以下、本発明の実施の形態における部品実装方法を用いて部品を基板に実装する部品実装機について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における部品実装機の斜視図である。
本実施の形態における部品実装機100は、部品の吸着時間および実装時間を短くして実装基板の生産性を向上したものであって、部品実装を行う2つの部品実装ユニット100a,100bを備える。なお、実装基板とは、部品が実装された基板である。
部品実装ユニット100aは、複数の部品を供給する2つの部品供給部102を備え、それらの部品供給部102から供給される部品を、搬入口101から搬入された基板2に対して実装する。そして、部品実装ユニット100aは、部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bに搬出する。
部品実装ユニット100bは、部品実装ユニット100aと略同一の構成を有する。すなわち、部品実装ユニット100bは、複数の部品を供給する2つの部品供給部102を備え、それらの部品供給部102から供給される部品を、部品実装ユニット100aから搬出されて部品実装ユニット100bに搬入された基板2に対して実装する。そして、部品実装ユニット100bは、部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bの外に搬出する。
図2は、部品実装機100の部品実装ユニット100aの内部構成図である。つまり、図2は、筐体が取り外された部品実装ユニット100aの上面側の構成を示す。
部品実装ユニット100aは、2つの部品供給部102と、基台103と、X軸テーブル104a,104bと、Y軸テーブル105a,105bと、2本の搬送路106と、2つのマルチ装着ヘッド110と、2つの部品認識カメラ120とを備えている。
なお、図2では、部品実装ユニット100a,100bの配列方向がX軸方向とされ、水平面に沿ってX軸方向と垂直な方向がY軸方向とされている。
2本の搬送路106は、X軸方向に沿って互いに平行になるように基台103上に配設されている。このような搬送路106は、基板2がX軸方向に沿って搬送されるようにその基板2を案内する。つまり、搬送路106は、搬入口101から搬入された基板2を、基台103の略中央部にある実装ステージに案内し、そこで部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bに案内する。
Y軸テーブル105a,105bは、それぞれY軸方向に沿って平行となるように基台103の両縁側に配設されている。
X軸テーブル104a,104bは、それぞれX軸方向に沿って平行となり、Y軸テーブル105a,105bに沿ってスライド自在に据え付けられている。そして、X軸テーブル104a,104bは、Y軸モータ(図示せず)の駆動によってY軸方向に移動する。
マルチ装着ヘッド110は、部品供給部102から供給される部品を取り出して、実装ステージに配置された基板2に実装するものであって、X軸テーブル104a,104bのそれぞれにスライド自在に据え付けられている。そして、マルチ装着ヘッド110は、X軸モータ(図示せず)の駆動によってX軸方向に移動する。つまり、マルチ装着ヘッド110は、X軸モータおよびY軸モータの駆動によって、X軸方向およびY軸方向(水平方向)に移動する。
また、マルチ装着ヘッド110は、8つのヘッド112と、基板認識カメラ111とを備えている。
8つのヘッド112は、4(X軸方向)×2(Y軸方向)に配列されている。これらのヘッド112は、ヘッド112の内部を負圧にすることによって、部品供給部102から供給される部品を吸着し、その部品を取り出す。なお、各ヘッド112の先端には、吸着対象の部品に適したノズルが取り付けられる。したがって、各ヘッド112は、先端に取り付けられたノズルを介して部品を吸着する。
基板認識カメラ111は、実装ステージに配置された基板2の位置を認識し、基板2上の正確な位置に部品を実装するため、基板2に形成された基板認識用のマークを撮像する。
このようなマルチ装着ヘッド110は、部品供給部102から供給される部品を吸着して、基板2に移動し、吸着された部品を1つずつ基板2に実装し、再び部品供給部102に移動する。このマルチ装着ヘッド110による一連の動作をターンという。また、マルチ装着ヘッド110が部品供給部102から基板2に移動するときには、部品認識カメラ120上を通過する。
また、2つのマルチ装着ヘッド110のうちの一方には、2つの部品供給部102のうちの一方が割り当てられ、2つのマルチ装着ヘッド110のうちの他方には、2つの部品供給部102のうちの他方が割り当てられている。つまり、1つのマルチ装着ヘッド110は、2つの部品供給部102のそれぞれから部品を取り出すような動作を行わず、予め割り当てられた1つの部品供給部102のみから部品を取り出す。
さらに、2つのマルチ装着ヘッド110は、いわゆる交互打ちを行う。つまり、何れか一方のマルチ装着ヘッド110が部品を基板2に実装しているときには、他方のマルチ装着ヘッド110は部品供給部102から部品を取り出し、逆に、他方のマルチ装着ヘッド110が部品を基板2に実装しているときには、一方のマルチ装着ヘッド110は部品供給部102から部品を取り出す。
部品認識カメラ120は、マルチ装着ヘッド110の各ヘッド112に吸着されている部品を下方から撮像する。この撮像結果は、ヘッド112と部品との間のずれを示し、次のターン以降でそのずれを抑えるための部品吸着位置の決定に利用される。
2つの部品供給部102は、2つの搬送路106を挟んで互いに対向するように配設されている。
部品供給部102は、部品テープが巻回された部品リールからその部品テープを引き出すための部品カセット200を複数個備えて構成されている。
図3は、部品リールおよび部品テープを示す図である。
部品リール210には、部品Pを保持する部品テープ211が巻回されている。部品テープ211は、例えば、複数個の収納凹部212aが形成されたキャリアテープ212と、その収納凹部212aに部品Pが収納された状態でキャリアテープ212上面に貼り付けられるカバーテープ213とを備える。つまり、複数の部品Pは、キャリアテープ212とカバーテープ213とによって包装される。
なお、部品テープ211を、図3に示すようなキャリアテープ212およびカバーテープ213以外の部材から構成してもよい。例えば、キャリアテープ212の代わりに、部品を粘着固定させる粘着テープや紙テープなどを使用してもよい。
図4は、部品供給部102に備えられた部品カセット200と部品リール210を示す図である。
部品カセット200は、上述のような部品リール210から部品テープ211をその先端側から引き出し、引き出された部品テープ211のカバーテープ213をキャリアテープ212から引き剥がす。そして、部品カセット200は、カバーテープ213が剥がされて露出された収納凹部212aの部品Pを1つずつ、部品カセット200の部品供給口201の下方に配置する。
その結果、キャリアテープ212の収納凹部212aに収納されている部品Pが、部品カセット200の部品供給口201から順次現れて、マルチ装着ヘッド110に吸着される部品として供給される。
図5は、マルチ装着ヘッド110の各ヘッド112と部品供給部102の各部品カセット200との位置関係を示す図である。
