃で一晩増殖させた。アリコート(25ml)を2リットルのフラスコにLBamp100のフラスコ当たり500mlで播種し、次いで、30℃で増殖させた。光学密度をLBブロスに対して600nm(OD600)で測定された;1.5ml 100mM IPTGを、ODが約0.5であった場合に加えた。この時点で、予備インキュベーションアリコートをSDS−PAGE(「−I」)のために除いた。このアリコートのうち、0.5mlを1分間、Beckman微量遠心管で遠心分離し、そして得られたペレットを0.5ml 1×LSB中に溶解した。細胞を5〜6時間30℃でインキュベート/誘導し、その後、インキュベーション後アリコート(「+I」)を除いた。次いで、細胞をKA9.1ローターで10分間4℃で9,000rpmで遠心分離した。ペレットを保持し、−20℃で保存した。
【0232】
2.細菌細胞ペレットの抽出
凍結細胞ペレットを50ml 0.2M NaCl、50mM Tris、pH7.5中に再懸濁し、次いで、バースト間の1分間の休止をともなう、5×20秒の間のバーストでロゼットベッセル(vessal)で超音波処理した。抽出物を、16,500rpmでKA18.5ローター中で30分(39,000×g)で遠心分離した。乳棒としてピペットを使用して、超音波処理されたペレットを、50ml尿素抽出緩衝液(7.6M尿素、50mM Tris pH7.5、1mM EDTA、0.5%TX−100)中で懸濁した。合計体積は、フラスコ当たり約25mlであった。次いで懸濁液を、バースト間で1分の休止とともに、6×20秒超音波処理した。次いで、この懸濁液を16,500rpmで30分、KA18.5ローターで再び遠心分離した。得られた上清を、1%TritonX−100(0.2M NaCl−Tris−1%Tx)を有する、0.2M NaCl 50mM Tris緩衝液、pH7.5からなる1.5Lの緩衝液に加え、4℃で1時間穏やかに攪拌し、続いて9,000rpmで、KA9.1中で、30分間4℃で遠心分離した。上清を洗浄したアミロースのカラム(50%スラリーの100ml;New England BioLabs)に充填した。カラムをベースライン(+10カラム体積)に対して0.2M NaCl−Tris−1%TXで洗浄し、次いで2カラム体積0.2M NaCl−Tris−1%還元Triton X−100で洗浄した。次いで、このタンパク質を同じ緩衝液中の10mMマルトースで溶出した。同じ体積の6MグアニジンHCl/0.5% TX−100をそれぞれの画分に加えた。ピーク画分をプールし、約2mg/mlの最終濃度に希釈した。この画分を、希釈(20倍、0.15%Triton X−100中0.1mg/mlまで)の前に−40℃で保存した。希釈したアリコートをまた−40℃で保存した。
【0233】
(B.抗体に基づくアッセイ)
この節に記載されるアッセイは、特定の抗体(本明細書中で以後「切断部位抗体」)が、β−セクレターゼによるAPPの切断を識別する能力に基づき、この能力は、独特の切断部位、およびその結果としての、この切断により形成される特定のC末端の曝露に基づく。認識される配列は、β−APPのβ−セクレターゼ切断により生成されるβアミロイドペプチド(βAP)のすぐアミノ末端にある、通常は約3〜5残基の配列であり、例えば、APPの野生型形態中のVal−Lys−Medまたはスウェーデン二重変異改変体形態中のVal−Asn−Leuである。組換え発現されたタンパク質(下記)を、β−セクレターゼの基質として使用した。
【0234】
(MBP−C125アッセイ)MBP−125基質を、マルトース結合タンパク質(MBP)のカルボキシ末端に融合した、APPの最後の125個のアミノ酸の融合タンパク質として、New England Biolabsからの市販のベクターを使用して、E.coliにおいて発現させた。そのβ切断部位は、従って、C−125領域の開始点の26アミノ酸下流であった。この後者の部位は、モノクローナル抗体SW192により認識される。
【0235】
組換えタンパク質を、切断部位(・・Val−Lys−Met−Asp−Ala・・)の野生型APP配列(MBP−C125wt)を用いてか、または「スウェーデン」二重変異(MBP−C125sw)(・・Val−Asn−Leu−Asp−Ala・・)を用いての、両方を作製した。図19Aに模式的に示されるように、インタクトなMBP融合タンパク質の切断によって、短縮型アミノ末端フラグメントが生成される。このフラグメントは、カルボキシ末端の新規なSW−192 Ab陽性エピトープがカバーされていない。このアミノ末端フラグメントは、同じAbを用いるウェスタンブロットにてか、または図19Aに示されるように、抗MBP捕捉ビオチン化SW−192レポーターサンドイッチ形式を使用して定量的に、認識し得る。精製した組換え発現MBP(New England Biolabs)でウサギ(Josman Labs、Berkeley)を免疫することによって、抗MBPポリクローナル抗体を惹起した。抗血清を、固定化MBPのカラムでアフィニティー精製した。MBP−C125 SW基質およびWT基質をE.coliにて発現させ、次いで上記のように精製した。
【0236】
