JP4651199B2 - アークランプの冷却方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の分野】
本発明は一般的にはアークランプに関するものであり、特に映画投影機の投影ランプとしての使用されるアークランプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
キセノンアークランプは使用中にかなりの熱を発生するので、所定のランプ寿命を得るためには冷却しなければならない。空冷式の投影機ではランプがランプハウス内に配置し、このランプハウス内に十分な気流を供給してアークランプによって発生した熱を除去する必要がある。空冷式のキセノンアークランプを有する投影機の例は米国特許第5,587,750号(Gibbon達)に開示されている。この特許にはランプの冷却方法は開示されていないが、図1にホース(46)が示されており、このホースを通ってランプハウス(42)の冷却空気が投影機から排気される。このGibbon達の特許の内容は本明細書の一部を成す。
【0003】
一般に、キセノンアークランプでは陽極と陰極との間にアークが飛び、このアークを封入するガラス容器(エンベロープ)を有する。エンベロープ内には所定圧力の不活性キセノンガス雰囲気が供給される。陽極および陰極はガラスのエンベロープのバルブ内の各電極組立体の両端に配置されている。これらの電極組立体はバルブから互いに反対方向へ延びるエンベロープの同軸円筒部分の内部に収容されている。従って、ランプは陽極および陰極の組立体の軸線で定義された軸線を有する。ランプはこの軸線が垂直線に対して所定角度(例えば±15°)傾くように、一般には陽極を上にして配置される。しかし、キセノンアークランプは水平な状態で使用することもできる。
【0004】
特許文献には冷却ランプの提案例が多数記載されている。米国特許第5,721,465号(Roberts)には改良された反射体を有するキセノンアークランプが開示されている。米国特許第5,369,557号(Ronney)にはキセノンアークランプが組み込まれたサーチライトが開示されている。
米国特許第4,630,182号(モロイ達)にはショートアーク水銀灯を冷却するための方法が提案されている。キセノンアークランプと違って、ショートアーク水銀灯は陰極および陽極がなく、作動中のランプの方向決定はあまり重要でない。
ランプの冷却に関する他の特許の例としては米国特許第5,091,835号(Malek達)および第5,458,505号がある。
【0005】
本発明者は、空冷式のアークランプではランプで生じた熱を除去するだげの十分な空気流を供給するだけでなく、ランプのバルブ上を流れる気流の性質も重要で、それがランプ性能に影響を与えるということを見いだした。すなわち、気流が大き過ぎると、バルブ自体の中でガス(キセノン)の乱流が生じ、アークが不安定になる。投影用ランプの場合にはこの不安定性によって投影スクリーン上に目障りなチラツキが出る。ランプバルブ表面の気流が不均一な場合には、空気の流れ自体がアークの不安定性およびチラツキに影響を与える。
ランプが垂直方向を向いている場合(通常は陽極が上方)は、アークが高周波で遊動する傾向がある。これは特に投影スクリーン上のフリッカーとして目につく。そのためランプ上での空気の流れを正確に制御することが極めて重要であるということが分かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、映画投影機のアークランプおよび一般的なアークランプの両方での上記問題を解消することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
本発明の1つの観点から、互いに同軸な陽極端部および陰極端部と、これ両端部の間にバルブ(球)を有するガラスのエンベロープとを有するアークランプの冷却方法が提供される。本発明方法は、ランプハウス内のランプの上記端部の一方の端部をキャップを有する支持体によって支持する。このキャップはランプ端部の周りに環状空気スペースを形成し、冷却空気の入口と、エンベロープのバルブの方向へ向かう環状空気の出口とを有する。冷却空気はキャップの入口からキャップの出口までキャップ中を流れる。出口から出た空気は環状気流としてバルブ上を流れてランプを冷却する。
【0008】
本発明はさらにアークランプ組立体を提供する。このアークランプ組立体は上記形式のランプと、集光器と、この集光器によってランプから反射された光がランプハウスから出る際に通る開口部を有するランプハウスとを有する。このランプハウスは冷却空器の入口および出口を有し、この入口と出口との間に空気を流すファンが設けられる。この組立体はランプを集光器に対して適当に位置決めするためのランプの各端部用のランプ支持体を含む。一方のランプ支持体には対応する端部用のキャップを有している。このキャップはランプの端部の周りに環状空気スペースを形成する。このキャップは冷却空気の入口とランプエンベロープのバルブの方向へ向かう環状空気の出口とを有している。ランプハウスの冷却空気入口はキャップの空気入口と連通し、ランプハウスの冷却空気出口はキャップから遠く離れた所に位置している。使用時には冷却空気がキャップを通って流れ、環状気流としてキャップ出口から出てバルブ上を流れランプを冷却する。