ヘッド112は、Z軸モータ(図示せず)の駆動によって、上下方向、つまりZ軸方向(X軸方向およびY軸方向に垂直な方向)に移動するとともに、θ軸モータ(図示せず)の駆動によって、ヘッド112のZ軸方向に沿う回転軸Cを中心に回転する。また、ヘッド112の先端には、上述のように、吸着対象の部品に適したノズル113が取り付けられる。
そして、マルチ装着ヘッド110と部品供給部102とは、マルチ装着ヘッド110のX軸方向およびY軸方向の移動(水平移動)によって、マルチ装着ヘッド110が部品供給部102の複数の部品を同時吸着し得るように構成されている。
つまり、マルチ装着ヘッド110のX軸方向に沿って配列された互いに隣り合うヘッド112の間隔dは、X軸方向に沿って配列された互いに隣り合う部品カセット200の部品供給口201の間隔と等しい。
したがって、マルチ装着ヘッド110は、水平方向に移動することで、X軸方向に沿って配列された4つのヘッド112(ノズル113)を、X軸方向に沿って配列された4つの部品カセット200の部品供給口201に対向させることができる。
その結果、部品カセット200の部品Pが正しく配置されていれば、4つのヘッド112はそれぞれ、同時に下降してノズル113の先端を部品Pの上面に当接させ、その部品Pを吸着して上昇することができる。つまり、マルチ装着ヘッド110は、4つの部品Pを同時吸着して部品供給部102から取り出すことができる。
このような本実施の形態における部品実装機100(部品実装ユニット100a,100b)では、後述する準同時吸着および準同時実装が行われるときに、吸着順または実装順で先のヘッド112の下降と同時に、マルチ装着ヘッド110の動作時間に応じた待機高さまで、次のヘッド112を下降させておくことに特徴がある。上述のマルチ装着ヘッド110の動作時間は、マルチ装着ヘッド110の水平移動および次のヘッド112の回転に必要とされる時間である。
図6は、本実施の形態における部品実装ユニット100aの制御系の機能構成を示す図である。なお、図6では、部品実装ユニット100aのうち、1つのマルチ装着ヘッド110を用いて部品実装を行うために必要な機能構成のみを示す。
部品実装ユニット100aは、制御部130と、部品実装データ記憶部131と、部品配列データ記憶部132と、基板認識カメラ111と、部品認識カメラ120と、ずれ量検出部135と、待機高さ算出部136と、動作時間特定部137と、準同時吸着判定部138と、準同時実装判定部139と、モータ制御部140と、X軸モータ141と、Y軸モータ142と、Z軸モータ143と、θ軸モータ144とを備えている。
X軸モータ141は、上述のように、マルチ装着ヘッド110をX軸テーブル104aに沿ってX軸方向に移動させる。
Y軸モータ142は、上述のように、X軸テーブル104a、つまりそのX軸テーブル104aに取り付けられたマルチ装着ヘッド110を、Y軸テーブル105a,105bに沿ってY軸方向に移動させる。
Z軸モータ143は、上述のように、マルチ装着ヘッド110の各ヘッド112をZ軸方向に移動させ、θ軸モータ144は、マルチ装着ヘッド110の各ヘッド112を回転軸Cを中心に回転させる。
モータ制御部140は、制御部130からの指示に基づいて、X軸モータ141、Y軸モータ142、Z軸モータ143およびθ軸モータ144を駆動する。
部品実装データ記憶部131は、基板2に対して実装すべき部品Pの名称や実装点、向きなどを示す部品実装データを予め記憶している。なお、この実装点は、部品Pが実装されるべき基板2上の位置を示す。
部品配列データ記憶部132は、部品供給部102から供給される部品Pの名称や位置を示す部品配列データを予め記憶している。
ずれ量検出部135は、部品認識カメラ120による撮像結果に基づいて、ヘッド112に吸着された部品Pのずれ量を、その部品Pを供給した部品カセット200に対応付けて検出する。このような、部品Pのずれ量は、マルチ装着ヘッド110の部品吸着位置およびヘッド112の部品吸着角度を調整するために利用される。ここで、部品吸着位置とは、マルチ装着ヘッド110が部品供給部102から部品Pを吸着するためにそのマルチ装着ヘッド110が位置決めされるべきXY平面上の位置である。部品吸着角度とは、マルチ装着ヘッド110のヘッド112が部品供給部102から部品Pを吸着するためにそのヘッド112が回転軸Cを中心に回転すべき角度である。また、部品Pのずれ量は、部品Pを吸着しているヘッド112のノズル113に対する水平方向のずれ幅と、そのノズル113に対する部品Pの傾き(ずれた角度)とを含む。
例えば、所定の部品カセット200から部品Pが取り出されて、その部品Pに対するずれ量が検出されると、今後、その所定の部品カセット200から部品Pが取り出されるときにはそのずれ量が解消されるように、マルチ装着ヘッド110の部品吸着位置と、ヘッド112の部品吸着角度とが調整される。
準同時吸着判定部138は、部品実装データや部品配列データなどに基づいて同時吸着を行うべきと決定された複数のヘッド112に対して、準同時吸着を行わせるべきか否かを判定する。ここで、準同時吸着とは、同時吸着を行うべきと予定されている複数のヘッド112が、上述の部品Pのずれや傾きによって同時吸着を行うことができず、それらのヘッド112がマルチ装着ヘッド110の微小距離の水平移動を伴って部品Pを吸着することをいう。
準同時実装判定部139は、部品Pを吸着しているマルチ装着ヘッド110に対して、準同時実装が行われるか否かを判定する。ここで、準同時実装とは、部品Pを吸着している複数のヘッド112が、マルチ装着ヘッド110の微小距離の水平移動を伴って、その部品Pを基板2上に実装することをいう。
動作時間特定部137は、準同時吸着または準同時実装が行われるときの、マルチ装着ヘッド110の動作時間を特定する。
つまり、準同時吸着が行われるときには、動作時間特定部137は、マルチ装着ヘッド110の先に吸着すべきヘッド112が部品Pを吸着してから、次に吸着すべきヘッド112の上下動だけによって他の部品Pが吸着され得るような状態となるまでに要するマルチ装着ヘッド110の動作時間を特定する。具体的に、動作時間特定部137は、先のヘッド112が部品Pを吸着してから、次のヘッド112を準同時吸着させるために、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に移動すべきX方向移動時間と、マルチ装着ヘッド110がY軸方向に移動すべきY方向移動時間と、次のヘッド112が回転軸Cを中心に回転すべき回転時間とを特定する。そして、動作時間特定部137は、X方向移動時間、Y方向移動時間、および回転時間のうち最も長い時間を、マルチ装着ヘッド110の動作時間として特定する。
また、準同時実装が行われるときには、動作時間特定部137は、マルチ装着ヘッド110の先に実装すべきヘッド112が部品Pを実装してから、次に実装すべきヘッド112の上下動だけによって他の部品Pが実装され得るような状態となるまでに要するマルチ装着ヘッド110の動作時間を特定する。具体的に、動作時間特定部137は、先のヘッド112が部品Pを基板2に実装してから、次のヘッド112を準同時実装させるために、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に移動すべきX方向移動時間と、マルチ装着ヘッド110がY軸方向に移動すべきY方向移動時間と、次のヘッド112が回転軸Cを中心に回転すべき回転時間とを特定する。そして、動作時間特定部137は、X方向移動時間、Y方向移動時間、および回転時間のうち最も長い時間を、マルチ装着ヘッド110の動作時間として特定する。