マイクロタイター96ウェルプレートを、精製した抗MBP抗体(濃度5〜10μg/ml)でコーティングし、続いて1g/lの一塩基性リン酸ナトリウム、10.8g/lの二塩基性リン酸ナトリウム、25g/lのスクロース、0.5g/lのアジ化ナトリウム(pH7.4)中にある2.5g/lのヒト血清アルブミンでブロックした。適切に希釈したβ−セクレターゼ酵素(5μl)を、96ウェルマイクロタイタープレートの個々のウェルにて、50μlの反応混合物中で、2.5μlの2.2μM MBP−C125sw基質ストックと混合し(最終緩衝液濃度は、20mM 酢酸緩衝液 pH4.8、0.06% Triton X−100)、そして37℃にて1時間インキュベートした。次いで、サンプルを、標本希釈剤(0.2g/l 一塩基性リン酸ナトリウム、2.15g/l 二塩基性リン酸ナトリウム、0.5g/l アジ化ナトリウム、8.5g/l 塩化ナトリウム、0.05% Triton−X−405、6g/l BSA)で5倍に希釈し、抗MBPでコートしたプレート上の標本希釈剤中にさらに5〜10倍希釈し、そして室温で2時間インキュベートした。サンプルまたは抗体とのインキュベーションの後、プレートを、TTBS(0.15M NaCl、50mM Tris(pH&.5)、0.05% Tween−20)中で少なくとも4回洗浄した。ビオチン化SW192抗体を、レポーターとして使用した。NHS−ビオチン(Pierce)を製造業者の指示に従って使用して、SW192ポリクローナル抗体をビオチン化した。通常は、このビオチン化抗体を、約240ng/mlにて使用した。正確な濃度は、使用する抗体のロットによって変化する。このレポーターとのこのプレートのインキュベーションの後、ストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼ(Boeringer−Mannheim)を使用し、そして4−メチル−ウンベリフェリルホスフェートを蛍光基質として使用して、このELISAを発色させた。プレートを、Cytofluor Fluoroscent 2350 Measurement Systemにて読み取った。組換え生成したMBP−26SW(産物アナログ)を標準として使用して、標準曲線を作成した。この標準曲線によって、生成した産物の量への蛍光単位の変換が可能になった。
【0237】
このアッセイプロトコルを使用して、96ウェルマイクロタイタープレート上にアセンブルした化合物の「ライブラリー」を使用して、インヒビター構造物をスクリーニングした。化合物を、2% DMSO中に最終濃度20μg/mlにて、上記のアッセイ形式で添加し、そして生成した産物の程度を、コントロール(2% DMSOのみ)のβ−セクレターゼのインキュベーションと比較し、「阻害%」を計算した。「ヒット」を、試験濃度にて酵素活性の>35%阻害を生じる化合物として定義した。このアッセイを使用して、インヒビターのIC50値もまた提供し得、これは、試験化合物の濃度を一定範囲にわたって変化させて、この酵素の活性を50%阻害するのに要する濃度を用量依存性曲線から算出することによる。
【0238】
一般的に、阻害は、一定範囲のサンプルにわたって決定した平均活性値よりも、少なくとも1標準偏差、好ましくは2標準偏差低い活性を生じる場合に、このアッセイにおけるコントロール活性と比較して、有意であるとみなされる。さらに、コントロール活性の約25%を超え、好ましくはその約35%を超える活性の減少もまた、有意であると見なされ得る。
【0239】
上述のアッセイ系を使用して、24個の「ヒット」(50μM濃度にて、>30%阻害)を、試験した最初の6336個の化合物から同定した(ヒット率0.4%)。これらのうち12個の化合物が、50μM未満のIC50を有し、下記のP26−P4’swアッセイにおける再スクリーニングを含んだ。
【0240】
(P26−P4’swアッセイ)P26−P4’sw基質は、ビオチン結合ペプチドである配列、(ビオチン)CGGADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNLDAEF(配列番号63)である。P26−P1標準は、配列、(ビオチン)CGGADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNL(配列番号64)を有し、そのN末端「CGG」は、両方の場合に、ビオチンと基質との間のリンカーとして作用する。ペプチドは、boc−アミノ酸を用いる固相合成を使用して、Anaspec,Inc.(San Jose、CA)により調製した。ビオチンを、このペプチドの合成の後、EZ−link Iodoacetyl−LC−Biotin(Pierce)を使用して、Anaspec,Inc.によって、末端システインスルフヒドリルに結合した。ペプチドを、5mM Tris中0.8〜1.0mMストックとして貯蔵し、そのpHを、水酸化ナトリウムでほぼ中性(pH6.5〜7.5)に調整する。
【0241】
この酵素アッセイについて、その基質濃度は、0から200μMまで変化し得る。詳細には、阻害活性について化合物を試験することのために、基質濃度は、1.0μMである。試験すべき化合物を、DMSO中に添加した。最終DMSO濃度は5%であった。このような実験において、コントロールにも、5% DMSOを添加した。酵素の濃度を変化させて、ELISAアッセイの線形範囲内の産物濃度(希釈後、125〜2000pM)を得た。これらの化合物を、20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)、0.06% Triton X−100中で37℃にて1〜3時間インキュベートした。サンプルを、標本希釈剤(145.4mM塩化ナトリウム、9.51mMリン酸ナトリウム、7.7mMアジ化ナトリウム、0.05% Triton X−405、6mg/lウシ血清アルブミン、pH7.4)中に5倍希釈してこの反応を消失させ、次いで、必要な場合は、ELISAのためにさらに希釈した。