【0009】
既に述べたように、本発明はランプ表面の冷却気流を正確に制御することがアークの安定性にとって重要であるという認識に基づいている。キャップとランプ端部(通常は陽極端)との間の環状空間(空気ギャップ)は層状気流の「シート」を作り、このシートはバルブ表面に「付着」する傾向があり、それによって正確な冷却ができる。実際には、一つの投影用ランプハウスに一つの冷却ファンで十分であり、それによって気流を正確に制御でき、十分に冷却でき、しかも、過剰な気流(望ましくないアーク運動の原因となる)を避けることができるということがわかっている。
【0010】
キャップはランプハウスの壁から内側へ延びた支持アームに支持するのが好ましい。このアームは中空アームで、アームの一端はキャップの空気入口と連通し、他端はランプハウスの空気入口と連通している。従って、冷却空気はアームに沿って流れ、キャップに流入する。キャップはランプ端部に対して非対称に配置され、キャップとランプとの間のギャップが空気入口と接する最大幅からランプの端の反対側の最小幅まで変化するのが好ましい。このオフセットは空気が上記入口の近くをより速く移動する傾向を解消するものである。ギャップをより広くすることによって空気の速度を減速し、反対側のギャップを狭くすることによって空気の速度を加速する。結果としてランプの円周全体に沿って空気の流れが全体的により均一になる。
本発明のよりよい理解のために、以下、本発明の特に好ましい実施例を示す添付図面を参照する。
【0011】
【実施例】
図1は既に述べた米国特許'750(Gibbon達)に開示された形態の映画投影機を一般的に示している。この投影機の機構の詳細については上記特許を参照されたい。本発明ではこの投影機がいわゆる「ローリングループ」式であることがわかればよい。参照番号20は投影機のロータ22の下側にあるランプハウスを示す。投影機を通って送られるフィルム24はロータ22の表面の一部の周りを通ってステータ26の内側へ通る。投影レンズ組立体は28で示され、ランプハウス20からの光は上側へ向けられ、ミラー30によって反射され、フィルム24、次いで投影レンズ28を通って前方へ送られる。参照番号32はロータ22を上側から回転自在に支持する「スパイダー」を示す。
【0012】
ランプハウス20は基本的に長方形の箱またはエンクロージャであり、このエンクロージャの内部に投影ランプ34と集光器36とが支持されている。図2から最もよくわかるように、ランプ34は陽極端部38と陰極端部40とを有し、これらの2つの部分は互いに同軸である。石英ガラスのエンベロープ42は陽極および陰極組立体44、46を封入しており、両端部の間にバルブ(球)48を有している。このバルブ48は陽極電極50と陰極電極52とを収容し、ランプのアークはこれらの電極間で飛ぶ。ガラスエンベロープ内には不活性ガス(一般にはキセノン)が高圧下に維持され、陽極および陰極組立体44,46にはそれぞれ圧力シール(図示せず)を設ける。陽極への電源ケーブルは54で示す。
【0013】
このランプの構造は従来のランプと同じである。ランプ34は陽極支持体56と陰極支持体58とによって保持され、集光器36に対して位置決めされている。陰極支持体58は図1に概念的に示され、基本的に従来のものである。この支持体58は互いに直角ないわゆる「X」、「Y」および「Z」方向にランプの陰極端を調整する。換言すれば、陰極端を上下にまたは互いに直角な2方向で横方向に移動させることによってランプの位置を調整することができる。図からわかるように、ランプ34は実際には集光器の底の開口部36aを通って延び、バルブの陰極端は集光器の外側にある。陰極支持体58は、陽極電極50と陰極電極52との間で飛ぶアークは集光器の焦点に対して正確に位置決めされ、スクリーンに適当な照度が得られるように調整する。
【0014】
バルブの陽極端は基本的に調整不可能である。図3、図4からわかるように、ランプ用の陽極支持体56はランプハウス20の壁から内側へ延びる中空アーム60と、図2に示すようにランプの陽極端と係合する円筒形キャップ(shroud)62とを有する。中空アーム60は箱断面形状の中空金属製であり、外側端にフランジ60aを有し、このフランジによって中空アームはランプハウスの壁に絶縁ブロック63を介してボルト固定される。中空アーム60の対向端部は長方形端縁60bになっており、図2から最もよくわかるように、この端縁は組み立てられたランプハウスのキャップ62の外側表面に当接している。キャップ62の側壁に設けられた軸線方向溝64は中空アーム60の開口端と整合している。溝64の上部にあるノッチ64aは陽極ケーブル56を収容する。