待機高さ算出部136は、準同時吸着または準同時実装が行われるときの、マルチ装着ヘッド110の次に吸着または実装すべきヘッド112のZ軸方向の待機高さを、動作時間特定部137によって特定された動作時間に基づいて算出する。
つまり、準同時吸着が行われるときには、待機高さ算出部136は、先に吸着すべきヘッド112が部品Pを吸着したときに、次に吸着すべきヘッド112が待機しておくべきそのヘッド112の高さを待機高さとして、そのときの動作時間に基づいて特定する。ここでの待機高さは、部品供給部102の各部品供給口201に配列された部品Pの表面から、ヘッド112のノズル113下端までのZ軸方向の距離として示される。
また、準同時実装が行われるときには、待機高さ算出部136は、先に実装すべきヘッド112が部品Pを実装したときに、次に実装すべきヘッド112が待機しておくべきそのヘッド112の高さを待機高さとして、そのときの動作時間に基づいて特定する。ここでの待機高さは、基板2の表面から、ヘッド112のノズル113に吸着された部品Pの下面までのZ軸方向の距離として示される。
図7は、待機高さ算出部136が待機高さを算出する方法を説明するための説明図である。
待機高さ算出部136は、動作時間特定部137で特定された動作時間taに対して、予め定められた余裕時間tbを加算する。そして、待機高さ算出部136は、その加算結果である合計時間の間に、次のヘッド112が下降し得る距離を待機高さh0として算出する。つまり、待機高さ算出部136は、待機高さh0=((動作時間ta+余裕時間tb)×ヘッド112の下降速度v)を算出する。また、待機高さ算出部136は、計算の結果、待機高さh0が基準高さh1より高くなる場合には、その待機高さをh1とする。つまりこの場合には、従来と同様にヘッド112が動くこととなる。
なお、基準高さh1とは、吸着時および実装時において通常配置されるべきヘッド112の高さである。この基準高さh1は、吸着時には、待機高さh0と同様、部品供給部102の各部品供給口201に配列された部品Pの表面から、ヘッド112のノズル113下端までのZ軸方向の距離として示される。さらに、この基準高さh1は、実装時には、待機高さh0と同様、基板2の表面から、ヘッド112のノズル113に吸着された部品Pの下面までのZ軸方向の距離として示される。
したがって、待機高さh0は、図7に示すように、時間ta1〜ta4の間で動作時間taに比例し、動作時間taの増加に伴って単調に増加する。そして、動作時間taが時間ta4以上になる範囲では、待機高さh0は基準高さh1となる。
なお、待機高さ算出部136は、動作時間taが時間ta1〜ta2の間では、待機高さh0を高さh01として算出し、動作時間taが時間ta2〜ta3の間では、待機高さh0を高さh02として算出し、動作時間taが時間ta3〜ta4の間では、待機高さh0を高さh03として算出してもよい。また、吸着時において時間ta4の間に、マルチ装着ヘッド112がX軸方向またはY軸方向に移動する距離は、例えば1mmである。
制御部130は、部品実装データおよび部品配列データなどから、例えば生産性(スループット)が向上するような各部品Pの実装順序や、1ターンで実装されるべき部品Pのグループ(以下、タスクという)などを決定する。さらに、制御部130は、タスクごとに、同時吸着可能な複数のヘッド112を特定する。
また、制御部130は、マルチ装着ヘッド110に部品Pを吸着させるときには、部品供給部102から供給される吸着対象の部品Pの座標を、部品配列データから特定して、その部品Pの座標からマルチ装着ヘッド110の部品吸着位置を算出する。そして、制御部130は、その部品吸着位置をモータ制御部140に通知することで、モータ制御部140にマルチ装着ヘッド110の駆動を指示する。ここで、制御部130は、ずれ量検出部135によってずれ量が検出されているときには、そのずれ量に応じて部品吸着位置と部品吸着角度を調整し、その調整済みの部品吸着位置と部品吸着角度とをモータ制御部140に通知する。
その結果、モータ制御部140は、その調整された部品吸着位置に応じて各モータ141〜144を制御することにより、適切な位置にマルチ装着ヘッド110を移動させるとともに、ヘッド112を適切な角度に回転させて、そのマルチ装着ヘッド110のヘッド112に部品Pを正確に吸着させる。
なお、制御部130は、マルチ装着ヘッド110に複数の部品Pを同時吸着させるときには、同時吸着対象の部品Pを格納している各部品カセット200に対してずれ量検出部135で検出されたずれ量を取得し、それらのずれ量に基づいて、同時吸着対象の全ての部品Pのずれ量が今後解消されるような同時吸着用の部品吸着位置および部品吸着角度を算出する。
また、制御部130は、マルチ装着ヘッド110に部品Pを基板2に実装させるときには、基板2上に実装されるべき部品Pの実装点や向きを、部品実装データから特定する。そして、制御部130は、その実装点および向きをモータ制御部140に通知することで、モータ制御部140にマルチ装着ヘッド110の駆動を指示する。
その結果、モータ制御部140は、各モータ141〜144を制御することにより、まず、マルチ装着ヘッド110を基板2上に移動させて、マルチ装着ヘッド110の基板認識カメラ111に基板2の基板認識用のマークを撮像させる。そして、モータ制御部140は、そのマークの位置を基準にして、制御部130から通知された実装点上に、ヘッド112に吸着された部品Pが位置するように、マルチ装着ヘッド110を移動させる。このとき、モータ制御部140は、ヘッド112に吸着された部品Pの向きが、制御部130から通知された向きに向くように、そのヘッド112を回転させる。そして、モータ制御部140は、そのヘッド112を下降させることによって、ヘッド112に吸着されている部品Pを実装点に正確に実装させる。
なお、本実施の形態では、第1の下降手段は、制御部130、モータ制御部140およびZ軸モータ143から構成され、第2の下降手段および実装手段は、制御部130、モータ制御部140、および各モータ141〜144から構成される。
図8は、本実施の形態における同時吸着と準同時吸着を説明するための説明図である。
例えば、制御部130は、図8の(a)に示すように、部品実装データおよび部品配列データなどに基づいて、マルチ装着ヘッド110のX軸方向に配列する4つのヘッド112が、連続して配列された4つの部品カセット200(部品カセット200a,200b,200c,200d)から供給される部品Pを同時吸着すべきと判断する。
ここで、その4つの部品カセット200から供給される各部品Pは、それぞれ部品供給口201内で予め定められた位置や向きからずれることなく配置されている。
したがって、制御部130は、各部品カセット200に対して0を示すずれ量をずれ量検出部135から取得する。その結果、制御部130は、部品配列データなどに基づいて、X軸方向に配列された4つのヘッド112のノズル113の先端がそれぞれ4つの部品Pの中心に対向するような、マルチ装着ヘッド110の部品吸着位置を算出する。