ELISAのために、Costar High Binding 96ウェルアッセイプレート(Corning,Inc.、Corning、NY)を、クローン16A7からのSW192モノクローナル抗体または類似の親和性のクローンでコーティングした。ビオチン−P26−P4’標準を標本希釈剤中に希釈して、最終濃度0〜2nMにした。希釈したサンプルおよび標準(100μl)を、SW192プレート上で、4℃にて24時間インキュベートする。このプレートを、TTBS緩衝液(150mM塩化ナトリウム、25mM Tris、0.05% Tween 20、pH7.5)中で4回洗浄し、次いで標本希釈剤中に1:3000希釈したストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)0.1ml/ウェルとともにインキュベートした。室温で1時間インキュベートした後、このプレートを、前節に記載のように、TTBS中で4回洗浄し、そして蛍光基質溶液A(31.2gm/lの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、30mg/l、HClでpH9.5に調整)とともにインキュベートした。蛍光値を、30分後に読み取った。
【0242】
(C.合成オリゴヌクレオチド基質を使用するアッセイ)
このアッセイ形式は、部分精製β−セクレターゼ調製物の活性を測定するために特に有用である。合成オリゴペプチドを、β−セクレターゼの既知の切断部位、および必要応じて、検出可能なタグ(例えば、蛍光部分または色素原性部分)を組み込んで調製する。このようなペプチドの例、ならびにその生成方法および検出方法は、特許査定を受けた米国特許5,942,400に記載されており、この米国特許は、本明細書中に参考として援用される。切断産物は、高速液体クロマトグラフィー、または検出すべきペプチドに適切な蛍光検出方法もしくは色素原性検出方法を使用して、当該分野で周知の方法に従って検出し得る。例として、1つのこのようなペプチドは、配列SEVNLDAEF(配列番号52)を有し、そしてその切断部位は、残基5と6との間である。別の好ましい基質は、配列ADRGLTTRPGSGLTNIKTEEISEVNLDAEF(配列番号53)を有し、そしてその切断部位は、残基26と27との間である。
【0243】
(D.粗細胞抽出物または粗組織抽出物の、β−セクレターゼアッセイ)
細胞または組織を、抽出緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、2mM EDTA、0.2% Triton X−100、1mM PMSF、20μg/mlペプスタチン、10μg/ml E−64)中で抽出した。抽出緩衝液の容量は、サンプル間で変動するが、少なくとも200μl/106細胞であるべきである。細胞を、マイクロピペットを用いての粉砕によって懸濁し得るが、組織は、ホモジネーションが必要である。懸濁したサンプルを、氷上で30分間インキュベートした。ピペッティングを可能にすることが必要ならば、可溶化していない物質を、4℃で16,000×g(Beckman微小遠心機にて14,000rpm)にて30分間の遠心分離によって除去した。この上清を、最終アッセイ溶液中への希釈によって、アッセイした。抽出物の希釈は、変動するが、このアッセイ中のタンパク質濃度が60μg/ml以下であるに十分であるべきである。このアッセイ反応はまた、20mM酢酸ナトリウム(pH4.8)および0.06% Triton X−100(この抽出物および基質により与えられたTriton X−100を含む)、ならびに220〜110nM MBP−C125(基質調製用プロトコルに記載される0.1mg/mlストックの、1:10希釈物または1:20希釈物)を含んだ。反応を、37℃にて1〜3時間インキュベートし、その後、標本希釈剤中の少なくとも5倍希釈によって消失させ、そして標準的プロトコルを使用してアッセイした。
【0244】
(実施例5)
(β−セクレターゼの調製)
(A.天然に存在するβ−セクレターゼの精製)
ヒト293細胞を、米国特許5,744,346(本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、入手および処理した(293細胞は、American Type Culture Collection、Manassas、VAから入手可能である)。凍結組織(293細胞ペーストまたはヒト脳)を切断して小片にし、そして5容量のホモジネーション緩衝液(20mM Hepes(pH7.5)、0.25Mスクロース、2mM EDTA)と混合した。この懸濁物を、ブレンダーを使用してホモジナイズし、そして16,000×gで30分間、4℃にて遠心分離した。その上清を捨て、そしてそのペレットを、もとの容量の抽出緩衝液(20mM MES(pH6.0)、0.5% Triton X−100、150mM NaCl、2mM EDTA、5μg/mlロイペプチン、5μg/ml E64、1μg/mlペプスタチン、0.2mM PMSF)に懸濁した。ボルテックスで混合した後、チューブを4℃で1時間攪拌することにより、抽出を完了した。この混合物を、上記のような16,000×gで遠心分離し、そしてその上清をプールした。この抽出物のpHを、約1%(v/v)の1M Trisベース(中和せず)を添加することによって7.5に調整した。
【0245】