【0015】
キャップ62および中空アーム60は一対のワイヤ「フィンガー」68によって互いに位置決めされる。このフィンガーはキャップを抱えるようにほぼV字型(図3参照)に配置されている。2つのフィンガーは実際には支持アーム60上のブラケット70に支持された各ワイヤ要素の一部をなす。フィンガー68を含む構成は図4の72に示され、引張バネ76用の取付け点を形成する後方を向いたフィンガー74を有する。バネ76はキャップ62を一周し(図3に最もよく示されている)、フィンガー74の一方に引っ掛けられて、ランプの陽極端をアームに対して確実に固定する。ブラケット70はブラケットの溝を通って延びるネジ78によってアーム60に固定されているので、アーム60に対するキャップ(従って、ランプの陽極端)の正確な位置を決めるようにブラケット(従って、アームの2つのワイヤ構成)をキャップに対して調整することができる。
【0016】
キャップ62の溝64はキャップへの冷却空気入口を構成する。矢印80(図3)で示す冷却空気は入口82(図2)を通ってランプハウスに流入し、中空アーム60の内部に沿ってキャップ62中に流れる。図2にはランプハウスの底(すなわちキャップから遠い所)にある冷却空気出口84も示されている。この出口84はランプハウスの中の冷却空気を抜き出すファン(Fで示されている)の吸込み側と連通している。このファンは他の開口部(図示せず)からも空気を引き入れ、集光器36とミラー(図示せず)とを含むランプハウスの他の領域を周知な方法で冷却する。
【0017】
図3、図4に戻ると、ピン86がランプの陽極端から上方へ突出していることがわかる。キャップ62の上部壁にはこのピンに対応する開口部88が設けられている。この開口部88はピン86を収容し、キャップをバルブに対して配置する役目をする。一般に89で示した止めネジはピン86を開口部88に保持するのに使用される。
開口部88は実際にはキャップの縦方向軸線から空気入口溝64から離れる方向にオフセットしていることがわかる。図2から最もよくわかるように、キャップをランプに取り付けるときに、ランプの陽極端とキャップとの間に環状空気スペース90が残る。この空気スペースのキャップの底端には、キャップからの空気の環状出口92が形成される(溝64は空気入口である)。
【0018】
キャップの中で開口部88がオフセットしている(図3、図4)結果、図2から明らかなように、空気スペースの幅は空気入口64に接する最大幅からキャップの反対側の最小幅まで変化する。このオフセットは空気が空気入口溝の近くをより速く移動する傾向を解消するものである。溝64の近くのスペースをより広くすることによってキャップに流入する空気の速度を減速し、キャップの反対側のスペースをより狭くすることによって空気の速度を加速する。その結果、陽極の円周全体に沿って空気の流れがより均一になり、環状空気出口92から出る空気の流れがより均一になる。
【0019】
図2から最もよくわかるように、環状空気出口92はバルブ48の方向を向いている。出口92から出た空気はバルブ48上を環状の層状気流となって流れる。この気流は図2の矢印で示されている。その結果、層状気流の「シート」がバルブの表面に「付着」し、それによって均一で安定な冷却効果が得られる。
ランプハウス20の空気出口開口部84がキャップ62から遠く離れたランプハウスの底に配置されることによって、キャップ出口92から出た空気はランプの周りで下方へ引き寄せられ、(陽極端が限界であるが)ランプのほぼ全長にわたって確実な冷却が維持される。
冷却空気はアークの安定性を保証するだけでなく、陽極および陰極組立体のシールを冷却するのに役立つ。
【0020】
陽極キャップ62は上記の利点を有するが、その陰があると集光器37によって反射される光を弱めることになるので、陽極キャップ62の寸法は陰をつけない寸法にする。すなわち、キャップはアークが飛んだときにランプの陰極52によって既につけられた陰の中に配置される。図2では、アークからの光が集光器開口部36aの端縁で反射されるので、94で示された線が陰極によってつけられる通常の陰を表す光線を示している。これらの光線は96で示された線に沿って反射され、ランプハウス20の外側へ収束する。キャップ62はこの陰の中に入り、光線96の収束に影響を及ぼさない。
【0021】
以上、本発明の特に好ましい実施例を説明したが、本発明は種々改良することができる。例えば、本発明を垂直方向を向いたアークランプについて説明したが、本発明は水平方向を向いたアークランプでも使用できる。同様に、キャップをランプのどちらか一端または両端に使用することができるが、陽極端は通常、最も高温であり、最も冷却を必要とする。
キャップをランプに対してオフセットすることによって幅の異なる環状空気ギャップを作ることは好ましいが、全ての適用例で必須ではない。オフセットの調整を行うのに別の手段がある。例えば、開口部88の代わりに溝にピン86(図3、図4)を収容し、互いに反対に作用する一対の止めネジで溝に沿ったピンの配置を調整することができる。
