以下、本発明の実施の形態における部品実装方法を用いて部品を基板に実装する部品実装機について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における部品実装機の斜視図である。
本実施の形態における部品実装機100は、実装基板の生産効率を向上したものであって、部品実装を行う2つの部品実装ユニット100a,100bを備える。なお、実装基板とは、部品が実装された基板である。
部品実装ユニット100aは、複数の部品を供給する2つの部品供給部102を備え、それらの部品供給部102から供給される部品を、搬入口101から搬入された基板2に対して実装する。そして、部品実装ユニット100aは、部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bに搬出する。
部品実装ユニット100bは、部品実装ユニット100aと略同一の構成を有する。すなわち、部品実装ユニット100bは、複数の部品を供給する2つの部品供給部102を備え、それらの部品供給部102から供給される部品を、部品実装ユニット100aから搬出されて部品実装ユニット100bに搬入された基板2に対して実装する。そして、部品実装ユニット100bは、部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bの外に搬出する。
図2は、部品実装機100の部品実装ユニット100aの内部構成図である。つまり、図2は、筐体が取り外された部品実装ユニット100aの上面側の構成を示す。
部品実装ユニット100aは、2つの部品供給部102(102a,102b)と、基台103と、X軸テーブル104a,104bと、Y軸テーブル105a,105bと、2本の搬送路106と、2つの移載ヘッド110(110a,110b)と、2つの部品認識カメラ120とを備えている。
なお、図2では、部品実装ユニット100a,100bの配列方向がX軸方向とされ、水平面に沿ってX軸方向と垂直な方向がY軸方向とされている。また、本実施の形態において、上または下は、X軸方向およびY軸方向に対して垂直な方向を示し、上は、図2の紙面手前側の向きであって、下は、図2の紙面奥行き側の向きである。
2本の搬送路106は、X軸方向に沿って互いに平行になるように基台103上に配設されている。このような搬送路106は、基板2がX軸方向に沿って搬送されるようにその基板2を案内する。つまり、搬送路106は、搬入口101から搬入された基板2を、基台103の略中央部にある実装ステージに案内し、そこで部品が実装された基板2を部品実装ユニット100bに案内する。
Y軸テーブル105a,105bは、それぞれY軸方向に沿って平行となるように基台103の両縁側に配設されている。
X軸テーブル104a,104bは、それぞれX軸方向に沿って平行となり、Y軸テーブル105a,105bに沿ってスライド自在に据え付けられている。そして、X軸テーブル104a,104bは、Y軸モータ(図示せず)の駆動によってY軸方向に移動する。
移載ヘッド110は、部品供給部102から供給される部品を取り出して、実装ステージに配置された基板2に実装するものであって、X軸テーブル104a,104bのそれぞれにスライド自在に据え付けられている。そして、移載ヘッド110は、X軸モータ(図示せず)の駆動によってX軸方向に移動する。つまり、移載ヘッド110は、X軸モータおよびY軸モータの駆動によって、X軸方向およびY軸方向(水平方向)に移動する。
2つの移載ヘッド110のうち一方の移載ヘッド110aは、X軸テーブル104aに据え付けられて、部品供給部102aから供給される部品を取り出す。他方の移載ヘッド110bは、X軸テーブル104bに据え付けられて、部品供給部102bから供給される部品を取り出す。つまり、2つの移載ヘッド110のうちの一方の移載ヘッド110aには、2つの部品供給部102のうちの一方の部品供給部102aが割り当てられ、2つの移載ヘッド110のうちの他方の移載ヘッド110bには、2つの部品供給部102のうちの他方の部品供給部102bが割り当てられている。したがって、1つの移載ヘッド110は、2つの部品供給部102のそれぞれから部品を取り出すような動作を行わず、予め割り当てられた1つの部品供給部102のみから部品を取り出す。