この中和した抽出物を、10容量の20mM Tris(pH7.5)、0.5% Triron X−100、150mM NaCl、2mM NaCl、2mM EDTAで予め平衡化した、コムギ胚芽アグルチニン−アガロース(WGA−アガロース)カラム上に、4℃にてローディングした。1mlのこのアガロース樹脂を、使用したもとの組織1gごとに使用した。このWGAカラムを、1容量の平衡緩衝液で洗浄し、次いで、10容量の20mM Tris(pH7.5)、100mM NaCl、2mM EDTA、0.2% Triton X−100で洗浄し、次いで、以下のように溶出した。3/4カラム容量の10%キチン加水分解産物(20mM Tris(pH7.5)、0.5%、150mM NaCl、0.5% Triton X−100、2mM EDTA中)を、このカラムに通し、その後、フローを15分間停止した。次いで、さらに5容量の10%キチン加水分解産物溶液を使用して、このカラムを溶出した。上記の溶出物のすべてを混合した(プールしたWGA溶出物)。
【0246】
このプールしたWGA溶出物を、20mM NaOAc(pH5.0)、0.5% Triton X−100、2mM EDTAで1:4希釈した。この希釈溶液のpHを、このpHをモニターしつつ氷酢酸2、3滴を添加することによって、5.0に調整した。この「SPロード」を、20mM NaOAc(pH5.0)、0.5% Triton X−100、2mM EDTAで平衡化した5ml Pharmacia HiTrap SPカラムに、4℃で4ml/分にて通した。
【0247】
上述の方法によって、MBP−C125−SWアッセイにおける253nM産物/ml/時間/タンパク質μgを超える比活性を有するピーク活性が提供された。このアッセイにおいて、比活性は、下記のように決定し、そのタンパク質の約1500倍精製であった。この精製β−セクレターゼの比活性を、以下のように測定した。MBP C125−SW基質を、0.06% Triton X−100を含む20mM酢酸ナトリウム(pH4.8)中に、約220nMにて混合した。生成した産物の量を、β−セクレターゼアッセイによって測定した。このアッセイもまた、以下に記載される。次いで、比活性を、以下:
比活性=(産物濃度(nM))(希釈係数)/(酵素溶液(容量))(インキュベーション時間(時間))(酵素濃度(mg/容量))
として算出した。
【0248】
従ってこの比活性は、生成した産物pmol/β−セクレターゼμg/時間として表現される。ヒト脳酵素のさらなる精製を、下記の一般的方法に従って、SPフロースルー画分をP10−P4’sta D→Vアフィニティーカラム上にローディングすることによって達成した。この精製工程の結果は、上記の表1にまとめられている。
【0249】
(B.組換え細胞からのβ−セクレターゼの精製)
本明細書中に一般的に記載される方法によって生成した組換え細胞に、この酵素を過剰発現させた。すなわち、これらの細胞は、その細胞またはほとんどの組織によって内因性産生されることが見出されているよりも劇的に多くの1細胞あたりの酵素を産生した。上記の工程のうちのいくつかは、これらの条件下で精製酵素の調製から排除し得、より高レベルの精製が達成されるという結果を生じることが見出された。
【0250】
β−セクレターゼ遺伝子構築物でトランスフェクトしたCosA2細胞または293T細胞(実施例6を参照のこと)を、ペレットにし、凍結し、そして使用するまで−80℃にて貯蔵した。この細胞ペレットを、手持ち式ホモジナイザーを使用して30秒間ホモジナイズすることによって再懸濁し(抽出緩衝液(20mM TRIS緩衝液(pH7.5)、2mM EDTA、0.2% Triton X−100、およびプロテアーゼインヒビター(5μg/ml E−64、10μg/mlペプスタチン、1mM PMSF)からなる)中で、0.5ml/約106細胞のペレット)、微小遠心機にて最大速度として遠心分離(4℃にて40分間)した。ペレットを、もとの容量の抽出緩衝液に懸濁し、次いで4℃にて1時間、回転しつつ攪拌し、そして再び、微小遠心機にて最大速度で40分間遠心分離した。生じた上清を、「抽出物」として保存した。次いで、この抽出物を、20mM酢酸ナトリウム(pH5.0)、2mM EDTAおよび0.2% Triton X−100(SP緩衝液A)で希釈し、そして5M NaClを添加して、最終濃度60mM NaClにした。次いで、この溶液のpHを、水に1:10希釈した氷酢酸でpH5.0に調整した。アリコートを保存した(「SPロード」)。このSPロードを、5ml SP緩衝液A、5ml SP緩衝液B(1M NaClを含むSP緩衝液A)および10ml SP緩衝液Aで予め洗浄した、1ml SP HiTrapカラムに通した。さらなる2mlの5% SP緩衝液Bをこのカラムに通して、このカラムからすべての残存サンプルを追い出した。このSPフロースルーのpHを、10×希釈酢酸でpH4.5に調整した。次いでこのフロースルーを、下記のような、P10−P4’staD→V−Sepharose Affinityカラムにアプライした。このカラム(250μl吸着床サイズ)を、少なくとも20容量の平衡緩衝液(25mM NaCl、0.2% Triton X−100、0.1mM EDTA、25mM酢酸ナトリウム(pH4.5)で予め平衡化し、次いで、この希釈した上清をローディングした。ローディング後、その後の工程は室温で実行した。このカラムを、洗浄緩衝液(125mM NaCl、0.2% Triton X−100、25mM酢酸ナトリウム(pH4.5))で洗浄し、その後、0.6カラム吸着床容量のホウ酸溶出緩衝液(200mM NaCl、0.2%還元Triton X−100、40mMホウ酸ナトリウム(pH9.5))で洗浄した。次いで、このカラムに蓋をし、そしてさらなる0.2mlの溶出緩衝液を添加した。このカラムを、30分間立てた。2吸着床容量の溶出緩衝液を添加し、そしてカラム画分(250μl)を収集した。タンパク質ピークは、2つの画分に溶出した。0.5mlの10mg/mlペプスタチンを、収集した画分1mlにつき添加した。