なお、図8では、4つのノズル113の先端中心を結ぶ直線L1を、部品供給部102上に投影させることによって、マルチ装着ヘッド110の位置を示している。つまり、制御部130は、全てのずれ量が0のときには、上述の投影された直線L1が4つの部品Pの中心に重なるような、マルチ装着ヘッド110の部品吸着位置を算出する。
ここで、準同時吸着判定部138は、制御部130によって算出された部品吸着位置と、ずれ量検出部135によって各部品カセット200に対して算出されたずれ量とに基づいて、同時吸着すべきとする先の判断を変更すべきか否か、即ち、準同時吸着すべきか否かを判定する。上述の例の場合には、全てのずれ量が0であるため、準同時吸着判定部138は準同時吸着すべきでないと判定する。
制御部130は、準同時吸着判定部138の準同時吸着すべきでないという判定を受けると、算出された部品吸着位置をモータ制御部140に通知する。
その結果、マルチ装着ヘッド110が上述の部品吸着位置に配置されたときには、マルチ装着ヘッド110の4つのヘッド112は同時に下降して4つの部品Pを同時吸着することができる。
一方、制御部130は、ずれ量検出部135で算出された各部品カセット200に対する水平方向のずれ量が0でない場合には、上述のように、同時吸着用の部品供給位置を算出する。つまり、制御部130は、部品吸着位置を調整して、図8の(b)に示すように、部品供給部102に投影される直線L1と各部品Pの中心との間の距離da,db,dc,ddができるだけ小さくなるような部品吸着位置を算出する。
準同時吸着判定部138は、制御部130によって算出された部品吸着位置と、各部品カセット200に対して検出されたずれ量とに基づいて、距離da,db,dc,ddが予め定められた閾値以下に収まっているか否かを判別する。つまり、準同時吸着判定部138は、閾値以下に収まっていれば、同時吸着すべきとする先の判断を変更せず、準同時吸着すべきでないと判定し、閾値以下に収まっていなければ、同時吸着すべきとする先の判断を変更し、準同時吸着すべきと判定する。なお、上述の閾値は、例えば、部品Pの寸法の10%の長さであって、その部品Pの寸法が0.5mmであれば、その閾値は0.05mmである。
ここで、制御部130は、上述と同様、準同時吸着判定部138の準同時吸着すべきでないという判定を受けると、上述のように調整された部品吸着位置をモータ制御部140に通知する。
その結果、マルチ装着ヘッド110が上述の部品吸着位置に配置されたときには、マルチ装着ヘッド110の4つのヘッド112は同時に下降して4つの部品Pを同時吸着することができる。また、このとき、ヘッド112のノズル113と部品Pとの間のずれ幅は、上記閾値以下となる。
ところで、ずれ量検出部135で算出された各部品カセット200に対する水平方向のずれ量の中でばらつきが大きくなると、制御部130によって上述のように調整される部品吸着位置では、上述の距離da,db,dc,ddを閾値以下に収めることができない場合が生じる。
このような場合、準同時吸着判定部138は、同時吸着すべきとする先の判断を変更し、準同時吸着すべきと判定する。
例えば、図8の(c)に示すように、部品カセット200bの部品Pが、他の部品カセット200a,200c,200dの部品Pから大きく離れている場合には、上述のように算出される1つの部品吸着位置では、全ての距離da,db,dc,ddを閾値以下に収めることができない。
そこで、制御部130は、準同時吸着判定部138によって準同時吸着すべきという判定を受けると、複数の部品吸着位置を算出し直す。つまり、制御部130は、同時吸着すべきとされた4つのヘッド112を、実際に同時吸着可能な複数のグループに分けて、そのグループごとの部品吸着位置を算出する。このような部品吸着位置の算出は、準同時吸着判定部138によって距離da,db,dc,ddが閾値以下に収まると判断されるまで、繰り返し行われる。
その結果、例えば、制御部130は、図8の(c)に示すように、部品供給部102に投影される直線L1aと各部品Pの中心との間の距離da,dc,ddが閾値以下に収まるような第1の部品吸着位置を算出する。さらに、制御部130は、部品供給部102に投影される直線L1bと部品カセット200bの部品Pの中心との間の距離dbが閾値以下に収まるような第2の部品吸着位置を算出する。
すなわち、制御部130は、4つのヘッド112を2つのグループに分け、部品カセット200a,200c,200dに対応する3つのヘッド112を同時吸着可能な1つのグループとし、部品カセット200bに対応する1つのヘッド112を同時吸着可能な1つのグループとする。なお、1つのヘッド112だけでは同時吸着は不可能であるが、1つのヘッド112だけであっても形式的に上記グループに分けられる。
これにより、マルチ装着ヘッド110は上述の第1の部品吸着位置に移動して、そこで3つのヘッド112が同時に下降して部品カセット200a,200c,200dの3つの部品Pを同時吸着する。その後、マルチ装着ヘッド110は上述の第2の部品吸着位置に微小距離だけ水平移動して、そこで1つのヘッド112が部品カセット200bの部品Pを吸着する。このようにして、4つのヘッド112による準同時吸着が行われる。
図9は、マルチ装着ヘッド110が4つの部品Pを準同時吸着する動きを説明するための説明図である。なお、図8では、部品カセット200から供給される部品の位置がY軸方向にずれている場合に行われる準同時吸着の例を示したが、図9では、部品の位置がX軸方向にずれている場合に行われる準同時吸着の例を示す。
まず、マルチ装着ヘッド110は、制御部130によって算出された部品吸着位置に水平移動することで、図9の(a)に示すように、3つのヘッド112(ヘッド112a,112b,112c)のノズル113の先端中心を、3つの部品カセット200(部品カセット200a,200b,200c)から供給される部品Pの中心に対向させる。
このとき、4つのヘッド112(ヘッド112a,112b,112c,112d)は、部品供給部102の各部品Pの表面からZ軸方向に基準高さh1によって示される高さにある。つまり、各部品Pの表面から、4つのヘッド112のノズル113の先端までの高さは、基準高さh1に統一されている。例えば、基準高さh1は8mmである。また、このとき、ヘッド112dのノズル113の先端中心は、部品カセット200dの部品Pの中心と対向することなく、X軸方向に微小距離d1だけずれている。
そして、ヘッド112a,112b,112cは、図8の(b)に示すように、それぞれ部品Pに向けて下降するとともに、ヘッド112dは待機高さh0まで下降する。つまり、部品Pの表面からヘッド112dのノズル113の先端までの高さが待機高さh0となる。
次に、マルチ装着ヘッド110は、図8の(c)に示すように、ヘッド112a,112b,112cがそれぞれ部品Pを吸着して上昇するタイミングで、X軸方向に微小距離d1だけ移動する。このとき、ヘッド112dは、マルチ装着ヘッド110の移動と同時に下降して、部品カセット200dの部品Pを吸着する。なお、部品カセット200dの部品Pが傾いているときには、ヘッド112dは、マルチ装着ヘッド110の移動と同時に回転する。
図10は、4つのヘッド112の上下動とマルチ装着ヘッド110の水平移動との動作タイミングを示す図である。なお、図10の(a)は、図9に示すヘッド112aの上下動を示し、図10の(b)は、図9に示すヘッド112bの上下動を示す。また、図10の(c)は、図9に示すヘッド112cの上下動を示し、図10の(d)は、図9に示すヘッド112dの上下動を示す。さらに、図10の(e)は、図9に示すマルチ装着ヘッド110の水平移動を示す。