また、2つの移載ヘッド110はそれぞれ、8つのヘッド112と、基板認識カメラ111とを備えている。
8つのヘッド112は、4(X軸方向)×2(Y軸方向)に配列され、それぞれZ軸モータ(図示せず)の駆動によって上下方向(Z軸方向)に移動する。そして、これらのヘッド112は、ヘッド112の内部を負圧にすることによって、部品供給部102から供給される部品を吸着し、その部品を取り出す。なお、各ヘッド112の先端には、吸着対象の部品に適したノズルが取り付けられる。したがって、各ヘッド112は、先端に取り付けられたノズルを介して部品を吸着する。また、これらのヘッド112は、θ軸モータ(図示せず)の駆動によってZ軸方向に沿う中心軸を中心に回転する。
基板認識カメラ111は、実装ステージに配置された基板2の位置を認識し、基板2上の正確な位置に部品を実装するため、基板2に形成された基板認識用のマークを撮像する。
このような移載ヘッド110は、部品供給部102から供給される部品を吸着して、基板2に移動し、吸着された部品を1つずつ基板2に実装し、再び部品供給部102に移動する。この移載ヘッド110による一連の動作をターンという。また、移載ヘッド110が部品供給部102から基板2に移動するときには、部品認識カメラ120上を通過する。
さらに、2つの移載ヘッド110は、いわゆる交互打ちを行う。つまり、何れか一方の移載ヘッド110が部品を基板2に実装しているときには、他方の移載ヘッド110は部品供給部102から部品を取り出し、逆に、他方の移載ヘッド110が部品を基板2に実装しているときには、一方の移載ヘッド110は部品供給部102から部品を取り出す。
部品認識カメラ120は、移載ヘッド110の各ヘッド112に吸着されている部品を下方から撮像する。この撮像結果は、ヘッド112と部品との間のずれなどを示し、そのずれを解消するために利用される。
2つの部品供給部102は、2つの搬送路106を挟んで互いに対向するように配設されている。
部品供給部102は、部品テープが巻回された部品リールからその部品テープを引き出すための部品カセット200を複数個備えて構成されている。部品リールには、部品を保持する部品テープが巻回されている。部品テープは、複数の部品を一列にそれぞれ略等間隔だけ離した状態で保持している。
図3は、部品供給部102に備えられた部品カセット200と部品リールを示す図である。
部品カセット200は、部品リール210から部品テープ211をその先端側から引き出し、引き出された部品テープ211の先端側にある部品を1つずつ、部品カセット200の部品供給口201の下方に配置する。その結果、部品カセット200の部品供給口201から部品が順次現れて、移載ヘッド110に吸着される部品として供給される。
図4は、本実施の形態における部品実装ユニット100aの制御系の機能構成を示す図である。なお、図4では、部品実装ユニット100aのうち、移載ヘッド110aを用いて部品実装を行うために必要な構成ユニットのみを示す。つまり、部品実装ユニット100aは、図4に示す移載ヘッド110a用の構成ユニットを備えるとともに、移載ヘッド110bを用いて部品実装を行うために必要な移載ヘッド110b用の構成ユニットも備えている。そして、移載ヘッド110b用の機能ユニットは、移載ヘッド110a用の構成ユニットと同様の機能および構成を有する。
部品実装ユニット100aに含まれる移載ヘッド110a用の構成ユニットは、制御部130と、部品実装データ記憶部131と、部品配列データ記憶部132と、基板認識カメラ111と、部品認識カメラ120と、動作時間算出部133と、残り時間取得部134と、カウントダウン部135と、モータ制御部140と、X軸モータ141と、Y軸モータ142と、Z軸モータ143と、θ軸モータ144とを備えている。なお、本実施の形態では、制御部130およびモータ制御部140から保持制御手段と移動開始制御手段とが構成され、制御部130、動作時間算出部133、および残り時間取得部134からタイミング特定手段が構成されている。