【0251】
完全長クローン27(配列番号2;1〜501をコードする)でトランスフェクトした細胞、419stop(配列番号57)でトランスフェクトした細胞および452stop(配列番号59)でトランスフェクトした細胞から作製した細胞抽出物を、抗体264A(配列番号2に関してβ−セクレターゼのアミノ酸46〜67に対するポリクローナル抗体)を使用するウェスタンブロット分析によって検出した。
【0252】
(実施例6)
(組換えβ−セクレターゼを発現する異種細胞の調製)
2つの別個のクローン(pCEKクローン27およびpCEKクローン53)を、当該分野で公知のFugene法およびEffectene法を使用して、293T細胞またはCOS(A2)細胞にトランスフェクトした。293T細胞は、Edge Biosystems(Gaithersburg、MD)から入手した。この293T細胞は、SV40大抗原でトランスフェクトされたKEK293細胞である。COSA2は、COS1細胞のサブクローンであり、軟寒天中にサブクローンされている。
【0253】
(FuGENE法)293T細胞を、6ウェル培養プレートの1つのウェルあたり2×105細胞にて播種した。一晩の培養後、細胞は、約40〜50%のコンフルエンシーであった。培地を、トランスフェクションの2〜3時間前に変えた(2ml/ウェル)。各サンプルについて、3μlのFuGENE 6 Transfection Reagent(Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN)を、0.1mlの無血清培地(10mM Hepes含有DME)中に希釈し、そして室温で5分間インキュベートした。各サンプル(0.5〜2mg/ml)について1μgのDNAを、別個のチューブに添加した。この希釈したFuGENE試薬を、この濃縮DNAに滴下した。穏やかにはじいて混合した後、この混合物を、室温で15分間インキュベートした。この混合物を、この細胞上に滴下し、そして穏やかに渦を巻かせて混合した。次いでこの細胞を、7.5% CO2雰囲気下で、37℃にてインキュベートした。この馴化培地および細胞を、48時間後に収集した。馴化培地を収集し、遠心分離し、そしてそのペレットから単離した。プロテアーゼインヒビター(5μg/ml E64、2μg/mlペプスタチン、0.2mM PMSF)を添加して、凍結させた。この細胞単層を、PBSで1回すすぎ、次いで0.5mlの溶解緩衝液(1mM HIPIS(pH7.5)、1mM EDTA、0.5% Triton X−100、1mM PMSF、10μg/ml E64)を添加した。この溶解物を、凍結および融解し、ボルテックスで混合し、次いで遠心分離し、そしてその上清を、アッセイするまで凍結した。
【0254】
(Effective法)DNA(0.6μg)を「EFFECTENE」試薬(Qiagen、Valencia、CA)とともに、製造業者の指示書に従って、標準的トランスフェクションプロトコルを使用して、6ウェル培養プレート中に添加した。細胞を、トランスフェクションの3日後に収集し、そしてその細胞ペレットを、急速凍結した。全細胞溶解物を調製し、そして種々の量の溶解物を、MBP−C125sw基質を使用して、β−セクレターゼ活性について試験した。図14Bは、これらの実験の結果を示す。この図において、形成した産物のpmolを、この反応に添加したCOS細胞溶解物のmgに対してプロットしている。この図の説明は、この酵素の供給源を記載しており、この説明において、pCEKクローン27(クローン27)由来のDNAおよびpCEKクローン53(クローン53)由来のDNAで、Effectiveを使用してトランスフェクトされた細胞からの活性は、それぞれ、黒菱および黒四角として示されており、FuGENEを用いて調製されたクローン27由来のDNAでトランスフェクトされた細胞からの活性は、白三角として示され、そしてモックでトランスフェクトされた細胞のプロットおよびコントロールのプロットは、何の活性も示さなかった(黒三角および「X」マーカー)。700pM産物を越える値は、このアッセイの線形範囲外にある。
【0255】
(実施例7)
(P10−P4’sta(D→V)Sepharoseアフィニティーマトリックスの調製)
(A.P10−P4’sta(D→V)インヒビターペプチドの調製)
P10−P4’sta(D→V)は、配列NH2−KTEEISEVN[sta]VAEF−COOH(配列番号72)を有し、この配列中、「sta」は、スタチン部分を示す。この合成ペプチドを、boc保護アミノ酸を鎖のアセンブリのために使用して、ペプチド合成機で合成した。すべての化学物質、試薬、およびbocアミノ酸は、Applied Biosytems(ABI;Foster City、CA)から購入したが、ただし、ジクロロメタンおよびN,N−ジメチルホルムアミドは例外であり、これらは、Burdick and Jacksonから購入した。開始樹脂である、boc−Phe−OCH2−Pam樹脂もまた、ABIから購入した。すべてのアミノ酸を、事前に活性化させた後、ジメチルホルムアミド中、1等量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)および1等量のN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を使用して、対応するHOBTエステルに結合した。アミノ酸のα−アミン上のboc保護基を、各結合工程の後に、ジクロロメタン中50%のトリクロロ酢酸を用いて除去し、その後、フッ化水素切断した。