ヘッド112a,112b,112cは、図10の(a),(b),(c)に示すように、それぞれ時刻t1に基準高さh1からの下降を開始して、時刻t3に各ヘッドのノズル113の先端が部品Pに当接する。そして、ヘッド112a,112b,112cは、それぞれ部品Pを吸着して時刻t4に上昇を開始し、時刻t9に元の基準高さh1に戻る。
一方、ヘッド112dは、図10の(d)に示すように、ヘッド112a,112b,112cと同時に時刻t1に、基準高さh1からの下降を開始して、時刻t2に待機高さh0に到達する。そして、ヘッド112dは、その待機高さh0で暫く待機し、ヘッド112a,112b,112cが上昇を開始した直後の時刻t5に、再び下降を開始する。この待機高さh0は、待機高さ算出部136によって、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に微小距離d1だけ移動するX方向移動時間に基づいて算出された高さである。
ここで、マルチ装着ヘッド110は、図10の(e)に示すように、ヘッド112dの待機高さh0からの下降と同時に、つまり時刻t5に、部品吸着位置X1から部品吸着位置X2へのX軸方向の移動を開始する。そして、マルチ装着ヘッド110は、部品吸着位置X1から微小距離d1だけ移動し、時刻t6に、部品吸着位置X2に到達する。
ヘッド112dのノズル113は、図10の(d)に示すように、マルチ装着ヘッド110が部品吸着位置X2に到達した直後の時刻t7に、部品カセット200dの部品Pに当接する。そして、ヘッド112dは、部品Pを吸着して時刻t8に上昇を開始し、時刻t11に元の基準高さh1に戻る。
ところで従来では、ヘッド112dは、図10の(d)の破線に示すように、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に移動を開始する時刻t5に、基準高さh1からの下降を開始する。その結果、マルチ装着ヘッド110が時刻t6に既に部品吸着位置X2に到達しているにも関わらず、ヘッド112dは下降を継続して行う。その結果、ヘッド112dのノズル113は、時刻t6から暫く経過した時刻t10に、部品カセット200dの部品Pに当接する。
つまり、本実施の形態では、時刻t7から時刻t10までの時間だけ、1ターンにおける部品吸着時間を短縮することができる。
図11は、本実施の形態における部品実装ユニット100aが部品実装を行う動作を示すフローチャートである。なお、図11は、部品Pを吸着する動作を詳細に示す。
まず、制御部130は、部品実装データおよび部品配列データなどに基づいて、マルチ装着ヘッド110の8つのヘッド112から、同時吸着すべき複数のヘッド112を、予め同時吸着するように規定されたヘッド(規定同時吸着ヘッド)として選出する(ステップS100)。
次に、ずれ量検出部135は、部品認識カメラ120による撮像結果に基づいてずれ量を検出する(ステップS102)。そして、準同時吸着判定部138は、ステップS100で選出された複数の規定同時吸着ヘッドに対して、ステップS102で検出されたずれ量に基づき、準同時吸着するべきか否かを判定する(ステップS104)。
ここで、準同時吸着するべきでない、つまり予め規定されていた通りに同時吸着させるべきと判定されたときには(ステップS104のN)、制御部130は、ステップS102で検出されたずれ量に応じて、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させる(ステップS106)。つまり、制御部130は、ステップS102で検出されたずれ量に応じた部品吸着位置にマルチ装着ヘッド110を水平移動させるとともに、そのずれ量に応じた部品吸着角度に規定同時吸着ヘッドを回転させる。そして、制御部130は、全ての規定同時吸着ヘッドに同時吸着動作をさせる(ステップS108)。つまり、制御部130は、全ての規定同時吸着ヘッドを同時に基準高さh1から下降させて、それぞれの規定同時吸着ヘッドに部品Pを吸着させる。
一方、ステップS104で、準同時吸着するべき、つまり実際に同時吸着することができないと判定されたときには(ステップS104のY)、制御部130は、ステップS100で選出された複数の規定同時吸着ヘッドを準同時吸着ヘッドとして扱う。そして、制御部130は、その複数の準同時吸着ヘッドを、上述のずれ量に基づいて実際に同時吸着可能とされる複数のグループ(同時吸着グループ)に分類する(ステップS110)。
以下、全ての準同時吸着ヘッドが複数の同時吸着グループに分類され、各同時吸着グループには複数のヘッド112が属することを前提に説明する。
制御部130は、吸着順で先の同時吸着グループによる同時吸着のために、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させる(ステップS112)。つまり、制御部130は、先の同時吸着グループのずれ量に応じた部品吸着位置にマルチ装着ヘッド110を水平移動させるとともに、先の同時吸着グループの各ヘッド112を、そのずれ量に応じた部品吸着角度に回転させる。
ここで、動作時間特定部137は、吸着順で次の同時吸着グループによる同時吸着のために必要なマルチ装着ヘッド110の動作時間を特定する(ステップS114)。動作時間が特定されると、待機高さ算出部136は、次の同時吸着グループの待機高さh0をその動作時間に応じて算出する(ステップS116)。
次に、制御部130は、先の同時吸着グループに同時吸着動作をさせると同時に、次の同時吸着グループを含む他の同時吸着グループを、ステップS116で算出された待機高さh0まで下降させる(ステップS118)。つまり、先の同時吸着グループ以外の他の全ての同時吸着グループに属するヘッド112は、先の同時吸着グループに属するヘッド112の下降と同時に下降を開始して、上述の待機高さh0で停止する。
ここで、制御部130は、さらに次の同時吸着グループがあるか否かを判別する(ステップS120)。さらに次の同時吸着グループがあると判別されたときには(ステップS120のY)、制御部130、動作時間特定部137および待機高さ算出部136は、ステップS112からの動作を繰り返し実行する。なお、このとき、次のステップS112〜S118の実行処理は、前回のステップS112〜S118の実行処理における「次の同時吸着グループ」が「先の同時吸着グループ」に更新され、「さらに次の同時吸着グループ」が「次の同時吸着グループ」に更新されて実行される。また、ステップS112からの動作が繰り返し実行される場合、ステップS112の動作と、ステップS114,S116,S118の動作とは並列に実行される。さらに、ステップS112からの動作が繰り返し実行される場合に、既に待機高さまで下降された同時吸着グループに対して、ステップS116で、その元の待機高さ以上の待機高さが算出されたときには、ステップS118では、制御部130は、その同時吸着グループを上下動させずに、元の待機高さに停止させておく。