X軸モータ141は、上述のように、移載ヘッド110aをX軸テーブル104aに沿ってX軸方向に移動させる。
Y軸モータ142は、上述のように、X軸テーブル104a、つまりそのX軸テーブル104aに取り付けられた移載ヘッド110aを、Y軸テーブル105a,105bに沿ってY軸方向に移動させる。
Z軸モータ143は、上述のように、移載ヘッド110aの各ヘッド112をZ軸方向に移動させ、θ軸モータ144は、移載ヘッド110aの各ヘッド112を中心軸を中心に回転させる。
モータ制御部140は、制御部130からの指示に基づいて、X軸モータ141、Y軸モータ142、Z軸モータ143およびθ軸モータ144を駆動する。
部品実装データ記憶部131は、基板2に対して実装すべき部品の名称や実装点、向きなどを示す部品実装データを予め記憶している。なお、この実装点は、部品が実装されるべき基板2上の位置を示す。
部品配列データ記憶部132は、部品供給部102aから供給される部品の名称や位置(座標)を示す部品配列データを予め記憶している。
動作時間算出部133は、移載ヘッド110aが1ターン分の部品を吸着し終えると、移動進入時間と移動実装時間とを算出する。移動進入時間は、移載ヘッド110aが1ターン分の部品を吸着し終えた位置(以下、部品供給位置という)から移動して部品認識カメラ120上を経由して干渉エリアに進入するまでの時間である。また、移動実装時間は、移載ヘッド110aが部品供給位置から移動して1ターン分の部品を実装し終えるまでの時間である。また、干渉エリアは、移載ヘッド110a,110bおよびこれらを駆動させる機械構成上、移載ヘッド110a,110bが互いに干渉し得る領域であって、例えば、基板2の上方およびその周辺を含む領域である。
例えば、動作時間算出部133は、部品実装データの示す実装点や、部品配列データの示す位置、部品認識カメラ120の位置などに基づいて、移載ヘッド110aの移動経路を導出する。つまり、動作時間算出部133は、部品配列データの示す位置に基づいて上述の部品供給位置を特定し、部品実装データの示す実装点に基づいて、移載ヘッド110aが干渉エリアに進入する地点(以下、進入地点という)を特定する。さらに、動作時間算出部133は、移載ヘッド110aに吸着された部品を部品認識カメラ120に撮影させるために、部品認識カメラ120の撮影領域、つまり部品認識カメラの上方の領域を特定する。その結果、動作時間算出部133は、移載ヘッド110aが部品供給位置から撮影領域を経由して進入地点に到達するような移動経路を導出する。
さらに、動作時間算出部133は、移載ヘッド110aに吸着されている部品に応じた移載ヘッド110aの移動最大速度および最大加速度を、例えば、予め設定されたデータテーブルなどから特定する。そして、動作時間算出部133は、移載ヘッド110aが上述の移動経路に沿って移動する移動速度を導出する。例えば、動作時間算出部133によって導出される移動速度では、移載ヘッド110aは、部品供給位置から上記最大加速度で移動を開始し、上述の移動経路に沿って途中で止まることなく上記移動最大速度で干渉エリアに進入し、上記最大加速度で減速しながら部品実装位置で停止する。なお、部品実装位置とは、移載ヘッド110aに吸着された1ターン分の部品のうち最初に実装される部品が、その部品に応じた実装点上に配置されるような、移載ヘッド110aの位置である。
そして、動作時間算出部133は、上述のように導出された移動経路および移動速度に基づいて移動進入時間を算出する。