【0256】
アミノ酸側鎖の保護は、以下の通りであった:Glu(Bzl)、Lys(Cl−CBZ)、Ser(OBzl)、Thr(OBzl)。他のアミノ酸すべては、boc−スタチンを含むさらなる側鎖保護なしで使用した。
[(Bzl)ベンジル、(CBZ)カルボベンズオキシ、(Cl−CBZ)クロロカルボゼンズオキシ、(OBzl)O−ベンジル]。
【0257】
側鎖を保護したペプチド樹脂を無水フッ化水素(HF)と0℃で1時間反応させることによって、脱保護し、そして樹脂から切断した。これによって、完全に脱保護された粗ペプチドが、C末端カルボン酸として生成された。
【0258】
HF処理の後、このペプチドを、この樹脂から酢酸で抽出し、そして凍結乾燥した。次いで、この粗ペプチドを、調製用逆相HPLCをVydac C4、330Å、10μmカラム(2.2cm内径×25cm長)上で使用して、精製した。このカラムとともに使用した溶媒系は、移動層として、0.1% TFA/H2O([A]緩衝液)および0.1% TFA/CH3CN([B]緩衝液)であった。代表的には、このペプチドを、このカラム上に2%[B]中8〜10mL/分でローディングし、そして2%[B]〜60%[B]の直線勾配を使用して、174分で溶出した。
【0259】
この精製ペプチドを、質量分析法および分析用逆相HPLCに供して、この精製ペプチドの組成および純度を確認した。
【0260】
(B.アフィニティーマトリックスへの組み込み)
すべての操作は、室温で実行した。NHS−Sepharoseの80%スラリー12.5ml(すなわち、充填容量10ml;Pharmacia、Piscataway、NJ)を、Bio−Rad EconoColumn(BioRad、Richmond、CA)に注ぎ込み、そして165mlの氷冷1.0mM HClで洗浄した。その吸着床を完全に排水した時に、このカラムの底を閉め、そして5.0mlの7.0mg/ml P10−P4’sta(D→V)ペプチド(0.1M HEPES(pH8.0)中に溶解)を添加した。このカラムに蓋をし、そして回転させつつ24時間インキュベートした。インキュベーション後、このカラムから排水させ、次いで、1.0Mエタノールアミン(pH8.2)8mlで洗浄した。さらなる10mlのエタノールアミン溶液を添加し、そしてこのカラムに再び蓋をし、そして回転させつつ一晩インキュベートした。このカラム吸着床を、1.5M塩化ナトリウム、0.5M Tris(pH7.5)20mlで洗浄し、続いて一連の緩衝液(0.1mM EDTA、0.2% Triton X−100、および20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(100ml);0.1mM EDTA、0.2% Triton X−100、および20mM酢酸ナトリウム、pH4.5、1.0M塩化ナトリウム(100ml);0.1mM EDTA、0.2% Triton X−100、および20mMホウ酸ナトリウム、pH9.5、1.0M塩化ナトリウム(200ml);0.1mM EDTA、0.2% Triton X−100、および20mlホウ酸ナトリウム、pH9.5(100ml)を含む)で洗浄した。最後に、このカラム吸着床を、15mlの2mM Tris、0.01%アジ化ナトリウム(TritonもEDTAも含まず)で洗浄し、そしてこの緩衝液中で、4℃にて貯蔵した。
【0261】
(実施例8)
(β−セクレターゼおよびAPPでの細胞の同時トランスフェクション)
293T細胞を、FuGene 6 Reagentを上記実施例4に記載されるように使用して、APPswまたはAPPwt、およびβ−セクレターゼまたはコントロールのβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)のcDNAをコードするプラスミド等量で同時トランスフェクトした。完全長のβ−セクレターゼを含む、pCEKクローン27またはpohCJのいずれかを、β−セクレターゼの発現に使用した。これらのトランスフェクションにおけるAPPの発現に使用したプラスミド構築物pohCK751は、Duganら、JBC 270(18)10982〜10989(1995)に記載されかつ図21に模式的に示されるように、誘導した。β−galコントロールプラスミドを、トランスフェクトするプラスミドの総量が各条件について同じであるように、添加した。β−galを発現するpCEKベクターおよびpohKベクターは、293T細胞またはCOS細胞中で複製しなかった。3連のウェルの細胞を、上記の標準的方法に従って、このプラスミドでトランスフェクトし、次いで、48時間インキュベートし、その後、馴化培地および細胞を収集した。全細胞溶解物を調製し、そしてそのβ−セクレターゼ酵素活性について試験した。トランスフェクトした293T細胞により発現されたβ−セクレターゼ活性の量は、単一トランスフェクション研究にて使用したCosA2細胞により発現されたβ−セクレターゼ活性の量に、匹敵するかまたはそれより大きかった。ウェスタンブロット分析を、抗体13G8を使用して、馴化培地および細胞溶解物に対して実行し、そしてAβ ELISAをこの馴化培地に対して実行して、種々のAPP切断産物を分析した。
【0262】