一方、ステップS120で、さらに次の同時吸着グループがないと判別されたときには(ステップS120のN)、制御部130は、次の同時吸着グループのために、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させ、次の同時吸着グループに同時吸着動作をさせる(ステップS122)。つまり、制御部130は、次の同時吸着グループのずれ量に応じた部品吸着位置にマルチ装着ヘッド110を微小距離だけ水平移動させるとともに、次の同時吸着グループの各ヘッド112を、そのずれ量に応じた部品吸着角度に回転させる。さらに、制御部130は、上述の水平移動および回転と並行して、次の同時吸着グループの各ヘッド112を待機高さh0から同時に下降させて各ヘッド112に部品Pを吸着させる。
最後に、制御部130は、ステップS108,S118,S122で部品Pを吸着したマルチ装着ヘッド110を、基板2上に移動させ、そのマルチ装着ヘッド110の各ヘッド112に部品Pを実装させる(ステップS124)。
なお、上述の例では、ステップS110で、全ての準同時吸着ヘッドが複数の同時吸着グループに分類され、各同時吸着グループには複数のヘッド112が属するとした。しかし、他の何れのヘッド112とも同時吸着を行えないような1つのヘッド112を、1つの同時吸着グループに分類してもよい。この場合、ステップS118,S122における同時吸着グループの吸着動作は、同時吸着動作ではなく、単一の吸着動作となる。
また、上述の例では、ステップS118で、次の同時吸着グループを含む全ての同時吸着グループを、次の同時吸着グループのために算出された待機高さh0まで下降させたが、次の同時吸着グループだけをその待機高さh0まで下降させてもよい。
ここで、図11に示すステップS124における実装動作について、以下詳細に説明する。
図12は、本実施の形態における準同時実装を説明するための説明図である。
部品実装ユニット100aの制御部130は、マルチ装着ヘッド110に1ターン分の部品Pが吸着されると、各部品Pが予め決定された実装順序で部品実装データの示す実装点に実装されるように、マルチ装着ヘッド110を基板2上の各部品実装位置に移動させる。なお、部品実装位置とは、1つのヘッド112が部品Pを実装点に実装するためにマルチ装着ヘッド110が位置決めされるべき、そのマルチ装着ヘッド110の水平方向の位置をいう。さらに、制御部130は、部品Pを吸着しているヘッド112を、部品実装データの示す実装点の向きに応じた部品実装角度に回転させる。部品実装角度とは、マルチ装着ヘッド110のヘッド112が、部品実装データの示す実装点の向きに部品Pを向けて実装するために、そのヘッド112が回転軸Cを中心に回転すべき角度である。
ここで、準同時実装判定部139(図6参照)は、部品実装データに基づいて、複数の部品Pを吸着しているマルチ装着ヘッド110に対して、準同時実装が行われるか否かを判定する。
例えば、準同時実装判定部139は、複数の部品Pを吸着しているマルチ装着ヘッド110に対して、実装順で先のヘッド112による部品実装のための部品実装位置と、次のヘッド112による部品実装のための部品実装位置との間のX軸方向およびY軸方向の距離が、所定の閾値(以下、準同時実装判定値という)以下である場合に、準同時実装が行われると判定する。なお、準同時実装判定値は例えば6mmである。
制御部130は、準同時実装判定部139によって準同時実装が行われると判定されると、マルチ装着ヘッド110の部品Pを吸着しているヘッド112を、準同時実装が行われるグループ(準同時実装グループ)に分類する。例えば、制御部130は、上述の先のヘッド112と次のヘッド112とを、1つの準同時実装グループに分類する。
具体的に、マルチ装着ヘッド110の8つのヘッド112はそれぞれ、図12に示すように、部品Pを吸着している。このとき、制御部130は、上述の準同時実装判定値などを用いて、その8つのヘッド112を、「1」で示される準同時実装グループと、「5」で示される準同時実装グループとに分類する。また、制御部130は、「2」で示されるヘッド112と、「3」で示されるヘッド112と、「4」で示されるヘッド112とは、準同時実装グループに属さないと判別する。
そして、制御部130は、「1」で示される準同時実装グループの最初のヘッド112に部品実装をさせるため、そのヘッド112に応じた部品実装位置にマルチ装着ヘッド110を移動させる。そして、制御部130は、その部品実装位置から準同時実装を開始させて、「1」で示される準同時実装グループに含まれる全てのヘッド112に部品実装をさせる(図12中の(1)参照)。
つまり、実装順で最初のヘッド112は、上述の部品実装位置で下降することで部品実装を行う。その後、マルチ装着ヘッド110は、実装順で次のヘッド112に応じた部品実装位置へ微小距離(準同時実装判定値以下)だけ移動する。次のヘッド112は、そのマルチ装着ヘッド110の移動と並行して、回転および下降することで部品実装を行う。その後、上述と同様、マルチ装着ヘッド110は、実装順でさらに次のヘッド112に応じた部品実装位置へ微小距離(準同時実装判定値以下)だけ移動する。さらに次のヘッド112は、そのマルチ装着ヘッド110の移動と並行して、回転および下降することで部品実装を行う。このようにして、準同時実装が行われる。
また、本実施の形態では、このような準同時実装が行われるときには、制御部130は、先のヘッド112が下降して部品実装を行うときに、次のヘッド112を上述の待機高さまで下降させておく。この待機高さは、部品実装位置間の微小距離などに基づいて待機高さ算出部136によって算出される。これにより、本実施の形態では、部品実装時間を短縮することができるのである。
次に、制御部130は、「2」で示されるヘッド112に応じた部品実装位置と、「3」で示されるヘッド112に応じた部品実装位置と、「4」で示されるヘッド112に応じた部品実装位置とへ、順にマルチ装着ヘッド110を移動させる。そして、制御部130は、その各部品実装位置でヘッド112を下降させてそのヘッド112に部品実装をさせる(図12中の(2),(3),(4)参照)。
さらに、制御部130は、「5」で示される準同時実装グループの最初のヘッド112に部品実装をさせるため、そのヘッド112に応じた部品実装位置にマルチ装着ヘッド110を移動させる。そして、制御部130は、上述と同様、その部品実装位置から準同時実装を開始させて、「5」で示される準同時実装グループに含まれる全てのヘッド112に部品実装をさせる(図12中の(5)参照)。
図13は、準同時実装グループに属する3つのヘッド112が準同時実装する動きを説明するための説明図である。なお、図13では、図12の「1」で示される準同時実装グループの3つのヘッド112が準同時実装する動きを示す。
まず、マルチ装着ヘッド110は、制御部130によって算出された部品実装位置に水平移動することで、図13の(a)に示すように、ヘッド112aに吸着された部品Pを、基板2上のその部品Pに対応する実装点に対向させる。
このとき、4つのヘッド112(ヘッド112a,112b,112c,112d)は、基板2の表面からZ軸方向に基準高さh1によって示される高さにある。つまり、基板2の表面から、4つのヘッド112に吸着された部品Pの下面までの高さは、基準高さh1に統一されている。例えば、基準高さh1は8mmである。
そして、ヘッド112aは、図13の(b)に示すように、基板2上の実装点に向けて下降するとともに、ヘッド112c,112dは待機高さh02まで下降する。つまり、基板2の表面からヘッド112c,112dに吸着された部品Pの下面までの高さが待機高さh02となる。なお、ヘッド112bは、「1」で示される準同時実装グループに属していないため、基準高さh1に維持されている。