また、動作時間算出部133は、上述のように算出された移動進入時間に対して、部品実装時間を加算することにより、上述の移動実装時間を算出する。つまり、動作時間算出部133は、移載ヘッド110aに吸着されている1ターン分の各部品の実装点と、上記移動最大速度および最大加速度となどに基づいて、移載ヘッド110aが進入地点から干渉エリアに進入してから、1ターン分の部品を実装し終えるまでの部品実装時間を特定する。そして、動作時間算出部133は、その部品実装時間を移動進入時間に加算して移動実装時間を算出する。
残り時間取得部134は、他方の移載ヘッド110bが1ターン分の部品を実装し終えるまでの残り時間を、移載ヘッド110b用の構成ユニットから取得する。
カウントダウン部135は、1ターン分の部品を吸着した移載ヘッド110aが部品供給位置から移動を開始すると、動作時間算出部133で算出された移動実装時間を初期値として、その移動実装時間からのカウントダウンを開始する。そして、カウントダウン部135は、そのカウントダウンされた結果を示す時間を、移載ヘッド110aによる部品実装終了までの残り時間として計測する。このようなカウントダウン部135によって計測される残り時間は、他方の移載ヘッド110b用の構成ユニットの制御に利用される。
制御部130は、部品実装データおよび部品配列データなどから、例えば生産性(スループット)が向上するような各部品の実装順序や、1ターンで実装されるべき部品のグループ(タスク)などを決定する。
また、制御部130は、移載ヘッド110aに部品を吸着させるときには、部品供給部102aから供給される吸着対象の部品の座標を、部品配列データから特定して、その部品の座標をモータ制御部140に通知することで、モータ制御部140に移載ヘッド110aの駆動を指示する。その結果、モータ制御部140は、その座標に応じて各モータ141〜143を制御することにより、適切な位置に移載ヘッド110aを移動させて、その移載ヘッド110aのヘッド112に部品を吸着させる。
さらに、制御部130は、部品認識カメラ120が移載ヘッド110aのヘッド112に吸着されている部品を撮影すると、その撮影結果に基づいて、ヘッド112に対する部品のずれを検出し、そのずれが解消されるようなヘッド112の回転角度をモータ制御部140に通知する。その結果、モータ制御部140は、θ軸モータ144を制御することにより、ヘッド112をその回転角度だけ回転させる。また、制御部130は、上述のずれが解消されるようなヘッド112のX軸方向およびY軸方向への移動距離を、上述の回転角度とともにモータ制御部140に通知してもよい。この場合には、モータ制御部140は、X軸モータ141、Y軸モータ142およびθ軸モータ144を制御することにより、ヘッド112をその回転角度だけ回転させるとともに、ヘッド112をX軸方向およびY軸方向に上述の移動距離だけ移動させる。
また、制御部130は、移載ヘッド110aに対して部品を基板2に実装させるときには、基板2上に実装されるべき部品の実装点や向きを、部品実装データから特定する。そして、制御部130は、その実装点および向きをモータ制御部140に通知することで、モータ制御部140に移載ヘッド110aの駆動を指示する。
その結果、モータ制御部140は、各モータ141〜144を制御することにより、まず、移載ヘッド110aを基板2上に移動させて、移載ヘッド110aの基板認識カメラ111に基板2の基板認識用のマークを撮像させる。そして、モータ制御部140は、そのマークの位置を基準にして、制御部130から通知された実装点上に、ヘッド112に吸着された部品が位置するように、移載ヘッド110aを移動させる。このとき、モータ制御部140は、ヘッド112に吸着された部品の向きが、制御部130から通知された向きに向くように、そのヘッド112を回転させる。そして、モータ制御部140は、そのヘッド112を下降させることによって、ヘッド112に吸着されている部品を実装点に正確に実装させる。
また、本実施の形態における制御部130は、動作時間算出部133によって算出された移動進入時間と、残り時間取得部134によって取得された残り時間とに基づいて、1ターン分の部品を吸着し終えた移載ヘッド110aの部品供給位置からの移動開始のタイミングを検出(特定)する。そして、制御部130は、部品供給位置にある移載ヘッド110aの基板2への移動を、その検出したタイミングで開始させる。