本発明は、特定の方法および実施形態に関して記載されているが、種々の改変および変更が本発明から逸脱することなくなされ得ることが、理解される。本明細書中に参照されるすべての特許参考物および文献参考物は、本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1Aは、図2Aにおいて示されるヒトβ−セクレターゼ翻訳産物をコードするポリヌクレオチドの配列(配列番号1)を示す。
【図1B】 図1Bは、推定5’ 非翻訳領域および3’非翻訳領域を含む、図1Aのポリヌクレオチド(配列番号44)を示す。
【図2A】 図2Aは、図1Aおよび図1Bにおいて示されるポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームの推定翻訳産物のアミノ酸配列(配列番号2)[1−501]を示す。
【図2B】 図2Bは、ヒトβ−セクレターゼの活性フラグメントのアミノ酸配列(配列番号43)[46−501]を示す。
【図3A】 図3Aは、C末端にFLAGエピトープタグ(下線;配列番号45)を含む、ヒトβ−セクレターゼの活性フラグメント、452ストップ(配列番号2に関するアミノ酸1−452;配列番号59)をコードする翻訳産物を示す。
【図3B】 図3Bは、C末端にFLAGエピトープタグ(下線;配列番号45)を含む、ヒトβ−セクレターゼのフラグメントのアミノ酸配列(配列番号2に関するアミノ酸46−452(配列番号58))を示す。
【図4】 図4は、ゲル濾過カラムから溶出される組換えβ−セクレターゼの溶出プロフィールを示す。
【図5】 図5は、β−セクレターゼ1−501をコードするORF(配列番号1)を含むβ−セクレターゼ1−501(配列番号2)の全長アミノ酸配列を、示された特定の特徴(例えば、アスパラギン酸活性触媒部位を示す「活性D」部位、453位において始まる膜貫通領域、ならびにリーダー(「シグナル」)配列(残基1−22;配列番号46)および推定プロ領域(残基23−45;配列番号47)とともに示し、そしてここでアミノ酸46−501(配列番号43)(nt135−1503)に対応するプロ酵素領域に対応するポリヌクレオチド領域が、配列番号44として示される。
【図6】 図6Aおよび図6Bは、精製β−セクレターゼ含有画分が、還元条件下(6A)および非還元条件下(6B)で泳動された銀染色SDS−PAGEゲルの像を示す。
【図7】 図7は、組換え酵素を発現する異種293T細胞から精製されたβ−セクレターゼの銀染色SDS−PAGEを示す。
【図8】 図8は、組換え酵素を発現する異種Cos A2細胞から精製されたβ−セクレターゼの銀染色SDS−PAGEを示す。
【図9】 図9は、例示されるように、精製された天然に存在するβ−セクレターゼのN末端(配列番号77)をコードするポリヌクレオチド(配列番号76)由来のプライマーが、この分子のさらなる部分(例えば、核酸配列番号8によってコードされるフラグメント(配列番号79))をPCRクローニングするために使用されるスキームを示す。
【図10】 図10は、(「pBS/mImpain H#3 cons」)コンセンサスマウス配列:配列番号65と比較した、ヒトβ−セクレターゼ(「Human Imapain.seq」、1−501、配列番号2)のアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図11A】 図11Aは、ベクターpCFを調製するのに使用される挿入物のヌクレオチド配列(配列番号80)を示す。
【図11B】 図11Bは、pCEKの線形模式図を示す。
【図12】 図12は、β−セクレターゼを用いて哺乳動物細胞をトランスフェクトするのに使用されるpCEK.クローン27の模式図を示す。
【図13A】 図13(A−E)は、アミノ酸配列、配列番号2によって示されるOFRを有するpCEKクローン27のヌクレオチド配列(配列番号48)を示す。
【図13B】 図13(A−E)は、アミノ酸配列、配列番号2によって示されるOFRを有するpCEKクローン27のヌクレオチド配列(配列番号48)を示す。
【図13C】 図13(A−E)は、アミノ酸配列、配列番号2によって示されるOFRを有するpCEKクローン27のヌクレオチド配列(配列番号48)を示す。
【図13D】 図13(A−E)は、アミノ酸配列、配列番号2によって示されるOFRを有するpCEKクローン27のヌクレオチド配列(配列番号48)を示す。
【図13E】 図13(A−E)は、アミノ酸配列、配列番号2によって示されるOFRを有するpCEKクローン27のヌクレオチド配列(配列番号48)を示す。
【図14A】 図14Aは、親ベクターpCDNA3に挿入されるヌクレオチド配列を示す。
【図14B】 図14Bは、β−セクレターゼをコードするクローン由来のベクターを用いてトランスフェクトされたCOS細胞由来の細胞溶解物におけるβ−セクレターゼ活性のプロットを示す。
【図15A】 図15Aは、変異体APP(751 wt)およびコントロールとしてβ−ガラクトシダーゼ(レーンd)を用いてトランスフェクトされた異種細胞からならびに変異体APP(751 wt)およびβ−セクレターゼ(レーンf)を用いてトランスフェクトされた細胞から作製された溶解物の3連のサンプルが、ロードされたSDS−PAGEゲルの像を示し、ここでレーンa、b、およびcは、それぞれ未処理細胞、β−ガラクトシダーゼ単独によりトランスフェクトされた細胞およびβ−セクレターゼ単独によりトランスフェクトされた細胞に由来する溶解物を示し、そしてレーンeは、マーカーを示す。