このときの待機高さh02は、実装順で次のヘッド112cが部品実装するための部品実装位置へマルチ装着ヘッド110が移動する距離(図13の(c)に示す距離d11)などに基づいて算出される。
次に、マルチ装着ヘッド110は、図13の(c)に示すように、ヘッド112aが部品Pを実装して上昇するタイミングで、次の部品実装位置へX軸方向(図13の左向き)に距離d11だけ移動する。このとき、ヘッド112cは、マルチ装着ヘッド110の移動と同時に回転および下降して、吸着している部品Pを基板2上の実装点に実装する。さらに、ヘッド112dは、ヘッド112cの下降と同時に待機高さh01まで下降する。つまり、基板2の表面からヘッド112dに吸着された部品Pの下面までの高さが待機高さh01となる。
このときの待機高さh01は、実装順でさらに次のヘッド112dが部品実装するための部品実装位置へマルチ装着ヘッド110が移動する距離(図13の(d)に示す距離d12)などに基づいて算出される。
そして、マルチ装着ヘッド110は、図13の(d)に示すように、ヘッド112cが部品Pを実装して上昇するタイミングで、さらに次の部品実装位置へX軸方向(図13の右向き)に距離d12だけ移動する。このとき、ヘッド112dは、マルチ装着ヘッド110の移動と同時に回転および下降して、吸着している部品Pを基板2上の実装点に実装する。
図14は、準同時実装グループに属する3つのヘッド112の上下動とマルチ装着ヘッド110の水平移動との動作タイミングを示す図である。なお、図14の(a)は、図13に示すヘッド112aの上下動を示し、図14の(b)は、図13に示すヘッド112cの上下動を示し、図14の(c)は、図13に示すヘッド112dの上下動を示す。さらに、図14の(d)は、図13に示すマルチ装着ヘッド110の水平移動を示す。
ヘッド112aは、図14の(a)に示すように、時刻t1に基準高さh1からの下降を開始して、時刻t3に、そのヘッド112aに吸着されている部品Pの下面を基板2上の実装点に当てる。そして、ヘッド112aは、その部品Pを実装点に実装して時刻t4に上昇を開始し、時刻t10に元の基準高さh1に戻る。
ヘッド112cは、図14の(b)に示すように、ヘッド112aと同時に時刻t1に、基準高さh1からの下降を開始して、時刻t2に待機高さh02に到達する。そして、ヘッド112cは、その待機高さh02で暫く待機し、ヘッド112aが上昇を開始した直後の時刻t5に、再び下降を開始する。
ここで、マルチ装着ヘッド110は、図14の(d)に示すように、ヘッド112cの待機高さh02からの下降と同時に、つまり時刻t5に、部品実装位置X3から部品実装位置X1へのX軸方向の移動を開始する。そして、マルチ装着ヘッド110は、部品実装位置X3から微小距離d11だけ移動し、時刻t7に、部品実装位置X1に到達する。
ヘッド112cは、図14の(b)に示すように、マルチ装着ヘッド110が部品実装位置X1に到達した直後の時刻t8に、そのヘッド112cに吸着されている部品Pの下面を基板2上の実装点に当てる。そして、ヘッド112cは、その部品Pを実装点に実装して時刻t9に上昇を開始し、時刻t16に元の基準高さh1に戻る。
ヘッド112dは、図14の(c)に示すように、ヘッド112a,112cと同時に時刻t1に、基準高さh1からの下降を開始して、時刻t2に待機高さh02に到達する。そして、ヘッド112dは、ヘッド112cと同様に、その待機高さh02で暫く待機し、ヘッド112aが上昇を開始した直後の時刻t5に、再び下降を開始する。その結果、ヘッド112dは、時刻t6に待機高さh01に到達する。ここで、ヘッド112dは、その待機高さh01で暫く待機し、ヘッド112cが上昇を開始した直後の時刻t10に、再び下降を開始する。
ここで、マルチ装着ヘッド110は、図14の(d)に示すように、ヘッド112dの待機高さh01からの下降と同時に、つまり時刻t10に、部品実装位置X1から部品実装位置X2へのX軸方向の移動を開始する。そして、マルチ装着ヘッド110は、部品実装位置X1から微小距離d12だけ移動し、時刻t11に、部品実装位置X2に到達する。
ヘッド112dは、図14の(c)に示すように、マルチ装着ヘッド110が部品実装位置X2に到達した直後の時刻t12に、ヘッド112dに吸着されている部品Pの下面を基板2上の実装点に当てる。そして、ヘッド112dは、その部品Pを実装点に実装して時刻t14に上昇を開始し、時刻t17に元の基準高さh1に戻る。
ところで従来では、ヘッド112cは、図14の(b)の破線に示すように、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に移動を開始する時刻t5に、基準高さh1からの下降を開始する。その結果、マルチ装着ヘッド110が時刻t7に既に部品実装位置X1に到達しているにも関わらず、ヘッド112cは、下降を継続して行う。その結果、ヘッド112cに吸着された部品Pの下面は、時刻t7から暫く経過した時刻t11に、基板2上の実装点に当接する。
これにより、マルチ装着ヘッド110は、図14の(d)の破線に示すように、上記ヘッド112cによる部品実装が完了(時刻t13)した直後の時刻t14に、部品実装位置X1から部品実装位置X2へのX軸方向の移動を開始する。そして、時刻t15に、マルチ装着ヘッド110は部品実装位置X2に到達する。
さらに、ヘッド112dは、図14の(c)の破線に示すように、マルチ装着ヘッド110がX軸方向に移動を開始する時刻t14に、基準高さh1からの下降を開始する。その結果、マルチ装着ヘッド110が時刻t15に既に部品実装位置X2に到達しているにも関わらず、ヘッド112dは、下降を継続して行う。その結果、ヘッド112dに吸着された部品Pの下面は、時刻t15から暫く経過した時刻t17に、基板2上の実装点に当接する。
つまり、本実施の形態では、時刻t12から時刻t17までの時間だけ、1ターンにおける部品実装時間を短縮することができる。また、部品吸着時には、図10を用いて説明したように、1ターンにおける部品吸着時間が短縮されているため、本実施の形態では、1ターンにおけるマルチ装着ヘッド110の全体的な作業時間(生産時間)を大幅に短縮することができる。
図15は、本実施の形態における部品実装ユニット100aが部品実装を行う動作を示すフローチャートである。なお、図15は、部品Pを実装する動作、つまり部品Pを基板2に装着する動作を詳細に示す。
まず、準同時実装判定部139は、マルチ装着ヘッド110において部品Pを吸着している複数のヘッド112のうち、準同時実装を行う複数のヘッド112があるか否かを、部品実装データなどに基づいて判定する(ステップS200)。
ここで、制御部130は、準同時実装を行うヘッド112がないと判定されたときには(ステップS200のN)、通常通りの実装方法でマルチ装着ヘッド110に部品Pを実装させる。つまり、制御部130は、先に実装すべきとされる1つのヘッド112(以下、実装ヘッドという)によって吸着されている部品Pが、基板2上の実装点に向きを合わせて対向するように、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させる(ステップS202)。具体的に、制御部130は、マルチ装着ヘッド110を水平方向に移動させるとともに、その実装点の向きに応じた部品実装角度に実装ヘッドを回転させる。