図5は、本実施の形態における部品実装方法を説明するための説明図である。なお、図5では、部品実装ユニット100a内部を上方から眺めた主要構成要素の外観のみを示す。つまり、図5の紙面手前側が上方を示し、図5の紙面奥行きが下方を示す。
本実施の形態における部品実装方法では、制御部130は、移載ヘッド110aが1ターン分の部品を吸着すると、その移載ヘッド110aを部品供給位置で待機させる。そして、制御部130は、1ターン分の部品を基板2に実装し終えた他方の移載ヘッド110bが干渉エリア外への移動を開始したときに、移載ヘッド110aが干渉エリアに進入し得るタイミングで、移載ヘッド110aの部品供給位置からの基板2への移動を開始させる。その結果、移載ヘッド110aは、部品認識カメラ120上を通過して、他方の移載ヘッド110bの部品供給部102bへの移動開始と同時に、途中で停止することなく干渉エリアに進入することができる。その結果、無駄な電力消費を抑えることができるとともに、移載ヘッド110aを迅速に部品実装位置に移動させることができ、スループットの向上を図ることができる。
具体的に、制御部130は、まず、移載ヘッド110aが1ターン分の部品を吸着すると、動作時間算出部133に対して、移動進入時間および移動実装時間の算出を指示する。そして、移動進入時間および移動実装時間が算出されると、制御部130は、残り時間取得部134で取得された他方の移載ヘッド110bの残り時間が、算出された移動進入時間以下になったか否かを判別する。つまり、制御部130は、残り時間が移動進入時間よりも長い間だけ、1ターン分の部品を吸着している移載ヘッド110aを部品供給位置で待機させる。
そして、制御部130は、残り時間が移動進入時間以下になったときに、モータ制御部140に対して移載ヘッド110aの移動開始を指示することにより、その移載ヘッド110aの基板2への移動を開始させる。
図6は、移載ヘッド110aおよび移載ヘッド110bのY軸方向の移動を示す図である。
移載ヘッド110aは、Y座標=Y40の位置でX軸方向に移動しながら、1ターン分の部品の吸着を行い、時刻t21にその吸着を完了する。そして、移載ヘッド110aは、上述の制御部130によって検出されるタイミングまで、つまり時刻t22まで、1ターン分の最後の部品を吸着した位置である部品供給位置で待機している。そして、時刻t22に、移載ヘッド110aは、基板2への移動を開始する。
一方、他方の移載ヘッド110bは、干渉エリアであるY座標=Y20〜Y30の範囲内でX軸方向およびY軸方向に移動しながら、1ターン分の部品の実装を行っている。
そして、上述のように移動を開始した移載ヘッド110aは、移載ヘッド110bが1ターン分の最後の部品を実装して部品供給部102bへの移動を開始する時刻t24に、Y座標=Y30以下まで移動する、つまり途中で停止することなく干渉エリアに進入する。干渉エリアへの進入時には、移載ヘッド110aは既に十分に加速されており、例えばその加速度は0であって、干渉エリアの進入前後で移載ヘッド110aの速度は一定となっている。即ち、本実施の形態では、移載ヘッド110aを迅速に干渉エリアに進入させることができるとともに、その進入時における移載ヘッド110aの移動速度を十分に速くすることができる。このように干渉エリアに進入した移載ヘッド110aは、基板2上を水平移動して迅速に部品実装位置に到達し、吸着している全ての部品を予め定められた実装順で実装する。
また、他方の移載ヘッド110bは、移載ヘッド110aが部品実装をしている間である時刻t25に、部品供給部102bのあるY座標=Y10に到達し、その位置でX軸方向に移動しながら、次の1ターン分の部品の吸着を行う。