【図15B】 図15Bは、変異体APP(スウェーデン人変異)およびコントロールとしてβ−ガラクトシダーゼ(レーンc)によりトランスフェクトされた異種細胞から、ならびに変異体APP(スウェーデン人変異)およびβ−セクレターゼ(レーンe)によりトランスフェクトされた細胞から作製された溶解物の3連のサンプルがロードされたSDS PAGEゲルの像を示し、ここでレーンaおよびレーンbは、β−ガラクトシダーゼ単独によりトランスフェクトされた細胞およびβ−セクレターゼ単独によりトランスフェクトされた細胞由来の溶解物を示し、そしてレーンdはマーカーを示す。
【図16】 図16Aおよび図16Bは、可溶性APP(sAPP)の存在またはその増加について試験された細胞上清のウェスタンブロットを示す。
【図17】 図17Aおよび図17Bは、同時発現細胞におけるα切断されたAPP基質のウェスタンブロットを示す。
【図18】 図18は、APPおよびβ−セクレターゼを用いて同時トランスフェクトされた293T細胞におけるAβ(x−40)産生を示す。
【図19A】 図19Aは、APP基質フラグメント、およびアッセイにおける抗体SW192および8E−192と関連したその使用の模式図を示す。
【図19B】 図19Bは、野生型およびスウェーデン人APP配列におけるβ−セクレターゼ切断部位を示す。
【図20】 図20は、APP638由来の第2APP基質フラグメント、およびアッセイにおける抗体SW192および8E−192と関連したその使用の模式図を示す。
【図21】 図21は、pohCK751ベクターの模式図を示す。

Claims (10)

  1. Aβ産生を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、
    a)以下のアミノ酸配列
    からなるβセクレターゼ酵素タンパク質の単離されたフラグメントであって、該フラグメントは、膜貫通ドメインを欠き、かつ、βセクレターゼ活性を示す、フラグメント、または
    b) 以下のアミノ酸配列
    を含む、単離されたタンパク質と、
    (i)試験化合物および(ii)βセクレターゼ基質とを接触させる工程、ならびに
    該βセクレターゼポリペプチドが、該化合物の非存在下においてよりも、該化合物の存在下においてより低いβセクレターゼ活性を示す場合、Aβ産生を阻害し得る化合物として該試験化合物を選択する工程、
    を包含する、方法。
  2. 前記フラグメントが、以下のアミノ酸配列
    の位置452またはそれより数個後のアミノ酸のC末端位置において短縮されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記フラグメントが、以下のアミノ酸配列
    の少なくとも400個の連続した残基を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記フラグメントが、以下のアミノ酸配列
    を有するポリペプチドを含む、請求項1、2または3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記フラグメントが、以下のアミノ酸配列
    を有するポリペプチドからなる、請求項4に記載の方法。
  6. 前記βセクレターゼ切断可能フラグメントが、以下:
    からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法であって、該方法は、さらに、以下:
    β−APPの過剰発現および/またはAβの沈着によって特徴付けられる非ヒト哺乳動物被験体に、前記試験化合物を投与する工程;および
    該化合物が、該被験体におけるAβ沈着の量を減少させるか、または、該被験体の認知能力を維持するか、もしくは改善する場合、潜在的な治療薬物化合物として該化合物を選択する工程、
    を包含する、方法。
  8. 異種細胞であって、以下:
    (i)以下のアミノ酸配列
    からなるβセクレターゼ酵素、またはβセクレターゼ活性を有するそのフラグメントをコードする第一の異種核酸分子;
    (ii)βセクレターゼ基質分子をコードする第二の異種核酸分子;および
    (iii)(i)および(ii)の各々に作動可能に連結された、該細胞内における該核酸分子の発現のために有効な調節配列、
    を含む、異種細胞。
  9. Aβ産生を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、
    以下のアミノ酸配列
    からなるβセクレターゼ酵素、またはβセクレターゼ活性を有するそのフラグメントと、(i)試験化合物および(ii)βセクレターゼ基質とを接触させる工程、ならびに
    該酵素またはそのフラグメントが、該化合物の非存在下においてよりも、該化合物の存在下においてより低いβセクレターゼ活性を示す場合、Aβ産生を阻害し得る化合物として該試験化合物を選択する工程を包含し、
    ここで、該βセクレターゼまたはそのフラグメントは、宿主細胞内で組換え発現される、方法。
  10. 請求項に記載の方法であって、該方法は、
    前記試験化合物を、アルツハイマー病またはアルツハイマー病様病理学を有する非ヒト哺乳動物被験体に投与する工程、および
    そのような投与後に、該被験体が、認知能力を維持もしくは改善させるか、または該被験体が、減少した斑負荷を示す場合、治療薬剤候補として該化合物を選択する工程、
    をさらに包含する、方法。
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