次に、制御部130は、その実装ヘッドに実装動作をさせる(ステップS204)。つまり、制御部130は、実装ヘッドを基準高さh1から下降させて、実装ヘッドに吸着されている部品Pを基板2上の実装点に実装させる。
実装動作が終了すると、制御部130は、マルチ装着ヘッド110に含まれるヘッド112の中で、次に実装するヘッド112があるか否かを判別する(ステップS206)。制御部130は、次に実装するヘッド112があると判別すると(ステップS206のY)、ステップS202からの動作を繰り返し実行し、次に実装するヘッド112がないと判別すると(ステップS206のN)、部品実装動作を終了する。
一方、制御部130は、ステップS200で準同時実装を行うヘッド112があると判定されたときには(ステップS200のY)、マルチ装着ヘッド110において部品Pを吸着している複数のヘッド112を、準同時実装が行われる複数の準同時実装グループに分類する(ステップS208)。
以下、部品Pを吸着している全てのヘッド112が複数の準同時実装グループに分類され、各準同時実装グループには複数のヘッド112が属することを前提に説明する。
制御部130は、複数の準同時実装グループから、実装順で最先の準同時実装グループを選出する(ステップS210)。そして、制御部130は、その準同時実装グループの中で実装順で先となるヘッド112による部品実装のために、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させる(ステップS212)。つまり、制御部130は、先のヘッド112に応じた部品実装位置にマルチ装着ヘッド110を水平移動させるとともに、先のヘッド112に対応する実装点の向きに応じた部品実装角度にそのヘッド112を回転させる。
そして、動作時間特定部137は、実装順で次のヘッド112による部品実装のために必要なマルチ装着ヘッド110の動作時間を特定する(ステップS214)。動作時間が特定されると、待機高さ算出部136は、次のヘッド112の待機高さをその動作時間に応じて算出する(ステップS216)。
次に、制御部130は、先のヘッド112に実装動作をさせると同時に、次のヘッド112を含む他のヘッド112を、ステップS216で算出された待機高さまで下降させる(ステップS218)。つまり、準同時実装グループに含まれる先のヘッド112以外の他の全てのヘッド112は、先のヘッド112の下降と同時に下降を開始して、上述の待機高さで停止する。
ここで、制御部130は、ステップS210で選出された準同時実装グループの中に、実装順でさらに次に実装するヘッド112があるか否かを判別する(ステップS220)。さらに次に実装するヘッド112があると判別されたときには(ステップS220のY)、制御部130は、ステップS212からの動作を繰り返し実行する。なお、このとき、次のステップS212〜S218の実行処理は、前回のステップS212〜S218の実行処理における「次のヘッド112」が「先のヘッド112」に更新され、「さらに次に実装するヘッド112」が「次のヘッド112」に更新されて実行される。また、ステップS212からの動作が繰り返し実行される場合、ステップS212の動作と、ステップS214,S216,S218の動作とは並列に実行される。さらに、ステップS212からの動作が繰り返し実行される場合に、既に待機高さまで下降されたヘッド112に対して、ステップS216で、その元の待機高さ以上の待機高さが算出されたときには、ステップS218では、制御部130は、そのヘッド112を上下動させずに、元の待機高さに停止させておく。
一方、ステップS220で、さらに次のヘッド112がないと判別されたときには(ステップS220のN)、制御部130は、次のヘッド112による部品実装のために、モータ制御部140などにマルチ装着ヘッド110を駆動させ、次のヘッド112に実装動作をさせる(ステップS222)。つまり、制御部130は、次のヘッド112に応じた部品実装位置にマルチ装着ヘッド110を微小距離だけ水平移動させるとともに、次のヘッド112に対応する実装点の向きに応じた部品実装角度にそのヘッド112を回転させる。さらに、制御部130は、上述の水平移動および回転と並行して、次のヘッド112を待機高さから下降させて、吸着している部品Pを上述の実装点に実装させる。
ここで、制御部130は、実装動作をしていない準同時実装グループがあるか否かを判別する(ステップS224)。準同時実装グループがあると判別したときには(ステップS224のY)、制御部130は、ステップS210からの動作を繰り返し実行し、準同時実装グループがないと判別したときには(ステップS224のN)、部品実装動作を終了する。
なお、上述の例では、ステップS208で、部品を吸着している全てのヘッド112が複数の準同時実装グループに分類され、各準同時実装グループには複数のヘッド112が属するとした。しかし、他の何れのヘッド112とも準同時実装を行わないような1つのヘッド112を、1つの準同時実装グループに分類してもよい。この場合、ステップS212〜S220における先のヘッド112は、その1つのヘッド112として扱われ、ステップS212〜S220における次のヘッド112、さらに次のヘッド112、他のヘッド112などは、存在しないものとして扱われる。つまり、このような準同時実装グループに対しては、ステップS202,S204に示すような通常通りの実装方法で部品実装が行われる。
また、上述の例では、ステップS218で、次のヘッド112を含む全てのヘッド112を、次のヘッド112のために算出された待機高さh0まで下降させたが、次のヘッド112だけをその待機高さh0まで下降させてもよい。
以上、本発明に係る部品実装方法について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本実施の形態では、準同時吸着および準同時実装のそれぞれで、次のヘッド112を待機高さまで下降させたが、準同時吸着および準同時実装のうち何れか一方でのみ、次のヘッド112を待機高さまで下降させてもよい。
また、本実施の形態では、準同時実装が行われるときには、常に次のヘッド112を待機高さまで下降させたが、次のヘッド112に吸着された部品Pが、既に基板2に実装された部品Pやクランプなどに干渉してしまうような場合には、次のヘッド112を待機高さまで下降させず、そのような干渉が生じない高さまで下降させてもよい。なお、クランプとは、実装ステージ上に基板2を固定するために、基板2のX軸方向に沿う両縁に配設される部材である。
また、本実施の形態では、準同時実装が行われるか否かの判定に、準同時実装判定値を用いたが、その判定値の代わりに他の尺度を用いたり、その判定値と他の尺度とを併用して、準同時実装が行われるか否かを判定してもよい。他の尺度として、例えばヘッド112の回転角度などがある。
また、本実施の形態では、部品実装機100(部品実装ユニット100a,100b)自体が動作時間を特定して待機高さを算出したが、マルチ装着ヘッド110の制御条件を決定する例えばパーソナルコンピュータなどからなる装置が、動作時間の特定と待機高さの算出とを行ってもよい。このような場合、その装置は、算出された待機高さを部品実装機100に通知して、その待機高さにヘッド112を下降させるように指示する。