ところで、従来の部品実装方法では、図6の点線に示すように、移載ヘッドは、時刻t21に部品吸着を終了すると、直ぐに基板2への移動を開始して、時刻t23に、干渉エリアの手前に到達する。移載ヘッドは、ここでしばらく待機して、他方の移載ヘッドが部品供給部への移動を開始する時刻t24に、再び移動を開始する。つまり、移載ヘッドは、その時刻t24には干渉エリアに進入することができず、さらに、干渉エリアの手前から移動を開始するため、十分加速されていない状態、即ち十分な移動速度で移動できていない状態で干渉エリアに進入する。その結果、移載ヘッドの部品実装位置への到着が遅くなってしまうのである。
図7は、移載ヘッド110a用の構成ユニットおよび移載ヘッド110b用の構成ユニットの動作タイミングを示す図である。
時刻t1に移載ヘッド110aによる部品吸着が終了すると、移載ヘッド110a用の動作時間算出部133は、移載ヘッド110aの移動進入時間A1および移動実装時間A2を算出する。
一方、時刻t1には、移載ヘッド110bは干渉エリア内において部品実装を行っており、移載ヘッド110b用のカウントダウン部135は、移載ヘッド110bが1ターン分の部品を実装し終えるまでの残り時間Tbを計測している。つまり、移載ヘッド110b用のカウントダウン部135は、既に算出された移載ヘッド110bの移動実装時間B2をカウントダウンの初期値に用い、移載ヘッド110bの部品供給位置からの移動が開始された時点からカウントダウンを開始することにより、残り時間Tbを計測している。なお、移載ヘッド110bは時刻t3まで1ターン分の部品の実装を行う。
ここで、移載ヘッド110a用の残り時間取得部134は、移載ヘッド110b用のカウントダウン部135から残り時間Tbを周期的に取得している。そして、時刻t1において、移載ヘッド110a用の制御部130は、残り時間取得部134で取得された移載ヘッド110bの残り時間Tbと、移載ヘッド110aの移動進入時間A1とを比較する。そして、制御部130は、残り時間Tbの方が移動進入時間A1よりも長いので、1ターン分の部品を吸着した移載ヘッド110aを部品供給位置で待機させる。
移載ヘッド110a用の制御部130は、上述のような比較を、時々刻々更新される残り時間Tbが残り時間取得部134で取得されるごとに行う。その結果、制御部130は、時刻t2に、移載ヘッド110bの残り時間Tbが移載ヘッド110aの移動進入時間A1以下になったと判断する。このとき、制御部130は、移載ヘッド110a用のカウントダウン部135に対して、上述のように算出された移載ヘッド110aの移動実装時間A2のカウントダウンを開始するように指示する。さらにこのとき、制御部130は、移載ヘッド110a用のモータ制御部140に対して、移載ヘッド110aを干渉エリアに進入させるように指示する。これにより、移載ヘッド110aは干渉エリア(基板2)への移動を開始し、部品認識カメラ120上を経由して時刻t3に干渉エリアに進入する。つまり、移載ヘッド110aは、他方の移載ヘッド110bが1ターン分の最後の部品を実装し終えて部品供給部102bへの移動を開始したときに、干渉エリアに進入する。
そして、移載ヘッド110a用の制御部130は、移載ヘッド110aを部品実装位置に移動させ、時刻t4から基板2に対する部品実装を開始させる。
一方、移載ヘッド110bの制御部130は、時刻t5に、移載ヘッド110bが部品供給部102bに到達すると、その移載ヘッド110bに次のターン分の部品の吸着を開始させる。
以後、移載ヘッド110aの構成ユニットは、上述の移載ヘッド110bの移載ユニットと同様の動作を行い、移載ヘッド110bの構成ユニットは、上述の移載ヘッド110aの構成ユニットと同様の動作を行う。
つまり、時刻t6に移載ヘッド110bによる部品吸着が終了すると、移載ヘッド110b用の動作時間算出部133は、移載ヘッド110bの移動進入時間B1および移動実装時間B2を算出する。