【0022】
図示した実施例では、空気はランプの陽極端を支持する中空アーム60を通ってキャップへ向けられるが、代替例では空気を中空アーム以外、例えば別個の導管に通してキャップに送り出すことができる。
本発明を映画投影機のキセノンアークランプについて説明したが、本発明は他の目的のアークランプおよび、場合により、キセノン以外の内部ガスの雰囲気を有するアークランプにも適用できるということは理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のアークランプ組立体を有する映画投影機の概念的投影図。
【図2】 図1に示す投影機のランプハウスを通る垂直断面図。
【図3】 図2に示すランプの陽極端、支持アームおよびキャップの拡大投影図
【図4】 図3を右側から見た拡大投影図。

Claims (10)

  1. 陽極端部と、それと同軸な陰極端部と、これらの両端部の間のバルブを有するガラスのエンベロープとを有する、陽極と陰極とを備えたアークランプの冷却方法において、
    冷却空気の入口と、エンベロープのバルブの方向へ向かう空気の環状出口とを有し、ランプの上記陽極端部の周りに環状空気スペースを形成するキャップを含む支持体によってランプをランプハウス内の集光器中に支持し、上記陽極端部およびバルブは集光器中あり、ランプは集光器に形成した環状開口を通って延在し、ランプの上記陰極端部は集光器外にあるようにする段階と、
    上記入口から上記出口まで冷却空気をキャップの中を流し、出口から出た空気を環状気流にして集光器の上記環状開口へ向かってバルブ上を流してランプを冷却する段階とを含むことを特徴とする方法。
  2. キャップ中に冷却空気を流す段階が冷却空気をランプハウスの外側からランプハウスの入口から出口まで流し、入って来る冷却空気をキャップの入口から出口へ流し、ランプハウスの空気出口をキャップから遠く離れた所に位置決めして、キャップから出た冷却空気がランプのバルブ上でキャップの反対側のランプの端へ向かって流れるようにする請求項1に記載の方法。
  3. キャップの空気入口がキャップの側壁に設けられた入口から成りランプの中心軸線がこの入口溝から離れる方向にキャップの縦方向軸線に対してオフセットしている請求項1に記載の方法。
  4. 陽極端部と、それと同軸な陰極端部と、これらの両端部の間のバルブを含むガラスのエンベロープとを有する、陽極と陰極とを備えたランプと、
    集光器と、この集光器によって反射された光がランプハウスから出る際に通る光の出口開口部と、冷却空気の入口および出口とを有するランプハウスと、
    ランプハウスの冷却空気の入口と出口との間に冷却空気を流す手段と、
    ランプの上記陽極端部とバルブとを集光器中に位置し、ランプの上記陰極端部他方の端部を集光器外に位置し、ランプが集光器に形成した環状開口を通って延在するように集光器に対してランプの位置決めする、ランプ両端部のランプ支持体と
    を含むアークランプ組立体において、
    ランプの上記陽極端部を支持するランプ支持体がランプ端部のキャップを含み、このキャップはこの端部の周りに環状空気スペースを形成し且つ冷却空気の入口とエンベロープのバルブの方向へ向かう空気の環状出口とを有し、
    ランプハウスの冷却空気の入口が上記キャップの空気入口と連通し、ランプハウスの冷却空気の出口がキャップから遠く離れた所に位置して、使用時に冷却空気がキャップ中に入り、集光器の環状開口を通って環状気流としてバルブ上を流れてランプを冷却することを特徴とするアークランプ組立体。
  5. キャップを有するランプ支持体が、ランプハウスの側壁からキャップまで内側へ延びるアームと、キャップをアームに着脱自在に連結する手段とを有し、キャップがランプの対応端部に固定される請求項4に記載のアークランプ組立体。
  6. キャップへの空気の入口がキャップの側壁に形成された入口溝で構成され、ランプの中心軸線がこの入口溝から離れる方向にキャップの縦方向軸線に対してオフセットしている請求項4に記載のアークランプ組立体。
  7. 上記アームとキャップとが別々の要素であり、取付け手段によってキャップがアームに当接される請求項4に記載のアークランプ組立体。
  8. 取付け手段が両側でアームに連結されたキャップを取り囲む引張バネを有する請求項7に記載のアークランプ組立体。
  9. キセノンアークランプが陽極端を上にしてランプハウス内に垂直に配置され、ランプは集光器の開口部を通って延び、この開口部の端縁から集光器によって反射された光ランプのバルブを含む陰を投影する請求項4に記載のアークランプ組立体。
  10. 請求項4に記載のアークランプ組立体を有する映画投影機。
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