一方、時刻t6には、移載ヘッド110aは干渉エリア内において部品実装を行っており、移載ヘッド110a用のカウントダウン部135は、移載ヘッド110aが1ターン分の部品を実装し終えるまでの残り時間Taを計測している。つまり、移載ヘッド110a用のカウントダウン部135は、既に算出された移載ヘッド110aの移動実装時間A2をカウントダウンの初期値に用い、移載ヘッド110aの部品供給位置からの移動が開始された時点(時刻t2)からカウントダウンを開始することにより、残り時間Taを計測している。なお、移載ヘッド110aは時刻t8まで1ターン分の部品の実装を行う。
ここで、移載ヘッド110b用の残り時間取得部134は、移載ヘッド110a用のカウントダウン部135から残り時間Taを周期的に取得している。そして、時刻t6において、移載ヘッド110b用の制御部130は、残り時間取得部134で取得された移載ヘッド110aの残り時間Taと、移載ヘッド110bの移動進入時間B1とを比較する。そして、制御部130は、残り時間Taの方が移動進入時間B1よりも長いので、1ターン分の部品を吸着した移載ヘッド110bを部品供給位置で待機させる。
移載ヘッド110b用の制御部130は、上述のような比較を、時々刻々更新される残り時間Taが残り時間取得部134で取得されるごとに行う。その結果、制御部130は、時刻t7に、移載ヘッド110aの残り時間Taが移載ヘッド110bの移動進入時間B1以下になったと判断する。このとき、制御部130は、移載ヘッド110b用のカウントダウン部135に対して、上述のように算出された移載ヘッド110bの移動実装時間B2のカウントダウンを開始するように指示する。さらにこのとき、制御部130は、移載ヘッド110b用のモータ制御部140に対して、移載ヘッド110bを干渉エリア内に進入させるように指示する。これにより、移載ヘッド110bは干渉エリア(基板2)への移動を開始し、部品認識カメラ120上を経由して時刻t8に干渉エリアに進入する。つまり、移載ヘッド110bは、他方の移載ヘッド110aが1ターン分の最後の部品を実装し終えて部品供給部102aへの移動を開始したときに、干渉エリアに進入する。
そして、移載ヘッド110b用の制御部130は、移載ヘッド110bを部品実装位置に移動させ、時刻t9から基板2に対する部品実装を開始させる。
このように、移載ヘッド110a用の構成ユニットと、移載ヘッド110b用の構成ユニットとは、それぞれ同様の動作を交互に実行する。
図8は、本実施の形態における移載ヘッド110a用の構成ユニットの動作を示すフローチャートである。
まず、移載ヘッド110a用の制御部130は、モータ制御部140を制御することにより、制御対象である移載ヘッド110a(制御対象ヘッド)に1ターン分の部品を吸着させる(ステップS100)。そして、制御部130は、動作時間算出部133に、移載ヘッド110aの移動進入時間A1と移動実装時間A2とを算出させる(ステップS102)。
次に、制御部130は、他方の移載ヘッド110b(他方のヘッド)用の構成ユニットから、残り時間取得部134を介して、その移載ヘッド110bによる部品実装の残り時間Tbを取得する(ステップS104)。そして、制御部130は、ステップS102で算出された移動進入時間A1と、ステップS104で取得された残り時間Tbとを比較し、残り時間Tbが移動進入時間A1以下であるか否かを判別する(ステップS106)。
ここで、制御部130は、残り時間Tbが移動進入時間A1よりも長いと判別すると(ステップS106のN)、1ターン分の部品を吸着した移載ヘッド110aを部品供給位置で待機させ(ステップS108)、再びステップS104からの動作を繰り返して実行する。一方、制御部130は、残り時間Tbが移動進入時間A1以下であると判別すると(ステップS106のY)、モータ制御部140を制御することにより、部品供給位置にある移載ヘッド110aの干渉エリアへの移動を開始させる(ステップS110)。さらにこのとき、制御部130は、カウントダウン部135に対して、ステップS102で算出された移動実装時間A2を初期値とするカウントダウンを開始させる(ステップS112)。これにより、カウントダウン部135は、移載ヘッド110aによる部品実装の残り時間Taを計測する。
そして、制御部130は、移動している移載ヘッド110aに吸着されている部品が部品認識カメラ120によって撮影されると、その撮影結果に基づいて部品認識を行う(ステップS114)。つまり、制御部130は、移載ヘッド110aのヘッド112に吸着されている部品が正しい部品であるか否かを判別したり、ヘッド112に対する部品のずれなどを検出する。ここで、例えば、制御部130は、その吸着されている部品が正しい部品でないと判別したときには、その部品を破棄させる。また、制御部130は、ずれを検出したときには、モータ制御部140を制御することにより、そのずれが解消されるように移載ヘッド110aのヘッド112を回転させたり、その部品を破棄させる。
次に、制御部130は、ステップS110で移動を開始した移載ヘッド110aが干渉エリアに進入して部品実装位置に到達すると、モータ制御部140を制御することにより、その移載ヘッド110aに部品実装を開始させる(ステップS116)。そして、移載ヘッド110aが吸着していた1ターン分の全ての部品が実装されると、制御部130は、移載ヘッド110aを部品供給部102aに移動させる(ステップS118)。
ここで、制御部130は、実装されていない部品があるか否かを判別し(ステップS120)、あると判別したときには(ステップS120のY)、ステップS100からの動作を繰り返して実行し、ないと判別したときには(ステップS120のN)、全ての処理を終了する。
このように本実施の形態では、部品供給位置にある移載ヘッド110の移動開始のタイミングが適切に決定されるため、その移載ヘッド110が移動を開始すると、その移載ヘッド110は、他方の移載ヘッド110が干渉エリア外への移動を開始したときに、その干渉エリアに進入することができる。その結果、干渉エリアに進入した移載ヘッド110による基板への部品実装のタイミングを早めることができ、スループットを向上することができる。さらに、部品供給位置にある移載ヘッド110の移動開始のタイミングが適切に決定されるため、部品吸着を終えた移載ヘッド110は部品供給位置で暫く待機し、その部品供給位置から途中で止まることなく干渉エリアに進入することができる。その結果、移載ヘッド110を急激に加減速させることなく、消費電力の無駄を省くことができる。したがって、本発明では、実装基板の生産効率を向上することができる。
以上、本発明に係る部品実装方法について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本実施の形態では、動作時間算出部133は、部品認識カメラ120の撮影結果に関わらず移動実装時間を算出したが、その撮影結果などを考慮して移動実装時間を修正してもよい。例えば、制御部130は、部品認識カメラ120の撮影結果に基づいて、部品のずれを検出したときには、そのずれを解消するように移載ヘッド110のヘッド112を回転させたり、そのヘッド112に吸着されている部品を破棄させる。このように、部品認識カメラ120の撮影結果に応じて移載ヘッド110の動きが変化する。したがって、動作時間算出部133は、一度算出された移動実装時間を、その動きの変化に応じて修正する。これにより、移載ヘッド110の動きに変化が生じても、移動実装時間を正確に修正して、他方の移載ヘッド110の干渉エリアへの進入のタイミングを適切にすることができる。
また、本実施の形態では、部品実装を終えた他方の移載ヘッド110が干渉エリア外への移動を開始したときに、一方の移載ヘッド110が干渉エリアに進入し得るような、移載ヘッド110の部品供給位置からの移動開始のタイミングを特定したが、2つの移載ヘッド110が干渉しなければ他のタイミングであってもよい。つまり、2つの移載ヘッド110が干渉しなければ、一方の移載ヘッド110による部品実装が終了してから、他方の移載ヘッド110による部品実装が開始するまでの間隔は短ければ短いほどよい。したがって、このような間隔が短くなるようなタイミングであれば、どのようなタイミングを特定してもよい。